JPH1111307A - 鉄道車両用空調装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】車外圧力の変動に伴う車内圧力の変動を抑制す
ると同時に、新鮮空気を直接冷却する効率のよい空調サ
イクルの安定した運転を継続させるものである。 【解決手段】給気用送風機２、新鮮空気用室内熱交換器
９を保有する空調装置１２を搭載する車両用空調装置に
おいて、車外圧力の変動が生じた際に排気取り出しダク
ト６から給気取り入れダクト４へと空気を流すことによ
って、新鮮空気用サイクルを継続して運転することを可
能とした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道車両用空調装
置に係り、新鮮空気を車内へ送風する給気用送風機と車
内の排気を車外へ排気する排気用送風機を備えた鉄道車
両用空調装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】高速車両においては、トンネル突入時
や、トンネル内での対抗車両とのすれ違い時に車外圧力
変動が生ずる。換気装置を備えた車両の場合、この影響
により換気装置の給・排気風量にアンバランスが生じる
ため、車内圧力が変動して、乗客が耳に違和感を感じる
等の不具合が起こる。給・排気風路を絞る圧力緩和機構
を設けて風量を調整する方法、あるいは、換気用の送風
機のトップ圧を高く設定し、圧力の変動に対する風量変
動を小さく抑える方法が取られていた。これらの方法に
よって乗客に与える不快感をやわらげていたが、このよ
うな換気装置の例としては、特開昭６２−２９９４７５
号や特開平７−１７２３０８号等が挙げられる。しか
し、車外圧力変動の車内への影響を最小限に抑えるため
にもっとも有効な方法は、車内と車外との通風路を遮蔽
することである。

【０００３】一方、鉄道用車両を高速化するためには、
車体全体を軽量化する必要がある。そのため、空調装置
も小型・軽量化することが不可欠となる。その反面、車
室内の快適性を向上させるためには、空調装置の冷房能
力を維持あるいは向上させなければならない。このた
め、高効率の冷房方式が要求される。

【０００４】ところで、高速車両においては、前記車外
圧力変動の影響を最小限にするために、高圧の送風機に
より車内へ給・排気する強制換気を行っている。給気系
では、新鮮空気が送風機により断熱圧縮され温度上昇を
起こす。このような、強制換気を行っている鉄道車両に
おいては、冷房の熱負荷のおよそ半分がこの新鮮空気を
車内温度まで冷却するための熱負荷である。したがっ
て、冷房運転時に室内熱交換器における冷媒と該熱交換
器を通過する空気との温度差を大きくとれるように、換
気装置の給気送風機からの新鮮空気を、リターン空気と
混合する前に直接冷却する新鮮空気用冷凍サイクルを設
けることが考えられる。

【０００５】前述のように車内圧力を維持するために
は、給・排気風路を遮断する方が好ましいが、仮に給気
風が途絶えると、前記新鮮空気用サイクルの室内熱交換
器への送風量が途絶えることになる。前記送風量が途絶
えると室内熱交換器内において、冷媒が必要な熱量を得
ることができず、該サイクルが低圧となり、圧縮機の運
転が妨げられるという弊害が起こる。このため、給・排
気風路を遮断する間は新鮮空気用サイクルの運転を停止
する必要がある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上記従来技術では、車
外圧力が変動すると新鮮空気量が増減することになり、
新鮮空気用サイクルの新鮮空気用室内熱交換器内での冷
媒の状態変化が安定せず、新鮮空気用サイクルの圧縮機
を安定した状態で運転することが出来なかった。特に、
新鮮空気は、外気温度が給気用送風機の断熱圧縮により
温度上昇を生ずるため高温であり、この風量の増減が新
鮮空気用サイクルに与える影響は大きい。一方、鉄道車
両の高速化や走行ダイヤの過密化などにより、車外圧力
変動の発生する機会は今後も増加する傾向にある。その
たびに新鮮空気冷却用サイクルの運転・停止を繰り返し
ていると、圧縮機の信頼性が低下すると共に、運転を始
めた直後は冷房能力が低いため、結局は冷房能力が低下
し、車室内の温度制御を行う上で好ましくない。

【０００７】本発明の目的とするところは、車外圧力が
変動した場合でも、新鮮空気用室内熱交換器への送風量
の変動を抑制して、新鮮空気用サイクルの運転を安定化
させて、車内温度の変動を抑制するとともに車内圧力を
一定に保つことにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的は、車外の新鮮
空気を取り入れる給気用送風機と、車内の排気を車外に
排出する排気用送風機と、前記給気用送風機と排気用送
風機の風路を切り替える風路切替機構と、車外の圧力変
動を検出する圧力変動検知器と、前記車外圧力変動検知
器からの検知結果を入力として前記切り替え機構に風路
切り替えの指令を出力する制御器とから換気装置を構成
することにより、達成される。

【０００９】また、前記圧力変動検出器に代えて、車両
のトンネル内走行状態を検出する走行状態検知手段を設
けて、車両がトンネル内を走行している時に、風路切替
機構を動作させてもよい。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図１に
示す実施例により、冷房の場合について詳細に説明す
る。図１において、１は車体である。２は換気装置を構
成する給気用送風機、３は換気装置を構成する排気用送
風機を示す。通常時、給気取り入れダクト４から給気用
送風機２に取り込まれた新鮮空気は、新鮮空気送風ダク
ト５を通り、空調装置１２に入り、新鮮空気用室内熱交
換器９で熱交換される。前記新鮮空気用室内熱交換器９
により冷却された給気は、リターンダクト１４から空調
装置１２内に取り込まれた車内リターン空気と混合され
た後、リターン用室内熱交換器１０で冷却され、その
後、室内送風気１１により室内送風機用ダクト１３を介
して車内へ送風される。一方、排気取り出しダクト６か
ら、排気用送風機３に取り込まれた車内排気は、排気吐
き出しダクト７を通り、車外へと排出される。

【００１１】このような構成では、トンネル突入時やト
ンネル内での他の車両とのすれ違いにより、車外圧力が
変動する際、車外圧力変動検知器からの情報により、風
路切り替え機構８によって排気取り出しダクト６と給気
取り入れダクト４をバイパスさせることによって、車内
からの排気を、排気用送風機３の手前で、排気用送風機
３を通さずに給気用送風機２に取り込み、これをそのま
ま新鮮空気用室内熱交換器９に送風する。このことによ
り、新鮮空気用室内熱交換器９への送風量をほぼ一定に
保つことが可能となる。また、このような構成によれ
ば、車内から抜き取られた空気がそのまま車内へと戻さ
れるため、車室から出ていく空気量と投入される空気量
が等しくなる。同時に、車外とは空気のやりとりが遮断
されているため、車外の圧力変動の影響を受けず、車内
の圧力が変動しない。したがって、乗客に耳つん等の不
快感を生じさせず、快適な車内環境を実現することがで
きる。

【００１２】なお、車外圧力変動検知器に代えて、車両
がトンネル内へ突入したことを検出して、前記風路切り
替え機構８の制御出力を出力する制御器へ指令を出力す
る構成としてもよい。但し、トンネル長さが比較的短く
て、車内の換気を行わない時間が短い場合に限られる。
或いは、車両がトンネル内に突入し、対向車が換気風量
に影響を与える距離に接近したことを検知して、前記制
御器に指令を出力する構成としても良い。擬態的には、
対向車の接近をヘッドライトの光を光学的に検出する光
学検出器のよって検出する構成が考えられる。

【００１３】この風路の切り替え機構にダンパを用いた
一例を図２及び図３によって説明する。図２において、
給気取り入れダクト４と排気取り出しダクト６にされぞ
れ曲がり部を設け、この曲がり部を突き合わせた構造と
し、十字路状に風路を形成する。通常時は風路切り替え
ダンパ１５により給気風路と排気風路を仕切っておく。
車外圧力変動検知器が車外圧力の変動を検知すると制御
器に送信し、前記制御器が風路切り替えダンパ１５を半
回転させ、図３のように排気取り出しダクト６の風路切
り替えダンパ１５より上流側と、給気取り入れダクト４
の風路切り替えダンパ１５より下流側が連通されること
になる。このとき給気用送風機２は排気取り出しダクト
６を通じて車内の空気を吸い込み、新鮮空気送風ダクト
５を通じて空調装置１２へ送風する。同時に、排気取り
出しダクト６の風路切り替えダンパ１５より下流側と、
給気取り入れダクト４の風路切り替えダンパ１５より上
流側が連通されることになる。このとき、排気用送風機
３は給気取り入れダクト４を通じて新鮮空気を取り込
み、排気吐き出しダクト７を通じて車外へ排気する。こ
のことにより目的とする風路の切り替えを達成するもの
である。

【００１４】図４、図５に示す実施例においては、給気
取り入れダクト４と排気取り出しダクト６をそれぞれＵ
字状に形成し、且つ給気取り入れダクト４の風路切り替
え弁１６より下流側と、排気取り出しダクト６の風路切
り替え弁１７より上流側を隣り合わせに設置する。ま
た、前記給気取り入れダクト４の風路切り替え弁１６よ
り下流側と、排気取り出しダクト６の風路切り替え弁１
７より上流側とをつなぐ給気送風機用バイパスダクト１
８と、給気取り入れダクト４の風路切り替え弁１６より
上流側と、排気取り出しダクト６の風路切り替え弁１７
より下流側とをつなぐ排気送風機用バイパスダクト１９
とを設置しておく。通常時は、前記給気送風機用バイパ
スダクト１８と排気送風機用バイパスダクト１９には空
気が流れないよう風路切り替え弁１６及び１７により蓋
をされている。車外圧力変動検知器が車外圧力の変動を
検知すると制御器に送信し、前記制御器が風路切り替え
弁１６、１７を切り替える。このとき給気用送風機２
は、排気取り出しダクト６の風路切り替え弁１７より上
流側から給気送風機用バイパスダクト１８を通り、給気
取り入れダクト４の風路切り替え弁１６より下流側を経
て車内の空気を吸い込み、新鮮空気送風ダクト５へ送風
する。一方、排気用送風機３は給気取り入れダクト４の
風路切り替え弁１６より上流側を通り、排気用バイパス
ダクト１９を通じて排気取り出しダクトの風路切り替え
弁１７より下流側を経て新鮮空気を吸い込み、これを排
気吐き出しダクト７へと送風する。なお、上記のダン
パ、弁は、ゲート弁やその他サーボ系で構成してもよ
い。

【００１５】また、セクション通過に伴う電源の瞬間停
電時に、換気装置に供給される電源が中断されるため、
給気用送風機２及び排気用送風機３の回転数が一時的に
低下し、給気用送風機２及び排気用送風機３が空気に与
える圧力も同時に低下する。電源が復帰すると、換気装
置は再び回転を上げ始め、ある一定の時間をかけて定格
の回転数及び圧力に復帰する。この間、従来の方式で
は、給・排気送風機の持つ圧力が低下しているため、車
外圧力の変動が生じると、つられて車内圧力も大きく変
動するという傾向があったが、上記のように、車外圧力
を検知し、風路切り替え機構８により風路を切り替えて
風路を遮断することにより、給気用送風気２及び排気用
送風機３の回転数が低下している時も車内圧力の変動が
抑制される。

【００１６】同時に、定格風量における給・排気送風機
の圧力を、ダクトロス分だけを考慮して決めればよいた
め、給・排気送風機の圧力特性を比較的低く設定でき、
給・排気送風機の羽根車、軸、軸受、キー溝等の強度に
も余裕を持つことができる。

【００１７】また、暖房時には、車外圧力の変動に対
し、車外との空気のやりとりを遮断して車内圧力の変動
を抑制するとともに、給気用送風機へ車内からの空気を
供給することにより、該空気が断熱圧縮される。このこ
とによる温度上昇が車内の暖房に寄与する。車外圧力変
動に対し、換気装置の給・排気を完全に切り放してしま
うと、車内の暖房は空調装置のみが賄うことになるが、
本案によれば、常に給気用送風機によって温度上昇した
新鮮空気が車内へと運ばれているため、換気装置の断熱
圧縮を車内の暖房に利用することができる。

【００１８】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、車
外の圧力が変動しても新鮮気冷却サイクルに常に一定の
送風を行うことが可能となるため車内温度の変動を抑制
することができ、また、車内圧力も一定に保つことがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による鉄道車両用空調装置の一実施例の
空気経路と構成部品を示す系統図である。

【図２】図１に示した実施例において、風路切替機構の
一実施例を模式的に示す図である。

【図３】図１に示した実施例において、図２に示した風
路切替機構の風路を切り替えた状態を示す図である。

【図４】本発明の鉄道車両用空調装置において図２に示
した風路切替機構の他の実施例を示す図である。

【図５】図４に示した風路切替機構の風路を切り替えた
状態を示す図である。

【符号の説明】

２・・・給気用送風機、４・・・給気取り入れダクト、６・・・
排気取り出しダクト、８・・・風路切り替え機構、９・・・新
鮮空気用室内熱交換器、１２・・・空調装置

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】循環空気を室内熱交換器で熱交換させ、か
   つ、新鮮空気を室内熱交換器で熱交換させて空気調和空
   間に供給する鉄道車両用空調装置において、前記新鮮空
   気のみを熱交換させる第１の室内熱交換器と、前記循環
   空気及び新鮮空気を熱交換させる第２の室内熱交換器と
   を備えており、車内からの排気風を前記循環空気の吸込
   側へ導く通風路を設けたことを特徴とした鉄道車両用空
   調装置。
2. 【請求項２】請求項１に記載の鉄道車両用空調装置にお
   いて、車外圧力を検知しており、車外圧力が規定値より
   も変動した時に、前記排気風の通風路を前記第１の室内
   熱交換器へ切り替える制御器備えたことを特徴とした鉄
   道車両用空調装置。
3. 【請求項３】請求項１に記載の鉄道車両用空調装置にお
   いて、車外圧力を検知しており、車外圧力が規定値より
   も変動した時に、前記排気風の通風路を前記第１の室内
   熱交換器へ切り替える制御器備えたことを特徴とした鉄
   道車両用空調装置。
4. 【請求項４】新鮮空気を取り込んで室内熱交換器へ供給
   する給気用送風機と、車内の排気を車外へ排出する排気
   用送風機と、前記給気用送風機に接続された給気取入ダ
   クトと前記排気用送風機に接続された排気取り出しダク
   トとの風路を切り替える風路切り替え機構と、前記給気
   用送風機きから供給される新鮮空気を熱交換させて調和
   空気を得る冷凍サイクルと、を備えたことを特徴とする
   鉄道車両用空調装置。