JPH108084A - 冷凍機作動流体用組成物 - Google Patents

冷凍機作動流体用組成物

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JPH108084A
JPH108084A JP8185586A JP18558696A JPH108084A JP H108084 A JPH108084 A JP H108084A JP 8185586 A JP8185586 A JP 8185586A JP 18558696 A JP18558696 A JP 18558696A JP H108084 A JPH108084 A JP H108084A
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JP
Japan
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refrigerator
composition
base oil
ester base
working fluid
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JP8185586A
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English (en)
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Hiroyasu Togashi
博靖 冨樫
Toshiya Hagiwara
敏也 萩原
Akimitsu Sakai
章充 酒井
Yuichiro Kobayashi
勇一郎 小林
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Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】(a)エステル基油に、芳香環化合物及び
/又は複素環化合物を配合してなる冷凍機油と、(b)
ジフルオロメタン(HFC32)を含むハイドロフルオ
ロカーボン、を含有してなることを特徴とする、エステ
ル基油の熱分解が抑制された冷凍機作動流体用組成物、
並びに該冷凍機作動流体用組成物を用いることを特徴と
する、エステル基油の熱分解を抑制しながら冷凍機を運
転する方法。 【効果】本発明により、エステル基油の熱分解が抑制さ
れた冷凍機作動流体用組成物を提供することが可能とな
った。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は冷凍機作動流体用組
成物に関し、詳しくはエステル基油に芳香環化合物及び
/又は複素環化合物、場合により更にリン化合物を配合
してなる冷凍機油と、ジフルオロメタン(HFC32)
を含むハイドロフルオロカーボンを含有してなる、エス
テル基油の熱分解が抑制された冷凍機作動流体用組成物
に関する。さらに本発明は、かかる冷凍機作動流体用組
成物を用いる冷凍機の運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、オゾン層保護のため冷蔵庫やカー
クーラーに使用されていたジクロロジフルオロメタン
(CFC12)は1995年で使用が禁止された。続い
てルームエアーコンディショナー、パッケージエアーコ
ンディショナーや産業用冷凍機等に使用されているクロ
ロジフルオロメタン(HCFC22)の使用規制が始ま
った。そのため、このクロロジフルオロメタン(CFC
12)やクロロジフルオロメタン(HCFC22)の代
替品として、オゾン層を破壊することのないハイドロフ
ルオロカーボン、例えば1,1,1,2−テトラフルオ
ロエタン(HFC134a)やジフルオロメタン(HF
C32)やペンタフルオロエタン(HFC125)が開
発されている。
【0003】これらのハイドロフルオロカーボンは、ジ
クロロジフルオロメタン(CFC12)やクロロジフル
オロメタン(HCFC22)に比べて極性が高いため、
冷凍機油として従来より一般に使用されているナフテン
系鉱物油やポリα−オレフィン、アルキルベンゼン等の
潤滑油を用いると、これらの潤滑油とハイドロフルオロ
カーボンとの相溶性が悪く、低温において二相分離を起
こす。二相分離を起こすと、油戻りが悪くなり、熱交換
器としての凝縮器や蒸発器の付近に厚い油膜が付着して
伝熱を妨げ、また、潤滑不良や起動時の発泡等の重要欠
陥の原因となる。そのため、従来の冷凍機油はこれらの
新しいハイドロフルオロカーボン存在下での冷凍機油と
して使用することができない。
【0004】従って、現在のところ冷凍機油には上記ハ
イドロフルオロカーボンと相溶するポリアルキレングリ
コールやエステル、炭酸エステル等の基油が使用されて
いる。実際に冷蔵庫には冷凍機油としてエステル基油、
ハイドロフルオロカーボンとして1,1,1,2−テト
ラフルオロエタン(HFC134a)が使用されてい
る。またルームエアーコンディショナー、パッケージエ
アーコンディショナーや産業用冷凍機等にも冷凍機油と
してエステル基油が評価されている。
【0005】しかしながら、ルームエアーコンディショ
ナー、パッケージエアーコンディショナーや産業用冷凍
機等の従来クロロジフルオロメタン(HCFC22)が
用いられていた分野においては、冷凍効率の観点から、
ハイドロフルオロカーボンとしてジフルオロメタン(H
FC32)を含むハイドロフルオロカーボンが評価され
ている。このジフルオロメタン(HFC32)を使用す
ることで圧縮機内の圧力が高くなり、摺動条件が厳しく
なるため摩擦熱が発生し、1,1,1,2−テトラフル
オロエタン(HFC134a)を使用した冷蔵庫では起
こらなかったエステル基油の熱分解が発生している。こ
のエステル基油の熱分解によって発生した脂肪酸が、圧
縮機の金属を腐食して故障する問題やキャピラリーチュ
ーブを閉塞させる問題が起こっている。また冷蔵庫で使
用されているレシプロ型圧縮機に対して、ルームエアー
コンディショナー、パッケージエアーコンディショナー
や産業用冷凍機等では主にロータリー型圧縮機やスクロ
ール型圧縮機が使用されている。これらのロータリー型
圧縮機やスクロール型圧縮機はレシプロ型圧縮機に比べ
て潤滑条件が厳しいため、特にエステル基油の熱分解の
問題が起こっている。
【0006】エステルの熱安定性に関し、トリクレジル
フォスフェートの添加が有効であるとの文献(ASLE Tra
ns., 12, 280-286, 1969) がある。しかしながら、熱安
定性試験は冷凍機油を想定したハイドロフルオロカーボ
ン、特にジフルオロメタン(HFC32)存在下での測
定条件ではなく、冷凍機油に関しては言及していない。
さらに本発明とはその配合において何ら関係するもので
はない。また、エステルにトリクレジルフォスフェート
とベンゾトリアゾールを添加した文献(日本トライボロ
ジー学会、トライボロジー会議予行集、1995)があ
るが、耐摩耗性に関する記述のみであり、ジフルオロメ
タン(HFC32)を含むハイドロフルオロカーボン存
在下でのエステルの熱分解に関しては一切言及していな
い。
【0007】一方、特開平7−126680号公報には
潤滑油基油にリン化合物、複素環化合物を配合してなる
潤滑油組成物が開示されているが、空気存在下における
熱安定性の向上を目的としており、ジフルオロメタン
(HFC32)存在下における新たな課題に対しては一
切言及していない。且つ実施例の熱安定性試験は鉱物油
のみであり、エステル基油の記載はなく、熱安定性の判
断基準として析出物量を測定しているだけで熱安定性の
基準が曖昧であり、本発明の目的であるエステル基油の
熱分解を判断する酸価上昇については検討していない。
【0008】また特開平5−78689号公報、特開平
6−293893号公報には合成油にリン化合物、複素
環化合物、エポキシ化合物等を配合してなる冷凍機油と
ハイドロフルオロカーボンからなる冷凍機作動流体用組
成物が開示されている。しかしながら、特開平5−78
689号公報の冷凍機作動流体用組成物の実施例には、
熱安定性試験の記載がなく、特開平6−293893号
公報の冷凍機作動流体用組成物には、熱安定性試験にお
いてハイドロフルオロカーボンとして1,1,1,2−
テトラフルオロエタン(HFC134a)を使用してい
るだけで、ジフルオロメタン(HFC32)存在下にお
ける新たな課題に対しては一切言及していない。また熱
安定性の判断基準として外観及び析出物の有無を観察し
ているだけで熱安定性の基準が曖昧であり、本発明の目
的であるエステル基油の熱分解を判断する酸価上昇につ
いては検討していない。
【0009】また特開平6−100881号公報には合
成系潤滑油に複素環化合物を配合してなる冷凍機油とハ
イドロフルオロカーボンからなる冷凍機作動流体用組成
物が開示されているが、実施例には熱安定性試験の記載
がなく、耐摩耗性の改善を目的としているため、上記し
た本願の課題については一切言及していない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、エステルを基油とする冷凍機油と、ジフルオロメタ
ン(HFC32)を含むハイドロフルオロカーボンを含
有してなる冷凍機作動流体用組成物で問題となってい
る、エステル基油の熱分解が抑制された冷凍機作動流体
用組成物を提供することにある。さらに本発明の目的
は、エステル基油の熱分解が抑制された、冷凍機の運転
方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために鋭意研究を重ねた結果、エステル基油
を含む冷凍機油とジフルオロメタン(HFC32)を含
むハイドロフルオロカーボンからなる冷凍機作動流体用
組成物において、エステル基油に芳香環化合物及び/又
は複素環化合物、場合により更にリン化合物を添加する
という特定の組み合わせによって、エステル基油の熱分
解が抑制された冷凍機作動流体用組成物が得られること
を見出し、本発明を完成させた。
【0012】即ち、本発明の要旨は、 〔1〕 (a)エステル基油に、芳香環化合物及び/又
は複素環化合物を配合してなる冷凍機油と、(b)ジフ
ルオロメタン(HFC32)を含むハイドロフルオロカ
ーボン、を含有してなることを特徴とする、エステル基
油の熱分解が抑制された冷凍機作動流体用組成物、 〔2〕 エステル基油にさらにリン化合物を配合してな
る前記〔1〕記載の冷凍機作動流体用組成物、 〔3〕 エステル基油が、2〜6価のアルコール(成分
−1)と、炭素数2〜10の直鎖及び/又は分岐鎖脂肪
酸、又はその誘導体(成分−2)とから得られるエステ
ルである前記〔1〕又は〔2〕記載の冷凍機作動流体用
組成物、 〔4〕 芳香環化合物が極性基を有する炭素数6〜36
の芳香環化合物であり、複素環化合物が炭素数2〜50
の複素環化合物である前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載
の冷凍機作動流体用組成物、 〔5〕 リン化合物が炭素数6〜55のリン化合物であ
る前記〔2〕〜〔4〕いずれか記載の冷凍機作動流体用
組成物、 〔6〕 予め水分濃度を10ppm以下、酸価を0.0
1mgKOH/g以下に調整した冷凍機油を10g、
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134
a)が2.6gとジフルオロメタン(HFC32)が
1.15gと、ペンタフルオロエタン(HFC125)
が1.25gからなるハイドロフルオロカーボン、又は
ジフルオロメタン(HFC32)が2.5gとペンタフ
ルオロエタン(HFC125)が2.5gからなるハイ
ドロフルオロカーボンを5g、触媒として直径1.6m
mφ・長さ150mmの銅、鉄およびアルミニウムをガ
ラス管に加えて封管し、250℃で3日間放置した後に
測定される酸価が3.0mgKOH/g以下である冷凍
機油を使用する、前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載の冷
凍機作動流体用組成物、 〔7〕 ロータリー型圧縮機又はスクロール型圧縮機に
使用される、前記〔1〕〜〔6〕いずれか記載の冷凍機
作動流体用組成物、 〔8〕 前記〔1〕〜〔7〕いずれか記載の冷凍機作動
流体用組成物を用いることを特徴とする、エステル基油
の熱分解を抑制しながら冷凍機を運転する方法、に関す
るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について詳細に説
明する。 1.エステル基油について 本発明に用いられるエステル基油としては、2〜6価の
アルコール(成分−1)と、炭素数2〜10の直鎖及び
/又は分岐鎖脂肪酸、又はその誘導体(成分−2)とか
ら得られるエステルが好ましく用いられる。
【0014】 成分−1について 成分−1のアルコールの価数は2〜6価であり、好まし
くは2〜4価である。適切な粘度を有する観点から価数
は2以上が好ましく、必要以上の粘度を避ける観点及び
ハイドロフルオロカーボンとの相溶性の観点から6以下
が好ましい。また、その炭素数は2〜10であり、好ま
しくは5〜10であり、更に好ましくは5〜6である。
適切な粘度を有する観点から炭素数は2以上が好まし
く、必要以上の粘度を避ける観点及びハイドロフルオロ
カーボンとの相溶性の観点から10以下が好ましい。ま
た耐熱性の面から不飽和の結合を含まない方が好まし
い。
【0015】成分−1のアルコールの具体的としては、
ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリ
メチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメ
チロールプロパン及びジペンタエリスリトール等のヒン
ダードアルコール、並びに、エチレングリコール、ジエ
チレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレ
ングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブ
タンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリ
ン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、及
びマンニトール等のアルコールが挙げられる。これらの
中で、耐熱性の面からヒンダードアルコールが特に優れ
ている。
【0016】 成分−2について 成分−2の脂肪酸の炭素数は2〜10、好ましくは5〜
9、より好ましくは7〜9である。金属に対する腐食性
を抑える観点から炭素数は2以上が好ましく、ハイドロ
フルオロカーボンとの相溶性の観点から10以下が好ま
しい。ハイドロフルオロカーボンとの相溶性や耐加水分
解性の観点からは直鎖脂肪酸よりも分岐鎖脂肪酸の方が
より好ましい。反面、潤滑性の観点からは分岐鎖脂肪酸
よりは直鎖脂肪酸の方が好ましい。分岐鎖脂肪酸と直鎖
脂肪酸の比率は、エステル基油の熱分解抑制の観点か
ら、全脂肪酸における分岐鎖脂肪酸の占める割合が50
モル%以上が好ましく、より好ましくは60モル%以
上、さらに好ましくは70モル%以上、特に好ましくは
80モル%以上である。本発明においては、冷凍機作動
流体用組成物としての利用の態様に応じて好適なものが
選択される。また、耐熱性の面からは、不飽和結合を含
まない方がより好ましい。
【0017】成分−2の脂肪酸の具体例としては、カプ
リン酸、バレリン酸、イソバレリン酸、2−メチル酪
酸、カプロン酸、n−ヘプタン酸、2−エチルペンタン
酸、2−メチルヘキサン酸、カプリル酸、2−エチルヘ
キサン酸、ペラルゴン酸、3,5,5−トリメチルヘキ
サン酸等が挙げられる。また、成分−2の脂肪酸誘導体
の具体例としては、これらの脂肪酸のメチルエステル、
エチルエステル、及び酸無水物等が挙げられる。
【0018】したがって、本発明で用いられるエステル
基油の具体例としては、ネオペンチルグリコールの3,5,
5-トリメチルヘキサン酸エステル、ネオペンチルグリコ
ールの2-エチルヘキサン酸エステル、トリメチロールプ
ロパンの3,5,5-トリメチルヘキサン酸エステル、トリメ
チロールプロパンの2-メチルヘキサン酸/2-エチルペン
タン酸/2-エチルヘキサン酸/3,5,5-トリメチルヘキサ
ン酸混合脂肪酸エステル、トリメチロールプロパンの2-
エチルヘキサン酸エステル、トリメチロールプロパンの
2-メチルヘキサン酸/2-エチルペンタン酸/2-エチルヘ
キサン酸混合脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの
バレリン酸/イソバレリン酸/3,5,5-トリメチルヘキサ
ン酸混合脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの2-エ
チルヘキサン酸/3,5,5-トリメチルヘキサン酸混合脂肪
酸エステル、ペンタエリスリトールの2-メチルヘキサン
酸/2-エチルペンタン酸/2-エチルヘキサン酸混合脂肪
酸エステル、ペンタエリスリトールのカプリル酸/3,5,
5-トリメチルヘキサン酸混合脂肪酸エステル、ペンタエ
リスリトールの2-メチルヘキサン酸/2-エチルペンタン
酸/2-エチルヘキサン酸/3,5,5-トリメチルヘキサン酸
混合脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの2-メチル
ヘキサン酸/3,5,5-トリメチルヘキサン酸混合脂肪酸エ
ステル、ペンタエリスリトールのn−ヘプタン酸/3,5,
5-トリメチルヘキサン酸混合脂肪酸エステル等が挙げら
れる。
【0019】本発明に用いられるエステル基油は、成分
−1のアルコールの1種以上と、成分−2の脂肪酸また
はその誘導体の1種以上とから、通常行われる公知のエ
ステル化反応やエステル交換反応により得ることができ
る。
【0020】本発明において用いられる、上記のように
して得られるエステル基油の酸価は特に限定されない
が、金属材料の腐食、耐摩耗性の低下、熱安定性の低
下、及び電気絶縁性の低下を抑制する観点から1mgK
OH/g以下が好ましく、0.2mgKOH/g以下が
より好ましく、0.1mgKOH/g以下が更に好まし
く、0.05mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0021】本発明に用いられるエステル基油の水酸基
価は特に限定されないが、0.1〜50mgKOH/g
が好ましく、0.1〜30mgKOH/gがより好まし
く、0.1〜20mgKOH/gが更に好ましく、0.
1〜15mgKOH/gが特に好ましい。耐摩耗性の観
点から0.1mgKOH/g以上が好ましく、エステル
基油の吸湿性及び熱分解抑制の観点から、50mgKO
H/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下がより
好ましく、20mgKOH/g以下がさらに好ましく、
15mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0022】本発明に用いられるエステル基油のヨウ素
価(Img/100g)は特に限定されないが、得られ
るエステル基油の熱酸化安定性の観点から10以下が好
ましく、5以下がより好ましく、3以下が更に好まし
く、1以下が特に好ましい。本発明に用いられるエステ
ル基油のハイドロフルオロカーボンとの低温での二相分
離温度は特に限定されないが、10℃以下が好ましく、
0℃以下がより好ましく、−10℃以下が更に好まし
く、−30℃以下が特に好ましい。本発明に用いられる
エステル基油の40℃における動粘度は特に限定されな
いが、ハイドロフルオロカーボンとの相溶性の観点から
100mm2 /s以下が好ましく、通常15〜100m
2 /sが好ましく、30〜75mm2 /sがより好ま
しい。
【0023】2.芳香環化合物について 本発明に用いられる芳香環化合物としては、好ましくは
極性基を有する炭素数6〜36、より好ましくは炭素数
6〜24、さらに好ましくは炭素数6〜18、特に好ま
しくは炭素数6〜12の芳香環化合物である。ここで極
性基とは、金属表面への吸着性が向上する窒素、酸素、
硫黄等のヘテロ元素を含む置換基である。
【0024】芳香環化合物の具体例としては、フェノー
ル、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、1,
2,4−トリヒドロキシベンゼン、クレゾール、アニソ
ール、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−
ジエチルアニリン、フェニルエチルアミン、ジフェニル
アミン、フェニルナフチルアミン、トリフェニルアミ
ン、安息香酸、サリチル酸、サリチル酸メチル、ベンジ
ルジスルフィド等が挙げられる。その中でも1つの芳香
環に極性基が2つ以上置換した芳香環化合物が好まし
く、特に金属表面への吸着性向上の観点から、水酸基が
2つ以上置換した芳香環化合物が好ましい。さらに水酸
基の置換した隣接位置には金属表面への吸着性を阻害す
る置換基がないことが好ましい。吸着性を阻害する置換
基とは具体的にt−ブチル基やベンゾイル基のような嵩
高い置換基であり、これらの置換基よりもエチル基、メ
チル基が好ましく、さらに置換基のないことが好まし
い。具体的には2,6−ジ−t−ブチルフェノールより
もフェノール、フェノールよりもカテコール、ピロガロ
ールが好ましい。なお本発明においては、2種類以上の
芳香環化合物を用いてもよい。
【0025】3.複素環化合物について 本発明に用いられる複素環化合物としては、好ましくは
炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40、さら
に好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6
〜25の複素環化合物である。具体的にはベンゾトリア
ゾール、フラン、ピロール、ピラゾール、イミダゾー
ル、オキサゾール、チオフェン、チアゾール、トリアゾ
ール、ベンゾフラン、インドール、チオナフテン、ベン
ズイミダゾール、ベンゾチアゾール、及びこれらの誘導
体等が挙げられるが、エステル基油の熱分解抑制、エス
テル基油への溶解性及び金属表面への吸着性の観点か
ら、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾールまたはベン
ゾトリアゾール誘導体が好ましい。
【0026】ベンゾトリアゾール誘導体としては、具体
的に1−〔N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノ
メチル〕ベンゾトリアゾール、1−〔N,N−ビス(2
−ヒドロキシエチル)アミノメチル〕ベンゾトリアゾー
ル、1−(2’,3’−ジヒドロキシプロピル)ベンゾ
トリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1
−ヒドロキシメチルベンゾトリアゾール、1−(1’,
2’−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−
ジオクチルアミノメチル−4−メチルベンゾトリアゾー
ル、1−ジオクチルアミノメチル−5−メチルベンゾト
リアゾール等が挙げられ、特に好ましくは、1−〔N,
N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル〕ベンゾ
トリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1
−ジオクチルアミノメチル−4−メチルベンゾトリアゾ
ール、及び1−ジオクチルアミノメチル−5−メチルベ
ンゾトリアゾールである。なお本発明においては、2種
類以上の複素環化合物を用いてもよい。また芳香環化合
物と複素環化合物を併用してもよい。
【0027】4.リン化合物について 本発明に用いられるリン化合物としては、好ましくは炭
素数6〜55、より好ましくは炭素数6〜36、さらに
好ましくは炭素数6〜24、特に好ましくは炭素数12
〜24のリン化合物が挙げられる。エステル基油の熱分
解抑制の観点から、トリアルキルフォスファイト、トリ
アルキルフォスフェート、トリアリールフォスファイ
ト、トリアリールフォスフェート、ジアルキルフォスフ
ォン酸エステル、ジアリールフォスフォン酸エステル等
が好ましい。
【0028】具体的にはトリエチルフォスファイト、ト
リブチルフォスファイト、トリオクチルフォスファイ
ト、トリス(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ト
リデシルフォスファイト、トリドデシルフォスファイ
ト、トリエチルフォスフェート、トリブチルフォスフェ
ート、トリオクチルフォスフェート、トリス(2−エチ
ルヘキシル)フォスフェート、トリデシルフォスフェー
ト、トリドデシルフォスフェート、ジエチルフォスフォ
ン酸エステル、ジブチルフォスフォン酸エステル、ジオ
クチルフォスフォン酸エステル、ジドデシルフォスフォ
ン酸エステル、トリフェニルフォスファイト、トリクレ
ジルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォス
ファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)
フォスファイト、トリフェニルフォスフェート、トリク
レジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェ
ート、ジフェニルフォスフォン酸エステル等が挙げられ
る。
【0029】上記化合物のうち、金属表面への吸着性の
観点から、トリアリールフォスファイトまたはトリアリ
ールフォスフェートが好ましく、特にエステル基油への
溶解性の観点から、トリクレジルフォスフェートまたは
トリフェニルフォスフェートが好ましい。なお本発明に
おいては、2種類以上のリン化合物を用いてもよい。ま
たリン化合物は芳香環化合物、及び/又は複素環化合物
と併用しても、しなくてもよいが、併用することによっ
てエステル基油の熱分解を抑制する効果が高まる。
【0030】5.冷凍機油について 本発明における冷凍機油は、エステル基油に、芳香環化
合物及び/又は複素環化合物を配合してなるものであ
る。本発明において、芳香環化合物及び/又は複素環化
合物の、冷凍機油中の含有量は、エステル基油の熱分解
抑制およびエステル基油への溶解性の観点から、0.0
001〜10重量%が好ましく、0.0005〜5重量
%がさらに好ましく、0.001〜1重量%が特に好ま
しい。また、芳香環化合物および複素環化合物の両者を
配合する場合、芳香環化合物/複素環化合物の配合比率
は、エステル基油の熱分解抑制およびエステル基油への
溶解性の観点から、1/10〜10/1重量比が好まし
く、1/5〜5/1重量比がさらに好ましく、1/2〜
2/1重量比が特に好ましい。
【0031】本発明の冷凍機油には、エステル基油の熱
分解を抑制する観点からさらにリン化合物を配合しても
良い。芳香環化合物及び/又は複素環化合物とリン化合
物を併用する場合、エステル基油へ配合する芳香環化合
物及び/又は複素環化合物/リン化合物の配合比率は、
エステル基油の熱分解抑制およびエステル基油への溶解
性の観点から、1/1000〜10/1重量比が好まし
く、1/100〜5/1重量比がさらに好ましく、1/
100〜1/1重量比が特に好ましい。本発明に用いら
れるエステル基油へ配合するリン化合物の、冷凍機油中
の含有量は、エステル基油の熱分解抑制およびエステル
基油への溶解性の観点から、0.01〜10重量%が好
ましく、0.05〜5重量%がより好ましく、0.1〜
5重量%がさらに好ましく、0.2〜2重量%が特に好
ましい。
【0032】6.ハイドロフルオロカーボンについて 本発明に用いられるハイドロフルオロカーボンは少なく
ともジフルオロメタン(HFC32)を含むものであ
る。他のハイドロフルオロカーボンとしては具体的に、
1, 1- ジフルオロエタン(HFC152a)、1,
1, 1- トリフルオロエタン(HFC143a)、1,
1, 1, 2- テトラフルオロエタン(HFC134
a)、1, 1, 2, 2- テトラフルオロエタン(HFC
134)、ペンタフルオロエタン(HFC125)等が
挙げられる。好ましい混合ハイドロフルオロカーボンの
組み合わせとしては、1,1,1,2−テトラフルオ
ロエタン(HFC134a)、ジフルオロメタン(HF
C32)及びテトラフルオロエタン(HFC125)、
ジフルオロメタン(HFC32)及びペンタフルオロ
エタン(HFC125)等の組み合わせが挙げられる。
【0033】上記のの組み合わせの場合、1,1,
1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、ジ
フルオロメタン(HFC32)及びペンタフルオロエタ
ン(HFC125)の混合比率は、冷凍効率および安全
性の観点から、1,1,1,2−テトラフルオロエタン
(HFC134a)は10〜80重量%が好ましく、2
0〜70重量%がさらに好ましい。ジフルオロメタン
(HFC32)は5〜40重量%が好ましく、10〜3
0重量%がさらに好ましい。ペンタフルオロエタン(H
FC125)は5〜80重量%が好ましく、10〜70
重量%がさらに好ましい。最も好ましい配合比率の一つ
として、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HF
C134a)52重量%/ジフルオロメタン(HFC3
2)23重量%/ペンタフルオロエタン(HFC12
5)25重量%が挙げられる。
【0034】また、上記のの組み合わせの場合、ジフ
ルオロメタン(HFC32)及びペンタフルオロエタン
(HFC125)の混合比率は、冷凍効率および安全性
の観点から、ジフルオロメタン(HFC32)は20〜
70重量%が好ましく、40〜60重量%がさらに好ま
しい。ペンタフルオロエタン(HFC125)は30〜
80重量%が好ましく、40〜60重量%がさらに好ま
しい。最も好ましい配合比率の一つとして、ジフルオロ
メタン(HFC32)50重量%/ペンタフルオロエタ
ン(HFC125)50重量%が挙げられる。
【0035】7.冷凍機作動流体用組成物について 本発明の、エステル基油の熱分解が抑制された冷凍機作
動流体用組成物は、(a)上記のようなエステル基油
に、芳香環化合物及び/又は複素環化合物、場合により
さらにリン化合物を配合してなる冷凍機油と、(b)ジ
フルオロメタン(HFC32)を含むハイドロフルオロ
カーボンを含有してなるものである。本発明の、エステ
ル基油の熱分解が抑制された冷凍機作動流体用組成物
は、摺動条件が厳しく、摩擦熱が発生し易いロータリー
型圧縮機やスクロール型圧縮機に最適である。即ち、本
発明の冷凍機作動流体用組成物をロータリー型圧縮機又
はスクロール型圧縮機に用いた場合、エステル基油の熱
分解が抑制されているため好ましく用いることができ
る。用途的にはルームエアーコンディショナー、パッケ
ージエアーコンディショナーや産業用冷凍機の圧縮機に
用いるのに適している。したがって、本発明の冷凍機作
動流体用組成物を冷凍機の圧縮機に用いることにより、
エステル基油の熱分解を抑制しながら冷凍機を運転する
方法を提供することができる。
【0036】本発明の、エステル基油の熱分解が抑制さ
れた冷凍機作動流体用組成物において、エステル基油、
芳香環化合物、複素環化合物、リン化合物を含有する冷
凍機油と、ジフルオロメタン(HFC32)を含むハイ
ドロフルオロカーボンの混合比率は、ジフルオロメタン
(HFC32)を含むハイドロフルオロカーボン/冷凍
機油=20/1〜1/10重量比、好ましくは10/1
〜1/5重量比である。充分な冷凍能力を得る観点か
ら、上記混合比はジフルオロメタン(HFC32)を含
むハイドロフルオロカーボンの比率が1/10以上であ
ることが好ましく、冷凍機作動流体用組成物の粘度を好
適にする観点から、ハイドロフルオロカーボンの比率が
20/1以下であることが好ましい。
【0037】本発明の冷凍機作動流体用組成物は熱分解
が抑制されたものである。ここで「熱分解が抑制された
冷凍機作動流体用組成物」とは、冷凍機作動流体用組成
物を、試験温度が250℃で試験期間が3日間の熱安定
性試験に付した場合、エステル基油の熱分解による酸価
上昇が好ましくは3.0mgKOH/g以下である冷凍
機作動流体用組成物をいう。酸価の上昇は、圧縮機の腐
食防止の観点から2.0mgKOH/g以下がより好ま
しく、1.0mgKOH/g以下がさらに好ましく、
0.8mgKOH/g以下が特に好ましい。ここで、酸
価の測定はJIS K-2501の方法を用いた。また、熱安定性
試験としてはシールドチューブ試験が用いられる。シー
ルドチューブ試験の具体的な実施方法は次の通りであ
る。
【0038】予め水分濃度を10ppm以下、酸価を
0.01mgKOH/g以下に調整した冷凍機油を10
g、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC1
34a)が2.6gとジフルオロメタン(HFC32)
が1.15gと、ペンタフルオロエタン(HFC12
5)が1.25gからなるハイドロフルオロカーボン、
又はジフルオロメタン(HFC32)が2.5gとペン
タフルオロエタン(HFC125)が2.5gからなる
ハイドロフルオロカーボンを5g、触媒として直径1.
6mmφ・長さ150mmの銅、鉄およびアルミニウム
をガラス管に加えて封管する。このガラス管をステンレ
ス製オートクレーブに入れ、250℃で3日間試験した
後、酸価上昇値を調べる。この試験条件は、冷凍機油と
ジフルオロメタン(HFC32)を含むハイドロフルオ
ロカーボンを含有してなる冷凍機作動流体用組成物を用
いて、ルームエアーコンディショナー、パッケージエア
ーコンディショナーや産業用冷凍機のロータリー型圧縮
機あるいはスクリュー型圧縮機を、上部温度が130℃
で連続500時間運転した条件と相関するものである。
【0039】本発明の、エステル基油の熱分解が抑制さ
れた冷凍機作動流体用組成物には、次のような添加剤を
適宜添加してもよい。 (i)本発明の、エステル基油の熱分解が抑制された冷
凍機作動流体用組成物には水を除去する添加剤を加えて
もよい。水が共存すると基油であるエステルを加水分解
させ、脂肪酸が生じてキャピラリーチューブ等を詰まら
せる可能性があり、また、非凝縮性のCO2 が生じて冷
凍能力を低下させる可能性がある。また、絶縁材である
PETフィルム等は加水分解し、PETオリゴマーを生
じ、キャピラリーチューブ等を詰まらせる可能性がある
からである。水を除去する添加剤としてはエポキシ基を
有する化合物や、オルトエステル、アセタール(ケター
ル)、カルボジイミド等の添加剤が挙げられる。
【0040】 エポキシ基を有する化合物としては、
炭素数4〜60、好ましくは炭素数5〜25のものであ
る。具体的にはブチルグリシジルエーテル、2ーエチル
ヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール
ジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類や、ア
ジピン酸グリシジルエステル、2−エチルヘキサン酸グ
リシジルエステル等のグリシジルエステル類や、エポキ
シ化ステアリン酸メチル等のエポキシ化脂肪酸モノエス
テル類や、エポキシ化大豆油等のエポキシ化植物油や、
1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシ
クロペンタン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル
メチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシル
メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレ
ート等の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【0041】本発明においては、これらのエポキシ基を
有する化合物の単独または2種以上を併用してもよい。
その添加量はエステル基油100重量部に対して、通常
0.05〜2.0重量部、好ましくは0. 1〜1.5重
量部、更に好ましくは0. 1〜1.0重量部である。
【0042】 本発明に用いられるオルトエステルと
しては、特開平6−17073、カラム10、27行か
ら41行に記載されているような化合物が挙げられる。
オルトエステルの添加量は、エステル基油100重量部
に対して、通常0.01〜100重量部、好ましくは
0. 05〜30重量部である。
【0043】 本発明に用いられるアセタールまたは
ケタールとしては、特開平6−17073、カラム1
1、21行目に記載されているような化合物が挙げられ
る。アセタールまたはケタールの添加量は、エステル基
油100重量部に対して、通常0. 01〜100重量
部、好ましくは0. 05〜30重量部である。
【0044】 本発明に用いられるカルボジイミド
は、下記の一般式で表されるものが挙げられる。 R1 −N=C=N−R2 (式中、R1 及びR2 は炭素数1〜18の炭化水素基を
表す。R1 及びR2 は同一でも異なっていても良い。) R1 及びR2 の炭素数は1〜12がより好ましい。ま
た、R1 及びR2 の具体例としては、アルキル基及びア
リール基としては、炭素数15までのもの、アラルキル
基としては、ベンジル基、4−メチルベンジル基、フェ
ネチル基、4−ブチルベンジル基、ナフチルメチル基等
が挙げられる。
【0045】当該カルボジイミドの具体的な例として
は、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド、1,3−
ジ−t−ブチル−カルボジイミド、1,3−ジシクロヘ
キシルカルボジイミド、1,3−ジ−p−トリルカルボ
ジイミド、1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフ
ェニル)カルボジイミド等である。カルボジイミド添加
量は、エステル基油100重量部に対して、通常0. 0
1〜10重量部、好ましくは0. 05〜5重量部であ
る。
【0046】(ii)また、本発明の、エステル基油の熱
分解が抑制された冷凍機作動流体用組成物には、熱安定
性を向上させるためのラジカルトラップ能を有するフェ
ノール系化合物やキレート能を有する金属不活性化剤を
添加してもよい。
【0047】本発明に用いられるラジカルトラップ能を
有するフェノール系化合物としては、2,6 −ジ−t−ブ
チルフェノール、2,6 −ジ−t−ブチル−4 −メチルフ
ェノール、4,4'−メチレンビス(2,6 −ジ−t−ブチル
フェノール)、4,4'−イソプロピリデンビスフェノー
ル、2,6 −ジ−t−ブチル−4 −エチルフェノール等が
挙げられる。当該フェノール系化合物の添加量は、エス
テル基油100重量部に対して、通常0. 05〜2. 0
重量部であり、好ましくは0. 05〜0. 5重量部であ
る。
【0048】本発明に用いられる金属不活性化剤はキレ
ート能を持つものが好ましく、特開平5−20917
1、カラム13、38行目からカラム14、8行目に記
載されているような化合物が挙げられる。特に限定され
るものではないが、好ましくはN,N'−ジサリチリデン−
1,2 −ジアミノエタン、N,N'−ジサリチリデン−1,2 −
ジアミノプロパン、アセチルアセトン、アセト酢酸エス
テル、アリザリン、キニザリン等が挙げられる。本発明
に用いられる金属不活性化剤の添加量は、エステル基油
100重量部に対して、通常0. 001〜2.0重量
部、好ましくは0.003〜0.5重量部である。
【0049】本発明の冷凍機作動流体用組成物に含まれ
る芳香環化合物や複素環化合物は、ジフルオロメタン
(HFC32)を含むハイドロフルオロカーボン存在下
および高温下において、これらの化合物が金属表面に吸
着し、金属表面で起こるエステル基油の熱分解を抑制し
ていると考えられる。さらにリン化合物を配合すること
で、リン化合物も金属表面に吸着し、金属表面で起こる
エステル基油の熱分解抑制を高めていると考えられる。
【0050】
【実施例】以下、製造例、実施例及び参考例により本発
明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に
何ら限定されるものではない。
【0051】製造例 攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却器付きの脱
水管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、ペン
タエリスリトール68g(0.5mol)、2−エチル
ヘキサン酸170.0g(1.18mol)および3,
5,5−トリメチルヘキサン酸176.9g(1.12
mol)を加えて、窒素気流下、240℃で常圧反応を
3時間行った。その後、400Torrで減圧反応を7
時間行った。反応終了後、未反応の脂肪酸を減圧除去
し、本発明に用いるエステル基油Aを得た。得られたエ
ステルAを一部加水分解して、酸組成をガスクロマトグ
ラフィー分析で調べた結果、表1に示す酸組成であっ
た。また上記と同様な反応を行い、表1に示す酸組成の
本発明に用いるエステル基油B、C及びDを得た。続い
て、これらのエステル基油の、40℃および100℃
動粘度(JIS K-2283)、1,1,1,2−テトラフル
オロエタン(HFC134a)52重量%/ジフルオロ
メタン(HFC32)23重量%/ペンタフルオロエタ
ン(HFC125)25重量%とからなるハイドロフル
オロカーボンとの相溶性(二相分離温度)および25
℃における体積抵抗率(JIS C-2101に準拠)を測定し
た。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】次に、実施例等に用いる芳香環化合物、比
較化合物、複素環化合物、リン化合物、ジフルオロメタ
ン(HFC32)を含むハイドロフルオロカーボンを示
す。 芳香環化合物 1:フェノール 2:カテコール 3:ピロガロール 比較化合物 1:イソステアリルグリセリルエーテル
【0054】複素環化合物 1:ベンゾトリアゾール 2:1−〔N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノ
メチル〕ベンゾトリアゾール 3:1−〔N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミ
ノメチル〕ベンゾトリアゾール 4:ベンゾトリアゾール及び1−〔N,N−ビス(2−
エチルヘキシル)アミノメチル〕の等量(重量%)混合
物 5:ベンゾチアゾール リン化合物 1:トリフェニルフォスファイト 2:トリクレジルフォスファイト 3:トリフェニルフォスフェート 4:トリクレジルフォスフェート 5:クレジルジフェニルフォスフェート ジフルオロメタン(HFC32)を含むハイドロフルオ
ロカーボン 1:HFC134a/HFC32/HFC125 (52/23/25重量%) 2:HFC32/HFC125 (50/50 重量%)
【0055】実施例1 製造例で得られた本発明に用いるエステル基油、芳香環
化合物、複素環化合物、リン化合物、ジフルオロメタン
(HFC32)を含むハイドロフルオロカーボンを用い
て冷凍機作動流体用組成物を調製した。得られた冷凍機
作動流体用組成物におけるエステル基油の熱分解を調べ
るため、以下に示す条件でシールドチューブ試験を行っ
た。予め水分濃度を10ppm以下、酸価を0.01m
gKOH/g以下に調整した、表2〜5に示す冷凍機油
10g、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HF
C134a)が2.6gとジフルオロメタン(HFC3
2)が1.15gと、ペンタフルオロエタン(HFC1
25)が1.25gからなるハイドロフルオロカーボ
ン、又はジフルオロメタン(HFC32)が2.5gと
ペンタフルオロエタン(HFC125)が2.5gとか
らなるハイドロフルオロカーボン5g、触媒として直径
1.6mmφ・長さ150mmの銅、鉄およびアルミニ
ウムをガラス管に加えて封管した。このガラス管をステ
ンレス製オートクレーブに入れ、250℃で3日間試験
した後、酸価上昇値および析出物の有無を調べた。酸価
の測定はJIS K-2501の方法を用いた。
【0056】その結果、表2〜5に示した本発明品は、
ジフルオロメタン(HFC32)の存在下において、表
6、7に示した比較品よりも酸価上昇が極めて少なく、
エステル基油の熱分解が顕著に抑制されていた。またガ
スクロマトグラフィー分析から、本発明品(9)はエス
テルの熱分解によって発生する脂肪酸がみられなかった
が、比較品(7)はエステルの熱分解によって発生した
脂肪酸がみられた。図1、図2に分析結果を示すチャー
トを示す。比較品(7)は析出物がなくともエステル基
油の分解による酸価上昇が認められた。よって析出物と
エステル基油の熱分解には相関性がないことが明らかと
なった。またアルキルジオール化合物であるイソステア
リルグリセリルエーテルを用いた比較品(14)〜(1
6)は酸価上昇が多く、エステル基油の熱分解は抑制さ
れていなかった。よって本発明に用いる水酸基を有する
芳香環化合物が優れていることが明らかとなった。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】参考例 ハイドロフルオロカーボンとして1,1,1,2−テト
ラフルオロエタン(HFC134a)を使用する、冷蔵
庫用途の熱安定性を試験する方法により、エステル基油
の熱分解の程度を調べた。この試験方法は、1,1,
1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)存在
下、175℃で14日間維持するというものである(冷
凍機油とハイドロフルオロカーボンとの混合比は2/1
重量比)。結果を表8〜10に示す。
【0064】その結果、ハイドロフルオロカーボンがH
FC134aの場合、エステル基油および配合する化合
物の種類や量に関係なくいずれの場合でもエステル基油
の熱分解は起こらないことが分かった。一方、実施例1
に示されるように、ジフルオロメタン(HFC32)を
含むハイドロフルオロカーボンを使用するルームエアー
コンディショナー、パッケージエアーコンディショナー
や産業用冷凍機用途の熱安定性を試験する方法(ジフル
オロメタン(HFC32)を含むハイドロフルオロカー
ボン存在下、250℃で3日間)では、本発明品におい
てのみエステル基油の熱分解が抑制されており、比較品
よりも優れていた。
【0065】
【表8】
【0066】
【表9】
【0067】
【表10】
【0068】実施例2 製造例で得られた本発明に用いるエステル基油、複素環
化合物、リン化合物、ジフルオロメタン(HFC32)
を含むハイドロフルオロカーボンを用いて冷凍機作動流
体用組成物を調製した。得られた冷凍機作動流体用組成
物におけるエステル基油の熱分解を調べるため、以下に
示す条件でロータリー型圧縮機試験を行った。
【0069】予め水分濃度を20ppm以下、酸価を
0.01mgKOH/g以下に調整した、表11に示す
冷凍機油450gと、ジフルオロメタン(HFC32)
50重量%/ペンタフルオロエタン(HFC125)5
0重量%からなるハイドロフルオロカーボン170g
を、キャピラリーを備えた1kwロータリー型圧縮機へ
封入した。ロータリー型圧縮機の上部温度を130℃
で、連続500時間運転した後、酸価上昇値を調べた。
酸価の測定は、JIS K-2501の方法を用いた。その結果、
表11に示した本発明品は、ジフルオロメタン(HFC
32)の存在下において、比較品よりも酸価上昇が少な
く、エステル基油の熱分解が抑制されていることが分か
った。
【0070】また実施例1で示したジフルオロメタン
(HFC32)を含むハイドロフルオロカーボンを使用
する、ルームエアーコンディショナー、パッケージエア
ーコンディショナーや産業用冷凍機用途の熱安定性の試
験結果、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン
(HFC134a)を使用する冷蔵庫用途の熱安定性の
試験結果(参考例)から、ハイドロフルオロカーボンが
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134
a)の場合、エステル基油の熱分解は起こらないことが
分かった。一方、実施例2に示されるように、熱安定性
試験条件は異なるものの、ジフルオロメタン(HFC3
2)を含むハイドロフルオロカーボンを使用して試験を
行った場合、本発明品においてのみエステル基油の熱分
解が抑制されている。したがって、ロータリー型圧縮機
あるいはスクリュー型圧縮機を、上部温度が130℃で
連続500時間運転するという実施例2の熱安定性の試
験条件は、ジフルオロメタン(HFC32)を含むハイ
ドロフルオロカーボンを使用する、ルームエアーコンデ
ィショナー、パッケージエアーコンディショナーや産業
用冷凍機用途の熱安定性の試験条件(実施例1)と相関
を有するものである。
【0071】
【表11】
【0072】
【発明の効果】本発明により、エステル基油の熱分解が
抑制された冷凍機作動流体用組成物を提供することが可
能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、シールドチューブ試験終了後の本発明
品(9)をガスクロマトグラフィーにより分析して得ら
れた結果を示す図である。
【図2】図2は、シールドチューブ試験終了後の比較品
(7)をガスクロマトグラフィーにより分析して得られ
た結果を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 129:14 133:44 135:36 137:04 137:02) C10N 30:08 40:30 (72)発明者 小林 勇一郎 和歌山市湊1334番地 花王株式会社研究所 内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)エステル基油に、芳香環化合物及
    び/又は複素環化合物を配合してなる冷凍機油と、
    (b)ジフルオロメタン(HFC32)を含むハイドロ
    フルオロカーボン、を含有してなることを特徴とする、
    エステル基油の熱分解が抑制された冷凍機作動流体用組
    成物。
  2. 【請求項2】 エステル基油にさらにリン化合物を配合
    してなる請求項1記載の冷凍機作動流体用組成物。
  3. 【請求項3】 エステル基油が、2〜6価のアルコール
    (成分−1)と、炭素数2〜10の直鎖及び/又は分岐
    鎖脂肪酸、又はその誘導体(成分−2)とから得られる
    エステルである請求項1又は2記載の冷凍機作動流体用
    組成物。
  4. 【請求項4】 芳香環化合物が極性基を有する炭素数6
    〜36の芳香環化合物であり、複素環化合物が炭素数2
    〜50の複素環化合物である請求項1〜3いずれか記載
    の冷凍機作動流体用組成物。
  5. 【請求項5】 リン化合物が炭素数6〜55のリン化合
    物である請求項2〜4いずれか記載の冷凍機作動流体用
    組成物。
  6. 【請求項6】 予め水分濃度を10ppm以下、酸価を
    0.01mgKOH/g以下に調整した冷凍機油を10
    g、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC1
    34a)が2.6gとジフルオロメタン(HFC32)
    が1.15gと、ペンタフルオロエタン(HFC12
    5)が1.25gからなるハイドロフルオロカーボン、
    又はジフルオロメタン(HFC32)が2.5gとペン
    タフルオロエタン(HFC125)が2.5gからなる
    ハイドロフルオロカーボンを5g、触媒として直径1.
    6mmφ・長さ150mmの銅、鉄およびアルミニウム
    をガラス管に加えて封管し、250℃で3日間放置した
    後に測定される酸価が3.0mgKOH/g以下である
    冷凍機油を使用する、請求項1〜5いずれか記載の冷凍
    機作動流体用組成物。
  7. 【請求項7】 ロータリー型圧縮機又はスクロール型圧
    縮機に使用される、請求項1〜6いずれか記載の冷凍機
    作動流体用組成物。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7いずれか記載の冷凍機作動
    流体用組成物を用いることを特徴とする、エステル基油
    の熱分解を抑制しながら冷凍機を運転する方法。
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