JPH1060456A - 重質油の水素化処理方法および水素化処理装置 - Google Patents

重質油の水素化処理方法および水素化処理装置

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JPH1060456A
JPH1060456A JP9107422A JP10742297A JPH1060456A JP H1060456 A JPH1060456 A JP H1060456A JP 9107422 A JP9107422 A JP 9107422A JP 10742297 A JP10742297 A JP 10742297A JP H1060456 A JPH1060456 A JP H1060456A
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JP
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oil
catalyst
hydrotreating
heavy oil
reaction tower
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JP9107422A
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Hidehiro Azuma
英 博 東
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JGC Catalysts and Chemicals Ltd
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Catalysts and Chemicals Industries Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】(a) 原料油としての重質油を、その水素化
処理触媒が充填された固定床式反応塔に導入して水素化
処理する工程と、(b) 工程で水素化された重質油及び新
規原料油を、その水素化処理触媒が充填された懸濁式反
応塔に導入して水素化処理する工程を備えてなる重質油
の水素化処理方法。 【効果】本発明の方法によれば、(a) 重質油を水素化処
理触媒が充填された固定床式反応塔に導入して水素化処
理し、次いで(b) 前記固定床式反応塔で水素化処理され
た重質油とともに新規原料油を、懸濁床式反応塔に導入
してさらに水素化処理できるため、重質油の水素化処理
の運転期間が長期化でき、かつ水素化処理効率を向上さ
せることが可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、不純物としてバナジウム
やニッケルなどの金属、ならびに硫黄化合物、窒素化合
物などを含有する重質油の水素化処理方法および水素化
処理装置に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】従来、不純物としてバナジウムや
ニッケルなどの金属、ならびに硫黄化合物、窒素化合物
などを含有する重質油の水素化処理方法として、(イ)
固定床、(ロ)懸濁床、または(ハ)最初に懸濁床、次
いで固定床で処理する方法が提案されている。
【0003】しかしながら、これらの方法は次のような
問題点を含んでいる。(イ)固定床で重質油を水素化処理する方法の問題点 重質油を水素化処理する従来方法の主流は、固定床で重
質油を水素化処理する方法である。このような方法とし
ては、例えば、水素化脱金属触媒が充填された第1段目
を構成する固定床式反応塔に重質油を導入して水素化処
理し、次いでこの重質油を、水素化脱硫触媒が充填され
た第2段目を構成する固定床式反応塔で水素化処理する
方法が挙げられる。
【0004】しかしながら、固定床式反応塔で重質油中
の金属や硫黄化合物、窒素化合物の除去を高度に行う
と、反応塔の入口側部分では脱金属された金属が硫化物
となって触媒上へ析出することによる触媒の失活が起こ
り、反応塔の出口側部分では反応熱のため反応塔の出口
側部分が高温となり、この部分でアスファルテンが熱分
解してコーク質となり、このコーク質が、固化炭素化合
物、いわゆるドライスラッジとなって触媒上に析出する
ため触媒が失活することがあった。また、同時に反応塔
下流配管にドライスラッジが析出することがあった。
【0005】このため、固定床で重質油を水素化処理す
る方法では、水素化処理の運転期間を長くすることが難
しいといった問題点があった。さらに、処理能力を高め
るため原料油の導入速度(流速)を早くすると、反応塔
内外間の差圧が上昇して原料油の導入速度が制限される
ため、処理能力を高めるのに限界があった。また、固定
床では、スラリー油(slurry Oil:decantation oil と
も称される。流動接触分解装置の運転で副生するスラリ
ー状の残渣油でFCC触媒の微粉が少量含有されてい
る。)のような狹雑物を含む原料油は、触媒床の閉塞が
生じせしめ、これが反応塔内外間の差圧を上昇させて処
理能力を低下させるため、処理することができなかっ
た。(ロ)懸濁床で重質油を水素化処理する方法の問題点 懸濁床で重質油を水素化処理する方法としては、H−O
ilプロセスなどが知られている。
【0006】懸濁床だけで重質油の水素化処理を行う
と、反応温度は均一に保持できるが、原料油と触媒との
接触効率が悪く、触媒の利用効率が悪いため、生成油中
の硫黄含量や窒素含量を低いレベルにするためには反応
温度を高くしなければならない。そのため触媒によって
触媒される核水添反応よりも熱分解反応が進み、生成油
の品質が劣化するという問題点があった。(ハ)懸濁床+固定床で重質油を水素化処理する方法の
問題点 この方法は、最初に懸濁床で重質油を水素化処理する工
程、次いでこの重質油を固定床で水素化処理する工程を
含む方法であり、金属の触媒上への析出による触媒の失
活を防止して、水素化処理の運転期間を長くすることを
狙いとしている。
【0007】この方法では、懸濁床での水素化処理で熱
分解反応が進行するため、アスファルテンがドライスラ
ッジとなって後段の固定床の触媒上に析出する。その結
果、触媒が失活するばかりでなく、反応塔内外間の差圧
が上昇して処理能力が著しく低下するという問題点があ
った。したがって、この方法では水素化処理の運転期間
を長くすることが困難であった。さらに、上述した固定
床での水素化処理と同様に、原料油の流速に制限がある
ため処理能力を挙げることが困難であり、かつ狭雑物を
含む原料油の処理ができない等の問題もあった。
【0008】上述した重質油を水素化処理する従来の方
法では、いずれも品質の良い生成油を得るために、運転
を10ヶ月程度毎に止め、用いた触媒を新しい触媒と交
換する必要がある。この交換に要する日数は、商用装置
では10日〜30日に及んでしまう。
【0009】本発明者は、重質油中に含まれるバナジウ
ムやニッケルなどの金属を含有する化合物、硫黄化合
物、窒素化合物などの不純物は、水素化処理時の水素に
対する反応性が不純物が含有されているレジン、アスフ
ァルテンなどの各留分ごとに異なることに着目し、触媒
の失活は、主として固定床式反応塔で水素化処理時に水
素と反応しやすいレジンなどに含有されている不純物と
ともに水素と反応しにくいアスファルテンなどに含有さ
れている不純物を無理して高度に除去しようとすると、
この水素と反応しにくい不純物を含有する留分がコーク
質となって触媒上に析出し、水素化処理の長期運転が難
しくなることを見出した。
【0010】本発明者等は、このような知見に基づき、
固定床式反応塔での上述のようなコーク質の析出を有効
に防止でき、さらには原料油の水素化処理効率を最大限
に向上させ得る重質油の水素化処理方法およびその装置
を開発すべく鋭意研究・検討した結果、本発明を開発し
た。
【0011】
【発明の目的】本発明は、重質油の水素化処理におい
て、水素化処理の運転期間を長くでき、かつ水素化処理
効率を著しく向上させることができるような重質油の新
規水素化処理方法および水素化処理装置を提供すること
を目的とする。
【0012】
【発明の概要】本発明に係る水素化処理方法は、(a)
原料油としての重質油を、その水素化処理触媒が充填さ
れた固定床式反応塔に導入して水素化処理する工程と、
(b)(a)工程で水素化された重質油及び新規原料油
を、その水素化処理触媒が充填された懸濁式反応塔に導
入して水素化処理する工程を含むことを特徴とする。
【0013】本発明に係る水素化処理方法では、(a)
工程で水素化された重質油に対する新規原料油の量が、
0.5〜50vol%であることが望ましい。また、上
記新規原料油は、バナジウムおよびニッケル(V+N
i)の含有量が50ppm以下であることが望ましい。
【0014】本発明に係る水素化処理装置は、重質油を
水素化処理するための水素化処理触媒が充填された少な
くとも1つの固定床式反応塔、前記固定床式反応塔で水
素化された重質油を水素化処理するための水素化処理触
媒が充填された懸濁式反応塔、および前記懸濁式反応塔
に、新規原料油を供給するための原料油サイド供給手段
を備えることを特徴とする。
【0015】
【発明の具体的説明】本発明に係る装置を用いた重質油
の水素化処理方法は、(a)重質油を水素化処理触媒が
充填された固定床式反応塔に導入して水素化処理する工
程と、(b)前記固定床式反応塔で水素化処理された重
質油及び新規原料油を、水素化処理触媒が懸濁状態で充
填された懸濁床式反応塔に導入して水素化処理する工程
と、からなっている。
【0016】本発明の方法において、工程(a)で原料
油として用いられる重質油は、好ましくは、沸点が34
3℃より高い留分を少なくとも80%含有する。特に、
バナジウムとニッケルとの含有量が合計で30ppm以
上である炭化水素油を使用することが好適である。この
ような炭化水素油としては、減圧軽油、原油、常圧蒸留
残油、減圧蒸留残油などが挙げられる。
【0017】上記(a)工程では、原料重質油に含まれ
るバナジウムおよびニッケル(V+Ni)を100重量
%とした場合、水素化処理された重質油中のバナジウム
およびニッケル(V+Ni)の脱メタル率が80重量%
以下、好ましくは5〜80重量%、さらに好ましくは3
0〜70重量%となるような反応条件下で重質油を水素
化処理することが望ましい。
【0018】上記脱メタル率が80重量%を越えるよう
な苛酷な条件下で(a)工程を行うと、重質油中に含ま
れているアスファルテンが熱分解してアスファルテン中
の縮合芳香族環と結合していた側鎖が切れ、このため、
アスファルテンがミセル状態を維持することができなく
なり、ラジカル基を持つ縮合芳香族環のような状態で分
解されるため、ドライスラッジが発生することがある。
また、上記アスファルテンが熱分解してコーク質を生
じ、このコーク質が触媒上に析出して触媒を失活させて
長期間の水素化処理運転が不可能になることがある。
【0019】上記(a)工程で用いられる水素化処理触
媒は、水素化活性金属成分と無機酸化物担体からなる触
媒であって、下記性状を有することが望ましい。 範 囲 好ましい範囲 細孔容積(P.V ) 0.40ml/g以上 0.50〜1.00ml/g 平均細孔直径(P.D ) 90Å以上 90〜2000Å 比表面積(S.A ) 120 m2 /g以上 130 〜350 m2 /g 触媒粒子の平均直径(Dia ) 1/32インチ以上 1/22〜1/4インチ 水素化活性金属成分としては、通常の水素化処理触媒に
用いられる周期律表VIA族、VIII族、V族などの金属成
分、例えばコバルト、ニッケル、モリブデン、タングス
テンなどの金属成分が挙げられる。
【0020】これらの水素化活性金属成分は、通常の
量、好ましくは3〜30重量%の範囲で無機酸化物担体
に担持させて用いられる。また、無機酸化物担体として
は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナなどのような
通常の水素化処理触媒の担体として用いられる無機酸化
物担体が挙げられる。
【0021】上記(a)工程における重質油の水素化処
理は、水素との反応性が高い高反応性不純物を除去する
ために、原料重質油に含まれるバナジウムおよびニッケ
ル(V+Ni)を100重量%とした場合、水素化処理
された重質油中のバナジウムおよびニッケル(V+N
i)の脱メタル率が80重量%以下となるように、下記
条件下で行うことが望ましい。 好ましい範囲 より好ましい範囲 反応温度 (℃) 320〜 410 340〜 390 反応水素圧力 (kg/cm2 ) 50〜 250 100〜 200 液空間速度 (hr-1) 0.1〜 2.0 0.3〜 1.5 水素/油比 (nM3 /kl) 300〜1200 400〜1000 水素化処理条件が上記範囲を外れると、本発明の目的と
する所望の効果が得られないことがある。
【0022】水素化処理条件が上記下限に満たない場
合、所望のレベルで反応が進まず、(b)工程において
過酷な条件で重質油の水素化処理を行わなければなら
ず、このため本発明の目的とする効果が得られないこと
がある。逆に、上記上限を越えると、水素化処理の際に
反応が進み過ぎ、(a)工程で触媒のコーク失活が大き
く促進され、触媒寿命が短くなることがある。
【0023】本発明の方法では、上記のような(a)工
程は、1塔の固定床式反応塔を用いて行うことができる
が、2塔以上の固定床式反応塔を用いて行うことが好ま
しい。
【0024】次いで、(a)工程で水素化処理された重
質油を、新規原料油と混合し、水素化処理触媒が充填さ
れた懸濁床式反応塔に導入して水素化処理する工程、す
なわち(b)工程について説明する。
【0025】(b)工程で用いられる懸濁床式反応塔
は、通常の懸濁床式反応塔以外にも移動床式反応塔、沸
騰床式反応塔をも包含するものとする。本発明の方法に
おいて、(b)工程では、(a)工程で水素化処理され
た重質油中の水素と反応しにくい留分、例えばアスファ
ルテンなどに不純物として含まれている金属、硫黄化合
物および窒素化合物を高度に除去することが望ましい。
【0026】すなわち、本発明の方法における(b)工
程では、前記(a)工程で水素化処理された重質油より
も、重質油中の金属成分、硫黄成分および窒素成分が少
なくなるように、(a)工程で水素化処理された重質油
をさらに水素化処理することが望ましい。
【0027】この(b)工程では、(a)工程で水素化
処理された重質油をさらに水素化処理して重質油中に含
まれる金属、硫黄および窒素を高度に除去して触媒が失
活しても、懸濁床の運転を止めずに、触媒の失活の程度
に応じて失活した触媒を懸濁床中から取出したり、ある
いは懸濁床式反応塔に新しい触媒を補給したりすること
が可能であるために、水素化処理の長期連続運転が可能
である。
【0028】すなわち、本発明の方法における(b)工
程では、重質油の水素化処理を所定期間行った後、触媒
活性を一定に維持するため、懸濁床式反応塔から重質油
の水素化処理に用いた水素化処理触媒の一部を取り出
し、この取り出し分に相当する量の新しい触媒が懸濁床
式反応塔に補給される。
【0029】最終的に高品位の生成油を得るためには、
重質油中に含まれる水素と反応しにくい不純物も除去す
る必要がある。しかしながら、従来の懸濁床のみで重質
油を水素化処理する方法では、過酷な条件下で水素と反
応しやすい不純物と水素と反応しにくい不純物とが同時
に除去されており、このため、金属の触媒上への析出が
多く、また水素と反応しやすい不純物を含む留分が過分
解されて触媒にコーク失活をおこさせていた。
【0030】これに対して、本発明における装置を用い
た方法では、(a)工程では主として重質油の水素化処
理時に水素と反応しやすい不純物を除去することがで
き、この場合、(b)工程で、懸濁床式反応塔中の触媒
が、主として重質油の水素化処理時に水素と反応しにく
い不純物の除去に利用されうる。この場合のように懸濁
床式反応塔中の触媒が上記のような水素と反応しにくい
不純物の除去に効率的に利用されると、重質油の核水添
反応が促進される。
【0031】本発明方法では、このようにして重質油の
核水添反応を促進して生成油の品質劣化を防止すること
ができる。また、本発明の方法では、(b)工程におい
て、(a)工程で水素との反応性が高い高反応性不純物
を除去した重質油と一緒に、新規原料油を懸濁床式反応
塔に供給して水素化処理している。
【0032】このような新規原料油としては、例えば、
減圧軽油、脱レキ油、原油、常圧残渣油、減圧残渣油な
どの炭化水素油を例示することができる。また、本発明
の方法では、新規原料油として、スラリー油のような狹
雑物を含む原料油を懸濁床式反応塔に導入することも可
能である。
【0033】このような新規原料油は、バナジウムおよ
びニッケル(V+Ni)の含有量が50ppm以下、好
ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以
下であることが望ましい。
【0034】本発明の方法では、(a)工程で水素化処
理された重質油に対する新規原料油の割合は、0.5〜
50vol%、好ましくは1〜10vol%の範囲であ
ることが望ましい。
【0035】さらに、本発明の方法を用いることによ
り、(b)工程において水素化分解を主目的に水素化処
理を行うことにより、沸点の低い生成油を得ることも可
能である。
【0036】上記(b)工程で用いられる水素化処理触
媒は、水素化活性金属成分と無機酸化物担体からなる触
媒であって、該触媒の性状が次の範囲にある高活性な触
媒であることが望ましい。 範 囲 好ましい範囲 細孔容積(P.V ) 0.5 ml/g以上 0.55〜1.10ml/g 平均細孔直径(P.D ) 70Å以上 80〜500 Å 比表面積(S.A ) 120 m2 /g以上 150 〜400 m2 /g 触媒粒子の平均直径(Dia ) 1/8インチ以下 20μm〜1/16インチ 上記(b)工程では、上記(a)工程で用いた触媒と同
様の組成の触媒を用いることができる。
【0037】上記(b)工程で水素化分解を主目的に行
う水素化処理の場合には、無機酸化物担体として、シリ
カ−アルミナやY−型ゼオライト(USYを含む)、モ
ルデナイト、ZSM−5などの固体酸を有するものが望
ましい。また、触媒粒子の平均直径は、約20〜200
μmの粉末粒子から1/16インチ以下の成型物が好適
に用いられる。
【0038】また、重質油原料の高度な水素化処理を行
う上で上記(b)工程での水素化処理は、次の条件で行
うことが望ましい。 好ましい範囲 より好ましい範囲 反応温度 (℃) 350〜 450 380〜 430 反応水素圧力 (kg/cm2 ) 50〜 250 100〜 240 液空間速度 (hr-1) 0.2〜10.0 0.25〜8.0 水素/油比 (nM3 /kl) 500〜3000 800〜2500 触媒/油比 (vol/vol) 1/10〜5/1 1/8〜4/1 水素化処理条件が上記範囲を外れると、本発明の目的と
する所望の効果が得られないことがある。
【0039】水素化処理条件が上記下限に満たない場
合、反応性に富まない不純物の除去が所望のレベルに到
達しないことがあり、逆に、上記上限を越えると、重質
油の熱分解反応が優先的に進行するために生成油の品質
が劣化することがある。 本発明では、上記のような
(b)工程は、2塔以上の懸濁床式反応塔を用いて行っ
てもよい。
【0040】次いで、本発明に係る重質油の水素化処理
装置の構成を、添付図1及び5を参照して、具体的に説
明する。図1は、本発明に係る重質油の水素化処理装置
の好ましい1態様を示しており、本態様の水素化処理装
置は、重質油の水素化処理触媒が充填された固定床式反
応塔1〜3、および固定床式反応塔1〜3で水素化処理
された重質油を水素化処理するための水素化処理触媒が
充填された懸濁式反応塔4を備えている。
【0041】本態様の水素化処理装置では、重質油の水
素化処理のために、3つの固定床式反応塔1〜3は、温
和は条件下で重質油を水素化処理して水素との反応性が
高い高反応性不純物を除去する水素化処理触媒が充填さ
れており、一つの懸濁床式反応塔4には、固定床式反応
塔1〜3で水素化処理された重質油を水素化処理するた
めに、重質油中の水素との反応性が低い低反応性不純物
を除去する水素化処理触媒が充填される。
【0042】固定床式反応塔1〜3は、第1の固定床式
反応塔1の上部に重質油と水素の供給手段としての供給
パイプ5と、最後の固定床式反応塔3の下部に水素化処
理された重質油を排出するための排出手段としての排出
パイプ7とが設けられている。排出パイプ7は水素化処
理された重質油の試料を採取して分析し、これにより、
水素に対する高反応性不純物だけを除去する反応条件を
設定するための試料の取出口V−3を備えている。な
お、複数の固定床式反応塔1,2は、その下部が連結パ
イプ6,8を介して次の反応塔2,3の上部に連結され
ている。また、反応塔1〜3の上部には、必要に応じて
水素供給手段(不図示)が設けられていてもよい。
【0043】懸濁床式反応塔4は、その底部に排出パイ
プ7が接続されるとともに、上部に生成油を含む反応生
成物の排出パイプ10を備えている。また、この反応塔
4は、その底部と上部とを連結パイプ11で連結されて
おり、この連結パイプ11の途中には高圧ポンプ13が
配設されている。高圧ポンプ13は、反応塔4内の重質
油を下方から上方に循環させて触媒を懸濁状態に保って
いる。懸濁床式反応塔4は、使われた触媒の一部を抜き
出す触媒抜出口V−2と、抜き出された触媒と同一量の
新しい触媒を供給するための触媒供給口V−1を備えて
いる。これら触媒抜出口V−2と、触媒供給口V−1と
は、各々触媒抜出し装置および触媒供給装置(各々不図
示)に接続される。
【0044】さらに、懸濁床式反応塔4は、固定床式反
応塔1〜3で水素化処理された重質油と一緒に、スラリ
ー油や減圧軽油などのバナジウムおよびニッケル(V+
Ni)の含有量が50ppm以下の原料油等の新規原料
油を該懸濁床式反応塔に供給して水素化処理するための
原料油サイド供給手段15を備えている。
【0045】このような本態様の水素化処理装置では、
上記した方法における工程(a)は、固定床式反応塔1
〜3で実施することができ、また、工程(b)は、懸濁
式反応塔4で実施することができる。
【0046】以上説明した本態様の水素化処理装置によ
れば、原料油サイド供給手段15を介して、新たな原料
油を固定床式反応塔1〜3で水素化処理された重質油と
混合して、懸濁床式反応塔4で水素化処理することがで
きるため、処理能力を高めることができる。このような
構成の水素化処理装置は、特に、スラリー油のような狹
雑物を含む原料油の処理が可能であるという利点を有す
る。また、スラリー油や減圧軽油などの新たな原料油と
して、バナジウムやニッケルなどの金属不純物が少ない
原料油を供給すれば、触媒の劣化が少なく、触媒は核水
添反応に効率的に利用されるため、固定床式反応塔で水
素化処理された重質油と混合した場合でも生成油の品質
劣化はない。
【0047】なお、本発明に係る重質油の水素化処理装
置は、この態様に限定されることはなく、例えば、複数
の懸濁床式反応塔を設けてもよく、この場合、最後の固
定床式反応塔から排出される水素化処理された重油は、
接続パイプを介して最初の懸濁床式反応塔の底部に供給
され、かつ各懸濁床式反応塔からの中間生成物又は最終
生成物の一部は、反応塔内で重油を循環させて触媒を懸
濁状態に維持する高圧ポンプを設けられていてもよい接
続パイプを介して、その反応塔の底部に循環させてもよ
い。この場合、各反応塔は、気液分離器および連結パイ
プを介して次の反応塔の底部に連結してもよく、このよ
うにして生成油の一部が水素化処理の対象油として、水
素と共に反応塔の底部に供給されることとなる。
【0048】また、反応生成物の排出パイプ10には、
生成油とガス成分とを分離する気液分離器(不図示)を
設けてもよい。この気液分離器では、懸濁床式反応塔4
で水素化処理して得られた反応生成物の生成油と、硫化
水素や未反応の水素などのガス成分を分離し、硫化水素
などを除去した後、未反応の水素は、さらに循環して反
応に使用される。また、気液分離器で分離された生成油
の一部は、反応塔4内の触媒を懸濁状態に保つため高圧
ポンプ13で反応塔の底部に循環させるようにしてもよ
い。
【0049】次に図5に従って、本願発明の水素化処理
装置の好ましい他の態様を説明する。図5において、原
料供給パイプ20から供給される重質油は、水素と共に
加熱炉Hにて加熱された後、水素化処理触媒が充填され
た第1の固定床式反応塔21の上部に供給される。第1
の固定床式反応塔21で水素化処理された重質油は、連
結パイプ22を介して第2の固定床式反応塔23の上部
に導入されてさらに水素化処理され、更に連結パイプ2
4を介して第3の固定床式反応塔25、連結パイプ26
を介して第4の固定床式反応塔27に供給され、徐々に
水素化処理される。そして、第4の固定床式反応塔27
の下部から、上述の工程(a)における水素化処理が施
された重質油が、排出パイプ28を介して排出される。
第4の固定床式反応塔27下部の排出パイプ28は、必
要に応じて配設されるFlashing装置S1、および連結パ
イプ29を介して、懸濁床式反応塔30の底部に連結さ
れており、このようにして第4の固定床式反応塔27か
ら排出された重質油は、懸濁床式反応塔30の底部に導
入される。
【0050】排出パイプ28の途中には、第4の固定床
式反応塔27から排出された重質油の試料を採取するた
めの試料取出口V−3が設けられている。この取出口V
−3から採取された試料は(例えばそのバナジウムおよ
びニッケル(V+Ni)の脱メタル率に関して)分析さ
れ、得られたデータに基づいて水素に対する高反応性不
純物だけを除去するように(例えば(V+Ni)の脱メ
タル率が80重量%以下となるように)反応条件、具体
的には、反応温度、反応水素圧力、液空間速度および水
素/油比などを上述の値の範囲内で調節する。
【0051】連結パイプ29は、Flashing装置S1の下
流において、新規原料油供給パイプ31が接続されてい
る。新規原料油供給パイプ31からは、減圧軽油やスラ
リー油などの新しい原料油が供給される。
【0052】懸濁床式反応塔30の底部には、触媒出入
口V−1が設けられており、この触媒出入口V−1は、
使用された触媒の一部を抜き出す取出し口であると同時
に、抜出された触媒と同一量の新しい触媒を供給するこ
とのできる触媒の導入口でもある。
【0053】このような懸濁床式反応塔30は、水素化
処理触媒が懸濁状態で充填されており、水素化反応の反
応熱により反応温度が維持されるようにした断熱型反応
塔である。懸濁床式反応塔30で水素化処理された反応
生成物は、気液分離器S2に導かれ、生成油とガス成分
とに分離される。気液分離器S2で分離された生成油の
一部は、反応塔30内の触媒を懸濁状態に保つために、
循環パイプ33およびその途中に配設された高圧ポンプ
Pで循環させ、残りは生成油として生成油排出パイプ3
4から抜出される。また、気液分離器S2で分離され
た、他のガス成分を含む未反応の水素は、アミン スク
ラッパーAに導かれ、そこで他のガス成分、例えば硫化
水素などを除去して精製される。精製された水素は、途
中に循環ポンプRPを設けられた主循環パイプ35およ
びこれに連結する原料供給パイプ20を介して加熱炉H
に循環される他、循環ポンプRPの下流側で各々分岐す
る分岐循環パイプ36,37、38および39と、これ
らに各々連結する連結パイプ22,24,26および2
9とを介して、各反応塔21,23,25,27および
30に循環される。
【0054】以上説明した本態様の水素化処理装置で
は、上記した方法における工程(a)は、固定床式反応
塔21、23、25および27で実施することができ、
また、工程(b)は、懸濁式反応塔30で実施すること
ができる。
【0055】以下に実施例を示し、本発明の装置の稼働
状態および結果を具体的に説明する。
【0056】
【参考例1】表3,4に示す常圧残渣油を原料として用
い、懸濁式反応塔4に接続される原料油サイド供給手段
11がない以外は図1に示す通りの反応プロセスで長期
間にわたる高度水素化処理反応試験を実施した。
【0057】さらに詳しく説明すると、3個の固定床式
反応塔1〜3に表1,2で示される性状を有する(a)
工程用触媒(HDM−A)を密充填方法で充填し、
(b)工程を実施するために触媒の出し入れが可能な懸
濁床式反応塔4を設置した。この懸濁床式反応塔4で
は、(b)工程で水素化処理した重質油の1部を高圧ポ
ンプ13でリサイクルし、懸濁床式反応塔4内の触媒が
懸濁状態になるように重質油の流量を調節した。
【0058】(b)工程用触媒として表1,2で示す触
媒(HDS−A)を充填した。未処理の直留軽油を用い
て触媒の硫化を290℃で48時間行い、次いで原料油
に切換えてこの原料油の水素化処理を行った。
【0059】なお、本参考例では、全触媒の72容量%
を固定床式反応塔で用い、28容量%を懸濁床式反応塔
で用いた。(a)工程では、水素圧力150kg/cm2
LHSV=0.2hr-1、H2 /HC=700nM3
klの条件で、生成油の(Ni+V)の脱メタル率が45
〜47%に維持されるように、反応温度を図2に示すよ
うに調節して重質油を水素化処理した。このため(a)
工程で用いた固定床式反応塔3個には、図1に示す固定
床式反応塔1の入口の温度と、固定床式反応塔3の出口
の温度との温度差を22℃に調節した。固定床式反応塔
1〜3の反応温度(WAT)を図1に示した。固定床式
反応塔3の出口から水素化処理後の重質油を必要に応じ
て分取して分析し、また、水素と反応しやすい不純物の
みが除去できるような条件を設定した。
【0060】(b)工程で用いた懸濁床式反応塔では、
(a)工程で水素化処理された重質油中に触媒を懸濁
し、この状態で(b)工程で水素化処理された重質油中
のC5+留分(炭素原子数5以上の留分)に含まれてい
る硫黄分が0.3重量%になるように水素圧力150kg
/cm2 、H2 /HC=700nM3 /kl、LHSV=
0.2hr-1で反応温度を395℃に維持しながら、長
期間高度な水素化処理を行った。(b)工程で用いた懸
濁床式反応塔中の触媒は、失活の程度に応じて図1に示
す懸濁床式反応塔4の下部の触媒排出口V−2から触媒
を抜出し、この抜出し量に等しい新触媒を懸濁床式反応
塔4の上部の触媒導入口V−1から充填した。
【0061】この懸濁床式反応塔中の触媒は、図2に示
すように2ヶ月毎に一定量を抜出して新しい触媒を追加
したが、触媒の全使用量は22ヶ月目で5.13 lb
であった。
【0062】本参考例では、19.72Bblの通油量
に対し(a)工程で1.03 lb、(b)工程で0.
40 lbの触媒量でスタートし、その後2ヶ月目より
0.37 lb×10回の触媒交換をしたので、触媒に
対する重質油の水素化処理量は、合計量で3.84Bb
l/lbとなった。
【0063】本参考例における22ヶ月間にわたる重質
油の水素化処理結果を図2に示す。重質油の水素化処理
開始初期1ヶ月目(SOR)と重質油の水素化処理末期
1ヶ月前(EOR)の第1段階生成油および最終生成物
の性状を表3,4に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【実施例1】図1に示す反応プロセスで、新規原料油供
給箇所から、表9に示す性状の脱歴油(DAO)を、
(a)工程からの反応生成油(表3参照)に対して30
重量%となる量で供給することにより、(b)工程の懸
濁床式反応塔で、混合原油を水素化処理するようにした
以外は、参考例1と同様に長期間にわたる高度水素化処
理反応試験を実施した。
【0069】すなわち、3個の固定床式反応塔1〜3に
表1,2で示される性状を有する(a)工程用触媒(H
DM−A)を密充填方法で充填し、懸濁床式反応塔4
に、(b)工程用触媒(HDS−A)を充填した。ま
た、触媒の硫化処理は参考例1と同様に行なった。
【0070】本実施例では、全触媒の70容量%を固定
床式反応塔で用い、30容量%を懸濁床式反応塔で用い
た。(a)工程では、水素圧力150kg/cm2 、LHS
V=0.2hr-1、H2 /HC=700nM3 /klの条
件で、生成油の(Ni+V)の脱メタル率が45〜47
%に維持されるように、反応温度を図2に示すように調
節して、表3,4に示す常圧残渣油を水素化処理した。
【0071】この(a)工程反応生成油の性状、および
これと前述の新規原料油とを混合して得た混合原料油の
性状を、表5(水素化処理開始初期1ヶ月目のデータ)
および表6(水素化処理停止の1ヶ月前のデータ)に示
す。なお、表5,6に示されるように、(a)工程反応
生成油は、参考例1と同様の性状(表3、4参照)を有
していた。
【0072】(b)工程で用いた懸濁床式反応塔では、
(b)工程で水素化処理された重質油の一部を高圧ポン
プで循環させ、懸濁床式反応塔内の触媒が懸濁状態にな
るように重質油の流量を調節して運転を行なった。
【0073】(b)工程で用いた懸濁床式反応塔では、
(b)工程で水素化処理された重質中のC5 +留分(炭
素原子数5以上の留分)に含まれている硫黄分が0.3
重量%になるように水素圧力150kg/cm2 、LHSV
=0.2hr-1、H2 /HC=700nM3 /kl、で反
応温度を395℃に維持しながら、水素化処理を行っ
た。(b)工程で用いた懸濁床式反応塔中の触媒は、参
考例1と同様に失活の程度に応じて懸濁床式反応塔4の
下部の触媒排出口V−2から触媒を抜出し、この抜き出
し量に等しい新触媒を懸濁床式反応塔4の上部の触媒導
入口V−1から充填した。
【0074】この懸濁床式反応塔中の触媒は、2ヶ月毎
に一定量を抜出して新しい触媒を追加した。本実施例で
は、(a)工程で1.03 lbの触媒量に対し、1
9.72Bblを通油し、(b)工程で0.44 lb
の触媒量でスタートし、その後2ヶ月目より0.40
lb×10回の触媒交換をしたので、触媒の合計量で
4.44bl/lbとなり、混合原料油の通油量は、2
2ヵ月で28.17Bblであった。
【0075】本実施例における重質油の水素化処理開始
初期1ヶ月目(SOR)と重質油の水素化処理末期1ヶ
月前(EOR)の最終生成物の性状は、各々表5および
表6に示されている。
【0076】表5および表6に示すように、本実施例で
は、参考例1と比較して最終生成油の性状はほとんど変
わらないにもかかわらず、DOA原料油を8.45bl
も多く処理することができた。
【0077】この結果から、本発明の方法では、同じ水
素化処理装置で生成油の性状を変えることなく原料油の
処理量を増加させ得ることがわかる。
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【比較例1】図3に示す通常の固定床式反応塔4個を用
い、固定床式反応塔1の入口の温度と固定床式反応塔4
の温度との温度差を30℃に調節した。固定床式反応塔
1および固定床式反応塔2の上部に(a)工程用水素化
処理触媒HDM−Aを充填し、固定床式反応塔2の下
部、固定床式反応塔3および固定床式反応塔4には
(b)工程用触媒HDS−Aを充填し、実施例1の
(a)工程と同様の条件で反応温度を変え、生成油の硫
黄分が0.30重量%になるようにして寿命試験を開始
した。
【0081】さらに詳しく説明すると、表1、2に示す
(a)工程用HDM−A触媒を固定床式反応塔1に16
vol%、固定床式反応塔2の上部に4vol%充填
し、また表1、2に示す(b)工程用HDS−A触媒を
固定床式反応塔2の下部に24vol%、固定床式反応
塔3に28vol%および固定床式反応塔4に28vo
l%充填して、重質油の水素化処理を行った。
【0082】しかしながら、通油時間2000hrs、
処理量1.92Bbl/lbで反応温度(WAT)で4
00℃となり、ドライスラッジが発生した。そこで、生
成油中の硫黄含量が0.6重量%となるようにして重質
油の水素化処理を継続したが、4000hrs(166
日目)、3.83Bbl/lbで、触媒層内に差圧が生
じたので試験を中止した。
【0083】
【比較例2】実施例1と同様の原材料である原料油を使
用し、添付図4で示す水素化処理装置にて水素化処理を
おこなった。この水素化処理装置では、懸濁床式反応塔
4には表1,2で示した触媒HDM−Aを充填して第一
工程とし、固定床式反応塔1、2、3には表1,2で示
した触媒HDS−Aを充填して第二工程とした。
【0084】懸濁床式反応塔4では、水素化処理を、実
施例と同じく、水素圧: 150kg/cm2 、LHSV:
0.2 hr -1、反応温度: 395℃およびH2/HC: 7
00nM3/klの条件で行なった。また、反応塔4では、
触媒供給手段V-1 から、新鮮な触媒HDM−Aを0.3
7lb/2ヵ月で供給し、触媒抜出し手段V-2 から同量
の使用済触媒を抜き出した。
【0085】固定床式反応塔1、2、3では、反応温度
を反応塔3の出口油のC5+留分(炭素数5以上の留分)
中の硫黄分が0.3重量%になるように制御した以外
は、実施例と同じ条件で水素化処理を行なった。しかし
ながら、反応塔1、2、3の失活が激しく、4ヵ月で運
転上限温度となり、装置を停止した。
【0086】
【実施例2】図5に示す水素化処理装置を用いて試験を
行った。固定床式反応塔21, 23, 25および27に表1で示
したHDM−A触媒を80vol%、HDS−A触媒を
20vol%充填し、工程(a)の液空間速度(LHS
V)は0.26hr-1とした。工程(b)の懸濁床式反
応塔30にはHDS−A触媒をさらに全固定床式反応塔
の触媒の42vol%に相当する量を充填し、工程
(b)のLHSVは0.63hr-1となるようにした。
【0087】表7で示す特性を有する原料油(Arabian
Light )を原料供給パイプ20から供給し、工程(a)
の反応塔21, 23, 25および27の間に15℃の反応温度差
をつけた。また、工程(a)では、反応圧力が135kg
/cm2 (1928psi)、LHSVが0.26h
-1、かつ触媒重量平均温度(WAT;Weight Arerage
Temperature)が351℃(664°F)となるように
した。また水素/油(H2/HC)比は1000nM3
/klとした。
【0088】前述の運転条件で固定床式反応塔21, 23,
25および27で水素化処理された中間生成油を、試料取出
口V−3から採取した。その中間生成油の性状を分析し
た。得られた分析結果を表8に示す。
【0089】この生成油は、フラッシイング装置S1お
よび連結パイプ29を介して、懸濁床式反応塔30の底
部に供給されるが、この際に、最初の原料油の供給量に
対し、5vol%に相当する量のスラリー油(Slurry O
il)(油の性状を表10に示す。)を新規原料油供給パ
イプ31から導入して混合した。新規原料油と中間生成
油とを混合して得た混合原料油の性状を表8に示す。
【0090】この混合原料油を、(b)工程の懸濁床式
反応塔30で水素化処理し、得られた生成油の性状を分
析した。分析結果を表9に示す。また、スラリー油を混
合せずに水素化処理し、得られた生成油を分析した。こ
の分析結果も表9に示す。表9の結果から生成油の性状
にはほとんど差がなく、処理量を高められることが分か
る。
【0091】懸濁床式反応塔30は断熱型であるので、
水素化反応による反応熱のため(a)工程の反応温度は
351℃であったにもかかわらず、(b)工程の反応温
度は405℃(761°F)までスラリー油を混入しな
い場合でも上昇した。またスラリー油と混入した場合
は、スラリー油への水素化反応が反応塔内で新たに生じ
るため、発熱により反応温度はさらに2.5℃(5°
F)上昇した。
【0092】この水素化反応による発熱を利用すること
により、図5の懸濁床式反応塔30では工程(a)より
54℃((b)405 ℃-(a)351 ℃) も高い反応温度を維持で
き、スラリー油のような重質油を余分に問題なく処理で
きることがわかる。
【0093】さらに、スラリー油を混合して水素化処理
する当試験を継続し、工程(a)と工程(b)を併せた
寿命試験を実施した。その結果、工程(a)の固定床式
反応塔21、23、25及び27に差圧が生じることもなく、ま
た最終生成物中にドライスラッジ(Dry-Sludge)を多量
に生成することなく23ヶ月の連続運転が可能であり、
工程(a)は反応開始時反応温度(WAT)355℃で
22ヶ月後390℃に上昇した。(b)工程では、反応
温度(WAT)を405〜408℃に保ち、常に生成油
の硫黄を0.4wt%以下、Ni+Vを7wppm以下
に保つことができた。
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】
【0098】
【比較例3】図5に示される装置に換えて、図6に示さ
れる水素化処理装置を用いて原料油を水素化処理した。
図6の水素化処理装置は、図5中の懸濁床式反応塔30
を固定床式反応塔40に変えた装置であり、同様の部分
は同様の符号を付けてその説明を省略する。固定床式反
応塔40は、断熱型反応基であり、触媒を懸濁状態に維
持する必要がないため液リサイクルラインと同リサイク
ルポンプを備えていない。
【0099】実施例2と同様の条件で反応試験を開始し
た。固定床式反応塔21, 23, 25および27までは同じ条件
で当初スタートしたが、固定床式反応塔40において、
水素化反応の反応熱の発生によって、反応温度が50℃
上昇した。運転期間が6ヶ月を経過した時、(a)工程
では、反応温度(WAT)が370℃になり、固定床式
反応塔5の最下部の触媒床の温度が420℃となった。
また、ドライスラッジが大量に発生し、生成油排出口3
4から得られる最終製品の品質が悪くなったので、運転
を継続する意味がなくなった。
【0100】また、図6の装置を用い、新規原料油供給
パイプ31より、実施例2と同じく5vol%のスラリ
ー油を入れて水素化処理を行ったところ、新規原料油を
導入しない場合と同様に、固定床式反応塔40において
発熱が生じ、さらにはスラリー油中に含まれるFCC触
媒の粉により反応塔40の閉塞が生じ、差圧が上昇して
運転が不可能になった。運転が可能な期間は7ヶ月であ
った。
【0101】
【実施例3】実施例2において、スラリー油の代わり
に、表11に示す性状の常圧残渣油(AR)を(a)工
程反応生成油に対して1容量%の量で新規原料供給パイ
プ31から供給して混合したこと以外は、実施例2と同
様にして水素化処理を行なった。
【0102】この混合原料油を(b)工程の懸濁床式反
応塔30で水素化処理した生成油の性状を表11に示
す。表11の結果から、生成油の性状に殆ど差がなく、
処理量を増加できたことが判る。
【0103】
【表11】
【0104】
【発明の効果】本発明によれば、最初に重質油中に含ま
れる不純物のうち、重質油の水素化処理時の水素に対し
て反応しやすいレジンなどに含まれる不純物を、固定床
式反応塔で選択的に除去し、次いで、水素と反応しにく
いアスファルテンなどに含まれている不純物を、懸濁床
式反応塔で選択的に除去することができる。また、本発
明によれば、懸濁床式反応塔で、固定床式反応塔で水素
化処理した重質油に加えて、新規原料油も水素化してい
る。
【0105】したがって本発明によれば、固定床式反応
塔での水素化処理触媒の失活が抑制でき、このように固
定床式反応塔での水素化処理触媒の失活が抑制された場
合には長期間にわたって固定床中の触媒を取換えなくて
もよく、また、懸濁床式反応塔で連続的な触媒の取換え
が可能なので、全体として重質油の水素化処理可能な期
間を長くすることができる他、新規原料油を追加して水
素化できるため、水素化処理効率が著しく向上する。
【0106】また本発明の水素化処理装置では、前述の
方法を効果的かつ効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る水素化処理装置の好まし
い1態様を示す図面である。
【図2】図2は、22ヶ月間にわたる実施例1の水素化
処理方法の運転結果を示す図面である。
【図3】図3は、比較例1で用いられた水素化処理装置
を説明するための図面である。
【図4】図4は、比較例2で用いられた水素化処理装置
を示す図面である。
【図5】図5は、本発明に係る水素化処理装置の好まし
い他の態様を示す図面である。
【図6】図6は、比較例3で用いられた水素化処理装置
を示す図面である。
【符号の説明】
1、2、3 固定床式反応塔 4 懸濁床式反応塔 5 供給パイプ 10 排出パイプ 11 原料油サイド供給手段 20 原料供給パイプ 21 第1の固定床式反応塔 23 第2の固定床式反応塔 25 第3の固定床式反応塔 27 第4の固定床式反応塔 30 懸濁床式反応塔 31 新規原料供給パイプ 34 生成油排出パイプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B01J 29/48 B01J 29/48 M 35/10 301 35/10 301 C10G 45/06 9547−4H C10G 45/06 A 45/08 9547−4H 45/08 A 45/16 9547−4H 45/16

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)原料油としての重質油を、その水素
    化処理触媒が充填された固定床式反応塔に導入して水素
    化処理する工程と、 (b)(a)工程で水素化された重質油及び新規原料油
    を、その水素化処理触媒が充填された懸濁式反応塔に導
    入して水素化処理する工程を含むことを特徴とする重質
    油の水素化処理方法。
  2. 【請求項2】(a)工程で水素化された重質油に対する
    新規原料油の量が、0.5〜50vol%であることを
    特徴とする請求項1記載の水素化処理方法。
  3. 【請求項3】上記新規原料油は、バナジウムおよびニッ
    ケル(V+Ni)の含有量が50ppm以下であること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の水素化処理方法。
  4. 【請求項4】重質油を水素化処理するための水素化処理
    触媒が充填された少なくとも1つの固定床式反応塔、 前記固定床式反応塔で水素化された重質油を水素化処理
    するための水素化処理触媒が充填された懸濁式反応塔、
    および前記懸濁式反応塔に、新規原料油を供給するため
    の原料油サイド供給手段を備えることを特徴とする重質
    油の水素化処理装置。
JP9107422A 1996-08-15 1997-04-24 重質油の水素化処理方法および水素化処理装置 Pending JPH1060456A (ja)

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