JPH108162A - 高温強度に優れたアルミニウム合金材の製造方法 - Google Patents
高温強度に優れたアルミニウム合金材の製造方法Info
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- JPH108162A JPH108162A JP8177065A JP17706596A JPH108162A JP H108162 A JPH108162 A JP H108162A JP 8177065 A JP8177065 A JP 8177065A JP 17706596 A JP17706596 A JP 17706596A JP H108162 A JPH108162 A JP H108162A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 強度特性、とくに高温強度に優れ、高温環境
下で使用される自動車エンジン用部材、高速飛翔体の外
板などの構造材として好適なアルミニウム合金材の製造
方法を提供する。 【解決手段】 Fe:4〜10%、V:0.5〜4 %を含有し、
Mo、Zr、Tiのうちの1種以上を合計で0.5 〜5 %
含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミ
ニウム合金の急冷凝固体を熱間押出加工した後、200 ℃
未満の温度で断面減少率20%以上の組成加工を加え、マ
トリックスが加工組織で、マトリックス中に分散する金
属間化合物の平均粒径が3 μm 以下の組織性状とする。
下で使用される自動車エンジン用部材、高速飛翔体の外
板などの構造材として好適なアルミニウム合金材の製造
方法を提供する。 【解決手段】 Fe:4〜10%、V:0.5〜4 %を含有し、
Mo、Zr、Tiのうちの1種以上を合計で0.5 〜5 %
含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるアルミ
ニウム合金の急冷凝固体を熱間押出加工した後、200 ℃
未満の温度で断面減少率20%以上の組成加工を加え、マ
トリックスが加工組織で、マトリックス中に分散する金
属間化合物の平均粒径が3 μm 以下の組織性状とする。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高温強度に優れたアル
ミニウム合金材、とくに、エンジンの吸気バルブ、コン
ロッド、ガスタービンのインペラ、ファンブレード、航
空機など高速飛翔体の外板材など、熱負荷がかかる部
材、構造材として好適に使用できる高温強度に優れたア
ルミニウム合金材の製造方法に関する。
ミニウム合金材、とくに、エンジンの吸気バルブ、コン
ロッド、ガスタービンのインペラ、ファンブレード、航
空機など高速飛翔体の外板材など、熱負荷がかかる部
材、構造材として好適に使用できる高温強度に優れたア
ルミニウム合金材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用エンジン部品、航空機などの超
音速飛翔体の外板などは、150 〜350℃の熱負荷がかか
るため高温強度が必要とされるから、従来、自動車用エ
ンジンの吸気バルブ、コンロッドには鋼材が使用され、
超音速飛翔体の外板のうち空気の摩擦で高温になる部分
はTi合金や鋼材が用いられていた。
音速飛翔体の外板などは、150 〜350℃の熱負荷がかか
るため高温強度が必要とされるから、従来、自動車用エ
ンジンの吸気バルブ、コンロッドには鋼材が使用され、
超音速飛翔体の外板のうち空気の摩擦で高温になる部分
はTi合金や鋼材が用いられていた。
【0003】近年、自動車などに対し、高性能化、燃費
低減、低コスト化などの要請に基づく軽量化の観点か
ら、アルミニウム合金材の使用も望まれているが、通常
のアルミニウム合金材は、高温での強度が高くなく、18
0 ℃以上の高温環境下で応力のかかる用途に適用された
例はみられなかった。
低減、低コスト化などの要請に基づく軽量化の観点か
ら、アルミニウム合金材の使用も望まれているが、通常
のアルミニウム合金材は、高温での強度が高くなく、18
0 ℃以上の高温環境下で応力のかかる用途に適用された
例はみられなかった。
【0004】一方、アトマイズ法によるアルミニウム合
金の急冷凝固粉末を熱間押出、高温静水圧プレスなどの
高温圧縮加工を行って成形材を得る急冷凝固技術が開発
され、当該急冷凝固技術を利用する各種の耐熱性アルミ
ニウム合金材が提案されており、上記の熱負荷のかかる
部材、構造材としての使用が期待されている。
金の急冷凝固粉末を熱間押出、高温静水圧プレスなどの
高温圧縮加工を行って成形材を得る急冷凝固技術が開発
され、当該急冷凝固技術を利用する各種の耐熱性アルミ
ニウム合金材が提案されており、上記の熱負荷のかかる
部材、構造材としての使用が期待されている。
【0005】出願人は、急冷凝固を利用するアルミニウ
ム合金のうち、Al−Fe系合金に着目し、渋江らは、
150 ℃以上の高温環境で使用可能な合金材、例えば、F
e:4〜15%、Mo:0.5〜8 %、Zr:0.3〜8 %を含み、
残部Alおよび不可避的不純物からなり、金属間化合物
の平均粒径を0.1 〜1 μm に調整した急冷凝固成形材(
特公昭63-9576 号公報) 、これにさらにTi、Cr、M
nのうちの1種以上を含有する材料(特公昭63-10222号
公報) 、Fe:4〜15%、V:0.5〜8 %を含み、Mo:0.5
〜8 %、Zr:0.3〜8 %、Ti:0.5〜8 %のうちの1種
以上を含有し、残部実質的にAlからなり、金属間化合
物の平均粒径を0.1 〜1 μm に調整した急冷凝固成形材
(特公昭63-10221号公報) を提案し、さらに、これらの
材料の延性を改善するために、Fe:6〜12%、Si:1%
を越え4.0 %未満、Cu:1〜6 %、Mg:0.3〜3 %を含
み、V:0.5〜5 %、Mo:0.5〜5 %、Zr:0.4〜4 %の
うちの1種以上を合計で8 %以下含有し、残部Alおよ
び不可避的不純物からなる急冷凝固アルミニウム合金を
溶体化処理、焼入れしたのち、人工時効する方法を提案
した。(特公平6-89428 号公報)
ム合金のうち、Al−Fe系合金に着目し、渋江らは、
150 ℃以上の高温環境で使用可能な合金材、例えば、F
e:4〜15%、Mo:0.5〜8 %、Zr:0.3〜8 %を含み、
残部Alおよび不可避的不純物からなり、金属間化合物
の平均粒径を0.1 〜1 μm に調整した急冷凝固成形材(
特公昭63-9576 号公報) 、これにさらにTi、Cr、M
nのうちの1種以上を含有する材料(特公昭63-10222号
公報) 、Fe:4〜15%、V:0.5〜8 %を含み、Mo:0.5
〜8 %、Zr:0.3〜8 %、Ti:0.5〜8 %のうちの1種
以上を含有し、残部実質的にAlからなり、金属間化合
物の平均粒径を0.1 〜1 μm に調整した急冷凝固成形材
(特公昭63-10221号公報) を提案し、さらに、これらの
材料の延性を改善するために、Fe:6〜12%、Si:1%
を越え4.0 %未満、Cu:1〜6 %、Mg:0.3〜3 %を含
み、V:0.5〜5 %、Mo:0.5〜5 %、Zr:0.4〜4 %の
うちの1種以上を合計で8 %以下含有し、残部Alおよ
び不可避的不純物からなる急冷凝固アルミニウム合金を
溶体化処理、焼入れしたのち、人工時効する方法を提案
した。(特公平6-89428 号公報)
【0006】しかしながら、上記の急冷凝固アルミニウ
ム合金材は、自動車用エンジン部材などとして適用し得
るかなりの強度特性をそなえてはいるが、高温環境にお
いて使用する上記の部材、構造材として広範囲に実用化
するためには、強度とくに高温強度が必ずしも十分では
ない。
ム合金材は、自動車用エンジン部材などとして適用し得
るかなりの強度特性をそなえてはいるが、高温環境にお
いて使用する上記の部材、構造材として広範囲に実用化
するためには、強度とくに高温強度が必ずしも十分では
ない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、急冷凝固技
術を利用した上記Al−Fe系合金材における強度特性
をさらに改善するために、先に開発された上記Al−F
e系合金材の組成範囲を見直すとともに、組成範囲と製
造工程との組合わせについて再検討した結果としてなさ
れたものであり、その目的は、さらに改良された強度、
とくに高温強度特性をそなえ、高温環境下で広範囲に使
用可能なアルミニウム合金材の製造方法を提供すること
ににある。
術を利用した上記Al−Fe系合金材における強度特性
をさらに改善するために、先に開発された上記Al−F
e系合金材の組成範囲を見直すとともに、組成範囲と製
造工程との組合わせについて再検討した結果としてなさ
れたものであり、その目的は、さらに改良された強度、
とくに高温強度特性をそなえ、高温環境下で広範囲に使
用可能なアルミニウム合金材の製造方法を提供すること
ににある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による高温強度に優れたアルミニウム合金材
の製造方法は、Fe:4〜10%、V:0.5〜4 %を含有し、
Mo、ZrおよびTiのうちの1種以上を合計で0.5 〜
5 %含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるア
ルミニウム合金の急冷凝固体を熱間成形加工した後、20
0 ℃未満の温度で断面減少率20%以上の塑性加工を加
え、マトリックスが加工組織で、マトリックス中に分散
する金属間化合物の平均粒径が3 μm 以下の組織性状と
することを構成上の特徴とする。
めの本発明による高温強度に優れたアルミニウム合金材
の製造方法は、Fe:4〜10%、V:0.5〜4 %を含有し、
Mo、ZrおよびTiのうちの1種以上を合計で0.5 〜
5 %含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるア
ルミニウム合金の急冷凝固体を熱間成形加工した後、20
0 ℃未満の温度で断面減少率20%以上の塑性加工を加
え、マトリックスが加工組織で、マトリックス中に分散
する金属間化合物の平均粒径が3 μm 以下の組織性状と
することを構成上の特徴とする。
【0009】本発明における合金成分の意義およびその
限定理由について説明すると、Feは、マトリックス中
に、Al3 Fe、Al6 Fe、その他のAl−Fe系金
属間化合物を形成し、これらの金属間化合物がマトリッ
クス中に分散して、常温と高温の強度、弾性率を高め、
また線膨張係数を低下させる機能を有する。上記Al−
Fe系化合物は、また、塑性加工により得られる加工組
織の回復あるいは再結晶を抑制するよう作用する。Fe
の好ましい含有量は4 〜10%の範囲であり、4%未満で
はその効果が十分でなく、10%を越えると、低温おける
加工性が低下して塑性加工が困難となる、Feのさらに
好ましい含有範囲は6 〜10%である。
限定理由について説明すると、Feは、マトリックス中
に、Al3 Fe、Al6 Fe、その他のAl−Fe系金
属間化合物を形成し、これらの金属間化合物がマトリッ
クス中に分散して、常温と高温の強度、弾性率を高め、
また線膨張係数を低下させる機能を有する。上記Al−
Fe系化合物は、また、塑性加工により得られる加工組
織の回復あるいは再結晶を抑制するよう作用する。Fe
の好ましい含有量は4 〜10%の範囲であり、4%未満で
はその効果が十分でなく、10%を越えると、低温おける
加工性が低下して塑性加工が困難となる、Feのさらに
好ましい含有範囲は6 〜10%である。
【0010】Vは、一部はAl−V系金属間化合物とし
て分散し、常温強度および高温強度を高める。また一部
はAl−Fe系化合物のFeと置換して、Al−Fe系
化合物の熱的安定性を高めるとともに、Al−Fe系金
属間化合物を微細に晶出させて分散強化作用を生ぜし
め、高温強度の向上に寄与する。Vの好ましい含有量は
0.5 〜4 %の範囲であり、0.5 %未満ではその効果が小
さく、4 %を越えて含有すると材料の延性、靭性が低下
する。
て分散し、常温強度および高温強度を高める。また一部
はAl−Fe系化合物のFeと置換して、Al−Fe系
化合物の熱的安定性を高めるとともに、Al−Fe系金
属間化合物を微細に晶出させて分散強化作用を生ぜし
め、高温強度の向上に寄与する。Vの好ましい含有量は
0.5 〜4 %の範囲であり、0.5 %未満ではその効果が小
さく、4 %を越えて含有すると材料の延性、靭性が低下
する。
【0011】Mo、Zr、Tiは、一部はAl−Fe系
金属間化合物のFeと置換して、金属間化合物の体積率
を高め且つ熱的安定性を高め、その結果として常温と高
温の強度を向上させる。また一部は、Al−Mo系、A
l−Zr系、Al−Ti系の金属間化合物としてマトリ
ックス中に分散し、分散強化作用を生ぜしめるととも
に、加工組織の回復あるいは再結晶を抑制する。好まし
くは、Mo、ZrおよびTiの少なくとも1種以上を合
計量で0.5 〜5 %の範囲で含有させる。0.5 %未満では
その効果が十分でなく、5 %を越えると微細な金属間化
合物が得難くなり強度向上の効果が飽和する。低温での
延性、靭性も低下し、塑性加工が困難となる。
金属間化合物のFeと置換して、金属間化合物の体積率
を高め且つ熱的安定性を高め、その結果として常温と高
温の強度を向上させる。また一部は、Al−Mo系、A
l−Zr系、Al−Ti系の金属間化合物としてマトリ
ックス中に分散し、分散強化作用を生ぜしめるととも
に、加工組織の回復あるいは再結晶を抑制する。好まし
くは、Mo、ZrおよびTiの少なくとも1種以上を合
計量で0.5 〜5 %の範囲で含有させる。0.5 %未満では
その効果が十分でなく、5 %を越えると微細な金属間化
合物が得難くなり強度向上の効果が飽和する。低温での
延性、靭性も低下し、塑性加工が困難となる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明のアルミニウム合金材の製
造に際しては、まず前記の成分組成を有するアルミニウ
ム合金の溶湯を102 ℃/sec以上の冷却速度で凝固させる
アトマイズ法やロール法によって、粉末状またはリボン
状の急冷凝固アルミニウム合金を製造し、このアルミニ
ウム合金粉末またはリボンを缶に充填して、真空中で脱
ガス処理し、必要に応じてホットプレスなどにより予備
成形してなる急冷凝固体、または前記の組成を有するア
ルミニウム合金の溶湯をガスアトマイズし、生成した液
滴を半凝固状態で堆積させるスプレーフォミング法によ
りバルク状の急冷凝固体を得る。
造に際しては、まず前記の成分組成を有するアルミニウ
ム合金の溶湯を102 ℃/sec以上の冷却速度で凝固させる
アトマイズ法やロール法によって、粉末状またはリボン
状の急冷凝固アルミニウム合金を製造し、このアルミニ
ウム合金粉末またはリボンを缶に充填して、真空中で脱
ガス処理し、必要に応じてホットプレスなどにより予備
成形してなる急冷凝固体、または前記の組成を有するア
ルミニウム合金の溶湯をガスアトマイズし、生成した液
滴を半凝固状態で堆積させるスプレーフォミング法によ
りバルク状の急冷凝固体を得る。
【0013】ついで、得られた急冷凝固体を熱間成形加
工により固化する。粉末状またはリボン状の急冷凝固ア
ルミニウム合金から得られる急冷凝固体の熱間成形は、
熱間押出加工によるのが好ましく、スプレーフォーミン
グ法により得られる急冷凝固体の熱間成形は、熱間押出
によるのが好ましいが、熱間圧延で代用することもでき
る。
工により固化する。粉末状またはリボン状の急冷凝固ア
ルミニウム合金から得られる急冷凝固体の熱間成形は、
熱間押出加工によるのが好ましく、スプレーフォーミン
グ法により得られる急冷凝固体の熱間成形は、熱間押出
によるのが好ましいが、熱間圧延で代用することもでき
る。
【0014】熱間押出の場合は、350 ℃以上の温度域で
押出比3 以上の条件で加工を行うのが好ましく、この条
件により、とくに粉末表面の酸化皮膜が破壊されて粉末
間に十分な結合が得られる。押出比が3 未満では粉末間
の結合が不十分となり易い。350 ℃未満の温度での押出
加工では、材料の延性が乏しく、押出割れが生じ易くな
り、押出も困難となる。
押出比3 以上の条件で加工を行うのが好ましく、この条
件により、とくに粉末表面の酸化皮膜が破壊されて粉末
間に十分な結合が得られる。押出比が3 未満では粉末間
の結合が不十分となり易い。350 ℃未満の温度での押出
加工では、材料の延性が乏しく、押出割れが生じ易くな
り、押出も困難となる。
【0015】熱間成形後、200 ℃未満の低温域で断面減
少率が20%以上の塑性加工を行う。塑性加工は圧延加
工、押出加工、鍛造加工などを適用することができる。
当該塑性加工を施すことによって、熱間成形において、
動的回復あるいは動的再結晶を起こしたマトリックスの
組織を加工組織とする。加工組織は、マトリックス中へ
の微細な金属間化合物の分散により350 ℃程度の温度ま
で安定である。塑性加工の温度が200 ℃を越えると、マ
トリックスに動的回復が生じ易く、十分な強度特性が得
られない。塑性加工温度は低いほうが好ましいが200 ℃
未満であれば、実質的には温度に関係なく強度特性を得
ることができる。加工のし易さなどの観点から100 ℃以
上での加工が実用上好ましい。
少率が20%以上の塑性加工を行う。塑性加工は圧延加
工、押出加工、鍛造加工などを適用することができる。
当該塑性加工を施すことによって、熱間成形において、
動的回復あるいは動的再結晶を起こしたマトリックスの
組織を加工組織とする。加工組織は、マトリックス中へ
の微細な金属間化合物の分散により350 ℃程度の温度ま
で安定である。塑性加工の温度が200 ℃を越えると、マ
トリックスに動的回復が生じ易く、十分な強度特性が得
られない。塑性加工温度は低いほうが好ましいが200 ℃
未満であれば、実質的には温度に関係なく強度特性を得
ることができる。加工のし易さなどの観点から100 ℃以
上での加工が実用上好ましい。
【0016】本発明は、前記の特定の組成を有するアル
ミニウム合金の急冷凝固体を熱間成形加工し、特定条件
の塑性加工を行い、合金材のマトリックスを十分に加工
組織とし、マトリックス中に分散する金属間化合物の平
均粒径を3 μm 以下の組織性状とすることを特徴とし、
これらの組合わせによって優れた強度とくに高温強度特
性を得るものである。
ミニウム合金の急冷凝固体を熱間成形加工し、特定条件
の塑性加工を行い、合金材のマトリックスを十分に加工
組織とし、マトリックス中に分散する金属間化合物の平
均粒径を3 μm 以下の組織性状とすることを特徴とし、
これらの組合わせによって優れた強度とくに高温強度特
性を得るものである。
【0017】とくに、マトリックス中に微細に分散する
金属間化合物の平均粒径は重要で、本発明においては、
アルミニウム合金溶湯を102 ℃/sec以上の冷却速度で凝
固させるアトマイズ法やロール法により微細な金属間化
合物を晶出させ、あるいはガスアトマイズされた液滴を
半凝固状態で堆積させるスプレーフォーミング法におい
て、堆積時の衝撃と振動により晶出粒子の粗大成長を抑
制し、さらに熱間成形、塑性加工を加えることにより、
最終的に3 μm 以下の平均粒径を有する金属間化合物の
分散した組織性状が得られる。
金属間化合物の平均粒径は重要で、本発明においては、
アルミニウム合金溶湯を102 ℃/sec以上の冷却速度で凝
固させるアトマイズ法やロール法により微細な金属間化
合物を晶出させ、あるいはガスアトマイズされた液滴を
半凝固状態で堆積させるスプレーフォーミング法におい
て、堆積時の衝撃と振動により晶出粒子の粗大成長を抑
制し、さらに熱間成形、塑性加工を加えることにより、
最終的に3 μm 以下の平均粒径を有する金属間化合物の
分散した組織性状が得られる。
【0018】
【実施例】以下、実施例により、本発明を比較例と対比
して説明する。 実施例1 Fe:8%、V:1%、Zr:1%を含有し、残部Alおよび
不可避的不純物からなるアルミニウム合金の溶湯をガス
アトマイズして急冷凝固粉末を製造し、200 μm 以下に
分級した。この粉末を径90mm、高さ200mm の缶に充填し
て、400 ℃の温度に1h真空保持する条件で脱ガス処理を
行った。ついで、430 ℃の温度で熱間押出( 押出比5.5)
を行い、直径40mmの丸棒を得た。
して説明する。 実施例1 Fe:8%、V:1%、Zr:1%を含有し、残部Alおよび
不可避的不純物からなるアルミニウム合金の溶湯をガス
アトマイズして急冷凝固粉末を製造し、200 μm 以下に
分級した。この粉末を径90mm、高さ200mm の缶に充填し
て、400 ℃の温度に1h真空保持する条件で脱ガス処理を
行った。ついで、430 ℃の温度で熱間押出( 押出比5.5)
を行い、直径40mmの丸棒を得た。
【0019】得られた丸棒から、直径35mm、長さ20mmの
小片を削り出し、表1に示す温度で直径15mmの丸棒に押
出加工した。得られた丸棒材について、常温および250
℃の温度での引張試験を行った。結果を表1に示す。表
1にみられるように、本発明に従う試験材No.1〜4 は、
とくに高温において耐力260MPa以上、引張強さ320MPa以
上の優れた強度を示した。
小片を削り出し、表1に示す温度で直径15mmの丸棒に押
出加工した。得られた丸棒材について、常温および250
℃の温度での引張試験を行った。結果を表1に示す。表
1にみられるように、本発明に従う試験材No.1〜4 は、
とくに高温において耐力260MPa以上、引張強さ320MPa以
上の優れた強度を示した。
【0020】
【表1】
【0021】比較例1 実施例1において、直径35mmから直径15mmへの押出温度
を、表2に示すように変えて押出加工を行い、得られた
丸棒材について、常温および250 ℃の温度での引張試験
を行った。結果を表2に示す。表2にみられるように、
押出加工を本発明の範囲を越える250 ℃で行った場合
は、押出前の引張特性と大きな差がなく、とくに高温の
引張性能が劣っていた。
を、表2に示すように変えて押出加工を行い、得られた
丸棒材について、常温および250 ℃の温度での引張試験
を行った。結果を表2に示す。表2にみられるように、
押出加工を本発明の範囲を越える250 ℃で行った場合
は、押出前の引張特性と大きな差がなく、とくに高温の
引張性能が劣っていた。
【0022】
【表2】
【0023】実施例2 Fe:8%、V:1%、Mo:1%、Zr:0.5%を含有し、残
部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金
の溶湯を、窒素ガスでアトマイズし、下部に位置する回
転コレクタ上に半凝固状態で堆積させるスプレーフォー
ミング法により、直径250mm 、長さ500mm の急冷凝固体
とした。ついで、この急冷凝固体を390℃の温度で熱間
押出( 押出比19.6) することにより, 縦100mm 、横25mm
の断面矩形状の帯材に成形した。
部Alおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金
の溶湯を、窒素ガスでアトマイズし、下部に位置する回
転コレクタ上に半凝固状態で堆積させるスプレーフォー
ミング法により、直径250mm 、長さ500mm の急冷凝固体
とした。ついで、この急冷凝固体を390℃の温度で熱間
押出( 押出比19.6) することにより, 縦100mm 、横25mm
の断面矩形状の帯材に成形した。
【0024】得られた帯材を、180 ℃の温度、表3に示
す断面減少率で圧延加工した。なお、一回の圧延の断面
減少率は8 〜12%とした。作製された圧延材について、
常温および250 ℃で引張試験を行った。結果を表3に示
す。表3にみられるように、本発明に従う試験材No.7〜
10は、いずれも高温において耐力260MPa以上、引張強さ
320MPa以上の優れた強度特性を有しており、常温の引張
性能も優れていた。
す断面減少率で圧延加工した。なお、一回の圧延の断面
減少率は8 〜12%とした。作製された圧延材について、
常温および250 ℃で引張試験を行った。結果を表3に示
す。表3にみられるように、本発明に従う試験材No.7〜
10は、いずれも高温において耐力260MPa以上、引張強さ
320MPa以上の優れた強度特性を有しており、常温の引張
性能も優れていた。
【0025】
【表3】
【0026】比較例2 実施例2において、熱間押出後、断面減少率10%の圧延
を行い、得られた圧延材について、実施例2と同様、引
張性能を評価した。結果を表4に示す。表4にみられる
ように、断面減少率が20未満の試験材No.11 は、引張性
能において圧延前の材料(試験材No.12)と大きな差がな
く、その値も劣っていた。
を行い、得られた圧延材について、実施例2と同様、引
張性能を評価した。結果を表4に示す。表4にみられる
ように、断面減少率が20未満の試験材No.11 は、引張性
能において圧延前の材料(試験材No.12)と大きな差がな
く、その値も劣っていた。
【0027】
【表4】
【0028】実施例3 実施例1と同じ方法で、表5に示す組成を有するアルミ
ニウム合金の急冷凝固体を製造し、これを実施例1と同
一条件で押出加工して、直径40mmの丸棒を作製した。こ
の丸棒から直径35mm、長さ20mmの小片を削り出し、100
℃の温度で直径15mmの丸棒材にさらに押出加工した。得
られた丸棒材について、常温および250℃での引張試験
を行った。結果を表5に示す。表5にみられるように、
本発明に従う試験材No.13 〜16は、いずれも耐力260MPa
以上、引張強さ320MPa以上の優れた高温強度をそなえ、
常温強度もきわめて良好であった。
ニウム合金の急冷凝固体を製造し、これを実施例1と同
一条件で押出加工して、直径40mmの丸棒を作製した。こ
の丸棒から直径35mm、長さ20mmの小片を削り出し、100
℃の温度で直径15mmの丸棒材にさらに押出加工した。得
られた丸棒材について、常温および250℃での引張試験
を行った。結果を表5に示す。表5にみられるように、
本発明に従う試験材No.13 〜16は、いずれも耐力260MPa
以上、引張強さ320MPa以上の優れた高温強度をそなえ、
常温強度もきわめて良好であった。
【0029】
【表5】
【0030】比較例3 実施例3において、合金組成を表6に示すように変え
て、直径15mmの丸棒材を作製し、常温および250 ℃で引
張試験を行った。結果を表6に示す。なお、表6におい
て、本発明の条件を外れたものには下線を付した。表6
に示すように、試験材No.18 はVが含まれていないた
め、また試験材No.19 はFeの含有量が低いため、常
温、高温の引張性能がいずれも劣っている。試験材No.2
0 はFeの含有量が高いため、2度目の押出加工におい
て割れが生じ、また試験材No.21 はV量が多いため変形
抵抗が大きく、熱間押出で詰まりが生じ、いずれも試験
片を作製することができなかった。
て、直径15mmの丸棒材を作製し、常温および250 ℃で引
張試験を行った。結果を表6に示す。なお、表6におい
て、本発明の条件を外れたものには下線を付した。表6
に示すように、試験材No.18 はVが含まれていないた
め、また試験材No.19 はFeの含有量が低いため、常
温、高温の引張性能がいずれも劣っている。試験材No.2
0 はFeの含有量が高いため、2度目の押出加工におい
て割れが生じ、また試験材No.21 はV量が多いため変形
抵抗が大きく、熱間押出で詰まりが生じ、いずれも試験
片を作製することができなかった。
【0031】
【表6】
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、強度特性、とくに高温
強度に優れ、高温環境下で使用される自動車エンジン用
部材、高速飛翔体の外板などの構造材として好適な、ア
ルミニウム合金材の製造方法が提供される。
強度に優れ、高温環境下で使用される自動車エンジン用
部材、高速飛翔体の外板などの構造材として好適な、ア
ルミニウム合金材の製造方法が提供される。
Claims (1)
- 【請求項1】 Fe:4〜10%(重量%、以下同じ)、
V:0.5〜4 %を含有し、Mo、ZrおよびTiのうちの
1種以上を合計で0.5 〜5 %含有し、残部Alおよび不
可避的不純物からなるアルミニウム合金の急冷凝固体を
熱間成形加工した後、200 ℃未満の温度で断面減少率20
%以上の塑性加工を加え、マトリックスが加工組織で、
マトリックス中に分散する金属間化合物の平均粒径が3
μm 以下の組織性状とすることを特徴とする高温強度に
優れたアルミニウム合金材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8177065A JPH108162A (ja) | 1996-06-17 | 1996-06-17 | 高温強度に優れたアルミニウム合金材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8177065A JPH108162A (ja) | 1996-06-17 | 1996-06-17 | 高温強度に優れたアルミニウム合金材の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH108162A true JPH108162A (ja) | 1998-01-13 |
Family
ID=16024512
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8177065A Pending JPH108162A (ja) | 1996-06-17 | 1996-06-17 | 高温強度に優れたアルミニウム合金材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH108162A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011042861A (ja) * | 2009-08-24 | 2011-03-03 | Toyota Central R&D Labs Inc | アルミニウム合金と耐熱アルミニウム合金材およびその製造方法 |
JP2012207283A (ja) * | 2011-03-30 | 2012-10-25 | Toyota Central R&D Labs Inc | 耐熱高強度アルミニウム合金およびその製造方法 |
WO2019069651A1 (ja) * | 2017-10-03 | 2019-04-11 | 株式会社豊田自動織機 | 輸送機用圧縮機部品及びその製造方法 |
JP2019065358A (ja) * | 2017-10-03 | 2019-04-25 | 昭和電工株式会社 | アルミニウム合金粉末及びその製造方法、アルミニウム合金押出材及びその製造方法 |
WO2019193985A1 (ja) * | 2018-04-03 | 2019-10-10 | 株式会社豊田自動織機 | 高温における機械的特性に優れた輸送機用圧縮機部品及びその製造方法 |
-
1996
- 1996-06-17 JP JP8177065A patent/JPH108162A/ja active Pending
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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