JPH1075782A - 新規△9不飽和化酵素をコードする遺伝子及びその遺 伝子を含有する酵母 - Google Patents

新規△9不飽和化酵素をコードする遺伝子及びその遺 伝子を含有する酵母

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JPH1075782A
JPH1075782A JP27040596A JP27040596A JPH1075782A JP H1075782 A JPH1075782 A JP H1075782A JP 27040596 A JP27040596 A JP 27040596A JP 27040596 A JP27040596 A JP 27040596A JP H1075782 A JPH1075782 A JP H1075782A
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yeast
dna
acid
saccharomyces
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JP27040596A
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Takashi Harashima
俊 原島
Tetsuji Tomita
哲司 富田
Keiko Ishii
圭子 石井
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Showa Sangyo Co Ltd
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Showa Sangyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 パルミチン酸よりステアリン酸に対して基質
特異性の高い△9脂肪酸不飽和化酵素をコードする新規
な遺伝子、該遺伝子を導入した形質転換体を提供するこ
と。 【解決手段】 ピヒア・アングスタ(Pichia a
ngusta)由来のパルミチン酸よりステアリン酸に
対して基質特異性の高い△9不飽和化酵素をコードする
遺伝子及びその遺伝子を含有する酵母。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、補酵素A(Co
A)とエステル結合した飽和脂肪酸であるパルミチン酸
又はステアリン酸を不飽和脂肪酸であるパルミトレン酸
又はオレイン酸に変換する酵素、特に、酵母ピヒア(P
ichia)の△9不飽和化酵素をコードする遺伝子、
及び該遺伝子を含有する形質転換体に関する。
【0002】なお、本発明にいう△9不飽和化酵素と
は、△9脂肪酸不飽和化酵素を意味する。
【0003】
【従来の技術】△9不飽和化酵素は補酵素A(CoA)
とエステル結合したパルミチン酸とステアリン酸に作用
して、炭素鎖の△9位に不飽和結合を導入し、それぞれ
パルミトレン酸若しくはオレイン酸へ変換する。
【0004】多くの種類の酵母の不飽和脂肪酸生合成で
は、△9不飽和化酵素によって生成したオレイン酸に別
の△12不飽和化酵素が作用してリノール酸に変換し、
次に△6または△15不飽和化酵素がリノール酸をリノ
レン酸へ変換する。
【0005】しかし、パンや醸造等産業的に最も頻繁に
利用されている酵母サッカロマイセス・シェルビッシェ
(Saccharomyces cerevisia
e)の細胞内の主な不飽和脂肪酸はパルミトレン酸とオ
レイン酸で、リノール酸等の不飽和結合数が2以上の脂
肪酸は非常に少ない。また、オレイン酸よりパルミトレ
ン酸の方が含量が多い(Appl.Microbio
l.Biotechnol.,26,55−60,19
87)。この理由としては、サッカロマイセス・シェル
ビッシェの△9不飽和化酵素がステアリン酸よりパルミ
チン酸への基質特異性が高いことが考えられる。
【0006】生体膜の相転移温度は、膜を構成している
脂質の脂肪酸の不飽和結合に依存し、不飽和結合の多い
脂肪酸が多いほど低くなる。膜の相転移温度が低いと低
温においても生体膜の流動性が維持されて細胞は低温傷
害を受け難くなることがらん藻で報告されている(Na
ture,347,200−203,1990)。
【0007】通常のサッカロマイセス・シェルビッシエ
は冷凍耐性が低く、この原因の一つは細胞内の膜脂質の
脂肪酸の不飽和化度が低いためと考えられている(凍結
及び乾燥研究会会誌、29,16−20,1983)。
一方、製パン業において作業工程の簡素化を目的として
導入している冷凍生地製パン法では、パン酵母の冷凍耐
性の低さが問題となっている。
【0008】そこで、サッカロマイセス・シェルビシェ
の冷凍耐性を向上させる方法としてリノール酸を生合成
できるような遺伝学的改変が最も直接的な手法と考えら
れる。しかし、例えば、植物アラビドプシス(Arab
idopsis thaliana)から単離された△
12不飽和酵素遺伝子をサッカロマイセス・シェルビッ
シェに導入すれば、リノール酸を生合成できることが報
告されているが(Plant Physiol,11
1,223−226,1996)、この遺伝子導入した
サッカロマイセス・シェルビッシェは、依然パルミトレ
ン酸含量が高く、膜の相転移温度の低下を望める改変は
達成されていない。
【0009】これは、サッカロマイセス・シェルビッシ
ェの△9不飽和化酵素がステアリン酸よりもパルミチン
酸に基質特異性か高いために、導入した△12不飽和化
酵素の基質となるオレイン酸が充分に存在しないためと
考えられる。
【0010】従って、この様に遺伝子を利用してパン酵
母の冷凍耐性を向上させるにはパルミチン酸よりオレイ
ン酸に基質特異性の高い△9不飽和化酵素を探してその
遺伝子を導入してリノール酸の前駆体であるオレイン酸
を増加させる方法が考えられる。
【0011】こうしたアプローチをとろうとすれば、パ
ルミチン酸よりオレイン酸に対して基質特異性の高い不
飽和化酵素をコードする遺伝子を取得することが必要で
ある。
【0012】しかし、不飽和化酵素は反応に還元力を必
要とし、酵母では細胞内の小胞体膜に結合してチトクロ
ームb5等の電子伝達を行う酵素群と一緒に働くことに
よって脂肪酸に不飽和結合を導入する(Arch.Bi
ochem.Biophysy.,175,284−2
94,1976)。このことから、通常加水分解酵素等
を分離精製する際の手法で採られるような酵素を細胞か
ら分離し単一に精製した後、アミノ酸配列の知見から遺
伝子をクローン化すること困難である。
【0013】従って、パルミチン酸よりステアリン酸に
基質特異性の高い△9不飽和化酵素の遺伝子を得るに
は、目的とする遺伝子を有すると考えられる生物を探索
し、その生物から何らかの手段で不飽和化酵素遺伝子を
単離し、更にそれを酵母に導入して、その形質転換体の
脂肪酸組成を分析し、目的とする特性を有する酵素の遺
伝子なのかを判定するといった煩雑な研究が必要とな
る。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】パルミチン酸よりステ
アリン酸に基質特異性の高い△9不飽和化酵素をコード
する新規な遺伝子、該遺伝子を導入した形質転換体を提
供すること。
【0015】
【課題を解決するための手段】我々は鋭意研究した結
果、パルミチン酸よりスレアリン酸に基質特異性の高い
△9不飽和化酵素遺伝子を有するであろう酵母ピヒア・
アングスタを見出し、その△9不飽和化酵素遺伝子を単
離して、種々遺伝子組換え酵母を作成することによって
酵素の特性を把握し、本発明に至った。
【0016】すなわち、本発明は、パルミチン酸よりス
テアリン酸に基質特異性が高い特性を有する、△9不飽
和化酵素をコードする遺伝子が、配列表の配列番号7に
記載の塩基配列のうち、塩基番号498〜1850で表
される塩基配列を含むことを特徴とする△9不飽和化酵
素をコードする遺伝子及びこの遺伝子を含有する形質転
換された酵母である。
【0017】以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】(1) 各種酵母の細胞内脂肪酸組成物の
分析 Saccharomyces cerevisiae
SH 986、S.cerevisiae Baker
s’yeast、Candida saitoana
IFO 0380、Pichia angusta I
FO 1475、Yarrowia lipolyti
ca IFO 1659、Y.lipolytica
IFO 1289、Lipomyces starke
yi IFO 1289、Kluyveromyces
thermotoleransIFO 1985株等
の各種酵母菌株を培養し、酵母の細胞内脂肪酸組成の分
析を行った。
【0019】その結果、ピヒア・アングスタIFO14
75が、(オレイン酸+リノール酸+リノレン酸)/パ
ルミトレン酸の比の値が最も高かったので、ピヒア・ア
ングスタIFO1475の不飽和化酵素遺伝子に着目
し、その利用を図ることにした。
【0020】(2) ピヒア△9不飽和化酵素遺伝子断
片のクローニング ピヒア・アングスタIFO1475の菌株を培養し、該
菌体からHereford法(Hereford,
L.,et.al.,Cell,18,1261,19
79)に従って染色体DNAを抽出して、該菌体の染色
体DNAを得た。得られた染色体DNAを鋳型にし、次
に述べるようなプライマーを組み合わせてPCRを行う
ことにより、該染色体DNAの増幅を行い、その結果、
数種類のDNA断片の増幅が見られた。
【0021】このPCR法で用いるプライマーとして
は、サッカロマイセス・シェルビッシェ(Saccha
romyces cerevislae)(J.Bio
l.Chem.,265,20144−20149,1
990)、ラット(J.Biol.Chem.,26
1,13230−13235,1986)及びマウス
(J.Biol.Chem.,263,17291−1
7300,1988)の△9不飽和化酵素遺伝子のDN
A配列から推定されるアミノ酸配列を比較し、相同性の
高い領域より調製したもの、すなわち、配列番号1〜5
に示すプライマーP10、P12、P20、P21、P
30等を使用した。
【0022】また、同時にプライマーP10とP30を
用いてサッカロマイセス・シェルビッシェSH986よ
り調製した染色体DNAを鋳型としてPCRを行い、サ
ッカロマイセス・シェルビッシェの△9不飽和化酵素遺
伝子(S−OLE1)の650bpの断片(A63)を
増幅した。
【0023】ピヒア染色体DNAよりPCRで増幅した
DNA断片にS−OLE1と相同性を示すものがあるの
か調べるため、このA63をプローブとしたサザンハイ
ブリダイゼーションを行った。その結果、プライマーP
10とP20及びP12とP21を用いたPCRで増幅
した550bpのDNA断片がプライマーと強い相同性
を示すことが分かった。
【0024】そこで、P12とP21で増幅したDNA
断片(F21)を抽出・精製し、制限酵素、例えば、B
amHIとHindIIIで切断し、得られたDNA断
片を、pBluescriptIISK+(Strat
agene)等のベクターを制限酵素、例えば、Bam
HIとHindIIIにより切断した部位へ連結し、該
DNA断片を含むプラスミドを作成した。このプラスミ
ドを大腸菌に導入し、クローニングを行った。次いで、
クローニングしたDNA断片(F21)の塩基配列を決
定した(配列番号6)。この配列から推定されるアミノ
酸配列をS−OLE1の対応する領域と比較すると、5
3%の相同性であった。
【0025】(3) ピヒア・アングスタ完全長△9不
飽和化酵素遺伝子のクローニング (2)で調製したピヒア・アングスタ1FO1475の
染色体DNAを制限酵素、例えば、SacIで切断し、
得られたDNA断片を、pBluescriptIIK
S−等のベクターを制限酵素、例えば、SacIにより
切断した部位へ連結した後、大腸菌へ導入し、染色体D
NAライブラリーを作成した。このライブラリーに対し
て上記(2)で取得したDNA断片をプローブとしたコ
ロニーハイブリダイゼーションを行い、ポジティブクロ
ーンを得た。
【0026】このクローンには約3.3kbpのSac
IDNA断片がクローニングされており、SacI切断
部位から約2.2kbpまでの領域の塩基配列を決定し
た。配列番号7にその塩基配列と推定されるアミノ酸配
列をそれぞれ示す。
【0027】この塩基配列の解析結果からクローニング
したDNA断片には、1,353bpのタンパク質コー
ド領域(ORF)があり、451アミノ酸からなる4
9.6kDaのタンパク質をコードしていると考えられ
た。塩基配列から推定されるアミノ酸配列をS−OLE
1の推定アミノ酸配列と比較すると相同性は62%であ
った。このことから約3.3kbpのDNA断片には、
ピヒアの△9不飽和化酵素遺伝子P−OLE1がクロー
ニングされていると判断した。
【0028】また、ストリンジェントな条件下でハイブ
リダイズし、かつパルミチン酸よりステアリン酸に基質
特異性が高い△9不飽和化酵素をコードする遺伝子も本
発明に含まれる。なお、ストリンジェントな条件下でハ
イブリダイズするとは、実施例(2)に示されるサザン
ハイブリダイゼーションの処理条件よりも強い条件によ
りP−OLE1をハイブリダイズすることを指す。具体
的には、実施例2におけるハイブリ溶液の塩濃度は、5
XSSC、5XDenhardt’s液、0.02%S
DS、0.5%スキムミルク溶液、100μg/mlサ
ケ変性DNAから成るが、この組成よりもハイブリ溶液
の構成成分の濃度が高いか、ハイブリダイゼーション温
度が55℃以上か、膜洗浄溶液が0.1%SDS、0.
2XSSCの組成より高い濃度の溶液であるか、膜洗浄
温度が50℃以上の場合をいう。
【0029】ところで、このようにして決定されたDN
A断片の塩基配列及びそれより推定されるアミノ酸配列
は、配列表の配列番号7に示すものが挙げられるが、か
かるDNA断片がコードするポリペプチドが、パルミチ
ン酸よりステアリン酸に基質特異性が高いという△9不
飽和化活性を損なわない範囲で、一部のアミノ酸又は核
酸を除去、置換或いは付加する等の改変を行ったものも
本発明に含まれる。
【0030】(4) P−OLE1酵母発現組換えベク
ターの構築 一般的に外来遺伝子を酵母中で発現させるのに用いるベ
クターとしては、酵母と大腸菌内で自立複製可能なYC
p型ベクター、例えばpRS413、pRS414、p
RS415、pRS416(STRATAGENE)、
pRS316(ATCCpRS316)(Geneti
cs,122,19−27,1989)、YEpベクタ
ーpYES2(Invitrogen)、p520(A
ppl.Microbiol.Biotechno
l.,30,,,515−520,1989)や、大腸
菌中では自立複製可能だが酵母中では自立複製しない組
み込み型ベクターYIp型ベクター、例えばpRS40
3、pRS404、pRS405、pRS406(ST
RATAGENE)が挙げられる。これら用いてP−O
LE1を酵母中で発現させるには、遺伝子発現用のプロ
モーターが挿入されているベクターの場合は外来遺伝子
挿入部位にP−OLE1を制限酵素を用いて接続すれば
P−OLE1酵母発現組換えベクターが作成できる。ま
た、発現用プロモーター無いベクターの場合はP−OL
E1の5’上流のプロモーター領域を含むDNA断片を
ベクターに挿入すればP−OLE1酵母発現組換えベク
ターが作成できる。
【0031】そこで、(3)で得た組換えベクターより
制限酵素を用いて3.3kbpのDNA断片を切り出
し、YCp型ベクターpRS316のクローニング部位
へ連結して、組換えベクターを作成した。この組換えベ
クターを大腸菌JM109へ導入し、この大腸菌を形質
転換した。次に、得られた形質転換体を培養後、組換え
ベクターを抽出、精製し、制限酵素、例えば、SacI
で切断して電気泳動を行い、pRS316に3.3kb
pの断片が導入された組換えベクターp1311(図
1)を保持する形質転換された大腸菌JM109(p1
311)を選別した。
【0032】更に、P−OLE1の翻訳開始点上流11
塩基目からのDNA配列より、また、終止コドン下流3
7塩基からのDNA配列より、それぞれプライマーを合
成し、このプライマーを使用してピヒアIFO1475
の染色体DNAを鋳型にしたPCRを行い、P−OLE
1の構造遺伝子部分である1.4kbpのDNA断片を
増幅した。次いで、増幅したDNA断片をYEp型ベク
ターp520のglyceraldehyde−3−p
hosphate dehydorogenase
(GAP)プロモーターの下流に連結して、組換えベク
ターを作成した。この組換えベクターを大腸菌JM10
9へ導入し、形質転換された大腸菌を得た。そして、こ
の形質転換体を培養後、組換えベクターを抽出し、これ
を制限酵素で切断後、アガロースゲル電気泳動を行い、
p520に1.4kbpの切断が導入された組換えベク
ターp1219(図2)を保持した形質転換された大腸
菌JM109(p1219)を選別した。
【0033】また、対照として、J.Biol.Che
m.,265,20144−20149,1990で報
告されているS−OLE1のDNA配列を参考にしてS
−OLE1の翻訳開始点から上流10塩基目からの配列
より、また、終止コドンからの配列より、それぞれ、プ
ライマーを合成し、このプライマーを使用してサッカロ
マイセス・シェルビッシェS288C(MATa ma
l mel gal)(Yeast Genetic
Stock Center保存、米国)(「Metho
ds in Yeast Genetics:A Co
urse Manual.Cold Sprin Ha
rbor Laboratories」C.S.H)の
染色体DNAを鋳型にしたPCRを行い、1.8kbp
の増幅したDNA断片を得た。そして、このDNA断片
をp520のGAPプロモーターの下流に連結して、組
換えベクターを作成した。次いで、この組換えベクター
を大腸菌JM109へ導入し、形質転換された大腸菌を
得た。そして、この形質転換体を培養後、組換えベクタ
ーを抽出し、これをSalIで切断後、アガロースゲル
電気泳動を行い、p520に1.8kbp(7)S−O
LE1が挿入された組換えベクターp1321(図3)
を保持する形質転換された大腸菌JM109(p132
1)を選別した。
【0034】(5)P−OLE1導入形質転換酵母の作
成と脂肪酸組成 p520と(4)で作成したp1219とp1321を
それぞれ酢酸リチウム法によってサッカロマイセス・シ
ェルビッシェSH986に導入し、得られた形質転換体
を合成選択寒天培地に塗布して、形質転換体サッカロマ
イセス・シェルビッシェSH986(p520)、サッ
カロマイセス・シェルビッシェSH986(p121
9)とサッカロマイセス・シェルビッシェSH986
(p1321)を選別し、取得した。
【0035】これら3種類の形質転換体を培養後、遠心
分離によって菌体を集め、(1)と同様にそれぞれの細
胞の脂肪酸組成を調べた。その結果を表2に示す。
【0036】3種類の形質転換酵母の脂肪酸組成は大き
な差がなく、この結果からでは、P−OLE1の基質特
異性に関する機能が明確にできなかったので、次のよう
な実験を行った。
【0037】まず、OLE1が欠失しているため培地中
にオレイン酸等の不飽和脂肪酸を加えなければ増殖でき
ない、S−OLE1変異株で形質転換体の選択マーカー
を有するサッカロマイセス・シェルビッシェSH434
8(MATa olel hisl−29 leu2−
3,112trpl ura3−52)(大阪大学・工
学部・応用生物工学科・生物情報工学研究室保存)を作
成した。
【0038】このサッカロマイセス・シェルビッシェS
H4348にp1311、p1219及びp1321を
酢酸リチウム法によってそれぞれ導入し、p1311の
形質転換体はウラシルを、p1219とp1321の形
質転換体はトリプトファンを含まないオレイン酸添加合
成選択寒天培地に塗布して、形質転換体サッカロマイセ
ス・シェルビッシェSH4348(p1311)、サッ
カロマイセス・シェルビッシェSH4348(p121
9)とサッカロマイセス・シェルビッシェSH4348
(p1321)を選別し、取得した。
【0039】次に、それぞれの形質転換体をオレイン酸
を含まない合成選択寒天培地に塗布し増殖を調べた。そ
の結果、3種類の形質転換体はオレイン酸を含まない培
地で増殖しコロニーを形成した。
【0040】このことにより、クローニングしたP−O
LE1は、△9不飽和化酵素遺伝子を相補すること、G
APプロモーターとターミネーターで転写を制御できる
こと及びP−OLE1のプロモーターがサッカロマイセ
ス・シェルビッシェ中で機能することが分かった。
【0041】次に、これら3種類の形質転換体を72時
間培養後、遠心分離によって菌体を集め、(1)と同様
にそれぞれの細胞の脂肪酸組成を調べた(表3)。
【0042】脂肪酸組成から計算されるオレイン酸/パ
ルミトレン酸の値は、P−OLE1を導入したSH43
48(p1219)とSH4348(p1311)は、
SH4348(p1321)に比べ有意に高いことが分
かった。
【0043】このことにより、P−OLE1がコードす
る翻訳産物である△9不飽和化酵素は、パルミチン酸よ
りステアリン酸に対して基質特異性が高いことが判明し
た。
【0044】また、サッカロマイセス・シェルビッシェ
が本来有する△9不飽和化酵素遺伝子S−OLE1を変
異処理や遺伝子導入による相同組換え等によって破壊し
た後P−OLE1を組み込めば、パルミトレン酸含有量
が低くオレイン酸含有量が高い酵母を作り出せることが
判明した。
【0045】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施
例により詳細に説明する。
【0046】
【実施例】
(1)各種酵母の細胞内脂肪酸組成の分析 121℃、20分間加熱滅菌したYPD液体培地(酵母
エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース1%)10
0mlが入った500ml容坂口フラスコにYPD寒天
培地スラントより酵母菌体を植菌し、30℃、120r
pmで24時間振とう培養した前培養液2mlを同じ培
地に移植し、30℃、120rpmで72時間振とう培
養後、遠心分離によって菌体を集めた。菌体は蒸留水で
洗浄後、湿菌体1gに対して10%水酸化カリウム・メ
タノール溶液0.8mlを加え80℃で2時間ケン化し
た。その後、石油エーテル1mlで洗浄後、6N塩酸
0.3mlと石油エーテル3mlを加えて脂肪酸を抽出
し、窒素ガスで石油エーテルを揮発させ、脂肪酸を乾固
した。これに3フッ化ホウ素メタノール溶液0.5ml
を加えて80℃で3分間反応させてメチルエステル化し
た。この溶液に飽和食塩水2ml加えた後、n−ヘキサ
ン1mlを加えて脂肪酸メチルエステルを抽出した。脂
肪酸組成はヘキサン抽出液をガスクロマトグラフィーに
供し、検出されたピーク面積比から求めた。ガスクロマ
トグラフィーの条件は、PPGS20%、Chromo
sorbWAW80/100を充填した2mのガラスカ
ラムを使用し、カラム温度210℃、インジェクタ温度
240℃、検出器温度240℃、窒素ガス流速40ml
/分、検出F Il)(H250kg/cm2、エアー
50kg/cm2)とした。結果を表1に示す。
【0047】 (オレイン酸+リノール酸+リノレン酸)/パルミトレ
ン酸の比が最も高いピヒア・アングスタIFO1475
の不飽和化酵素遺伝子を単離することとした。
【0048】(2)ピヒア△9不飽和化酵素遺伝子断片
のクローニング サッカロマイセス・シェルビッシュ(J.Biol.C
hem.,265,20144−20149,199
0)、ラット(J.Biol.Chem.,261,1
3230−13235,1986)及びマウス(J.B
iol.Chem.,263,17291−1730
0,1988)の△9不飽和化酵素遺伝子のDNA配列
から推定されるアミノ酸配列を比較し、遺伝子解析ソフ
トGENETYX MAC(ソフトウエア開発(株))
を用いて相同性の高い領液を検索し、相同性の高い領液
を再度DNA配列に読み変えて、配列番号1〜5に示す
プライマーP10、P12、P20、P21、P30を
設計した。そして、この配列通りの1本鎖DNAをDN
AシンセサイザーMODEL391PCR−MATAE
P(Applied Biosystems)を用いて
合成した後、濃度100μMの水溶液を調製してプライ
マー溶液とした。
【0049】一方、ピヒア・アングスタIFO1475
の染色体DNAの調製はHereford法(Here
ford.L.,et,al.,Cell,18,12
61,1979)に従って行った。すなわち、(1)の
条件で培養したピヒア・アングスタIFO1475の湿
菌体約1gを0.8Mソルビトールと1.3mg/ml
Zymolyase−100T(生化学工業(株))
を含む0.04Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.8)
1ml中で35℃で1時間処理してスフェロプラスト化
した後、5%SDS、0.1MEDTA、0.2MNa
Clを含む50mMトリス・塩酸緩衝液(pH8.5)
1mlを加えて37℃で1時間、60℃で30分処理
し、染色体DNAを抽出した。更に、これを水飽和フェ
ノール溶液で2回洗浄した後、エタノール沈殿によって
DNAを回収し1mMEDTAを含む10mMトリス・
塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解して染色体DNA溶液
を調製した。
【0050】そして、この染色体DNAを鋳型にして上
記プライマーを組み合わせたPCRを行った。PCR
は、GeneAmp PCR Reagent Kit
with AmpliTaq DNA Polyme
rase(宝酒造(株))を用いた。反応液は、最終的
にプライマー2μM、dATP0.2mM、dTTP
0.2mM、dGTP0.2mM、dCTP0.2m
M、AmpliTaql)NAポリメラーゼ25U/m
l)染色体DNA10μg/mlになるように混合し、
94℃で1分、55℃で2分、72℃で3分を1サイク
ルとして35サイクル反応させた。反応液10μlは
2.0%アガロースゲル電気泳動後、10ng/ml臭
化エチジウム水溶液で染色し、増幅したDNA断片の検
出を行った。その結果、数種類のDNA断片の増幅が見
られた。
【0051】また、同時にプライマーP10とP30を
用いてサッカロマイセス・シェルビッシェSH986よ
り調製した染色体DNAを鋳型として上記と同じ組成の
反応液で94℃で1分、65℃で2分、72℃で3分を
1サイクルとして35サイクル反応させたPCRを行
い、S−OLE1650bpの断片(A63)を増幅し
た。
【0052】ピヒア染色体DNAよりPCRで増幅した
DNA断片にS−OLE1と相同性を示すものがあるの
か調べるため、このA63をプローブにしたサザンハイ
ブリダイゼーションをDIG核酸ラベリング・検出キッ
ト(BoehrinngerMannheim Bio
chemica)を用いて行った。
【0053】まず、「Molecular Cloni
ng.A LaboratoryManual.2nd
ed」(CSHL Press)に従ってピピア染色
体DNAのPCR反応液を電気泳動したアガロースゲル
からナイロン膜Hybond−N(Amersham)
にDNAを転写し、紫外線を照射してプロットした。次
に、キットに含まれる試薬を用いたランダムプライマー
法によってジゴキシゲニン標識dUTPでA63をラベ
ルし、約50μg/mlのプローブ液を調製した。そし
て、このプローブ液0.5μlを含むハイブリ溶液(5
XSSC、5XDenhardt,s液、0.02%S
DS、0.5%スキムミルク溶液、100μg/mlサ
ケ変性DNA)2.5ml中にナイロン膜を入れて55
℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。0.1
%SDSを0.2XSSC溶液を用いて50℃で膜を3
回洗浄後、キットに含まれるジゴキシゲニン検出試薬を
用いてプローブと相同性を示すDNA断片の検出を行っ
た。
【0054】その結果、プライマーP10とP20及び
P12とP21を用いたPCRで増幅した550bpの
DNA断片がプライマーと強い相同性を示した。
【0055】そこで、P12とP21で増幅したDNA
断片(F21)を電気泳動ゲルよりプレップAジーンD
NA精製キット(BIO−RAD)を用いて抽出・精製
し、このDNA1μgに対して制限酵素BamHIとH
indIIIをそれぞれ10U加え、ユニバーサル緩衝
液(宝酒造(株))中で35℃で2時間作用させた後、
エタノール沈殿によって回収した。これをBamHIと
HindIIIで切断したベクターpBluescri
ptIISK+(Stratagene)へDNAライ
ゲーションシキット(宝酒造(株))を用いてライゲー
ションし、E.coli JM109コンピテントセル
(宝酒造(株))を用いて大腸菌JM109へ形質転換
した。そして、ランダムに形質転換体20個を選び、こ
れを2TY液体培地(1.6%バクトトリプトン、1.
0%酵母エキス、0.5%NaCl)に植菌し、35℃
で16時間培養後、「Molecular Cloni
ng.A Laboratory Manual.2n
d ed」(CSHL Press)に従ってアルカリ
・SDS法でプラスミドを抽出し、pBluescri
ptIISK+にF21が挿入されたプラスミドを保持
する形質転換大腸菌を選別した。
【0056】クローニングしたDNA断片の配列をTa
q DyeDeoxy Terminator Cyc
le Sequencing Kit(Applied
Biosystems)を用いたダイターミネーター
法によって解折した。すなわちF21を挿入したpBl
uescriptIISK+に対してM13Fプライマ
ー(東洋紡(株))とM13プライマーRV(東洋紡
(株))を用いてそれぞれ蛍光ラベル反応を行い、DN
Aシークエンサー373A(Applied Bios
ystems)で分析して塩基配列を決定した。決定し
た塩基配列を配列番号6に示した。この配列から推定さ
れるアミノ酸配列をS−OLE1の対応する領域と比較
したところ、53%の相同性が見い出された。
【0057】(3)ピヒアの完全長△9不飽和化酵素遺
伝子のクローニング (2)で調製したピヒア・アングスタIFO1475の
染色体DNA1μgに制限酵素SacI20Uを作用さ
せて完全に切断した後、SacIで切断したpBluc
script1IKS−(Stratagene)へD
NAライゲーションキット(宝酒造(株))を用いてラ
イゲーションし、E.coliJM109コンピテント
セル(宝酒造(株))を用いて大腸菌JM109へ導入
し、ライブラリーを作成した。
【0058】このライブラリーからコロニーハイブリダ
イゼーションによりピヒアの完全長△9不飽和化酵素遺
伝子を含むDNA断片のクローニングを行った。
【0059】アンピシリン耐性でβガラクトシダーゼ活
性を示さない形質転換体のコロニー約1,000個を
「Molccular Cloning.A Labo
ratory Manual.2nd ed」(CSH
L Press)に従ってナイロン膜Hybond−N
(Amersham)20枚に転写し、紫外線を照射し
てDNAをプロットした。次に、(2)と同様にして、
F21のジゴキシゲニン標識dUTPでラベルを行い、
約50μg/mlのプローブ液を調製した。コロニー中
のDNAをプロットしたナイロン膜1枚についてプロー
ブ液0.5μlを含むハイブリ溶液2.5mlを使用
し、55℃で16時間ハイブリダイゼーションを行い、
50℃で膜を3回洗浄後、ジゴキシゲニン検出試薬を用
いてプローブと相同性を示すコロニーの検出を行った。
その結果、ポジティブクローンを得た。そこで、このク
ローンを2TY液体培地で培養後、プラスミドを抽出、
精製し、SacIで切断後、0.7%アガロースゲル電
気泳動を行い、約3.3kbpのDNA断片がクローニ
ングされていることを確認した。そこで、この約3.3
kbpのDNA断片のSacI切断部位から約2.2k
bpまでの塩基配列を決定した。
【0060】DNA断片の配列の解析は、△TthDN
A Polymerase Sequencing P
ROKit(東洋紡(株))を用いて行った。すなわ
ち、蛍光ラベルされたM13Fプライマー(東洋紡
(株))とM13プライマーRV(東洋紡(株))を用
いてpBluescriptIIKS−のマルチクロー
ニング部位の両端からそれぞれ伸長反応を行い、Aut
omated LaserFluorescent
A.L.F DNA Sequencer(Pharm
acia LKB Biotechnology)で塩
基配列を解折した。その結果、約3.3kbpのDNA
断片の塩基配列と推定されるアミノ酸配列は配列番号7
に示す通りであった。
【0061】塩基配列の解折結果からクローニングした
約3.3Kbp(7)DNA断片には1,353bpの
ORFがあり、451アミノ酸配列からなる49.6K
Daのタンパク質をコードしており、S−OLE1の推
定アミノ酸配列と比較すると相同性は62%であった。
このことから、約3.3kbp(7)DNA断片には、
ピヒアの△9不飽和化酵素遺伝子P−OLE1がクロー
ニングされていると判断した。
【0062】(4)P−OLE1酵母発現組換えベクタ
ーの構築 (3)で得たP−OLE1が挿入されたプラスミド1μ
gをSacI10Uで切断し、0.7%アガロースゲル
電気泳動した後、ゲルより約3.3kbpのDNA断片
をプレップAジーンDNA精製キット(BIO−RA
D)を用いて抽出・精製した。これをSacIで切断し
たベクターpRS316(ATCCpRS316)(G
enetics,122,19−27,1989)へD
NAライゲーションキット(宝酒造(株))を用いてラ
イゲーションし、E.coli JM109コンピテン
トセル(宝酒造(株))を用いて大腸菌JM109へ形
質転換した。そして、ランダムの形質転換体20個を選
び、2TY液体培地で培養後、導入された組換えベクタ
ーを抽出、精製し、SacIで切断して電気泳動を行
い、pRS316に3.3kbpの断片が導入された組
換えベクターp1311(図1)を保持する形質転換体
大腸菌JM109(p1311)を選別した。
【0063】更に、P−OLE1の翻訳開始点から上流
11塩基目からのDNA配列よりプライマー5’−GA
GCTCGAGGAAAGTTGATGGGA−3’、
終止コドン下流37からのDNA配列よりプライマー
5’−AGATCTTCATATTTTCGTCGTC
T−3’をそれぞれ合成し、ピヒアIFO1475の染
色体DNAを鋳型にしたPCRを行い、P−OLE1の
構造遺伝子部分である1.4kbpのDNA断片を増幅
した。そして、増幅した断片をSacIとBglIIで
切断し、これをSacIとBamHI切断したベクター
p520(Appl.Microbiol.Biote
chnol.,30,515−520,1989)へD
NAライゲーションキット(宝酒造(株))を用いてラ
イゲーションし、E.coli JM109コンピテン
トセル(宝酒造(株))を用いて大腸菌JM109へ形
質転換した。そして、ランダムに形質転換体20個を選
び、2TY液体培地で培養後、プラスミドを抽出し、こ
れをSaIとSacIIで切断後、アガロースゲル電気
泳動を行い、p520に1.4kbpの切断が導入され
た組換えベクターp1219(図2)を保持した形質転
換体大腸菌JM109(p1219)を選別した。
【0064】また、対照としてJ.Biol.Che
m.,265,20144−20149,1990で報
告されているS−OLE1のDNA配列を参考にしてS
−OLE1の翻訳開始点から上流10塩基目からの配列
よりプライマー5’−GGATCCTACAACAAA
GATGCCAACT−3’、終止コドンからの配列よ
りプライマー5’−CTCGAGTGTTATTGTA
ATGTGATGC−3’をそれぞれ合成し、サッカロ
マイセス・シェルビッシェS288C(MATamal
mel gal)(Yeast Genetic S
tock Center保存、米国)(「Method
s in Yeast Genetics:A Cou
rse Manual. Cold Spring H
arbor Laboratories」C.S.H)
の染色体DNAを鋳型にしたPCRを行い、増幅した
1.8kbpのDNA断片を得た。そして、このDNA
をXhoIとBamHIで切断後、SalIとBamH
Iで切断したベクターp520へDNAライゲーション
キットを用いてライゲーションし、E.coli JM
109コンピテントセル(宝酒造(株))を用いて大腸
菌JM109へ形質転換した。そして、ランダムに形質
転換体20個を選び、2TY液体培地で培養後、プラス
ミドを抽出し、これをSalIで切断後、アガロースゲ
ル電気泳動を行い、p520に1.8kbpのS−OL
E1が挿入された組換えベクターp1321(図3)を
保持する形質転換体大腸菌JM109(p1321)を
選別した。
【0065】(5)P−OLE1導入形質転換酵母の作
成と脂肪酸組成 p520と(4)で作成したp1219とp1321を
それぞれ酢酸リチウム法(Recombinants
DNA Techniques:Rodriguez
and Tait,1983)によってサッカロマイセ
ス・シェルビッシェSH986(MATa ura3−
52 his leu2−3,112trpl ade
2−101)に導入し、形質転換体は、合成選択寒天培
地(0.67%Yeast nitrogen bas
eアミノ酸不含(DIFCOLAB.)、0.002%
アデニン、0.002%ウラシル、0.002%L−ヒ
スチジン、0.002%L−メチオニン、0.003%
L−ロイシン、(0.002%L−トリプトファン))
に塗布して形質転換体サッカロマイセス・シェルビッシ
ェSH986(p520)、サッカロマイセス・シェル
ビッシェSH986(p1219)とサッカロマイセス
・シェルビッシェSH986(p1321)を選別し、
取得した。
【0066】そして、これら3種類の形質転換体を滅菌
した合成選択液体培地100mlが入った500ml容
坂口フラスコにスラントより植菌し、30℃、120r
pmで24時間振とう培養した前培養液2mlを同じ培
地に移植し、更に30℃、120rmpで72時間振と
う培養後、遠心分離によって菌体を集めた。そして、
(1)と同様にそれぞれの細胞の脂肪酸組成を調べた。
結果を表2に示す。
【0067】 3種類の形質転換酵母の脂肪酸組成は大きな差がなく、
この結果ではP−OLE1の基質特異性に関する機能が
明確にできなかった。
【0068】そこで、以下の実験を行った。
【0069】まず、OLE1が欠失しているため培地中
にオレイン酸等の不飽和脂肪酸を添加しなければ増殖で
きないサッカロマイセス・シェルビッシェKD115
(MATaolel)(Yeast Genetic
stock Center 保存、米国)(J.Bac
teriol.,98,415−420,1969)を
入手し、これをサッカロマイセス・シェルビッシェSH
2676(MATa his1−29 leu2−3,
112trp1 ura3−52)(大阪大学・工学部
・応用生物工学科・生物情報工学研究室保存)と交雑し
て、OLE1変異と形質転換での選択マーカーを有する
サッカロマイセス・シェルビッシェSH4348(MA
Ta olel his1−29 leu2−3,11
2trp1ura3−52)(大阪大学・工学部・応用
生物工学科・生物情報工学研究室保存)を作成した。
【0070】そして、このサッカロマイセス・シェルビ
ッシェSH4348にp1311、p1219及びp1
321を酢酸リチウム法によってそれぞれ導入し、p1
311の形質転換体はウラシルを、p1219とp13
21の形質転換体はトリプトファンを含まないオレイン
酸添加合成選択寒天培地に塗布して、形質転換体サッカ
ロマイセス・シェルビッシェSH4348(p131
1)、サッカロマイセス・シェルビッシェSH4348
(p1219)とサッカロマイセス・シェルビッシェS
H4348(p1321)を選別し、取得した。
【0071】上記の形質転換体サッカロマイセス・シェ
ルビッシェSH4348(p1311)をSaccha
romyces cerevisiae SH4348
(p1311)と命名し(受託番号:FERM P−1
5814)、また、同サッカロマイセス・シェルビッシ
ェSH4348(p1219)をSaccharomy
ces cerevisiae SH4348(p12
19)))と命名し(受託番号:FERM P−158
15)、それぞれ、工業技術院生命工学工業技術試験所
に平成8年8月30日に寄託した。
【0072】宿主であるサッカロマイセス・シェルビッ
シェSH4348はOLE1が変異しているため培地中
にオレイン酸等の不飽和脂肪酸が存在しないと増殖でき
ない。そこで、それぞれの形質転換体をオレイン酸を含
まない合成選択寒天培地に塗布し増殖を調べた。その結
果、3種類の形質転換体はオレイン酸を含まない培地で
増殖しコロニーを形成した。
【0073】このことにより、クローン化したP−OL
E1は△9不飽和化酵素遺伝子を相補すること、GAP
プロモーターとターミネーターで転写を制御できること
及びP−OLE1のプロモーターがサッカロマイセス・
シェルビッシェ中で機能することが分かった。
【0074】次に、これら3種類の形質転換体を滅菌し
た合成選択液体培地100mlが入った500ml容坂
口フラスコにスラントより植菌し、30℃、120rp
mで24時間振とう培養した前培養液2mlを同じ培地
に移植し、更に30℃、120rmpで72時間振とう
培養後、遠心分離によって菌体を集めた。そして、
(1)と同様にそれぞれの細胞の脂肪酸組成を調べた。
結果を表3に示す。
【0075】 脂肪酸組成から計算されるオレイン酸/パルミトレン酸
の値は、SH4348(p1219)≧SH4348
(p1311)>SH4348(p1321)となり、
P−OLE1を導入したSH4348(p1219)と
SH4348(p1311)は、SH4348(p13
21)に比べて非常に高いことが分かった。
【0076】このことにより、P−OLE1の転写産物
である△9不飽和化酵素は、パルミチン酸よりステアリ
ン酸に対して基質特異性が高いことが判明した。
【0077】
【発明の効果】本発明のパルミチン酸よりステアリン酸
に対して基質特異性の高い△9不飽和化酵素をコードす
る新規な遺伝子を用いることにより、パルミチン酸より
ステアリン酸に対して基質特異性の高い形質転換された
酵母を得ることが可能となった。このことは、低温耐性
の高い酵母等の形質転換体の提供に資することになると
考えられるので、本発明は非常に価値がある。
【0078】
【配列表】
【0079】配列番号:1 配列の長さ:36 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:DNA 起源:合成DNA 配列
【0080】配列番号:2 配列の長さ:26 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:DNA 起源:合成DNA 配列
【0081】配列番号:3 配列の長さ:36 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:DNA 起源:合成DNA 配列
【0082】配列番号:4 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:DNA 起源:合成DNA
【0083】配列番号:5 配列の長さ:33 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類: DNA 起源:合成DNA 配列
【0084】配列番号:6 配列の長さ:554 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:Genomic DNA 起源 生物名:ピヒア・アングスタ(Pichia angu
sta) 株名:IFO1475
【0085】配列番号:7 配列の長さ:2251 配列の型:核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:Genomic DNA 起源 生物名:ピヒア・アングスタ(Pichia angu
sta) 株名:IFO1475 配列の特徴 特徴を表す記号:CDS 存在位置:498..1850 特徴を決定した方法:S 特徴を表す記号:TATA signal 存在位置:351..355 特徴を決定した方法:E 特徴を表す記号:5’UTR 存在位置:1..497 特徴を決定した方法:E 特徴を表す記号:3’UTR 存在位置:1851..2251 特徴を決定した方法:E
【配列表】 【図面の簡単な説明】
【図1】組換えベクターp1311の制限酵素切断部位
を示す図である。
【図2】組換えベクターp1219の制限酵素切断部位
を示す図である。
【図3】組換えベクターp1321の制限酵素切断部位
を示す図である。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の(a)又は(b)のDNAからな
    る遺伝子。 (a)配列表の配列番号7に記載の塩基配列のうち、塩
    基番号498〜1850で表される塩基配列からなるD
    NA (b)塩基配列(a)からなるDNAとストリンジェン
    トな条件下でハイブリダイズし、かつパルミチン酸より
    ステアリン酸に基質特異性が高い△9不飽和化酵素をコ
    ードする酵母由来の遺伝子。
  2. 【請求項2】 配列表の配列番号7に記載の塩基配列の
    うち、塩基番号498〜1850で表される塩基配列か
    らなるDNAが、ピヒア・アングスタ(Pichia
    angusta)由来のものである請求項1記載の遺伝
    子。
  3. 【請求項3】 ピヒア・アングスタ(Pichia a
    ngusta)が、ピヒア・アングスタ(Pichia
    angusta)IFO1475である請求項2記載
    の遺伝子。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに
    記載の遺伝子を含む組換えベクター。
  5. 【請求項5】 遺伝子が、ピヒア・アングスタ(Pic
    hia angusta)IFO1475株の染色体D
    NAを制限酵素SacIで切断して得た3.3kbpの
    DNA断片である請求項4記載の組換えベクター。
  6. 【請求項6】 遺伝子が、ピヒア・アングスタ(Pic
    hia angusta)IFO1475株の△9不飽
    和化酵素をコードする遺伝子部分である1.4kbpの
    DNA断片である請求項4記載の組換えベクター。
  7. 【請求項7】 請求項4乃至請求項6のいずれか一つに
    記載の組換えベクターで形質転換された酵母。
  8. 【請求項8】 酵母が、サッカロマイセス・シェルビッ
    シェ(Saccharomyces cerevisi
    ae)である請求項7記載の酵母。
  9. 【請求項9】 サッカロマイセス・シェルビッシェ(S
    accharomyces cerevisiae)
    が、サッカロマイセス・シェルビッシェ(Saccha
    romyces cerevisiae)の△9不飽和
    化酵素をコードする遺伝子欠失変異株である請求項8記
    載の酵母。
  10. 【請求項10】 パルミチン酸よりステアリン酸に基質
    特異性が高い特性を有する配列表の配列番号7で表され
    るアミノ酸配列を含む△9不飽和化酵素。
  11. 【請求項11】 請求項7乃至請求項9のいずれか一つ
    に記載の酵母を培養して請求項10記載の△9不飽和化
    酵素を産生する方法。
  12. 【請求項12】 形質転換された酵母が、サッカロマイ
    セス・シェルビッシェ(Saccharomyces
    cerevisiae)の△9不飽和化酵素をコードす
    る遺伝子欠失変異株の形質転換体である請求項7乃至請
    求項9記載の酵母を培養してパルミトレイン酸よりオレ
    イン酸を多く含む脂肪酸組成物を産生する方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US8722910B2 (en) 2009-07-10 2014-05-13 Evolva Ag Diyne compositions

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US8722910B2 (en) 2009-07-10 2014-05-13 Evolva Ag Diyne compositions

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