JPH106055A - レーザ溶接管およびその製造方法 - Google Patents

レーザ溶接管およびその製造方法

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JPH106055A
JPH106055A JP8161696A JP16169696A JPH106055A JP H106055 A JPH106055 A JP H106055A JP 8161696 A JP8161696 A JP 8161696A JP 16169696 A JP16169696 A JP 16169696A JP H106055 A JPH106055 A JP H106055A
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Japan
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bond
welded
pipe
toughness
metal flow
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JP8161696A
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Tomotaka Hayashi
智隆 林
Hirotsugu Inaba
洋次 稲葉
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】溶接部の靱性と耐食性に優れたレーザ溶接管と
その製造方法を提供する。 【解決手段】(1)溶接ボンド近傍のメタルフロー立ち
上がり角度を60°以下としたCa含有鋼製のレーザ溶
接管。 (2)オープンパイプ状に成形されたCa含有鋼製の板
材両端縁部を高周波予熱し、板材両端面の突き合わせ部
にレーザビームを照射して衝合溶接する際に、予熱温度
に応じたアプセット量を付与して製管溶接する。 【効果】硫化物形態制御目的で添加されたCaを含有す
る炭素鋼製の高周波予熱併用レーザ溶接管特有の溶接熱
影響部の靱性低下が確実に防げる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接管とその製造
方法にかかわり、より詳細には、ラインパイプや油井管
などに用いて特に好適な、溶接部の靱性と耐食性に優れ
たレーザ溶接管とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年生産される石油や天然ガスは、硫化
水素のみならず、海水や淡水などの水分を含む場合が非
常に多い。この場合、これらの石油や天然ガスを採取し
たり輸送するのに用いられ鋼管などの鋼部材は、その鋼
表面で起こる腐食に基づく減肉だけでなく、腐食により
鋼表面で発生した水素が鋼中に侵入することによって破
壊することもある。これは、A系介在物と称される圧延
方向に延びた板状のMnSなどの硫化物系介在物が鋭い
切り欠きとなって発生するもので、その防止対策として
は極低S化によるMnSの低減やCa添加によるA系介
在物の形態制御(球状化)が行われている。
【0003】また、最近は、極寒地域の産地が多く、低
温靱性により優れる鋼管の需要が多くなってきている。
【0004】上記の両条件、すなわち優れた耐食性と低
温靱性を有する溶接管を電縫溶接製管法(以下、ERW
法という)によって製造する際には、従来から上記のC
a添加鋼を使用する場合が多い。しかし、この場合に
は、電縫衝合部とその近傍で、球状化したCa系介在物
が電縫溶接時の熱影響と溶接時のスクイズロールでの下
式で定義されるアプセット量(mm)を付与することに
よる加圧によって板状に変形し、溶接部の靱性が母材部
に較べて著しく低下する場合がある。
【0005】アプセット量=溶接前のオープンパイプ状
の管周長−溶接後の管周長 しかし、上記の問題は、例えば、特公平5−87582
号公報に示されるように、融点の高い球状化したCa介
在物を生成させ、電縫溶接時にCa介在物が延伸しない
ようにすることで防ぐことができる。
【0006】一方、上記のERW法と同等の溶接速度
で、かつアーク溶接と同等の溶接部性能を有する溶接管
が得られる方法として、例えば特開平2−70379号
公報に示される方法がある。
【0007】すなわち、溶接熱源にレーザ、具体的には
炭酸ガスレーザを用い、オープンパイプ状に成形された
板材の両端縁部を高周波加熱手段を用いて予め予熱した
後、板材両端面の突き合わせ部にレーザビームを照射し
て製管溶接する方法(以下、高周波予熱併用レーザ溶接
法という)がある。
【0008】図5は、高周波予熱併用レーザ溶接法を示
す模式的斜視図であり、図中、符号1はレーザビームの
フォーカスヘッド、2はスクイズロール、3は高周波加
熱手段の給電子、OPはオープンパイプ状に成形された
板材、Pはレーザ溶接管である。
【0009】この高周波予熱併用レーザ溶接法は、レー
ザ単独溶接法による場合に比べて約2から3倍の高速溶
接が可能で、生産性に優れている。また、その製管装置
としては、既存のERW法用の製管装置の大部分が流用
でき、ERW法で製造可能なサイズと同じサイズの溶接
管の製造が可能である。このことから、より一層高品質
な製品を得るための技術開発が鋭意進められている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、優れた耐食性
を確保すべく、前述のCa添加鋼製の板材を素材にして
レーザ単独溶接法と高周波予熱併用レーザ溶接法とによ
って製造した溶接管を比較した場合、ERW法で製造し
たものほど著しくはないが、高周波予熱併用レーザ溶接
法で製造したものの方が溶接部の靱性、具体的には溶接
熱影響部の靱性が劣る場合があるという問題があった。
このため、その解決策の開発が強く望まれていた。
【0011】本発明は、上記の実情に鑑みてなされたも
ので、その課題は、溶接部靱性、特に溶接熱影響部の靱
性に優れたCa添加鋼製からなるレーザ溶接管とその製
造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の
(1)および(2)のレーザ溶接管およびレーザ溶接管
の製造方法にある。
【0013】(1)硫化物の形態を制御するために添加
されたCaを含有する炭素鋼からなり、その溶接部のボ
ンド近傍のメタルフロー立ち上がり角度θが60°以下
であることを特徴とするレーザ溶接管。
【0014】(2)硫化物の形態を制御するために添加
されたCaを含有する炭素鋼製の板材をオープンパイプ
状に成形し、オープンパイプ状に成形された板材の両端
縁部を予熱した後、板材の両端面の突き合わせ部にレー
ザビームを照射するとともに、予熱温度に応じたアプセ
ット量を付与して製管溶接することを特徴とする上記
(1)に記載のレーザ溶接管の製造方法。
【0015】発明者らは、高周波予熱併用レーザ溶接法
により製造したCa添加鋼製の溶接管の溶接熱影響部で
の靱性低下の原因を解明すべく、詳細に種々調査した。
その結果、次のことを知見し、本発明をなすにいたっ
た。
【0016】すなわち、高周波予熱併用レーザ溶接法に
よった場合には、溶接熱影響部に存在する球状のCa系
介在物は板状に変形することがなく、その周囲の金属が
変形し、その変形が著しい場合に溶接熱影響部の靱性が
低下する。しかし、このCa系介在物の周りの金属変形
度合いを示す指標として、溶接部のボンド近傍のメタル
フローの立ち上がり角度を用いることができ、その立ち
上がり角度を60°以下とする場合には、溶接熱影響部
の靱性低下を防ぎ得ることを知見した。
【0017】
【発明の実施の形態】前述したように、ERW法により
製造したCa添加鋼製の溶接管の溶接部とその近傍の靱
性が低下する原因は、溶接時の熱とスクイズロールによ
る加圧力によって球状のCa系介在物が板状に変形する
ためである。
【0018】これに対し、高周波予熱併用レーザ溶接法
による場合には、溶接すべき板材の両端面が溶融するほ
ど予熱しても、予熱が高周波加熱であるために板材の幅
方向への加熱幅が極めて小さい。このため、軟化温度以
上に昇温されたCa系介在物が溶接面の近傍に存在した
としても、その量は板材幅方向への材料厚さにして溶接
点位置で0.1mm以下程度であり、レーザビームの照
射による溶接時に溶融される。従って、高周波予熱併用
レーザ溶接法においては、ERW法とは異なり、Ca系
介在物がその軟化温度以上になる材料領域は存在しない
ので、Ca系介在物が板状に変形することはない。
【0019】なお、レーザ溶接は、溶融金属の凝固速度
が極めて速い。このため、溶接金属部分のCa系介在物
は、球状のまま母材部分のそれよりも微細となる。
【0020】にも関わらず、高周波予熱併用レーザ溶接
法により製造したCa添加鋼製の溶接管の溶接熱影響部
の靱性が低下する場合のあることは前述した通りであ
る。
【0021】そこで、その靱性低下原因について詳細に
調べたところ、以下のことが判明した。
【0022】すなわち、高周波予熱併用レーザ溶接法で
は、前述したように、オープンパイプ状に成形された板
材の両縁部を予熱する。また、ERW法と同じように、
スクイズロールで溶接部を加圧する(前述の図5参
照)。しかし、この加圧によっても、高周波予熱併用レ
ーザ溶接法では、上記したように、Ca系介在物が軟化
温度以上になる材料領域が存在しないためにCa系介在
物自体が板状に変形することはない。
【0023】その反面、Ca系介在物の周囲に存在する
金属は、予熱により変形抵抗の小さくなった温度領域に
あり、容易に変形可能な状態にある。このため、図1に
示すように、球状のCa系介在物の周囲に存在する金属
は、Ca系介在物を起点に溶接線と平行な方向に変形
し、しわSが発生する。そして、このしわSが著しい場
合にこれを起点として破壊が進み、溶接熱影響部の靱性
が低下することが判明した。
【0024】つまり、高周波予熱併用レーザ溶接法で
は、Ca系介在物の融点の高低に関わらず、スクイズロ
ールによる加圧によって、溶接熱影響部にCa系介在物
を起点とするしわSが発生し、このしわSが溶接熱影響
部の靱性低下原因であることを知見した。
【0025】そこで、本発明者らは、上記しわSの発生
原因であるアプセットによる加圧度合い、換言すれば圧
縮加工度と溶接熱影響部の靱性低下との関係について、
さらに詳細に検討調査した。その結果、次の〜であ
ることを知見し、溶接熱影響部の靱性低下をもたらすこ
とのないしわSの発生程度を示す圧縮加工度を表す指標
としては、溶接部のボンド近傍のメタルフローの立ち上
がり角度を用いるのが妥当であるとの結論を得た。
【0026】アプセットによる加圧で生じる溶接部近
傍の圧縮加工度は、溶接熱影響部の温度分布に応じて変
化する。そして、溶接熱影響部では、溶接部に最も近
く、かつ最も温度の高いボンド近傍の圧縮加工度が最も
高くなる。
【0027】圧縮加工度とメタルフローの立ち上がり
角度との間には、明確な相関関係があり、メタルフロー
の立ち上がり角度を用いて圧縮加工度を表すことができ
る。
【0028】上記の結論に基づき、溶接部のボンド近傍
のメタルフローの立ち上がり角度と溶接熱影響部の靱性
と関係を調べたところ、溶接部のボンド近傍のメタルフ
ローの立ち上がり角度が60°以下である場合に限って
靱性低下のないことが明らかとなった。
【0029】図2は、その調査結果を示す図である。図
2から明らかなように、溶接部のボンド近傍のメタルフ
ローの立ち上がり角度が60°以下の場合には、遷移温
度(vTrs)が−90℃でほぼ一定であるが、溶接部
のボンド近傍のメタルフローの立ち上がり角度が60°
を超えると、遷移温度が急激に高くなっており、靱性低
下の著しいことがわかる。
【0030】なお、調査は、重量%で0.002%のC
aを含有する炭素鋼製の熱延鋼板を素材とし、高周波予
熱併用レーザ溶接法により、外径114.3mm、肉厚
12.7mmの溶接管に製管溶接後、その溶接部とその
近傍に後熱処理を施して得られたAPI規格に規定され
たX−60級のラインパイプを対象に行った。
【0031】この時、上記溶接部のボンド近傍のメタル
フローの立ち上がり角度は、誘導加熱コイルを用いての
熱延鋼板両縁部の予熱温度とスクイズロールによるアプ
セット量を種々変えることで種々変化させた。また、後
熱処理溶接部は、1050℃に加熱後水冷し、次いで6
50℃に加熱後空冷する処理を施した。さらに、溶接熱
影響部の衝撃試験は、得られた溶接管の溶接部から、溶
接熱影響部を中心とするJIS−Z2202に規定され
た幅5mm、厚さ10mm、長さ55mmで、2mmV
ノッチのサブサイズ衝撃試験片を採取し、シャルピー衝
撃機を用いて行った。
【0032】ここで、上記のメタルフロー立ち上がり角
度は、以下に述べる方法によって測定される角度であ
る。すなわち、得られた溶接管から溶接とその近傍を含
む管軸心に直角な断面を有するマクロ試験片を採取して
その断面を研磨し、ピクリン酸などの適宜な試薬を用い
て腐食させてメタルフローが観察できるようエッチング
する。そして、図3に示すように、肉厚方向(溶接線方
向)に対して垂直な線L1 を基準線とし、この基準線L
1 に直交する線L2 とボンド近傍のメタルフロー線L3
とのなす角度θを測定して得られる値がメタルフローの
立ち上がり角度である。
【0033】また、メタルフローの立ち上がり角度θ
を、溶接部のボンド近傍の角度とするのは、次の理由に
よる。すなわち、前述したように、溶接熱影響部のメタ
ルフローのうち、温度の最も高いボンド近傍のメタルフ
ローが最も大きくなり、この部分の上記しわS発生が大
きく、ここでの靱性低下が最も顕著になるためである。
【0034】このように、その溶接部のボンド近傍のメ
タルフローの立ち上がり角度θを60°以下とした本発
明のCaを含有する炭素鋼製のレーザ溶接管は、板状に
変形せずに球状のまま存在するCa系介在物の周囲の金
属自体のしわ変形が抑制されているので、溶接熱影響部
の靱性が低下することがなく、いわゆる溶接部の靱性に
優れている。
【0035】上記本発明のレーザ溶接管は、次に述べる
ように構成された製管装置を用いることで、容易に製造
することができる。
【0036】図4は、その製管装置の構成例の一例を示
す模式的斜視図である。図4において、符号1はフォー
カスヘッド、2はスクイズロール、3は誘導加熱コイ
ル、4は成形ロール群、5はルーパー、6はアンコイ
ラ、7はシームアニーラ、8は冷却水供給ヘッド、9は
サイザ、10は走行切断機である。
【0037】このように構成された製管装置では、アン
コイラ6により巻戻され、ルーパー5を介して供給され
る板材Wが成形ロール群4により、オープンパイプOP
状に連続的に曲成される。次いで、オープンパイプOP
状に曲成された板材Wは、高周波発振器3aに接続され
た誘導加熱コイル3を通過することで、その両縁部が所
定の温度に予熱された後、スクイズロール2、2間に通
される。
【0038】このスクイズロール2、2間を通過する
際、オープンパイプOP状に曲成された板材Wの両縁面
が相互に接触する部分には、その上方に設けられたレー
ザ発振器1aにビーム伝送管1bを介して接続されてい
るフォーカスヘッド1からレーザビームが照射される。
また、この時、所定のアプセット量が付与できるように
その間隔が設定されたスクイズロール2、2により、そ
の溶接部に側圧が加えれれ、衝合溶接される。
【0039】そして、溶接が完了した溶接管Pは、その
溶接部とその近傍にシームアニーラ7と冷却水供給ヘッ
ド8とを用いた適宜な後熱処理が施されて後、サイザ9
を通して所望の外径に仕上げられ、走行切断機10で所
定の長さに順次切断されて製品とされる。
【0040】ここで、得るべき製品の溶接部のボンド近
傍のメタルフローの立ち上がり角度θを60°以下にす
るには、オープンパイプ状に成形された板材の両縁部の
予熱温度に応じてスクイズロールでのアプセット量を変
化させる必要のあることは、前述した通りである。しか
し、板材両縁部の予熱温度が同じでも、用いる板材の成
分組成や肉厚が異なると、その変形能が異なる。従っ
て、付与すべきアプセット量は、用いる板材の成分組
成、板厚および予熱温度毎に予め実験などにより求めて
おき、その求められた値を付与すればよい。
【0041】また、本発明のレーザ溶接管の素材鋼は、
硫化物の形態を制御する目的で添加されたCaを含有す
る炭素鋼であればよく、その他の成分組成は何ら限定さ
れない。しかし、0.0005重量%未満のCa含有量
では硫化物の形態制御(球状化)効果が得られない。逆
に、0.005重量%を超えてCaを含有させると、C
a系介在物が多くなりすぎて母材部の耐HIC性や耐S
CC性が劣化する。従って、素材鋼としては、Ca含有
量が0.0005〜0.005重量%である炭素鋼を用
いるのが望ましい。
【0042】
【実施例】前述の図4に示した製管装置を用い、表1に
示す3種類のCa添加鋼製の熱延鋼板を素材とし、AP
I規格に規定されるX−70級の高強度ラインパイプ
を、ERW法とレーザ単独溶接法および高周波予熱併用
レーザ溶接法により、種々条件を変えてそれぞれ製管溶
接して溶接管を製造した。
【0043】
【表1】
【0044】この時、図4に示す製管装置を構成する機
器のうち、ERW法ではフォーカスヘッド1を、レーザ
単独溶接法では誘導加熱コイルを、それぞれ用いなかっ
た。また、製造した溶接管の寸法、並びに用いた高周波
加熱装置とレーザ溶接装置の仕様は、表2に示す通りで
ある。さらに、いずれの溶接方法によった場合も、製管
溶接後の溶接管の溶接部とその近傍に、靱性改善を図る
目的で、1050℃に加熱後水冷した後、650℃に加
熱後空冷する後熱処理を施した。
【0045】
【表2】
【0046】得られた各溶接管から、2mmVノッチを
母材部とボンド部とに形成した2種類の前述したと同様
のサブサイズ衝撃試験片と、メタルフロー角度調査用の
マクロ試験片を切り出し採取した。
【0047】そして、衝撃試験片については、シャルピ
ー衝撃試験を行い、母材部とボンド部の遷移温度(vT
rs(℃))をそれぞれ求め、次の基準に従って評価し
た。すなわち、母材部とボンド部との遷移温度を比較
し、その差△vTrsが、「母材の遷移温度>ボンド部
の遷移温度」である場合を良(○)、「母材の遷移温度
<ボンド部の遷移温度<(母材の遷移温度+10℃)」
である場合をやや不良(△)、「(母材の遷移温度+1
0℃)<ボンド部の遷移温度」である場合を不良(×)
とした。
【0048】また、メタルフロー角度調査用のマクロ試
験片については、その断面を研磨した後ピクリン酸を用
いて腐食させ、そのメタルフローを目視観察して測定し
た。この時、メタルフローの立ち上がり角度は、高周波
予熱併用レーザ溶接法とレーザ溶接単独法で製造したも
のについては、ボンド近傍のメタルフローの立ち上がり
角度が最も大きい部分の角度を、ERW法で製造したも
のについては溶接熱影響部におけるメタルフローの立ち
上がり角度が最も大きい部分の角度を、それぞれ測定し
た。
【0049】これらの結果を、各製造条件と合わせて、
表3に示した。
【0050】
【表3】
【0051】表3に示す結果から明らかなように、本発
明の高周波予熱併用レーザ溶接法により製造した、ボン
ド近傍のメタルフローの立ち上がり角度が、いずれも6
0°以下の50°であるレーザ溶接管(No. 1〜3)
は、Ca含有量の如何にかかわらず、ボンド部の遷移温
度がいずれも母材部の遷移温度よりも低く、溶接熱影響
部の靱性低下は全く認められなかった。また、その予熱
温度とアプセット量を調節することにより、ボンド近傍
のメタルフローの立ち上がり角度を45°以下により小
さくした本発明のレーザ溶接管(No. 12およびNo. 1
3)についても、上記と同様に、 溶接熱影響部の靱性
低下は全く認められなかった。
【0052】これに対し、高周波予熱併用レーザ溶接法
により製造したものでも、その予熱温度と付与するアプ
セット量が不適切で、ボンド近傍のメタルフローの立ち
上がり角度が65°と60°を超えたレーザ溶接管(N
o. 8〜10およびNo. 14)は、ボンド部の遷移温度
がいずれも母材部の遷移温度よりも高く、溶接熱影響部
の靱性低下が認められた。
【0053】また、ERW法により製造した溶接管(N
o. 4〜7)は、ボンド近傍のメタルフローの立ち上が
り角度の如何にかかわらず、ボンド部の遷移温度がいず
れも母材部の遷移温度よりも高く、溶接熱影響部の靱性
低下が認められた。特に、Ca含有量の多いC鋼を用い
た溶接管の溶接部の靱性低下が著しかった。これは、E
RW法では、前述したように、球状のCa系介在物が板
状に変形し、Ca含有量の増加に伴って球状のCa系介
在物量が増え、これらの多くが板状に変形するためであ
る。
【0054】一方、レーザ単独溶接法によって製造した
レーザ溶接管(No. 11)は、ボンド近傍のメタルフロ
ーの立ち上がり角度が15°と極めて小さく、ボンド部
の遷移温度が母材部の遷移温度よりも低く、溶接熱影響
部の靱性低下は認められた。これは、レーザ単独溶接法
では、溶接熱影響部がほとんどなく、球状のまま存在す
るCa系介在物の周囲の金属のしわ変形が生じないか、
仮に生じても極めて軽微なためである。
【0055】なお、溶接部の耐食性を調べるため、各溶
接管の母材部と溶接部とからHIC試験片を採取し、N
ACE規格のTM−02−84に規定された方法に基づ
き、NACE浴(0.5%酢酸+5%食塩水、25℃、
1気圧H2 S飽和)中にHIC試験片を96Hr浸漬し
て調べた。その結果、いずれの試験片も、NACE規格
で規定された割れ長さ率(CLR)≦15%を満たして
いた。
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、溶接ボンド部での靱性
低下がなく、溶接部の靱性と耐食性に優れたCa添加鋼
製のレーザ溶接管を確実に提供することができる。ま
た、本発明の方法によれば、上記のレーザ溶接管を従来
の製管装置を用いて高能率に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ca系介在物周りの金属の変形態様を示す模式
図である。
【図2】溶接ボンド近傍のメタルフロー立ち上がり角度
と溶接熱影響部の靱性との関係を示す図である。
【図3】メタルフロー立ち上がり角度を説明するための
図である。
【図4】高周波予熱併用レーザ溶接法を実施するための
製管装置の全体構成の一例を示す模式的斜視図である。
【図5】高周波予熱併用レーザ溶接法を説明するための
模式的斜視図である。
【符号の説明】
1:レーザビームのフォーカスヘッド、 2:スクイズロール、 3:給電子または誘導加熱コイル、 4:成形ロール群、 5:ルーパー、 6:アンコイラ、 7:シームアニーラ、 8:冷却水供給ヘッド、 9:サイザ、 10:走行切断機、 OP:オープンパイプ、 P:溶接管、 W:素材の板材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F16L 9/16 F16L 9/16

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】硫化物の形態を制御するために添加された
    Caを含有する炭素鋼からなり、その溶接部のボンド近
    傍のメタルフロー立ち上がり角度θが60°以下である
    ことを特徴とするレーザ溶接管。
  2. 【請求項2】硫化物の形態を制御するために添加された
    Caを含有する炭素鋼製の板材をオープンパイプ状に成
    形し、オープンパイプ状に成形された板材の両端縁部を
    予熱した後、板材の両端面の突き合わせ部にレーザビー
    ムを照射するとともに、予熱温度に応じたアプセット量
    を付与して製管溶接することを特徴とする請求項1に記
    載のレーザ溶接管の製造方法。
JP8161696A 1996-06-21 1996-06-21 レーザ溶接管およびその製造方法 Pending JPH106055A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009285709A (ja) * 2008-05-30 2009-12-10 Jfe Steel Corp 耐座屈性能に優れる電縫管の製造装置

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JP2009285709A (ja) * 2008-05-30 2009-12-10 Jfe Steel Corp 耐座屈性能に優れる電縫管の製造装置

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