JPH11127858A - ウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポリペプチドと該ウイルス感染症の診断法 - Google Patents

ウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポリペプチドと該ウイルス感染症の診断法

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JPH11127858A
JPH11127858A JP9295873A JP29587397A JPH11127858A JP H11127858 A JPH11127858 A JP H11127858A JP 9295873 A JP9295873 A JP 9295873A JP 29587397 A JP29587397 A JP 29587397A JP H11127858 A JPH11127858 A JP H11127858A
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nucleic acid
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acid sequence
recombinant
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JP9295873A
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Kotaro Tsuchiya
耕太郎 土屋
Ichiro Sato
佐藤  一郎
Shinya Nagai
伸也 長井
Susumu Ueda
進 上田
Hiroshi Imagawa
浩 今川
Masao Fukunaga
昌夫 福永
Shigeo Sugita
繁夫 杉田
Takashi Kondo
高志 近藤
Hiroomi Akashi
博臣 明石
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NIPPON SEIBUTSU KAGAKU KENKYUSHO
JAPAN RACING ASSOCIATION
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NIPPON SEIBUTSU KAGAKU KENKYUSHO
JAPAN RACING ASSOCIATION
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 EAVのGLタンパク質以外の組換えタンパ
ク質を各種発現系で発現させ、EAV感染症の診断に有
効なタンパク質を提供する。 【解決手段】 ウマ動脈炎ウイルスゲノムにコードされ
たポリぺプチドのN末端あるいは内部に、連続した6残
基のヒスチジンが付加されるように組換え核酸配列を構
築し、この組換え核酸配列をポリヘドリンプロモーター
の下流に組み込んだバキュロウイルスを宿主細胞に感染
させてウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポリぺプチ
ドを産生させ、精製する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はウマ動脈炎ウイルス
(Equine arteritis virus :以下「EAV」という) の
血清学的診断法に有用な方法、この方法に有効に用いる
ことができるポリペプチド等に関するものであり、詳し
くはEAVのゲノムにコードされるタンパク質あるいは
その抗原性を有する部分(以下両者を合わせて「ポリぺ
プチド」と称する)を、バキュロウイルスと昆虫細胞の
系で発現させたポリぺプチドと、これを抗原とした血清
学的診断法に関するものである。
【0002】
【発明の背景と従来の技術】ウマウイルス性動脈炎 (Eq
uine viral arteritis) は、ウマ動脈炎ウイルス(EA
V)を原因とする馬の伝染性疾病であり、本感染症は世
界的に広く分布し、その主な症状は発熱、眼瞼や四肢の
浮腫、結膜炎、鼻汁漏出などであるが、妊娠馬が感染し
た場合は流産をも引き起こすことが知られている (Chir
nside,1992,Br.Vet.J.,148:181-197)。
【0003】このウイルスの感染経路は主に呼吸器であ
るが、種雄馬が感染した場合にはその35%程度の感染
馬で生殖器にウイルスが持続感染し、感染後1〜2年以
上に渡ってウイルスを排泄するという報告があり (Timo
ney et al.,1986,Res.Vet.Sci.,41:279-280)、交配や人
工授精によるウイルス感染拡大の原因となっている。
【0004】本感染症の原因ウイルスであるEAVは、
その分離当初は、トガウイルス科の節足動物非媒介性の
ウイルス属としてアルテリウイルス属に分類されたが、
最近その全塩基配列が決定され (Den Boon et al.,199
1,J.Virol.,65:2910-2920) 、その遺伝子構造や遺伝子
発現様式がコロナウイルスおよびトロウイルスと類似し
ていることから、EAVおよび旧分類のアルテリウイル
ス属に属する乳酸脱水素酵素ウイルス、サル出血熱ウイ
ルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルスを一つの属とし
てコロナウイルススーパーファミリーに分類しようとす
る提案がなされている(前出の「Den Boon et al.,1991,
J.Virol.,65:2910-2920」) 。
【0005】ところで、上記EAVは、その遺伝子構造
の解析から7個のオープンリーディングフレーム(OR
F)の存在が確認されており、そのうちORF1aおよ
びORF1b、ORF2、ORF5、ORF6、ORF
7がそれぞれポリメラーゼタンパク質、膜タンパク質G
S、膜タンパク質GL、Mタンパク質、Nタンパク質に
対応すると考えられている(前出の「Den Boon et al.,1
991,J.Virol.,65:2910-2920」) 。
【0006】このようにEAVはその遺伝子構造が明ら
かになってきたため、遺伝子工学的手法を用いたワクチ
ンの開発あるいは血清学的診断用抗原の開発が可能な状
況になりつつある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一般に感染症の診断は
血清学的に行われ、ウイルス中和試験、蛍光抗体法、補
体結合反応、エライサやラテックス凝集反応など各種試
験法が用いられる。EAV感染症の血清学的診断にはも
っぱらウイルス中和試験が用いられておりこの診断法自
体は感度が良く特異性の高い優れた方法であるが、判定
までに日数を要し、手技に熟練を要するという問題が常
につきまとっている。
【0008】ウイルス感染症の血清診断の現場では、簡
易で、判定までの期間が短いところからエライサやラテ
ックス凝集反応が頻繁に使用されるようになってきてい
る。EAV感染症の血清学的診断に対してもエライサを
応用したCookらの報告 (1989,Vet.Microbiol.,20:181-1
89) や近藤らの報告(馬の科学、1995,32:107-111)があ
るが、これらの報告では精製ウイルス粒子をエライサ用
抗原として用いているため、その調製に比較的大量の培
養規模を要すると考えられる。
【0009】また、Chirnside ら (1995,J.Virol.Metho
ds,54:1-13) は、大腸菌で発現させたGLタンパク質を
抗原とした血清診断法を開発しているが、EAV感染症
の診断においてこの抗原が最も有用であるか否か、ある
いは大腸菌の発現系が目的に最も合致しているか否かに
ついては不明である。
【0010】本発明は、以上のような従来技術の下で、
EAVのGLタンパク質以外のポリぺプチドを各種発現
系で発現させ、これらの血清診断用抗原としての有用性
を解明することにより、EAV感染症の診断に有効なポ
リぺプチドを提供することができ、またこのポリぺプチ
ドを産生することができる遺伝子、この遺伝子を組み込
んだポリぺプチド産生体、かかるポリぺプチド産生体に
より産生されたポリぺプチドを精製する方法、並びにか
かるポリぺプチドを用いて馬動脈炎ウイルスの感染診断
を行う方法を提供し、該ウイルスに対する防疫に資する
ことに有効な方策を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本課題を解決するために
はその第一のステップとして、対象とする遺伝子断片の
クローニングが行われる。EAVゲノムの全塩基配列は
前述のようにDen Boonら(1991,1.Virol.,65:2910-292
0)により決定されているので、この塩基配列を参考に
してプライマーDNAを合成し、逆転写反応とポリメラ
ーゼチェーン反応(RT−PCR)により遺伝子断片を
増幅させ、クローニングすることができる。また、DN
A合成機を用いて人工的に遺伝子断片を合成しクローニ
ングすることもできる。このクローニングされた遺伝子
断片を各種発現用ベクターへ挿入し、目的とするポリぺ
プチドを発現させる。各種発現系でのポリぺプチドの発
現がSDS−ポリアクリルアミド電気泳動法(SDS−
PAGE)や蛍光抗体法などで確認された場合、次のス
テップとして必要に応じてポリぺプチドの精製を行う。
そしてこの精製操作を容易にするために、本発明におい
ては連続した6残基のヒスチジンをあらかじめ発現用ベ
クターの構築の段階で目的とするポリペプチドの任意の
位置に挿入あるいは付加させておくという特徴的な構成
を有する。
【0012】このように構築した場合、例えば市販され
ているニッケルカラムで発現させたポリペプチドを容易
に精製することができる。あるいはグルタチオンSトラ
ンスフェラーゼと目的のタンパク質が融合した形で発現
されるように発現ベクターを構築しグルタチオンカラム
で精製することもできる。
【0013】このようにして精製したポリペプチドある
いは粗精製のポリペプチドを、市販されているエライサ
プレートあるいはラテックス粒子に吸着させ、常法によ
りEVA感染馬血清および非感染馬血清を用いてエライ
サあるいはラテックス凝集反応を行い、発現させた組換
えタンパク質が感染馬血清に特異的に反応するか否かを
試験して診断用抗原としての有用性を判定する。
【0014】本願請求項1の組換え核酸配列の発明は、
ウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポリペプチドの末
端あるいは内部に連続した6残基のヒスチジンが挿入あ
るいは付加されるように構築した核酸配列であることを
特徴とする。
【0015】上記において用いる核酸配列は、ウマ動脈
炎ウイルスゲノムにコードされた遺伝子であってもよい
し、DNA合成機を用いて人工的に合成したウマ動脈炎
ウイルスの抗原性を有するポリペプチドをコードする核
酸配列であってもよいが、いずれの場合もポリぺプチド
の末端あるいは内部に、連続した6残基のヒスチジンが
挿入あるいは付加されるように構築されることが必須で
ある(以下これらを総称して「組換え核酸配列」とい
う)。
【0016】このように構築された組換え核酸配列を用
いることにより、産生されたポリペプチドの精製を容易
に行うことができる。
【0017】本発明の組換え核酸配列を構築するための
ウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポリぺプチドをコ
ードする核酸配列は、例えばNタンパク質あるいはMタ
ンパク質をコードする遺伝子とすることができる。更に
は、これらタンパク質の抗原性を有している部分のポリ
ぺプチド断片をコードする核酸配列とすることもでき
る。
【0018】また本発明の組換え核酸配列は、ポリぺプ
チドを産生するためにバキュロウイルスに、そのポリヘ
ドリンプロモーターの下流に組み込んで組換えバキュロ
ウイルスとすることができる。また組換え核酸配列は、
大腸菌内で作動するプロモーターの下流に組み込むこと
もでき、診断抗原として用いられるポリぺプチドは、該
組換えバキュロウイルスを、その宿主細胞に感染させて
産生させて得ることができる他、大腸菌内でこれに組み
込んだプラスミド上のプロモーターを作動させることに
より大腸菌内で発現させて得ることができる。
【0019】そして以上のようにして得たポリぺプチド
は、連続した6残基のヒスチジンに特異的なカラムを用
いて容易に精製することができる。
【0020】また精製されたポリぺプチドは、ウマ動脈
炎ウイルス感染症の診断用抗原として用いることがで
き、このような診断法としては、エライザ反応が特に有
用性が高い。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明は、遺伝子工学的技術と血
清学的診断法の技術を用いて行われる。前者の技術はSa
mbrookら(1989,Molecular Cloning:A laboratory manu
al,2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Pres
s, New York )により、また後者の技術はHaarlow ら
(1998,Antibodies : A laboratory manual ,Cold Spr
ing Harbor Laboratory Press , New York)により集大
成されている。
【0022】本発明を遂行する第一段階ではEAVゲノ
ムに相補的なcDNA断片のクローニングを行う。本発
明で用いるEAVにはいかなるEAV株を用いることも
でき、例えばBucyrus 株(ATCC VR−796)で
もよい。この過程はすでに、Den Boonら(1991 , J.Vir
ol., 65:2910-2920 )が確立しており、彼らの報告して
いる方法により行うことができる。
【0023】あるいは、現在までに公知となっている塩
基配列 (Den Boon et al.,1991,J.Virol.,65:2910-2920
; Chirnside et al.,1994,J.Gen.Virol.,75:1491-1497
; Sugita et al.,1994,in Proceedings of Equine Inf
ectious Disease VII,pp39-43)を参考にして任意に合成
DNAプライマーを作成し、RT−PCR法により目的
の断片を増幅することも可能であり、さらにはDNA合
成機を用いて人工合成することも可能である。このよう
にして得られた断片は、適当なプラスミドDNA、例え
ばpUC19上にクローニングする。目的の核酸配列が
クローニングされたなら、これを各種発現用ベクターに
挿入する。発現に用いられるベクターは数多く開発され
ており、例えば Sambrook ら (1989,Molecular Clonin
g:A laboratory manual,2nd edition,Cold Spring Harb
or Laboratory Press,New York)の成書にもまとめられ
ている。これらの発現系の中で一般によく用いられてい
るものに大腸菌の発現系、例えばQiagen社のpQ
Eシリーズの発現系とバキュロウイルスの発現系があ
り、本発明の発明者らも以下の実施例で示すようにこれ
らの発現系を使用した。
【0024】これらの発現系で発現ベクターを構築する
際に、発現させるポリペプチドの末端あるいは内部に読
みとり枠が合致するように連続した6残基のヒスチジン
が付加するように構築すると、発現ポリぺプチドをニッ
ケルカラムを用いて一段階で精製することが可能にな
る。この目的のための発現ベクターは例えば上に述べた
大腸菌発現用にQiagen社からpQEシリーズのベ
クター、あるいはバキュロウイルス発現用にClont
ech社からpBacPAK−His1などのベクター
が市販されている。また、グルタチオンSトランスフェ
ラーゼとの融合タンパク質として発現させ、グルタチオ
ンカラムを用いて精製を容易にするシステムも市販され
ている。以上のような発現系で組換えポリぺプチドが発
現するか否かはSDS−PAGEあるいはウェスタンブ
ロッティング法を用いて解析することができる。
【0025】組換えポリぺプチドの発現が確認できた場
合、次の段階では必要に応じ、適当な方法で精製する。
精製の方法にはゲルろ過法、イオン交換ゲルを用いる方
法、ハイドロキシアパタイトゲルを用いる方法などの従
来の方法に加え、上述の様に組換えタンパク質を構築し
た場合にはニッケルカラムあるいはグルタチオンカラム
を用いることが可能である。精製あるいは粗精製の組換
えポリぺプチドを得たならば、これらのポリぺプチドを
常法に従いエライサ用マイクロタイタープレートへ吸着
させる。吸着後、適当なブロッキング剤、例えばゼラチ
ンあるいは牛血清アルブミンなどでプレートの各ウェル
をブロッキングし、これらのウェルに適当に希釈した被
検血清すなわち、既知の抗体陽性馬血清あるいは抗体陰
性馬血清を反応させ、これらのウェルの洗浄後さらにペ
ルオキシダーゼなどで標識した抗馬IgG抗体あるいは
プロテインGを添加し反応させる。さらにウェルを洗浄
した後、標識化合物に見合った発色基質液、例えばペル
オキシダーゼに対してはABTSあるいはo−フェニレ
ンジアミンと過酸化水素水を含む溶液を添加し一定時間
反応させた後、エライサリーダーにて発色量を定量し、
用いた抗原が抗体と特異的に反応しているか否かを判定
し、作出した組換え抗原の有用性を検討する。組換え抗
原の有用性の検討の仕方には以上のエライサの他に例え
ばラテックス凝集反応など従来の血清学的診断法を用い
てもよい。
【0026】以上のようにしてその有用性が確認された
組換えポリぺプチド抗原は各種血清学的診断法、例え
ば、ここで述べたエライサやラテックス凝集反応の抗原
として用いることができ、EAV感染症の有益な診断法
を提供することができる。
【0027】
【実施例】以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に
説明する。
【0028】(1)ORF6遺伝子およびORF7遺伝
子のクローニングおよび組換えバキュロウイルスの作成 EAV増殖用細胞としてEquine fetal d
ermal(EFD)細胞を用い、EAVはEFD細胞
順化Bucyrus株を用いた。バキュロウイルスの宿
主細胞としては昆虫細胞であるSf21AE細胞を用い
た。プラスミドの構築および大腸菌での組換えタンパク
質の発現には大腸菌XL1−Blue株を用いた。
【0029】EAVウイルス培養上清より超遠心法によ
りウイルス粒子を沈殿として回収し、RT−PCR法に
より目的の遺伝子断片を増幅させた。
【0030】EAVゲノムRNAを回収するために、2
50μlの精製ウイルス液に、1.5μlの1Mトリス
塩酸緩衝液(pH8)6μlの0.5M EDTA溶
液、3μlの10mg/mlプロテイナーゼK溶液およ
び37.5μlの10% SDS溶液を加え、37℃で
30分間反応させた。これをフェノール:クロロフォル
ム溶液(1:1)で2回抽出操作を行い、水層の部分を
回収してこれに30μlの3M酢酸ナトリウム溶液(p
H5.2)と1mlのエタノールを加え、−80℃で2
0分間静置した後、15000回転で10分間遠心して
沈殿を回収し、100μlのTE緩衝液(pH8)に溶
かした。RNAの濃度は280nmの吸光度を測定する
ことにより求めた。
【0031】ゲノムRNAよりcDNAを合成する逆転
写反応(RT反応)は以下のように行った。すなわち、
RNAに対して、5μlの10X逆転写反応用緩衝液
(0.5Mトリス塩酸緩衝液、pH8.3、0.5M
KCl,80mM塩化マグネシウム、0.1Mジチオス
レイトール)、2μlの10μMランダムプライマー、
1μlのリボヌクレアーゼ阻害剤(38 units/
μl、和光純薬工業株式会社)を加えて総量43μlと
し、90℃で5分間静置した後、氷水中で急冷し、さら
に、1μlのリボヌクレアーゼ阻害剤、5μlのデオキ
シヌクレオチド混合液(各10mM)、1μlの逆転写
酵素(29 units/μl、生化学工業株式会社)
を加え、42℃で90分間反応させた。反応終了後、ウ
ルトラフリーC3TK(ミリポア社)を用いてランダム
プライマーを除去し、最終溶液量20μlとした。
【0032】各遺伝子を増幅させるPCR反応のために
作成したプライマーの塩基配列はすでに報告されている
Bucyrus株の塩基配列 (Den Boon et al.,1991,
J.Virol.,65:2910-2920) を参考にした。ORF6遺伝
子を増幅させるために合成したプライマーは (ORF6-F) 5’-ATGGGAGCCATAGAATCATT- 3’ と (ORF6-R) 5’-TCATTGTAGCTTGATGGCTG- 3’ であり、ORF7遺伝子を増幅させるために合成したプ
ライマーは (ORF7-F) 5’-ATGGCGTCAAGACGATCACG- 3’ と (ORF7-R) 5’-TTACGGCCCTGCTGGAGGCG- 3’ である。
【0033】上記で合成した2μlのcDNAに対して
2μlの10XPfuポリメラーゼ用バッファ(ポリメ
ラーゼに添付のもの)、各0.5μlの10μM合成プ
ライマー、5μlのデオキシリボヌクレオチド混合液
(各2mM)、14μlの蒸留水、0.5μlのPfu
ポリメラーゼ(Stratagene社、2.5 un
it/μl)を加え、流動パラフィンを重層した後、9
4℃ 90秒、56℃30秒、72℃ 2分を1サイク
ルとしたPCRを30サイクル行い、予想される長さの
DNA断片をPCR産物として得た。この反応液をフェ
ノール:クロロフォルム(1:1)で抽出操作を施し、
ウルトラフリーC3TKでプライマーおよびデオキシリ
ボヌクレオチドを除去した後、これを30μlの10m
M塩化マグネシウム、5mMジチオスレイトール、6m
M ATPを含む70mMトリス塩酸緩衝液、pH7.
6に溶かし、10単位のT4ポリヌクレオチドカイネー
スを加えて、37℃で1時間反応させDNA断片の5’
末端をリン酸化した。PCR法により増幅した各DNA
断片を大腸菌用発現ベクターpQE32(Qiagen
社)のSma Iサイトにそれぞれクローニングした。
これにより、ラクトースプロモーターの下流に、6残基
のヒスチジン(ヒスチジンヘキサマー)とそれぞれのO
RF遺伝子が同一読みとり枠内で連結された融合遺伝子
として配置されるように設計した。
【0034】以上のRT−PCR法によりORF6遺伝
子に対応する489bpおよびORF7遺伝子に対応す
る324bpのDNA断片が増幅された。これらをpQ
E32ベクターのプロモーターに対して同方向に挿入さ
れたクローンを選び出し、目的とするプラスミドpQE
−ORF6およびpQE−ORF7と名付けた。更に、
これらのプラスミドより融合遺伝子全体を含むEcoR
I−Sal I断片をアガロース電気泳動法により回
収し、クレノー酵素を用いてDNA末端を平滑化し、バ
キュロウイルストランスファーベクターpBacPAK
1のクローニングサイトへポリヘドリンプロモーターに
対して同方向に挿入されたクローンを選び出し、トラン
スファーベクターを構築した。
【0035】これらのトランスファーベクターとバキュ
ロウイルスゲノムDNAを宿主細胞であるSf21AE
細胞へリポフェクチン(Gibco BRL社)を用い
て導入し、培養上清に出現したウイルスより組換えウイ
ルスをプラック法によりクローニングした。得られたウ
イルスはそれぞれAcEAV−H6(ORF6との融合
遺伝子)AcEAV−H7.1a(ORF7との融合遺
伝子)と名付けた。以下の記載ではORF6との融合遺
伝子に由来する発現タンパク質を「6xHis−ORF
6タンパク質」、ORF7との融合遺伝子に由来する発
現タンパク質を「6xHis−ORF7.1タンパク
質」と称する。
【0036】(2)各タンパク質の大腸菌での発現 プラスミドpQE−ORF6あるいはpQE−ORF7
を保有する大腸菌XL1−Blueを培養し、IPTG
の添加により組換えタンパク質の発現の誘導を試みた。
それぞれの大腸菌をSDS−PAGEおよびウェスタン
ブロッティングにより解析したところ6xHis−OR
F6タンパク質の発現は確認されたものの6xHis−
ORF7.1タンパク質の発現は確認できなかった。
【0037】(3)各融合タンパク質の昆虫細胞での発
現 組換えバキュロウイルスをSf21AE細胞にMOI
(Multiplicity of infectio
n)約1で感染させ、3日後に感染細胞を回収した。回
収した感染細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3
回洗浄した後、−30℃に保存した。これをSDS−P
AGEで解析したところ、タンパク質染色では6xHi
s−ORF7.1タンパク質は比較的大量に発現してい
たが、6xHis−ORF6タンパク質の発現量は比較
的低かった。これらの遺伝子産物をウェスタンブロッテ
ィング法で感染馬血清と反応させたところ、いずれの組
換えタンパク質も陽性反応を示した。
【0038】(4)発現タンパク質の精製 以上の発現タンパク質の中から発現量が高く、診断用抗
原として有望と考えられる大腸菌由来6xHis−OR
F6タンパク質と昆虫細胞由来6xHis−ORF7.
1タンパク質の2種類を精製した。すなわち、タンパク
質を発現した細胞を超音波で処理しその沈殿の分画を精
製の出発材料とした。精製はヒスチジンヘキサマーを付
加させたタンパク質を特異的に吸着させるニッケルカラ
ム(Qiagen社、Ni−NTA spin ki
t)を用い、キットのマニュアルに従い変性条件下で精
製した。すなわち、出発材料を3.5Mの塩酸グアニジ
ンを含む緩衝液で可溶化した後スピンカラムに添加し、
そのカラムを洗浄した後に8M尿素を含む緩衝液で目的
とする組換えタンパク質を溶出した。得られたタンパク
質は−80℃に保存した。
【0039】(5)発現タンパク質のエライサへの応用 エライサは以下のように実施した。すなわち、精製抗原
を4M尿素溶液で希釈し、エライサプレート(Bect
on Dicknson社、No.3912)の各ウェ
ルに50μlずつ分注し、4℃で一晩静置することによ
り抗原を各ウェルに吸着させた(抗原吸着ウェル)。ま
た、抗原吸着ウェル1穴に対応して1穴の抗原を分注し
ないウェル(抗原非吸着ウェル)を設け、陰性対象ウェ
ルとした。このプレートを0.05%のTween 2
0を含む生理食塩水(プレート洗浄液)で2回洗浄した
後、ウェル当たり50μlの1%ゼラチン水溶液を分注
し37℃に1時間静置することによりブロッキング操作
を行った。このプレートをプレート洗浄液で1回洗浄し
た後、1%ゼラチンと0.1%Tween 80を含む
PBSで100倍に希釈した被検血清50μlを抗原吸
着ウェルおよび抗原非吸着ウェルに分注し、37℃で3
0分間反応させた。反応終了後プレートを4回洗浄し、
0.1%Tween 80を含むPBSで1000倍に
希釈したペルオキシダーゼ標識リコンビナントProt
ein G(Zymed社)を各ウェルに50μlずつ
分注し37℃で15分間反応させた。更にプレートを4
回洗浄し、50μlの基質発色剤を各ウェルに分注し3
0℃で20分間静置した後、7.2N硫酸溶液を50μ
l添加して酵素反応を停止させエライサリーダーにより
吸光度OD492−OD600を測定した。基質発色剤
には0.1Mクエン酸・リン酸緩衝液(pH 5)25
mlに対し10mgのo−Phenylenediam
ineと5μlの30%過酸化水素水を溶解した溶液を
用いた。
【0040】表1に示すように63検体の抗体陰性血清
を用いた試験を行った結果、昆虫細胞由来6xHis−
ORF7.1タンパク質の方が大腸菌由来6xHis−
ORF6タンパク質よりも抗体陰性血清に対する非特異
反応が少なかった。
【0041】
【表1】
【0042】さらに、3頭の実験感染馬の経過血清につ
いて精製6xHis−ORF7タンパク質を用いたエラ
イサでのOD値を測定しその中和抗体価と比較して表2
に示した。表2に示すようにEAV感染馬の中和抗体価
は感染後1週目より上昇し、その後一定の中和抗体価が
維持されるという推移を示した。これに対し、エライサ
抗体は中和抗体の出現より1週間遅れるものの、感染後
2週目から上昇し始め、その後、エライサ抗体陽性に転
じた。
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、組換えEAVタンパク
質を用いることによりEAV感染症の血清学的診断のた
めの有用な抗原を提供し、本感染症の防疫に貢献すると
いう効果が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 33/569 G01N 33/569 L // A61K 39/215 AFE A61K 39/215 AFE (C12N 15/09 ZNA C12R 1:92) (C12N 1/21 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:19) (72)発明者 長井 伸也 東京都羽村市神明台2−2−14−306 (72)発明者 上田 進 埼玉県所沢市中新井3−12−19 (72)発明者 今川 浩 栃木県下都賀郡国分寺町駅東6−10−21 (72)発明者 福永 昌夫 栃木県下都賀郡国分寺町駅東5−12−19 (72)発明者 杉田 繁夫 茨城県古河市古河141−6 フレッシュコ ーポ301 (72)発明者 近藤 高志 栃木県河内郡南河内町祇園5−16−10 サ ンアメニティハウス105号 (72)発明者 明石 博臣 茨城県つくば市竹園1丁目803−405

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポ
    リぺプチドをコードする核酸配列の内部あるいは末端
    に、連続した6残基のヒスチジンをコードする核酸配列
    を該ポリぺプチドの読み取り枠と一致するように挿入あ
    るいは付加することにより構築されたことを特徴とする
    組換え遺伝子。
  2. 【請求項2】 請求項1のウマ動脈炎ウイルスの抗原性
    を有するポリぺプチドをコードする核酸配列がNタンパ
    ク質をコードする核酸配列断片であることを特徴とする
    組換え遺伝子。
  3. 【請求項3】 請求項1のウマ動脈炎ウイルスの抗原性
    を有するポリぺプチドをコードする核酸配列がMタンパ
    ク質をコードする核酸配列断片であることを特徴とする
    組換え遺伝子。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかの組換え核
    酸配列が組み込まれたことを特徴とする組換えバキュロ
    ウイルス。
  5. 【請求項5】 請求項4における組換え核酸配列がバキ
    ュロウイルスのポリヘドリンプロモーターの下流に組み
    込まれたことを特徴とする組換えバキュロウイルス。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5の組換えバキュロウイル
    スを、その宿主細胞に感染させて産生させて得たことを
    特徴とするウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポリぺ
    プチド。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし3の組換え遺伝子が、大
    腸菌内で作動するプロモーターの下流に組み込まれたこ
    とを特徴とするプラスミド。
  8. 【請求項8】 請求項7のプラスミド上のプロモーター
    を作動させることにより大腸菌内で発現させて得たこと
    を特徴とするウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポリ
    ぺプチド。
  9. 【請求項9】 請求項6又は8のポリぺプチドを、連続
    した6残基のヒスチジンに特異的なカラムを用いて精製
    することを特徴とするウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有
    するポリぺプチドの精製方法。
  10. 【請求項10】 請求項9の方法により精製したことを
    特徴とするウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポリぺ
    プチド。
  11. 【請求項11】 請求項6、8又は10の組換えポリぺ
    プチドを抗原として用いることを特徴とするウマ動脈炎
    ウイルス感染症の診断法。
  12. 【請求項12】 請求項11において、診断法がエライ
    ザ反応であることを特徴とするウマ動脈炎ウイルス感染
    症の診断法。
JP9295873A 1997-10-28 1997-10-28 ウマ動脈炎ウイルスの抗原性を有するポリペプチドと該ウイルス感染症の診断法 Withdrawn JPH11127858A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001068683A2 (en) * 2000-03-17 2001-09-20 Universite Du Quebec A Montreal Peptide fragments of the equine arteritis virus m protein and their use in diagnostic tests

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001068683A2 (en) * 2000-03-17 2001-09-20 Universite Du Quebec A Montreal Peptide fragments of the equine arteritis virus m protein and their use in diagnostic tests
WO2001068683A3 (en) * 2000-03-17 2002-02-07 Univ Quebec Montreal Peptide fragments of the equine arteritis virus m protein and their use in diagnostic tests

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