JPH1112385A - 高分子多孔質体の製造方法 - Google Patents

高分子多孔質体の製造方法

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JPH1112385A
JPH1112385A JP16851097A JP16851097A JPH1112385A JP H1112385 A JPH1112385 A JP H1112385A JP 16851097 A JP16851097 A JP 16851097A JP 16851097 A JP16851097 A JP 16851097A JP H1112385 A JPH1112385 A JP H1112385A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶媒に可溶な高分子を用い、連続気泡を有す
る多孔質体を製造する。 【解決手段】 高分子(酢酸セルロースなど)と溶媒
(アセトンなど)との溶液に、融解,溶解可能な第3成
分(氷など)を粉粒体として実質的に固体の状態で添加
し、前記第3成分を拡散させて高分子を不溶化させるこ
とにより、高分子多孔質体を製造する。第3成分には、
高分子に対して非溶媒であり、高分子溶液の溶媒に対し
て混合可能であるとともに、冷却により固化可能な成分
(水、脂肪族アルコール類、酢酸などの有機カルボン酸
類)などが含まれる。第3成分の融点未満の温度で、高
分子溶液と第3成分とを混合した後、第3成分の融点以
上の温度に加熱することにより多孔質体が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、緩衝材、断熱材な
どに利用できる高分子多孔質体、特に連続気泡を有し、
マイクロハビタート、濾剤などとしてに好適な高分子多
孔質体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】高分子多孔質体の製造方法については、
これまで種々の提案が成されている。代表的な多孔質体
の製造方法としては、特公平7−119313号公報に
記載されているように、高分子材料に発泡剤を加え、溶
融加熱して発泡剤を気化させる方法が知られている。こ
の方法を熱軟化温度と分解温度とが近接する高分子に適
用すると、しばしば熱分解、着色などの問題が生じる。
また、発泡剤のうち化学発泡剤は、しばしば高分子や他
の添加剤との化学反応により着色の原因となる。さら
に、発泡ポリスチレンに代表されるように、このような
方法で得られた多孔質体の気泡は、通常、互いに独立し
ている。そのため、独立気泡を有する多孔質体は、内部
に液体を通過させる濾材などの用途、液体を長時間保持
させる用途には適用できない。
【0003】これらの課題を解決する方法として、高分
子溶液から高分子を相分離させる固体化過程で多孔質体
を製造することが提案されている。この方法は、溶液状
態の高分子では一旦固形化する必要がなく経済的であ
り、かつ得られる多孔質体の気泡は基本的に連続気泡で
ある。しかし、例えば、特開平6−157807号公報
に記載されているように、高分子溶液を固体温度以下に
冷却して凍結乾燥させる方法では使用エネルギーが大き
く、高分子を溶解させる溶媒が凍結可能な溶媒に限られ
るため、必然的に製造可能な高分子も限定される。例え
ば、溶媒がベンゼンであれば、ポリスチレン、エチレン
−酢酸ビニル共重合体などに限定され、溶媒がジオキサ
ンであれば、ポリ乳酸などに限定される。
【0004】さらに、高分子溶液に非溶剤(貧溶媒)を
添加して高分子を固形化する方法は、再沈殿として知ら
れており、工業的にも実験室的にも固体状の高分子を得
る方法として広く利用されている。この方法で得られる
高分子は、実質的に多孔体であるが、粉体や非定形の塊
状であり、そのままの形態で多孔質体として使用するこ
とは困難である。従って、所望の形状に成形しようとす
ると、再度加熱の必要があるが、加熱に伴って多孔質構
造が崩壊するため、実際に多孔質体の製造に利用される
ことはない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、溶媒に可溶な多くの高分子に適用可能であり、加熱
発泡では着色や分解が生じる高分子についても、多孔質
体を円滑に製造できる方法を提供することにある。本発
明の他の目的は、多孔質体の気孔径を容易に制御できる
とともに連続性の高い連続気泡型多孔質体を、低エネル
ギーコストで容易に製造できる方法を提供することにあ
る。本発明のさらに他の目的は、溶液の形態で生産され
る高分子を一旦固体化することなく、多孔質体を直接得
ることができる多孔質体の製造方法を提供することにあ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、記目的を
達成するため鋭意検討を重ねた結果、高分子と良溶媒と
の溶液を冷却し、氷などの第3成分を固体の形態で添加
混合した後、前記第3成分を融解,溶解させて拡散又は
消失させ、高分子を不溶化すると、高分子多孔質体が生
成することを見いだし、本発明を完成した。すなわち、
本発明の方法では、高分子の溶媒溶液に、融解,溶解又
は気化可能な第3成分を実質的に固体の状態で添加し、
前記第3成分を拡散させて高分子を不溶化させることに
より高分子多孔質体を製造する。この方法において、第
3成分としては、(1)高分子に対する非溶媒であっ
て、高分子溶液の溶媒に対して混合可能な成分、例え
ば、常温で液体であり、かつ冷却により固化可能な成分
(水,脂肪族アルコール類,有機カルボン酸類など)な
どが使用できる。このような第3成分を用いる場合、第
3成分の融点未満の温度で、高分子の溶媒溶液と第3成
分とを混合した後、第3成分の融点以上の温度に加熱す
ることにより高分子多孔質体が生成する。前記第3成分
としては、(2)溶液中の高分子に対して沈殿剤として
機能するとともに、高分子溶液の溶媒に対して相溶又は
溶解可能な無機塩又はその水和物、(3)溶液中の高分
子に対して沈殿剤として機能するとともに、高分子溶液
の溶媒に対して相溶又は混和可能な溶媒を含むゲルも使
用できる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる(a)高分子
材料は特に限定はなく、実質上溶媒に溶解する限り、熱
可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれの高分子も使用
できる。
【0008】(a)高分子のうち熱可塑性樹脂として
は、例えば、オレフィン系樹脂(ポリエチレン,ポリプ
ロピレン,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−
(メタ)アクリル酸共重合体,エチレン−(メタ)アク
リル酸エステル共重合体,エチレン−無水マレイン酸共
重合体,プロピレン−無水マレイン酸共重合体など)、
酢酸ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル,酢酸ビニル−塩化
ビニル共重合体など)、ビニルアルコール系樹脂(ポリ
ビニルアルコール,エチレン−ビニルアルコール共重合
体など)、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル,塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体など)、塩化ビニリデン系樹
脂(ポリ塩化ビニリデン,塩化ビニリデン−酢酸ビニル
共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合
体,塩化ビニリデン−(メタ)アクリル酸エステル共重
合体など)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン
−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂),スチレン−
(メタ)アクリル酸共重合体,スチレン−無水マレイン
酸共重合体,スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共
重合体など)、ゴム変性スチレン系樹脂(スチレン−ブ
タジエン−スチレンブロックポリマー(SBS)とその
水添物(ESBS),アクリロニトリル−ブタジエン−
スチレン共重合体(ABS)など)、アクリル系樹脂
((メタ)アクリル酸エステルの単独又は共重合体,
(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体な
ど)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポ
リカーボネートなど)、ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸
などのポリオキシカルボン酸、ポリアルキレンテレフタ
レート又はそのコポリエステルなどの芳香族ポリエステ
ル,ポリアルキレンアジペート,ラクトン(カプロラク
トンなど)などの脂肪族ポリエステルなど)、ポリアミ
ド系樹脂(ポリアミド6,ポリアミド612,ポリアミ
ド11,ポリアミド12など)、熱可塑性ポリウレタン
系樹脂、セルロースエーテル類(エチルセルロースな
ど)、セルロースエステル類(セルロースアセテート、
セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセ
テートブチレートなど)などが例示できる。これらの熱
可塑性樹脂は単独で又は二種以上使用できる。
【0009】好ましい熱可塑性高分子には、酢酸ビニル
系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、
塩化ビニリデン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹
脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポ
リアミド系樹脂、セルロースエステル類などが含まれ
る。
【0010】熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノー
ル樹脂,アミノ樹脂(尿素樹脂,メラミン樹脂など),
エポキシ樹脂,ビニルエステル樹脂,不飽和ポリエステ
ル樹脂,ポリウレタン樹脂などが例示できる。
【0011】これらの高分子のうち工業的に生産され、
かつ汎用溶媒に可溶な材料を用いるのが有利である。本
発明によれば、熱成形性に劣る高分子(例えば、ポリ塩
化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのほか、セルロース
エステル類など)についても多孔質体を効率よく得るこ
とができる。さらに、溶液状態で製造される高分子で
は、そのまま多孔質体の製造工程に供することができる
ので、固形化した後、再溶解する工程を省略できる点で
特に好ましい。
【0012】本明細書において高分子溶液とは、上述の
高分子材料に溶媒を加えることにより、所望の形状を有
する容器(型)に充填可能な程度の流動性が付与された
液状物をいい、例えば、温度や圧力を変化させて、容器
に充填可能な液状物も包含される。従って、高分子溶液
は、通常の高分子溶液のように、透明性や均一性を有す
る必要はなく、例えば、高分子の未溶解物(異種または
同種の高分子の架橋物やゲル、高分子量成分など)、不
溶解物(溶媒に不溶な澱粉やパルプなどの天然高分子な
ど)、無機又は有機物(安定剤、酸化防止剤、着色剤な
どの各種の添加剤、繊維状,粒子状,その他の形状の無
機物あるいは有機物など)を含有してもよい。
【0013】(b)溶媒は、前記高分子の全て又は一部
を溶解し、溶解後にそのままの状態で、又は少なくとも
温度や圧力を変化させて、所望の形状を有する容器(成
形型)に充填可能な程度の流動性を付与できる限り特に
制限されない。(b)溶媒は、高分子の種類に応じて選
択でき、通常、第3成分よりも融点が低い。溶媒として
は、例えば、水、脂肪族炭化水素類(ヘキサン,オクタ
ンなど)、脂環族炭化水素類(シクロヘキサン,メチル
シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン,
トルエン,キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(ジ
クロロメタン,クロロホルム,ジクロロエタンなど)、
アルコール類(メタノール,エタノール,イソプロパノ
ール,ブタノールなど)、エステル類(酢酸メチル,酢
酸エチル,酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン,メ
チルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,シクロヘ
キサノンなど)、エーテル類(ジオキサン,テトラヒド
ロフラン(THF),ジエチルエーテルなど)、有機酸
(酢酸,プロピオン酸など)、アミン類(アニリン,ピ
リジンなど)、アミド類(ホルムアミド,ジメチルホル
ムアミド(DMF),ジメチルアセトアミドなど)、ス
ルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル
類(アセトニトリルなど)、セロソルブ類(メチルセロ
ソルブ,エチルセロソルブなど)、カルビトール類(ジ
エチレングリコールモノC1-4 アルキルエーテルな
ど)、これらの混合溶媒などが例示できる。さらには、
未修飾のセルロースにも適用でき、ジメチルアセトアミ
ド−リチウムクロライド(DMAC-LiCl)、酒石酸鉄−ナ
トリウム溶液、ホルムアルデヒド−ジメチルスルホキシ
ド(DMSO)、メチルアミン−DMSO、四酸化二窒
素−DMFなどが溶媒として使用できる。
【0014】好ましい溶媒には、高分子溶液と第3成分
との混合および混合物の成形過程での温度において、液
状であり非凍結性の溶媒が含まれる。すなわち、高分子
溶液と第3成分とを温度Tfで混合又は成形するとき、
高分子溶液の溶媒は、通常、温度Tfで液体である。こ
のような溶媒には、例えば、炭化水素類、ハロゲン化炭
化水素類、アルコール類、エステル類、ケトン類、エー
テル類、アミド類、スルホキシド類、ニトリル類、これ
らの混合溶媒や、ジメチルアセトアミド−リチウムクロ
ライド(DMAC-LiCl)などが含まれる。
【0015】溶媒の使用量は特に限定されないが、例え
ば、高分子10重量部に対して10〜200重量倍(5
〜50重量%程度)、好ましくは20〜150重量倍
(6〜30重量%程度)、さらに好ましくは40〜12
0重量倍(8〜20重量%程度)程度である。溶媒量が
少ないと流動性が低下し、溶媒量が多すぎると得られる
多孔質体の空孔率が高くなり、強度が低下しやすい。溶
媒の使用量を高分子溶液の粘度で規定すると、例えば、
室温(10〜20℃)で10〜105 cps、好ましく
は10〜104 cps、さらに好ましくは102 〜10
3 cps程度となる量である。
【0016】本発明の特色は、融解,溶解又は気化可能
な第3成分(固体析出剤又は固体沈殿剤)(c)を実質
的に固体の状態で、前記高分子溶液に添加する点、第3
成分(c)を添加した後、第3成分の構成成分の拡散又
は消失により高分子を不溶化させる点にある。「実質的
に固体」とは機械的に分割又は粉砕可能な状態の物質を
意味し、例えば、結晶状物質、ガラス状物質やゲル状物
質などが含まれる。
【0017】前記第3成分の構成成分を拡散又は消失さ
せることにより高分子を不溶化させるため、第3成分と
しては、(1)前記高分子に対して非溶媒(貧溶媒)で
あり、かつ前記高分子溶液の溶媒と均一に混合可能な成
分が挙げられる。このような第3成分は、その融点未満
の温度で実質的に固体の状態で高分子溶液に混合した
後、第3成分の融点以上に加熱することにより、第3成
分の構成成分を拡散又は消失させて高分子を不溶化でき
る。さらに、第3成分として、(2)溶液中の高分子に
対して沈殿剤として機能するとともに、高分子溶液の溶
媒に対して相溶又は溶解可能な物質(無機塩又はその水
和物)が含まれる。この場合、第3成分は高分子溶液の
溶媒に溶解することにより、その構成成分は拡散し高分
子を不溶化させる。さらに、(3)第3成分としては、
溶液中の高分子に対して沈殿剤として機能するととも
に、高分子溶液の溶媒に対して相溶又は混和可能な溶媒
を含むゲルがあげられる。
【0018】このような第3成分(c)のうち前記態様
(1)(3)の溶媒としては、冷却により固化可能な成
分、例えば、水(氷)、炭酸ガス(ドライアイス)、脂
肪族アルコール類(t−ブチルアルコールや、デシルア
ルコール,ラウリルアルコール,テトラデシルアルコー
ルなどのC8-20高級アルコール,エチレングリコール,
ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,グリ
セリンなどの多価アルコールなど)、脂環族又は芳香族
アルコール類(シクロヘキサノール、ベンジルアルコー
ルなど)、ハロゲン化炭化水素類(四塩化炭素,ジブロ
モメタン),炭化水素類(シクロヘキサンなど)、エー
テル類(ジオキサンなど)、有機カルボン酸類(ギ酸、
酢酸,トリフルオロ酢酸など)、オキシカルボン酸(乳
酸など)、アミド類(ホルムアミド,N−メチルホルム
アミド,N−メチルアセトアミド,N,N−ジメチルア
セトアミド,ヘキサメチルリン酸トリアミドなど)、ニ
トロ化合物(ニトロベンゼンなど)、アミン類(ピペリ
ジン,モルホリンなど)などが例示できる。これらの成
分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これ
らの第3成分のうち、冷却により固化可能な氷結性物
質、例えば、水(氷)、脂肪族アルコール類、有機カル
ボン酸類(酢酸など)などが好ましい。第3成分は、通
常、常温で液体である。
【0019】前記態様(2)の第3成分(c)としては、
結晶性の水溶性無機塩又はその水和物、例えば、硫酸塩
又はその水和物(硫酸ナトリウム・10水和物、硫酸マ
グネシウム・7水和物、硫酸ナトリウムアルミニウム・
12水塩、硫酸アルミニウムカリウム・12水塩、硫酸
カリウムアルミニウム・12水塩など)、塩化物(塩化
カルシウム・6水和物など)、炭酸塩(炭酸ナトリウム
・10水和物など)などが例示できる。
【0020】なお、前記態様(3)の第3成分を構成す
るゲルの種類は特に制限されず、例えば、前記態様
(1)の第3成分を含む高分子ゲル(酢酸ビニル系重合
体,(メタ)アクリル系重合体などのゲル)などが例示
できる。
【0021】好ましい第3成分は、固形状の溶媒(例え
ば、冷却により固化可能な溶媒)であり、常気圧におい
て、融点−40℃〜40℃(好ましくは−30℃〜30
℃、さらに好ましくは−20℃〜20℃)程度の溶媒が
含まれる。なお、水などの第3成分は、塩類(水酸化ナ
トリウム,塩化ナトリウムなど)などを含んでいてもよ
い。第3成分として、水(又は氷)を用いると、取扱
性,安全性および経済性が高く、再利用も容易であり、
工業的に有利である。
【0022】前記高分子、溶媒および第3成分の組み合
わせは、高分子を溶解可能な溶媒と、この溶媒と相溶又
は混和し、かつ溶媒の有する高分子の溶解力を低下させ
る第3成分(固形沈殿剤)との組合わせであれば特に限
定されない。いくつかの高分子についてより具体的に例
示すると、高分子がスチレン系樹脂(ポリスチレンな
ど)である場合、溶媒としては、例えば、エーテル類
(THF、ジオキサンなど)、炭化水素類(ベンゼンな
ど)、エステル類(酢酸エチルなど)、ケトン類(シク
ロヘキサノンなど)などが使用でき、第3成分として
は、例えば、有機カルボン酸類(氷酢酸など)、水、高
級アルコールなどが使用できる。特に、溶媒としてのT
HFと、第3成分としての水との組み合わせが好まし
い。
【0023】高分子がセルロースエステル類(セルロー
スアセテートなど)である場合、溶媒としては、例え
ば、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサ
ン,THFなど)、ハロゲン化炭化水素やアルコール類
(ジクロロメタン/エタノール混合溶媒など)などが使
用でき、第3成分としては、水、有機カルボン酸類(氷
酢酸など)などが使用できる。好ましい組合わせには、
溶媒としてのアセトンと、第3成分としての水との組合
わせが含まれる。
【0024】高分子がポリカーボネート系樹脂である場
合、溶媒としては、例えば、エーテル類(ジオキサン、
THF)、炭化水素類(ベンゼンなど)、スルホキシド
類(DMFなど)が使用でき、第3成分としては、例え
ば、水、高級アルコールなどが使用できる。好ましい組
合わせは、溶媒:ジオキサンと、第3成分:水の組合わ
せである。さらに、未修飾のセルロースについて、溶媒
としてジメチルアセトアミド−リチウムクロライド(DM
AC-LiCl)を用いる場合、第3成分としては水などが利
用できる。
【0025】第3成分は、必要により粉砕した後、粉粒
体として高分子溶液に混合される。粉粒状第3成分の大
きさは、多孔質体の気孔径などに応じて選択でき、第3
成分の粒子サイズが大きくなるほど、多孔質体の気孔径
も大きくなる。第3成分の粒子サイズは、例えば、1μ
m〜5mm(好ましくは10μm〜1mm)程度の範囲
から適当に選択できる。
【0026】第3成分の添加量は、特に限定されず、所
望する気孔率などに応じて選択できる。第3成分の使用
量は、通常、前記高分子10重量部に対して1〜500
重量部(例えば、5〜500)、好ましくは10〜40
0重量部、さらに好ましくは50〜300重量部(例え
ば、100〜300倍)程度である。
【0027】第3成分の添加混合に際して、多孔質体中
に均一に気孔を形成するためには、第3成分を高分子溶
液中に均一に分散するのが好ましい。高分子溶液に第3
成分を混合分散する方法は、特に限定されず、例えば、
バッチ内で高分子溶液と第3成分を撹拌羽根で撹拌する
方法、容器の底に高速回転可能なスクリューを備えた混
合機などを用いて混合できる。通常、ミキサーと称され
る混合機を用いることができる。押出機などのように、
連続して混合分散可能な装置は、生産性を高める点から
特に好ましい。
【0028】なお、高分子溶液と第3成分との混合物に
は、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、安定化剤
(酸化防止剤,紫外線吸収剤など),可塑剤,難燃剤,
帯電防止剤,着色剤,フィラー(天然繊維、人工繊維、
パルプなどの繊維状フィラーなど)を添加し、多孔質体
の性質を改良してもよい。
【0029】所望の形状に成形された多孔質体を得る場
合、例えば、高分子溶液に第3成分を混合した後、混合
物を成形型(金型)に流し込み、所定形状に成形しても
よい。成形に際しては、前記混合物が十分固化しない内
に、圧力や熱を加えて所望の形状に成形(加圧成形)す
ることも可能である。
【0030】前記混合又は成形工程において、第3成分
は拡散又は消失することなく粉粒状に保持する必要があ
る。そのため、混合又は成形工程の温度は、通常、第3
成分の融点未満の温度である。
【0031】成形体の加熱又は放置により第3成分が拡
散又は消失して高分子が不溶化し、多孔質体が得られ
る。加熱温度は第3成分の種類に応じて選択でき、第3
成分の融点をTm(℃)とするとき、例えば、Tm〜
(Tm+60)、好ましくは(Tm+10)〜(Tm+
50)程度である。また、放置時間は、第3成分が溶媒
に溶解,相溶又は混和して消失するのに十分な時間であ
る限り、特に制限されない。放置に際しては、必要によ
り、成形体を加熱してもよい。
【0032】溶媒と第3成分が残存する多孔質体はその
まま使用してもよく、残存する溶媒と第3成分を、必要
に応じて、例えば、デカンテーション、ろ過、洗浄、蒸
発乾固などの方法で除去して多孔質体として使用でき
る。使用した溶媒や第3成分は、必要により回収して再
利用できる。本発明の方法では、従来法よりも低エネル
ギーで生産可能であり、使用した溶媒も再利用可能であ
る。そのため、多孔質体の生産コストを抑制でき、経済
的に有利である。このようにして得られた多孔質体の密
度は用途に応じて選択でき、例えば、0.01〜0.5
g/cm3 、好ましくは0.01〜0.1g/cm3
度である。また、多孔質体の平均孔径は、例えば、10
〜5000μm、特に50〜1000μm程度であって
もよい。
【0033】本発明の方法で得られた多孔質体の気孔
は、通常、連通孔であるため、微生物の培養体として使
用できる。また、水中,その他の溶液中の不要物の吸着
にも利用でき、さらに独立気泡発泡体よりも吸水性,吸
油性に優れているため、海水中の油の回収などのよう
に、環境保全材料としても利用できる。さらに、断熱
材、エアフィルターのような不織布の代替としての使用
が期待される。特にセルロースアセテートを用いた多孔
質体は、適度な吸湿性、通気性、低燃焼エネルギーなど
の観点から、住宅用断熱材、吸音材などとしても有用で
ある。
【0034】
【発明の効果】本発明の方法は、溶媒に可溶な多くの高
分子に適用可能であり、種々の高分子多孔質体、例え
ば、加熱発泡では着色や分解が生じる高分子について
も、多孔質体を円滑に製造できる。また、第3成分によ
り、多孔質体の気孔径を容易に制御できるとともに連続
性の高い連続気泡型多孔質体を、低エネルギーコストで
容易に形成できる。さらに、溶液の形態で生産される高
分子については、一旦固体化することなく、多孔質体を
直接得ることができる。
【0035】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定され
るものではない。 実施例1 置換度2.1の酢酸セルロース10gをアセトン90g
に溶解した。この溶液を−20℃まで冷却した後、微粉
砕した−20℃の氷250gと、ステンレス製容器内で
混練した。混練後、混合物を圧縮成形した。圧縮成形体
を30℃に加熱した後、アセトン/水混合液を除去し、
生成物を熱風乾燥することにより、平均孔径300μm
の円筒状多孔質体(密度0.03g/cm3)を得た。な
お、多孔質体の孔径は光学顕微鏡で観察して測定した。
【0036】実施例2 置換度2.5の酢酸セルロースを、酢酸/アセトン=9
0/10(重量比)混合溶液に溶解し、15重量%酢酸
セルロース溶液100gを調製した。この溶液を−20
℃まで冷却し、同じく−20℃まで冷却した氷250g
とミキサーを用いて混練した。混練物をプレスし、加温
(30℃)した後、酢酸/アセトン/水混合液を除去し
た。熱風乾燥後、多孔質シート(密度0.05g/c
3)を得た。
【0037】実施例3 ポリスチレン100gをTHF400gに溶解し、−2
0℃に冷却した。この溶液に、−10℃のデシルアルコ
ールの微粉砕固体200gを添加して混合し、40℃で
加熱して、液分を除去することにより、多孔質体(密度
0.05g/cm3)を得た。
【0038】実施例4 セルロース100gを、ジメチルアセトアミド−リチウ
ムクロライド(DMAC-LiCl)に溶解し、12重量%溶液
を調製した。この溶液に、微粉砕した氷500gを加え
混合した後、30℃で加熱し、混合溶液を除去し、固形
分を熱風乾燥することにより、多孔質体(密度0.02
g/cm3)を得た。
【0039】比較例1 溶融温度と分解温度の差が小さなセルロースアセテート
を溶融発泡させると、分解に伴う着色がみられた。
【0040】比較例2 ポリスチレンのTHF溶液に、貧溶媒として水又は酢酸
を添加したところ、再沈殿が生成し、粉体やフィルム状
となり、多孔質体は得られなかった。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高分子の溶媒溶液に、融解,溶解又は気
    化可能な第3成分を実質的に固体の状態で添加し、前記
    第3成分を拡散させて高分子を不溶化させる高分子多孔
    質体の製造方法。
  2. 【請求項2】 第3成分が、(1)高分子に対する非溶
    媒であって、高分子溶液の溶媒に対して混合可能な成分
    であり、第3成分の融点未満の温度で、高分子の溶媒溶
    液と第3成分とを混合した後、第3成分の融点以上の温
    度に加熱する請求項1記載の高分子多孔質体の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 第3成分が、(2)溶液中の高分子に対
    して沈殿剤として機能するとともに、高分子溶液の溶媒
    に対して相溶又は溶解可能な無機塩又はその水和物、
    (3)溶液中の高分子に対して沈殿剤として機能すると
    ともに、高分子溶液の溶媒に対して相溶又は混和可能な
    溶媒を含むゲルである請求項1記載の高分子多孔質体の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 第3成分が、常温で液体であり、かつ冷
    却により固化可能な成分である請求項1記載の高分子多
    孔質体の製造方法。
  5. 【請求項5】 第3成分が、水,脂肪族アルコール類、
    有機カルボン酸類から選択された少なくとも一種である
    請求項1記載の高分子多孔質体の製造方法。
  6. 【請求項6】 (a)酢酸ビニル系樹脂、ビニルアルコ
    ール系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹
    脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネー
    ト系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セ
    ルロースエステル類から選択された少なくとも一種の高
    分子と、(b)炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ア
    ルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アミ
    ド類、スルホキシド類、ニトリル類から選択された良溶
    媒との溶液に、(c)水、脂肪族アルコール、有機カル
    ボン酸類から選択され、かつ冷却により固化可能な第3
    成分の粉粒体を、第3成分の融点未満の温度で混合した
    後、第3成分の融点以上の温度に加熱する請求項1記載
    の高分子多孔質体の製造方法。
  7. 【請求項7】 高分子溶液と第3成分とを温度Tfで混
    合又は成形するとき、高分子溶液の溶媒が、温度Tfで
    液体である請求項1記載の高分子多孔質体の製造方法。
  8. 【請求項8】 第3成分の使用量が、高分子10重量部
    に対して1〜500重量である請求項1記載の高分子多
    孔質体の製造方法。
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