JP2672834B2 - 高強度、且つ、鍛造性に優れたアルミニウム合金部材 - Google Patents

高強度、且つ、鍛造性に優れたアルミニウム合金部材

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、高強度、且つ、鍛造性に優れたアルミニ
ウム合金部材に関するものである。
〔従来の技術〕
近年、自動二輪車,自動車等のブレーキには優れたブ
レーキ性能を発揮するディスクブレーキが多く用いられ
るようになっている。ディスクブレーキによる制動は、
ディスクブレーキキャリパー(以下、キャリパーと称
す)に設けられた油圧ピストン対を介してパッドをディ
スクに押し付けることによって行なわれるが、その反力
によるキャパリーのたわみが大きいと、制動が適確に行
なわれず、また、パッドの偏摩耗が生じてパッド寿命が
短くなる。従来、このキャリパーの大半は鉄鋼製のもの
であるが、足回り重量の軽減のためにアルミニウム合金
鋳物性のものも増えつつある。アルミニウム合金は比重
が鋳鉄の約1/3であるが、剛性率が約1/2であるため、ア
ルミニウム合金製キャリパーの設計においては形状をや
や大きくするなどの工夫がされているが、なお、たわみ
の低減と軽量化の相反する要求に必ずしも十分対応でき
ていない。
また、内燃機関に用いられるコネクティングロッド
(以下、コンロッドと称す)には、高温強度、高い信頼
性,低コストが要求され、従来は鉄鋼が使用されてい
る。
コンロッドはピストンの上下運動に伴なう高速運動を
行なうことから、これを軽量化することによりエネルギ
ー損失を著しく軽減できるので、比重が鉄鋼に比べ約1/
3であるアルミニウム合金の使用が検討されてきた。
しかし、従来の溶解鋳造法によるアルミニウム合金は
高温強度が不足しているため、一部の軽負荷エンジンに
採用されているに過ぎないのが現状である。
一方、急冷凝固および粉末冶金法による新種のアルミ
ニウム合金は、その強度,高温強度および耐摩耗性等
が、従来の溶解鋳造法による鋳物合金または展伸用合金
と比べ、飛躍的に優れていることが判明し、近年コンロ
ッドへの適用が盛んに試みられている。
例えば、急冷凝固・粉末冶金法の利点を生かし、同法
によって従来の溶解鋳造法によるアルミニウム合金より
もはるかに多量のFeおよびSiを含有させた“Al−Fe−そ
の他遷移金属元素”からなる多元合金およびAl−Si系合
金は、コンロッドの使用環境である約200℃以下での高
温強度に優れ、鉄鋼製のコンロッドより負荷断面形状を
幾分大きく設計することによって強度上は十分なコンロ
ッドを製造できる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、鉄鋼製コンロッドの大半は信頼性の高
い熱間鍛造材である。従って、アルミニウム合金製のコ
ンロッドについても熱間鍛造材を用いることが望ましい
のであるが、SiおよびFe、または、その他の遷移金属元
素を多量に含む急冷凝固・粉末冶金法によるアルミニウ
ム合金は、鉄鋼または従来の溶解鋳造法によるアルミニ
ウム合金と比べても熱間鍛造性に劣るのが問題である。
これは、一般に高温強度と熱間鍛造性とは、相反する
特性であることによる。このように、熱間鍛造性が低い
と鍛造工程が特殊,煩雑となって製造コストの増大を招
き、また微小な鍛造欠陥の存在により信頼性が低下する
ので、コンロッドとしては致命的問題である。
従って、この発明の目的は、キャリパー用として十分
高い剛性率を有し、さらに、コンロッド用として室温か
ら200℃以下での高温強度に優れ、且つ、熱間鍛造性に
優れたアルミニウム合金部材を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
前述したように、近年、急冷凝固・粉末冶金法を利用
したアルミニウム合金に関する研究開発が盛んである。
中でも従来の溶解鋳造法による合金に比べ、耐応力腐
食割れ性を改善したAl−Zn−Cu−Mg合金、著しく高い高
温強度を有するAl−Fe系合金、および、高い耐摩耗性と
低熱膨張率とを有するAl−Si系合金等が急冷凝固・粉末
冶金法によって開発され実用化段階に入りつつある。
本発明者等は同様の急冷凝固・粉末冶金法によるAl−
高Mn合金について鋭意研究を行った。その結果、適当な
組成を育するAl−Mn−Mg合金は、従来の溶解鋳造法によ
るアルミニウム合金に比べて10〜40%高い剛性率を有
し、また、成形性の釣り合いも良く、高強度高剛性キャ
リパー用に適した合金であることを知見した。
また、Mnの含有量をさらに限定したAl−Mn−Mg合金
は、室温から約200℃までの高温強度に優れ、且つ、熱
間鍛造温度である約400℃以上において成形性が向上
し、キャリパー用はもとより、コンロッド用にも適した
合金であるとの知見を得た。
この発明は、上述の知見に基づいてなされたものであ
って、 Mn:5.0wt.%〜12.0wt.%, Mg:0.1wt.%〜4.0wt.%, 残部:アルミニウムおよび不可避的不純物 からなるアルミニウム合金の急冷凝固粉末を、粉末冶金
法により成形固化したことに特徴を有するものである。
さらに、前記Mnの含有量が9.0〜12.0wt.%、前記Mgの
含有量が0.1〜4.0wt.%であることに特徴を有するもの
である。
さらに、前記Mnの含有量が9.0〜12.0wt.%、前記Mgの
含有量が0.1〜1.2wt.%であることに特徴を有するもの
である。
次に、この発明において、化学成分組成範囲を、上述
のように限定した理由について以下に述べる。
マンガン(Mn): マンガンは鉄等と共に遷移金属元素であり、急冷凝固
法によりアルミニウム中に過飽和固溶または微細に分散
析出させると、強度が著しく向上する。
特に、Al−Mn合金はMn含有量の増加とともに剛性率も
著しく増大する特徴を有している。
また、Mnは熱拡散が遅いので、Al−Mn合金は従来の溶
解鋳造法によるアルミニウム合金よりも高温強度に優れ
ている。
Al−Mn合金とAl−Fe合金とを比較すると、Al−Mn合金
は約200℃以上においてAl−Fe合金より強度低下がやや
大きく、一方成形性は向上するので熱間鍛造性が向上す
る。
また、Al−Mn合金はAl−Fe合金と比較して高い弾性率
が得られる。
従って、使用温度範囲が限定されている用途におい
て、適量のMnを含有するAl−Mn系の急冷凝固・粉末冶金
合金は、高剛性、高強度、且つ、部材成形を熱間で行な
えば成形性も比較的良好となる。
剛性を示す一つの指標であるヤング率は、従来の溶解
鋳造法によるアルミニウム合金で約6,900〜7,300kgf/mm
2であるが、キャリパー用としては、この約10%増の8,0
00kgf/mm2を超えるヤング率が必要である。このために
は5.0wt.%以上のMnを含有することが必要である。例え
ば、約11wt.%のMnを含有するAl−Mn合金では約30%増
の9,500kgf/mm2のヤング率が得られる。しかしながら、
14wt.%を超えてMnを含有する合金では室温の延性が著
しく低くなり、また熱間での成形性も大きく低下する。
この発明のAl−Mn−Mg合金においては、後述するよう
にMgを含有させることにより熱間成形性は向上するが、
特にMnの含有量が12.0wt.%を超えると室温特性が低下
する。
従って、キャリパー用としては、Mnの含有量は5.0wt.
%〜12.0wt.%の範囲に限定すべきである。
さらに、この発明のAl−Mn−Mg合金では、後述するMg
を含有させることにより強度が増大する。
特にコンロッド用として、約200℃までの強度が増大
するには、9.0wt.%以上のMnを含有させることが必要で
ある。9.0wt.%未満では所望の効果は得られない。
一方Mnの含有量が12.0wt.%を超えると、室温での延
性が低下する。これは、Al−Mn−Mgの三元の金属間化合
物が形成されるためと思われる。
従って、コンロッド用としては、Mnの含有量は9.0wt.
%〜12.0wt.%の範囲に限定すべきである。
マグネシウム(Mg): 急冷凝固・粉末冶金法によるAl−Mn系合金にMgを添加
すると、室温から約200℃までの強度が増大する。
従来の溶解鋳造法によるアルミニウム合金においても
Mgの添加は強度向上に有効であることが知られていた。
これは、MgがAl中に固溶して塑性変形に必要な格子転位
の運動に対し抵抗となること、すなわち固溶硬化による
ものと理解されている。急冷凝固・粉末冶金法によるAl
−Mn系合金においても約200℃までのMgの強度向上効果
は、同じく固溶硬化によるものと考えられる。
一方、約200℃以上ではAl−Mn−Mg系合金はAl−Mn系
合金に比べて強度低下が大きく、従って高温での成形性
は向上することが判明した。
室温から200℃までの強度は向上するが、約200℃以上
ではむしろ強度を低下させ成形性を向上させる事実はい
ささか特異にみえるが以下のように整理して考えられ
る。
Al−Mn合金は基本的に分散強度型の合金である。すな
ち急冷凝固・粉末冶金法によりAlマトリックスのほかに
微細なAl−Mn合金間化合物が分散し、運動転位の障害と
なって強化される。
従来の溶解鋳造法によるアルミニウム合金には分散強
化型の合金は存在しなかったが、このような分散強化型
合金に固溶硬化が加味された場合、室温から一定温度ま
では前記両強化機構が加算されるが、一定温度以上では
相殺効果が生ずるようである。
実際Al−Mn−Mg系合金は、これと同量のMnを含むAl−
Mn系合金と比べて、室温では強度が向上するが、一定温
度以上ではむしろ強度が低下し、延性は向上することが
判明した。
また、Mg含有量が多くなるほど、強度低下が著しくな
る温度が低温側に移行することもわかった。
しかしながら、Mgの添加は剛性率にはほとんど影響が
ない。
これらの知見を利用して、急冷凝固・粉末冶金法によ
るAl−Mn合金の高剛性を犠牲にすることなく、高温での
高い成形性を付与した適当な組成範囲のキャリパー用Al
−Mn−Mg合金を選択することができる。
さらに、コンロッドの使用温度範囲内で高強度を示
し、コンロッドを製造する際の熱間鍛造温度では高い成
形性を示すように、適当な組成範囲のコンロッド用Al−
Mn−Mg合金を選択できる。
急冷凝固法による合金では成形手段として鋳造法を用
いることができないので、熱間鍛造が有力な成形手段と
なる。Mgの適量添加はAl−Mn合金の熱間鍛造性を著しく
向上させる。
キャリパー用としては、Mgの含有量が0.1wt.%未満で
は高温での成形性の向上に効果がなく、一方、Mgの含有
量が4.0wt.%を超えると室温付近での延性が不十分とな
る。これは、Al−Mn−Mg金属間化合物の生成によると思
われる 従って、Al−5.0wt.%〜12.0wt.%Mn合金に対するMg
の含有量は0.1wt.%〜4.0wt.%の範囲に限定すべきであ
る。
一方、コンロッド用としては、Mgの含有量が0.1wt.%
未満では室温から200℃までの温度範囲内で所望の強度
向上が得られず、またより高温での成形性の向上にも効
果がない。一方、Mgの含有量が4.0wt.%を超えると200
℃付近でも強度低下が大きくなって所望の強度が得られ
ず、また、Al−Mn−Mg金属間化合物による室温延性の低
下も顕著となる。
従って、Al−9.0wt.%〜12.0wt.%Mn合金に対するMg
の含有量は0.1wt.%〜4.0wt.%、好ましくは、0.1〜1.2
wt.%の範囲に限定すべきである。
本発明の合金の組成に関する構成は以上の通りである
が、本構成の細部における変更は当業者によって容易に
なし得よう。
すなわち、既に急冷凝固・粉末冶金法によるアルミニ
ウム合金において、多数の遷移金属元素の添加が室温強
度,高温強度の向上に有効であることが知られている。
Fe,Ni,Co,Zr,Ti,Cr,V,Hf,Nb,Mo等の元素の比較的少量
を1種または2種上Al−Mn−Mg合金に添加すると、分散
強化の増大による強度向上が得られることがある。従っ
て、これらの元素の添加がAl−Mn−Mg合金の熱間鍛造性
を著しく阻害しない限りにおいて、本発明の合金と同様
の効果が得られる。
また、CuおよびSiは、固溶硬化と分散強化の双方に寄
与する可能性を有する元素である。これらの元素の少量
をAl−Mn−Mg合金に添加することによっても一定の強度
向上が可能である。従って、CuおよびSiは、MnおよびMg
の有用な役割を阻害しない限りにおいて含有させること
ができる。
次に、本発明のアルミニウム合金部材をアルミニウム
合金から成形固化する方法、即ち、急冷凝固粉末の製法
および粉末冶金法による粉末固化方法について述べる。
前述したように、本発明のアルミニウム合金部材は、
アルミニウム合金の急冷凝固粉末を粉末冶金法によって
成形固化してなるものである。
急冷凝固粉末の製法: 現在、溶解鋳造法によるアルミニウム合金であって工
業的に広く利用されているものの凝固速度は約10℃/see
以下である。
一方、本発明においてアルミニウム合金の凝固速度は
少なくとも102℃/sec以上、好ましくは103℃/sec以上を
必要とする。このためには、公知の空気アトマイズ法
が、現在のところ最も量産性および経済性にかなう急冷
凝固粉末の製法であり、本発明にも適している。この空
気アトマイズ法によるアルミニウム合金粉末において、
粗大粉末をふるい分けすれば、約103℃/sec以上の凝固
速度が得られる。
この他にも、種々の急冷凝固粉末、薄片およびリボン
の製法が知られており、この中には105℃/sec以上の凝
固速度が得られる方法もある。
しかし後述するように、アルミニウム合金粉末の固化
には熱間成形が不可決であり、このときに急冷凝固組織
の熱分解が生ずる。従って、必ずしも前述のような高い
凝固速度の利点を生かせず、かえって量産性および経済
性の問題が残ることが多い。
粉末冶金法による粉末固化方法: 急冷凝固によって得られた粉末、薄片またはリボンを
粉砕した粉末を固化するには、少なくとも一度は熱間成
形を行なう必要がある。アルミニウム合金粉末の表面は
薄い強固な酸化皮膜で覆われており、通常の焼結法によ
っては固化できない。
また信頼性の高い強度部材としては空隙の無い、相対
密度が100%の固化を行なう必要がある。さらに、酸化
皮膜を破壊して粉末間の金属結合を得るには、熱間で一
定量以上の塑性変形を与える必要がある。
これらの条件を満足するアルミニウム合金粉末の固化
成形工程として、圧縮成形によるビレットの成形,脱ガ
ス,熱間押出および熱間鍛造を記述の順序で順次行なう
のが最も一般的である。
キャリパー用およびコンロッド用のアルミニウム合金
部材への成形加工法として熱間押出を省き、予備成形体
の圧縮成形、熱間鍛造からなる短縮工程で、強度および
信頼性共に十分なものが得られれば、生産性および経済
性の両面において有利である。しかし、現状では熱間押
出工程を省いたものは、同工程を含むものと同等の特性
を得るには至っていない。
これらの固化、成形および鍛造工程における熱および
加工履歴はキャリパーおよびコンロッドの特性に影響を
与える。最も重要な点は、合金中の分散強化粒子の粗大
化による強化低下を最小限とすることである。
本発明においては、これらの熱間工程の温度を500℃
以下とすること、好ましくは460℃以下とすることによ
り所望の特性が保持される。
次に、この発明を実施例により説明する。
〔実施例1〕 第1表に示す本発明の範囲内の成分組成を有する合金
No.1〜No.3、および、本発明の範囲外の成分組成を有す
る比較合金No.1〜No.4を各々溶製した。これらの合金の
各々を再溶解し、空気アトマイズ法により急冷凝固粉末
とした。アトマイズ条件の設定、および、アトマイズ粉
末のふるい分けにより、−100メッシュ(ふるいの目開
き149μm以下)、平均粒径約45μmの粉末を得た。こ
れらの粉末の各々の粉末断面の合金組織を解析した結
果、これらの粉末の凝固速度は103〜104℃/sec程度であ
った。
これらの粉末の各々を400℃で真空脱ガスした後に熱
間プレスし、直径200mmのビレットを成形した。そして
これらのビレットの各々を420℃に加熱して熱間押出を
行ない、押出比10で直径62mmの押出丸棒に調製し、本発
明の合金部材の供試体(以下本発明の供試体と称す)N
o.1〜No.3、および、比較溶合金部材の供試体(以下比
較用供試体と称す)No.1〜No.4とした。
これらの押出丸棒の供試体の各々より引張試験片を採
取し、室温での引張性質を測定し併せて第1表に示し
た。
また、押出丸棒の供試体の各々を高さ100mmの円柱試
片にカットし、450℃に加熱保持し、油圧プレスにセッ
トし、300℃に加熱し、次いで黒鉛系潤滑剤を塗布した
上下一対の平盤金型により、これらの円柱試片の据込み
圧縮を行ない、割れの発生する限界据込み率を求めて熱
間鍛造性を評価し、その結果を第1表に併せて示した。
また、従来のアルミニウム合金製キャリパーに使用さ
れることが多いJIS AC4C鋳物(Al−7Si−0.3Mg:T6調
質)の舟形を比較用供試体5とし、この比較用供試体5
より採取した引張試験片にて室温での引張性質を測定
し、その結果を第1表に併せて示した。なお、第1表に
おいてXは測定しなかったものを示す。
第1表に示すように、Mnの含有量が本発明の範囲に満
たず過少で、Mgを含有しない比較用供試体No.1、Mnの含
有量が本発明の範囲に満たず過少な比較用供試体No.3、
および、比較用供試体No.5は、いずれもヤング率が低か
った。
Mnの含有量が本発明の範囲を超えて過多で、Mgを含有
しないと比較用供試体No.2は室温での引張伸びが小さ
く、また、限界据込み率も低かった。
Mgの含有量が本発明の範囲を超えて過多な比較用供試
体No.4は室温での引張伸びが小さかった。
従って、比較用供試体No.1〜No.5は、いずれもキャリ
パー用として不適当であるか剛性が十分でなかった。
これに対して、本発明の供試体No.1〜No.3は、いずれ
もヤング率が8,500kgf/mm2以上であり、キャリパーに適
した剛性を有し、450℃での限界据込率は80%以上であ
り、優れた熱間鍛造性を有していた。
なお、溶解鋳造法による展伸合金で鍛造用に広く用い
られるA2014合金およびA6061合金の限界据込み率は85%
以上であり、本発明の供試体No.1〜No.3はこれらの常用
の合金に比べ限界据込み率はほんのわずか低下してい
た。
そこで、本発明の範囲内の成分組成を有する合金No.3
について実際のキャリパー型での熱間鍛造を実施し、そ
の鍛造性を評価し、さらにこの鍛造材を切削加工してキ
ャリパーを製作し、その特性を調べた。
鍛造には油圧プレスの用い、金型は荒型および仕上げ
型を用いた。熱間押出された本発明の合金No.3の押出丸
棒を押出方向に対して直角方向に各型で一度づつ打ち、
キャリパー形状に鍛造した。材料温度は450℃、型温度
は300℃とした。
この結果、割れを発生することなく鍛冶でき、鍛造性
の良好な従来合金のA6061に近い鍛造性を有すると評価
された。
さらに、この鍛造材を切削加工してキャリパーを製作
した。同じく、比較用供試体No.5を切削加工して同一形
状のキャリパーを製作した。
これらのキャリパーにパッドを付け、油圧50kgf/cm2
でディスクを挾み付けたときの、キャリパーの開口たわ
み量を測定した。比較用供試体No.5から製作したキャリ
パーのたわみ量を100として本発明合金No.3から製作し
たキャリパーのたわみ量比を表し、第1表に併せて示し
た。
両者を比較した結果、たわみ量はほぼヤング率の増加
に反比例して減少することが確認できた。
また、本発明の合金No.3から製作した本発明の合金部
材からなるキャリパーを苛酷な走行,制動条件を要求さ
れるレース用自動二輪車に装着して実走による評価を行
なったところ、制動レスポンスが高いだけでなく、パッ
ドの偏摩耗が無く、メンテナンスに手間がかからない等
の高い評価が得られた。
〔実施例2〕 第2表に示す本発明の範囲内の成分組成を有する合金
No.1〜No.4、および、本発明の範囲外の成分組成を有す
る比較合金No.1〜No.3を各々溶製した。これらの合金の
各々を再溶解し、空気アトマイズ法により急冷凝固粉末
とした。アトマイズ条件の設定、および、アトマイズ粉
末のふるい分けにより、−100メッシュ(ふるいの目開
き149μm以下)、平均粒径約45μmの粉末を得た。こ
れらの粉末の各々の粉末断面の合金組織を解析した結
果、これらの粉末の凝固速度は103〜104℃/sec程度であ
った。
これらの粉末の各々を400℃で真空脱ガスした後に熱
間プレスし、直径150mmのビレットを成形した。そして
これらのビレットの各々を420℃に加熱して熱間押出を
行ない、押出比11で直径45mmの押出丸棒に調製し、本発
明の合金部材の供試体(以下本発明の供試体と称す)N
o.1〜No.4、および、比較用合金部材の供試体(以下比
較用供試体と称す)No.1〜No.3とした。
これらの押出丸棒の供試体の各々より引張試験片を採
取し、室温および200℃での引張性質を測定し併せて第
2表に示した。
また、押出丸棒の供試体の各々を高さ80mmの円柱試片
にカットし、450℃に加熱保持し、油圧プレスにセット
し、300℃に加熱し、次いで黒鉛系潤滑剤を塗布した上
下一対の平盤金型により、これらの円柱試片の据込み圧
縮を行ない、割れの発生する限界据込み率を求めて熱間
鍛造性を評価し、その結果を第2表に併せた示した。
第2表に示すように、Mgを含有しない比較用供試体N
o.1は室温および200℃で所望の強度を有しない。
Mnの含有量が本発明の範囲を超えて過多で、Mgを含有
しない比較用供試体No.2は、室温での引張伸びが小さ
く、また限界据込み率も低かった。
Mgの含有量が本発明の範囲を超えて過多な比較用供試
体No.3は、室温強度は高いが、Mg含有量が過多なため、
200℃での強度が不十分であった。
従って、本発明の合金組成範囲を外れた合金部材は、
コンロッド用として不適当である。
これに対して、本発明の供試体No.1〜No.4は、いずれ
も室温引張強さが50kgf/mm2以上、200℃での引張強さが
35kgf/mm2以上であり、コンロッドに適する強度を有し
ていた。さらに、本発明の供試体No.1〜No.4の限界据込
み率は80%以上であり、優れた熱間鍛造性を有してい
た。
なお、溶解鋳造法による展伸合金で鍛造用に広く用い
られるA2014合金およびA6061合金の限界据込み率は85%
以上であり、本発明の供試体No.1〜No.4はこれらの常用
の合金に比べ限界据込み率はほんのわずか低下してい
た。
そこで、本発明の範囲内の成分組成を有する合金No.1
〜No.4、および、本発明の範囲外の成分組成を有する比
較合金No.1〜No.3の各々について実際のコンロッド型で
の熱間鍛造を実施して鍛造材を鍛造し、その鍛造性を評
価した。
鍛造には油圧プレスを用い、金型は仕上げ型のみと
し、熱間押出された各合金の押出丸棒、および、A6061
合金の押出丸棒を押出方向に対して直角方向に平打ちし
てコンロッド形状に鍛造した。材料温度は450℃、型温
度は300℃とした。
この結果A6061は一度打ちで完全な形状が得られた。
本発明の範囲内の化学成分組成を有する合金No.1〜N
o.4、および、比較合金No.1,No.3からなるコンロッドの
各々は、いずれも割れを発生することなく、一度打ちで
鍛造できたが、仕上り厚さがA6061に比べて約0.5〜1.5m
m厚めであった。
比較合金No.2からなるコンロッドは、一度打ちで割れ
が発生し、同様の二度打ちでも割れを防止できなかっ
た。
〔発明の効果〕 以上詳述したように、この発明のアルミニウム合金部
材は、高い剛性を有し、強度と延性の釣り合いも良く、
また、キャリパーに成形する際の熱間鍛造における鍛造
性が良好であることから、高性能ブレーキディスク・キ
ャリパーに適しており、自動二輪車,自動車等の制動部
品として用いることにより、運動性および安全性の著し
い向上をもたらすことができる。
さらに、Mnの含有量を所定量に限定したこの発明のア
ルミニウム合金部材は、コンロッドの使用温度範囲内で
従来の溶解鋳造法による合金と比して著しく高い強度を
有し、また、コンロッドに成形するための熱間鍛造にお
ける鍛造性が良好であることから、従来の鉄鋼性コンロ
ッドに替わる軽量アルミニウム合金製コンロッド用とし
て適しているため、この発明の合金部材からなるコンロ
ッドは高速運転性能に優れ、これにより効率の高い内燃
機関の製造が可能である。
従って、この発明によれば幾多の産業上有用な効果が
得られる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Mn:5.0〜12.0wt.%、 Mg:0.1〜4.0wt.%、 残部:アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアル
    ミニウム合金の急冷凝固粉末を、粉末冶金法により成形
    固化したことを特徴とする、高強度、且つ、鍛造性に優
    れたアルミニウム合金部材。
  2. 【請求項2】Mn:9.0〜12.0wt.%、 Mg:0.1〜4.0wt.%、 残部:アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアル
    ミニウム合金の急冷凝固粉末を、粉末冶金法により成形
    固化したことを特徴とする、高強度、且つ、鍛造性に優
    れたアルミニウム合金部材。
  3. 【請求項3】Mn:9.0〜12.0wt.%、 Mg:0.1〜1.2wt.%、 残部:アルミニウムおよび不可避的不純物からなるアル
    ミニウム合金の急冷凝固粉末を、粉末冶金法により成形
    固化したことを特徴とする、高強度、且つ、鍛造性に優
    れたアルミニウム合金部材。
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