JPH1094393A - 生理活性物質産生用ターゲッティングベクター - Google Patents

生理活性物質産生用ターゲッティングベクター

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JPH1094393A
JPH1094393A JP8271369A JP27136996A JPH1094393A JP H1094393 A JPH1094393 A JP H1094393A JP 8271369 A JP8271369 A JP 8271369A JP 27136996 A JP27136996 A JP 27136996A JP H1094393 A JPH1094393 A JP H1094393A
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gene
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JP8271369A
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English (en)
Inventor
Hiroaki Maeda
浩明 前田
Kiyoto Nishiyama
清人 西山
Takayuki Imamura
隆幸 今村
Seiya Mizumoto
誠也 水本
Kenji Soejima
見事 副島
Keiko Nakamura
敬子 中村
Yoshitaka Imagawa
義孝 今川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chemo Sero Therapeutic Research Institute Kaketsuken
Original Assignee
Chemo Sero Therapeutic Research Institute Kaketsuken
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 生理活性物質を安定的に高産生可能なヒト肝
細胞を作製する。 【構成】 グルタチオンSトランスフェラーゼエンハン
サーと他のプロモーターとを組み合わせることにより得
られた強力な外来性発現調節領域の5'側及び3'側に、
所望とする生理活性物質の相同領域を配したターゲッテ
ィングベクター(5'側相同領域−外来性発現調節領域
−3'側相同領域)を構築する。当該ベクターをヒト肝
細胞に導入することにより、所望の生理活性物質が大量
かつ安定的に発現可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、造血因子などの生理活
性物質を実用レベルで産生させるヒト肝細胞の作製方法
に関する。
【0002】
【従来技術】ヒト肝細胞は造血因子などのいろいろな生
理活性物質を産生する細胞である。そのようなヒト肝細
胞からin vitroで産生された生理活性物質はいわゆる天
然型と言われ、ヒト生体内に存在する生理活性物質と同
一のものである。また、その遺伝子構造・形態が全く同
じ(同じ染色体の同じ場所に同じ配列で位置している)
であるため、生体内で作られている生理活性物質の産生
形態を、そのまま反映していると言える。従って、この
ような産生細胞から作られた生理活性物質は、医薬品と
して使用するに最も適したものである。しかしながら今
日までヒト肝細胞由来の細胞株を培養しても、生理活性
物質の産生量が低いために、実用的なレベルで生理活性
物質を得ることはできなかった。例えば、エリスロポエ
チン(EPO)を産生することが知られているHepG2細
胞[ATCC番号HB8065:B.B.Knowleset al., Science, 20
9, 497 (1980)]は10〜40mU/ml程度のEPO産生量しか
ない[M. A. Goldberg et al., Proc. Natl. Acad. Sc
i. USA, 84, 7972 (1987)]。実際、ヒト肝細胞を生理
活性物質産生用として実用化した例はない。
【0003】ヒト肝細胞が産生する生理活性物質のう
ち、例えば、EPOなどの造血因子遺伝子の核酸塩基配
列の多くは既に公表されており、宿主細胞に外来造血因
子遺伝子を導入し、宿主細胞の染色体にランダムに組み
込むことによって造血因子産生細胞が作られている。従
来の遺伝子導入法による高産生細胞を作製する方法で
は、宿主細胞の染色体のランダムな場所に遺伝子が組み
込まれる。外来遺伝子の発現は挿入された染色体の場所
によって影響を受けるので、導入された遺伝子全てが安
定した状態で発現を維持するとは限らない。さらに、導
入遺伝子が蛋白の生合成・修飾や細胞の増殖等に重要な
遺伝子ローカスに組み込まれた場合、蛋白産生に重大な
影響を与えることが予想される。従って、安定な生理活
性物質の高産生細胞を確立するためには、数多くの形質
転換細胞をスクリーニングしなければならず、その中か
ら最も高産生で安定的な発現をする細胞を選ぶ必要があ
った。例えば、大橋ら[蛋白質核酸酵素, 35, 2643(199
0)]の報告では、EPOcDNAをチャイニーズハムス
ター卵巣(CHO)細胞に発現させた場合の産生量は50
〜500μg/lであり、さらに医薬品開発に必要な産生量を
確保するためには、遺伝子増幅可能なジヒドロ葉酸還元
酵素(dhfr)遺伝子を同時に細胞に導入し、遺伝子増幅、
スクリーニングをくり返す必要があること、そのスクリ
ーニングだけで半年から1年を要することが述べられて
いる。このように、従来のランダムな遺伝子の導入法で
は、安定性に優れた高産生細胞を作るには効率が高いと
は言えない。
【0004】さらに、これらのランダムな遺伝子導入法
により産生された造血因子は、通常CHO細胞などのヒ
ト以外の宿主細胞で作られているために、天然型のヒト
造血因子とは糖鎖構造に差異が認められており、糖鎖に
おけるシアル化の程度もヒト由来のものと異なってい
る。造血因子は臨床において頻回投与されるため、ヒト
由来のものと糖鎖構造の異なる造血因子の投与は新たな
抗原性を生じるので好ましくない。また、糖鎖構造の差
異はEPOなどの造血因子の活性にも影響することが知
られている。このことは糖鎖が付加する生理活性物質に
とって共通の問題である[森本ら, 医薬品研究, 25, 40
5(1994)]。
【0005】ヒト肝細胞のin vitroでの細胞培養系で生
理活性物質産生が低い理由は、生理活性物質自身の発現
調節領域(エンハンサー・プロモーター)が分化特異的
な制御や組織特異的な制御、フィードバック制御などの
様々な制御を受けており、通常のin vitroの細胞培養系
では、これらの制御を生体内と同様に保つことが困難だ
からである。従って、in vitroの細胞培養系にはそれに
適した発現調節領域が必要となってくる。しかし、現状
ではヒト肝細胞で遺伝子を高発現させうる適当な発現調
節領域は知られていない。例えば、強力な発現調節領域
の一つだと考えられているCAGエンハンサー・プロモ
ーター[ヒトサイトメガロウイルスエンハンサー及びニ
ワトリβアクチンプロモーター、ウサギβグロビンスプ
ライシングシグナルを持った複合発現調節領域:H. Niw
aら Gene, 108, 193 (1991),特開平3-168087号]を使
用しても、実際にはヒト肝細胞でのEPO発現量はそれ
ほど高まらない。また、αフェトプロテイン(AF)な
どヒト肝細胞株で最も産生されている蛋白質は、その遺
伝子に肝細胞特異的エンハンサー・プロモーターを持っ
ていることが知られているが、そのようなエンハンサー
・プロモーターを用いても、発現活性はそれほど高くな
く、SV40エンハンサー・プロモーターと比較して低いか
同等である[K. Watanabe et al., J. Biol. Chem., 26
2, 4812(1987)]。このようにCAGエンハンサー・プ
ロモーターやAFなどの肝細胞特異的エンハンサー・プ
ロモーターを用いても、遺伝子の発現活性はそれほど高
まらず、ヒト肝細胞で強く発現を誘導する発現調節領域
が見当たらない状況であった。
【0006】一方、生理活性物質遺伝子を導入して安定
的な発現を行うには、導入した遺伝子の不活性化や脱落
が生じないような染色体の場所に遺伝子を組み込む必要
がある。生体内で実際に生理活性物質遺伝子を発現して
いる細胞では、その遺伝子の不活性化や脱落は生じてい
ないことから、その遺伝子が本来位置している染色体の
場所は、その遺伝子の安定的発現にとって最適な場所の
一つだと思われる。これらのことから、本発明者らは生
理活性物質の高発現と安定的発現を両立させるには、産
生させたい生理活性物質の染色体遺伝子の発現調節領域
を、in vitroの細胞培養系に適した発現調節領域に置き
換えればよいと考えた。
【0007】染色体上の遺伝子の目的の場所に外来遺伝
子を挿入する技術はホモロガスリコンビネーション(相
同組換え)技術として知られている。ある染色体DNA
塩基配列に対して相同性の高いDNA塩基配列を細胞内
に導入した場合、その染色体DNAの相同性のある領域
と導入したDNAとの間でDNA組換えを起こし、DN
Aが入れ替わることが知られている。この現象を利用し
て、目的の染色体遺伝子に相同性の高いDNAと外来性
の遺伝子を連結してターゲッティングベクターを構築
し、これを細胞に導入すれば、ある確率で染色体の目的
の場所に外来遺伝子を挿入することができる。この技術
を使って、マウス胚幹(ES)細胞の目的の構造遺伝子
を壊し、特定の遺伝子の欠損したマウス(ノックアウト
マウス)が数多く作られている[M. R. Capecchi, Scie
nce, 244, 1288(1989)]。これまで相同組換えは目的と
する構造遺伝子を壊すことに主に利用されてきたが、こ
の技術を応用して生理活性物質の不産生細胞を高産生細
胞に変えることも試みられている[特表平5-504682]。
しかし、本発明者らがEPO遺伝子を材料に行った相同
組換えでは、EPO本来の発現調節領域を外来の発現調
節領域に置き換えるために、EPO遺伝子の5'上流領
域にCAGエンハンサー・プロモーターを挿入したター
ゲッティングベクターを構築し、ヒト肝細胞に導入した
が、単にEPO自身の発現調節領域に外来性の発現調節
領域を挿入しただけのターゲッティングベクターでは、
期待された造血因子の産生量を持った細胞は得られなか
った。また、セルデンらもEPO遺伝子を用いて同様の
試みを行っているが、わずか0.25U/mlの発現量の細胞し
か得られていない(特表平7-500969)。また、相同組換
えは、使用する遺伝子の種類によっては起こりにくいこ
とが知られている。その原因は不明であり、ターゲッテ
ィングベクターの構築の際に使用する遺伝子領域によっ
て相同組換えの成否が左右されているのが現状である
[荒谷ら,蛋白質核酸酵素,36,2281(1991)]。このよう
に、ヒト肝細胞の生理活性物質産生能力を安定的に高め
る効率的な方法は、現状では見当たらず、従来技術で
は、生理活性物質の遺伝子構造・形態を保ったまま、ヒ
ト肝細胞から実用レベルで生理活性物質を産生させるこ
とは、困難であった。
【0008】
【本発明の解決すべき課題】前述のように、生体内の生
理活性物質と同一の性質を持った天然型の生理活性物質
を産生しているヒト肝細胞株は存在しているが、産生量
が低くて実用的ではなかった。また、その発現量を強め
るための相同組換え用ベクターによる発現調節領域の交
換も、ヒト肝細胞内で強力に働く発現調節領域が見当た
らない状況では産生量の点で実用的でなかった。さら
に、そのようなベクターによる相同組換えは組換え効率
が不十分であり、実用的でなかった。本発明の目的は、
従来技術では困難であった生理活性物質を安定的に高産
生するヒト肝細胞を効率よく確実に作製する技術を確立
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】このような状況におい
て、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、所望とする生
理活性物質自身の発現調節領域を外来性の強力な発現調
節領域と置換するために、ラット胎盤型グルタチオンS
トランスフェラーゼのエンハンサー(GST−E)を他のプ
ロモーターやエンハンサーと組み合わせることにより得
られた強力なエンハンサー・プロモーターを用いて、当
該エンハンサー・プロモーターの5'側及び3'側に所望
とする生理活性物質の相同領域を配したターゲッティン
グベクター(5'側相同領域−外来性発現調節領域−3'
側相同領域)を構築し、ヒト肝細胞に導入することによ
り、所望の生理活性物質が大量かつ安定的に発現可能と
なることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【発明の構成】生体内で作られている生理活性物質の産
生形態をそのまま反映していると思われるヒト肝細胞か
ら、生理活性物質の遺伝子構造・形態を保ったまま、目
的の生理活性物質を産生させるために、相同組換え現象
を応用したターゲッティングベクターを利用する。染色
体の目的の場所に外来遺伝子を導入するために使用され
るターゲッティングベクターは一般的に、染色体へ導入
したい外来性遺伝子断片の5'側及び3'側両側に、染色
体の目的の場所と相同性を有するDNA配列を持つ遺伝
子を配した構造を基本としており、「5'側相同領域−
外来性遺伝子配列−3'側相同領域」と表すことができ
る。実用的なレベルで安定的な高産生細胞を効率よく作
製するために、外来性遺伝子断片としてin vitroの細胞
培養系に適した高発現の発現調節領域断片を選定し、産
生させたい生理活性物質の染色体遺伝子の発現調節領域
と効率よく置き換えるために必要な5'側及び3'側両相
同領域の条件を決定しなければならない。本発明者ら
は、EPO遺伝子やトロンボポエチン(TPO)遺伝子
を材料に研究した結果、ヒト肝細胞で強力に働く発現
調節領域(エンハンサー・プロモーター系)としてラッ
ト胎盤型グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)
のエンハンサーと当該GST自身の発現調節領域とは異
なる発現調節領域を組み合わせた複合発現調節領域を用
いること、ヒト肝細胞で効率よく相同組換えするため
には、目的生理活性物質遺伝子自身の発現調節領域を除
くか不活性化させ、さらに少なくともヒト染色体特有の
Alu反復配列を外来性遺伝子断片の近くに持たないよう
に5'側3'側の両相同領域を設定すること、という重要
な条件・技術を見出し、肝細胞における相同組換え技術
を利用した生理活性物質産生細胞の作製方法を完成する
に至った。
【0011】本発明によって特徴づけられるターゲッテ
ィングベクターは、生理活性物質構造遺伝子の5'上流
域、あるいは当該5'上流域及び構造遺伝子の一部を含
むDNA断片領域及び当該領域中に存在する生理活性物
質遺伝子自身の発現調節領域の代わりに外来性の発現調
節領域断片が挿入された構造体(5'側相同領域−外来
性発現調節領域−3'側相同領域)である。この中で最
も重要な条件の一つは、挿入される外来性の発現調節領
域の質である。生理活性物質を実用レベルで産生するた
めには、強力な発現調節領域(いわゆるエンハンサー・
プロモーター)が必須である。かかる発現調節領域とし
て、GSTエンハンサー(GST−E)[M. Sakai et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 9456(1988)]を組
み込んだ発現調節領域の発現活性が非常に強力であるこ
とを見出した。GST-EはSakaiらが報告したラット胎盤型
グルタチオンSトランスフェラーゼの5'上流のEcoRI
(-2.9kb)〜AccI(-2.2kb)の約700bのDNA断片内に
あり、さらに望ましくはSacI−AccIの約350bのDNA断
片である。GST-Eそのものはそれ自身のプロモーターと
の組合せでは、SV40エンハンサー・プロモーターと同程
度の発現活性しか有さない[M. Sakai et al., Proc. N
atl. Acad. Sci. USA, 85, 9456(1988)]。しかしなが
ら、GST-Eと他のプロモーターと組み合わせたエンハン
サー・プロモーターが、SV40エンハンサー・プロモータ
ーをはるかに凌ぐ活性を持つことを見出した(図1
3)。その望ましい組合せは、GST-EとAGプロモータ
ー[ニワトリβアクチンプロモーター及びウサギβグロ
ビンスプライシングシグナルを持った複合発現調節領域
(J. Miyazaki et al., Gene, 79, 269(1989);特開平2
-156891)]と組合せたGST-E/AGエンハンサー・プロモ
ーター、GST-EとCAGエンハンサー・プロモーター
[H. Niwa et al., Gene, 108, 193(1991);特開平3-16
8087号]とを組合せたGST-E/CAGエンハンサー・プロモ
ーター、さらに当該エンハンサー・プロモーターとαフ
ェトプロテイン(AF)エンハンサー[K. Watanabeet
al., J. Biol. Chem., 262, 4812(1987)及びY. Urano e
t al., Gene 32, 255(1984)記載のαフェトプロテイン
遺伝子の5'上流−3〜−5kb付近にある約2kbのEcoRI
サイト間を含む領域]とを組合せたAF/GST-E/CAGエンハ
ンサー・プロモーターであり、いずれもCAGエンハンサ
ー・プロモーター単独を用いた場合の5〜10倍強い活性
を示した。さらに、GST-E/CAGあるいはAF/GST-E/CAGエ
ンハンサー・プロモーターを用いたベクターを導入した
場合、各コロニー間でのEPO発現にばらつきがなく、
安定した高発現をもたらすことも見出した(図14)。
【0012】また、本発明のターゲッティングベクター
は、適当な選択マーカーをコードする遺伝子を含有す
る。当該選択マーカーの一例としてはアミノグリコシド
3'ホスホトランスフェラーゼ(neor)遺伝子が挙げら
れるが、ヒト肝細胞で選択可能なものであれば、どの選
択マーカー遺伝子を用いてもかまわない。通常の相同組
換え用のベクターと同様に、ヘルペスウイルス由来のチ
ミジンキナーゼを併用してネガティブ・ポジティブ選択
をすることもできる。また、ジヒドロ葉酸還元酵素(dh
fr)遺伝子のような遺伝子増幅能を有する遺伝子を選択
マーカーとして用いて、相同組換え後に標的生理活性遺
伝子を増幅することもできる。
【0013】本発明によって特徴づけられるターゲッテ
ィングベクターの構成要素の中で、次に重要な条件の一
つは、挿入される外来性の発現調節領域の5'及び3'両
側に位置する相同組換え標的を決定するためのDNA領
域の質である。そのような相同組換え標的を決定するた
めのDNA領域として、生理活性物質構造遺伝子の5'
上流域、あるいは当該構造遺伝子の5'末側の一部を含
む当該5'上流域の遺伝子配列が挙げられるが、その中
の生理活性物質遺伝子自身のプロモーター、エンハンサ
ー、サイレンサーなどから成る発現調節領域が含まれて
いないことが重要である。特に少なくともプロモーター
部分を含有しないこと、あるいはプロモーターが機能し
ないように欠損させることが望ましい。一般に、プロモ
ーターと言われる領域はmRNA合成開始点の5'側直
前に存在することが知られている。また、エンハンサー
やサイレンサーと言われる発現調節領域は一般的にプロ
モーターと近接して存在する。それらを含む発現調節領
域の長さは生理活性物質の種類によって異なるが、一般
的にcap siteから約0.2〜6kb上流に渡っている。この
ような領域には、種々の発現調節タンパク質が結合ある
いは関係しており、この部分を残したまま新たな外来性
の発現調節領域を含むターゲッティングベクターを構築
しても、発現調節タンパク質の競合などによる活性阻害
が生じ、結果的に標的生理活性物質遺伝子の発現が低下
する。
【0014】また、外来性の発現調節領域の5'側及び
3'側両側に位置する相同組換え標的を決定するための
DNA領域は、その長さに関して、基本的な構造は5'
側相同領域が長く、3'側相同領域が短い構造をしてい
るが、Aluファミリー[C. M. Rubin, et al., Nature,
284, 372(1980)]などのヒトゲノムDNAに特有の反復
配列を含まないように、やむなく含む場合は挿入される
外来性発現調節領域からの距離を少なくとも1.4kb以上
取るようにすれば、その長さに限定されるものではな
い。ここで、Alu反復配列とはヒトゲノム特有の配列
で、ヒトの染色体中に30万個程度存在しており、全DN
Aの3〜6%に達すると言われている。ほとんどの遺伝
子は少なくとも1個以上のAlu反復配列を持っていると
言われており、このような反復配列が染色体上に広く分
布している["Molecular Biology of thegene 3rd ed."
J. D. Watson et al., ed. pp 668, The Benjamin/Cum
mings Publishing Company, Inc., California, 198
7]。このようなAlu配列がターゲッティングベクターの
相同領域に含まれると相同組換え反応が阻害され、相同
組換え効率が低下するので、当該配列はターゲッティグ
ベクター中から除外されることが好ましい。
【0015】また、5'側相同領域の3'末端は、標的遺
伝子の発現調節領域の機能を除くことが確実な位置であ
ればどこでも良く、5'末端については特に制限はな
い。また、3'側相同領域の5'末端は、目的の生理活性
物質のマチュア蛋白質をコードするアミノ酸コーディン
グシークエンスの開始コドンより5'上流側で、かつ、
当該生理活性物質自身の発現調節領域を含まないか、あ
るいはその発現調節領域の機能を喪失させる位置であれ
ばどこでも良く、その3'末端の制限は特にない。ま
た、3'側相同領域には、目的物質の5'非翻訳領域
(5'UT)、シグナル配列、、またエクソン配列の一
部などが含まれる場合がある。その場合、発現量を上げ
るために当該配列の一部において置換、欠損または付加
などの修飾がなされてもよい。
【0016】例えばEPOの場合、シグナル配列のN末
端より4個のアミノ酸(Met-Gly-Val-His;配列番号1
2)を、5個のアミノ酸(Met-Gly-Ile-Lys-Met;配列
番号13)に交換することにより、発現量が約2倍に高
まった。また、5'UT部分を短縮し、ほとんど欠失さ
せ、さらに上記5個のアミノ酸に交換した場合は、約10
倍に発現量が増大する(図15)。
【0017】このような生理活性物質の5'上流領域の
DNA断片は、既に公表されている核酸塩基配列[例え
ば、EPO:F. Lin et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
USA,82, 7580 (1985);TPO:D. C. Foster et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 13023(1994)]を基
に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)用のプライマーを
デザインし、生理活性物質発現細胞のmRNAより調製
したcDNAより目的生理活性物質のcDNA断片をP
CRクローニングするか、あるいは公知の核酸塩基配列
を基にオリゴプローブを直接合成してプローブを調製
し、ヒト染色体DNAの遺伝子ライブラリー(ストラタ
ジーン社やクローンテック社などから市販されているも
のを用いるか、あるいはヒト細胞から常法[J.Sambrook
et al., Molecular cloning, A Laboratory Manual 2n
d ed. chaper 8-12, Cold SpringsHarbor Laboratory P
ress, N.Y.,1989]に従い調製することができる)をス
クリーニングすることにより、単離することができる。
入手した生理活性物質の5'上流領域の遺伝子断片は、
制限酵素切断点によりマッピングし、その発現調節領域
を同定可能である。
【0018】望ましい材料として図1及び図19に示す
DNA断片が用いられる。これらのDNA断片及び外来
性の発現調節領域としてGST-E/CAGエンハンサー・プロ
モーターを用いて、図16、図17、図20、図21に
示すEPO及びTPO発現用のターゲッティングベクタ
ーがそれぞれ構築できる。本発明のターゲッティングベ
クターの望ましい具体例として、EPOの場合、図16
に示すpGCn-EPO11ΔEx800、pGCd-EPO11ΔEx800、pGCnd-
EPO11ΔEx800、及び図17に示すpGCn-EPO11ΔEx600、p
GCn-EPO11ΔEx800C25、pGCn-EPO11ΔEx500C25などが、
TPOの場合、図20に示すpGCn-TPO12ΔEx1200、pGCn
d-TPO12ΔEx1200、及び図21に示すpGCn-TPO12ΔEx40
0、pGCn-TPO12ΔEx200C25などが挙げられる。
【0019】このようにして構築されたターゲッティン
グベクターは適当な制限酵素により線状化しヒト肝細胞
に導入することができる。導入する遺伝子の形態は環状
のままでも良いが、バクテリアプラスミド由来の部分を
除くように線状化した方が望ましい。使用される制限酵
素は、目的とする生理活性物質の種類により異なるが、
EPOターゲッティングベクターはNotI/SalI酵素処理
で、TPOターゲッティングベクターはXhoI/SalI酵素
処理にて線状化される。遺伝子導入方法は、特に制限が
なく、リポソームを利用する方法やリン酸カルシウム沈
殿法など、通常の遺伝子導入法が使用できるが、エレク
トロポレーション法が望ましい。また、ヒト肝細胞であ
ればどの細胞でも宿主細胞となりうるが、HepG2細胞やH
uH7細胞[H. Nakabayashi et al., Cancer Res., 42, 3
858(1982)]を使用するのが望ましい。導入後、使用し
た選択マーカーに適した薬剤を含む選択培地による選択
を数週間行い、安定形質転換細胞を選択することができ
る。得られた薬剤耐性のコロニーを分離し、生理活性物
質の存在が検出できる方法によって、生理活性物質産生
細胞をスクリーニングできる。目的とする生理活性物質
の種類によってアッセイ方法は異なるが、目的生理活性
物質の存在を示すアッセイ系であればどんな方法であっ
てもかまわない。通常、目的生理活性物質に対する抗体
を用いたEIA法や生理活性物質依存性の細胞株を用い
たアッセイ法などがスクリーニングに利用できる。さら
に、限界希釈法のような方法によってクローニングすれ
ば、目的生理活性物質を産生するクローン細胞を得るこ
とができる。
【0020】このようにして得られたEPO及びTPO
産生細胞はいずれも高い産生量を示した。例えばEPO
の場合、約500〜700U/mlの産生量を示した(図18)。
このEPO産生量は、セルデンらのEPO発現量(0.25
U/ml;特表平7-500969)と比べて2,000倍以上高く、ま
た、CAGエンハンサー・プロモーターを単独に使用し
た場合(pEPO11ΔEx800)と比べても50〜70倍高いもの
である。これは蛋白質換算で約9mg/lに相当し、実用レ
ベルの産生量に達していると言える。このことは、本発
明のターゲッティングベクター及びそのベクターを用い
た相同組換え技術による生理活性物質産生細胞の作製方
法が、従来技術の問題点を解決しており、実際の医薬品
開発に使用できることを示している。本発明は、EPO
やTPO以外にも、既にそのmRNAあるいは染色体D
NA遺伝子配列がわかっているヒト細胞が産生する蛋白
質であれば、ほとんどのものに適応することが可能であ
る。そのような生理活性物質として、造血因子、免疫調
節因子、細胞増殖因子などの各種サイトカインを始め、
アルブミンなどの血中成分などが候補としてあげられ
る。例えば、顆粒球コロニー球刺激因子(G-CSF)、幹
細胞因子(SCF)、インターフェロン−α,−β及び
−γ、インターロイキン類、血管形成誘導因子、インシ
ュリンなどのホルモンなどである。以下に、実施例をあ
げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下に示
す実施例では、特に断りのない限り和光純薬、宝酒造、
東洋紡及びNew England BioLabs社製の試薬を使用し
た。
【0021】
【実施例】
《実施例1:EPO遺伝子のクローニング》ヒトEPO
遺伝子をクローニングするために、正常なヒト胎盤より
抽出したヒトゲノムDNAから構築されたEMBL3ファー
ジヒトゲノムDNAライブラリー(クローンテック社)を、
Sambrookらの方法[Molecular cloning,A Laboratory M
anual2nd ed., chaper 9-11, Cold Springs Harbor Lab
oratory Press, N.Y.,1989]に従い、フ゜ラークハイブ
リダイゼーションによりスクリーニングした。プローブ
として、ヒトEPOcDNA遺伝子断片(ブリティッシ
ュバイオテクノロジー社)を用いた。ニトロセルロース
フィルター当たり50,000フ゜ラーク、総計1,000,000フ゜
ラークを固定したフィルターを用いてフ゜ラークハイブ
リダイゼーションを行った結果、7個の陽性フ゜ラーク
を得、これらをクローニングした。これらの7クローン
のファージより上記の方法に従ってDNA断片を調製
し、制限酵素切断点のマッピングを行った結果、図1に
それぞれ示すように、EPO構造遺伝子の5'上流領域
を含む目的のクローンE2-1-1及びEPOをコードする全
エクソンを含むクローンE4-1を得た。E2-1-1クローンの
5'側に位置するBglII-KpnIの8kbのDNA断片をpSP72
(プロメガ社)のBglII-KpnIサイトにサブクローニング
し、pE2/BgK8プラスミドを作製した。また、E4-1クロー
ンからEPO遺伝子の全エクソンを含む10kbのBamHI断
片を切り出し、pUC19のBamHIサイトにサブクローニング
し、pE4B10プラスミドを作製した。これらのプラスミド
を以下の実施例でEPO遺伝子の材料とした。なお、pE
2/BgK8及びpE4B10の各プラスミドを組み込んだ大腸菌
は、それぞれEscherichia coli 11615(FERM P-15579
号)及びEscherichia coli 11614(FERM P-15578号)と
して、工業技術院生命工学工業技術研究所に本出願人よ
り寄託されている。
【0022】《実施例2:EPO発現確認用ベクターの
構築》宿主細胞内で標的となるEPO自身の発現調節領
域を、新たに導入される外来性の発現調節領域に相同組
換えによって置き換える際に、EPO自身の発現調節領
域が必要であるか否かを検討した。EPO遺伝子の発現
調節領域及び蛋白質コード領域を含む約10kbのBamHI断
片(図1)を用いて、EPO遺伝子5'上流のBglII−Sf
iI間の約1.6kbを欠失させた発現確認用ベクター(pE4B1
0/Bsf/NeoCAG)と、EPO遺伝子本来の発現調節領域で
ある約400bのHindIII−SfiI領域を残してBglII-HindIII
間を欠失させた発現確認ベクター(pE4B10/BH/NeoCAG)
を構築した(図2)。当該発現確認用ベクター中のEP
O遺伝子の約10kbのBamHI断片のBglII−SfiI及びBglII
−HindIII間には、それぞれ、選択マーカー遺伝子であ
るneor遺伝子(ストラタジーン社製プラスミドpMC1neoP
olyA由来)及び汎用的な発現調節領域であるCAGエン
ハンサー・プロモーター(ヒトサイトメガロウイルスエ
ンハンサー、ニワトリβアクチンプロモーター及びウサ
ギβグロビンスプライシングシグナルを持った複合発現
調節領域:H. Niwa et al., Gene, 108, 193 (1991))
を挿入した。
【0023】まず、約400bのHindIII-SfiI領域を欠失さ
せるために以下のことを行った。実施例1で得られたpE
4B10プラスミドをXbaI、BamHI酵素を用いていくつかの
断片に分割し、EPO遺伝子のエンハンサー・プロモー
ター領域と第1エクソンを含む約1.2kbのXbaI断片及び
EPO遺伝子の第1イントロンに存在するXbaIから3'
下流のBamHIまでの断片を、それぞれpBluescript II SK
+ベクターにサブクローン化し、pE4/XX1.1及びpE4/XB4
と名付けた。pE4/XX1.1プラスミドをEcoRVとSfiIで酵素
処理し、クレノー断片処理により平滑末端化したのち、
T4DNAリガーゼ酵素処理でセルフライゲーションするこ
とによってEPO遺伝子のエンハンサー及びプロモータ
ー、デハンサー等の遺伝子発現の調節領域(約400b)を
欠失させたプラスミドpE4/SfX0.8を得た。このプラスミ
ドからXhoI酵素処理、平滑末端化、XbaI酵素処理を経て
得られる約800bの断片を、予めNotI酵素処理、クレノー
断片処理、XbaI酵素処理したpE4/XB4プラスミドに結合
させることによって第1エクソンのSfiIから第5エクソ
ンまでのゲノムのEPO遺伝子を持つpE4/SfB5プラスミ
ドが得られた。
【0024】次に、ヒトEPO遺伝子の上流BamHI−Bgl
II領域、neor遺伝子、CAGエンハンサー・プロモータ
ーを持ったプラスミドpE4/BH5/NeoCAGを構築した。CA
Gエンハンサー・プロモーターのSalI−EcoRI断片[H.
Niwa et al., Gene, 108, 193(1991)]を平滑末端化
し、pBluescript II SK+ベクターのEcoRVサイトに挿入
して両端をそれぞれEcoRI−HindIIIサイトに変換し、pU
C18ベクターのEcoRI−HindIIIサイトに挿入してpCAGプ
ラスミドを構築した。このプラスミド由来のCAGエンハ
ンサー・プロモーターを含むEcoRI−HindIII断片を、pS
P72ベクター(プロメガ社)のEcoRI−HindIIIサイトにサ
ブクローニングし、そのBglII−HindIIIの断片を、neor
遺伝子を含む市販のpMC1NeopolyAプラスミド(ストラタ
ジーン社)のBamHI−HindIIIに挿入してpNeoCAGプラス
ミドを構築した。これをXhoI酵素処理、クレノー断片処
理、HindIII/DraI酵素処理することによってneor遺伝
子とCAGエンハンサー・プロモーターが連結された断
片を調製した。これをBglII酵素処理、平滑末端化、Hin
dIII酵素処理したpE4B10プラスミドに挿入することでE
PO5'上流域の3'下流にNeoCAGが配置されたpE4/BH5/
NeoCAGが構築された。pE4/BH5/NeoCAGプラスミドをHind
IIIで酵素処理した後Bacterial Alkali Phosphatase
(BAP)処理によって脱リン酸化したプラスミドとpE
4B10プラスミドよりHindIII酵素処理によって得られる
ゲノムEPO遺伝子を含む断片とをライゲーションさせ
ることによって、5'上流のBglIIからHindIIIまでのE
PO遺伝子上流約1.2kbをNeoCAG断片で置き換えたプラ
スミドpE4B10/BH/NeoCAGを完成させた。
【0025】同様に、BAP処理したpE4/BH5/NeoCAGプ
ラスミドと、EPO遺伝子のエンハンサー・プロモータ
ー領域を欠損したプラスミドpE4/SfB5よりHindIII酵素
処理して得られる約5.2kbの断片とライゲーションさせ
ることによって、5'上流のBglIIからSfiIまでのEPO
遺伝子5'上流約1.6kbをNeoCAG断片で置き換えたプラス
ミドpE4B10/Bsf/NeoCAGを完成させた。
【0026】《実施例3:EPO発現確認用ベクターの
導入》pE4B10/Bsf/NeoCAG及びpE4B10/BH/NeoCAGプラス
ミドは、Sambrookらの方法に従い、大腸菌によって大量
調製され、塩化セシウム超遠心法によって精製された。
これらのプラスミドは、それぞれ、LipofectACE(ギブ
コ-BRL社)による遺伝子導入方法によってヒト肝癌細胞
HepG2(ATCC番号HB8065:B. B. Knowles et al., Scien
ce, 209, 497 (1980))に導入された。HepG2細胞を10%
ウシ胎児血清(FCS)添加ダルベッコ改変MEM(DM
EM)培地で前日に直径20cmシャーレに107個の細胞を播
種しておく。各種プラスミド100〜200μgをギブコ-BRL
社のプロトコールに従ってLipofectACEを用いて細胞に
導入した。CO2インキュベーター内で12〜18時間培養
した後、10%FCS添加DMEM培地を5ml添加してトラン
スフェクション反応を停止させた。遺伝子導入後3ない
し4日目にその培養上清を採取した。その培養上清に含
まれるEPO蛋白量を、抗EPO抗体を用いた酵素抗体
法(EIA法)によって検討した。4回の導入実験を行
った結果、図3に示すように、BglII-HindIIIサイト間
の約1.2kbにneor遺伝子とCAGエンハンサー・プロモ
ーターを挿入した発現確認用ベクター、すなわちEPO
遺伝子自身の発現調節領域の上流にCAGエンハンサー
・プロモーターを接続したpE4B10/BH/NeoCAGプラスミド
ではほとんどEPO蛋白の発現は観察されなかった。一
方、BglIIサイトから第1エクソンの5'非翻訳領域(U
T)に存在するSfiIサイトまでをneor遺伝子とCAGエ
ンハンサー・プロモーターに交換し、完全にEPO遺伝
子自身のエンハンサー・プロモーターを削除したpE4B10
/Bsf/NeoCAGプラスミドではEPO蛋白の発現が確認さ
れた。従って、EPO遺伝子自身の発現調節領域を残し
たまま外来性の発現調節領域を挿入してもEPO蛋白質
の発現は増強されず、外来性の発現調節領域による発現
増強のためにはEPO遺伝子自身のプロモーター領域は
不要であると結論された。このことは、肝細胞における
相同組換え技術を利用した生理活性物質産生細胞の作製
方法を完成させるために必要な「ヒト肝細胞で強力に働
く発現調節領域(エンハンサー・プロモーター系)」を
動作させるための条件の一つであると考えられた。
【0027】《実施例4:5'側相同領域検討用EPO
ターゲッティングベクターの構築》EPO遺伝子の発現
調節領域をCAGエンハンサー・プロモーターに交換す
るためのEPOターゲッティングベクターの5'側相同
領域の検討を行った。EPO遺伝子の5'上流域のBamHI
からHindIIIまでの約13kbの領域を5'側相同領域とした
pEPO12ΔEx800と、その途中のBglII−HindIIIの約1.2kb
を削除して約12kbとしたpEPO11ΔEx800の二種類のEP
Oターゲッティングベクターを構築した(図4)。
【0028】まず、pEPO11ΔEx800ベクターを構築する
ために、KpnI、HindIIIの両サイトを欠失させたpBluesc
ript II SK+ベクターのBamHIサイトにpE4B10/Bsf/NeoCA
GプラスミドのBamHI断片を挿入してpE4B10/Bsf/NeoCAG
(ΔH-Kp)プラスミドを構築し、さらに、このHindIII−N
otI間にpE4/SfX0.8プラスミドのHindIII−NotI断片を挿
入してpE4BX6/Bsf/NeoCAGプラスミドを構築した。一
方、pEPO12ΔEx800ベクターを構築するために、pE4/BH5
/NeoCAGプラスミドのBglIIサイトにpE4B10プラスミドの
BglII断片を挿入してpE4/BH9/NeoCAGプラスミドを構築
した。さらに、pE4B10プラスミド由来の5.6kbのBamHI−
HindIII断片を持ったプラスミドpE4BH5.6のHindIIIサイ
トを欠失させた後、そのSalI-BglII断片をpE4/BH9/NeoC
AGプラスミドのBglII-XhoIサイト間に挿入してpE4/BH5.
5/NeoCAGプラスミドを構築した。このプラスミドのBamH
I-HindIII断片をpE4BX6/Bsf/NeoCAGプラスミドのBamHI
−HindIIIサイト間に挿入して、pE4BX6/Bsf/NeoCAGプラ
スミドに比べて約1.2kbのBglII−HindIII領域を余分に
持ったプラスミドpE4BX7/Bsf/NeoCAGを構築した。pE4BX
6/Bsf/NeoCAG及びpE4BX7/Bsf/NeoCAGの両プラスミドのB
amHI−KpnIサイト間に、pE2/BgK8プラスミド由来のEP
O5'上流域を含む約8kbのBglII−KpnI断片をそれぞれ
挿入して、pEPO11ΔEx800及びpEPO12ΔEx800の両ベクタ
ーを完成させた。
【0029】《実施例5:5'側相同領域検討用EPO
ターゲッティングベクターの導入》実施例4で得られた
pEPO11ΔEx800及びpEPO12ΔEx800の両ベクターを用いて
宿主細胞HepG2へ遺伝子導入を試みた。HepG2細胞は予め
増殖用培地で培養し、トランスフェクションの日に105
〜106/mlの密度(対数増殖期)になるように細胞を径20
cmのシャーレもしくはフラスコに播種しておく。トラン
スフェクション前にPBS(-)で細胞を軽く洗浄した後、0.
25%トリプシン/1mM EDTA溶液で処理して細胞を回収し
た。細胞は血清含有培地でトリプシンの消化反応を止め
た後、NotI酵素処理されたベクターを10μg含むPBS(-)
の1mlに107個の細胞を懸濁し、ジーンパルサー用キュベ
ット(バイオラッド社)に無菌的に注入し10分間氷中に
おく。エレクトロポレーション法の装置はバイオラッド
社のジーンパルサーを使用した。パルスの条件は960μF
の容量で電圧260Vでパルスをかけた。電気穿孔後ただ
ちに増殖用培地を加えた径20cmのシャーレに播く。遺伝
子導入後3ないし4日目に、G418含有(ギブコ-BRL社、
1mg/ml)増殖培地による選択を数週間行い、安定形質
転換細胞を選択した。得られた薬剤耐性のコロニーを分
離し、その培養上清のEPO蛋白質の産生量を抗EPO
抗体を用いたEIA法によって検討した。その結果、Bg
lII−HindIIIの約1.2kbの領域を残したpEPO12ΔEx800ベ
クターによって得られた薬剤耐性コロニーの中には宿主
細胞のEPO産生量を上回る陽性コロニーは得られなか
った。これに対してBglII−HindIIIの約1.2kbの領域を
欠損した構築プラスミドpEPO11ΔEx800ベクターでは内
在性のEPO産生を上回る陽性コロニーを得ることがで
きた。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】このうち、E-11と名付けたコロニーをクロ
ーニングして、約10U/mlのEPO産生能を示すE11-1-21
細胞クローンを得た。この産生量はオリジナルのHepG2
細胞の10〜40mU/mlに比べると250〜1000倍に産生量が増
強されたことになるが、実用的なレベルとしてはまだま
だ不十分であった。この細胞が相同組換えを起こしたか
どうか確認するために、Sambrookらの方法[Molecular
cloning,A LaboratoryManual 2nd ed., chaper 9, Cold
Springs Harbor Laboratory Press, N.Y.,(1989)]に
従い、E11-1-21細胞、HepG2細胞、ヒト正常胎盤細胞か
ら抽出した染色体DNAの5μgをBglII酵素処理した
後、アガロース電気泳動を行い、ニトロセルロースにト
ランスファーして、neor遺伝子プローブとEPOcDN
A遺伝子プローブを用いたサザンブロットハイブリダイ
ゼーションを行った(図5及び図6)。その結果、E11-
1-21細胞では、BglII酵素処理で相同組換えの結果生じ
る5.4kbのバンドと正常な4.1kbのバンドの両方が認めら
れ、EPOの対立遺伝子のうち1つにターゲッティング
ベクターとの相同組換えが生じていることが示された。
これらの結果より、EPO遺伝子5'上流のBglII−Hind
III間の約1.2kbの領域は、発現調節領域の望ましい相同
組換えを期待するならばEPOターゲッテングベクター
から削除する必要があること、さらに、導入したCAG
エンハンサー・プロモーターでは10U/ml程度の産生量し
かなく、EPOの実用的な産生には不十分であることが
わかった。
【0032】《実施例6:BglII−HindIII領域の核酸塩
基配列》BglII−HindIIIまでの約1.2kbの領域が、なぜ
相同組換え反応を阻害するかを調べるために、塩基配列
決定を行った。pE4B10プラスミドから約1.2kbのBglII−
HindIII断片を切り出し、pSP72ベクターのBglII−HindI
IIサイトにサブクローニング(PE4/BgHプラスミド)
し、大量調製した。これよりBglII−HindIII断片を調製
し、いくつかの4塩基認識の制限酵素で切断した結果、
PvuIIで2本の、HhaI/HaeIIIで4本の断片が得られたの
で、これを平滑末端化した後、pUC18ベクターのSmaIサ
イトにクローニングした。これら6種のプラスミド及び
pE4/BgHプラスミドのそれぞれ2クローンずつを、アプ
ライドバイオシステムズ社のDye Primer Cycle Sequenc
ingキット(T7/SP6及び-21/RP)及びModel373A DNAシー
クエンサーを用いて塩基配列を決定した。配列決定後、
ベクター部分の配列を削除して、シークエンスアライメ
ントプログラム(AssemblyLIGN: コダック社)により各
配列を比較検討し、図7に示すようなBglII-HindIII領
域の全配列を確定した(配列番号1)。この配列を元
に、Entrezデータベース(National Center for Biotec
hnology Information)をMacVecoter(コダック社)を
用いてホモロジー検索した結果、Alu反復配列が2ヶ所
含まれていることがわかった(図7)。この2つのAlu
反復配列はパリンドロームを形成可能な形で存在してい
た。また、この領域はLee-Huangら[Gene, 128, 227(19
93)]及びBlanardら[Mol. Cell. Biol., 12, 5373(199
2)]によって報告されている領域(約5kbのBamHI−Hin
dIII)に含まれることもわかった。
【0033】そこで、EPO染色体DNA遺伝子にどの
程度Alu反復配列が含まれているかを検討した。この約
5kbのBamHI−HindIII領域とLinら[Proc. Natl. Acad.
Sci. USA, 82, 7580(1985)]によって報告されている
エクソンを含むHindIIIサイト以下PstIサイトまでの約
4kbの領域を結合させた約9kbのBamHI−PstI領域と、
約4kbのHindIII−PstI領域のDNA配列(すでに第3
イントロン内にAlu反復配列があるとわかっている)をM
acVectorの中のDNA matrix plotプログラムを用いて解
析したところ、図8に示すようにEPO染色体遺伝子に
は第3イントロンの1ヶ所以外にBamHI−HindIIIサイト
間に5ヶ所のAlu反復配列があることがわかった。Alu反
復配列はヒトゲノム特有の配列で、ヒトの染色体中に30
万個程度存在しており、全DNAの3〜6%に達すると
言われている。ほとんどの遺伝子は少なくとも一個以上
のAlu反復配列を持っていると言われており、このよう
な反復配列が染色体上に広く分布しているために["Mol
ecular Biology of the gene3rd ed." J. D. Watson et
al., ed. pp 668 The Benjamin/Cummings Publishing
Company Inc., California, 1987]、標的生理活性物質
遺伝子の相同組換え反応を阻害する可能性がある。BglI
I−HindIII領域を除いたpEPO11ΔEx800ベクターでは相
同組換え体が得られている一方で、pEPO12ΔEx800ベク
ターでは相同組換え体が得られないことから、Alu反復
配列がターゲッティングベクターの相同部分に含まれる
ことにより、EPO遺伝子座における部位特異的な相同
組換え反応の効率を落としていると考えられる。また、
pEPO11ΔEx800ベクターでは、挿入配列の5'端から5'
上流に存在する最も3'側のAlu反復配列まで約1.4kbの
距離がある。以上のことから、相同組換えの効率を高め
るために、ターゲッティングベクターの相同部分を選定
する際には、そのような反復配列を含まないように、や
むなく含む場合はその割合ができるだけ少なくなるよう
にするか、あるいは挿入配列からの距離を少なくとも1.
4kb以上取るようにする必要があると結論した。従っ
て、このことも、肝細胞における相同組換え技術を利用
した生理活性物質産生細胞の作製方法を完成させるため
に必要な「ヒト肝細胞で効率よく相同組換えするための
条件」の一つであると考えられる。
【0034】《実施例7:相同組換えにより得られたE
PO発現細胞の安定性》実施例4で示したpEPO-11ΔEX8
00ベクターを導入し、相同組換えによってEPOを発現
するようになったE11-1-21細胞クローンと、実施例2で
示したpE4B10/Bsf/NeoCAG発現確認用ベクターをHepG2細
胞に導入して形質転換されたEPO発現クローン、LA2-
2細胞のEPO発現に関する継代安定性を比較した。LA2
-2はpE4B10/Bsf/NeoCAGプラスミドがランダムに組み込
まれた通常の形質転換細胞である。これらの細胞を0.25
%トリプシン/1mMEDTAで5分間処理した後、96ウェルプ
レートに2個/ウェルでプレーティングを行った。10日
後、形質転換体の増殖が確認できたウェル(80〜90%)
の上清中のEPOを抗EPO抗体を用いたEIA法によ
り測定した(1stクローニング)。この中から産生量が
高い単一クローン細胞を選び、前述のごとくプレーティ
ングを行った(2ndクローニング)。さらにこの操作を
もう一度行い、それぞれ培養上清中のEPO産生量を測
定した。その結果、LA2-2細胞では、クローニングを繰
り返しても約80%前後の細胞のEPO産生量が低下して
おり、EPO産生能は一定化せず、EPO産生能の不安
定な状態が続いた(図9)。これに対して、E11-1-21細
胞では、2回目以降はクローニングをくり返してもEP
O産生能のばらつきが少なく、少なくとも70%以上の細
胞が安定してEPO産生能を有することが確認できた
(図10)。このように継代安定性において相同組換え
細胞は安定であることが示された。このことは、その遺
伝子が本来位置している染色体の場所が、その遺伝子の
安定的発現にとって最適な場所の一つであることを示し
ており、さらに、相同組換え法による産生細胞の作製法
の方がランダム導入法より継代安定性に優れた細胞が得
られ易く、スクリーニングにかかる期間が短くなること
も示している。
【0035】《実施例8:各種発現調節領域の各種細胞
での発現活性の検討》実施例5で示したように、現在知
られている発現調節領域の中では最も強力だと思われて
いるCAGエンハンサー・プロモーターを用いても、E
POの実用的な発現量は達成できなかった。そこで、肝
臓由来の宿主細胞で強力に働く発現調節領域(エンハン
サー及びプロモーター)を見出すために、数種類のエン
ハンサーとプロモーターを組み合わせてレポーター遺伝
子(EPOcDNA遺伝子)の上流に接続し、数種類の
発現プラスミドベクターをデザインした(図11)。発
現調節領域は、エンハンサーとして、ヒトサイトメガロ
ウイルスのエンハンサー(C:M. Boshart et al., Cel
l, 41, 521(1985)]、ラット胎盤型グルタチオンSトラ
ンスフェラーゼのエンハンサー[GST-E:M. Sakai et a
l., Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 85, 9456(1988)]、
またはヒトαフェプロテイント遺伝子のエンハンサー
[AF:Y. Urano et al., Gene 32, 255(1984)]を、
プロモーターとして、ニワトリβアクチンとウサギβグ
ロビン遺伝子の複合プロモーター[AG:J. Miyazaki
et al., Gene, 79, 269(1989))、SV40エンハンサー・プ
ロモーター[SV:P. J. Southern et al., J. Mol. A
ppl. Genet., 1, 327(1982)]、ヒトサイトメガロウイ
ルスプロモーター[HCMV:H. Maeda et al., Hum. Anti
bod. Hybridoma, 2, 124(1991)]、またはヒトアルブミ
ン遺伝子プロモーター[ALB:Y. Urano et al., J.
Biol. Chem., 261, 3244(1986)]を用いた。
【0036】pCAGn-EPOプラスミドは図12に示すよう
にして構築された。pCAGプラスミドよりEcoRI−BamHI断
片を調製し、HindIIIサイトを欠失させたpSV2neoベクタ
ー[P. J. Southern et al., J. Mol. Appl. Genet.,
1, 327(1982)]のEcoRI−BamHIサイトに挿入し、さらに
pCB25γSD/BcBgプラスミド[特開平3-201986]由来のBa
mHI−BglIIのpolyA付加シグナルを含む断片をBamHIサイ
トに挿入してpCAGn-mcspolyAプラスミドを構築した。E
POcDNA遺伝子は、Jacobsらの文献[Nature, 313,
806(1985)]に公表されているEPO配列を元にして合
成したTCGAAGCTTGCCAGGCGCGGAGATGGGGGTGCACGAATGT(配
列番号2)及びGAAGATCTGGATCCTTATCATCTGTCCCCTGTCCTG
CATGC(配列番号3)の両プライマーを用いて、HepG2細
胞のmRNAより合成したcDNAを鋳型にPCR増幅
して調製された。pCAGn-mcs polyAプラスミドのHindIII
−BamHIサイトにEPOcDNA遺伝子のHindIII−BamH
I断片を挿入して、pCAGn−EPOプラスミドを構築した。
また、pALBn−EPOプラスミドは、pBluescript II SK+ベ
クターのEcoRI−BamHIサイトにpCAGn−EPOプラスミドの
EcoRI−BamHI断片を組み込み、そのHindIII領域とアル
ブミンプロモーター領域の約3kbのHindIII断片[Urano
らの文献[J. Biol. Chem. 261, 3244(1986)]に記載のプ
ロモーターを含む3kbのAvaI−HincII断片を両端をHind
IIIサイトに変換したもの]を交換し、その平滑末端化
したXhoIサイトとBamHIサイト間の断片をpUC19ベクター
の平滑末端化したSacIサイトとBamHIサイト間に挿入
し、さらに、そのEcoRI−BamHI断片をpCAGn−EPOプラス
ミドのEcoRI−BamHIサイト間に組み込んで構築した(図
12)。
【0037】pGST-E/CAGプラスミドは、約300bのGST-E
のAccI−SacI断片をpSP72ベクターのAccI−SacIサイト
に組み込みpGST-Eプラスミドを構築し、そのプラスミド
をAccI酵素処理した後平滑末端化し、HindIII酵素処理
して、pCAGプラスミドから平滑末端化したEcoRIサイト
とHindIIIサイトで切り出したCAG遺伝子断片を結合
させて構築した(図12)。このプラスミドを持った大
腸菌はEscherichia coli 11616(FERM P-15580号)とし
て、工業技術院生命工学工業技術研究所に本出願人より
寄託されている)。
【0038】pGST-E/CAGn-EPOプラスミドはpCAGn-EPOプ
ラスミドのEcoRI−HindIII領域をpGST-E/CAGプラスミド
由来のEcoRI−HindIII断片と交換して構築した。pAGn-E
POプラスミドはpCAGn-EPOプラスミドのEcoRI−HindIII
領域をpAGn-RHC25プラスミド[特願平5-78913]由来の
AGエンハンサー・プロモーター領域を含むEcoRI−Hin
dIII断片と交換して構築した。pGST-E/AGn-EPOプラスミ
ドは、まずpGST-E/CAGプラスミドの構築と同様にしてpG
ST-EとpAGn-RHC25の両プラスミドからpGST-E/AGプラス
ミド(このプラスミドを持った大腸菌はEscherichia co
li 11617[FERM P-15581号]として工業技術院生命工学工
業技術研究所に本出願人より寄託されている)を構築
し、そのGST-E/AGエンハンサー・プロモーター領域を含
むEcoRI−HindIII断片をpCAGn-EPOプラスミドのEcoRI−
HindIII領域に交換して構築した。
【0039】pGST-E/ALBn-Epo、pGST-Ei/ALBn-Epo両プ
ラスミドは、pALBn-EPOプラスミドのEcoRIサイトを平滑
末端化し、pGST-Eプラスミド由来のEcoRI−HindIII断片
を平滑末端化して挿入して、GST-E領域の方向により正
方向のものをpGST-E/ALBn-EPOプラスミドとし、逆方向
のものをpGST-Ei/ALBn-EPOプラスミドとした。pAF/AGn-
EPO及び、pAF/CAGn-EPO、pAF/ALBn-EPO、pAF/GST-E/CAG
n-EPOプラスミドはpAGn-EPO及び、pCAGn-EPO、pALBn-EP
O、pGST-E/CAGn-EPOプラスミドのEcoRIサイトに、それ
ぞれヒトαフェトプロテイン遺伝子由来のエンハンサー
を含む2kbのEcoRI断片[K. Watanabe et al., J. Bio
l. Chem., 262, 4812(1987);Y. Urano etal., Gene 3
2, 255(1984)記載のαフェトプロテイン遺伝子の5'上
流-3〜-5kb付近にある約2kbのEcoRIサイト間領域、この
EcoRI断片をpBluescript II SK+のEcoRIサイトにクロー
ニングしたプラスミドをpAF2-1-2/EcoRIという:このプ
ラスミドを持った大腸菌はEscherichia coli 11618(FER
M P-15582号) として工業技術院生命工学工業技術研究
所に本出願人より寄託されている]を挿入して構築し
た。
【0040】pSVn-EPOプラスミドは、pSV2gptベクター
[R. C. Mulligan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. US
A, 78, 2072(1981)]のPvuIIサイトを、EcoRIリンカー
を用いてEcoRIサイトに変換し、SV40の発現調節領域を
含むEcoRI−HindIII断片を切り出し、pCAGn-EPOプラス
ミドのEcoRI−HindIII領域と交換して、構築した。pHCM
Vn-EPOは、pHCMV-VH0.5β-γ1プラスミド[H. Maeda et
al., Hum. Antibod. Hybridoma, 2, 124(1991)]よりH
CMVの発現調節領域を含むEcoRI−HindIII断片を切り出
し、pCAGn-EPOプラスミドのEcoRI−HindIII領域と交換
して、構築された。
【0041】これらのプラスミドは大腸菌によって大量
調製され、塩化セシウムの超遠心法によって精製された
後、各種プラスミド1μgを実施例3で述べたLipofectA
CEを用いた方法に従って、以下に示す各種細胞に遺伝子
導入した。宿主細胞には、ヒト肝細胞としてHepG2細
胞、ミエローマ細胞としてマウス由来のP3-6.5.3.細胞
(ATCC番号CRL-1580)、そして動物細胞の典型的な組換
え体宿主としてよく使用されるCHO細胞(ATCC番号CC
L-61)を用いた。遺伝子導入後、3ないし4日目にその
培養上清を採取し、抗EPO抗体を用いたEIA法によ
って培養上清中のEPO蛋白の発現を検討した(一時発
現)。その後、G418含有増殖培地による選択を数ヶ月行
ない、薬剤耐性の細胞を分離し、その培養上清のEPO
蛋白の発現を同様に検討した(安定的な発現)。その一
時発現や安定的な発現の結果から、HepG2細胞では、GST
-Eエンハンサーを組み込んだ発現調節領域の発現活性が
強いことを見出した(図13)。特に、CAGエンハン
サー・プロモーターとの組合せたGST-E/CAGエンハンサ
ー・プロモーターあるいは、AFエンハンサー及びCAGエ
ンハンサー・プロモーターとの組合せたAF/GST-E/CAGエ
ンハンサー・プロモーターが強く、CAGエンハンサー
・プロモーター単独を用いた場合の5〜10倍強い活性を
示した。また、GST-Eエンハンサーはヒトサイトメガロ
ウイルスのエンハンサーを持たないAGエンハンサーとの
組合せでも効果があった。このプロフィールは、別のヒ
ト肝細胞であるHuH7細胞でも同様であった。また、AF/G
ST-E/CAGエンハンサー・プロモーターはP3-6.5.3.細胞
での安定的な発現において、非常に強い発現活性を示
し、CAGエンハンサー・プロモーターの8倍以上に達
した(図13)。これは、これまで肝細胞特異的と思わ
れてきたAFエンハンサーの発現プロフィールとは異な
る結果であったが、このAF/GST-E/CAGエンハンサー・プ
ロモーターが肝細胞以外のミエローマ細胞系での抗体産
生などに利用できることを示している。しかし、蛋白性
医薬品の製造に最もよく使われているCHO細胞では、
いずれの発現調節領域も低い活性しか示さなかった。
【0042】《実施例9:各種発現調節領域の発現安定
効果》GST-E/CAG及びGST-E/AGエンハンサー・プロモー
ターは肝細胞系で蛋白質の著しい発現活性をもたらす
が、その組み込まれた遺伝子の発現安定性にどのように
影響を与えるか検討した。遺伝子導入後の薬剤選択によ
って得られるコロニーを分離して均一化された細胞集団
について、その発現量を測定することで発現安定性を比
較した。実施例8で構築されたpCAGn-EPO、pGST-E/CAGn
-EPO、pGST-E/AGn-EPOの3種類の発現ベクターをHepG2
細胞へトランスフェクトして、1mg/mlのG418にて数週
間培養を続けたのち生育したコロニーを拾って、それぞ
れ24ウェルプレートに移し、さらにG418存在下で数週間
選択して得られるG418耐性コロニーについて、その培養
上清の発現EPOを抗EPO抗体を用いたEIA法によ
り測定した。各コロニーの産生量の分布状況をみると、
CAGエンハンサー・プロモーターと比較してGST-E/CA
G及びGST-E/AGエンハンサー・プロモーターを持ってい
る方が明らかに高産生の陽性コロニーが多く、導入後の
EPO発現が安定していた(図14)。即ち、GST-E/CA
G及びGST-E/AGエンハンサー・プロモーターは遺伝子発
現の安定化をもたらしており、このことが遺伝子の高発
現活性にも影響していることが示された。また、AF/GST
-E/CAGエンハンサー・プロモーターでも、GST-E/CAG及
びGST-E/AGエンハンサー・プロモーターと同様に、安定
的な発現が観察された。実施例8及び9に示した結果か
ら、GST-Eエンハンサーを組み込んだ発現調節領域は、
肝細胞における相同組換え技術を利用した生理活性物質
産生細胞の作製方法を完成させるために必要な「ヒト肝
細胞で強力に働く発現調節領域(エンハンサー・プロモ
ーター系)」になりうると考えられた。
【0043】《実施例10:5'非翻訳領域及びシグナル
配列の発現に対する影響》発現量をさらに上昇させるた
めに、EPOの構造遺伝子の検討を行った。EPO構造
遺伝子内の領域で5'非翻訳領域及びシグナル配列につ
いてEPO発現量に及ぼす影響を検討するために、EP
O遺伝子の5'非翻訳領域の長さを、pE4B10/Bsf/NeoCAG
の場合より約170b短めたpE4B10/Bsx/NeoCAG及び、pE4B1
0/Bsf/NeoCAGのEPOシグナル配列のN末側4個のアミ
ノ酸配列(Met-Gly-Val-His;配列番号12)を、5個
のアミノ配列(Met-Gly-Ile-Lys-Met;配列番号13)
に置き換えたpE4B10/BsfC25/NeoCAG、EPO5'UTを
ほとんどなくし、さらに上記5個のアミノ酸配列(Met-
Gly-Ile-Lys-Met)と交換したpE4B10/C25/NeoCAGの3プ
ラスミドを構築し、検討した。以下にそのプラスミドの
構築について述べる。
【0044】まず5'UT及びシグナル配列を改変する
ために、pE4/XX1.1プラスミド(図2)をベースに構築
を行った。5'UTを約170b短めるために、pE4/XX1.1プ
ラスミドをEcoRVとBstPIで酵素処理し、ついでT4ポリ
メレースを用いて平滑末端化し、さらにセルフライゲー
ションさせ、pE4/Bsx0.6プラスミドを得た。
【0045】EPOシグナル配列のN末側4個(MGVH)
を、C25抗体VL鎖のシグナル配列のN末側5個(MGIK
M)に置き換えるために、 pE4/XX1.1プラスミドを鋳型
にT3プライマーとC25プライマー(ATGAGGGCCCCCGGTGT
GGTCACCCGGCGCGCCCCAGGTCGCTGAGGGACCCCGGCCAGGCGCGGAG
ATGGGCATCAAGATGGGTGAGTACTCGCG:配列番号4)を用い
てPCRを行い、そのPCR産物をBstPIとNotIで酵素
処理し、pE4/XX1.1プラスミドのBstPI−NotIサイトに組
み込んで、pC25/XX1.1プラスミドを得た。
【0046】さらに5'UTをほとんど欠失させ、C25シ
グナル配列と置換するために、pE4/XX1.1プラスミドを
鋳型にT3プライマーとHC25プライマー(TCGAAGCTTGCC
AGGCGCGGAGATGGGCATCAAGATGGGTGAGTACTCGCG:配列番号
5)を用いてPCRを行い、そのPCR産物をHindIII
とNotIで酵素処理し、pBluescript II SK+のHindIII-No
tIサイトにサブクローニングしてpHC25/Blueプラスミド
を得た。
【0047】これら3つのプラスミドよりHindIII、Xba
I酵素処理によって得られたそれぞれの断片を、pE4B10/
Bsf/NeoCAGプラスミド(図2)よりEPO遺伝子エクソ
ン部分を含むHindIII−BamHI断片を切り出し、pUC19ベ
クターのHindIII−BamHIサイトにサブクローニングして
得られたpEPOexon/19プラスミドのHindIII−XbaIサイト
に挿入し、p620exon/19、pC25exon/19、pHC25exon/19プ
ラスミドをそれぞれ得た。これらのプラスミドより、Hi
ndIII、BamHI酵素処理によりエクソンを含む断片を得、
これを pBluescript II SK+のHindIII−BamHIサイトに
挿入して、p620exon/Blue、pC25exon/Blue、pHC25exon/
Blueプラスミドをそれぞれ得た。さらに、これらのプラ
スミドからHindIIIとNotIで酵素処理し得た断片を、そ
れぞれpE4B10/Bsf/NeoCAGプラスミドのHindIII−NotIサ
イトに組み込み、pE4B10/Bsx/NeoCAG、pE4B10/BsfC25/N
eoCAG、pE4B10/C25/NeoCAGプラスミドをそれぞれ構築し
た。
【0048】これらのプラスミドは大腸菌によって大量
調製され、塩化セシウムの超遠心法によって精製された
後、各種プラスミド1μgを実施例3で述べたLipofectA
CEを用いた方法に従って、HepG2細胞に遺伝子導入し
た。遺伝子導入後、3ないし4日目にその培養上清を採
取し、抗EPO抗体を用いたEIA法もしくはEPO依
存性細胞株BaF/EPORによる細胞増殖アッセイ法によって
培養上清中のEPO蛋白の発現を検討した(一時発
現)。その結果、pE4B10/Bsf/NeoCAGプラスミド(図
2)をコントロールにした場合に比較して、pE4B10/Bsf
C25/NeoCAGプラスミドでは約2倍に、pE4B10/Bsx/NeoCA
Gプラスミドでは約5倍に、pE4B10/C25/NeoCAGプラスミ
ドでは約10倍に、発現量が高まった。EPOの5'非翻
訳領域(5'UT)の長さを短縮すること、あるいはE
POシグナル配列の一部をC25抗体VL鎖のシグナルの
一部と置き換えることにより、もしくはその両方を行う
ことにより、さらなる発現量の上昇が可能になった(図
15)。
【0049】《実施例11:改良EPOターゲッティング
ベクターの構築と導入》以上の実験結果から、肝細胞に
おける相同組換え技術を利用した生理活性物質産生細胞
の作製方法として、ヒト生理活性物質遺伝子の中で特定
の反復配列を含む割合が少ない5'上流領域を選定し、
生理活性物質の遺伝子自身の発現調節領域の代わりにG
STエンハンサーを組み込んだ発現調節領域を挿入し、
さらにシグナル配列や5'UTの長さを調節することに
より生理活性物質のターゲッティングベクターを構築
し、ヒト肝細胞に導入する方法が、前述の問題点を解決
できる方法であると考えられた。このことを確かめるた
めに、実施例4で示したpEPO11ΔEx800ベクターをベー
スにGST-Eを組み込んだpGCn-EPO11ΔEx800ベクター及
び、pGCn-EPO11ΔEx800ベクターの選択マーカーであるn
eor遺伝子をジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子に交
換したpGCd-EPO11ΔEx800ベクター、さらにneor遺伝子
とdhfr遺伝子を両方持つpGCnd-EPO11ΔEx800ベクターを
構築した(図16)。これに加えて、5'UTを短くし
たpGCn-EPO11ΔEx600ベクターや、EPOシグナル配列
の一部を他ののシグナル配列に交換したpGCn-EPO11ΔEx
800C25ベクター、5'UTをほとんどなくし他のシグナ
ル配列に交換したpGCn-EPO11ΔEx500C25ベクターを構築
した。pGCn-EPO11ΔEx800ベクターは、pE4BX6/Bsf/NeoC
AGプラスミド(図4)のClaI−HindIIIサイトにpGST-E/
CAGプラスミド(図12)のClaI−HindIII断片を組込み
pE4BX6/Bsf/GEnプラスミドを作り、そのBglII−NotI断
片をpEPO11ΔEx800ベクターのBglII−NotIサイトに組み
込んで作製した。
【0050】pGCd-EPO11ΔEx800ベクターは、pSV2dhfr
ベクター["Molecular cloning,A Laboratory Manual 2
nd ed."J.Sambrook et al., chaper 16, Cold Springs
Harbor Laboratory Press, N.Y.,1989]のdhfr遺伝子を
含むBglII−PvuII断片の両端を平滑末端化してpSP72ベ
クターのEcoRVサイトに組み込むことによりBglII−ClaI
断片に変換し、この断片をpE4BX6/Bsf/GEnプラスミドの
BglII−ClaIサイトに挿入し、さらに、これより切り出
したBglII−NotI断片をpEPO11ΔEx800ベクターのBglII
−NotIサイトに組み込むことにより作製した。
【0051】pGCnd-EPO11ΔEx800ベクターは、pSP72ベ
クターのBamHI−EcoRVサイトにpE4BX6/Bsf/GEnプラスミ
ドのneor遺伝子を含むBglII−EcoRV断片を挿入して作製
したpNeo(ΔE)プラスミドのXbaIサイトに、pE4BX6/Bsf/
GEnプラスミドのKpnI−BglII断片をpSP72ベクターのKpn
I−BglIIサイトに挿入して作製したpKpBg/SPプラスミド
より切り出したXbaI断片を挿入してpNeo/XX1.7プラスミ
ドを構築し、これより切り出したKpnI−BglII断片を、p
GCd-EPO11ΔEx800ベクターのKpnI-BglIIサイトに組み込
み作製した。
【0052】pGCn-EPO11ΔEx600ベクター、pGCn-EPO11
ΔEx800C25ベクター、pGCn-EPO11ΔEx500C25ベクターは
以下のように構築された。まず、p620exon/Blue、pC25e
xon/Blue、pHC25exon/Blueの各プラスミドよりそれぞれ
HindIII−NotI断片を切り出し、pE4BX6/Bsf/GEnプラス
ミド(図16)のHindIII−NotIサイトに組み込み、pE4
BX6/Bsx/GEn、pE4BX6/BsfC25/GEn、pE4BX6/C25/GEnの各
プラスミドをそれぞれ得た。次に、これらの各プラスミ
ドよりBglII−NotI断片をそれぞれ調製し、pGCn-EPO11
ΔEx800ベクター(図16)のBglII−NotIサイトに挿入
して、pGCn-EPO11ΔEx600ベクター、pGCn-EPO11ΔEx800
C25ベクター、pGCn-EPO11ΔEx500C25ベクターをそれぞ
れ構築した。各プラスミドの構造を図17に示す。これ
らのベクターは、pGCn-EPO11ΔEx800ベクターの場合と
同様の方法で、選択マーカーにdhfr遺伝子あるいは、dh
fr遺伝子及びneor遺伝子の両方を持ったベクターに変換
することができた。このようにして構築されたEPOタ
ーゲッティングベクターはNotI/SalI酵素処理し、線状
化した後、実施例5で示したエレクトロポレーション法
によりHepG2細胞に導入された。導入後、使用した選択
マーカーに適した薬剤(neor遺伝子の場合、1mg/mlのG
418、dhfr遺伝子の場合、10-4Mのメトトレキセート(M
TX))を含む選択培地による選択を数週間行い、安定
形質転換細胞を選択した。得られた薬剤耐性のコロニー
を分離し、その培養上清のEPO蛋白質の産生量を、Ba
/F3細胞[R. Palacios, Cell, 41, 727(1985)]にヒト
EPOレセプター[S. S. Jones et al., Blood, 76, 3
1(1990)]を導入して作製されたEPO依存性細胞株BaF
/EPORによる細胞増殖アッセイ法によって検討し、元の
宿主細胞より多くEPOを産生しているコロニーを選択
した。さらにこれらのコロニーを実施例7で示した限界
希釈法によりクローン化した。
【0053】このようにして得られたEPO産生細胞は
いずれも高い産生量を示し、特にpGCn-EPO11ΔEx500C25
ベクターの場合、約500〜700U/mlのEPO産生量を示し
た(図18)。この産生量は、EPO依存性細胞株BaF/
EPORによる細胞増殖アッセイ法によっても同じ値を示し
た。さらにこのEPO産生量は、セルデンらのEPO発
現量(0.25U/ml;特表平7-500969)と比べて2,000倍以
上高く、また、CAGエンハンサー・プロモーターを単
独に使用した場合(pEPO11ΔEx800)と比べても50〜70
倍高いものであり、蛋白質換算で約9mg/lに相当し、実
用レベルの産生量に達していると言える。pGCd-EPO11Δ
Ex500C25ベクターやpGCnd-EPO11ΔEx500C25ベクターを
導入した場合も同様の産生量を示した。これらpGCd-EPO
11ΔEx500C25ベクター、pGCnd-EPO11ΔEx500C25ベクタ
ーは、高濃度のMTXによって選択することによって、
遺伝子増幅を行うことができ、さらに高い産生量が達成
された。また、HepG2細胞以外にHuH7細胞でも同様にE
PO高産生の相同組換え細胞が得られている。これらの
結果は、ここに開示した相同組換え技術を利用した生理
活性物質産生細胞の作製方法が、従来の問題点を解決し
ており、実際の医薬品開発に使用できることを示してい
る。
【0054】《実施例12:TPO遺伝子のクローニン
グ》ここに開示した相同組換え技術を利用した生理活性
物質産生細胞の作製方法が、EPO以外の生理活性物質
に適応できるかどうか、すなわち汎用性があるかどうか
を調べるために、トロンボポエチン(TPO)を材料に検
討した。TPOターゲッティングベクターを構築するた
めに、ヒトTPO染色体遺伝子を以下のようにしてクロ
ーニングした。正常なヒト胎盤より抽出したヒトゲノム
DNAから構築されたpWE15コスミドヒトゲノムDNA
ライブラリー(ストラタジーン社)を、"Molecular cloni
ng,A Laboratory Manual 2nd ed."(J.Sambrook et al.,
chaper9-11, Cold Springs Harbor Laboratory Press,
N.Y.,1989)に記載の方法に従い、コロニーハイブリダ
イゼーションによりスクリーニングした。Sauvageらの
文献[Nature, 369, 533 (1994)]に記載されているT
POの核酸塩基配列よりプライマー[TCGAAGCTTACCCCGG
CCAGAATGGAGCTGACTGAATTG(配列番号6)及びGAAGATCTGAG
AACCTTACCCTTCCTGAGACAGATT(配列番号7)]をデザイン
し、HepG2細胞のmRNAより調製したcDNAを鋳型
にしたPCR法によりヒトTPOcDNA遺伝子断片を
調製し、プローブとして用いた。このcDNA遺伝子断
片はニトロセルロースフィルター当たり15,000コロニ
ー、総計150,000コロニーを固定したフィルターを用い
てコロニーハイブリダイゼーションを行った結果、6個
の陽性コロニーを得、これらをクローニングした。これ
ら6クローンのコロニーより"Molecular cloning,A Lab
oratory Manual 2nd ed."(J.Sambrook et al., chaper
1,Cold Springs Harbor Laboratory Press, N.Y.,1989)
に記載の方法に従ってDNAを調製し、制限酵素切断点
のマッピングを行った結果、図19に示すように、TP
O遺伝子の5'上流領域を含む目的のコスミドクローンC
TN4-1を得た。なお、このプラスミドを持った大腸菌はE
scherichia coli 11613(FERM P-15577号)として、工
業技術院生命工学工業技術研究所に本出願人より寄託さ
れている。
【0055】TPO遺伝子の発現調節領域ははっきりと
確定されていないが、DraIサイトの5'側か、DraIサイ
トの3'側にあるBamHIサイトの5'側だとされている。
また、EPOの第1エクソンに相当するエクソンがAccI
−EcoRI(3'側から2番目)に存在し、このエクソン内
の開始コドンから蛋白質合成が始まる。TPO遺伝子の
これらの領域付近にAlu反復配列が含まれているかどう
かを、Alu反復配列を含むBLUR8 DNA断片[W. R. Jel
inek et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77,1398(1
980)]をプローブに、サザンハイブリダイゼーションで
検討した。ハイブリダイゼーションは6xSSC、5xDenhard
t's reagent、0.5%SDS、100μg/ml denatured, fragmen
ted salmon sperm DNAの溶液中で、32Pでラベルされた
Alu反復配列を含むBLUR8のBamHI断片をプローブとして
用い、60℃16時間のインキュベーションで行った。ウォ
ッシュは最終的に0.1xSSC、0.1%SDS溶液で60℃30分間イ
ンキュベーションを2回くり返すことによって行った。
このサザンハイブリダイゼーションの結果、これらの発
現調節領域を含むNotI−ApaLI(3'側)領域の少なくと
も1.4kb以内の5'上流領域にはEPO遺伝子のBglII−H
indIII領域に相当するようなAlu反復配列を含んだ領域
は見当たらなかった。また、イントロン内に3ヶ所のAl
u反復配列が含まれており、その一つはAccI−EcoRI
(3'側から3番目)領域間に含まれていた。残りは3'
側のEcoRI−EcoRI領域内にあった。
【0056】《実施例13:TPOターゲッティングベク
ターの構築と導入》TPOターゲッティングベクターと
して、TPO自身の発現調節領域があると思われるNotI
−ApaLI(3'側)領域とGST-Eエンハンサーを組み込ん
だ発現調節領域を交換する場合、あるいはEPO遺伝子
の場合と同様に開始コドンを含んだエクソンにGST-Eエ
ンハンサーを組み込んだ発現調節領域を直結させる場合
が考えられた。前者のベクターの場合、5'側の相同領
域はXhoI(あるいはHpaI)−NotI領域、3'側の相同領域
はBamHI−AccI領域を持つ構造のベクターとして、後者
の場合、5'側の相同領域はXhoI(あるいはHpaI)−NotI
領域、3'側の相同領域は開始コドンを含んだエクソン
から次のエクソンの直前までの領域を持つ構造のベクタ
ーとして構築された。
【0057】まず、NotI−ApaLI(3'側)領域を除いた
TPOターゲッティングベクターとして、選択マーカー
にneor遺伝子を持ったpGCn-TPO12ΔEx1200ベクターとn
eor遺伝子及びdhfr遺伝子の両方を持ったpGCnd-TPOΔEx
1200ベクターの2種類を構築した(図20)。pGST-E/C
AGプラスミド(図12)のClaI−HindIII断片をpNeoCAG
プラスミド(図2)のClaI−HindIIIサイトに組み込みp
Neo/GST-E/CAGプラスミド(図20)を構築し、このXho
I−HindIII断片をpBlusecropt II SK+のKpnI−SacIのマ
ルチクローニングサイトを合成リンカーを用いてKpnI−
NotI−XhoI−HindIII−BglII−BamHI−SacIサイトに変
換したpBSOEΔBプラスミドのXhoI-HindIIIサイトに挿入
してpBSOE/GCnΔBプラスミドを構築した。TPOターゲ
ッティングベクターの3'側の相同領域部分を調製する
ために、CTN4-1コスミドクローンから切り出した約3kb
のDraI−EcoRI断片をpBluescript II SK+ベクターのHin
cII−EcoRIサイトに組込み、pCTN4/DE3プラスミドを構
築し、さらに、そのAccIサイトをSalIリンカーを用いて
SalIサイトに変換したプラスミドpCTN4/DE3/Salを得
た。
【0058】neor遺伝子を持ったTPOターゲッティン
グベクターpGCn-TPO12ΔEx1200は、pCTN4/DE3/Salプラ
スミドよりApaLI酵素処理後T4ポリメレースにより平
滑末端化し、さらにBamHI酵素処理して断片を調製し、p
BSOE/GCnΔBプラスミドのBglII(酵素処理後T4ポリメ
レースにより平滑末端化した)−BamHIサイトに挿入して
pCTN4/AE2/GCnプラスミドを作り、その挿入断片の5'末
端のNotI、XhoIサイトの順番をXhoI、NotIサイトに交換
するために、このプラスミドのXhoIサイトを平滑末端
化、セルフライゲーションにより欠失させた後、そのNo
tI−BamHI断片をpcDNAIIベクター(インビトロジェン
社)のNotI−BamHIに組込み、さらに、そのプラスミド
のXhoI−NotIサイトにコスミドクローンCTN4-1由来の約
12kbのXhoI−NotI断片を挿入して、完成させた。
【0059】neor遺伝子及びdhfr遺伝子を持ったTPO
ターゲッティングベクターpGCnd-TPO12ΔEx1200は、ま
ず、neor遺伝子及びdhfr遺伝子、GST-E/CAGエンハンサ
ー・プロモーターを結合させるために、pE4BX6/Bsf/GEd
プラスミド(図16)のSalI−BglIIサイトにpNeo(ΔE)
プラスミド(図16)のSalI−BglII断片を挿入してpGC
nd/0.8プラスミド(図20)を構築し、このプラスミド
のSalI-ClaI断片をpCTN4/AE2/GCnプラスミドのXhoI-Cla
Iサイトに組み込んでpCTN4/AE2/GCndプラスミドを作
り、さらに、その挿入断片の5'末端のNotI、XhoIサイ
トの順番をXhoI、NotIサイトに交換するために、このプ
ラスミドのNotI−BamHI断片をpcDNAIIベクターのNotI−
BamHIに組込み、さらに、そのプラスミドのXhoI−NotI
サイトにコスミドクローンCTN4-1由来の約13kbのXhoI−
NotI断片を挿入して、完成させた。
【0060】次に、開始コドンを含んだエクソンにGST-
Eエンハンサーを組み込んだ発現調節領域を直結させる
場合のターゲッティングベクターとして、選択マーカー
にneor遺伝子を持ったpGCn-TPO12ΔEX400ベクターとpGC
n-TPO12ΔEX200C25ベクターの2種類を構築した(図2
1)。TPOターゲッティングベクターの3'側の相同
領域部分を調製するために、pGCn-TPO12ΔEX400におい
ては、CTN4-1コスミドクローンを鋳型としてTPOTV-Bプ
ライマー(CCCAAGCTTGGTACCTCACCCTTGGCCGGCCTTTGCCCC
A:配列番号8)及びTPOTV3プライマー(GGAAGATCTGGAT
CCATCGATGCATGCGTCGACGAGAGGTGAGGTTGAAAGATGAGGAGGAAA
TCATTGTCAGCTGGTATTCCAGGAGTTCCCATTCA:配列番号9)
を用いてPCRを行った。また、pGCn-TPO12ΔEX200C25
においては、内在性のシグナル配列部位をコードする領
域をC25のシグナル配列に換えるために、CTN4-1コスミ
ドクローンを鋳型としてTPOVT-Cプライマー(CCCAAGCTT
GGTACCGGGGAGCGGCCGCAAACAGGGAGCCACGCCAGCCAGACACCCCG
GCCAGAATGGGCATCAAGATGGGTGAGAACACACCTGAGGGGC:配列
番号10)及びTPOTV3プライマー(GGAAGATCTGGATCCATC
GATGCATGCGTCGACGAGAGGTGAGGTTGAAAGATGAGGAGGAAATCATT
GTCAGCTGGTATTCCAGGAGTTCCCATTCA:配列番号11)を用
いてPCRを行った。これらPCR産物のHindIII−Bam
HI酵素処理断片をpBSOE/GCnΔBのHindIII−BamHIサイト
にそれぞれ組み込んだプラスミドを調製し(図21:そ
れぞれpCTN4/5'UT/Gcn及びpCTN4/C25/GCn)、その挿入断
片の5'末端のNotI、XhoIサイトの順番をXhoI、NotIサ
イトに交換するために、このプラスミドのXhoIサイトを
平滑末端化、セルフライゲーションにより欠失させた
後、そのNotI−BamHI断片をそれぞれ、pcDNAIIベクター
(インビトロジェン社)のNotI−BamHIに組み込んだ
(それぞれpCTN4/5'UT/GCn/PCD及びpCTN4/C25/PCD/Δ
N)。さらに、これらのプラスミドのXhoI−NotIサイトに
コスミドクローンCTN4-1由来の約12KbのXhoI−NotI断片
をそれぞれ挿入して pGCn-TPO12ΔEX400ベクター及びpC
TN4/5'12/C25/PCD/ΔNプラスミドをそれぞれ完成させ
た。pCTN4/5'12/C25/PCD/ΔNプラスミドにはさらに、pC
TN4/C25/GEnプラスミド由来のNeo/GST-E/CAG領域を含む
NotI断片をNotIサイトに挿入してpGCn-TPO12ΔEX200C25
ベクターを完成させた。
【0061】このようにして構築された4種類のTPO
ターゲッティングベクターはXhoI/SalIあるいはHpaI/Sa
lI酵素処理した後、実施例5で示したエレクトロポレー
ション法によりHepG2細胞に導入された。導入後、G418
を含む選択培地による選択を数週間行い、安定形質転換
細胞を選択した。得られた薬剤耐性のコロニーを分離
し、その培養上清のTPO蛋白質の産生量を、Ba/F3細
胞[R. Palacios, Cell,41, 727(1985)]にc-mpl遺伝子
[I. Vigon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89,
5640(1992)]を導入して作製したTPO依存性細胞株B
aF/MPLによる細胞増殖アッセイ法によって検討し、元の
宿主細胞より多くTPOを産生しているコロニーを選択
した。さらにこれらのコロニーを実施例7で示した限界
希釈法によりクローン化した。このようにして得られた
TPO産生細胞はいずれも高い産生量を示した。また、
HepG2細胞以外にHuH7細胞でも同様にTPO高産生の相
同組換え細胞が得られた。ここで得られたpGCnd-TPO12
ΔEx1200ベクター導入細胞は、高濃度のMTXに馴化す
ることで、さらに高産生な細胞にすることができる。こ
れらの結果から、ここに開示した相同組換え技術を利用
した生理活性物質産生細胞の作製方法が、EPO以外の
生理活性物質にも適応できる汎用的な方法であることが
示された。従って、この方法は種々の生理活性物質をタ
ーゲットとした実際の医薬品開発に使用できると考えら
れる。
【0062】
【発明の効果】本発明により構築されたターゲッティン
グベクターを用いることにより、所望とする生理活性物
質自身の発現調節領域を外来性の強力な発現調節領域へ
置換することが可能となった。その結果、ヒト肝細胞に
おいて当該生理活性物質を大量かつ安定的に発現可能と
なった。本発明により得られる生理活性物質は、ヒト肝
細胞より発現されるため、生体内に存在する、いわゆる
天然型の生理活性物質に極めて近似した形で得られ、当
該生理活性物質は安全性に優れた医薬品となりうる。
【0063】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:1165 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:genomic DNA 起源 生物名 ヒト 配列 AGATCTACAC ATTCCAGTCT TTTTTTGTTT TTGAGACAGG CTCTCACTCT GTCGCCCAGG 60 CTGCAGTGCA GTGGCACGAT CATGGCTCAC TACGGCCTCG AACTCCTGGG CTCAGGTGAT 120 CCTCCTGCCT TAGCCTCCTG CATATTTGGG ACTACAGGCG TGAGCACCAC ACCTGACTAA 180 TTATTTTTWA TTTATTTATT TATTTTAGAG ACAAGGTCTT GCCATGTTGT CCGGGCTGGT 240 CTCGAACTCC TGGGCTCAAA GGATCTTCCT GCCTTGGTCT CCCAAAGTGC TGGGATTATA 300 GGTGTCAGCT GCGGCGCCTG GACCTTTCCT GTCTTTTATG AAACCTGAAT GGGATAGGCT 360 GGTAGTTTCA CCACACCCAT TTGACAGATG AGGACATTGA GGGCTCAAGG ACGAGGCCAC 420 TTTCTAAGGT GTGAGAGACC AGCTAGTCTT GGTCTCCTGC TCTGGGAATC TCACTCCTCT 480 GGCTCAGGGT TTCCAGAAGC CATAAAACCT TAGCTGTAAA TCCCAGCCCC CATCACTCTT 540 GGTGTTAGCT GTATTTCAGT GTTCTTAAGA ACTCAGCAAT GCAGCCTAGC TAACCTACAC 600 CACAGGTCAA ATAAACAGAT GTCAAGGTGC ATGTGTGTCC TGCACAATGG ACTGTGTGCT 660 CTGTGCACTA AAAGTTAAGT GTCTGGGGTG GGGGCTGGGT GCGGTGGCTC ACGCCTGCAA 720 TCCCAGCACT TTGAGAGGCC GAGGAGGGTG GATCACCTGA GGTCAGGAGT TCAAGACCGG 780 TATGGGCAAT ATGGCAACAC CCCATCTCTA CTAAAAATAC AAAACATAGC CGGGTGTAAA 840 GGTGTGCCTG TAGTCCCAGC TGCTCCAGAG GCTGAAGCAG GAGAATTGCT TGAACCCAGG 900 AGGCAGAGGT TGTAGTGAAC GGGAGATGGC ACCACTGCAC TGCCTGGGCA ACATAGGGAG 960 GCTACATCTC CGGAAAAAAA AAAAAAAGTT AAGTGTCTGG GTTTGCAGAG TACTAGACGG 1020 TGAGGAGTGA GGTGGGGAGG AAGAACCCCA AATTTCTTGC CCTATTTGCC CCCATTAAAT 1080 TCCTCAACAT GGTCAACATT GTTTCTAGAA CATGTCCTGG GATTGTGGGA AGGGAGACCA 1140 CTCATTTGCC CCTCCCCTAA AGCTT 1165
【0064】配列番号:2 配列の長さ:40 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 TCGAAGCTTG CCAGGCGCGG AGATGGGGGT GCACGAATGT 40
【0065】配列番号:3 配列の長さ:41 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 GAAGATCTGG ATCCTTATCA TCTGTCCCCT GTCCTGCATG C 41
【0066】配列番号:4 配列の長さ:96 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 ATGAGGGCCC CCGGTGTGGT CACCCGGCGC GCCCCAGGTC GCTGAGGGAC CCCGGCCAGG 60 CGCGGAGATG GGCATCAAGA TGGGTGAGTA CTCGCG 96
【0067】配列番号:5 配列の長さ:51 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 TCGAAGCTTG CCAGGCGCGG AGATGGGCAT CAAGATGGGT GAGTACTCGC G 51
【0068】配列番号:6 配列の長さ:39 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 TCGAAGCTTA CCCCGGCCAG AATGGAGCTG ACTGAATTG 39
【0069】配列番号:7 配列の長さ:36 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 GAAGATCTGA GAACCTTACC CTTCCTGAGA CAGATT 36
【0070】配列番号:8 配列の長さ:40 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 CCCAAGCTTG GTACCTCACC CTTGGCCGGC CTTTGCCCCA 40
【0071】配列番号:9 配列の長さ:98 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 GGAAGATCTG GATCCATCGA TGCATGCGTC GACGAGAGGT GAGGTTGAAA GATGAGGAGG 60 AAATCATTGT CAGCTGGTAT TCCAGGAGTT CCCATTCA 98
【0072】配列番号:10 配列の長さ:102 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 CCCAAGCTTG GTACCGGGGA GCGGCCGCAA ACAGGGAGCC ACGCCAGCCA GACACCCCGG 60 CCAGAATGGG CATCAAGATG GGTGAGAACA CACCTGAGGG GC 102
【0073】配列番号:11 配列の長さ:98 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸(合成DNA) 配列 GGAAGATCTG GATCCATCGA TGCATGCGTC GACGAGAGGT GAGGTTGAAA GATGAGGAGG 60 AAATCATTGT CAGCTGGTAT TCCAGGAGTT CCCATTCA 98
【0074】配列番号:12 配列の長さ:4 配列の型:アミノ酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Met Gly Val His
【0075】配列番号:13 配列の長さ:5 配列の型:アミノ酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド 配列 Met Gly Ile Lys Met
【図面の簡単な説明】
【図1】 染色体エリスロポエチン遺伝子を含むファー
ジクローンの制限酵素切断点地図を示す。
【図2】 エリスロポエチン遺伝子発現確認用ベクター
の構築図を示す。
【図3】 エリスロポエチン遺伝子発現確認用ベクター
の発現活性を示す。
【図4】 5'側相同部分検討用エリスロポエチンター
ゲッティングベクターの構築図を示す。
【図5】 エリスロポエチンターゲッティングベクター
による相同組換えを模式的に示す。
【図6】 サザンハイブリダイゼーションにより、E11-
1-21細胞の相同組換えの確認を行った結果を示す。
【図7】 エリスロポエチン遺伝子の5'上流BglII−Hi
ndIII領域の核酸塩基配列を示す。
【図8】 染色体エリスロポエチン遺伝子に存在するAl
u反復配列を示す。
【図9】 エリスロポエチン遺伝子発現確認用ベクター
を導入した細胞の継代安定性を確認した結果を示す。
【図10】 E11-1-21細胞の継代安定性を確認した結果
を示す。
【図11】 エンハンサー・プロモーター検討用ベクタ
ーを示す。
【図12】 エンハンサー・プロモーター検討用ベクタ
ーの構築図を示す。
【図13】 エンハンサー・プロモーター検討用ベクタ
ーの各種細胞における一時発現及び安定的発現の活性を
確認した結果を示す。
【図14】 GSTエンハンサーの発現安定効果を示
す。
【図15】 エリスロポエチン発現における5'UT及
びシグナル配列の影響について確認した結果を示す。
【図16】 エリスロポエチンターゲッティングベクタ
ーの構築図(1)を示す。
【図17】 エリスロポエチンターゲッティングベクタ
ーの構築図(2)を示す。
【図18】 エリスロポエチンターゲッティングベクタ
ーの発現活性を示す。
【図19】 染色体トロンボポエチン遺伝子を含むファ
ージクローンの制限酵素切断点地図を示す。
【図20】 トロンボポエチンターゲッティングベクタ
ーの構築図(1)を示す。
【図21】 トロンボポエチンターゲッティングベクタ
ーの構築図(2)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12P 21/02 C07K 14/52 // A61K 38/00 G01N 33/53 V 38/21 A61K 37/24 C07K 14/505 C12N 5/00 B 14/52 A61K 37/02 G01N 33/53 37/66 (C12N 5/10 C12R 1:91) (C12P 21/02 C12R 1:91) (72)発明者 副島 見事 熊本県熊本市龍田町上立田1265−4−1− 407 (72)発明者 中村 敬子 熊本県菊池郡大津町室1340−9−46 (72)発明者 今川 義孝 熊本県熊本市東町4丁目16−2−205

Claims (27)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相同組換え法により生理活性物質の発現
    調節領域を外来性の発現調節領域に置換するためのベク
    ターにおいて、外来性発現調節領域を含むDNA、及び
    その5'側及び3'側両側に、生理活性物質の構造遺伝子
    の5'上流域、あるいは当該構造遺伝子の5'端側の一部
    を含む5'上流域の遺伝子配列の一部に対して相同性を
    有するDNA(5'側相同領域及び3'側相同領域)が配
    置されることを特徴とする相同組換えターゲッティング
    ベクター。
  2. 【請求項2】 当該外来性発現調節領域が、グルタチオ
    ンSトランスフェラーゼ(以下、GSTと称することが
    ある)エンハンサー及びGST自身のプロモーターとは
    異なるプロモーターを含有し、選択的に他のエンハンサ
    ーを含有することもある請求項1に記載のベクター。
  3. 【請求項3】 当該GST自身のプロモーターとは異な
    るプロモーターが、ニワトリβアクチンプロモーターで
    あり、かつ当該ニワトリβアクチンプロモーターの3'
    側に存在する当該プロモーター自身のスプライシングシ
    グナルをウサギβグロビンスプライシングシグナルで置
    換された複合発現調節領域(以下、AGプロモーターと
    称することがある)である請求項2に記載のベクター。
  4. 【請求項4】 当該GST自身のプロモーターとは異な
    るプロモーターが、ヒトサイトメガロウイルスエンハン
    サー及び当該AGプロモーターを含有する複合発現調節
    領域(以下、CAGエンハンサープロモーターと称する
    ことがある)である請求項2に記載のベクター。
  5. 【請求項5】 当該他のエンハンサーが、αフェトプロ
    テイン(以下、AFと称することがある)エンハンサー
    である請求項2に記載のベクター。
  6. 【請求項6】 当該5'側及び3'側両相同領域が生理活
    性物質自身の発現調節領域の全てまたは一部を含有しな
    いことを特徴とする請求項1に記載のベクター。
  7. 【請求項7】 当該5'側及び3'側両相同領域におい
    て、ヒトゲノムDNAに特有のAlu反復配列と挿入され
    る外来性発現調節領域との距離を少なくとも1.4kb以上
    とるように両相同領域を選択することを特徴とする請求
    項1または6に記載のベクター。
  8. 【請求項8】 当該5'側及び3'側両相同領域におい
    て、ヒトゲノムDNAに特有のAlu反復配列を含まない
    ように両相同領域を選択することを特徴とする請求項1
    または6もしくは7のいずれかに記載のベクター。
  9. 【請求項9】 当該3'側相同領域の5'末端が、生理活
    性物質のマチュア蛋白質をコードするアミノ酸コーディ
    ングシークエンスの開始コドンより5'上流側であり、
    かつ、生理活性物質自身の発現調節領域を含まないか、
    あるいは発現調節領域の機能を喪失させる位置である請
    求項1に記載のベクター。
  10. 【請求項10】 当該3'側相同領域内に含有される生
    理活性物質の5'非翻訳領域(以下、5'UTと称するこ
    とがある)、シグナル配列、またはエクソン配列の一部
    の塩基配列において、置換、欠損または付加などの修飾
    がなされている請求項1に記載のベクター。
  11. 【請求項11】 当該生理活性物質がin vivoにおいて
    肝細胞より産生されうる生理活性物質である請求項1、
    6、9、10のいずれかに記載のベクター。
  12. 【請求項12】 当該生理活性物質が、造血因子、免疫
    調節因子、細胞増殖因子などの各種サイトカイン、ホル
    モン並びに血中成分から選ばれる請求項11のいずれか
    に記載のベクター。
  13. 【請求項13】 当該生理活性物質がエリスロポエチン
    (EPO)である請求項12に記載のベクター。
  14. 【請求項14】 当該生理活性物質がトロンボポエチン
    (TPO)である請求項12に記載のベクター。
  15. 【請求項15】 当該ターゲッティングベクター中にヒ
    ト肝細胞で選択可能な選択マーカーを含有する請求項1
    から15のいずれかに記載のベクター。
  16. 【請求項16】 当該選択マーカーがアミノグリコシド
    3'ホスホトランスフェラーゼ(neor)をコードする遺
    伝子である請求項15に記載のベクター。
  17. 【請求項17】 当該選択マーカーが遺伝子増幅能を有
    する遺伝子である請求項15に記載のベクター。
  18. 【請求項18】 当該遺伝子増幅能を有する遺伝子がジ
    ヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)をコードする遺伝子である
    請求項17に記載のベクター。
  19. 【請求項19】 当該ベクターが線状化されていること
    を特徴とする請求項1から18のいずれかに記載のベク
    ター。
  20. 【請求項20】 請求項1から19のいずれかに記載の
    ターゲッティングベクターが導入されることにより形質
    転換されていることを特徴とする生理活性物質発現用肝
    細胞。
  21. 【請求項21】 当該ベクターの導入により相同組換え
    が起こり、目的とする生理活性物質自身の発現調節領域
    が当該ベクターに挿入されている発現調節領域により置
    換される請求項20に記載の肝細胞。
  22. 【請求項22】 当該肝細胞がヒト肝細胞である請求項
    20または21に記載の肝細胞。
  23. 【請求項23】 当該ヒト肝細胞がHepG2細胞またはHuH
    7細胞から選ばれる請求項22に記載の肝細胞。
  24. 【請求項24】 請求項20から23のいずれかに記載
    の肝細胞を選択マーカーに適した薬剤を含む選択培地で
    培養後、安定形質転換細胞を選択し、得られた薬剤耐性
    のコロニーを分離し、生理活性物質の存在が検出できる
    方法によって、生理活性物質産生細胞をスクリーニング
    することを特徴とする生理活性物質発現用肝細胞の作製
    方法。
  25. 【請求項25】 当該生理活性物質の検出方法が、当該
    生理活性物質に対する抗体を用いた酵素免疫アッセイ
    (以下、EIAと称することがある)法である請求項2
    4に記載の作製方法。
  26. 【請求項26】 当該生理活性物質の検出方法が、当該
    生理活性物質依存性の細胞株を用いたアッセイ法である
    請求項25に記載の作製方法。
  27. 【請求項27】 請求項24から26のいずれかに記載
    の方法により得られた肝細胞を用いることを特徴とする
    生理活性物質の産生方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003088380A (ja) * 2001-09-18 2003-03-25 Railway Technical Res Inst ビフェニル又はその誘導体の分解法、及びそれに用いられる微生物
EP2837392A2 (en) 2009-09-15 2015-02-18 Kaneka Corporation Modified erythropoietin to which water-soluble long-chain molecule is added

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