JPH1055746A - 電子放出素子、それを用いた電子源及び画像形成装置、並びにそれらの駆動方法 - Google Patents

電子放出素子、それを用いた電子源及び画像形成装置、並びにそれらの駆動方法

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JPH1055746A
JPH1055746A JP22467996A JP22467996A JPH1055746A JP H1055746 A JPH1055746 A JP H1055746A JP 22467996 A JP22467996 A JP 22467996A JP 22467996 A JP22467996 A JP 22467996A JP H1055746 A JPH1055746 A JP H1055746A
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electron
emitting
emitting device
voltage
electrode
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JP22467996A
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Hirokatsu Miyata
浩克 宮田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高品位画像形成装置を実現し得る電子ビーム
源としての電子放出素子を提供する。 【解決手段】 各電子放出部5a,5bが夫々形成され
た各導電性膜4a,4bに接続する一方の電極2が共通
の電極であり、他方の電極がそれぞれ独立した電極3
a,3bであることを特徴とする電子放出素子。 【効果】 各電子放出部から交互に電子放出させると駆
動劣化が少なく、表示品位の低下を抑制することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子放出素子、該
電子放出素子を多数個配置してなる電子源、該電子源を
用いて構成した表示装置や露光装置等の画像形成装置及
びそれらの駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子としては大別し
て熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子の2種類が知ら
れている。冷陰極電子放出素子には電界放出型(以下、
「FE型」と称す。)、金属/絶縁層/金属型(以下、
「MIM型」と称す。)や表面伝導型電子放出素子等が
有る。
【0003】FE型の例としては、W.P.Dyke
and W.W.Dolan,“Field Emis
sion”,Advance in Electron
Physics,8,89(1956)あるいはC.
A.Spindt,“Physical Proper
ties of thin−filmfield em
ission cathodes withmolyb
denum cones”,J.Appl.Phy
s.,47,5248(1976)等に開示されたもの
が知られている。
【0004】MIM型の例としては、C.A.Mea
d,“Operation ofTunnel−Emi
ssion Devices”,J.Appl.Phy
s.,32,646(1961)等に開示されたものが
知られている。
【0005】表面伝導型電子放出素子の例としては、
M.I.Elinson,RadioEng.Elec
tron Phys.,10,1290(1965)等
に開示されたものがある。
【0006】表面伝導型電子放出素子は、絶縁性基板上
に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流す
ことにより、電子放出が生ずる現象を利用するものであ
る。この表面伝導型電子放出素子としては、前記エリン
ソン等によるSnO薄膜を用いたもの、Au薄膜によ
るもの[G.Dittmer:“ThinSolid
Films”,9,317(1972)]、In
/SnO薄膜によるもの[M.Hartwell a
nd C.G.Fonstad:“IEEE Tran
s.ED Conf.”,519(1975)]、カー
ボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、第
1号、22頁(1983)]等が報告されている。
【0007】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な例として、前述のM.ハートウェルの素子構成を図1
9に模式的に示す。同図において1は基板である。4は
導電性膜で、H型形状のパターンに形成された金属酸化
物薄膜等からなり、後述の通電フォーミングと呼ばれる
通電処理により電子放出部5が形成される。尚、図中の
素子電極間隔Lは、0.5〜1mm、W’は、0.1m
mで設定されている。
【0008】これらの表面伝導型電子放出素子において
は、電子放出を行う前に導電性膜4を予め通電フォーミ
ングと呼ばれる通電処理によって電子放出部5を形成す
るのが一般的である。即ち、通電フォーミングとは、前
記導電性膜4の両端に電圧を印加通電し、導電性膜4を
局所的に破壊、変形もしくは変質させて構造を変化さ
せ、電気的に高抵抗な状態の電子放出部5を形成する処
理である。尚、電子放出部5では導電性膜4の一部に亀
裂が発生しており、その亀裂付近から電子放出が行われ
る。
【0009】上述の表面伝導型電子放出素子は、構造が
単純であることから、大面積に亙って多数素子を配列形
成できる利点がある。そこで、この特徴を活かすための
種々の応用が研究されている。例えば、荷電ビーム源、
表示装置等の画像形成装置への利用が挙げられる。
【0010】従来、多数の表面伝導型電子放出素子を配
列形成した例としては、並列に表面伝導型電子放出素子
を配列し、個々の表面伝導型電子放出素子の両端(両素
子電極)を配線(共通配線とも呼ぶ)にて夫々結線した
行を多数行配列(梯子型配置とも呼ぶ)した電子源が挙
げられる(例えば、特開昭64−31332号公報、特
開平1−283749号公報、同2−257552号公
報)。
【0011】また、特に表示装置においては、液晶を用
いた表示装置と同様の平板型表示装置とすることが可能
で、しかもバックライトが不要な自発光型の表示装置と
して、表面伝導型電子放出素子を多数配置した電子源
と、この電子源からの電子線の照射により可視光を発光
する蛍光体とを組み合わせた表示装置が提案されている
(アメリカ特許第5066883号明細書)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来の表面伝導型電子放出素子においては、次のような問
題点があった。
【0013】前述のようにフォーミング処理を施した素
子は、基本的には後述する活性化工程を施すことによっ
て電子放出機能を有するものとなる。しかし、このよう
にして電子放出機能を持つに至った素子は、高真空中で
の駆動により徐々に電子放出量が減少する傾向を示す。
かかる電子放出特性の劣化は、電子放出素子を画像形成
装置等に応用した場合には、直接、輝点の形状や明るさ
の低下につながるために重大な欠陥となる。
【0014】本発明は、上記問題を鑑み、駆動劣化が少
なく、安定した電子放出特性を実現する電子放出素子、
更には、表示品位の低下を抑制し、安定な表示特性を示
す画像形成装置を提供することを目的とするものであ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成する本
発明の構成は、以下の通りである。
【0016】即ち、本発明の第一は、電極間を接続する
導電性膜に形成された電子放出部を複数有する電子放出
素子において、各電子放出部が形成された導電性膜に接
続する一方の電極が共通電極であり、他方の電極が独立
電極であることを特徴とする電子放出素子にある。
【0017】上記本発明第一の電子放出素子は、更にそ
の特徴として、「前記複数の電子放出部から放出された
電子ビームが、ほぼ同一の点に到達するように配置され
ている」こと、「表面伝導型電子放出素子である」こ
と、をも含むものである。
【0018】また、本発明の第二は、上記本発明第一の
電子放出素子の駆動方法であって、前記複数の電子放出
部から順次交代で電子放出させることを特徴とする電子
放出素子の駆動方法にある。
【0019】また、本発明の第三は、基板上に、複数の
電子放出素子が配列された電子源において、前記電子放
出素子が、上記本発明第一に記載の電子放出素子である
ことを特徴とする電子源にある。
【0020】上記本発明第三の電子源は、更にその特徴
として、「前記複数の電子放出素子がマトリクス状に配
置されており、個々の電子放出素子の共通電極を行配線
に接続し、個々の電子放出素子の各独立電極を前記行配
線と直交するそれぞれ異なる列配線に接続した」こと、
「前記電子放出素子の複数が梯子状に配置されており、
個々の電子放出素子の共通電極を第一の行配線に接続
し、個々の電子放出素子の各独立電極をそれぞれ異なる
第二の行配線に接続し、更に変調手段を設けた」こと、
をも含むものである。
【0021】また、本発明の第四は、上記本発明第三の
電子源の駆動方法であって、各電子放出素子の複数の電
子放出部から順次交代で電子放出させることを特徴とす
る電子源の駆動方法にある。
【0022】また、本発明の第五は、基板上に、複数の
電子放出素子が配列された電子源と、該電子源から放出
される電子線の照射により画像を形成する画像形成部材
とを有する画像形成装置において、前記電子源が、上記
本発明第三の電子源であることを特徴とする画像形成装
置にある。
【0023】上記本発明第五の画像形成装置は、更にそ
の特徴として、「上記電子源の同一の電子放出素子に含
まれる複数の電子放出部より放出された電子ビームが、
上記画像形成部材の同一の画素を照射する」こと、をも
含むものである。
【0024】更に、本発明の第六は、上記本発明第五の
画像形成装置の駆動方法であって、各電子放出素子の複
数の電子放出部から順次交代で電子放出させることを特
徴とする画像形成装置の駆動方法にある。
【0025】上記本発明第六の駆動方法は、更にその特
徴として、「1フレーム毎に各電子放出素子の複数の電
子放出部から順次交代で電子放出させる」ことをも含む
ものである。
【0026】
【発明の実施の形態】次に、本発明の好ましい実施態様
を示す。
【0027】本発明を適用し得る電子放出素子は、先述
したような冷陰極型の電子放出素子に分類されるもの
で、電子放出機構の点から表面伝導型の電子放出素子と
云える。
【0028】本発明を適用し得る表面伝導型電子放出素
子の基本的構成には大別して、平面型及び垂直型の2つ
がある。
【0029】まず、平面型の表面伝導型電子放出素子に
ついて説明する。
【0030】図1は、2つの電子放出部を有する本発明
の平面型の表面伝導型電子放出素子の一構成例を示す模
式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は縦断面
図である。図1において、1は基板、2は共通電極、3
a,3bは独立電極、4a,4bは導電性膜、5a,5
bは電子放出部である。
【0031】基板1としては、石英ガラス、Na等の不
純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス、青板ガラ
スにスパッタ法等によりSiO2 を積層した積層体、ア
ルミナ等のセラミックス及びSi基板等を用いることが
できる。
【0032】共通電極2及び独立電極3a,3bの材料
としては、一般的な導体材料を用いることができ、例え
ばNi、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、C
u、Pd等の金属或は合金及びPd、Ag、Au、Ru
2 、Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等か
ら構成される印刷導体、In23 −SnO2 等の透明
導電体及びポリシリコン等の半導体導体材料等から適宜
選択される。
【0033】電極間隔L、電極長さW、導電性膜4a,
4bの形状等は、応用される形態等を考慮して、設計さ
れる。電極間隔Lは、好ましくは、数百nmから数百μ
mの範囲とすることができ、より好ましくは、電極間に
印加する電圧等を考慮して1μmから100μmの範囲
とすることができる。
【0034】電極長さWは、電極の抵抗値、電子放出特
性を考慮して、数μmから数百μmの範囲とすることが
できる。また、電極の膜厚dは、10nmから数μmの
範囲とすることができる。
【0035】尚、図1に示した構成だけでなく、基板1
上に、導電性膜4、各電極2,3a,3bの順に積層し
た構成とすることもできる。
【0036】導電性膜4a,4bを構成する材料として
は、例えばPd,Pt,Ru,Ag,Au,Ti,I
n,Cu,Cr,Fe,Zn,Sn,Ta,W,Pb等
の金属、PdO,SnO2 ,In23 ,PbO,Sb
23 等の酸化物、HfB2 ,ZrB2 ,LaB6 ,C
eB6 ,YB4 ,GdB4 等の硼化物、TiC,Zr
C,HfC,TaC,SiC,WCなどの炭化物、Ti
N,ZrN,HfN等の窒化物、Si,Ge等の半導
体、カーボン等が挙げられる。
【0037】導電性膜4a,4bには、良好な電子放出
特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用い
るのが好ましい。その膜厚は、各電極へのステップカバ
レージ、電極間の抵抗値等を考慮して適宜設定されが、
通常は、数Å〜数百nmの範囲とするのが好ましく、よ
り好ましくは1nm〜50nmの範囲とするのが良い。
その抵抗値は、Rsが102 Ω/□から107 Ω/□の
値である。なおRsは、幅がwで長さがlの薄膜の長さ
方向に測定した抵抗Rを、R=Rs(l/w)と置いた
ときに表れる値である。
【0038】ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子
が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子が個々に
分散配置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接、あ
るいは重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、
全体として島状構造を形成している場合も含む)をとっ
ている。微粒子の粒径は、数Åから数百nmの範囲、好
ましくは、1nmから20nmの範囲である。
【0039】なお、本明細書では頻繁に「微粒子」とい
う言葉を用いるので、その意味について説明する。
【0040】小さな粒子を「微粒子」と呼び、これより
も小さなものを「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」より
もさらに小さく、原子の数が数百個程度以下のものを
「クラスター」と呼ぶことは広く行われている。
【0041】しかしながら、それぞれの境は厳密なもの
ではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変
化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微
粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに
沿ったものである。
【0042】例えば、「実験物理学講座14 表面・微
粒子」(木下是雄 編、共立出版1986年9月1日発
行)では、「本稿で微粒子と言うときにはその直径がだ
いたい2〜3μm程度から10nm程度までとし、特に
超微粒子というときは粒径が10nm程度から2〜3n
m程度までを意味することにする。両者を一括して単に
微粒子と書くこともあってけっして厳密なものではな
く、だいたいの目安である。粒子を構成する原子の数が
2個から数十〜数百個程度の場合はクラスターと呼
ぶ。」(195ページ 22〜26行目)と記述されて
いる。
【0043】付言すると、新技術開発事業団の“林・超
微粒子プロジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径
の下限はさらに小さく、次のようなものであった。
【0044】「創造科学技術推進制度の“超微粒子プロ
ジェクト”(1981〜1986)では、粒子の大きさ
(径)がおよそ1〜100nmの範囲のものを“超微粒
子”(ultra fine particle)と呼
ぶことにした。すると1個の超微粒子はおよそ100〜
108 個くらいの原子の集合体という事になる。原子の
尺度でみれば超微粒子は大〜巨大粒子である。」(「超
微粒子−創造科学技術」林主税、上田良二、田崎明
編;三田出版 1988年 2ページ1〜4行目)/
「超微粒子よりさらに小さいもの、すなわち原子が数個
〜数百個で構成される1個の粒子は、ふつうクラスター
と呼ばれる」(同書2ページ12〜13行目)。
【0045】上記のような一般的な呼び方をふまえて、
本明細書において「微粒子」とは多数の原子・分子の集
合体で、粒径の下限は数Å〜1nm程度、上限は数μm
程度のものを指すこととする。
【0046】電子放出部5a,5bは、それぞれ導電性
膜4a,4bの一部に形成された亀裂領域により構成さ
れ、導電性膜の膜厚,膜質,材料及び後述する通電フォ
ーミング等の手法等に依存したものとなる。電子放出部
5a,5bの内部には、数Åから数十nmの範囲の粒径
の導電性微粒子が存在する場合もある。この導電性微粒
子は、導電性膜4a,4bを構成する材料の元素の一
部、あるいは全ての元素を含有するものとなる。電子放
出部及びその近傍の導電性膜には、炭素あるいは炭素化
合物を有する場合もある。
【0047】次に、垂直型の表面伝導型電子放出素子に
ついて説明する。
【0048】図2は、2つの電子放出部を有する本発明
の垂直型の表面伝導型電子放出素子の一構成例を示す模
式図であり、図1に示した部位と同じ部位には図1に付
した符号と同一の符号を付している。6a,6bは段差
形成部である。基板1、共通電極2及び独立電極3a,
3b、導電性膜4、電子放出部5a,5bは、前述した
平面型の表面伝導型電子放出素子の場合と同様の材料で
構成することができる。段差形成部6a,6bは、真空
蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成されたSiO2
の絶縁性材料で構成することができる。段差形成部6
a,6bの膜厚は、先に述べた平面型の表面伝導型電子
放出素子の電極間隔Lに対応し、数百nmから数十μm
の範囲とすることができる。この膜厚は、段差形成部の
製法、及び、電極間に印加する電圧を考慮して設定され
るが、数十nmから数μmの範囲が好ましい。尚、導電
性膜4は、各電極と段差形成部の作製後に、各電極の上
に積層される。
【0049】図1の平面型の表面伝導型電子放出素子に
おいては導電性膜が2つに分離され、図2の垂直型の表
面伝導型電子放出素子においては導電性膜が分離されて
いないが、これらとは逆に、導電性膜を分離させずに平
面型の表面伝導型電子放出素子を構成するもでき、導電
性膜を2つに分離して垂直型の表面伝導型電子放出素子
を構成することもできる。
【0050】本発明の表面伝導型電子放出素子の製造方
法としては様々な方法があるが、その一例を図3に基づ
いて説明する。尚、図3においても図1に示した部位と
同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付してい
る。
【0051】1)基板1を洗剤、純水及び有機溶剤等を
用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により
素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技
術を用いて基板1上に共通電極2及び独立電極3a,3
bを形成する(図3(a))。
【0052】2)各電極を設けた基板1上に、有機金属
溶液を塗布して有機金属薄膜を形成し、該有機金属薄膜
を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッチング等によりパ
ターニングし、導電性膜4a,4bを形成する(図3
(b))。有機金属溶液には、前述の導電性膜の材料の
金属を主元素とする有機化合物の溶液を用いることがで
きる。ここでは有機金属溶液の塗布法を挙げて説明した
が、導電性膜の形成法はこれに限定されるものではな
く、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積法、分散
塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用いること
もできる。
【0053】3)続いて、フォーミング処理を施す。こ
のフォーミング処理には通電処理法、微細加工技術を用
いた方法等、種々の方法があるが、ここではその一例と
して通電処理による方法を説明する。
【0054】共通電極2と独立電極3a,3b間に、そ
れぞれ不図示の電源より通電すると、導電性膜4a,4
bの部位に、構造の変化した電子放出部5a,5bが形
成される(図3(c))。通電フォーミングの電圧波形
の例を図4に示す。
【0055】電圧波形は、特にパルス波形が好ましい。
これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に
印加する図4(a)に示した手法と、パルス波高値を増
加させながらパルスを印加する図4(b)に示した手法
がある。
【0056】まず、パルス波高値を定電圧とした場合に
ついて図4(a)で説明する。図4(a)におけるT1
及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通
常、T1は1μ秒〜10m秒、T2は10μ秒〜100
m秒の範囲で設定される。三角波の波高値(通電フォー
ミング時のピーク電圧)は、表面伝導型電子放出素子の
形態に応じて適宜選択される。このような条件のもと、
例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。パルス波形
は、三角波に限定されるものではなく、矩形波等の所望
の波形を採用することができる。
【0057】次に、パルス波高値を増加させながら電圧
パルスを印加する場合について図4(b)で説明する。
図4(b)におけるT1及びT2は、図4(a)に示し
たのと同様とすることができる。三角波の波高値(通電
フォーミング時のピーク電圧)は、例えば0.1Vステ
ップ程度づつ、増加させることができる。
【0058】通電フォーミング処理の終了は、パルス間
隔T2中に、導電性膜4a,4bを局所的に破壊,変形
しない程度の電圧を印加し、電流を測定して検知するこ
とができる。例えば0.1V程度の電圧印加により流れ
る電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を
示した時に通電フォーミングを終了させることができ
る。
【0059】4)フォーミングを終えた素子には、活性
化処理を施すのが好ましい。この活性化処理により、素
子電流If及び放出電流Ieを著しく変化させることが
できる。
【0060】活性化処理は、例えば、有機物質のガスを
含有する雰囲気下で、共通電極2と独立電極3a,3b
の間に通電フォーミングと同様にパルスの印加を繰り返
すことで行うことができる。この雰囲気は、例えば油拡
散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空容器内を
排気した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを利用して
形成することができる他、イオンポンプなどにより一旦
十分に排気した真空中に適当な有機物質のガスを導入す
ることによっても得られる。このときの好ましい有機物
質のガス圧は、前述の素子電極の形態、真空容器の形状
や、有機物質の種類などにより異なるため、場合に応じ
適宜設定される。適当な有機物質としては、アルカン、
アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水
素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン
類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等
を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタン、プ
ロパンなどCn2n+2で表される飽和炭化水素、エチレ
ン、プロピレンなどCn2n等の組成式で表される不飽
和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノ
ール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミ
ン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用で
きる。この処理により、雰囲気中に存在する有機物質か
ら、炭素あるいは炭素化合物が電子放出部5a,5b及
びその周囲に堆積し、素子電流If,放出電流Ieが、
著しく変化して増加するようになる。
【0061】炭素及び炭素化合物とは、例えばグラファ
イト(いわゆるHOPG,PG,GCを包含するもの
で、HOPGはほぼ完全なグラファイト結晶構造、PG
は結晶粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたもの、
GCは結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れがさら
に大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモ
ルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グ
ラファイトの微結晶の混合物を指す。)であり、その膜
厚は、50nm以下の範囲とするのが好ましく、30n
m以下の範囲とすることがより好ましい。
【0062】活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと
放出電流Ieを測定しながら、適宜行うことができる。
なお、パルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜
設定される。
【0063】5)このような工程を経て得られた電子放
出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程
は、素子を配置した真空容器内の有機物質を排気する工
程である。真空容器を排気する真空排気装置は、装置か
ら発生するオイルが素子の特性に影響を与えないよう
に、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具
体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空
排気装置を挙げることが出来る。
【0064】前記活性化の工程で、排気装置として油拡
散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生する
オイル成分に由来する有機ガスを用いた場合には、この
成分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の
有機成分の分圧は、上記炭素あるいは炭素化合物がほぼ
新たに堆積しない分圧で1×10-6Pa以下が好まし
く、さらには1×10-8Pa以下が特に好ましい。さら
に真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱
して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した有機物
質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加
熱条件は、80〜200℃好ましくは150℃以上で、
できるだけ長時間処理するのが望ましいが、特にこの条
件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子
放出素子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件に
より行う。真空容器内の圧力は極力低くすることが必要
で、1〜3×10-5Pa以下が好ましく、さらには1×
10-6Pa以下が特に好ましい。
【0065】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、圧力自体は多少上昇しても十分安定な特
性を維持することが出来る。このような真空雰囲気を採
用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆
積を抑制でき、結果として素子電流If,放出電流Ie
が、安定する。
【0066】上述した工程を経て得られた本発明の電子
放出素子の基本特性について、図5,図6を参照しなが
ら説明する。
【0067】図5は、真空処理装置の一例を示す模式図
であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能
をも兼ね備えている。図5においても、図1に示した部
位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付し
ている。
【0068】図5において、55は真空容器であり、5
6は排気ポンプである。真空容器55内には電子放出素
子が配されている。また、51は電子放出素子に素子電
圧Vfを印加するための電源、50は各導電性膜4a,
4bを流れる素子電流Ifを測定するための電流計、5
4は各電子放出部5a,5bより放出される放出電流I
eを捕捉するためのアノード電極、53はアノード電極
54に電圧を印加するための高圧電源、52は各電子放
出部5a,5bより放出される放出電流Ieを測定する
ための電流計である。一例として、アノード電極54の
電圧を1KV〜10KVの範囲とし、アノード電極54
と電子放出素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲とし
て測定を行うことができる。
【0069】真空容器55内には、不図示の真空計等の
真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、
所望の真空雰囲気下での測定評価を行えるようになって
いる。
【0070】排気ポンプ56は、ターボポンプ、ロータ
リーポンプ等からなる通常の高真空装置系と、イオンポ
ンプ等からなる超高真空装置系とにより構成されてい
る。ここに示した電子放出素子基板を配した真空処理装
置の全体は、不図示のヒーターにより加熱できる。従っ
て、この真空処理装置を用いると、前述の通電フォーミ
ング以降の工程も行うことができる。
【0071】図6は、図5に示した真空処理装置を用い
て測定された放出電流Ie及び素子電流Ifと、素子電
圧Vfとの関係を模式的に示した図である。図6におい
ては、放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さ
いので、任意単位で示している。尚、縦・横軸ともリニ
アスケールである。
【0072】図6からも明らかなように、本発明を適用
可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに関し
て次の3つの特徴的性質を有する。
【0073】即ち、第1に、本素子はある電圧(閾値電
圧と呼ぶ;図6中のVth)以上の素子電圧を印加する
と急激に放出電流Ieが増加し、一方閾値電圧Vth以
下では放出電流Ieが殆ど検出されない。つまり、放出
電流Ieに対する明確な閾値電圧Vthを持った非線形
素子である。
【0074】第2に、放出電流Ieが素子電圧Vfに単
調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制
御できる。
【0075】第3に、アノード電極54(図5参照)に
捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に
依存する。つまり、アノード電極54に捕捉される電荷
量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0076】以上の説明より理解されるように、本発明
を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に応
じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。こ
の性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成し
た電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能とな
る。
【0077】図6においては、素子電流Ifが素子電圧
Vfに対して単調増加する(MI特性)例を示したが、
素子電流Ifが素子電圧Vfに対して電圧制御型負性抵
抗特性(VCNR特性)を示す場合もある(不図示)。
これらの特性は、前述の工程を制御することで制御でき
る。
【0078】先述したように、本発明において用いてい
る表面伝導型電子放出素子には、真空中での駆動に際
し、一般に素子電流If及び放出電流Ieの双方に経時
的な劣化が認められる。本発明者らの研究によれば、か
かる素子の駆動に伴う劣化の速度は、駆動電圧及び駆動
時のパルス間隔により大きく変化し、駆動電圧が高いほ
ど劣化は大きい。しかし、駆動電圧は前述のように電子
放出量とトレードオフの関係があるため、駆動電圧によ
る改善は困難である。
【0079】そこで、駆動時のパルス間隔を変化させた
場合の放出電流の劣化について検討した結果、パルスの
間隔が長いほど素子電流If及び放出電流Ieの劣化は
遅いということがわかった。図7は、パルス幅1m秒の
パルスを、パルス間隔10m秒、20m秒、50m秒、
100m秒と変化させて素子に印加して駆動させた場合
の放出電流Ieの概略の劣化挙動の差異を模式的に示し
たものである。横軸のスケールは印加されたパルス数を
対数目盛で示したものである。素子電流Ifもほぼ放出
電流Ieと同様な劣化挙動を示し、電子放出効率(Ie
/If)は劣化によって大きく変化することはなかっ
た。
【0080】本発明は、このような駆動時のパルス間隔
依存性を利用して素子の劣化速度を遅くするもので、具
体的には、図1及び図2に示したように1つの電子放出
素子中に独立して駆動可能な複数の電子放出部を形成
し、各電子放出部を順次駆動させる構成をとることによ
り、長時間使用による輝度の低下の少ない電子放出素子
を実現している。そして、かかる電子放出素子を画像形
成装置の電子ビーム源として用いることにより、表示特
性に優れた画像形成装置を実現できる。
【0081】図1に示したような平面型の表面伝導型電
子放出素子の駆動に際しては、共通電極2を陽極、各独
立電極3a,3bを陰極とし、図5に示したような駆動
系により各電子放出部5a,5bから交互に電子放出す
るように給電することができる。この場合、放出された
電子は、それぞれ57a及び57b(図5参照)で模式
的に示されるような軌道を描いてアノード電極54に到
達するが、これらの軌道は陽極(すなわち共通電極2)
に対して対称となるため、各電極及び導電性膜の幅,厚
さ、アノード電圧等を適宜設定することで、各電子放出
部から放出される電子の到達点をほぼ同一の点にするこ
とが可能となる。
【0082】図2に示したような垂直型の表面伝導型電
子放出素子の場合には、共通電極2を陰極、各独立電極
3a,3bを陽極として駆動するのが望ましく、この点
は平面型の表面伝導型電子放出素子と逆である。かかる
垂直型の表面伝導型電子放出素子においても、各電子放
出部5a,5bから交互に電子放出するように給電して
駆動する。この場合にも、各電極及び導電性膜の幅,厚
さ、アノード電圧等を適宜設定することで、各電子放出
部から放出される電子の到達点をほぼ同一の点にするこ
とが可能となる。
【0083】また、図8に示すような、4つの電子放出
部5a〜5dを有する平面型の表面伝導型電子放出素子
の場合にも、共通電極2を陽極、各独立電極3a〜3d
を陰極とし、各電子放出部5a〜5dから順次交代で電
子放出するように給電して駆動する。この場合、電子放
出部5aと5b及び電子放出部5cと5dの夫々の組は
共通電極2に対して対称となるため、各電極及び導電性
膜の幅,厚さ、アノード電圧等を適宜設定することで、
同じ組の電子放出部から放出される電子の到達点をほぼ
同一の点にすることが可能となる。しかし、異なる組の
電子放出部(例えば電子放出部5aと5c)から放出さ
れる電子の到達点は、互いに電子放出部の間隔分だけず
れることになる。また、図9に4つの電子放出部5a〜
5d(但し5b,5dは隠れた位置にある)を有する垂
直型の表面伝導型電子放出素子を示したが、このような
素子の場合にも、異なる組の電子放出部(例えば電子放
出部5aと5c)から放出される電子の到達点は、互い
に電子放出部の間隔分だけずれることになる。
【0084】従って、複数の電子放出部を有する本発明
の電子放出素子を、例えば画像形成装置の1画素に対応
させて用いる場合には、表示特性及び電子ビームの制御
面からいえば特に2個の電子放出部を有するものが好ま
しく用いられる。
【0085】次に、本発明の電子放出素子の応用例につ
いて述べる。本発明の表面伝導型電子放出素子を複数個
基板上に配列し、例えば電子源あるいは、画像形成装置
が構成できる。
【0086】電子放出素子の配列については、種々のも
のが採用できる。一例として、梯子状配置のものがあ
る。これは、例えば図1,図2,図8,図9に示したよ
うな表面伝導型電子放出素子を用いる場合には、行方向
に多数個配置した各電子放出素子の共通電極2どうし、
及び各電子放出素子の同じ位置に配置された独立電極3
a,3b(あるいは3a〜3d)どうしを同一の行方向
配線に接続し、かかる行を多数個配し、この配線と直交
する方向(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に
配した制御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出
素子からの電子を制御駆動するものである。この場合、
図1または図8に示したような平面型の表面伝導型電子
放出素子を用いたときには、共通電極2を陽極、各独立
電極3a,3b(あるいは3a〜3d)を陰極とし、図
2または図9に示したような垂直型の表面伝導型電子放
出素子を用いたときには、共通電極2を陰極、各独立電
極3a,3b(あるいは3a〜3d)を陽極とし、各独
立電極を接続した複数の配線に対して交互に給電がなさ
れる。
【0087】これとは別に、電子放出素子をX方向及び
Y方向に行列状に複数個配し、同じ行に配された各電子
放出素子の共通電極2を、X方向の配線に共通に接続
し、同じ列に配された各電子放出素子の同じ位置に配置
された独立電極3a,3b(あるいは3a〜3d)どう
しを複数のY方向の配線に共通に接続するものが挙げら
れる。このようなものは所謂単純マトリクス配置であ
る。この場合においても、図1または図8に示したよう
な平面型の表面伝導型電子放出素子を用いたときには、
共通電極2を陽極、各独立電極3a,3b(あるいは3
a〜3d)を陰極とし、図2または図9に示したような
垂直型の表面伝導型電子放出素子を用いたときには、共
通電極2を陰極、各独立電極3a,3b(あるいは3a
〜3d)を陽極とし、各電子放出素子の複数の独立電極
にそれぞれ接続された複数のX方向配線に対して交互に
給電がなされる。もちろん、共通電極2をY方向、独立
電極3a,3b(あるいは3a〜3d)をX方向に接続
してもかまわない。
【0088】まず単純マトリクス配置について以下に詳
述する。
【0089】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素
子については、前述した通り3つの特性がある。即ち、
表面伝導型電子放出素子からの放出電子は、閾値電圧以
上では、対向する素子電極間に印加するパルス状電圧の
波高値と幅で制御できる。一方、閾値電圧以下では、殆
ど放出されない。この特性によれば、多数の電子放出素
子を配置した場合においても、個々の素子にパルス状電
圧を適宜印加すれば、入力信号に応じて、表面伝導型電
子放出素子を選択して電子放出量を制御できる。
【0090】以下この原理に基づき、複数の電子放出部
を有する本発明の電子放出素子を複数配して得られる電
子源基板について、図10を用いて説明する。図10
は、図1に示したような、1素子中に2つの電子放出部
を有する平面型の表面伝導型電子放出素子を用いた場合
の模式図であるが、本発明の適用可能な電子放出素子の
配置はこれに限定されるものではない。図10におい
て、1101は電子源基板、1102は各素子の独立電
極3aに接続されたX方向配線、1103は各素子の独
立電極3bに接続されたX方向配線、1104は各素子
の共通電極2に接続されたY方向配線である。また、1
105は結線である。
【0091】各素子の電子放出部5aから電子放出をさ
せる場合に給電されるm本のX方向配線1102は、D
xa1,Dxa2,……,Dxamからなり、各素子の
電子放出部5bから電子放出をさせる場合に給電される
m本のX方向配線1103は、Dxb1,Dxb2,…
…,Dxbmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ
法等を用いて形成された導電性金属等で構成することが
できる。配線の材料、膜厚、幅は適宜設計される。Y方
向配線1104は、Dy1,Dy2,……,Dynのn
本の配線よりなり、X方向配線1102,1103と同
様に形成される。これらm本ずつのX方向配線1102
と1103との間、及びこれら計2m本のX方向配線と
n本のY方向配線1104との間には、不図示の層間絶
縁層が設けられており、これらの配線間を電気的に分離
している(m,nは、共に正の整数)。
【0092】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2 等で構成
される。例えば、一方のX方向配線1102を形成した
基板1101の全面或は一部に所望の形状で形成され、
その上にもう一方のX方向配線1103を形成した後、
さらに基板1101の全面或は一部に形成される。特
に、X方向配線1102,1103とY方向配線110
4の交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製
法が適宜設定される。X方向配線1102,1103と
Y方向配線1104は、それぞれ外部端子として引き出
されている。
【0093】表面伝導型電子放出素子を構成する共通電
極2とY方向配線1104、独立電極3aとm本のX方
向配線1102、独立電極3bともう一つのm本のX方
向配線1103とは、それぞれ導電性金属等からなる結
線1105によって電気的に接続されている。
【0094】配線1102,1103,1104を構成
する材料、結線1105を構成する材料及び素子電極
2,3a,3bを構成する材料は、その構成元素の一部
あるいは全部が同一であっても、また夫々異なってもよ
い。これらの材料は、例えば前述の素子電極の材料より
適宜選択される。素子電極を構成する材料と配線材料が
同一である場合には、素子電極に接続した配線は素子電
極ということもできる。
【0095】X方向配線1102,1103には、X方
向に配列した表面伝導型電子放出素子の行を選択するた
めの走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接
続される。走査信号は、各素子の電子放出部5aから電
子放出させるためのX方向配線1102のDxa1から
Dxamまで順次印加された後、各素子の電子放出部5
bから電子放出させるためのX方向配線1103のDx
b1からDxbmまで順次印加される。つまり、X方向
配線1102と1103には交互に給電が行われる。一
方、Y方向配線1104には、Y方向に配列した表面伝
導型電子放出素子の各列を入力信号に応じて変調するた
めの、不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子
放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加され
る走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0096】上記構成においては、単純なマトリクス配
線を用いて、個別の素子の個別の電子放出部を選択し、
独立に駆動可能とすることができる。
【0097】図10に示したような単純マトリクス配置
の電子源を用いて構成した画像形成装置について、図1
1と図12及び図13を用いて説明する。図11は、画
像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図であり、図
12は、図11の画像形成装置に使用される蛍光膜の模
式図である。図13は、NTSC方式のテレビ信号に応
じて表示を行うための駆動回路の一例を示すブロック図
である。
【0098】図11において、図10に示した部位と同
じ部位には図10に付した符号と同じ符号を付してい
る。図11中、1101は電子放出素子を複数配した電
子源基板、1201は電子源基板1101を固定したリ
アプレート、1206はガラス基板1203の内面に蛍
光膜1104とメタルバック1105等が形成されたフ
ェースプレートである。1202は支持枠であり、該支
持枠1102には、リアプレート1101、フェースプ
レート1106がフリットガラス等を用いて接続されて
いる。1207は外囲器であり、例えば大気中あるいは
窒素中で、400〜500℃の温度範囲で10分間以上
焼成することで、封着して構成される。
【0099】1209は、図1に示したような平面型の
表面伝導型電子放出素子である。1208は高圧端子で
あり、直流電圧源より例えば10K[V]の直流電圧が
供給される。かかる直流電圧は、表面伝導型電子放出素
子1209から放出される電子ビームに、蛍光体を励起
するのに十分なエネルギーを付与するための加速電圧で
ある。
【0100】外囲器1207は、上述の如く、フェース
プレート1206、支持枠1202、リアプレート12
01で構成される。リアプレート1201は主に電子源
基板1101の強度を補強する目的で設けられるため、
電子源基板1101自体で十分な強度を持つ場合は別体
のリアプレート1201は不要とすることができる。即
ち、電子源基板1101に直接支持枠1202を封着
し、フェースプレート1206、支持枠1202及び電
子源基板1101で外囲器1207を構成してもよい。
一方、フェースプレート1206とリアプレート120
1の間に、スぺーサーと呼ばれる不図示の支持体を設置
することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲
器1207を構成することもできる。
【0101】図12は、蛍光膜を示す模式図である。蛍
光膜1204は、モノクロームの場合は蛍光体のみで構
成することができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体
の配列により、ブラックストライプ(図12(a))あ
るいはブラックマトリクス(図12(b))等と呼ばれ
る黒色導電材1301と蛍光体1302とから構成する
ことができる。ブラックストライプ、ブラックマトリク
スを設ける目的は、カラー表示の場合、必要となる三原
色蛍光体の各蛍光体1302間の塗り分け部を黒くする
ことで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜1204
における外光反射によるコントラストの低下を抑制する
ことにある。黒色導電材1301の材料としては、通常
用いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性が
あり、光の透過及び反射が少ない材料を用いることがで
きる。
【0102】ガラス基板1203に蛍光体を塗布する方
法は、モノクローム、カラーによらず、沈澱法や印刷法
等が採用できる。蛍光膜1204の内面側には、通常メ
タルバック1205が設けられる。メタルバックを設け
る目的は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェース
プレート1206側へ鏡面反射することにより輝度を向
上させること、電子ビーム加速電圧を印加するための電
極として作用させること、外囲器内で発生した負イオン
の衝突によるダメージから蛍光体を保護すること等であ
る。メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表
面の平滑化処理(通常、「フィルミング」と呼ばれ
る。)を行い、その後Alを真空蒸着等を用いて堆積さ
せることで作製できる。
【0103】フェースプレート1206には、更に蛍光
膜1204の導電性を高めるため、蛍光膜1204の外
面側に透明電極(不図示)を設けてもよい。
【0104】前述の封着を行う際、カラーの場合は各色
蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、十分
な位置合わせが不可欠となる。
【0105】図11に示した画像形成装置は、例えば以
下のようにして製造される。
【0106】外囲器1207内は、前述の安定化工程と
同様に、適宜加熱しながら、イオンポンプ、ソープショ
ンポンプ等のオイルを使用しない排気装置により不図示
の排気管を通じて排気し、10-5Pa程度の真空度の有
機物質の十分に少ない雰囲気にした後、封止が成され
る。外囲器1207の封止後の真空度を維持するため
に、ゲッター処理を行うこともできる。これは、外囲器
1207の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱
あるいは高周波加熱等を用いた加熱により、外囲器12
07内の所定の位置に配置されたゲッター(不図示)を
加熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常
Ba等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、例
えば10-5Pa以上の真空度を維持するものである。こ
こで、表面伝導型電子放出素子のフォーミング処理以降
の工程は適宜設定できる。
【0107】次に、単純マトリクス配置の電子源を用い
て構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に
基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例
について、図13を用いて説明する。図13において、
1401は図12に示したような画像表示パネル、14
02は走査回路、1403は制御回路、1404はシフ
トレジスタ、1405はラインメモリ、1406は同期
信号分離回路、1407は変調信号発生器、Vx及びV
aは直流電圧源である。
【0108】表示パネル1401は、端子Dxa1乃至
Dxam、端子Dxb1乃至Dxbm、端子Dy1乃至
Dyn、及び高圧端子1208を介して外部の電気回路
と接続している。端子Dxa1乃至Dxam及び端子D
xb1乃至Dxbmには、表示パネル1401内に設け
られている電子源、即ち、m行n列の行列状にマトリク
ス配線された表面伝導型電子放出素子群を1行(n素
子)ずつ順次駆動する為の走査信号が印加される。端子
Dxa1乃至Dxam、及び端子Dxb1乃至Dxbm
の計2m個の端子に信号を印加する順序としては、例え
ば端子Dxa1からDxamまで走査信号が印加された
後、端子Dxb1からDxbmまで信号が印加され、再
び端子Dxa1からDxamまでといった順に走査信号
が印加される方法、即ちDxaのm個の端子とDxbの
m個の端子に対して交互に信号が印加される方法が用い
られる。
【0109】端子Dy1乃至Dynには、前記走査信号
により選択された1行の表面伝導型電子放出素子の各素
子の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加され
る。高圧端子1208には、直流電圧源Vaより、例え
ば10K[V]の直流電圧が供給されるが、これは表面
伝導型電子放出素子から放出される電子ビームに、蛍光
体を励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速
電圧である。
【0110】走査回路1402について説明する。同回
路は、内部に2m個のスイッチング素子(図中、S1乃
至S2mで模式的に示している)を備えたものである。
各スイッチング素子は、直流電圧電源Vxの出力電圧も
しくは0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選
択し、表示パネル1401の端子Dxa1乃至Dxa
m、及び端子Dxb1乃至Dxbmと電気的に接続され
る。各スイッチング素子S1乃至S2mは、制御回路1
403が出力する制御信号Tscanに基づいて動作す
るものであり、例えばFETのようなスイッチング素子
を組み合わせることにより構成することができる。
【0111】直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝
導型電子放出素子の特性(電子放出閾値電圧)に基づ
き、走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子
放出閾値電圧以下となるような一定電圧を出力するよう
設定されている。
【0112】制御回路1403は、外部より入力される
画像信号に基づいて適切な表示が行われるように、各部
の動作を整合させる機能を有する。制御回路1403
は、同期信号分離回路1406より送られる同期信号T
syncに基づいて、各部に対してTscan,Tsf
t及びTmryの各制御信号を発生する。
【0113】同期信号分離回路1406は、外部から入
力されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分
と輝度信号成分とを分離するための回路で、一般的な周
波数分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同
期信号分離回路1406により分離された同期信号は、
垂直同期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明
の便宜上Tsync信号として図示した。前記テレビ信
号から分離された画像の輝度信号成分は、便宜上DAT
A信号と表した。このDATA信号は、シフトレジスタ
1404に入力される。
【0114】シフトレジスタ1404は、時系列的にシ
リアルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライ
ン毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記
制御回路1403より送られる制御信号Tsftに基づ
いて動作する(即ち、制御信号Tsftは、シフトレジ
スタ1404のシフトクロックであると言い換えてもよ
い。)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分
のデータ(電子放出素子n素子分の駆動データに相当)
は、Id1乃至Idnのn個の並列信号として前記シフ
トレジスタ1404より出力される。
【0115】ラインメモリ1405は、画像1ライン分
のデータを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であ
り、制御回路1403より送られる制御信号Tmryに
従って適宜Id1乃至Idnの内容を記憶する。記憶さ
れた内容は、Id’1乃至Id’nとして出力され、変
調信号発生器1407に入力される。
【0116】変調信号発生器1407は、画像データI
d’1乃至Id’nの各々に応じて、表面伝導型電子放
出素子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であり、
その出力信号は、端子Dy1乃至Dynを通じて表示パ
ネル1401内の表面伝導型電子放出素子に印加され
る。
【0117】前述したように、本発明を適用可能な電子
放出素子は放出電流Ieに関して以下の基本特性を有し
ている。即ち、電子放出には明確な閾値電圧Vthがあ
り、Vth以上の電圧が印加された時のみ電子放出が生
じる。電子放出閾値以上の電圧に対しては、素子への印
加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。このことか
ら、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、例えば電
子放出閾値電圧以下の電圧を印加しても電子放出は生じ
ないが、電子放出閾値電圧以上の電圧を印加する場合に
は電子ビームが出力される。その際、パルスの波高値V
mを変化させることにより、出力電子ビームの強度を制
御することが可能である。また、パルスの幅Pwを変化
させることにより、出力される電子ビームの電荷の総量
を制御することが可能である。
【0118】従って、入力信号に応じて電子放出素子を
変調する方式としては、電圧変調方式とパルス幅変調方
式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際して
は、変調信号発生器1407としては、一定長さの電圧
パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パ
ルスの波高値を変調できるような電圧変調方式の回路を
用いることができる。パルス幅変調方式を実施するに際
しては、変調信号発生器1407として、一定の波高値
の電圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜
電圧パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回
路を用いることができる。
【0119】シフトレジスタ1404やラインメモリ1
405は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式の
ものでも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変
換や記憶が所定の速度で行なわれれば良いからである。
【0120】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路1406の出力信号DATAをデジタル信号
化する必要があるが、これには同期信号分離回路140
6の出力部にA/D変換器を設ければ良い。これに関連
してラインメモリ1405の出力信号がデジタル信号か
アナログ信号かにより、変調信号発生器1407に用い
られる回路が若干異なったものとなる。即ち、デジタル
信号を用いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器14
07には、例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて
増幅回路等を付加する。パルス幅変調方式の場合、変調
信号発生器1407には、例えば高速の発振器及び発振
器の出力する波数を計数する計数器(カウンタ)及び計
数器の出力値と前記メモリの出力値を比較する比較器
(コンパレータ)を組み合わせた回路を用いる。必要に
応じて、比較器の出力するパルス幅変調された変調信号
を表面伝導型電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅す
るための増幅器を付加することもできる。
【0121】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器1407には、例えばオペアンプ等
を用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフ
ト回路等を付加することもできる。パルス幅変調方式の
場合には、例えば電圧制御型発振回路(VCO)を採用
でき、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動電圧
にまで電圧増幅するための増幅器を付加することもでき
る。
【0122】このような構成をとり得る本発明を適用可
能な画像形成装置においては、各電子放出素子に、容器
外端子Dxa1乃至Dxam、端子Dxb1乃至Dxb
m、Dy1乃至Dynを介して電圧を印加することによ
り、電子放出が生じる。高圧端子1208を介してメタ
ルバック1205あるいは透明電極(不図示)に高圧を
印加し、電子ビームを加速する。加速された電子は、蛍
光膜1204に衝突し、発光が生じて画像が形成され
る。
【0123】ここで述べた画像形成装置の構成は、本発
明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技
術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号に
ついてはNTSC方式を挙げたが、入力信号はこれに限
られるものではなく、PAL、SECAM方式等の他、
これらよりも多数の走査線からなるTV信号(例えば、
MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも採用
できる。
【0124】次に、前述の梯子型配置の電子源及び画像
形成装置について、図14及び図15を用いて説明す
る。
【0125】図14は、梯子型配置の電子源の一例を示
す模式図である。図14は、図1に示したような、1素
子中に2つの電子放出部を有する平面型の表面伝導型電
子放出素子を用いた場合の模式図であるが、本発明の適
用可能な電子放出素子の配置はこれに限定されるもので
はない。
【0126】図14において、1501は電子源基板、
1505は2つの電子放出部5a,5bを有する電子放
出素子であり、この電子放出素子1505は電子源基板
1501上にX方向に並列に複数個配されている(これ
を素子行と呼ぶ。)。そして、この素子行がn列配され
て電子源を構成している。
【0127】また、図14において、1502は各素子
行に含まれる複数の電子放出素子の共通電極2に接続さ
れた配線、1503は独立電極3aに接続された配線、
1504は独立電極3bに接続された配線である。
【0128】各素子の電子放出部5aから電子放出をさ
せる場合に給電されるn本の配線1502は、Dxa
1,Dxa2,……,Dxanからなり、各素子の電子
放出部5bから電子放出をさせる場合に給電されるn本
の配線1503は、Dxb1,Dxb2,……,Dxb
nからなり、配線1504は、Dy1,Dy2,……,
Dynのn本の配線からなり、それぞれ外部端子として
引き出されている。
【0129】各素子行の配線1502と配線1503又
は1504の間に駆動電圧を印加することで、各素子行
を独立に駆動させることができる。即ち、電子ビームを
放出させたい素子行には、電子放出閾値以上の電圧を印
加し、電子ビームを放出させたくない素子行には、電子
放出閾値以下の電圧を印加する。かかる電子源を駆動す
る際は、各電子放出素子1505の2つの電子放出部5
a,5bから交互に電子が放出されるように電圧の印加
を行う。
【0130】図15は、図14に示したような梯子型配
置の電子源を備えた画像形成装置におけるパネル構造の
一例を示す模式図である。図15においては、図11及
び図14に示した部位と同じ部位には、これらの図に付
したのと同一の符号を付している。1601はグリッド
電極、1602は電子が通過するための開口、1603
はグリッド電極120と接続されたG1乃至Gmからな
る容器外端子である。ここに示した画像形成装置と、図
11に示した単純マトリクス配置の画像形成装置との大
きな違いは、電子源基板とフェースプレート1206の
間にグリッド電極1601を備えているか否かである。
【0131】図15においては、電子源基板1501と
フェースプレート1206の間には、グリッド電極16
01が設けられている。グリッド電極1601は、表面
伝導型電子放出素子1505から放出された電子ビーム
を変調するためのものであり、梯子型配置の素子行と直
交して設けられたストライプ状の電極に電子ビームを通
過させるため、各素子に対応して1個ずつ円形の開口1
602が設けられている。グリッド電極の形状や配置位
置は、図15に示したものに限定されるものではない。
例えば、開口としてメッシュ状に多数の通過口を設ける
こともでき、グリッド電極を表面伝導型電子放出素子の
周囲や近傍に設けることもできる。
【0132】容器外端子Dxa1乃至Dxan,Dxb
1乃至Dxbn,Dy1乃至Dyn及びグリッド容器外
端子G1乃至Gmは、不図示の制御回路と電気的に接続
されている。
【0133】本例の画像形成装置では、素子行を1列ず
つ順次駆動(走査)して行くのと同期してグリッド電極
列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これ
により、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像
を1ラインずつ表示することができる。素子行を走査す
る際は、1素子中に2つある電子放出部5a,5bに対
応する各独立電極3a,3bにそれぞれ接続された端子
Dxa,Dxbに対して、交互に給電がなされる。これ
によって、1画素に対応する1素子中の2つの電子放出
部から、1フレーム毎に交互に電子放出をさせることが
可能である。
【0134】以上説明した本発明による駆動方法を適用
し得る画像形成装置は、テレビジョン放送の表示装置、
テレビ会議システムやコンピューター等の表示装置の
他、感光性ドラム等を用いて構成された光プリンターと
しての画像形成装置等としても用いることができる。
【0135】
【実施例】以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を説
明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
なく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の置
換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0136】[実施例1]本実施例に係る基本的な表面
伝導型電子放出素子の構成は図1及び図8と同様であ
り、1つの素子にそれぞれ2個,4個の電子放出部を有
する。
【0137】図1にLで示した電極間隔は10μm、W
で示した電極幅は4mmであり、これらは図8に示した
素子においても同じである。
【0138】本実施例に係るこれらの表面伝導型電子放
出素子の作成法を以下に説明する。
【0139】絶縁性基板1として石英ガラス基板を用
い、これを有機溶剤により充分に洗浄した後、基板上に
厚さ5nmのTi、及び厚さ30nmのPtを真空蒸着
し、フォトリソグラフィーの工程によりそれぞれの共通
電極2及び独立電極3a,3b(3a〜3d)を形成し
た。これらの素子電極の間に、膜厚3nmのPdO薄膜
からなる導電性膜4a,4b(4a〜4d)をフォトリ
ソグラフィーの工程により形成した。
【0140】このようにして作成した素子に対してフォ
ーミング工程を施し、それぞれ電子放出部5a,5b
(5a〜5d)を形成する。このフォーミング工程につ
いて説明する。
【0141】本実施例では、共通電極2と独立電極3
a,3b(3a〜3d)の間に通電を行うことで電子放
出部を形成する通電フォーミングを用いた。具体的に
は、共通電極2をグランドレベルにし、独立電極3a,
3b(3a〜3d)に負の電圧を印加して行った。通電
フォーミングに用いた電圧波形は、三角波のパルスで、
パルス幅1m秒、パルス間隔10m秒とし、電圧を2V
/分、0.1Vステップで上昇させた。
【0142】本実施例では、フォーミングの際、図1の
素子では2つ、図8の素子では4つの独立電極に同時に
電圧パルスを印加し、同時に複数の電子放出部を形成し
たが、1つずつフォーミングしても同じ結果が得られ
る。
【0143】このようにフォーミングを行った素子に対
して、次に活性化の工程を施した。本実施例では、1.
3×10-3Paのアセトン雰囲気下において、±15V
の矩形パルスを連続して印加することで活性化を行っ
た。この時。共通電極2をグランドレベルにしておい
て、独立電極側に電圧パルスを印加した。矩形パルスの
幅は0.1m秒、パルス間隔は10m秒とし、1パルス
毎にパルスの極性を逆転させ、40分間連続印加した。
この活性化処理によって、活性化前には極くわずかであ
った素子電流If及び放出電流Ieが著しく増加した。
本実施例では、活性化処理はフォーミング処理の時と異
なり、1つの電子放出部毎に行ったが、複数個の電子放
出部を一度に活性化することも可能である。
【0144】活性化を終えた素子は、イオンポンプ、タ
ーボモレキュラーポンプ、及びスクロールポンプを排気
装置として用いた真空容器内で、120℃で3時間加熱
され、有機物質を除去する安定化工程を施した。この
時、真空容器全体も加熱を行った。
【0145】以上のようにして作成した電子放出素子の
特性を、図5に示した構成の測定評価装置を用いて測定
した。具体的には、上記安定化を行った真空容器55内
の圧力を1.0×10-5Paとし、素子上4mm離れた
アノード電極54の電位を1KVとして測定した。
【0146】共通電極2を陽極、独立電極3a,3b
(3a〜3d)を陰極とし、これらの電極間に素子電圧
Vfを印加し、その時に流れる素子電流If及び放出電
流Ieを測定した。測定された電流−電圧特性の一例を
図16に示す。図16より分かるように、本実施例の素
子においては、素子電圧Vf=10V付近から急激に素
子電流If及び放出電流Ieが増加し、素子電圧15V
では素子電流If=10.8mA、放出電流Ie=1
3.3μAであり、電子放出効率η=Ie/If(%)
は0.12%であった。この特性は1つの電子放出部か
らの電子放出に関する特性であるが、各素子の各電子放
出部はほぼこれと同じ特性を示した。
【0147】本実施例の素子を、素子特性を測定したの
と同じ真空容器内で駆動し、劣化の様子を測定した。駆
動は、いずれの素子も共通電極2をグランドレベルにし
ておいて、独立電極3a,3b(3a〜3d)に−15
Vの矩形パルスを連続印加して行った。矩形パルスの幅
は0.1m秒とした。そして、いずれの素子も25m秒
間隔で0.1m秒間だけ、電子がアノード電極54に届
くような条件で行った。つまり、図1の素子の場合には
2つの電子放出部から交互に電子放出させるため、2つ
の独立電極3a,3bへの給電は交互に行われ、従っ
て、1つの電子放出部当たり50m秒間隔で0.1m秒
間電子が放出されることになる。同様に、図8の素子の
場合には、1つの電子放出部当たり100m秒間隔で
0.1m秒間電子が放出されることになる。
【0148】上記の測定結果を図17に示す。尚、図1
7には、電子放出部が1つだけの比較用素子についての
測定結果も併せて示している。この比較用素子について
は、電子放出部が1つなので、電子放出部からは25m
秒間隔で0.1m秒間電子が放出された。
【0149】図17の横軸は時間軸で、1素子に電圧が
印加されている間の時間の通算時間をとっている。ま
た、縦軸は、初期の放出電流Ieに対する経時後のIe
の割合(%)である。この図から分かるように、各素子
の劣化挙動には大きな差があり、電子放出の間隔が長い
ほど劣化が穏やかである。更に特筆する点は、図中の点
A,B,Cにおいて各素子の1電子放出部当たりの総電
子放出時間は同じであるにもかかわらず、劣化の程度が
異なる点である。すなわち、電子放出の間隔を長くした
ことによる総電子放出時間の差以上に、劣化の程度を抑
えることができる。
【0150】1つの素子を1000秒間駆動した後の放
出電流量は、図1の素子では初期の70.1%、図8の
素子では初期の80.4%、比較例の素子では初期の5
2.0%であった。尚、素子電流Ifの劣化挙動も、図
17の放出電流Ieの劣化挙動とほぼ同じであった。
【0151】以上のように、1素子に複数の電子放出部
を形成し、1電子放出部あたりの電子放出の間隔を長く
することにより、素子の挙動劣化を大きく改善できるこ
とが確認された。また、より多くの電子放出部を交互に
駆動させることにより、電子放出の間隔を長くしたこと
による総電子放出時間の差以上に、劣化の程度を抑える
ことができることが確かめられた。
【0152】[実施例2]実施例1と同様に、1素子中
にそれぞれ2個(図2参照),4個(図9参照)の電子
放出部を有する本発明の垂直型の表面伝導型電子放出素
子と、1素子中に1個の電子放出部を有する比較用の垂
直型の表面伝導型電子放出素子を、フォトグラフィーの
工程によって作成した。尚、平面型の表面伝導型電子放
出素子の場合と同様に、いずれの素子も素子電極間隔は
10μm、素子電極幅は4mm、導電性膜の幅は300
μmである。
【0153】本実施例における各素子では、実施例1の
平面型の表面伝導型電子放出素子とは反対に、共通電極
2が陰極、独立電極3a,3b(3a〜3d)が陽極で
ある。
【0154】各素子に対して実施例1と同じ手順でフォ
ーミング工程を施した。本実施例では、共通電極2をグ
ランドレベルにし、独立電極3a,3b(3a〜3d)
に正の電圧を印加して行った。これ以外のフォーミング
の条件は実施例1と同じである。
【0155】本実施例においても、フォーミングの際、
図2の素子では2つ、図9の素子では4つの独立電極に
同時に電圧パルスを印加し、同時に複数の電子放出部を
形成したが、1つずつフォーミングしても同じ結果が得
られる。
【0156】このようにフォーミングを行った素子に対
して、活性化の工程を施した。活性化の条件も、共通電
極2をグランドレベルにしておいて、独立電極側に電圧
パルスを印加して行った以外は、実施例1と同じであ
る。活性化処理によって、素子電流If及び放出電流I
eの著しい増加が確認された。
【0157】活性化を終えた素子は、実施例1で用いた
のと同じ真空容器内で、実施例1と同じ条件で加熱し、
安定化工程を施した。そして実施例1と同じ装置を用い
て同じ条件で素子の電流−電圧特性を測定した。その結
果、図16に示したのと同様な非線形な電流−電圧特性
が観測された。本実施例の素子においても、素子電圧V
f=10V付近から急激に素子電流If及び放出電流I
eが増加し、代表的な素子では素子電圧15Vで素子電
流If=11.4mA、放出電流Ie=12.5μAで
あり、電子放出効率η=Ie/If(%)は0.11%
であった。
【0158】この各素子についても劣化挙動を測定し
た。駆動条件は、共通電極2をグランドレベルにしてお
いて、独立電極3a,3b(3a〜3d)に+15Vの
矩形パルスを連続印加するという極性の違い以外は、実
施例1と同じである。従って、本実施例の場合にも、1
つの電子放出部のみを有する比較用素子では25m秒間
隔で0.1m秒間の電子放出が行われ、2つの電子放出
部を有する図2の素子では1つの電子放出部当たり50
m秒間隔で0.1m秒間の電子放出が行われ、4つの電
子放出部を有する図9の素子では1つの電子放出部当た
り100m秒間隔で0.1m秒間の電子放出が行われ
る。
【0159】このような条件のもとで測定された本実施
例の素子の劣化挙動は、実施例1で観測された劣化挙動
と基本的に同じであり、1つの素子を1000秒間駆動
した後の放出電子量の初期の放出電子量に対する割合
は、図2の素子では71.1%、図9の素子では82.
0%、比較用の素子では53.8%であった。本実施例
の場合にも、素子電流Ifの劣化挙動は、放出電流Ie
の劣化挙動とほぼ同じであった。
【0160】このように、垂直型の表面伝導型電子放出
素子の場合にも、実施例1で述べた平面型の表面伝導型
電子放出素子の場合と同様に、1素子に複数の電子放出
部を形成し、1電子放出部あたりの電子放出の間隔を長
くすることにより、素子の挙動劣化を大きく改善できる
ことが確認された。また、より多くの電子放出部を交互
に駆動させることにより、電子放出の間隔を長くしたこ
とによる総電子放出時間の差以上に、劣化の程度を抑え
ることができることが確かめられた。
【0161】[実施例3]図1に示したような、2つの
電子放出部を有する平面型の表面伝導型電子放出素子
を、X方向に100個、Y方向に100個、単純マトリ
クス配置で配した。この配置は、図10に示した通りの
ものである。図10に示すように、同じ列に配された素
子の共通電極2はY方向配線1104に共通に接続さ
れ、同じ行に配された素子の独立電極3aと3bは夫々
X方向配線1102と1103に共通に接続されてい
る。
【0162】それぞれの素子電極及び配線は、実施例
1,2で用いたものと同じ膜厚5nmのTi及び膜厚3
0nmのPtで、X方向配線とY方向配線の間には絶縁
層としてSiO2 が設けられている。電子放出部5a,
5bを形成するための導電性膜4a,4bとしては、実
施例1,2と同じ膜厚3nmのPdOを用いた。これら
は全てフォトリソグラフィーの工程によって作られてい
る。本実施例で作成した単純マトリクス配置の電子源基
板1101の部分平面図及び各部の寸法を図18に示
す。
【0163】以上のようにして作成した未フォーミング
の電子源基板を用いて、図11に示したような画像形成
装置を作製した。
【0164】先ず、上記電子源基板1101に、リアプ
レート1201、支持枠1202、フェースプレート1
206を接続し、X方向配線1102を端子Dxa1〜
Dxa100に、X方向配線1103を端子Dxb1〜
Dxb100に、Y方向配線1104を端子Dy1〜D
y100に夫々電気的に接続した。
【0165】次に、フォーミング処理を施した。本実施
例では、X方向配線1102,1103に接続した端子
をグランドレベルに接続し、Y方向配線1104に接続
した端子にパルス電圧を印加して1ラインずつフォーミ
ングを行ったが、フォーミングの方法はこれに限ったも
のではない。フォーミングの際に素子を流れる電流の測
定より、フォーミングはどのラインも均一に、かつほぼ
完全に行われたことが確かめられた。
【0166】フォーミング工程を終えた後、活性化処理
を施した。活性化は実施例1,2と同じ圧力のアセトン
雰囲気下で、各素子に対して実施例1,2と同じ条件の
矩形波パルスが印加される様にして行った。活性化処理
によって、素子電流If及び放出電流Ieの著しい増大
が確認された。
【0167】この後、パネル全体を200℃に加熱しな
がらイオンポンプ、ターボモレキュラーポンプ、及びス
クロールポンプによって排気し、真空度が1.0×10
-5Paに達した時点で封止した。
【0168】本実施例では、電子源基板1101とフェ
ースプレート1206との間隔を1.5mmとしてい
る。かかる構成において、アノード電極に相当するメタ
ルバック1205に6KVを印加して、本実施例の電子
放出素子を素子電圧Vf=14Vで駆動した場合に、1
素子中の2つの電子放出部から放出される電子は蛍光体
のほぼ同じ位置に衝突する様になっている。
【0169】この画像形成装置を駆動周波数40Hzで
単純マトリクス駆動した。駆動は、走査信号、情報信号
ともパルス幅0.1m秒、波高値7Vの矩形波を用いて
行う2値の駆動で、走査信号の印加されるラインの各素
子の独立電極には−7Vの走査信号パルスが印加され、
各素子の共通電極には+7Vの情報信号パルスが印加さ
れ、これらの電圧差の14Vが各導電性膜に形成された
電子放出部に印加されて電子が放出される。一方、走査
信号の印加されないラインの各素子の独立電極はグラン
ドレベルであるため、グランドレベルと情報信号パルス
の電圧差の7Vが各導電性膜に形成された電子放出部に
印加されるために、電子が放出されない。1画素に対応
する1つの電子放出素子において、2つの電子放出部が
1フレーム毎に交互に電子放出するように、各素子の2
つの独立電極3a,3bに接続する端子DxanとDx
bnには交互に走査信号が印加される様にした。
【0170】このような駆動に伴う劣化挙動を測定した
結果、本実施例の画像形成装置では、1000秒間駆動
した後の放出電流量Ieの初期Ieに対する割合は、各
素子の平均値で81.7%であった。
【0171】一方、1素子中に1つの電子放出部のみを
有する従来の電子放出素子を用いて同様な単純マトリク
ス配置の画像形成装置を作成し、同じ条件で駆動させた
ところ、1000秒間駆動した後の放出電流量Ieの初
期Ieに対する割合は、各素子の平均値で60.5%で
あり、本実施例の場合にも1素子に複数の電子放出部を
形成し、1電子放出部あたりの電子放出の間隔を長くす
ることにより、素子の挙動劣化を大きく改善できること
が確認された。
【0172】[実施例4]図1に示したような、2つの
電子放出部を有する平面型の表面伝導型電子放出素子
を、X方向に100個、Y方向に100個、梯子状配置
で配した。この配置は、図14に示した通りのものであ
る。図14に示すように、同じ行に配された素子の共通
電極2は配線1502に共通に接続され、同じ行に配さ
れた素子の独立電極3aと3bは夫々配線1503と1
504に共通に接続されている。
【0173】電子源基板1501の作成方法及び各部材
の材質は全て実施例3と同じであり、各素子の各部の寸
法も実施例1と同じである。
【0174】以上のようにして作成した未フォーミング
の電子源基板を用いて、図15に示したような画像形成
装置を作製した。
【0175】先ず、上記電子源基板1501に、リアプ
レート1201、支持枠1202、フェースプレート1
206を接続し、配線1503を端子Dxa1〜Dxa
100に、配線1504を端子Dxb1〜Dxb100
に、配線1502を端子Dy1〜Dy100に夫々電気
的に接続した。尚、図15に示すように、各素子行と直
交する方法にグリッド電極1601が設けられている。
【0176】次に、フォーミング処理及び活性化処理を
行った。これらの処理条件は実施例3と同じであり、処
理結果も実施例3とほぼ同じであった。
【0177】この後、実施例3の場合と同様に、パネル
全体を200℃に加熱しながらイオンポンプ、ターボモ
レキュラーポンプ、及びスクロールポンプによって排気
し、真空度が1.0×10-5Paに達した時点で封止し
た。
【0178】本実施例では、電子源基板1501とフェ
ースプレート1206との間隔を2mmとしている。か
かる構成において、メタルバック1205に10KVを
印加して、電子放出素子を素子電圧Vf=14Vで駆動
した場合に、1素子中の2つの電子放出部から放出され
る電子は蛍光体のほぼ同じ位置に衝突する様になってい
る。
【0179】この画像形成装置を駆動周波数40Hzで
駆動した。駆動は、各行とも各素子の共通電極に接続さ
れた端子Dynをグランドレベルに接続し、各素子の独
立電極に接続された端子Dxan及びDxbnに1フレ
ーム毎に交互にパルス幅0.1m秒、波高値−14Vの
矩形パルスを印加した。この場合、実施例3の単純マト
リクスの場合と異なり、電子放出を行わない間、素子に
は電圧は全く印加されない。つまり、各素子の各電子放
出部には50m秒間隔で0.1m秒間だけ電圧パルスが
印加され、電子が放出されることになる。
【0180】このような駆動に伴う劣化挙動を測定した
結果、本実施例の画像形成装置では、1000秒間駆動
した後の放出電流量Ieの初期Ieに対する割合は、各
素子の平均値で83.8%であった。
【0181】一方、1素子中に1つの電子放出部のみを
有する従来の電子放出素子を用いて同様な梯子状配置の
画像形成装置を作成し、同じ条件で駆動させたところ、
1000秒間駆動した後の放出電流量Ieの初期Ieに
対する割合は、各素子の平均値で64.4%であり、本
実施例の場合にも1素子に複数の電子放出部を形成し、
1電子放出部あたりの電子放出の間隔を長くすることに
より、素子の挙動劣化を大きく改善できることが確認さ
れた。
【0182】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、1
素子に複数の電子放出部を形成し、1電子放出部あたり
の電子放出の間隔を長くすることにより、素子の劣化を
大きく改善することができる。また、より多くの電子放
出部を交互に駆動させることにより、電子放出の間隔を
長くしたことによる総電子放出時間の差以上に、劣化の
程度を抑えることができる。
【0183】また、かかる構成の電子放出素子を多数用
いて構成した電子源及び画像形成装置にあっては、駆動
劣化が少なく、表示品位の低下を抑制し、高品位な画像
を安定して表示することができる。
【0184】特に、1素子中に2つの電子放出部を有す
る電子放出素子は、最も構成が単純であるため作成工程
が簡単であり、かつ各電子放出部から放出される電子の
画像形成部材への衝突位置をほぼ同じ点に容易に制御で
きるため、かかる素子の1つを1画素に対応させて駆動
する画像形成装置を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2つの電子放出部を有する本発明の平面型の表
面伝導型電子放出素子の一例を模式的に示した図であ
る。
【図2】2つの電子放出部を有する本発明の垂直型の表
面伝導型電子放出素子の一例を模式的に示した図であ
る。
【図3】図1の平面型の表面伝導型電子放出素子の製造
方法の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の電子放出素子の製造に際して採用でき
る通電フォーミング処理における電圧波形の一例を示す
模式図である。
【図5】本発明の電子放出素子の製造に用いることので
きる真空処理装置(測定評価装置)の一例を示す概略構
成図である。
【図6】本発明の表面伝導型電子放出素子の放出電流I
eおよび素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の典型的な
例を示す図である。
【図7】表面伝導型電子放出素子の電子放出特性の劣化
挙動について説明するための図である。
【図8】4つの電子放出部を有する本発明の平面型の表
面伝導型電子放出素子の一例を模式的に示した図であ
る。
【図9】4つの電子放出部を有する本発明の垂直型の表
面伝導型電子放出素子の一例を模式的に示した図であ
る。
【図10】2つの電子放出部を有する本発明の平面型の
表面伝導型電子放出素子を単純マトリクス配置した電子
源の一例を示す模式図である。
【図11】図10の電子源を用いて構成した画像形成装
置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図12】表示パネルにおける蛍光膜の一例を示す模式
図である。
【図13】本発明の単純マトリクス配置の画像形成装置
にNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うための
駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図14】2つの電子放出部を有する本発明の平面型の
表面伝導型電子放出素子を梯子状配置した電子源の一例
を示す模式図である。
【図15】図14の電子源を用いて構成した画像形成装
置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図16】実施例1で作成した電子放出素子の1つの電
子放出部の放出電流−素子電圧特性、及び素子電流−素
子電圧特性を示す図である。
【図17】実施例1で作成した各素子の挙動劣化を示す
図である。
【図18】実施例3で作成した単純マトリクス配置の電
子源の一部を示す模式図である。
【図19】従来例の表面伝導型電子放出素子の平面図で
ある。
【符号の説明】
1 基板 2 共通電極 3a〜3d 独立電極 4a〜4d 導電性膜 5a〜5d 電子放出部 6a,6b 段差形成部材 50 素子電流Ifを測定するための電流計 51 電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電
源 52 電子放出部より放出される放出電流Ieを測定す
るための電流計 53 アノード電極に電圧を印加するための高圧電源 54 電子放出部より放出される電子を捕捉するための
アノード電極 55 真空容器 56 排気ポンプ 57a,57b 電子ビーム 1101 電子源基板 1102,1103 X方向配線 1104 Y方向配線 1105 結線 1201 リアプレート 1202 支持枠 1203 ガラス基板 1204 蛍光膜 1205 メタルバック 1206 フェースプレート 1207 外囲器 1208 高圧端子 1209 表面伝導型電子放出素子 1301 黒色導電材 1302 蛍光体 1401 表示パネル 1402 走査回路 1403 制御回路 1404 シフトレジスタ 1405 ラインメモリ 1406 同期信号分離回路 1407 変調信号発生器 1501 電子源基板 1502 共通電極に接続された配線 1503,1504 独立電極に接続された配線 1505 表面伝導型電子放出素子 1601 グリッド電極 1602 電子が通過するための開口 1603 グリッド容器外端子

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極間を接続する導電性膜に形成された
    電子放出部を複数有する電子放出素子において、各電子
    放出部が形成された導電性膜に接続する一方の電極が共
    通電極であり、他方の電極が独立電極であることを特徴
    とする電子放出素子。
  2. 【請求項2】 前記複数の電子放出部から放出された電
    子ビームが、ほぼ同一の点に到達するように配置されて
    いることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
  3. 【請求項3】 前記電子放出素子が、表面伝導型電子放
    出素子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の
    電子放出素子。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の電子放
    出素子の駆動方法であって、前記複数の電子放出部から
    順次交代で電子放出させることを特徴とする電子放出素
    子の駆動方法。
  5. 【請求項5】 基板上に、複数の電子放出素子が配列さ
    れた電子源において、前記電子放出素子が、請求項1〜
    3のいずれかに記載の電子放出素子であることを特徴と
    する電子源。
  6. 【請求項6】 前記複数の電子放出素子がマトリクス状
    に配置されており、個々の電子放出素子の共通電極を行
    配線に接続し、個々の電子放出素子の各独立電極を前記
    行配線と直交するそれぞれ異なる列配線に接続したこと
    を特徴とする請求項5に記載の電子源。
  7. 【請求項7】 前記電子放出素子の複数が梯子状に配置
    されており、個々の電子放出素子の共通電極を第一の行
    配線に接続し、個々の電子放出素子の各独立電極をそれ
    ぞれ異なる第二の行配線に接続し、更に変調手段を設け
    たことを特徴とする請求項5に記載の電子源。
  8. 【請求項8】 請求項5〜7のいずれかに記載の電子源
    の駆動方法であって、各電子放出素子の複数の電子放出
    部から順次交代で電子放出させることを特徴とする電子
    源の駆動方法。
  9. 【請求項9】 基板上に、複数の電子放出素子が配列さ
    れた電子源と、該電子源から放出される電子線の照射に
    より画像を形成する画像形成部材とを有する画像形成装
    置において、前記電子源が、請求項5〜7のいずれかに
    記載の電子源であることを特徴とする画像形成装置。
  10. 【請求項10】 上記電子源の同一の電子放出素子に含
    まれる複数の電子放出部より放出された電子ビームが、
    上記画像形成部材の同一の画素を照射することを特徴と
    する請求項9に記載の画像形成装置。
  11. 【請求項11】 請求項9又は10に記載の画像形成装
    置の駆動方法であって、各電子放出素子の複数の電子放
    出部から順次交代で電子放出させることを特徴とする画
    像形成装置の駆動方法。
  12. 【請求項12】 1フレーム毎に各電子放出素子の複数
    の電子放出部から順次交代で電子放出させることを特徴
    とする請求項11に記載の画像形成装置の駆動方法。
JP22467996A 1996-08-08 1996-08-08 電子放出素子、それを用いた電子源及び画像形成装置、並びにそれらの駆動方法 Withdrawn JPH1055746A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007264533A (ja) * 2006-03-30 2007-10-11 Futaba Corp 電界放出形表示素子及びその駆動方法

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