JPH1094804A - 長さ方向と周方向の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優れたα型またはα+β型チタン合金製継ぎ目無し管の製造方法 - Google Patents

長さ方向と周方向の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優れたα型またはα+β型チタン合金製継ぎ目無し管の製造方法

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JPH1094804A
JPH1094804A JP25210296A JP25210296A JPH1094804A JP H1094804 A JPH1094804 A JP H1094804A JP 25210296 A JP25210296 A JP 25210296A JP 25210296 A JP25210296 A JP 25210296A JP H1094804 A JPH1094804 A JP H1094804A
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titanium alloy
rolling
type titanium
strength
circumferential direction
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Hideki Fujii
秀樹 藤井
Seiichi Soeda
精一 添田
Naotomi Yamada
直臣 山田
Masatoshi Murayama
正俊 村山
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Nippon Steel Corp
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、長さ方向および周方向の両方向の
強度特性が同程度に高く、また十分な延性をも有し、さ
らに、厚さ方向の強度が、長さ方向および周方向のそれ
を上回って高い、α型またはα+β型チタン合金製継ぎ
目無し管を製造する方法を提供する。 【解決手段】 α型またはα+β型チタン合金継ぎ目無
し管を、圧延方式により製造する方法において、製管の
周方向に材料の流れを生じさせる圧延工程における減面
率の合計と、製管の長さ方向に材料の流れを生じさせる
圧延工程における減面率の合計との比が、0.5〜2.
0の範囲で、全減面率が40%以上の加工を、β変態点
以下の温度域で行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長さ方向と周方向
の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優れたα型ま
たはα+β型チタン合金からなる継ぎ目無し管の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタン合金は軽量、高強度、高耐食性を
有しており、近年、地熱開発、海底油田・ガス田開発な
どの大深度、高温、高圧、高腐食の極限環境に適した素
材として期待されている。中でも、航空機用途で高い実
績を誇るα型およびα+β型チタン合金や、これに少量
のPdやRuを添加して耐食性をさらに高めた高耐食性
α+β型チタン合金は、特に優れた極限環境用素材とし
て有望視されている。
【0003】上記用途においては、管が主要製品形状で
あり、チタン合金製管材の製造方法として、板を曲げ加
工し溶接する方法(溶接管)、熱間押し出しによる方法
(継ぎ目無し管)、熱間プレスや圧延法により穿孔し、
さらに押し出し、プレス、あるいは延伸−定型−絞り、
磨管−定型等の圧延を順次行い造管する方法(継ぎ目無
し管)などが検討されている。このうち、加熱した中実
ビレットを穿孔、延伸、磨管、定型、絞り等の圧延工程
を連続的に行い、中空の管に造管する「圧延方式」は、
特性の劣化が懸念される溶接部のない継ぎ目無し管が製
造できるので、補修や部品交換等が極めて困難な上述の
極限環境用途でも、長期間安定して使用できる利点を有
しており、さらに、同方法は材料歩留りが高く、製造効
率も高いことから、材料そのものが高価なチタン合金で
は特に有利な方法である。
【0004】一方、α型またはα+β型チタン合金の主
相であるα相の結晶構造は、対称性に乏しい最ちゅう密
六方晶であり、集合組織が発達しやすく、その結果、強
度特性に大きな異方性を生じやすい。すなわち、優れた
特性が特定方向に集中し、他の方向の特性が劣悪なもの
となりやすい。上述の極限環境下のように、管の内と外
から強大な圧力を受けるような場合、長さ方向および周
方向の両方向の強度特性が同程度に高いことが望まし
く、さらに、厚さ方向の強度は長さ方向および周方向の
それを上回って高いことが望まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】強度の異方性のない等
方的材質の管材を圧延方式により製造する方法として
は、熱間加工工程すべてをβ変態点以上のβ単相温度域
で行い、同時にβ相を再結晶させ、その後の冷却中に析
出するα相の結晶方位をランダムなものとする方法があ
る。また、圧延温度は問わないが、圧延終了後の熱処理
をβ変態点以上で行い、β相をいったん再結晶させて、
その後の冷却中に析出するα相の結晶方位をランダムな
ものとする方法がある。しかし、このような方法によっ
て等方的な材質は得られるものの、延性が低下してしま
うという問題点があった。これは、β単相域は拡散が速
いためβ粒が粗大化すること、および冷却中にβ粒界お
よびβ粒内に各々延性に乏しい板状α相および針状α相
が析出するためである。また、厚さ方向を含めて強度特
性が均一となるため、厚さ方向の強度を特に高めること
もできない。
【0006】以上のような問題点に鑑み、本発明は、長
さ方向および周方向の両方向の強度特性が同程度に高
く、また十分な延性をも有し、さらに、厚さ方向の強度
は長さ方向および周方向のそれを上回って高い、α型ま
たはα+β型チタン合金製継ぎ目無し管を製造する方法
を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、(1)α型チタン合金製継ぎ目無し管を圧
延方式により製造する方法において、前記チタン合金を
β変態点以下の温度域で40%以上の減面率の加工を行
い、その加工において周方向に材料の流れを生じさせる
圧延工程における減面率の合計と、長さ方向に材料の流
れを生じさせる圧延工程における減面率の合計との比が
0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする、長さ方
向と周方向の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優
れたα型チタン合金製継ぎ目無し管の製造方法、(2)
α+β型チタン合金製継ぎ目無し管を圧延方式により製
造する方法において、前記チタン合金をβ変態点以下の
温度域で40%以上の減面率の加工を行い、その加工に
おいて周方向に材料の流れを生じさせる圧延工程におけ
る減面率の合計と、長さ方向に材料の流れを生じさせる
圧延工程における減面率の合計との比が0.5〜2.0
の範囲であることを特徴とする、長さ方向と周方向の材
質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優れたα+β型チ
タン合金製継ぎ目無し管の製造方法、である。
【0008】前記α+β型チタン合金が、Ti−Fe−
O−N系で、酸素と窒素を合計で0.3重量%以上含有
し、さらに、上記α型およびα+β型チタン合金には、
必要により0.05〜0.5重量%の白金族元素を含有
した場合に、特に本発明の多大な効果が発揮される。ま
た、前記した周方向に材料の流れを生じさせる圧延とし
ては傾斜ロールを用いた圧延が好適であり、長さ方向に
材料の流れを生じさせる圧延はカリバーロールを用いた
圧延が好適である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明では、α型またはα+β型
チタン合金によって継ぎ目無し管を製造する。α型チタ
ン合金とは、平衡状態において室温でα相が95%以上
を占める合金で、Ti−5Al−2.5Snがその代表
的合金である。α+β型チタン合金とは、平衡状態にお
いて室温で75〜95%程度のα相を主相とし、残部の
大部分がβ相であるチタン合金であって、β単相温度域
から焼入れた場合に全体あるいは一部がマルテンサイト
変態する種類の合金である。代表的なα+β型チタン合
金としては、Ti−6Al−4V、Ti−3Al−2.
5V、Ti−6Al−6V−2Sn、Ti−6Al−2
Sn−4Zr−6Mo、Ti−4.5Al−3V−2M
o−2Feなどを挙げることができる。
【0010】上記α型またはα+β型合金中の進入型不
純物元素を低減したELIグレードも、α型またはα+
β型チタン合金に属する。また、近年開発された、Fe
を0.9〜2.3%程度含有し、さらに酸素および窒素
を合計で0.1〜0.6%程度添加したTi−Fe−O
−N系合金もα+β型チタン合金である。このようなT
i−Fe−O−N系α+β型チタン合金には、0.25
%以下のNiやCrが不純物として含まれる場合もあ
る。また、耐食性を高めるために、これらα型およびα
+β型チタン合金に、0.05〜0.5%程度の白金族
元素を添加した合金も同じくα型またはα+β型チタン
合金に属する。
【0011】α型またはα+β型チタン合金は、α相ま
たはβ相以外に、ω相、Ti−Al系規則相、Ti−O
系規則相、Ti−N系規則相、FeTi相などの金属間
化合物相、Y2 3 、Er2 3 、TiB、シリサイ
ド、チタン系あるいは希土類元素系硫化物などの介在物
や析出物を少量含有するものがあるが、実質的にはβ変
態点以下の温度域ではα+βの二相を基本としており、
β変態点以上ではα相の体積分率は零で、それ以下の温
度では温度の低下とともにα相の割合が増加し、合金種
によって異なるが、室温において、α型合金では95%
以上、α+β型合金では75〜95%のα相と残部β相
で構成されるようになる。
【0012】本発明者等は、上記α型またはα+β型チ
タン合金の継ぎ目無し管を圧延方式により製造する際
の、穿孔、延伸、磨管、定型、絞り等の一連の圧延工程
における加工様式とロール方式を詳細に解析した結果、 1)厚板圧延等の板圧延に比べて、歪み速度が高く、せ
ん断変形成分の多い圧延方式による継ぎ目無し管の製造
工程では、β変態点以下の温度域において40%以上の
減面率の加工を行うことにより、β粒界に生成した板状
α相やβ粒内の針状α相が、延性の高い等軸組織ないし
は延伸α相に変換でき、10%以上の高い引張伸びが確
保できる、 2)円周方向の強度特性と長さ方向の強度特性の差は、
β変態点以下の温度域での加工のうち、傾斜ロールを用
いた圧延工程における減面率とカリバーロールを使用し
た圧延工程における減面率の比に強く依存する、 という二つの知見を見出した。
【0013】本発明は、上記二つの知見に基づきなされ
たものであり、α型またはα+β型チタン合金製継ぎ目
無し管を圧延方式により製造する方法において、β変態
点以下の温度域で40%以上の減面率の加工を行い、そ
の加工において周方向に材料の流れを生じさせる圧延工
程における減面率の合計と、長さ方向に材料の流れを生
じさせる圧延工程における減面率の合計との比を0.5
〜2.0の範囲とすることを特徴とする。
【0014】β変態点以下の温度域で40%以上の減面
率の加工を行うこととしたのは、先に本発明者らが見出
した1)の知見に基づくものであり、これにより引張伸
びが10%以上の十分な延性が確保される。β変態点以
下の温度域での加工量が40%に満たない場合、延性に
乏しい板状α相や針状α相が残存するために10%以上
の高い引張伸びが得られない。
【0015】次に、β変態点以下の温度域での加工にお
いて、周方向に材料の流れを生じさせる圧延工程におけ
る減面率の合計と、長さ方向に材料の流れを生じさせる
圧延工程における減面率の合計との比を0.5〜2.0
の範囲としたのは、下記の理由による。チタン合金をβ
変態点近傍の温度域で圧延すると、材料の流れの方向と
垂直な方向に最ちゅう密六方晶の軸が向いたα相集合組
織を呈する。この軸方向の強度は、他の方向に対して著
しく高くなるため、圧延方向に比べて圧延方向と垂直な
方向の強度が著しく高くなる(図1参照)。すなわち、
周方向に材料の流れを生じさせる圧延を行うと、長さ方
向の強度が周方向よりも高くなり、逆に長さ方向に材料
の流れを生じさせる圧延をすると、周方向の強度が長さ
方向に比べて高くなるわけである。そこで、周方向に材
料の流れを生じさせる圧延と長さ方向に材料の流れを生
じさせる圧延の両方を適当に組み合わせて行うと、両圧
延方向に共通な垂直方向である厚さ方向に、最ちゅう密
六方晶の軸が向いたα相集合組織を呈するようになる
(図2参照)。
【0016】このような集合組織が発達すると、周方向
と長さ方向の材質特性差は小さくなり、また、厚さ方向
の強度は他の方向に比べて高くなる。このようなα相集
合組織を形成させるためには、β変態点以下のα+β域
での加工工程において、周方向に材料の流れを生じさせ
る圧延工程における減面率の合計と長さ方向に材料の流
れを生じさせる圧延工程における減面率の合計との比が
0.5〜2.0の範囲であることが必要である。この範
囲を逸脱すると、周方向もしくは長さ方向のうちの一方
の強度のみが著しく高くなるとともに、厚さ方向の強度
向上も達成されなくなる。
【0017】上記の周方向に材料の流れを生じさせる圧
延としては、傾斜ロールを使用した圧延が好適である。
傾斜ロールを使用した圧延では、長さ方向に対して70
度前後〜90度弱の角度をなして材料の流れが生ずる。
換言すれば、円周方向に対して、0度強〜20度前後の
角度をなして材料の流れが生ずる。
【0018】一方、長さ方向に材料の流れを生じさせる
圧延としては、カリバーロールを使用した圧延が好適で
ある。カリバーロールを使用した圧延工程では、管内に
プラグやマンドレルが挿入されている場合とそうでない
場合で若干異なるが、長さ方向と平行もしくは長さ方向
と10度前後までの角度をなして材料の流れが生ずる。
換言すれば、周方向と垂直もしくは周方向と10度前後
までの角度をなして材料の流れが生ずる。
【0019】なお、「従来の技術」の項で述べたよう
に、「圧延方式」による継ぎ目無し管の製造は、通常、
穿孔、延伸、磨管、定型、絞り等の呼称の種々の圧延工
程からなっており、傾斜ロールを使用した圧延工程とカ
リバーロールを使用した圧延工程からなっている。ただ
し、本発明においては、各々の圧延工程が特定方式のロ
ールを固定して使用するのを必須としているわけではな
く、圧延ミルによっては、穿孔を傾斜ロール方式で行う
場合もあるし、カリバーロール方式によって行う場合も
ある。後者の場合、補助的に圧延素材を後方からプレス
する場合もある。また、延伸工程をはじめ他の圧延工程
も同様であり、各々が、傾斜ロール方式であったり、カ
リバーロール方式を用いる場合もある。すなわち、穿孔
を傾斜ロール方式、延伸以降の工程をカリバーロール方
式で行ってもよいし、その逆も可能である。また、穿
孔、延伸、磨管、定型の一連の工程が、傾斜ロール、カ
リバーロール、傾斜ロール、カリバーロールといったよ
うに交互に配置された構成など傾斜ロール圧延とカリバ
ーロール圧延の組合せが如何ようであっても、傾斜ロー
ルの使用工程における減面率の合計とカリバーロールの
使用工程における減面率の合計との比が、本発明の範囲
内である限り、本発明の効果が発揮可能である。
【0020】また、本発明は、造管後の熱処理や矯正、
精整などの工程について、これらを規制するものではな
い。すなわち、焼鈍、溶体化時効、溶体化過時効等の種
々の熱処理を行うことが可能であるし、熱間、冷間での
矯正や、研削、切削、酸洗等の種々の精整工程を行うこ
とが可能である。ただし、β変態点以上に加熱すると、
せっかく生成した優れたα相集合組織をすべて破砕して
しまうので、これは避けなくてはならない。
【0021】さらに、本発明では、造管行程の途中で、
再加熱を行い、その後さらに圧延工程を行うことも可能
である。ただし、β変態点以上の温度にまで再加熱する
と、再加熱前のα+β域での加工履歴がすべて消えてし
まうのでこれは避けなくてはならない。もし、β変態点
以上の温度に再加熱した場合は、その後の圧延工程にお
いて本発明の方法が適用されなくてはならない。
【0022】さて、上述した本発明の方法は、チタン合
金としてはα型またはα+β型チタンに適用するもので
あるが、特にα+β型チタンでは、特に酸素と窒素を合
計で0.3重量%以上含有したTi−Fe−O−N系に
おいて本発明の効果がよく発揮される。
【0023】一般に、Ti−Fe−O−N系チタン合金
は、Feを0.9〜2.3%程度含有し、さらに酸素お
よび窒素を合計で0.1〜0.6%程度含有している。
前記したFeの下限含有量は組織微細化のために必要な
量として、また上限量は凝固偏析を生じない量として規
定されたものである。また、酸素および窒素は、強化元
素であり、添加量に応じて種々の強度レベルが達成され
ている。ただし、0.6重量%を超えると、延性が低下
するため、実用的には使用されていない。このTi−F
e−O−N系合金は、熱間変形抵抗が低いため、β変態
点以下の温度域で加工しやすく、継ぎ目無し管を圧延方
式で製造しやすいという特徴を有する反面、α相集合組
織を形成しやすいという特性を有しているため、強い材
質異方性も生じ易い。
【0024】このような特徴を有するTi−Fe−O−
N系合金に対しては、本発明は特に有効であり多大な効
果が発揮される。本発明でTi−Fe−O−N系合金の
酸素と窒素の合計を0.3重量%以上としたのは、酸素
および窒素は強度を確保するための元素であり、これら
が総計で0.3重量以上含まれるような高強度材でない
と、異方性自体がさほど問題とされないからである。ま
た、酸素と窒素の総量の上限値は特に規制しないが、酸
素と窒素の総量は通常添加される量と同様に0.6重量
%程度以下とすることが望ましい。また、Feの含有量
については、通常添加される0.9〜2.3重量%の範
囲が望ましい。
【0025】前記Ti−Fe−O−N系合金には、必要
により、さらに0.05〜0.5重量%の白金族元素を
添加することができる。白金族元素の添加は、チタン合
金の耐食性をさらに高めるために有効であるが、0.0
5重量%未満ではその作用効果が小さく、0.5重量%
以上添加しても作用効果が飽和し、コスト的に無駄であ
る。
【0026】
【実施例】以下に、実施例で本発明をさらに詳しく説明
する。図3は試験に用いた造管ミルの概要を示す。ミル
Aは傾斜ロール方式の穿孔、ミルBはカリバーロール方
式の穿孔を行う工程からなっている。また、ミルCは、
ミルBで造管された素材を再加熱し、さらに小径の管と
する工程である。
【0027】(試験1)表1に示すように、1.5重量
%のFe、0.5重量%の酸素、0.04重量%の窒素
を含有するα+β型チタン合金(β変態点:950℃)
を、真空アーク2回溶解し、分塊圧延により、170mm
直径の円形断面のビレットとし、図3のミルA工程で表
1に示す条件で、外径161.4mm、厚さ7.0mmの継
ぎ目無し管とし、長さ方向、周方向、厚さ方向(径方
向)に、直径5mm、長さ6mmの円柱状試験片を切り出
し、圧縮試験を行い、0.2%耐力を測定した。また、
長さ方向には、ゲージ部の幅12.5mm、厚さ4mm、長
さ80mmの引張試験片を切り出し、引張試験を行い、伸
びを測定した。
【0028】
【表1】
【0029】試験結果を表4に示す。試験番号1は、β
域で70%の穿孔を行い、その後、延伸、磨管、定型の
工程をα+β域で50%の減面率で行い、焼鈍を行った
場合である。表4に示すように、長さ方向と周方向の
0.2%耐力比が0.76と、周方向が著しく高くなっ
ている。また、厚さ方向の0.2%耐力は、長さ方向と
周方向の0.2%耐力の平均値よりも低くなっている。
これは、α+β域で50%の減面率の強加工を行って
も、傾斜ロールを使用した圧延工程とカリバーロールを
使用した圧延工程の減面率の合計の比が、本発明で規定
した0.5〜2.0の範囲から逸脱したために、周方向
と長さ方向の材質異方性を解消して厚さ方向の強度を向
上させるα相集合組織が形成しなかったためである。
【0030】試験番号2は、全造管工程をβ変態点以上
のβ単相温度域で行い、同時にβ相を再結晶させ、その
後の冷却中に析出するα相の結晶方位をランダムなもの
とした場合である。また、試験番号3は、圧延終了後の
熱処理をβ変態点以上で行い、β相をいったん再結晶さ
せて、その後の冷却中に析出するα相の結晶方位をラン
ダムなものとした場合である。このような方法では、表
4に示すように、等方的な強度特性は得られても、β粒
の粗大化、および冷却中に生成した低延性の板状および
針状α相のために10%未満の低い伸びしか得られてい
ない。また、強度特性が均一となるため、厚さ方向の強
度も特に高いものとはなっていない。
【0031】以上の例に対し、本発明の実施例である試
験番号4および5は、表4に示すように、いずれも長さ
方向と周方向の0.2%耐力比が1.0±0.1の範囲
にある等方的材質を示し、厚さ方向の0.2%耐力も、
長さ方向と周方向の0.2%耐力の平均値よりも10%
以上高くなっている。また、伸びも10%をはるかに上
回る20%近傍の値が得られている。両例の熱処理は、
試験番号4が焼鈍、試験番号5が溶体化過時効処理と異
なっているが、ともにβ変態点以下の熱処理であり、両
者とも所望の特性が得られている。
【0032】(試験2)試験1に供したTi−1.5F
e−0.5〔O〕−0.04〔N〕(β変態点:950
℃)に加え、1.5重量%のFe、0.3重量%の酸
素、0.04重量%の窒素を含有するα+β型チタン合
金Ti−1.5Fe−0.3〔O〕−0.04〔N〕
(β変態点:930℃)、1.5重量%のFe、0.2
5重量%の酸素、0.02重量%の窒素を含有するα+
β型チタン合金Ti−1.5Fe−0.25〔O〕−
0.02〔N〕(β変態点:920℃)、α+β型チタ
ン合金Ti−6Al−4V(β変態点:990℃)およ
びTi−6Al−4V ELI+0.2Pd(β変態
点:975℃)、α+β型チタン合金Ti−3Al−
2.5V(β変態点:920℃)、α型チタン合金Ti
−5Al−2.5Sn ELI(β変態点:1035
℃)を、真空アーク2回溶解し、分塊圧延により、21
0mm×210mmの矩形断面のブルームとし、ミルBの工
程で表2に示す条件で、外径251.7mm、厚さ16.
5mmの継ぎ目無し管とし、長さ方向、周方向、厚さ方向
(径方向)に、直径10mm、長さ12mmの円柱状試験片
を切り出し、圧縮試験を行い、0.2%耐力を測定し
た。また、長さ方向および周方向には、ゲージ部の直径
6.35mm、長さ30mmの引張試験片を切り出し、引張
試験を行い、伸びを測定した。熱処理はすべて710℃
1h/空冷の焼鈍処理である。
【0033】
【表2】
【0034】試験結果を表4に示す。試験番号6,8,
9,11は、酸素と窒素を合計で0.3重量%以上含む
Ti−Fe−O−N系α+β型チタン合金に対し本発明
を適用した本発明例である。表4に示すように、いずれ
も長さ方向と周方向の0.2%耐力比が1.0±0.1
の範囲にある等方的材質であり、厚さ方向の0.2%耐
力も、長さ方向と周方向の0.2%耐力の平均値よりも
10%以上高くなっている。また、伸びも10%を十分
に上回っており、本発明の効果が十分に発揮されてい
る。これに対し、試験番号7では、伸びが10%に未達
であった。これは、β変態点以下のα+β域での加工
が、35%の減面率でしかなかったため、延性に乏しい
板状α相や針状α相が残存したためである。厚さ方向の
強度もさほど高くなっていない。また、試験番号10で
は、長さ方向の強度が周方向に比べて著しく高くなって
おり、厚さ方向の強度もさほど高くなっていない。高強
度であった長さ方向の引張伸びもわずか5.55%しか
得られていない。これは、傾斜ロールを使用した圧延工
程における減面率の和と、カリバーロールを使用した圧
延工程における減面率の和の比が、本発明で規定した
0.5〜2.0の範囲よりも大きかったためである。
【0035】なお、試験番号12もTi−Fe−O−N
系α+β型チタン合金であり、表4に示すように、良好
な結果が得られているが、酸素窒素の合計が0.3%に
満たないために、0.2%耐力が高々600MPa程度
の合金であり、元々強度異方性が特に問題となるような
合金ではない。したがって、確かに本発明の効果は現れ
てはいるが、本発明で対象としている高強度Ti−Fe
−O−N系合金ほどその効果を強調できるものではなか
った。
【0036】次に、試験番号13,14,15,16
は、各々、Ti−6Al−4V、Ti−3Al−2.5
V、Ti−6Al−4V ELI+0.2Pd、Ti−
5Al−2.5Snのα+β型およびα型合金に本発明
を適用した例である。表4に示すように、いずれの場合
も、長さ方向と周方向の0.2%耐力比が1.0±0.
1の範囲にある等方的材質であり、厚さ方向の0.2%
耐力も、長さ方向と周方向の0.2%耐力の平均値より
も10%以上高くなっている。また、伸びも10%を十
分に上回っており、本発明の効果が十分に発揮されてい
る。
【0037】(試験3)試験1および2に供したTi−
1.5Fe−0.5〔O〕−0.04〔N〕(β変態
点:950℃)に加え、1.5重量%のFe、0.5重
量%の酸素、0.04重量%の窒素、0.04%のPd
を含有するα+β型チタン合金Ti−1.5Fe−0.
5〔O〕−0.04〔N〕−0.04Pd(β変態点:
948℃)、1.5重量%のFe、0.5重量%の酸
素、0.04重量%の窒素、0.06%のPdを含有す
るα+β型チタン合金Ti−1.5Fe−0.5〔O〕
−0.04〔N〕−0.06Pd(β変態点:946
℃)、1.5重量%のFe、0.5重量%の酸素、0.
04重量%の窒素、0.4%のRuを含有するα+β型
チタン合金Ti−1.5Fe−0.5〔O〕−0.04
〔N〕−0.4Ru(β変態点:944℃)、1.5重
量%のFe、0.5重量%の酸素、0.04重量%の窒
素、0.6%のRuを含有するα+β型チタン合金Ti
−1.5Fe−0.5〔O〕−0.04〔N〕−0.6
Ru(β変態点:942℃)を、真空アーク2回溶解
し、分塊圧延により、210mm×210mmの矩形断面の
ブルームとし、ミルBおよびミルCの工程によって、表
3に示す条件で外径178mm、厚さ13mmの継ぎ目無し
管とし、長さ方向、周方向、厚さ方向(径方向)に、直
径10mm、長さ12mmの円柱状試験片を切り出し、圧縮
試験を行い、0.2%耐力を測定した。また、長さ方向
からは、ゲージ部の直径6.35mm、長さ30mmの引張
試験片を切り出し、引張試験を行い、伸びを測定した。
熱処理はすべて710℃−1h/空冷の焼鈍処理であ
る。また、ミルBからミルCへ移る際の再加熱はβ変態
点以下のα+β域である850℃である。
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】試験結果を表4に示す。試験番号17,1
8,19は、Ti−1.5Fe−0.5〔O〕−0.0
4〔N〕に本発明を適用した例であり、表4に示すよう
に、いずれの場合も長さ方向と周方向の0.2%耐力比
が1.0±0.1の範囲にある等方的材質であり、厚さ
方向の0.2%耐力も、長さ方向と周方向の0.2%耐
力の平均値よりも10%以上高くなっている。また、伸
びも10%を十分に上回っており、本発明の効果が十分
に発揮されている。しかし、試験番号20では、表4に
示すように、周方向の強度が長さ方向に比べて著しく高
くなっており、厚さ方向の強度もさほど高くなっていな
い。これは、傾斜ロールを使用した圧延工程における減
面率の和と、カリバーロールを使用した圧延工程におけ
る減面率の和の比が、本発明で規定する0.5〜2.0
の範囲よりも小さかったためである。
【0041】Ti−Fe−O−N系合金に、さらに白金
族元素であるPdまたはRuを0.05〜0.5重量%
添加した合金に本発明を適用した試験番号22,23
は、表4に示すように、すべて所望の優れた特性が得ら
れており、白金族添加合金に対しても本発明の効果が十
分に現れている。試験番号21も良好な結果が得られて
いるが、0.04重量%のPd添加は耐食性改善にはさ
ほど効果はないため、不純物の扱いであり、通常のTi
−Fe−O−N系合金の一種である。また、試験番号2
4も良好な結果が得られているが、耐食性改善に必要な
0.05〜0.5重量%を超えてRuが不要に添加され
ており、コスト的に利点は認められない。
【0042】
【発明の効果】本発明では、α型またはα+β型チタン
合金によって継ぎ目無し管を製造する方法において、チ
タン合金をβ変態点以下の温度域で40%以上の減面率
の加工を行い、その加工において周方向に材料の流れを
生じさせる圧延工程における減面率の合計と、長さ方向
に材料の流れを生じさせる圧延工程における減面率の合
計との比を0.5〜2.0の範囲内とすることによっ
て、長さ方向と周方向の材質異方性が小さく、さらに厚
さ方向の強度が長さ方向と周方向の強度を上回って高
い、α型またはα+β型チタン合金製継ぎ目無し管を製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】チタン合金の圧延方向とα相集合組織の関係を
示す図。
【図2】周方向と長さ方向の材質特性が均等で、厚さ方
向の強度が高いα相集合組織の模式的形成図。
【図3】試験を行った造管ミルのフロー概要を示す説明
図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村山 正俊 東京都千代田区大手町2−6−3 新日本 製鐵株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 α型チタン合金製継ぎ目無し管を圧延方
    式により製造する方法において、前記チタン合金をβ変
    態点以下の温度域で40%以上の減面率の加工を行い、
    その加工において周方向に材料の流れを生じさせる圧延
    工程における減面率の合計と、長さ方向に材料の流れを
    生じさせる圧延工程における減面率の合計との比が0.
    5〜2.0の範囲であることを特徴とする、長さ方向と
    周方向の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優れた
    α型チタン合金製継ぎ目無し管の製造方法。
  2. 【請求項2】 α+β型チタン合金製継ぎ目無し管を圧
    延方式により製造する方法において、前記チタン合金を
    β変態点以下の温度域で40%以上の減面率の加工を行
    い、その加工において周方向に材料の流れを生じさせる
    圧延工程における減面率の合計と、長さ方向に材料の流
    れを生じさせる圧延工程における減面率の合計との比が
    0.5〜2.0の範囲であることを特徴とする、長さ方
    向と周方向の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優
    れたα+β型チタン合金製継ぎ目無し管の製造方法。
  3. 【請求項3】 α+β型チタン合金が、Ti−Fe−O
    −N系で、酸素と窒素を合計で0.3重量%以上含有す
    ることを特徴とする、請求項2に記載の長さ方向と周方
    向の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優れたα+
    β型チタン合金製継ぎ目無し管の製造方法。
  4. 【請求項4】 さらに、0.05〜0.5重量%の白金
    族元素を含有するα+β型チタン合金であることを特徴
    とする、請求項1,2または3の何れか1項に記載の長
    さ方向と周方向の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度
    に優れたα+β型チタン合金製継ぎ目無し管の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 周方向に材料の流れを生じさせる圧延が
    傾斜ロールを用いた圧延であり、長さ方向に材料の流れ
    を生じさせる圧延がカリバーロールを用いた圧延である
    請求項1,2,3または4の何れか1項に記載の長さ方
    向と周方向の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優
    れたα+β型チタン合金製継ぎ目無し管の製造方法。
JP25210296A 1996-09-24 1996-09-24 長さ方向と周方向の材質異方性が小さく、厚さ方向の強度に優れたα型またはα+β型チタン合金製継ぎ目無し管の製造方法 Withdrawn JPH1094804A (ja)

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