JPH11121232A - 軟磁性膜とこの軟磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッド、平面型磁気素子、およびフィルタ - Google Patents

軟磁性膜とこの軟磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッド、平面型磁気素子、およびフィルタ

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JPH11121232A
JPH11121232A JP29364597A JP29364597A JPH11121232A JP H11121232 A JPH11121232 A JP H11121232A JP 29364597 A JP29364597 A JP 29364597A JP 29364597 A JP29364597 A JP 29364597A JP H11121232 A JPH11121232 A JP H11121232A
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magnetic film
magnetic
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JP29364597A
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English (en)
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Teruhiro Makino
彰宏 牧野
Takashi Hatauchi
隆史 畑内
Yoshito Sasaki
義人 佐々木
Kiyoto Yamazawa
清人 山沢
Toshiro Sato
敏郎 佐藤
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Alps Alpine Co Ltd
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Alps Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来、薄膜磁気ヘッドのコア層はNiFe系
合金などで形成されていたが、NiFe系合金は比抵抗
が低いため、高周波数帯域では渦電流損失が増大すると
いった問題が生じていた。また、特開平6―31674
8号公報には、比抵抗の高い軟磁性膜としてFe―M―
O膜が提示されているが、この軟磁性膜では優れた比抵
抗の周波数特性を得られないという問題があった。 【解決手段】 膜構造が、微結晶質相とアモルファス相
とから成り、アモルファス相のみならず微結晶相にもO
(酸素)が固溶しているCo―M―T―O膜をコア層
1,6として使用することにより、高比抵抗と優れた周
波数特性を得ることができるので、コア層1,6のコア
機能を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば薄膜磁気ヘ
ッドのコア層に用いられる軟磁性膜に係り、特に高周波
特性に優れた軟磁性膜とこの軟磁性膜を用いた薄膜磁気
ヘッド、平面型磁気素子(トランス、インダクタ)、お
よびフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】薄膜磁気ヘッドの書込みヘッド、いわゆ
るインダクティブヘッドは、磁性材料の下部コア層に磁
気ギャップを介して上部コア層が対向し、上下コア層の
間にコイル層が介在した構造となっている。前記コイル
層に記録電流が流されると、コイル層から上下コア層に
記録磁界が与えられ、前記磁気ギャップの部分におけ
る、上下コア層間での洩れ磁界により、ハードディスク
などの記録媒体に磁気信号が記録される。ところで従来
では、前記上部コア層および下部コア層には、NiFe
系合金が使用されていた。
【0003】しかし、NiFe系合金は、飽和磁束密度
が比較的高いものの、比抵抗が非常に小さいという問題
点があった。このため、高周波数帯域にて渦電流による
熱損失が増大し、さらに渦電流損失により、透磁率が低
下するなどの問題が生じていた。またインダクタ、トラ
ンス、およびフィルタにおいても、NiFe系合金は、
同様の問題を有しており、これら問題の解決が求められ
ていた。
【0004】そこで本発明者らは、特開平6―3167
48号公報により、高い比抵抗を有する軟磁性膜とし
て、Fe―M―O(ただしMは希土類元素のうち少なく
とも1種以上の元素)合金を提示している。この軟磁性
膜によれば、少なくとも400μΩ・cm以上の比抵抗
が得られ、このために高周波数帯域での渦電流損失が少
なく、高周波数帯域において高い透磁率が得られるとし
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは今回、F
e―M―O系合金の一例として、Fe61Hf1326膜に
おける周波数と透磁率との関係について調べた。その実
験結果を図14に示す。実験は、Fe61Hf1326膜を
成膜し、160kA/mの静磁界中で673K×3hr
の熱処理を施した後、実効透磁率(μ′)と虚数部にお
ける透磁率(μ″)とを測定した。なお、熱処理後にお
けるFe61Hf1326膜の飽和磁化(Is)は1.3
T、比抵抗ρは630μΩ・cmであった。図14に示
すように、実効透磁率μ′は約500MHzまで、70
0程度の高い値を示しているが、周波数が500MHz
以上になると、前記実効透磁率μ′は低下し始めること
がわかる。
【0006】また、図14に示すように、虚数部におけ
る透磁率μ″は、100MHz付近から値が高くなり始
め、周波数が600〜700MHz程度になると、前記
虚数部における透磁率μ″は、前記実効透磁率μ′を上
回ってしまう。つまり(実効透磁率μ′/虚数部の透磁
率μ″)で表わされる、いわゆる性能係数Qは1を下回
り、損失が増大するといった問題が発生する。また図1
4に示すように、虚数部の透磁率μ″の曲線は、計算に
より算出された虚数部の透磁率μ″(Calc)の曲線
と大きく異なった曲線を描くことがわかった。なお、計
算による虚数部の透磁率μ″(Calc)は、比抵抗を
630μΩ・cmとして算出したものである。
【0007】次に、本発明者らは、Fe61Hf1326
を用いて、Fe61Hf1326膜における周波数と比抵抗
との関係について調べた。その実験結果を図15に示
す。なお比抵抗の実験は、1日目から6日目までの計6
回行われた。図15に示すように、周波数が10MHz
程度までは、比抵抗ρはあまり低下していないが、周波
数が10MHz以上になると、前記比抵抗は急激に低下
していることがわかる。このようにFe―M―O系合金
では、周波数が約10MHz以下であれば、ほぼ一定の
高い比抵抗を示すが、高周波数帯域になるほど、前記比
抵抗は急激に低下し、Fe―M―O系合金では優れた周
波数特性を得ることができない。
【0008】以上の実験結果により、図14に示す虚数
部の透磁率μ″の曲線と、計算による虚数部の透磁率
μ″(Calc)の曲線とが一致しないのは、比抵抗の
周波数特性の低下が一因であると推測することができ
る。つまり、図14に示す計算による虚数部の透磁率
μ″(Calc)は、比抵抗を630μΩ・cmと統一
して計算しているが、図15に示すように、実際には、
前記比抵抗は一定の値を示さず、高周波数帯域になるほ
ど、前記比抵抗は低下してしまう。従って、実験による
虚数部の透磁率μ″では、高周波数帯域になるほど比抵
抗の低下により損失が増大し、前記虚数部の透磁率μ″
の曲線と、比抵抗を一定の値として計算した虚数部の透
磁率μ″(Calc)の曲線とは全く異なった曲線を描
いてしまうものと思われる。
【0009】本発明は、上記問題を解決するためのもの
であり、高周波数帯域において一定の高い比抵抗を有
し、且つ優れた性能係数Q(Q=実効透磁率μ′/虚数
部における透磁率μ″)を有する軟磁性膜を提供するこ
とと、この軟磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッド、インダク
タ、トランス、およびフィルタを提供することを目的と
している。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明における軟磁性膜
は、主成分のCoと、Fe,Niのうちいずれか一方、
あるいは両方を含む元素Tと、Ti,Zr,Hf,N
b,Ta,Cr,Mo,Si,P,C,W,B,Al,
Ga,Geと希土類元素から選ばれる1種または2種以
上の元素MとOとを主に含有し、膜構造としては、元素
Mの酸化物を多量に含むアモルファス相に、Coと元素
Tとを主体とする微結晶相が混在しており、さらに前記
微結晶相には、元素Mの酸化物を含んでいることを特徴
とするものである。
【0011】本発明では、前記微結晶相の結晶構造は、
bcc構造、hcp構造、fcc構造のうち1種あるい
は2種以上の混成構造から成ることが好ましく、より好
ましくは、前記微結晶相の結晶構造が、主にbcc構造
から成ることである。
【0012】また、前記微結晶質相の平均結晶粒径は、
30nm以下であることが好ましい。
【0013】本発明では、前記軟磁性膜が下記の組成で
形成されている。 (Co1-ccxyzw ただし、TはFe,Niのうちどちらか一方あるいは両
方を含む元素であり、Mは、Ti,Zr,Hf,Nb,
Ta,Cr,Mo,Si,P,C,W,B,Al,G
a,Geと希土類元素から選ばれる1種または2種以上
の元素であり、Xは、Au,Ag,Cu,Ru,Rh,
Os,Ir,Pt,Pdから選ばれる1種あるいは2種
以上の元素であり、組成比を示すcは、0≦c≦0.
7、x,y,z,wはat%で、3≦y≦30、7≦z
≦40、0≦w≦20、20≦y+z+w≦60の関係
を満足し、残部はxである。
【0014】また本発明では、前記軟磁性膜の組成比を
示すcは、0≦c≦0.3、x,y,z,wはat%
で、7≦y≦15、20≦z≦35、0≦w≦19、3
0≦x+y+z≦50の関係を満足し、残部はxである
ことがより好ましい。
【0015】また本発明では、前記元素TはFeである
ことが好ましく、この場合、CoとFeの濃度比は、
0.3≦{Co/(Co+Fe)}≦0.8であること
がより好ましい。
【0016】また本発明では、前記軟磁性膜を構成する
一元素として、Oの代わりにNが、あるいはOと共にN
が用いられてもよい。なおこのときのNの組成比、ある
いはO+Nの組成比は、Oの場合と同じ7〜40at%
であり、より好ましくは、20〜35at%である。
【0017】以上詳述した本発明における前記軟磁性膜
の比抵抗は、1000〜3000μΩ・cmである。
【0018】また本発明は、少なくとも下部コア層と、
記録媒体との対向部で前記下部コア層と磁気ギャップを
介して対向する上部コア層と、両コア層に磁界を与える
コイル層とを有する薄膜磁気ヘッドにおいて、前記下部
コア層と上部コア層のうち少なくとも一方は、請求項1
ないし請求項10のいずれかに記載された軟磁性膜によ
り形成されていることを特徴とするものである。
【0019】さらに本発明は、前述した軟磁性膜により
平面型磁気素子、およびフィルタの磁心が形成されてい
ることを特徴とするものである。
【0020】前述したように、特開平9―316748
号公報には、高い比抵抗(400μΩ・cm以上)を有
する軟磁性材料としてFe―M―O(M=希土類のうち
少なくとも1種以上)膜が提示されているが、この軟磁
性膜では、高周波数帯域における性能係数Q(Q=実効
透磁率μ′/虚数部における透磁率μ″)が小さく、ま
た図14に示すように、実験による虚数部の透磁率μ″
の曲線と、計算による虚数部の透磁率μ″(Calc)
の曲線とが、一致しないという問題があった。
【0021】ところで、虚数部の透磁率μ″を計算によ
って導き出すには、比抵抗の値が必要なので、図14に
示す透磁率μ″(Calc)は比抵抗を630μΩ・c
mとして計算しているが、Fe611326膜の比抵抗を
調べてみたところ、図15に示すように前記比抵抗は、
周波数が高くなるにつれて急激に低下することがわかっ
た。
【0022】このように、Fe―M―O膜の比抵抗は、
従来のNiFe系合金などの比抵抗に比べて高い値を示
すものの、その周波数特性は悪く、また透磁率において
も数百MHz以上になると、性能係数Qが1を下回り、
損失が増大するといった問題があった。
【0023】これに対し本発明における軟磁性膜は、F
e―M―O膜よりも高い比抵抗、具体的には1000μ
Ω・cm以上の比抵抗を有し、しかも周波数特性が良好
である。また透磁率においても、GHz帯域まで実効透
磁率(μ′)は一定の値を有し、且つ虚数部の透磁率
μ″は低く抑えられており、損失が小さいものとなって
いる。
【0024】以下本発明における軟磁性膜の特徴につい
て説明する。本発明における軟磁性膜は、主成分のCo
と、Fe,Niのうちいずれか一方、あるいは両方から
成る元素Tと、Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Cr,
Mo,Si,P,C,W,B,Al,Ga,Geと希土
類元素から選ばれる1種または2種以上の元素MとOと
を主に含有するものである。
【0025】本発明における軟磁性膜の具体的な組成式
は、(Co1-ccxyzwで表わされる。ただし、
Xは、Au,Ag,Pt,Pd,Cu,Ru,Rh,O
s,Irのうち1種あるいは2種以上の元素であり、組
成比x,y,z,wはat%である。
【0026】前記軟磁性膜において、Coと元素Tは主
成分であり、Coと元素T(Fe,Ni)は強磁性を示
す元素である。従ってこれらCo,Ni,Feは磁性を
担う元素である。特に高飽和磁束密度を得るためには、
CoとFeの含有量は多いほど好ましいが、CoとFe
の含有量を少なくし過ぎると飽和磁束密度が小さくなっ
てしまう。また、Coは、一軸磁気異方性を大きくする
作用がある。
【0027】Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Cr,M
o,Si,P,C,W,B,Al,Ga,Geと希土類
元素から選ばれる1種または2種以上の元素MとOとを
主に含有するものである元素Mは、軟磁気特性と高抵抗
を両立するために必要なものである。これらは酸素と結
合し易く、結合することで酸化物を形成する。例えば、
元素MとしてHfが使用される場合、HfはOとHfO
2となって酸化物を形成する。
【0028】また、元素Mの酸化物の含有量を調整する
ことにより、比抵抗を高めることができる。Au,A
g,Pt,Pd,Cu,Ru,Rh,Os,Irのうち
1種あるいは2種以上の元素である元素Xは、本発明に
おける軟磁性膜の耐食性、および周波数特性を向上させ
るが、その含有量が20at%(原子%)を越えると軟
磁気特性、特に飽和磁化が低下しすぎて好ましくない。
【0029】本発明では良好な軟磁気特性を確保しつつ
高い飽和磁束密度を維持するためには、cは、0≦c≦
0.7、x,y,z,wはat%で、3≦y≦30、7
≦z≦40、0≦w≦20、20≦y+z+w≦60の
関係を満足することが好ましい。さらに良好な軟磁気特
性と高い飽和磁束密度を確実に得るためには、at%で
5≦y≦20、10≦z≦30の範囲とすることがより
好ましい。cは、0≦c≦0.3、x,y,z,wはa
t%で、7≦y≦15、20≦z≦35、0≦w≦1
9、30≦x+y+z≦50の関係を満足することがよ
り好ましい。
【0030】次に、実験に基づいて本発明における軟磁
性膜の膜構造、および結晶構造等について説明する。図
5には、種々のCo、Feの組成比におけるCo―Fe
―Hf―O膜の、成膜直後(as―depo)の状態で
のX線回折像が示されている。なお図中には100MH
zにおける実効透磁率μ′の値も併せて記載した。図中
Fe55Hf1134は比較例である。
【0031】Fe55Hf1134には、bcc(110)
の小さいピークと、2θ=47°付近にアモルファスを
示すハローが観察され、bcc相とアモルファス相とか
らなることがわかる。これにCoを加えていくと、bc
c(110)の回折線は徐々にブロードになり、hcp
相を示すブロードな回折線が現れる。Feを全てCoで
置換したCo65Hf1223では、hcp相からの微小な
回折線とハローが現れており、この試料は微細な結晶粒
径を有するhcp相とアモルファス相とから成ると推察
される。
【0032】次に、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1
る組成の膜を成膜して、成膜直後における前記軟磁性膜
の高分解TEM(Transmission Elec
tron Microscopy)像と電子線回折像を
写し、さらにEDX(Energy Dispersi
ve X―ray Spectroscopy)によ
り、微小領域の組成分析を行った。図6は、高分解TE
M像写真、図7は、図6に示す高分解TEM像写真の一
部分を模式図で示した図、図8,9は、EDXによる微
細領域の組成分析結果である。なお図7に示す番号1の
部分の組成分析結果を図8に、図7に示す番号2の部分
の組成分析結果を図9に示す。
【0033】また、比較例として、Fe55Hf1134
の高分解TEM像およびEDXによる組成分析結果を図
10から図13に示す。なお、図11に示す番号1の部
分の組成分析結果を図12に、図11に示す番号2の部
分の組成分析結果を図13に示す。
【0034】Co44.3Fe19.1Hf14.522.1膜の高分
解TEM像写真の模式図である図7の番号1の部分およ
びFe55Hf1134膜の高分解TEM像写真の模式図で
ある図11の番号1の部分を、電子線回折像で見てみる
と、スポットパターンが現れていることがわかった。こ
のため高分解TEM像の番号1における部分は微結晶相
であることがわかる。なおこの微結晶相の結晶構造は、
図5を参照すると、bcc(体心立方構造)構造を主体
とするものであることがわかる。
【0035】一方、この微結晶相の回りを取り囲む図7
および図11に示す番号2の部分を、電子線回折像で見
てみると、ハロー(リングパターン)が現れていること
がわかった。このため高分解TEM像の番号2における
部分はアモルファス相であることがわかる。
【0036】つまり、本発明におけるCo44.3Fe19.1
Hf14.522.1膜、および比較例としてのFe55Hf11
34膜共に、bcc構造を主体とした微結晶相を、アモ
ルファス相が取り囲んでいる膜構造を有しているものと
推察される。
【0037】ところが、図8,9および図12,13に
示すEDXによる組成分析結果を見てみると、Co
454.3Fe19.1Hf14.522.1膜とFe55Hf1134
とでは、特に各膜の微結晶相(図8および図12に示す
組成分析結果)に含まれるHfおよびOの量が大きく異
なっていることがわかる。
【0038】図8に示すCo44.3Fe19.1Hf14.5
22.1膜の微結晶相の組成分析結果を見ると、前記微結晶
相にはFeとCo以外にHfとOが多く含まれているこ
とがわかる。つまり、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1
膜の微結晶相には、金属のFeやCo以外に、Hfの酸
化物や酸素を多量に含んでいるものと推測され、従って
前記微結晶相は、金属的な性質よりむしろ半導体的な性
質を帯びているものと考えられる。
【0039】これに対し、図12に示すFe55Hf11
34膜の微結晶相には、Fe以外にHfやOがあまり含ま
れておらず、従って前記微結晶相は金属的な性質を帯び
ているものと推測される。
【0040】また、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1
の微結晶相、およびFe55Hf1134膜の微結晶相を取
り囲むアモルファス相には、図9および図13の組成分
析結果から見てわかるように、HfとOが多量に含まれ
ており、従って前記アモルファス相は、Hfの酸化物が
主体となって形成されているものと推測される。
【0041】ところで、本発明における軟磁性膜の比抵
抗は、1000μΩ・cm以上と非常に高い値を有して
いるのに対し、Fe―M―O膜の比抵抗は、400μΩ
・cm程度から高くても1000μΩ・cm程度であ
り、本発明における軟磁性膜とFe―M―O膜の比抵抗
とでは、大きく異なった値を示しているが、これは、前
述した微結晶相の構造の相違が一因であるものと推測さ
れる。
【0042】前述したように、本発明におけるCo44.3
Fe19.1Hf14.522.1膜の微結晶相には、HfやOが
多量に固溶しているため、前記微結晶相は半導体的な性
質を有しており、比抵抗が比較的高くなっているものと
考えられる。
【0043】つまり、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1
膜は、比較的高い比抵抗を有する微結晶相を、主にHf
の酸化物で形成されている比抵抗の高いアモルファス相
が取り囲んでいる膜構造を有しており、膜全体が高い比
抵抗を有するものとなっている。
【0044】これに対し、比較例としてのFe55Hf11
34膜の微結晶相は、大部分がFeで形成されているた
め、前記微結晶相は金属的な性質を有しており、従って
比抵抗は低くなっているものと推測される。
【0045】つまり、Fe55Hf1134膜は、比抵抗の
低い微結晶相を、比抵抗の高いアモルファス相が取り囲
んでいる膜構造を有しており、従って膜全体が高い比抵
抗を有しているのではなく、膜の所々に比抵抗の低い部
分(微結晶相)が混在した状態となっている。
【0046】以上のように、本発明における軟磁性膜
は、膜全体に酸素がを含んでいるため、アモルファス相
のみならず微結晶相の比抵抗も高くなっており、従って
Fe―M―O膜に比べて高い比抵抗を有しているものと
考えられる。
【0047】また、本発明におけるCo44.3Fe19.1
14.522.1膜では、HfとOとの割合が(Hf:O)
=(1:1.6)であるのに対し、比較例としてのFe
55Hf1134膜では、(Hf:O)=(1:3.1)と
なっており、Fe55Hf1134膜の方が、Hfに対する
Oの割合が高くなっている。
【0048】HfはOと結び付いて、HfO2という酸
化物になりやすいが、Fe55Hf1134膜では、Hfと
Oとの割合が1:2以上であり、Oが過飽和の状態にあ
る。にもかかわらず、Fe55Hf1134膜の比抵抗が、
Co44.3Fe19.1Hf14.522.1膜の比抵抗よりも低く
なるのは、Fe55Hf1134膜の微結晶相にはOがほと
んど固溶しておらず、前記微結晶相の比抵抗が低くなっ
ているからであると考えられる。
【0049】また比較例としてのFe55Hf1134膜で
は、図15に示すように、比抵抗の周波数特性が非常に
悪くなっている。これは前述した比抵抗の低い微結晶相
に原因があるものと推測される。
【0050】図15に示すように周波数が高くなるにつ
れて、比抵抗が低下しているが、これは、周波数が高く
なると、粒界部分の静電容量による変位電流のため、粒
界のインピーダンスが低下するためであり、酸素が粒界
に局在し易いFe―Hf―O膜の場合に特有の現象であ
る。すなわち、直流および低い周波数では、粒界静電容
量の効果はないため、比抵抗の低い金属性微結晶と比抵
抗の高い半導体性粒界が等価的に直列接続された状態と
なっており全体として高い比抵抗を示すが、周波数が高
くなると、粒界静電容量による変位電流が優勢となっ
て、比抵抗が低下していく。この現象は、Fe―Hf―
O膜のみに見られるわけではなく、多結晶フェライトに
おいても良く見られる。これらの現象が起こるための構
造上の共通な点は、低い比抵抗を持つ粒(結晶質、非晶
質にかかわらず)の周りを高抵抗の粒界(絶縁性、半導
体性)が取り囲むような、ある程度明確な相分離構造を
持つことである。
【0051】これらに対し、本発明で提案されるような
軟磁性膜は、結晶粒のサイズが前記Fe―Hf―O膜の
場合よりも更に微細であり、結晶粒内にも相当量の酸素
を含むので、酸素原子の局在化は顕著でなく、ほぼ均一
に膜中に存在する。従って、酸素が粒界に局在して相分
離するような場合に比べて、高周波での粒界効果は少な
いと考えられる。実際に、このような微構造を有するC
o―Fe―Hf―O膜に対して測定された比抵抗は高周
波においても低下しないことが確認されている。
【0052】このように本発明によれば、Fe―M―O
膜よりも高い比抵抗を有し、且つ周波数特性に優れた軟
磁性膜を得ることが可能である。
【0053】また本発明の軟磁性膜は、Coを含有して
いるので、前記軟磁性膜の一軸異方性は、Fe―M―O
膜の一軸異方性よりも数倍大きくなっており、従って、
本発明における軟磁性膜の透磁率の周波数特性は、非常
に良好なものとなっている。
【0054】また本発明の軟磁性膜はCoを含有してい
ることで、Fe―M―O膜に比べて飽和磁化(Is)が
若干低下するが、それでも本発明における軟磁性膜では
1.0(T:テスラ)以上の飽和磁化を得ることが可能
である。
【0055】以上、詳述した本発明における軟磁性膜
を、高周波対応の例えば薄膜磁気ヘッド、平面型磁気素
子(トランス、インダクタ)、フィルタなどに使用すれ
ば、高周波数帯域での損失の少ない特性の優れたものを
製造することができる。
【0056】
【発明の実施の形態】図1は本発明の薄膜磁気ヘッドの
縦断面図である。図1に示す薄膜磁気ヘッドは、ハード
ディスクなどの記録媒体へ信号を書き込むインダクティ
ブヘッドである。このインダクティブヘッドは、ハード
ディスクなどの記録媒体に対向する浮上式磁気ヘッドの
スライダのトレーリング側端面に設けられているもので
ある。またより高密度な記録に対応するために、磁気抵
抗効果を利用した読み出しヘッドにインダクティブヘッ
ドが積層されていてもよい。
【0057】図1に示す符号1は、軟磁性材料で形成さ
れた下部コア層であり、この下部コア層1の上に、Al
23(アルミナ)などの非磁性材料で形成されたギャッ
プ層2が設けられている。ギャップ層2の上にはレジス
ト材料やその他の有機材料で形成された絶縁層3が形成
されている。前記絶縁層3上には、Cuなどの電気抵抗
の低い導電性材料により、コイル層4が螺旋状に形成さ
れている。なお、コイル層4は、後述する上部コア層6
の基端部6bの周囲を周回するように形成されている
が、図1ではそのコイル層4の一部のみが現れている。
【0058】そして、コイル層4上には、有機樹脂材料
などの絶縁層5が形成されている。絶縁層5の上には、
磁性材料製の上部コア層6が形成されている。上部コア
層6の先端部6aは、記録媒体との対向部において、下
部コア層1上に前記ギャップ層2を介して接合され、ギ
ャップ長Glの磁気ギャップが形成されている。また上
部コア層6の基端部6bは、ギャップ層2および絶縁層
3に形成された穴を介して、下部コア層1に磁気的に接
続されている。
【0059】書き込み用のインダクティブヘッドでは、
コイル層4に記録電流が与えられると、下部コア層1お
よび上部コア層6に記録磁界が誘導され、下部コア層1
と上部コア層6の先端部6aとの磁気ギャップ部分から
の洩れ磁界により、ハードディスクなどの記録媒体に磁
気信号が記録される。また読み込みをする場合は、記録
媒体に記録された磁気記録からの漏れ磁界を磁気ギャッ
プの部分により拾い出し、コイル層4により電気信号に
変換し出力を取り出す。
【0060】本発明では、前記下部コア層1と上部コア
層6のうち少なくとも一方が、(Co1-ccxyz
wから成る軟磁性膜により形成されている。ただし、
TはFe,Niのうちいずれか一方あるいは両方を含む
元素であり、Mは、Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,C
r,Mo,Si,P,C,W,B,Al,Ga,Geと
希土類元素から選ばれる1種または2種以上の元素であ
り、Xは、Au,Ag,Pt,Pd,Cu,Ru,R
h,Os,Irから選ばれる1種あるいは2種以上の元
素であり、組成比を示すcは、0≦c≦0.7、x,
y,z,wはat%で、3≦y≦30、7≦z≦40、
0≦w≦20、20≦y+z+w≦60の関係を満足
し、残部はxである。
【0061】より好ましくは、前記軟磁性膜の組成比を
示すcは、0≦c≦0.3、x,y,z,wはat%
で、7≦y≦15、20≦z≦35、0≦w≦19、3
0≦x+y+z≦50の関係を満足し、残部はxであ
る。なお本発明では前記元素TがFeであることが好ま
しく、この場合、CoとFeとの割合{Co/(Co+
Fe)}が0.3〜0.8であることがより好ましい。
元素TをFeとして、CoとFeとの割合を0.3≦
{Co/(Co+Fe)}≦0.8とすることで、より
優れた軟磁気特性および周波数特性を得ることができ
る。さらに好ましくはCoとFeとの割合を7:3とす
ると良い。
【0062】また、本発明における軟磁性膜の組成を構
成する一元素として、O(酸素)に代えてN(窒素)を
用いてもよいし、あるいはOとNとを添加してもよい。
また本発明における軟磁性膜は、アモルファス相に微結
晶相が混在した膜構造を有するものであるが、前記微結
晶相には、Coや元素Tの他に、元素Mの酸化物やある
いは酸素を多量に含んでおり、従って前記微結晶相の比
抵抗は比較的高い値を有していると推測される。またこ
の微結晶相の結晶構造としては、bcc構造(体心立方
構造)、fcc構造(面心立方構造)、hcp構造(稠
密六方構造)のうちいずれであってもよいが、より好ま
しくは結晶構造の大半がbcc構造で形成されることで
ある。
【0063】図5に示すように、Coの濃度が増加する
と、hcp構造が主体となっていき、逆にCoの濃度が
減少して、Fe(元素T)の濃度が増加すると、bcc
構造が主体となっていくのがわかる。前述したように、
本発明では元素TをFeとして、CoとFeとの割合を
7:3とすることがより好ましいが、図5に示すCo
44.3Fe19.1Hf14.522.1(CoとFeの割合が7:
3)の結晶構造を見てみると、微結晶相の大半がbcc
構造となっていることがわかる。
【0064】なお前記微結晶相の平均結晶粒径は30n
m以下であることが好ましい。図6に示す高分解TEM
写真の模式図である図7を見ると、微結晶相(番号1の
部分)の結晶粒径は、30nm以下となっていることが
わかる。また前記微結晶相を取り囲むアモルファス相
は、主にHfの酸化物により形成されているため、前記
アモルファス相の比抵抗は、高い値を有したものとなっ
ている。
【0065】このように、本発明における軟磁性膜は、
アモルファス相に微結晶相が混在した膜構造を有し、前
記アモルファス相のみならず微結晶相にも酸化物(ある
いは酸素)が固溶しているので、前記微結晶相からも高
い比抵抗を得ることができ、軟磁性膜全体の比抵抗を高
めることができる。本発明の軟磁性膜によれば1000
μΩ・cm〜3000μΩ・cm程度の比抵抗を得るこ
とが可能である。
【0066】また、本発明の軟磁性膜であれば、膜構造
を構成する微結晶相が高い比抵抗を有しているので、周
波数を高めることにより前記微結晶相が移動しやすくな
っても、軟磁性膜の比抵抗はそれほど低下しない。つま
り本発明の軟磁性膜であれば、優れた比抵抗の周波数特
性を得ることが可能である。また本発明の軟磁性膜はC
oを含有しているので、前記軟磁性膜の一軸異方性は非
常に高い値を示し、周波数特性に優れた透磁率を得るこ
とができる。
【0067】本発明の軟磁性膜によれば、GHz帯域ま
でほぼ一定の実効透磁率を得ることができ、且つ性能係
数Q(実効透磁率μ′/虚数部における透磁率μ″)を
1以上に保つことができる。また本発明における軟磁性
膜であれば、1.0(T;テスラ)以上の飽和磁化(I
s)を得ることが可能である。
【0068】図1に示すコア層1,6を上記軟磁性膜に
より形成するには、スパッタ法、蒸着法などを使用すれ
ばよい。スパッタ装置としてはRF二極スパッタ、DC
スパッタ、マグネトロンスパッタ、三極スパッタ、イオ
ンビームスパッタ、対向ターゲット式スパッタなどの既
存のものを使用すればいよい。前記軟磁性膜中に、O
(酸素)を添加する方法としては、Arなどの不活性ガ
ス中にO2ガスを混合した(Ar+O2)混合ガス雰囲気
中でスパッタを行う反応性スパッタ、あるいは、元素M
の酸化物(HfO2など)のチップを用いた複合ターゲ
ットをAr雰囲気中、あるいはAr+O2混合ガス雰囲
気中でスパッタする方法が有効である。
【0069】またCoのターゲット上に希土類元素など
の元素Mあるいは元素Tなどの各種ペレットを配置した
複合ターゲットを用いて、Ar+O2混合ガス雰囲気中
で製作することもできる。以上詳述した軟磁性膜を、薄
膜磁気ヘッドの下部コア層1および上部コア層6に使用
すれば、高記録密度化に伴い周波数を高めても、前記コ
ア層1,6の比抵抗が高いために、渦電流が発生しにく
く、前記渦電流による熱損失をより低減させることが可
能となる。
【0070】図2(a)(b)は、前述した軟磁性膜を
用いて形成されたインダクタ(平面型磁気素子)の構造
を示すものであり、図2(a)は平面図、図2(b)は
図2(a)のA―A線断面図である。この例のインダク
タにおいては、フレキシブル基板7上に取り出し電極3
1を形成する。この取り出し電極31は基板用配線を兼
ねている。酸化膜32と磁性膜33と絶縁膜34が順次
積層され、絶縁膜34上にスパイラルコイル状の平面コ
イル35が形成される。平面コイル35の中心部は、酸
化膜32と磁性膜33と絶縁膜34に開けられたスルー
ホールにより取り出し電極31と接続されている。さら
に平面コイル35を覆って絶縁膜36が形成され、絶縁
膜36上に磁性膜37が形成されている。平面コイル3
5の端からは取り出し電極38がフレキシブル基板7上
に延びている。前記取り出し電極38も基板用配線を兼
ねている。
【0071】平面コイル35は、銅、銀、金、アルミニ
ウムあるいはこれらの合金などの良導電性金属材料から
なり、インダクタンス、直流重畳特性、サイズなどに応
じて、電気的に直列に、縦にあるいは横に絶縁膜を介し
て適宜配置することができる。また平面コイル35を並
列的に複数設けることでトランスを構成できる。さら
に、平面コイル35は、導電層を基板上に形成後、フォ
トエッチングすることにより各種の形状に作成できる。
導電層の製膜方法としては、プレス圧着、メッキ、金属
溶射、真空蒸着、スパッタリング、イオンブレーティン
グ、スクリーン印刷焼成法などの適宜の方法を用いれば
よい。
【0072】絶縁膜34,36は、平面コイル35への
通電時において、磁性膜33,37と導通してショート
することを防止するために設けられている。絶縁膜3
4,36は、ポリイミドなどの高分子フィルム、SiO
2、ガラス、硬質炭素膜などの無機質膜からなるものを
用いることが好ましい.この絶縁膜34,36は、ペー
スト印刷またはスピンコート後に焼成する方法、溶融メ
ッキ法、溶射、気相メッキ、真空蒸着、スパッタリン
グ、イオンブレーティングなどの方法により形成され
る。磁性膜33,37は、前述の軟磁性膜により形成さ
れる。
【0073】前述の如く構成されたインダクタは、小型
かつ薄型で軽量であり、優れた磁気特性を有する磁性膜
33,37を有しているので、平面型磁気素子の小型軽
量化に寄与するとともに、優れたインダクタを示す。な
お、図2では、平面型磁気素子(インダクタ)について
説明したが、例えば一次側と二次側のコイルを設けてト
ランスとして用いることも可能である。
【0074】さらに近年では、移動通信機器が発達し、
例えば携帯電話機用のLCフィルタの構成要素の中で占
有面積の大きい空心インダクタの小型化が期待されてい
る。本発明における軟磁性膜を用いることにより、単位
面積当たりのインダクタンスを大きくすることが可能で
あり、前記空心インダクタの小型化を実現できる。
【0075】
【実施例】本発明では、前述した軟磁性膜(Co―T―
M―O膜)を用いて、この軟磁性膜における周波数と比
抵抗との関係、および周波数と透磁率との関係について
調べた。実験では、まず組成がCo44.3Fe19.1Hf
14.522.1から成る軟磁性膜を成膜した。成膜には、高
周波二極スパッタ装置を用いて、CoターゲットにFe
とHfの各種ペレットを用いた複合ターゲットを用い、
Ar+0.1〜1.0%O2の混合ガス雰囲気中でスパ
ッタを行った。主なスパッタ条件は以下の通りである。
【0076】予備排気:5×10-7Torr以下 高周波入力:200W Ar+O2ガス圧:6〜8×10-3Torr 基板:ガラス基板(間接水冷) そして成膜後、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1膜にお
ける周波数と比抵抗との関係を1日目から6日目までの
計6回測定した。その実験結果を図3に示す。
【0077】図に示すように、比抵抗は、周波数を高め
てもほぼ一定の値を示し、しかも約1500μΩ・cm
以上の高い値を示していることがわかる。これに対し、
Coを含有しないFe61Hf1326膜の場合、図15に
示すように、周波数が10MHz以上になると、比抵抗
が極端に低下してしてしまい、Fe61Hf1326膜で
は、優れた比抵抗の周波数特性が得られないことがわか
る。Co44.3Fe19.1Hf14.522.1膜の比抵抗が高
く、しかも周波数特性に優れている理由の一つに、この
軟磁性膜の膜構造が挙げられる。
【0078】前述したように、本発明における軟磁性膜
は、微結晶相と、この微結晶相を取り囲むアモルファス
相とで構成されているが、この膜構造は、Fe61Hf13
26膜の膜構造と類似したものとなっている。Co44.3
Fe19.1Hf14.522.1膜の膜構造と、Fe61Hf13
26膜の膜構造とで大きく異なる点は、微結晶相に含まれ
る酸素量である。Co44.3Fe19.1Hf14.522.1膜の
微結晶相には、CoやFeの他に酸素が多量に固溶して
おり、従って前記微結晶相は半導体的な性質を帯び、前
記微結晶相の比抵抗は比較的高いものとなっている。
【0079】これに対しFe61Hf1326膜の微結晶相
には、Fe以外に酸素がほとんど含まれておらず、前記
微結晶相は金属的な性質を帯び、前記微結晶相の比抵抗
は低いものとなっている。つまり、本発明におけるCo
44.3Fe19.1Hf14.522.1膜は、アモルファス相のみ
ならず微結晶相の比抵抗も高くなっているために、膜全
体としての比抵抗は高くなり、しかも優れた周波数特性
を得ることが可能となっている。一方、従来のFe61
1326膜であると、図15に示すように10MHz程
度までは比較的高い比抵抗を得ることができるが、周波
数がそれ以上になると、粒界静電容量による変位電流が
優勢となって、比抵抗の周波数特性は悪化してしまうも
のと考えられる。
【0080】次に、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1
における周波数と透磁率との関係を測定した。その実験
結果を図4に示す。図に示すように、実効透磁率μ′
(Obs.)はGHz帯域までほぼ一定であり、虚数部
の透磁率μ″(Obs.)も低く抑えられている。また
実効透磁率μ′/虚数部の透磁率μ″で表わされる、い
わゆる性能係数Qは、周波数が1GHzにおいても約2
であり、少なくとも周波数が約1GHz以下であれば損
失を低く抑えることが可能である。従って本発明におけ
る軟磁性膜は、1〜10MHz程度の高周波数帯域で用
いられる平面型磁気素子(トランス、インダクタ)、1
0〜100MHz程度の高周波数帯域で用いられる薄膜
磁気ヘッド、および100MHz〜GHz帯で用いられ
る携帯機器用のLCフィルタなどに、好適な材料である
ことがわかる。
【0081】Co44.3Fe19.1Hf14.522.1膜におけ
る透磁率の周波数特性が良好となっているのは、Coが
含まれているために、一軸異方性が従来材料よりも大き
くなっているからである。また図4に示すように、実験
により得られた実効透磁率μ′(Obs)および虚数部
の透磁率μ″(Calc)の曲線は、計算により算出し
た実効透磁率μ′(Calc)および虚数部の透磁率
μ″(Calc)の曲線とほぼ一致していることがわか
る。
【0082】これは図3に示すように、Co44.3Fe
19.1Hf14.522.1膜における比抵抗の周波数特性が良
好となっていることに起因しているものと推測される。
さらに、本発明では、Co―T―M―O膜の異なる組成
の各種合金膜を成膜し、各合金膜について500MHz
における実効透磁率の値(μ′)と、虚数部における透
磁率(μ″)の値を測定することともに、電子線回折、
X線回折を行った結果、特定できた結晶構造と平均結晶
粒径を表1に記載した。
【0083】
【表1】
【0084】表1に示すように、本発明の軟磁性膜であ
れば、高周波数帯域であっても性能係数Q(μ′/
μ″)は、高い値を示していることがわかる。また、表
1に示す軟磁性膜の結晶構造は、bcc構造、fcc構
造、あるいはbcc構造とfcc構造の混成構造となっ
ているが、本発明における軟磁性膜の結晶構造は、bc
c構造、fcc構造以外にhcp構造であってもよい。
さらに、表1に示すように、軟磁性膜の微結晶相におけ
る平均粒径は、いずれも10nm以下となっていること
がわかる。なお、本発明では、前記平均粒径が5nm以
下であることがより好ましい。
【0085】
【発明の効果】以上、詳述した本発明の軟磁性膜は、前
述した特定の組成と特定の組成比からなるCoを主成分
とする軟磁性膜であり、膜構造としては、微結晶相とこ
の微結晶相を取り囲むアモルファス相とで構成され、し
かも、O(酸素)が前記アモルファス相のみならず微結
晶相にも多量に含んでいるので、前記微結晶相およびア
モルファス相の比抵抗は高い値を有し、従って軟磁性膜
としての比抵抗は従来材料に比べて非常に高く、且つ周
波数特性は優れたものとなる。
【0086】本発明の軟磁性膜によれば、1000μΩ
・cm以上の比抵抗を得ることが可能となっている。
【0087】また本発明では、軟磁性膜にCoを含有し
ているので、前記軟磁性膜の一軸異方性は高くなり、従
って優れた透磁率を示し、またGHz帯域での性能係数
Q(Q=実効透磁率μ′/虚数部の透磁率μ″)も高い
値を示すので、従来材料に比べて損失の少ないものとな
っている。
【0088】このような軟磁性膜を、薄膜磁気ヘッドに
おけるコアに使用すれば、前記コアの比抵抗を高くする
ことができるので、高周波数帯域でも渦電流の発生など
を低減させることができ、コア機能を向上させることが
できる。
【0089】また薄膜磁気ヘッド以外にも、前記軟磁性
膜を、平面型磁気素子(トランス、インダクタ)やフィ
ルタなどに使用すれば、前記平面磁気素子やフィルタを
小型軽量化することができ、さらに高周波数帯域におい
て損失の少ないものを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の構造を示す薄膜磁気ヘッド
の拡大断面図、
【図2】本発明の実施携帯の構造を示す平面型磁気素子
(インダクタ)の拡大断面図、
【図3】Co44.3Fe19.1Hf14.522.1膜における周
波数と比抵抗との関係を示すグラフ、
【図4】Co44.3Fe19.1Hf14.522.1膜における周
波数と透磁率との関係を示すグラフ、
【図5】Fe55Hf1134膜、Co44.3Fe19.1Hf
14.522.1膜、Co60.4Fe7.1Hf9.922.6膜、およ
びCo65Hf1223膜におけるX線回折の結果を示すグ
ラフ、
【図6】Co44.3Fe19.1Hf14.522.1膜の高分解T
EM像写真、
【図7】図6に示す高分解TEM像写真の部分模式図、
【図8】図7に示す番号1の部分をEDXによって組成
分析した結果を示すチャート、
【図9】図7に示す番号2の部分をEDXによって組成
分析した結果を示すチャート、
【図10】Fe55Hf1134膜の高分解TEM像写真、
【図11】図10に示す高分解TEM像写真の部分模式
図、
【図12】図11に示す番号1の部分をEDXによって
組成分析した結果を示すチャート、
【図13】図11に示す番号2の部分をEDXによって
組成分析した結果を示すチャート、
【図14】Fe61Hf1326膜における周波数と透磁率
との関係を示すグラフ、
【図15】Fe61Hf1326膜における周波数と比抵抗
との関係を示すグラフ、
【符号の説明】
1 下部コア層 2 ギャップ層 3、5 絶縁層 4 コイル層 6 上部コア層 7 フレキシブル基板 31,38 取り出し電極 32 酸化膜 33,37 磁性膜 34,36 絶縁膜 35 平面コイル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 牧野 彰宏 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 畑内 隆史 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 佐々木 義人 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 山沢 清人 長野県長野市松代町城東90番地 (72)発明者 佐藤 敏郎 長野県長野市稲葉1006−1

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主成分のCoと、Fe,Niのうちいず
    れか一方、あるいは両方を含む元素Tと、Ti,Zr,
    Hf,Nb,Ta,Cr,Mo,Si,P,C,W,
    B,Al,Ga,Geと希土類元素から選ばれる1種ま
    たは2種以上の元素MとOとを主に含有し、膜構造とし
    ては、元素Mの酸化物を多量に含むアモルファス相に、
    Coと元素Tとを主体とする微結晶相が混在しており、
    さらに前記微結晶相には、元素Mの酸化物を含んでいる
    ことを特徴とする軟磁性膜。
  2. 【請求項2】 前記微結晶相の結晶構造は、bcc構
    造、hcp構造、fcc構造のうち1種あるいは2種以
    上の混成構造から成る請求項1記載の軟磁性膜。
  3. 【請求項3】 前記微結晶相の結晶構造が、主にbcc
    構造から成る請求項1または請求項2に記載の軟磁性
    膜。
  4. 【請求項4】 前記微結晶質相の平均結晶粒径は、30
    nm以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記
    載の軟磁性膜。
  5. 【請求項5】 前記軟磁性膜が下記の組成で形成されて
    いる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の軟磁性
    膜。 (Co1-ccxyzw ただし、TはFe,Niのうちどちらか一方あるいは両
    方を含む元素であり、Mは、Ti,Zr,Hf,Nb,
    Ta,Cr,Mo,Si,P,C,W,B,Al,G
    a,Geと希土類元素から選ばれる1種または2種以上
    の元素であり、Xは、Au,Ag,Cu,Ru,Rh,
    Os,Ir,Pt,Pdから選ばれる1種あるいは2種
    以上の元素であり、組成比を示すcは、0≦c≦0.
    7、x,y,z,wはat%で、3≦y≦30、7≦z
    ≦40、0≦w≦20、20≦y+z+w≦60の関係
    を満足し、残部はxである。
  6. 【請求項6】 前記軟磁性膜の組成比を示すcは、0≦
    c≦0.3、x,y,z,wはat%で、7≦y≦1
    5、20≦z≦35、0≦w≦19、30≦x+y+z
    ≦50の関係を満足し、残部はxである請求項5記載の
    軟磁性膜。
  7. 【請求項7】 前記元素TはFeである請求項1ないし
    請求項6のいずれかに記載の軟磁性膜。
  8. 【請求項8】 CoとFeの濃度比は、0.3≦{Co
    /(Co+Fe)}≦0.8である請求項7記載の軟磁
    性膜。
  9. 【請求項9】 前記軟磁性膜を構成する一元素として、
    Oの代わりにNが、あるいはOと共にNが用いられる請
    求項1ないし請求項8のいずれかに記載の軟磁性膜。
  10. 【請求項10】 前記軟磁性膜の比抵抗は、1000〜
    3000μΩ・cmである請求項1ないし請求項9のい
    ずれかに記載の軟磁性膜。
  11. 【請求項11】 少なくとも下部コア層と、記録媒体と
    の対向部で前記下部コア層と磁気ギャップを介して対向
    する上部コア層と、両コア層に磁界を与えるコイル層と
    を有する薄膜磁気ヘッドにおいて、前記下部コア層と上
    部コア層のうち少なくとも一方は、請求項1ないし請求
    項10のいずれかに記載された軟磁性膜により形成され
    ていることを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし請求項10のいずれか
    に記載された軟磁性膜により磁心が形成されていること
    を特徴とする平面型磁気素子。
  13. 【請求項13】 請求項1ないし請求項10のいずれか
    に記載された軟磁性膜により磁心が形成されていること
    を特徴とするフィルタ。
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JP29364597A Pending JPH11121232A (ja) 1997-10-09 1997-10-09 軟磁性膜とこの軟磁性膜を用いた薄膜磁気ヘッド、平面型磁気素子、およびフィルタ

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6828046B2 (en) 2001-04-13 2004-12-07 Fujitsu Limited Soft magnetic film of FeCoMO having a high saturation flux density, a moderate soft magnetism and a uniaxial magnetic anisotropy
US6970324B2 (en) 2002-02-04 2005-11-29 Fujitsu Limited Thin film head with nickel-iron alloy non-magnetic substratum between non-magnetic gap layer and upper magnetic pole layer
JP2006303405A (ja) * 2005-03-23 2006-11-02 Sumida Corporation インダクタ

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