【発明の詳細な説明】
キトサン薬物送達システム
優先権
本出願は、1996年6月11日に提出された米国仮出願番号第60/019,543号からの
米国特許法第119条(e)に基づく優先権を請求する。
発明の分野
本発明は、一般的に、新規な薬物送達システムに関する。詳細には、本発明は
、改変された鉄/キトサン粒子、および増強された薬物送達を経口投与によって
提供するキトサン処方された化合物を含む薬物送達システムに関する。別の局面
では、本発明は、治療物質または予防物質の経口送達のためのキトサンマトリク
スに関する。
発明の背景
有効な薬物送達システムの開発は、製薬産業における研究および開発の必須の
部分である。現在までに、いくつかの送達ビヒクルが市販されており、これらに
は単純丸剤、ロゼンジ、静脈内溶液、軟膏、鼻内噴霧剤、経皮貼剤、点眼剤など
が含まれる。経時的な薬物の徐放のためには、送達デバイスは、特に、時間放出
丸剤、浸透圧ポンプ、および貯蔵形態を支持する組成物を含む。バイオポリマー
の同定および合成は、薬物の経口投与のための手段を改良するより進歩的な送達
システムの開発を導き[Langer,Science 249:1527-1533(1990)]、そして薬物
の有用性の減少を生じる消化管での薬物の分解による生物活性の損失に関連する
問題を潜在的に克服した。小さなバイオポリマー粒子が特に興味深く、これは、
薬物を効果的にトラップし得、消化系の過酷な環境から薬物を保護し得、そして
最終的に胃腸管における吸収を増強し得る。
キチン、ポリ-β-(1→4)結合N-アセチル-D-グルコサミンは、天然に豊富なバ
イオポリマーであり、そして薬物送達ビヒクルとしての使用に従わせるいくつか
の特性を有し、これには希釈した酸溶液への中程度の溶解性および有機化合物に
対する高親和性が含まれる。キチンの脱アセチル化形態であるキトサンは、グリ
コサミノグリカンに類似の構造的特徴を有し、そして修復性結合組織再構築にお
ける外因性マトリクスとしての特別な有望性を示す[Muzzarelliら,Biomateria
ls 9:247-252(1988)]。さらに、キトサンが腫瘍殺傷活性についておよびインタ
ーロイキン-1産生についてマクロファージを刺激する能力は、低下した免疫系を
有する腫瘍患者のための薬物キャリアとして使用することが可能であることを示
唆する。同上。これらの特性は、研究者らを、関連する薬物を保護しながらそれ
自体が胃環境で生存し得、そして延長された期間にわたって薬物の放出を可能に
する、潜在的な薬物送達ビヒクルを提供するという希望を有する種々のキトサン
処方物を試験するように導いた。
これまでの努力は、キトサン処方物に注がれており、これは完全な状態を維持
するための処方物の能力を検査し、そして薬物徐放を提供するための、限定され
たインビトロアッセイにおいて試験された。初期のインビトロ研究は、単純な乾
燥キトサンゲルが、薬物徐放のためのビヒクルとして潜在的な用途を有し得るこ
とを示唆した[Miyazakiら,Chem.Pharm.Bull.29:3067-3069(1981)]。後期
の研究では、キトサンビーズまたはゲルが、例えば、グルタルアルデヒド架橋[
ThacharodiおよびRo,Biomaterials 16:145-148(1995); ChandyおよびSharma, B
iomaterials 14:939-944(1993)];アルギン酸塩[Alexakisら,Appl.Biochem
.Biotechnol.50:93-106(1995); Polkら,J.Pharm.Sci.83:178-185(1994);
Miyazakiら,Biol.Pharm.Bull.17:745-747(1994); Filiprovic-Grcicら, In
tl.J.Pharm.116:39-44(1995); BodmeierおよびPaeratakul,J.Pharm.Sci.78
:964-967(1989)];カウンターイオンの存在下でのアルギン酸塩、例えば、ト
リポリホスフェートまたは塩化カルシウム[Bodmeierら Pharm.Res.6:413-417
(1989)];トリポリホスフェート単独[SezerおよびAkbuga,Intl.J.Pharm.1 21
:113-116(1995)];および水酸化ナトリウム/メタノール[ChandyおよびShar
ma,Biomaterials 13:949-952(1992)]と組み合わせて調製された。
鉄を組み込むキトサン処方物は、鉄がキトサンビーズにトラップされて、次い
でビーズからの鉄の放出速度を調節するためにリポソームまたはアルブミンのい
ずれかでコートされる一例に限定されるようである[ChandyおよびSharma,Biom
aterials 17:61-66(1996)]。その処方物において、FeCl3に由来する鉄は、キト
サンビーズそれ自体の必須成分というよりもむしろトラップされた「薬物」であ
った。さらに、鉄のトラッピングは、水酸化ナトリウム/メタノール溶液中に可
溶化したキトサンを散布することによって行われ、これにより直径1ミリメート
ル程度のサイズを有するキトサン粒子を作製した。
キトサンビーズを使用するインビボ研究は、さらにもっと限定される。例えば
、Jameelaら[J.Biomatter.Sci.Polym.編 6:621-632(1994)]は、キトサン
/アルギン酸塩混合ビーズを記載しており、これは、ウサギにおいて舌下送達後
3時間ケトプロフェンを徐放させた。Illumら[Pharm.Res.11:1186-1189(1994
)]は、キトサンにトラップされたインスリンの鼻内噴霧送達後にラットおよび
ヒツジ粘膜においてインスリンの吸収が増強したことを示した。しかし、現在ま
でに、経口薬物送達に有用な効果的なキトサン処方物は同定されていない。
したがって、消化系の過酷な環境を生存し、そしてそうでなければ治療的に利
用可能でないかまたは限定された有用性を有する所望の薬物の徐放を可能にする
有効な経口薬物送達ビヒクルを開発する必要が当該分野において存在する。先に
記載されたキトサンの特性は、この豊富な多糖をこのようなビヒクルの魅力的な
候補にする。
発明の要旨
1つの局面では、本発明は、その中に薬物がトラップされ得る鉄/キトサン粒
子または複合体を含む薬物送達組成物に関する。組成物は、この粒子または複合
体が、そのトラップされた薬物に、消化管の過酷な環境に対する保護を提供し、
そして薬物の循環半減期(circulatory half-life)を増加させる経路による薬
物吸収を可能にするという点で、薬物の経口投与に特に有用である。金属/キト
サン複合体によって提供される別の利点は、疎水性有機化合物に対する高親和性
であり、これは通常は不溶性の薬物の循環系への送達を可能にする。
好ましい実施態様では、鉄/キトサン粒子は、サイズが10ミクロンよりも小さ
い。しかし、腸粘膜の細胞によるエンドサイトーシスを容易にするためには、よ
り好ましくは、直径が5ミクロンよりも小さい粒子であり、そして最も好ましく
は、全粒子の直径が5nmよりも小さいことである。
別の局面では、本発明は、治療物質または予防物質の経口送達のためのキトサ
ンマトリクスを提供する。キトサン送達システムに特に有用な物質は、大部分は
、消化管の過酷な環境を生存し得ず、それゆえ一般的に低すぎて経口送達システ
ムにおいて有用でないレベルで吸収されるものである。経口送達システムとして
、本発明は、製造プロセスが、好ましいサイズを有する組成物中のビーズサイズ
またはビーズの特性の顕著な変化を生じない限り、種々の形態(例えば、粉剤、
丸剤、カプレット(caplet)、カプセル剤、ゲル、液剤、液体懸濁剤、エマルジョ
ン、エリキシル剤、シロップ剤など)で利用され得る。形態は、粒子自体がある
期間にわたって放出されるかまたは1回にすべて利用されるようであり得る。経
口組成物は、好ましくは、バイオアベイラビリティーが最大になりそして物質分
解が最小になる胃腸管中の点で活性化合物を放出するように設計される。
経口投与が本発明の好ましい使用方法であるが、他の投与経路(例えば、皮下
、経皮、筋肉内、静脈内、鼻内、肺内、直腸内、膣内、腹腔内、眼など)が考慮
される。各投与形態に最適な粒子サイズは変化し、そして当業者によって容易に
決定される。例えば、より大きな粒子は、注入可能なシステムよりも経口システ
ムにおける方がより容易に耐容性であり、機械的注入デバイスによって、および
/または毛細管サイズによる制約によって制約され得る。
薬物送達粒子を製造するための本発明の好ましい方法は、好ましくは酢酸を含
む酸性溶液にキトサン粉末を溶解すること、および金属塩、好ましくはクエン酸
第二鉄アンモニウムを同時に添加しながら、得られる混合物を超音波処理するこ
とを含む。粒子中で薬物をトラップするために、酸安定性薬物処方物は、超音波
処理の前に酸性溶液中のキトサンに最初に添加される。しかし、粒子の調製は、
多くの代わりの方法によって行われ得る。
例えば、多くの市販グレードのキトサンのいずれもが、薬物送達システム、な
らびに種々の程度に脱アセチル化されたキトサンを製造するために利用され得る
。キトサンはまた、当該分野で周知のアルカリ処理による脱アセチル化によって
キチンから製造され得る。本発明で好ましいキトサンは、約50〜80%の間で脱ア
セ
チル化されている。より好ましくは、60〜75%まで脱アセチル化されたキトサン
である。
さらに、多くの酸性緩衝液のいずれもが、キトサン粉末を溶解するために利用
され得る。キトサンが最初に溶解される酸溶液の濃度は、0.1%〜15%の範囲で
変化し得る。しかし、最も好ましくは2%酸溶液である。同様に、酸溶液のpHは
、1.0〜6.8のpH範囲内で変化し得るが、最も好ましい緩衝液は、2〜3のpH範囲
である。
同様に、多くの鉄塩(例えば、塩化第二鉄を含む)が鉄の供給源として使用さ
れ、超音波処理中に粒子形成をもたらし得る。他の金属イオン(例えば、亜鉛、
銅、またはニッケル)もまた、キトサン粒子を形成するために有用であり得る。
任意の生理学的に受容可能な酸または金属塩が、本発明によって考慮される。
別の実施態様では、薬物は、キトサン、糖(例えば、マルトース、ヘキソース
、マンノース、またはグルコースであるがこれらに限定されない)、および薬物
を含む組成物で、経口投与され得る。本発明はまた、経口薬物送達システムを製
造するための方法に関し、この方法は、以下の工程:(a)キトサン/糖溶液を調
製する工程、(b)有機溶媒(例えば、アセトン、メタノール、エタノール、また
はアセトニトリルであるがこれらに限定されない)に、この薬物を溶解する工程
、(c)工程(a)および(b)の結果を混合する工程、(d)工程(c)の混合物を凍結乾燥
する工程、および(e)被験体への投与に適切な経口賦形剤中で凍結乾燥した混合
物を再構成する工程を包含する。得られる凍結乾燥混合物はまた、細粉を作製す
るために粉砕され得る。さらに、経口送達システムとして、本発明は、種々の形
態(例えば、粉剤、丸剤、カプレット、カプセル剤、ゲル、液剤、液体懸濁剤、
エマルジョン、エリキシル剤、シロップ剤など)で利用され得る。考慮されるな
おさらなる実施態様は、糖および薬物と組み合わせてキトサンを含む経口組成物
を患者に投与する工程を包含する経口薬物投与のための方法である。
薬物送達システムのための種々の代替の成分もまた考慮される。例えば、薬学
的に受容可能な油(例えば、カノラ油、コーン油、ピーナッツ油、オリーブ油、
植物油、鉱油などであるがこれらに限定されない)または脂質組成物が、超音波
処理工程の前、超音波処理工程中、または超音波処理工程後のいずれかに、キト
サン/薬物マトリクス中に含まれ得る。脂質の添加は、組み込まれるべき薬物の
物理的特徴に依存して、多くの生理学的に受容可能な任意の界面活性剤の添加を
必要とし得る。油または脂質は、胃腸管を通り抜け、治療物質または予防物質の
キトサンマトリクスからの放出を遅らせ、または腸における吸収を改善するので
、トラップされる薬物に対するさらなる保護を提供し得る。上記のような油また
は脂質はまた、エマルジョンを形成するために含まれ得、次いでこのエマルジョ
ンは、表面上に噴霧され、乾燥され、集収され、そしてカプセル剤または錠剤に
圧縮され得る。別のさらなる成分として、ゼラチンがトラップされる物質ととも
にキトサンマトリクスを固定するための試薬として含まれ得る;次いで、固定さ
れた治療物質または予防物質含有粒子は、カプセル形態での送達のために集収さ
れ得る。
超音波処理は、得られるキトサン粒子が、直径10ミクロンよりも小さく、そし
て好ましくは直径5ミクロンよりも小さい程度まで行われる。最も好ましくは、
超音波処理は、粒子が直径約5ナノメートルよりも小さくなるまで続けられる。
超音波処理の時間および出力は、好ましいサイズの粒子が得られる限り変化し得
る。さらに、また、得られる粒子が好ましいサイズであるならば、ソニケーター
の任意のタイプおよびモデルが、キトサン粒子を作製するために利用され得る。
例えば、ソニケーターのプローブのスタイルまたは水浴のタイプのいずれかが薬
物送達システムの作製に適応可能である。ソニケーターの出力に依存して、超音
波処理の時間は1〜10分まで変化し得る。現在好ましいソニケーターは、1〜3
分間の時間に全強度の約60%で使用されるBranson Sonifier Model 250である。
ソニケーターの使用の代わりとして、薬物送達システムはまた、種々のタイプ
のホモジナイザー、乳化機、流動化機などを使用して作製され得る。
治療物質または予防物質の生理学的送達について、キトサンマトリクスを製造
するための好ましい方法は、酸性溶液にキトサンを溶解する工程を包含し、次い
でこれに治療物質または予防物質が添加される。混合物のアリコートを回収し、
薬学的に受容可能な油と混合し、そして超音波処理される。得られるキトサンマ
トリクスは、治療物質または予防物質の経口送達に特に有用であり、これらの物
質は、例えば、ホルモン(例えば、インスリン、プロゲステロン、エストロゲン
、
テストステロン、グルココルチコイド、鉱質コルチコイド、成長ホルモンである
がこれらに限定されない)、サイトカイン(例えば、インターロイキン、リンホ
カイン、モノカインであるがこれらに限定されない)、ケモカイン、造血因子(
例えば、エリトロポエチンであるがこれに限定されない)、および経口送達後必
ずしも生理学的に活性ではない他の治療物質または予防物質、ポリペプチド、ま
たはタンパク質である。このシステムに有用であるタンパク質またはポリペプチ
ドは、ネイティブでありそして天然に存在する供給源から精製され得るか、組換
えによって産生され得るか、または化学的に合成され得る。
薬物送達システムを作製するための方法における変更もまた本発明に包含され
る。例えばキトサン粒子は、好ましい方法により、しかし薬物の非存在下で調製
され得る。一旦この様式で調製されると、次いでキトサン粒子は所望の薬物の溶
液とともに混合され得、その後混合物が記載のように送達され得る。あるいは、
キトサン粒子は、薬物の非存在下でもまた調製され得、粒子は凍結乾燥され、続
いて薬物を含む溶液中で再水和され得る。
図面の説明
図1は、鉄(Fe)、キトサン(Ch)、または鉄/キトサン粒子複合体からのブ
ロモチモールブルー(BTB)のインビトロ放出速度を示す。
図2は、プロゲステロン/鉄/キトサン粒子の経口投与後のプロゲステロンの
バイオアベイラビリティーを示す。
図3は、微小化したプロゲステロンと比較したキトサン処方したプロゲステロ
ンの経口投与後のプロゲステロンのバイオアベイラビリティーを示す。
図4は、インスリン/キトサン組成物またはインスリン/PBS組成物のいずれ
かの経口投与後のストレプトゾトシン処理動物における血中グルコースレベルを
示すデータを示す。
発明の詳細な説明
本発明は、鉄/キトサン薬物送達組成物およびキトサン/タンパク質薬物送達
システムの調製および使用に関する以下の実施例によって説明される。実施例1
は、鉄/キトサン粒子の調製を記載する。実施例2は、鉄/キトサン粒子中のお
よび鉄/キトサン粒子からの化合物のインビトロ保持および放出を説明する。実
施例3は、所定の時間の後の鉄/キトサン粒子による化合物のインビボ送達を示
す。実施例4は、鉄/キトサン粒子による化合物のインビボ放出または時間の関
数としてのキトサン処方された化合物の放出を記載する。実施例5は、インスリ
ンを経口投与するためのキトサンマトリクスの使用を記載する。
実施例1
鉄/キトサン粒子の調製
SeaSanMer N2000級キトサン(CTC Organics,Atlanta,GA)の1%溶液を、まず
粉末化キトサンを2%酢酸に溶解することにより調製し、そしてこの溶液をオー
トクレーブにかけた。鉄/キトサン粒子を調製するために、1〜5mlのキトサン
溶液を1〜3分間超音波処理し、その間に1mlのキトサン溶液当たり0.2〜0.3 m
lの4%クエン酸第二鉄アンモニウムストック溶液を滴下して添加した。クエン
酸第二鉄アンモニウムのストック溶液を、まず水中で調製した。これらの工程の
最終結果として、キトサン粒子の非常に細かい懸濁物が得られた。代表的には、
キトサン粒子の密度は、1mlのキトサン溶液当たり約0.3g湿重量であるか、また
は再構成する緩衝液1ml当たり約18mgの凍結乾燥固体であった。懸濁物中の粒子
を、マイクロメーターを用いて定期的に測定し、そして直径が約2〜約10ミクロ
ンの範囲にあることが見出された。この鉄/キトサン粒子中に低分子を取り込ま
せるために、上記の手順を下記のように修飾した。
実施例2
インビトロ薬物放出
はじめに、上記のように生産されたキトサン/鉄粒子中に取り込まれた低分子
からの放出速度を測定するために、下記のようにインビトロ透析アッセイを行っ
た。
A.ブロモチモールブルー(bromthymol blue)を含有する鉄/キトサン粒子の調 製
ブロモチモールブルー(BTB)(Sigma,St.Louis,MO)の5mg/ml溶液を水中に
調製し、そして200μg BTBの等価量を実施例1に記載のように調製した鉄/キト
サン溶液500μlと十分に混合した。あるいは、1%キトサン溶液1 ml当たり 400
μg BTBの等価量を混合した。得られた混合物を3分間超音波処理し、超音波処
理の間に4%クエン酸第二鉄アンモニア水溶液0.2〜0.4 mlを滴下して添加した
。これにより、キトサンビーズに取り込まれたブロモチモールブルーを含むオレ
ンジ色の粒子が生成された。
B.鉄キトサン粒子からのブロモチモールブルーのインビトロ放出
透析緩衝液中へBTBが放出される速度を測定するために、上記のように調製し
たブロモチモールブルー含有鉄/キトサン粒子を、12kDの分子量カットオフを有
する透析バッグに個々に入れ、そして各バッグを50ml円錐チューブ中で45ml の
リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に浸漬した。このチューブを、往復(end-to-end
)振とう機に設置し、そして緩衝液中へのブロモチモールブルーの放出速度を、
経時的に595nmにおける吸光度によりSpectronic-20を用いて測定した。いくつか
のコントロールを平行して行った:透析バッグ中に当量のブロモチモールブルー
単独を含むコントロール;キトサンと混合した(しかし、上記A節で記載したよ
うには取り込まれていないが、なお均一なオレンジ色の溶液を生じる)ブルモチ
モールブルーを含む別のコントロール;および、クエン酸第二鉄アンモニウム溶
液と混合したブロモチモールブルーを含む別のバッグ。
放出速度を、図1に示す。鉄/キトサン粒子に取り込まれたブロモチモールブ
ルーを含む透析バッグが、ブロモチモールブルー単独、クエン酸第二鉄アンモニ
ウムと混合したブロモチモールブルーまたはキトサンと混合したブロモチモール
ブルーを含むバッグより、はるかに緩やかな速度でブロモチモールブルーを放出
することが図から理解される。鉄/キトサン粒子からの相対的に緩やかな放出は
、インキュベーションの初期段階において観察され、そして緩やかな放出速度は
、より長いインキュベーションの期間の後、かなりより顕著になる。これらのデ
ータは、鉄/キトサン粒子の、最初に取り込んだ分子を顕著に保持し、そして分
子
を初期に緩やかな速度で放出する能力を示している。
実施例3
インビトロでの薬物放出
上述の実施例2で得られたインビトロでの結果を考慮して、鉄/キトサン粒子
がインビボにおいても物質の遅延放出を提供できるかを決定する目的で、実験を
設計した。水溶性殺真菌薬であるナイスタチンを初期研究のために選定した。
A.ナイスタチンを含有する鉄/キトサン粒子の調製
ナイスタチン(Sigma)2mg/ml懸濁液を、蒸留水中で調製した。その100μlを実
施例1において記載の通りに調製されたキトサン溶液200μlと十分に混合した。
得られた混合液に、2〜3分間の超音波処理を行った。4%クエン酸第二鉄アン
モニウム水溶液を添加すると(100μl/ml キトサン:ナイスタチン混合液)、
黄色い粒子が得られた。この懸濁液を遠心分離し、上澄液を吸引除去し、そして
粒子をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)200μlに再懸濁した。遠心分離にかけた後
の上澄液は、透明であった。このことから、薬物の取り込みが高率で行われたこ
とが示唆される。というのは、ナイスタチンは通常水に不溶であり、そして水溶
液中で細かい粒状を呈するからである。キトサン粒子中への薬物の取り込みは、
C-18カラムにおけるHPLC(Waters)により、および取り込まれていたナイスタチン
を粒子から冷メタノールで抽出することにより測定した。
B.ナイスタチン含有鉄/キトサン粒子の経口投与後の血清中ナイスタチンレベ ル
成熟したメスのマウスの試験群に、ナイスタチン含有鉄/キトサン粒子を、1
ml のシリンジに投餌針を取り付けて、経口投与した。第一のコントロール群の
マウスには、ナイスタチンをPBSに懸濁して投与した。そして第二のコントロー
ル群には、ナイスタチンと混合したキトサン懸濁液に、ゲルを得る目的でグルタ
ルアルデヒドを5μl添加した試料を投与した。各マウスは、200〜400μlの容積
中約4mgのナイスタチンに等しい量の投与を受けた。
マウスは、0、1、および5時間の間隔で、眼窩後方を穿刺し、採血を行った
。血液を血餅形成させ、そして血清を分離した。冷メタノールによる血清抽出の
後、血清中ナイスタチンレベルを、上述と同様にHPLCにて測定した。
5時間での血中ナイスタチン濃度値を、以下の表1に示す;ナイスタチンは、
投与の0時間および1時間後では検出不能であった。鉄/キトサン粒子に取り込
まれたナイスタチンを投与されたマウスは、ナイスタチンを単独で、またはキト
サンと単に混合して投与されたマウスと比較して、5時間後の血清中ナイスタチ
ンレベルが高かった。さらに、マウスに鉄/キトサン粒子のナイスタチンを経口
投与または腹膜内投与のいずれかで投与した群間で、血清中ナイスタチンレベル
を比較したところ、経口投与を受けたマウスは、腹膜内投与群よりも150%より
も多い血清中ナイスタチンを有することが観察された。この結果から、キトサン
との会合により、より高いレベルの利用可能な薬物が与えられたことが示唆され
る。
実施例4
インビボ薬物放出
薬物のインビボ送達および放出についての鉄/キトサン粒子の有効性をさらに
評価するために、ラットの種々の群に以下に記載のように調製したプロゲステロ
ンを経口投与した(A−B)。この実験は、トラップされた薬物の水溶解性の効
果も評価する点で、実施例3の実験とは異なった。さらに、インビボで送達およ
び放出されるべきキトサン処方された化合物の有効性を評価するために、ラット
の2つの群に以下に記載のように調製したプロゲステロンを経口投与した(C−
D)。
A.プロゲステロンを含む鉄/キトサン粒子の調製
プロゲステロン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を、ジメチルスルホ
キシド(DMSO; Sigma)に溶解して最終濃度10mg/mlにし、そしてこの溶液の1ml
を0.1%Tween 20を含む等容量の1%鉄/キトサンおよび1mlの鉱油と混合した
。50μlのクエン酸第二鉄アンモニウムのストック溶液を1滴ずつ添加しながら
、得られるエマルジョンを1〜3分間超音波処理した。得られる溶液中の粒子を
、顕微鏡下で測定し、そして2〜10ミクロンのサイズの範囲であることを決定し
た。この調製物を投与されているラットを、第1群と命名した。
コントロール調製物は以下のものを含んだ:PBSに懸濁したプロゲステロン(
得られた懸濁液を超音波処理した)(第2群に投与した); PBSに懸濁したプロ
ゲステロン(超音波処理中にクエン酸第二鉄アンモニウムを添加した)(第3群
に投与した);およびクエン酸第二鉄アンモニウムを含まないプロゲステロンの
懸濁液(第4群に投与した)。
上記のコントロールに加えて、水溶性プロゲステロンを含む2つの他の調製物
を利用した。水溶性形態では、ステロイドは2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデ
キストリンにトラップされ、そしてこの水溶性形態はSigma(St.Louis MO)か
ら市販されている。水溶性プロゲステロンの第1の調製物では、10mg/mlのステ
ロイド溶液を1%キトサン懸濁液と(10mgプロゲステロン等価/mlキトサン溶液
の割合で)混合し、そして得られる混合物を超音波処理した。この調製物を第5
群のラットに投与した。水溶性プロゲステロンを含む第2の調製物を、トラップ
したステロイドを有する鉄/キトサン粒子を得るために50μlの4%クエン酸第
二鉄アンモニウムを超音波処理中に添加したこと以外は、第1の調製物と同様に
調製した。この調製物を、第6群のラットに経口投与した。
B.プロゲステロン鉄キトサン微粒子の経口投与後のプロゲステロンのバイオア ベイラビリティー
体重が300と350グラムとの間の成熟雌ラット(卵巣除去した)に、(A)節に記
載の種々のプロゲステロン処方物のそれぞれを、各投与量が1mgプロゲステロン
/ラットの等価量を含むように別々に投与した。投与量を、1mlシリンジに付け
た給餌針で経口投与した。ラットを、投与後0、2、4、および20時間に眼窩後
方の穿刺によって採血し、そして血清プロゲステロンレベルを、Coat-A-Count P
rogesterone固相ラジオイムノアッセイキット(Diagnostic Product Corporatio
n,Los Angeles,CA)を使用してラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定し
た。
結果を図2に示す。血清プロゲステロンレベルは、鉄/キトサン粒子中の不溶
性プロゲステロンを投与した第1群のラットで最も高いことが見いだされ、最高
レベルは投与後4時間に検出された。同様に、高いレベル(特に投与後4時間)
もまた、鉄/キトサン中にトラップされた水溶性プロゲステロンを投与した第6
群の動物で検出した。他の処方物のいくつかでプロゲステロンを投与されたラッ
トは、投与後2時間に最高レベルの血清プロゲステロンレベルを示したが、検出
可能なプロゲステロンのレベルは4時間でほぼコントロールレベルまで減少した
。プロゲステロンについて一般的に認識されている短い半減期に基づくと、この
観察は、種々の処方物中でのプロゲステロンの放出速度が異なるか、または鉄/
キトサン粒子にトラップされたステロイド(もとのままかまたは水溶性)の吸収
経路が異なるかのいずれかを示唆する。
C.キトサン処方されたプロゲステロンの調製
200mgのプロゲステロン(Sigma Chemical Co.,St.Louis MO)を、5mlのア
セトン(試薬グレード;Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)に溶解し、一方
、0.3gのマルトース(Fisher Scientific)を、10mlの2%キトサン溶液(0.25
Mクエン酸(Fisher Scientific)に粉末にしたSeaSanMer N2000 Grade Chitosan
(CTC Organics,Atlanta,GA)を溶解することによって調製した)に溶解した
。5mlのプロゲステロン/アセトン溶液を、5mlのキトサン/マルトース溶液と
混合した。得られる混合物を液体窒素で迅速に凍結し、そして凍結乾燥した。凍
結乾燥後、粉砕した混合物中のプロゲステロンの重量等価量を計算した(通常3.
03〜3.05mgの細粉=1mgのプロゲステロン単独)。得られるスポンジ様に乾燥し
たキトサン処方されたプロゲステロンはまた、細粉に粉砕され得る。得られる凍
結乾燥した混合物を、テスト動物への経口投与のための脱イオン水中で再構成し
た。先に述べたように、本発明はまた、粉剤、丸剤、カプレット、カプセル剤、
ゲル、液剤、液体懸濁剤、エマルジョン、エリキシル剤、シロップ剤などのよう
な種々の形態で利用され得る。
D.プロゲステロンキトサン微粒子の経口投与後のプロゲステロンのバイオアベ イラビリティー
体重が300と350グラムとの間の成熟雌ラット(卵巣除去した)を2つの処置群
に分けた(1群につき7動物)。(C)に記載のように、再構成したキトサン処方
されたプロゲステロンを投与する動物をA群(テスト群)と命名し、一方微小化
した(粉末にした形態)プロゲステロンを投与する動物をB群(コントロール群
)と命名した。5mgプロゲステロン/ラットに等価である投与量を、1mlシリン
ジに付けた給餌針で経口投与した。ラットを、投与後0、1、5、24、および48
時間に尾から採血し、そして血清プロゲステロンレベルを、Coat-A-Count Proge
sterone固相ラジオイムノアッセイキット(Diagnostic Product Corporation,L
os Angeles,CA)を使用してラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した。
図3に示される結果は、投与後1時間および48時間(p-0.013)および投与後2
4時間(P=0.001)にコントロール動物(微小化したプロゲステロン)と比較し
て、キトサン処方されたプロゲステロン混合物を投与する動物における、有意に
高いプロゲステロンの血清レベルを示す。
実施例5
インビボタンパク質薬物放出
薬物の生理学的送達のためのキトサンマトリクスの有用性を証明した結果を考
慮して、同一の経口投与経路によってタンパク質を送達するキトサンの能力を研
究した。
A.インスリンを含むキトサン粒子の調製
1%キトサン溶液を、クエン酸第二鉄アンモニウムを混合物に添加しなかった
ことを除いては、上記の実施例1に記載のように、2%酢酸(pH3.9)中で調製
した。キトサン溶液の1mlアリコートを、12mgウシ膵臓インスリン(Sigma,約3
00ユニット)と合わせ、そして得られる溶液を十分に混合した。0.1%ポリオキ
シエチレンソルビタンモノラウレート(Tween 20)(Sigma)を含むキトサン/
酢酸溶液の第2の1mlアリコートを添加し、そして混合物をボルテックスした。
この最終溶液の1mlアリコートを取り出し、そして1.5mlのカノラ油(Hunt-Wess
on,Fullerton,CA)に添加し、そして混合物を1分間超音波処理した。得られ
る濁った混合物中の最終インスリン濃度は60ユニット/mlであった。
コントロールとして、6mgインスリン(約154U.S.P.ユニット)を1mlのPBSに
添加し、そして溶液を十分に混合した。カノラ油(1.5ml)を溶液に添加し、そ
して得られる混合物を1分間超音波処理した。上記のテスト溶液と同様に、得ら
れるコントロール溶液は、白色エマルジョン様混合物として現れた。しかし、こ
のコントロール混合物は層に分離する傾向があったが、一方テスト溶液は安定な
エマルジョンとして現れた。
B.正常動物における経口送達からのインスリンバイオアベイラビリティー
3匹のラットの2つの群を使用して、上記のように調製したキトサンマトリク
ス中での経口送達後のインスリンの有用性を決定した。アッセイプロトコルにお
いて、各ラットに0.3mlの0.625g/mlグルコース溶液を与えた。5分後、各ラット
に、インスリン/キトサン混合物かまたはインスリンコントロール混合物のいず
れかの0.3mlを与えた。インスリンの投与後0、30、60、および120分に、血液を
各ラットの尾の静脈から採取し、そして血中グルコースレベルを、ExacTech血中
グルコース試験システム(MediSense,Waltham,MA)を使用して測定した。
結果を表2に示し、これは、キトサンマトリクス中で経口送達されたインスリ
ンが、インスリン単独で経口送達された場合には検出されなかった血中グルコー
スレベルの一過性の減少を引き起こし得たことを示す。しかし、これらの結果は
、血中グルコースの観察された低下が、吸収されたキトサン単独によって生じた
かどうかについての情報を、全く提供しなかった。
C.正常およびストレプトゾトシン処置動物における経口送達からのインスリン のバイオアベイラビリティー
血中グルコースのこれまでに観察された減少が、インスリンのバイオアベイラ
ビリティの増加からまたはキトサン自体の増加した吸収から生じるかどうかを決
定するために、正常ラットおよびストレプトゾトシン(Sigma,St.Louis,MO)
の投与によって糖尿病状態に誘導したラット[Rakietenら、Cancer Chemotherap
y Reports 29:91-98(1963)]の両方を使用して、以下の実験を行った。簡単にい
うと、抗凝血剤酸クエン酸デキストロース(ACD)溶液で緩衝化した正常生理
食塩液(ACDの0.9%NaClでの1:50希釈)に溶解したストレプトゾトシンの静脈内
投与によって、糖尿病をラットに誘導した。溶液の最終ストレプトゾトシン濃度
は、20mg/ml、pH5.0であった。希釈溶液を、0.22ミクロンフィルターを通す濾過
によって滅菌し、そして調製の10〜15分以内に使用した。ラットをハロタンで麻
酔して、約50mg/kg体重の投与量で尾の静脈から単回静脈内注射で投与した。代
表的には、投与前、血中グルコースレベルは80〜110mg/dl血液の範囲であった。
投与後1日は、血中グルコースレベルは、代表的には、600mg/dlよりも高く上昇
し、そして投与後6日には、血中グルコースレベルは代表的には350〜450mg/dl
であった。
ラットに、(A)に記載の経口薬物送達システム中のウシインスリンを投与し、
そして得られる血中グルコースの変化を測定した。種々の実験におけるコントロ
ールとして、(i)PBS中のインスリン、(ii)キトサンの添加なく上記の(A)におけ
るように調製したインスリン;および(iii)インスリンを添加しなかったこと以
外は上記の(A)に記載と同様の調製物を、各群のラットにまた経口投与した。さ
らなるポジティブコントロールとして、PBS中のウシインスリンを筋肉内に投与
した。
最初の実験では、(A)に記載のように調製した18.4ユニットのインスリンは、
ほぼ2時間血中グルコースレベルを抑制したが、0.26ユニットのインスリンの筋
肉内注射は、ほぼ1時間血中グルコースを低下させた。キトサンが経口送達シス
テムから省かれた場合、またはインスリンがPBS単独中で経口投与された場合、
血中グルコースレベルで変化は観察されなかった。
次の実験では(図3を参照のこと)、上記の(A)に記載のように調製した18.4
ユニットのインスリンは、2.5時間にわたり血中グルコースレベルを抑制した。P
BS中のインスリンで処置した動物は、血中グルコースレベルにおける変化を何ら
見せなかった。
D.糖尿病の処置におけるインスリンの経口送達
これまでの結果は、経口経路によってキトサン中で送達されたインスリンが血
中グルコースレベルを抑制し得ることを示した。糖尿病を処置するための経口送
達されたインスリンの能力を評価するために、動物モデルを利用し、ここではラ
ットを、上述のようにストレプトゾトシンの静脈内投与によって糖尿病状態に誘
導した。糖尿病の徴候を、血中グルコースレベルを測定することによってモニタ
ーした。持続した血中グルコースが300mg/dlより上で測定されると、動物に以下
の実験においてインスリンを経口投与した。
上記の(A)に記載のように調製したインスリンをラットの1群に投与し、そし
て血中グルコースレベルを測定して、PBS中のインスリンを投与した群における
レベルと比較した。各群において、18.4ユニットのインスリンを与えた。PBS中
のインスリンのみを与えたラットでは、血中グルコースレベルの変化は検出され
なかった。しかし、キトサン中のインスリンを与えたラットでは、血中グルコー
スレベルはラットをモニターした最初の3時間の経過にわたって抑制された。こ
れらのデータは、キトサンマトリクス中のインスリンの経口送達が動物モデルで
糖尿病を処置するために有用であることを示し、ヒトで糖尿病を処置するための
同一の薬物送達システムの有用性を示唆する。
最後に、上記の方法および処方物は、他の薬物および治療物質または予防物質
とともに使用され得る。このような薬物または物質は、溶液中におくことが困難
であるものであり得(しかしこれらに限定されない)、例えば、多くの精神活性
薬物(例えば、クロザピン)またはホルモン(例えば、インスリン、プロゲステ
ロン、エストロゲン、テストステロン、グルココルチコイド、鉱質コルチコイド
、成長ホルモン)、サイトカイン(例えば、インターロイキン、リンホカイン、
モノカイン)、ケモカイン、造血因子(例えば、エリトロポエチン)、あるいは
他の治療物質または予防物質である。
上記の例示的実施例に記載のような本発明の多くの改変および変更は、当業者
が思いつくことが予想される。したがって、添付の請求の範囲に記載されるよう
な限定のみが本発明に配されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】1998年5月1日
【補正内容】
請求の範囲
1.キトサン−鉄複合体および薬物を含む経口薬物送達組成物。
2.不溶性である、請求項1に記載の組成物。
3.酸性pHで安定である、請求項1に記載の組成物。
4.前記薬物がプロゲステロンである、請求項1に記載の組成物。
5.経口薬物送達組成物を製造するための方法であって、該方法が以下の工程
:
a)キトサンおよび薬物を酸性溶液に溶解する工程;
b)第二鉄塩溶液を添加しながら該混合物を超音波処理し、それによって鉄/
キトサン/薬物粒子を形成する工程;および
c)該粒子を収集する工程、
を包含する、方法。
6.前記酸性溶液が酢酸溶液である、請求項5に記載の方法。
7.前記酢酸溶液が0.1%〜15.0%の範囲の濃度にある、請求項5に記載の方
法。
8.前記酸性溶液が2%溶液である、請求項5に記載の方法。
9.前記酸性溶液が1.5〜6.5のpH範囲にある、請求項5に記載の方法。
10.前記酸性溶液が3.9〜4.2のpH範囲にある、請求項5に記載の方法。
11.前記鉄塩がクエン酸第二鉄アンモニウムである、請求項5に記載の方法
。
12.前記所望の薬物がプロゲステロンである、請求項5に記載の方法。
13.請求項5〜12のいずれかに記載の方法によって調製される経口薬物送
達組成物。
14.キトサン、薬学的に受容可能な油、および治療物質または予防物質を含
む、経口薬物送達組成物。
15.前記治療物質または予防物質が、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン
、および増殖因子からなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
16.前記治療物質または予防物質がインスリンである、請求項14に記載の
組成物。
17.前記油が、カノラ油、コーン油、ピーナッツ油、オリーブ油、植物油、
および鉱油からなる群より選択される、請求項14に記載の組成物。
18.動物への治療物質または予防物質の経口投与のための組成物を製造する
ための方法であって、該方法が以下の工程:
a)キトサンおよび該治療物質または予防物質の混合物を調製する工程;
b)混合物を形成するために薬学的に受容可能な油を添加する工程;および
c)該混合物を該動物に経口投与する工程、
を包含する、方法。
19.前記治療物質または予防物質が、ホルモン、サイトカイン、ケモカイン
、および増殖因子からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
20.前記治療物質または予防物質がインスリンである、請求項18に記載の
方法。
21.前記油が、カノラ油、コーン油、ピーナッツ油、オリーブ油、植物油、
および鉱油からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
22.請求項18〜21のいずれかに記載の方法によって製造される治療物質
または予防物質の経口送達のための薬物送達組成物。
23.キトサン、糖、および薬物を含む経口薬物送達組成物。
24.不溶性である、請求項22に記載の組成物。
25.酸性pHで安定である、請求項22に記載の組成物。
26.前記糖がマルトースである、請求項22に記載の組成物。
27.前記薬物がプロゲステロンである、請求項22に記載の組成物。
28.経口薬物送達組成物を製造するための方法であって、該方法が以下の工
程:
(a)キトサン/糖溶液を調製する工程;
(b)該所望の薬物を有機溶媒に溶解する工程;
(c)工程(a)および(b)の結果を混合する工程;
(d)工程(c)の混合物を凍結乾燥する工程;および
(e)該凍結乾燥した混合物を被験体への投与に適切な経口賦形剤中で再構成す
る工程、
を包含する、方法。
29.前記凍結乾燥した混合物が細粉に粉砕される、請求項28に記載の方法
。
30.前記有機溶媒がアセトンである、請求項28に記載の方法。
31.前記有機溶媒がエタノールである、請求項28に記載の方法。
32.前記糖がマルトースである、請求項28に記載の方法。
33.前記薬物がプロゲステロンである、請求項28に記載の方法。
34.請求項28〜33のいずれかに記載の方法によって調製される経口薬物
送達組成物。
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フロントページの続き
(72)発明者 シン,ガープリート
アメリカ合衆国 テキサス 77059,ヒュ
ーストン,アイビー デル コート 2602