JPH1060108A - 水溶性導電性ポリアニリンおよびその製造方法 - Google Patents

水溶性導電性ポリアニリンおよびその製造方法

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JPH1060108A
JPH1060108A JP9075688A JP7568897A JPH1060108A JP H1060108 A JPH1060108 A JP H1060108A JP 9075688 A JP9075688 A JP 9075688A JP 7568897 A JP7568897 A JP 7568897A JP H1060108 A JPH1060108 A JP H1060108A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い導電性を有する状態で水溶性であるポリ
アニリンとその製造方法を提供する。 【解決手段】 ポリアニリンの骨格の芳香環が芳香環1
個当り平均して0.1〜4個のスルホン酸(塩)基およ
び平均して0〜3.9個のHまたは他の置換基(ただ
し、スルホン酸(塩)と他の置換基の合計は4であ
る。)で置換され、かつ該骨格中のN1個当り0.02
5〜1個が外部ドーパントでドーピングされてなる水溶
性導電性ポリアニリンであり、ポリアニリンをクロロ硫
酸と反応させたのち、加水分解することにより得られ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水溶性導電性ポリ
アニリンおよびその製造方法に関する。該ポリアニリン
の水溶液は、スピンコート、ディップコートおよびバー
コート等の簡便な手法により薄膜を形成し、各種帯電防
止用途、透明電極、電磁波遮蔽材、光電変換素子、有機
エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロクロミ
ック素子、防錆剤、半導体光触媒、フォトレジスト、非
線形光学材料等に利用できる。
【0002】
【従来の技術】ドープされたポリアニリンは、導電性ポ
リマーとして、安定であり、原料が安価であるため、フ
ィルム電極、二次電池、コンデンサ、帯電防止剤、電磁
波遮蔽材等としての応用開発が進められているが、一般
にポリアニリンは不溶、不融であり、成形、加工がしに
くいという難点があった。したがって、ポリアニリンを
可溶化することは、工業的に重要であるが、製造設備上
は水溶性とするのが、コスト的に最も有利である。
【0003】そこで、近年水溶性を付加させるために、
さまざまな手法によりスルホン基の導入が提案されてい
る。例えば、アニリンとo−、m−アミノベンゼンスル
ホン酸を電気化学的に共重合してスルホン化ポリアニリ
ンを合成する方法(日本化学会誌、1985,p112
4、特開平2−166165号公報)、アニリンとアミ
ノベンゼンスルホン酸を化学酸化的に共重合する方法
(特開平1−301714号公報、特開平6−5698
7号公報)、アニリンとアミノベンゼンスルホン酸およ
びその誘導体の共重合物をスルホン化する方法(特開平
5−178989号公報)、o−、m−アミノベンゼン
スルホン酸を電気化学的に酸化重合する方法(日本化学
会第64秋季年会、講演予稿集II p706,199
2)、o−、m−アミノベンゼンスルホン酸およびその
誘導体を化学的に酸化重合する方法(特開平7−324
132号公報、特開平8−41320号公報)などのア
ミノベンゼンスルホン酸をモノマーとして重合する方法
がある。
【0004】また、エメラルディン塩タイプの重合体を
無水硫酸/リン酸トリエチル錯体を用いてスルホン化を
行なう方法(特開昭61−197633号公報)、脱ド
ープされたポリアニリン(エメラルディン塩基)を発煙
硫酸を用いてスルホン化する方法(WO91−0688
7、J.Am.Chem.Soc.,1990,vo
l.112,p2800、J.Am.Chem.So
c.,1991,vol.113,p2665)、脱ド
ープされたポリアニリン(エメラルディン塩基)をクロ
ロ硫酸中でスルホン化する方法(Polymer,19
92,vol.33,p4410)、ロイコエメラルデ
ィン塩基のポリアニリンを発煙硫酸でスルホン化する方
法(J.Am.Chem.Soc.,1996,vo
l.118,p2545)などのポリアニリンをスルホ
ン化剤にてスルホン基を導入する方法が提案されてい
る。
【0005】しかしながら、アミノベンゼンスルホン酸
およびその誘導体をアニリンと電気化学的または化学的
に酸化共重合する方法では、芳香環5個に1個の割合で
しかスルホン基が導入されておらず、アルカリにはわず
かに可溶であるが、水そのものには不溶であり溶解性の
点で問題がある。また、これら共重合体をさらにスルホ
ン化する方法では、芳香環2個に対し、1個強のスルホ
ン基が導入されているが、アルカリには可溶ではある
が、水そのものには不溶であり溶解性の点で問題があ
る。
【0006】また、o−、m−アミノベンゼンスルホン
酸を電気化学的に酸化重合する方法では、水溶性導電性
高分子が得られたとの記載があるが、電極反応であるた
め、生成物の単離が困難、工業的な大量合成には適して
いないなどの問題がある。また、o−、m−アミノベン
ゼンスルホン酸およびその誘導体を酸性溶液、塩基性溶
液中で化学的に酸化重合する方法を追試したところ、赤
褐色のオリゴマー状の生成物しか得られず、エメラルデ
ィン塩を繰り返し単位とするスルホン化ポリアニリンを
得ることはできなかった。一般に、置換基を有するアニ
リンモノマーを重合してエメラルディン塩特有の緑色を
有する高分子量のポリアニリンを得ることは困難であ
る。
【0007】また、スルホン化剤を用いてスルホン基を
導入する方法において、無水硫酸/リン酸トリエチル錯
体を用いてポリアニリンをスルホン化する方法では、芳
香環5個に対し1個の割合でしかスルホン基が導入され
ておらず、導電体(ドープ状態)では、水に対し全く不
溶であり、溶解性の点で問題がある。また、発煙硫酸を
用いてスルホン化する方法では、芳香環2個に1個の割
合でスルホン基が導入された自己ドープ型のポリアニリ
ンが得られるが、スルホン基がアニリンのドープに利用
されているため、中性および酸性水溶液には不溶であ
り、溶解させるためにはアルカリと作用させる必要があ
る。しかし、一般にポリアニリンはアルカリと作用させ
ると、絶縁体となる。そのため、自己ドープ型のポリア
ニリンは、導電性を付与するために溶解後の再ドープが
必要であり、成形性、加工性の点でも十分な物とはいえ
ない。
【0008】また、クロロ硫酸中でスルホン化する方法
では、芳香環5個に対し4個のスルホン基が導入された
自己ドープ型のポリアニリンが得られるが、スルホン基
がアニリンのドープに利用されているため、中性および
酸性水溶液には不溶であり、溶解させるためにはアルカ
リと作用させる必要があり、成形性、加工性の点で問題
がある。また、ロイコエメラルディン塩基のポリアニリ
ンを発煙硫酸でスルホン化する方法では、芳香環4個に
対し3個のスルホン基が導入されているが、自己ドープ
型であるため、水に対しわずかに溶けるのみであり、溶
解性、成形性の点で問題がある。
【0009】さらに、上記の発煙硫酸、クロロ硫酸を用
いてスルホン化する方法においては、ポリアニリンに対
して大過剰のスルホン化剤を用いてスルホン化を行なっ
ており、大量の廃酸処理が困難であるという問題があ
る。
【0010】高い導電性を有する状態、すなわちドープ
状態で水溶性であるポリアニリンとしては、ジフェニル
アミン−4−スルホン酸を化学的に酸化重合したN−ス
ルホン化ポリアニリン(Polymer,1993,v
ol.34,p158)、ポリアニリンと1,3−プロ
パンスルトンを反応させたN−プロパンスルホン酸置換
ポリアニリン(J.Am.Chem.Soc.,199
4,vol.116,p7939、J.Am.Che
m.Soc.,1995,vol.117,p1005
5)、o−アミノベンジルホスホン酸を酸化重合したホ
スホン化ポリアニリン(J.Am.Chem.So
c.,1995,vol.117,p8517)が知ら
れている。
【0011】しかしながら、N−スルホン化ポリアニリ
ンは、高溶解性のため重合後の単離に高速遠心分離を必
要とするため、単離が非常に煩雑という問題がある。ま
た、N−プロパンスルホン酸置換ポリアニリンは、自己
ドープ型のポリアニリンのため、ドープ状態では水に対
して不溶であり、ナトリウム塩水溶液をイオン交換樹脂
で処理する方法でしかドープ状態で水に溶解することが
できず、成形性、加工性の点で非常に煩雑な手法を用い
なければならない問題がある。また、ホスホン化ポリア
ニリンは、重合原料であるo−アミノベンジルスルホン
酸を得るために数段階の反応を必要とするため、工業的
に非常に煩雑であるという問題があり、高い導電性を有
する状態、すなわちドープ状態で水溶性であるポリアニ
リンを簡便な方法にて製造する方法は今までに知られて
いなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、新規な水溶性導電性ポリアニリンおよびその製
造方法を提供することにある。
【0013】本発明の他の目的は、高い導電性を有する
状態、すなわちドープ状態で水溶性であるポリアニリン
とその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記諸目的は、下記の
(1)〜(5)により達成される。
【0015】(1) ポリアニリンの骨格の芳香環が芳
香環1個当り平均して0.1〜4個のSO3 M(ただ
し、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金
属原子およびアンモニウム基よりなる群から選ばれた少
なくとも1種のものである。)で置換され、かつ平均し
て0〜3.9個のR(ただし、Rは水素原子、ハロゲン
原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1
〜20のアルコキシ基、炭素原子数1〜20のアルキル
チオ基、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、カル
ボキシル基、エステル残基の炭素原子数が1〜20のカ
ルボン酸エステル基、ニトロ基およびシアノ基よりなる
群から選ばれた少なくとも1種のものである。ただし、
SO3 MとRとの合計は4である。)で置換され、かつ
該主骨格中の窒素原子1個当り0.025〜1個が外部
ドーパントでドーピングされてなる水溶性導電性ポリア
ニリン。
【0016】(2) 電気伝導度が10-6S/cm以上
である状態で水に対する溶解度(25℃)が0.5重量
%以上であり、外部ドーパントでドーピングされてなる
ことを特徴とする水溶性導電性ポリアニリン。
【0017】(3) ポリアニリンをクロロ硫酸と反応
させたのち、加水分解に供することを特徴とする前記
(1)に記載の水溶性導電性ポリアニリンの製造方法。
【0018】(4) 該ポリアニリンは予めドーパント
でドープされてなる前記(3)に記載の水溶性導電性ポ
リアニリンの製造方法。
【0019】(5) クロロ硫酸がポリアニリン骨格中
の芳香環に対し0.5〜3倍モル用いられてなる前記
(3)または(4)に記載の水溶性導電性ポリアニリン
の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明による水溶性導電性ポリア
ニリンは、ポリアニリンの骨格の芳香環が芳香環1個当
り平均して0.1〜4個のSO3 Mおよび平均して0〜
3.9個のR(ただし、SO3 MとRとの合計は4であ
る。)で置換され、かつ該主骨格中の窒素原子(置換基
中の窒素原子を除く)1個当り0.025〜1個が外部
ドーパントでドーピングされてなるものである。
【0021】ここで、SO3 M中のMは、水素原子、ア
ルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、ルビジウ
ム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグ
ネシウム等)およびアンモニウム基よりなる群から選ば
れたものであり、好ましくは水素原子である。
【0022】また、Rは、水素原子、ハロゲン原子、好
ましくは塩素原子、フッ素原子および臭素原子、炭素原
子数1〜20、好ましくは1〜8のアルキル基、炭素原
子数1〜20、好ましくは1〜8のアルコキシ基、炭素
原子数1〜20、好ましくは1〜8のアルキルチオ基、
炭素原子数1〜20、好ましくは1〜8のアルキルアミ
ノ基、カルボキシル基、エステル残基の炭素原子数が1
〜20、好ましくは1〜8のカルボン酸エステル基、ニ
トロ基およびシアノ基よりなる群から選ばれた少なくと
も1種のものである。これらのうち、水素原子、アルキ
ル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ
基等の電子供与性基が好ましい。
【0023】また、SO3 Mは、好ましくは平均して
0.5〜1.5個であり、またRは、好ましくは平均し
て2.5〜3.5個である。ただし、SO3 MとRとの
合計は4である。
【0024】さらに、該ポリアニリンの主骨格中の窒素
原子1個当り0.025〜1個、好ましくは0.1〜
0.5個が外部ドーパントでドーピングされている。
【0025】本発明による水溶性導電性ポリアニリンを
構造式で示すと、一般式(1)
【0026】
【化1】
【0027】[ただし、式中、MおよびRは前記のとお
りであり、pは0.1〜4、qは0〜3.9(ただし、
p+q=4)、Xはドーパントであるプロトン酸の陰イ
オンであり、また、nは陰イオンの価であり、通常1〜
3価、好ましくは1〜2価である。]で表わされる繰り
返し単位を必須の繰り返し単位として有し、さらに必要
により式(2)および/または式(3)
【0028】
【化2】
【0029】
【化3】
【0030】で表わされる繰り返し単位あるいはその他
の繰り返し単位を有してなるものである。
【0031】プロトン酸の陰イオンとしては、塩素イオ
ン、臭素イオン、沃素イオン、硝酸イオン、硫酸イオ
ン、リン酸イオン、ほうフッ化イオン、過塩素酸イオ
ン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イ
オン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢
酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等の1
〜3価の陰イオンがあり、好ましくは1〜2価の陰イオ
ンである。
【0032】本発明による水溶性導電性ポリアニリンの
重合度は、2〜10,000、好ましくは20〜1,0
00である。
【0033】典型的な例として得られた本発明によるス
ルホン化ポリアニリンは、元素分析の結果により、窒素
/硫黄の比が4/4〜4/3であり、スルホン酸基は芳
香環4個に対し3〜4個の割合で導入されている。ま
た、50〜100%のドーピング率で塩化物イオンがド
ーピングされており、WO91−06887に開示され
ているような自己ドープ型ポリアニリンとは異なった外
部ドープ型のポリアニリンである。
【0034】本発明による水溶性導電性ポリアニリン
は、例えば、つぎのようにして製造される。
【0035】まず、ポリアニリンを有機溶媒中に攪拌分
散し、加熱しながらクロロ硫酸を加えることによりポリ
アニリンの骨格中の芳香環をクロロ硫酸化し、さらに得
られたクロロスルホニルポリアニリンを水中で加水分解
することにより水溶性で導電性を有するスルホン化ポリ
アニリンが得られる。
【0036】原料のポリアニリンとしては、ドープ状態
(エメラルディン塩)、脱ドープ状態(エメラルディン
塩基)いずれのものでも、またエメラルディン塩のドー
パントもプロトン酸であればいずれでもよく、例えば、
塩酸、硫酸、硝酸、ほうフッ化水素酸、過塩素酸、アミ
ド硫酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸
等を用いることができる。しかしながら、好ましくは脱
ドーピングの工程が不要となるのでドープ状態(エメラ
ルディン塩)のものを用いる方がよい。上記いずれの場
合も外部ドーパントの大部分は、クロロスルホニル基の
加水分解で生じた塩酸であるが、一部は原料のポリアニ
リンのドーパントまたは過剰のクロロ硫酸の加水分解で
生じた硫酸が含まれる場合もある。これは塩酸が最も強
力な酸でプロトン供給能力が高いためイオン交換が起こ
っているものと考えられる。一方、自己ドーピングが起
こらないのはベンゼンスルホン酸が塩酸に比べると弱い
酸であるためと考えられる。
【0037】また、原料であるポリアニリンおよびその
誘導体は、アニリンおよびo−、m−置換アニリンを電
気化学的または化学的に酸化重合したものを用いること
ができるが、原料の導電性が最終生成物であるスルホン
化ポリアニリンの導電性にも影響するので、なるべく導
電性の高いポリアニリンを用いることが好ましく、エメ
ラルディン塩タイプの無置換ポリアニリンが特に好まし
い。エメラルディン塩タイプのポリアニリンは、例えば
一般式(4)
【0038】
【化4】
【0039】で示される還元型単位(フェニレンジアミ
ン骨格)と酸化型単位(キノンイミン骨格)がほぼ1対
1の割合で存在する基本骨格を繰り返し単位とすること
を特徴とするエメラルディン型ポリアニリンを、プロト
ン酸でドープしたものが好ましい。
【0040】一般に、エメラルディン塩タイプのポリア
ニリンの製造方法は、電気化学的酸化重合法と酸化剤を
用いた化学的酸化重合法の2種類があるが、工業的な製
造方法としては、酸化剤を用いた化学的酸化重合の方が
好ましい。ポリアニリンの化学的酸化重合法は、アニリ
ンおよびその誘導体の酸性あるいは塩基性溶液に酸化剤
を加えて攪拌して行なう。
【0041】酸化剤としては、アニリンを酸化できる酸
化剤であればいずれでもよいが、過硫酸アンモニウム、
過硫酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸
類、過酸化水素、第二塩化鉄等が挙げられ、特に過硫酸
アンモニウムに代表される過硫酸類が好ましく、モノマ
ー1モルに対し0.1〜5モルがよく、特に0.5〜1
モルが好ましい。
【0042】重合溶媒としては、水、メタノール、エタ
ノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチル
ホルムアミド、アセトン、2−ブタノン、ジメチルアセ
トアミド等が挙げられ、特に水、メタノールが好まし
い。
【0043】重合の反応温度は−15〜70℃の間がよ
く、特に−10〜20℃の間が好ましく、上記の温度範
囲を外れると、導電率が低下する傾向にある。
【0044】本発明による水溶性導電性ポリアニリンの
製造工程における前記ポリアニリンのクロロスルホン化
反応に仕込むクロロ硫酸の量は、ポリアニリンの芳香環
に対して0.5〜10倍がよいが、好ましくは0.5〜
3倍がよい。例えば、0.5倍未満で反応を行なうと、
芳香環2個に対しスルホン基が1個以下しか導入され
ず、水に対する溶解性が低下する。また、3倍を超えて
反応を行なうと、スルホン基が過剰に導入され、溶解性
は向上するが導電率が低下する傾向がある。
【0045】また、クロロスルホン化反応に用いる溶媒
としては、クロロ硫酸と反応しない溶媒であればいずれ
でもよく、例えば、二硫化炭素、四塩化炭素、1,1,
2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタ
ン、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられ、特
に、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラ
クロロエタンがクロロ硫酸との相溶性がよく好ましい。
溶媒とポリアニリンの仕込み量は、1〜30重量%、特
に2〜10重量%が好ましく、上記の範囲を外れると反
応効率が低下する傾向がある。スルホン化の反応温度
は、−20〜200℃がよく、好ましくは20〜150
℃であり、特に40〜140℃が好ましく、上記の範囲
を外れると、導電性が低下する傾向にある。
【0046】加水分解反応での水系溶媒へのクロロスル
ホン化ポリアニリンの仕込み量は、0.1〜10重量%
が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5重量%であ
る。上記の範囲を外れると反応効率が低下する傾向があ
る。また、この時の反応温度は、20〜120℃が好ま
しく、さらに好ましくは60〜120℃である。すなわ
ち、20℃未満では反応効率が低下する傾向がある。
【0047】本発明による水溶性導電性ポリアニリン
(スルホン化ポリアニリン)は、電気伝導度が10-6
/cm以上、好ましくは10-4S/cm以上である状態
で、水に対する溶解度(25℃)が0.5重量%以上、
好ましくは3重量%以上である。
【0048】本発明のスルホン化ポリアニリンが導電
性、すなわちドープされた状態で高い水溶性を示すの
は、ポリアニリン鎖に導入された−SO3 M基のMがほ
ぼHであるとき、その−SO3 H基のプロトンが自己ド
ーピングには使われず、フリーの状態で存在するため、
水中で解離できることによる。このことは、以下のよう
な事実によっても証明される。まず第一に、IRスペク
トルにおいて、自己ドープ型のスルホン化ポリアニリン
にはない吸収、すなわち−SO3 H基の−O−H伸縮振
動にもとづく2500〜3700cm-1付近のブロード
な吸収が観測される。第二に、アルカリで中和しなが
ら、可視吸収スペクトルの変化を追っていくと、アルカ
リの添加が少ないうちは、可視吸収スペクトル変化が見
られず、あるところから変化が起こりはじめ、最後は一
定のスペクトルになる。このことは、最初は−SO3
基の中和のみ起こり、その後脱ドーピングがおこってい
ることを示している。第三に、中和滴定曲線は−SO3
H基の中和および脱ドーピングにもとづく2つの終点を
示し、それから見積もられる−SO3 H基の数およびド
ーピング率が理論予想の範囲内である。
【0049】本発明のスルホン化ポリアニリン骨格中に
導入された−SO3 M基のMをアルカリ金属、アルカリ
土類金属またはアンモニウム基とするためには、まずM
が水素原子であるものを合成したのち、アルカリで中和
してイオン交換を行なうか、クロロスルホニル基を加水
分解する際にアルカリ中で行なうことで達成される。た
だし、過剰のアルカリを作用させると脱ドーピングが起
こり、導電性が失われるので、脱ドーピングが完全には
終了しない程度にアルカリの使用量を制限する必要があ
る。また、Mの半分以上が水素原子であるものが好まし
い。
【0050】本発明のスルホン化ポリアニリンは水に対
して高い溶解性を示すので、その水溶液から基材にスピ
ンコート、バーコート、およびディップコート等の方法
を用いてコーティングするだけで導電性のフィルムが得
られるが、強度を増すために、市販の水溶性ポリマーと
ブレンドして用いることも可能である。このような水溶
性ポリマーの例としては、ポリアクリル酸、ポリビニル
アルコール、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスル
ホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパ
ンスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン
等を挙げることができるが、ポリアニリンの脱ドープを
引き起こさないポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン
酸、ポリビニルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド
−2−メチルプロパンスルホン酸等の酸性ポリマーが好
ましく用いられる。その中でもポリアクリル酸は本発明
のスルホン化ポリアニリンとブレンドした場合の相溶性
が高く、透明なフィルムを成形することができるので、
最も好ましく用いることができる。
【0051】ポリアニリンおよび本発明のスルホン化ポ
リアニリンの電気伝導度の測定は、圧縮ペレット試料ま
たは水溶液からコートして得られるフィルム試料に直流
4端子法を用いて行なうことができる。また、本発明の
スルホン化ポリアニリンを汎用の水溶液ポリマーとブレ
ンドした樹脂組成物の水溶液からコートして得られる帯
電防止フィルムの表面抵抗はフィルムに金電極を蒸着し
2端子法により測定される。
【0052】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明する。
【0053】実施例1 1.2mol/lの塩酸水溶液300mlにアニリン2
8gを滴下攪拌して加えた。これを0℃に冷却した。3
0gの過硫酸アンモニウムをイオン交換水60mlに溶
解し、先の溶液に30分かけて滴下した。滴下終了後さ
らに5時間、0℃にて攪拌した。析出した緑色沈殿を濾
過し、濾液の色がなくなるまで、イオン交換水で洗浄し
た。さらに、メタノールで濾液の色がなくなるまで洗浄
した。乾燥重量は、12.5gであった。
【0054】得られたポリアニリンをペレットに成型
し、4端子法による電気伝導度を測定した結果、2.0
2S/cmであった。
【0055】得られたポリアニリン1gを1,1,2,
2−テトラクロロエタン(以下TCE)50ml中に分
散し、85℃に加熱した。クロロ硫酸2.4g(約2倍
モル)をTCE6mlに溶解し滴下して加えた。滴下終
了後さらに5時間、85℃にて加熱攪拌した。室温に冷
却後、濾過して反応物を取り出し、クロロホルムにて洗
浄した。風乾後、50mlのイオン交換水に分散し、4
時間加熱還流した。得られた緑色溶液を濾過して不溶分
を取り除き、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮
し、アセトンを加えて緑色沈殿を析出させた。析出した
沈殿を濾過し、アセトンにて洗浄した。乾燥重量は、
1.4gであった。
【0056】元素分析結果は、 H:4.11% C:32.86% N:7.02%
S:14.46% Cl:4.57% 組成式:C24354.4 204
1.1 であり、S/N比は0.91であった。硫黄原子はすべ
て、導入されたスルホン基からとすると、ポリアニリン
の芳香環10個に対して9個以上スルホン基が導入され
ていることになる。また対イオンがすべてCl−である
とすれば、ドーピング率は0.25(50%)である。
【0057】25℃で水に対する溶解度を測定した結
果、8.1重量%であった。
【0058】得られたスルホン化ポリアニリンをペレッ
トに成型し、4端子法による電気伝導度を測定した結
果、1.99×10-3S/cmであった。
【0059】実施例2 実施例1で得られたポリアニリン9gを1,2−ジクロ
ロエタン270ml中に分散し、85℃に加熱した。ク
ロロ硫酸21.8g(約2倍モル)を1,2−ジクロロ
エタン15mlに溶解し滴下して加えた。滴下終了後さ
らに5時間、85℃にて加熱撹拌した。室温に冷却後、
濾過して反応物を取り出し、クロロホルムにて洗浄し
た。風乾後、400mlのイオン交換水に分散し、4時
間加熱還流した。得られた緑色溶液を濾過して不溶分を
取り除き、ろ液をロータリーエバポレーターにて濃縮
し、アセトンを加えて緑色沈殿を析出させた。析出した
沈殿を濾過し、アセトンにて洗浄した。乾燥重量は、1
2.0gであった。
【0060】元素分析結果は、 H:3.52% C:39.24% N:8.28%
S:13.78% Cl:2.99% 組成式:C24304.3 153.2
Cl0.7 であり、S/N比は0.73であった。硫黄原子はすべ
て、導入されたスルホン基からとすると、ポリアニリン
の芳香環4個に対して3個弱のスルホン基が導入されて
いることになる。また対イオンがすべてCl- であると
すれば、ドーピング率は0.175(35%)である。
【0061】25℃で水に対する溶解度を測定した結
果、4.7重量%であった。
【0062】得られたスルホン化ポリアニリンをペレッ
トに成型し、4端子法による電気伝導度を測定した結
果、5.72×10-3S/cmであった。
【0063】実施例3 1.2mol/lのほうフッ化水素酸水溶液300ml
にアニリン28gを滴下攪拌して加えた。これを0℃に
冷却した。30gの過硫酸アンモニウムをイオン交換水
60mlに溶解し、先の溶液に30分かけて滴下した。
滴下終了後さらに5時間、0℃にて攪拌した。析出した
緑色沈殿を濾過し、濾液の色がなくなるまで、イオン交
換水で洗浄した。さらに、メタノールで濾液の色がなく
なるまで洗浄した。乾燥重量は、15.8gであった。
【0064】得られたポリアニリンをペレットに成型
し、4端子法による電気伝導度を測定した結果、4.6
0S/cmであった。
【0065】得られたポリアニリン2.8gをTCE1
50ml中に分散し、85℃に加熱した。クロロ硫酸
8.8g(約2.5倍モル)をTCE30mlに溶解し
滴下して加えた。滴下終了後さらに5時間、85℃にて
加熱攪拌した。室温に冷却後、濾過して反応物を取り出
し、クロロホルムにて洗浄した。風乾後、150mlの
イオン交換水に分散し、4時間加熱還流した。得られた
緑色溶液を濾過して不溶分を取り除き、濾液をロータリ
ーエバポレーターにて濃縮し、アセトンを加えて緑色沈
殿を析出させた。析出した沈殿を濾過し、アセトンにて
洗浄した。乾燥重量は、3.74gであった。
【0066】元素分析結果は、 H:3.58% C:36.29% N:7.43%
S:14.90% Cl:5.94% F:0% 組成式:C24284
303.5 Cl1.5 であり、S/N比は0.95であった。硫黄原子はすべ
て、導入されたスルホン基からとすると、ポリアニリン
の芳香環1個に対してほぼ1個スルホン基が導入されて
いることになる。F原子が検出されなかったことから、
原料ポリアニリンの対イオンであるBF4 - はすべてC
- で交換されたものと考えられ、そのドーピング率は
0.375(75%)である。
【0067】25℃で水に対する溶解度を測定した結
果、9.1重量%であった。
【0068】得られたスルホン化ポリアニリンをペレッ
トに成型し、4端子法による電気伝導度を測定した結
果、5.38×10-5S/cmであった。
【0069】実施例4 1.2mol/lの硫酸水溶液300mlにアニリン2
8gを滴下攪拌して加えた。これを0℃に冷却した。3
0gの過硫酸アンモニウムをイオン交換水60mlに溶
解し、先の溶液に30分かけて滴下した。滴下終了後さ
らに5時間、0℃にて攪拌した。析出した緑色沈殿を濾
過し、濾液の色がなくなるまで、イオン交換水で洗浄し
た。さらに、メタノールで濾液の色がなくなるまで洗浄
した。乾燥重量は、14.9gであった。
【0070】得られたポリアニリンをペレットに成型
し、4端子法による電気伝導度を測定した結果、0.8
9S/cmであった。
【0071】得られたポリアニリン1.1gをTCE5
0ml中に分散し、85℃に加熱した。クロロ硫酸2.
5g(約2倍モル)をTCE6mlに溶解し滴下して加
えた。滴下終了後さらに5時間、85℃にて加熱攪拌し
た。室温に冷却後、濾過して反応物を取り出し、クロロ
ホルムにて洗浄した。風乾後、50mlのイオン交換水
に分散し、4時間加熱還流した。得られた緑色溶液を濾
過して不溶分を取り除き、濾液をロータリーエバポレー
ターにて濃縮し、アセトンを加えて緑色沈殿を析出させ
た。析出した沈殿を濾過し、アセトンにて洗浄した。乾
燥重量は、1.44gであった。
【0072】元素分析結果は、 H:3.72% C:38.80% N:7.68%
S:15.62% Cl:2.00% 組成式:C24384 214 Cl
1 であり、S/N比は1.0であった。硫黄原子はすべ
て、導入されたスルホン基からとすると、ポリアニリン
の芳香環1個に対して1個スルホン基が導入されている
ことになる。また対イオンがすべてCl- であるとすれ
ば、ドーピング率は0.25(50%)である。
【0073】25℃で水に対する溶解度を測定した結
果、8.8重量%であった。
【0074】得られたスルホン化ポリアニリンをペレッ
トに成型し、4端子法による電気伝導度を測定した結
果、6.25×10-4S/cmであった。
【0075】比較例 WO91−06887で開示されている方法にしたがっ
て、自己ドープ型ポリアニリンを作製した。脱ドープさ
れたポリアニリン0.2gを発煙硫酸40mlに溶解
し、室温で3時間攪拌した。反応液を200mlの氷浴
したメタノール中にあけて沈殿を析出させた。析出した
沈殿を濾過し、アセトンにて洗浄した。乾燥重量は、
0.25gであった。
【0076】元素分析結果は、 H:3.91% C:49.72% N:9.86%
S:9.06% 組成式:C24274 9.4 1.6 であり、硫黄原子はすべて、導入されたスルホン基から
とすると、ポリアニリンの芳香環10個に対して4個ス
ルホン基が導入されていることになる。
【0077】25℃で水に対する溶解度を測定したとこ
ろ、全くの不溶であった。得られた自己ドープ型ポリア
ニリンをペレットに成型し、4端子法による電気伝導度
を測定した結果、0.98×10-2S/cmであった。
水に対し不溶であるため、薄膜の表面抵抗は測定できな
かった。
【0078】実施例5 実施例1および2で得られた外部対イオンドープ型スル
ホン化ポリアニリンと比較例で得られた自己ドープ型ス
ルホン化ポリアニリンのFT−IRスペクトルを図1、
図2および図3にそれぞれ示す。測定はそれぞれのスル
ホン化ポリアニリンのKBr錠剤を作成し、パーキンエ
ルマー社製1600FT−IRスペクトルメーターを用
いて行った。実施例1のスルホン化ポリアニリンのスペ
クトル中の1172cm-1と1074cm-1の吸収はそ
れぞれO=S=Oの逆対称および対称伸縮振動を示し、
703cm-1と615cm-1の吸収はS−OおよびC−
S伸縮振動を示す。また818cm-1の吸収は1,2,
4−三置換芳香環の面外伸縮振動による。以上の吸収
は、実施例2および比較例のスルホン化ポリアニリンの
スペクトル中にもみられ、いずれのスルホン化ポリアニ
リンにも芳香環に直結した−SO3 - 基が存在している
ことが分かる。実施例1および実施例2のスルホン化ポ
リアニリンのスペクトルに特徴的な吸収として、250
0〜3700cm-1にかけて観測されてなるブロードな
吸収が挙げられる。これは−SO3 H基の末端−O−H
伸縮振動によるもので、−SO3 H基がドーパントとし
ては使われずフリーの状態で存在していることを示唆し
ている。
【0079】実施例6 実施例1で得られたスルホン化ポリアニリン0.2g/
1の水溶液10mlを1mmol/l水酸化ナトリウム
水溶液0、2、4、6、7、8、9、10、11、1
2、14、16、18、20mlで中和したのち蒸留水
を加えて全量100mlの水溶液をそれぞれ調製した。
これらの水溶液の紫外−可視吸収スペクトルを図4にま
とめて示す。水酸化ナトリウム添加前の吸収スペクトル
において、316nm(3.92eV)にπ−π* 遷移
にもとづく吸収が、440nm(2.82eV)と13
00nm(0.95eV)付近にポーラロンバンドにも
とづく吸収がみられる。これらの吸収はいずれもドープ
されたポリアニリン特有の吸収である。また、実施例2
で得られたスルホン化ポリアニリンに対しても同様に中
和して水溶液を調製した。これらの水溶液の紫外−可視
吸収スペクトルを図5にまとめて示す。水酸化ナトリウ
ム添加前の吸収スペクトルにおいて、318nm(3.
90eV)付近にπ−π* 遷移にもとづく吸収が、44
0nm(2.82eV)付近と1300nm(0.95
eV)付近にポーラロンバンドにもとづく吸収がみられ
る。これらの吸収はいずれも実施例1のスルホン化ポリ
アニリンにおいても同様にみられるドープされたポリア
ニリン特有の吸収であるが、その強度は実施例2のスル
ホン化ポリアニリンの方が大きいことから、実施例2の
スルホン化ポリアニリンの方が外部ドーパントでよりド
ーピングされていることを示している。実施例1および
実施例2のスルホン化ポリアニリンのπ−π* 遷移吸収
(3.92eV、3.90eV)は、無置換のポリアニ
リン塩のπ−π* 遷移吸収(3.81eV)や比較例の
自己ドープ型ポリアニリンのπ−π* 遷移吸収(3.8
8eV)と比較して、短波長側にシフトしている。この
短波長シフトは置換−SO3 - 基の立体反発によりポリ
アニアリンの芳香環がねじれ、共役が弱くなることによ
ると考えられるので、このシフトが大きいほどより多く
の−SO3 - 基が導入されていることになり、実施例1
のスルホン化ポリアニリンが芳香環1個に対し約1個の
−SO3 H基を有しており、実施例2のスルホン化ポリ
アニリンが芳香環4個に対し3個の−SO3 H基を有し
ているのに対し、比較例の自己ドープ型ポリアニリンが
芳香環2個に対して約1個の−SO3 - 基を有している
事実とつじつまがあう。
【0080】実施例1および実施例2のスルホン化ポリ
アニリンを水酸化ナトリウムで中和していくと、水酸化
ナトリウムの添加量が少ないうちは吸収スペクトルにほ
とんど変化は見られないが、あるところを過ぎると、水
酸化ナトリウムの添加に伴い吸収スペクトルは変化し、
最後はそれ以上添加してもスペクトルに変化はみられな
くなる。実施例1のスルホン化ポリアニリンの、130
0nmのポーラロンバンド吸収を水酸化ナトリウムの添
加量に対してプロットした図6をみれば、この様子がは
っきりとわかる。以上のことから水酸化ナトリウムの添
加量が少ないうちは−SO3 H基のフリープロトンが水
酸化ナトリウムにより中和されていき、それが終わると
脱ドーピングが起こっていることがわかる。
【0081】実施例1および実施例2のスルホン化ポリ
アニリンの約0.1mol/l水溶液を調製し、平沼産
業株式会社製COMTITE−500型自動滴定装置を
用いて、0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で中
和滴定を行った結果を図7に示す。実施例1のスルホン
化ポリアニリンでは、水酸化ナトリウム水溶液の添加量
6.8mlと9.6mlの2点で終点が検出され、それ
ぞれ、−SO3 H基の中和および脱ドーピングに対応し
ている。この結果より計算して求めた−SO3H基の数
はポリアニリンの芳香環4個に対して3個強であり、ド
ーピング率は0.31(61%)であった。実施例2の
スルホン化ポリアニリンでは、6.4mlと10.1m
lの2点で終点が検出され、実施例1のスルホン化ポリ
アニリンと同様に、それぞれ、−SO3 H基の中和およ
び脱ドーピングに対応している。この結果より計算して
求めた−SO3 H基の数はポリアニリンの芳香環4個に
対して2個強であり、ドーピング率は0.30(60
%)であった。いずれも、−SO3 H基の数が元素分析
から求めた数よりは少なく出ているので、実施例1およ
び実施例2のスルホン化ポリアニリンのすべての硫黄原
子が−SO3 H基からのものではないかもしれないが、
少なくともポリアニリンの芳香環4個に対して2個以上
の−SO3 H基が導入されているのが確実である。
【0082】実施例7 実施例1、2、3および4のスルホン化ポリアニリン
0.1gとアルドリッチ製ポリアクリル酸(平均分子量
2000)0.1gを4mlのイオン交換水に溶解して
塗布液を作製し、洗浄したスライドガラス上にスピンコ
ートした。この薄膜を60℃で1時間乾燥した結果、淡
緑色の透明フィルムが得られた。これら実施例1、2、
3および4のスルホン化ポリアニリンーポリアクリル酸
樹脂組成物フィルムに金電極を蒸着して、表面抵抗を測
定した結果、それぞれ6.30×109 Ω/□、6.0
×106 Ω/□、3.82×1011Ω/□、および5.
12×1010Ω/□であった。
【0083】
【発明の効果】本発明により、従来のポリアニリンでは
なしえなっかった高い導電性を有する状態、すなわちド
ープ状態において水溶性であるスルホン化ポリアニアリ
ンを簡便な方法で得ることができる。本発明のスルホン
化ポリアニリンは単独または水溶性樹脂とブレンドし
て、スピンコート、ディップコート等の簡便な手法で薄
膜化でき、導電性薄膜として帯電防止等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の外部対イオンドープ型スルホン化
ポリアニリンのFT−IRスペクトルを示す。
【図2】 実施例2の外部対イオンドープ型スルホン化
ポリアニリンのFT−IRスペクトルを示す。
【図3】 比較例の自己ドープ型スルホン化ポリアニア
リンのFT−IRスペクトルを示す。
【図4】 実施例1のスルホン化ポリアニリン約0.2
g/1の水溶液10mlを1mmol/l水酸化ナトリ
ウム水溶液0、2、4、6、7、8、9、10、11、
12、14、16、17、18、19、20、22、2
4mlで中和したのち蒸留水を加えて全量100mlに
調製した水溶液の紫外−可視吸収スペクトルを示す。
【図5】 実施例2のスルホン化ポリアニリン約0.2
g/1の水溶液10mlを1mmol/l水酸化ナトリ
ウム水溶液0、2、4、6、8、10、12、14、1
6、17、18、20mlで中和したのち蒸留水を加え
て全量100mlに調製した水溶液の紫外−可視吸収ス
ペクトルを示す。
【図6】 実施例1のスルホン化ポリアニリンの有する
ポーラロンバンド吸収(波長1300nm)の吸光度変
化を水酸化ナトリウムの添加量に対してプロットした図
を示す。
【図7】 実施例1および実施例2のスルホン化ポリア
ニリン約0.1mol/l水溶液を0.1mol/l水
酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行った結果を水酸化
ナトリウムの添加量に対してプロットした図を示す。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアニリンの骨格の芳香環が芳香環1
    個当り平均して0.1〜4個のSO3 M(ただし、Mは
    水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子お
    よびアンモニウム基よりなる群から選ばれた少なくとも
    1種のものである。)で置換され、かつ平均して0〜
    3.9個のR(ただし、Rは水素原子、ハロゲン原子、
    炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20
    のアルコキシ基、炭素原子数1〜20のアルキルチオ
    基、炭素原子数1〜20のアルキルアミノ基、カルボキ
    シル基、エステル残基の炭素原子数が1〜20のカルボ
    ン酸エステル基、ニトロ基およびシアノ基よりなる群か
    ら選ばれた少なくとも1種のものである。ただし、SO
    3 MとRとの合計は4である。)で置換され、かつ該主
    骨格中の窒素原子1個当り0.025〜1個が外部ドー
    パントでドーピングされてなる水溶性導電性ポリアニリ
    ン。
  2. 【請求項2】 電気伝導度が10-6S/cm以上である
    状態で水に対する溶解度(25℃)が0.5重量%以上
    であり、外部ドーパントでドーピングされてなることを
    特徴とする水溶性導電性ポリアニリン。
  3. 【請求項3】 ポリアニリンをクロロ硫酸と反応させた
    のち、加水分解に供することを特徴とする請求項1に記
    載の水溶性導電性ポリアニリンの製造方法。
  4. 【請求項4】 該ポリアニリンは予めドーパントでドー
    プされてなる請求項3に記載の水溶性導電性ポリアニリ
    ンの製造方法。
  5. 【請求項5】 クロロ硫酸がポリアニリン骨格中の芳香
    環に対し0.5〜3倍モル用いられてなる請求項3また
    は4に記載の水溶性導電性ポリアニリンの製造方法。
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