【発明の詳細な説明】
エマルジョンポリマーの製造方法
本発明は工業的規模での疎水性モノマーのエマルジョンポリマーの改善された
製造方法に関する。
疎水性モノマーの乳化重合は工業的には一般にモノマー/モノマー混合物また
は1種類以上のモノマーの予備乳化物を計量供給するモノマーの計量供給法によ
ってまたは稀にバッチ法で実施される。
計量供給法の場合、重合はモノマーの僅かな部分(最初に導入されるモノマー
)を使用して開始するが、重合の初めに重合開始剤およびモノマーを同時に反応
器に供給して実施することもできる。一般に計量供給法の場合にはモノマーの大
部分は重合の過程で計量供給される。
個々の場合に使用されるそれぞれの重合条件は使用されるモノマー、開始剤お
よび他の助剤に左右される。重合温度は一般に40〜90℃の範囲にあり、反応
条件のもとでガス状のモノマー、例えばエテン、塩化ビニルを使用しない場合に
は、一般に常圧で反応を実施する。
一般に少なくとも2m3の有効容積を持つ反応器中で工業的規模で乳化重合を
実施する場合の大きな問題は重合熱の搬出である。例えばメタクリル酸メチルエ
ステルを重合する場合の重合熱は55.5KJ/モルあるいは555KJ/kg
である。外部冷却器(ジャケット型冷却器)により単位時間当たりに搬出される
熱量は、モノマーの供給速度、攪拌条件、反応媒体と冷却媒体との間の温度差、
分散物の流動性並びに容器内容量とジャケット冷却器表面積との比によって影響
される。この比は、容器内容量が大きければ大きい程、ますます不利になる。特
に、高粘度の系または攪拌困難である系の場合には、分散物と壁との熱交換、即
ち外部冷却による熱搬出に問題がある。
反応器内容物と冷却媒体との温度差は、工業的規模で製造する場合の熱搬出を
改善するために、制限された範囲内でしか大きくできない。非常に低い温度で冷
却食塩水を用いるのは不経済であり、かつ局所的に不完全な混合のもとで<0℃
の冷却媒体温度の場合には水性分散物が反応壁の上に凍結しそしてその際に破壊
が生じるという危険を伴う。重合温度を高めると分散物の性質を変化させる。
製造工程の間の冷媒のポンプ循環下の外部冷却器による外からの冷却は、エマ
ルジョンポリマーの製造の間のコロイド化学的状態がポンプ循環の際の剪断応力
によって壊されることがあるし、特に高粘度の分散物の場合にはしばしば凝集物
、壁付着物および/または微小粒子(speck)を発生させるので、この冷却
法は微細分散物の場合には例外的な場合しか可能でない。
それ故に規模を実験室規模から工業的規模にスケールアップする場合には、モ
ノマーの計量供給時間を著しく延長する必要があり、これは沢山の問題を発生さ
せる。これは正に各重合混合物が重合装置に滞留する時間を非常に長くすること
である。重合装置に滞留する時間が長いことは経済的理由から不利である。それ
故に反応容器滞留時間を短くして、即ち充填量に全く無関係に早いモノマー添加
速度でエマルジョンポリマーを工業的規模で製造する方法が研究の課題となる。
この課題は、反応容器の容量に無関係に分散物の物理的なおよび用途上の性質を
維持しながら達成しなければならない。
製造規模を拡大する時に従来に必要とされた計量供給時間の延長は、2m2以
上のバッチの大きさの場合に生産されるエマルジョンポリマーの分子量をしばし
ば変化させる。それによって例えば、分子量に左右される用途特性がマイナスの
影響を受ける。しかしながら工業的製造条件のもとでは、用途特性の再現性、従
って品質保証がバッチの大きさに左右される場合には、このことが大規模装置を
効率良く運転使用することを著しく妨害するので、計量供給時間の延長は特に不
利である。
重合熱を搬出するために、反応器のジャケット型冷却器および外部熱交換器の
使用の他に、通常の重合温度の範囲内で沸点のモノマーの場合に常圧での反応の
間にモノマーの一部を蒸発および凝縮させることによって重合熱を搬出すること
が文献で提案されている。この沸点冷却は例えば酢酸ビニルをモノマーとして使
用する場合に工業的規模で使用される。他のモノマーの場合に重合を減圧状態で
実施することおよび重合熱を還流冷却器で搬出する提案も文献に発表されている
(ドイツ特許出願公開第2,500,309号明細書)。
東ドイツ特許(DD−A)第145,401明細書には、水と混和しない有機
組成物の存在下に水性モノマー溶液をバッチ法により水中での溶液重合によって
あるいは“逆の”(水/油−型)乳化重合によってポリマー粒子およびポリマー
溶液を製造する方法が開示されている。この場合、いずれの場合も水溶性である
モノマーの重合が減圧下に実施されている。
ドイツ特許出願公開(A)第3,522,419号明細書には、少なくとも1
種類の水溶性モノマーを水/油型分散物の状態でバッチ法によって重合すること
により濃厚なエマルジョンポリマーを製造する方法が開示されている。この場合
、重合熱は反応混合物中に含まれる水の蒸留除去によって搬出される。
ダーウエント(Derwent)−アブストラクト No 93/19151
2(Derwent Information LTD)には、低温で減圧下に
重合することによって酢酸ビニルポリマーを製造する方法が開示されている。こ
の方法は比較的に親水性のビニルエステルに使用できる。
それ故に本発明の課題は、2〜80m3の利用可能容積を持つ反応器において
疎水性のモノマーを乳化重合するに当たって、一度選択されそしてプロセス全体
にとって有利と見なされる反応温度およびモノマーの計量供給時間を反応器容量
に無関係に充分に一定に維持することができそしてその際に壁付着物および微小
粒子の発生または粒度または粒度分布へのマイナスの影響を回避することである
。
この課題は、供給される全モノマーの15〜60重量% のモノマーを1時間当
たりに計量供給する速度で供給しながら乳化重合すること、および減圧下に水/
モノマー混合物を蒸留すること、および冷却によって凝縮された水/モノマー混
合物を重合反応混合物中に再循環することによって解決できる。
要するに本発明の対象は、2〜80m3の利用可能容積を持つ攪拌機付き反応
器において、
供給される全モノマーの15〜60重量% のモノマーが1時間当たりに供給され
る速度で計量供給法に従って重合すること、および減圧下に水/モノマー混合物
を蒸留すること、および冷却によって凝縮された水/モノマー混合物を再循環す
ることによって
少なくとも一部疎水性のモノマーからエマルジョンポリマーを製造する方法に関
する。
本発明の乳化重合は2〜80m3、好ましくは5〜50m3、特に好ましくは1
0〜30m3の利用可能容積を持つ反応器中で実施する。
この反応は55〜90℃、好ましくは70〜85℃の温度範囲内で120〜7
00hPa、好ましくは300〜580hPaの圧力のもとで、重合の際に生じ
る熱を搬出するのに充分な量の凝縮液が還流冷却によって生じる様に実施する。
沸騰冷却による熱搬出量は、発生する全重合熱の10〜100%、好ましくは3
0〜80% の範囲である。沸騰冷却によって搬出する熱量の割合は所定の反応温
度およびモノマーの所定の計量供給時間の場合には反応混合物の量が多ければ多
い程、増加する。
重合熱の全部または一部の搬出は、全重合の間にわたってまたは最初に導入さ
れらモノマーが重合した後に初めてモノマーの計量供給時間の間に沸騰冷却によ
って行うことができる。
モノマーと水との混合物より成る生じた凝縮液は一般に水中にモノマー小滴が
混入した状態で存在している。この凝縮液はモノマーの計量供給の間に水の他に
、用いるモノマーの性質に依存して好ましくは1〜60重量%、特に好ましくは
3〜30重量%、中でも5〜20重量% のモノマーを含有している。重合の終わ
り頃には凝縮液は実質的に水だけである。
水に溶解しないかまたは非常に難溶であるモノマー、例えばスチレン、アクリ
ル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを乳化重合する場合には、疎水性モノ
マーを乳化重合の間に直接的に計量供給する際に微小粒子が生じる危険がある。
それ故にこの様なモノマーの直接的計量供給によって製造される分散物はしばし
ば品質が悪く、かつ分級残留物が多い為にこれら分散物が使用さる用途、例えば
塗料、ワニスまたは透明被覆物(Lasuren)のバインダーとして余り適し
ていない。これを回避するためにモノマーは水中で強力に攪拌することで乳化剤
によって安定なモノマーエマルジョンとせしめ、そしてこのモノマーエマルジョ
ンの状態で乳化重合の間、計量供給する。スチレン/(メタ)アクリル酸エステ
ルまたは(メタ)アクリル酸エステル−コポリマー分散物の製造の際に圧力を下
げて重合温度で水を蒸発させそして還流冷却器によって沸騰冷却することで重合
熱を排除することを可能とするには、反応混合物中に存在するモノマーを、全て
のモノマーが重合によって完全に消費されるまでそれの分圧に従って同時に蒸発
させる。モノマーは水と一緒に還流冷却器で凝縮されそして僅かであるが殆ど大
きなモノマー滴の状態で反応混合物中に再循環される。これは、なかでも乳化剤
で安定化された微細分散物の場合には、これが凝集物および/または微小粒子の
含有量を増加させ得る。更に生じるラテックスの粒度分布も不利な影響を受ける
ことがある。
それ故に本発明の方法の特に有利な実施形態は、凝縮物をモノマーの予備乳化
物と一緒に激しく攪拌した後で初めて反応混合物に戻すことを本質としている。
冷却器から流出するモノマー/水−凝縮液とモノマー予備乳化物との混合は、液
体を混合するための不連続的方法または好ましくは連続的方法で、例えば両方の
液体を機械的に攪拌すること、一方の液体を他の液体中に注入すること、好まし
くは充分に長い混合路、例えばスタティクミキサーに両方の液流を一緒に通すこ
とによって実施する。
この混合物を重合用反応混合物中に導入する際の凝縮液とモノマーの予備乳化
物との量比は、平均して0.1:10〜1:1、特に0.1:5〜0.5:1で
あるのが好ましい。
本発明の方法は特に有利な実施形態によれば、モノマーの計量供給の間、等温
で実施する。この実施形態は加熱あるいは冷却のためのエネルギー消費量を最小
限にし得る。
本発明の方法は、以下の成分からポリマーエマルジョンを製造するためにラジ
カル開始剤の存在下で乳化重合する場合に使用するのが有利である:
A)20〜80重量%、好ましくは40〜60重量%の、メチルメタクリレート、
スチレンおよびビニルトルエンより成る群から選ばれる硬質性化モノマー、B)
20〜80重量%、好ましくは40〜60重量%の、アルコール残基が炭素原子数
2〜8の直鎖状のまたは枝分かれしたアルキル残基を有するアクリル酸エステル
およびメタクリル酸エステルより成る群から選ばれる軟質性化モノマー、特にエ
チルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、第三
ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートまたは
2−エチルヘキシルアクリレート、およびメタクリル酸の相応するエステル類、
C)0.1〜5重量%、好ましくは1〜3重量% の、アクリル酸、メタクリル酸
、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メ
チロールメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチル
メタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタク
リレートより成る群から選ばれるコモノマー、
D)0〜20重量% の、モノマーA)〜C)と共重合し得る他のモノマー。
分散物を本発明に従って製造するには、それぞれポリマー含有量を基準として
3重量% まで、好ましくは2重量% までのイオン性乳化剤または6重量% まで、
特に4重量% までの非イオン性乳化剤またはこれらの乳化剤の混合物を使用する
のが有利である。
乳化剤の一部は最初に導入し、一部は計量供給の間にモノマーと一緒にそして
一部はモノマーエマルジョンに入れて重合バッチに供給する。本発明によれば3
〜98重量%、特に30〜95重量% の乳化剤量を重合の間に例えばモノマーと
一緒にモノマーエマルジョンとして使用するのが有利である。
非乳化剤としては例えばアルキルポリグリコールエーテル、例えばラウリル−
、オレイル−またはステアリルアルコールのまたはヤシ脂肪アルコールの如きア
ルコール混合物のエトキシル化生成物、アルキルフェノールポリグリコールエー
テル、例えばオクチル−またはノニルフェノール、ジイソプロピルフェノール、
トリイソプロピルフェノールのまたはジ−またはトリ−第三ブチルフェノールの
エトキシル化生成物、またはポリプロピレンオキシドのエトキシル化生成物が使
用される。 イオン性乳化剤として先ずアニオン性乳化剤が適している。これら
は、アルキル−、アリール−またはアルキルアリールスルホナート、−スルファ
ート、−ホスファート、−ホスホナートのアルカリ金属−またはアンモニウム塩
または他のアニオン性末端基を持つ化合物である。但しオリゴ−またはポリエチ
レンオキシド単位が炭化水素残基とアニオン基との間に存在していてもよい。代
表例にはラウリル硫酸ナトリウム、オクチルフェノールポリグリコールエーテル
硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルジグリコー
ル硫酸ナトリウム、トリ−第三ブチルフェノールペンタ−または−オクタグリコ
ール硫酸アンモニウムがある。
保護コロイドとしては場合によっては天然物質、例えばアラビアゴム、澱粉、
アルギナートまたは変性天然物質、例えばメチル−、エチル−、ヒドロキシアル
キル−またはカルボキシメチルセルロースまたは合成物質、例えばポリビニルア
ルコール、ポリビニルピロリドンまたはこの種の物質の混合物を使用する。変性
セルロース誘導体および合成保護コロイドを使用するのが特に有利である。
しかしながら保護コロイドは、当業者に知られている通り上記のモノマー系を
使用する場合には限定的にしか使用できない。使用量はしばしば僅かであり、0
.001〜1重量% であり、相容性および添加法をその都度試験検討しなければ
ならない。
重合を開始しそして継続するためには、油溶性−および/または好ましくは水
溶性遊離基開始剤またはレドックス系が使用される。例えば過酸化水素、ペルオ
キシ二硫酸カリウムまたは−アンモニウム、ジベンゾイルペルオキシド、ラウリ
ルペルオキシド、トリ−第三ブチルペルオキシド、ビスアゾジイソブチロニトリ
ルを単独でまたは還元性成分、例えば亜硫酸水素ナトリウム、Rongalit(R)
(ホルムアルデヒド−ナトリウムスルホキシレート、BASF)、グリコー
ス、アスコルビン酸および他の還元作用化合物および場合によっては活性剤、例
えば鉄(II)塩との組合せが適している。
酸性域で製造される分散物の場合には、例えば貯蔵安定性を向上させるために
および塗料製造を容易にするために、アンモニアまたは適当なアミン類、例えば
水溶性第三アミンを用いて7.5〜10のpHに調整するのがしばしば有利であ
る。
次に本発明を実施例によって詳細に説明する。実施例に記載の部および百分率
は他に指摘がない限り重量に関する。
比較例A:
高速回転攪拌機を備えた1m3の有効容積を持つ容器中で以下の成分よりなる
モノマーエマルジョンを製造する:
205kgの水
6kgの、約8個のエチレンオキシド単位を持つトリ−第三ブチルフェノ
ールポリグリコールエーテル硫酸アンモニウム、
8kgのメタクリル酸、
4kgのアクリル酸、
200kgの2−エチルヘキシルアクリレート、
200kgのメチルメタクリレートおよび
12kgのアセト酢酸アリルエステル。
攪拌機、真空用連結手段(vacuum connection)を持つ還流
冷却器およびモノマー貯蔵容器を備えた1m3の有効容積を持つ容器中で
200kgの水
2kgの、約8個のエチレンオキシド単位を持つトリ−第三ブチルフェノ
ールポリグリコールエーテル硫酸アンモニウム、
40kgのモノマーエマルジョン
よりなる混合物を81℃に加熱し、10kgの水に0.3kgのペルオキソ二硫
酸アンモニウムを溶解した溶液と混合する。次いで残りのモノマーエマルジョン
の計量供給を開始する。全計量供給時間は3.5時間であり、重合温度および後
加熱時間の間の温度は80〜83℃の間である。この反応混合物を、3kgの水
に0.1kgのペルオキソ二硫酸アンモニウムを溶解した溶液と混合し、更に1
時間加熱しそして次に冷却する。pH値を25% 濃度アンモニア溶液にて9.3
に調整する。固形分含有量は約50% である。
実施例1:
高速回転攪拌機を備えた10m3の有効容積を持つ容器中で以下の成分よりな
るモノマーエマルジョンを製造する:
2050kgの水
60kgの、約8個のエチレンオキシド単位を持つトリ−第三ブチルフェノ
ールポリグリコールエーテル硫酸アンモニウム、
80kgのメタクリル酸、
40kgのアクリル酸、
2000kgの2−エチルヘキシルアクリレート、
2000kgのメチルメタクリレートおよび
120kgのアセト酢酸アリルエステル。
攪拌機、真空用連結手段を持つ還流冷却器およびモノマー貯蔵容器を備えた1
0m3の有効容積を持つ容器中で
2020kgの水
20kgの、約8個のエチレンオキシド単位を持つトリ−第三ブチルフェノ
ールポリグリコールエーテル硫酸アンモニウム、
395kgのモノマーエマルジョン
よりなる混合物を81℃に加熱し、100kgの水に3kgのペルオキソ二硫酸
アンモニウムを溶解した溶液と混合する。次いで残りのモノマーエマルジョンの
計量供給を開始する。同時に反応容器を注意深く470〜540hPaの減圧状
態に調整する。還流冷却器中で生じる凝縮液は、計量供給されるモノマーエマル
ジョンとの混合区域において混合しそしてモノマーエマルジョンと一緒に反応混
合物中に計量供給する。全計量供給時間は3.5時間であり、重合温度および後
加熱時間の間の温度は80〜83℃の間である。モノマーの計量供給の終了後に
、反応混合物に窒素ガスを通気しそして従って減圧状態を開放する。この反応混
合物を、30kgの水に1kgのペルオキソ二硫酸アンモニウムを溶解した溶液
と混合し、更に1時間加熱しそして次に冷却する。pH値を25% 濃度アンモニ
ア溶液にて9.3に調整する。固形分含有量は約50% である。
比較例1a:
実施例1に記載したのと同様に実施するが、反応混合物を常圧で重合する。モ
ノマーの計量供給の全時間は8時間である。
実施例2:
実施例1に記載したのと同様に実施するが、還流する凝縮液をモノマーエマル
ジョンの計量供給とは無関係に反応混合物中に再循環する。
実施例3:
高速回転攪拌機を備えた10m3の有効容積を持つ容器中で以下の成分よりな
るモノマーエマルジョンを製造する:
2050kgの水
40kgのラウリルアルコール−ジグリコールエーテル硫酸ナトリウム、
30kgのメタクリル酸、
40kgのアクリル酸、
2000kgのアクリル酸ブチルおよび
2000kgのスチレン。
攪拌機、真空用連結手段を持つ還流冷却器およびモノマー貯蔵容器を備えた1
0m3の有効容積を持つ反応容器中で
2000kgの水
20kgのラウリルアルコール−ジグリコールエーテル硫酸ナトリウム、
395kgのモノマーエマルジョン
よりなる混合物を80℃に加熱し、100kgの水に3kgのペルオキソ二硫酸
アンモニウムを溶解した溶液と混合する。次いで残りのモノマーエマルジョンの
計量供給を開始する。同時に反応容器を注意深く470〜540hPaの減圧状
態に調整する。還流冷却器中で生じる凝縮液は、計量供給されるモノマーエマル
ジョンとの混合区域において混合しそしてモノマーエマルジョンと一緒に反応混
合物中に計量供給する。全計量供給時間は3.5時間であり、重合温度および後
加熱時間の間の温度は80〜83℃の間である。モノマーの計量供給の終了10
分後に、反応混合物に窒素ガスを通気しそして従って減圧状態を開放する。この
反応混合物を、30kgの水に1kgのペルオキソ二硫酸アンモニウムを溶解し
た溶液と混合し、更に60分加熱しそして次に冷却する。pH値を25% 濃度ア
ンモニア溶液にて9.5に調整する。固形分含有量は約50% である。
比較例3a:
実施例3に記載したのと同様に実施するが、反応混合物を常圧で重合する。モ
ノマーの計量供給の全時間は8時間である。
比較例A、実施例1、比較例1A、実施例2および3、比較例3a、2aで製
造した分散物の性質を表1に総括掲載する。
こうして製造される分散物の粒度、粒度分布および凝集物および微小粒子の割
合を測定する。
− 粒度:
粒度の測定は公知の方法に従って、例えば電子顕微鏡によって行うことができ
る〔G.Loehr,R.Reinecke、Angew.Makromol.
Chem.85、181(1980)〕。
− 粒度分布:
粒度分布dw/dnは分散物粒子の均一性を評価する目安である。これは粒子直
径の重量平均dwとそれの数平均dnとの商として規定される。粒子が完全に均一
であれば、商は1の値を取り得るが、不均一だと1より大きな数値をとる〔U.
Woods等、Journal of paint technology、第
40巻、No.527(1968)、第545頁参照〕。
− 微小粒子(fine specks):
微小粒子の割合は、500g の分散物を160μm の篩に通して予備分級しそ
して40μm の(既知の重量を有している)篩で分級する。篩を残留物と一緒に
105℃で2時間乾燥した後に、使用した量を基準として微細粒子の割合を空重
量を引いた後に得る。
− K−値:
K−値は100g の酢酸エチルに溶解した2g の分散物について20℃で粘度
測定することによって測定される相対的分子量の目安である〔G.Fikebn
tcher、“Cellulosechemie 13”、58(1932)〕
。K−値が大きければ大きいほど、分子量が大きい。
表1の結果は、製造される分散物の性質に重合条件が影響することを明らかに
示している。長い重合時間はより小さい分子量をもたらす。
分散物の性質への計量供給時間の影響をより良く理解するために、別のバッチ
を実験室規模で製造する。その際に3時間から7時間を経て9時間まで計量供給
時間を延ばして比較する。
比較例4a:
以下の成分よりなるモノマーエマルジョンを製造する:
310部の水
6部のラウリルアルコール−ジグリコールエーテル硫酸ナトリウム、
12部のメタクリル酸、
6部のアクリル酸、
300部のアクリル酸ブチルおよび
300部のスチレン。
攪拌機、真空用連結手段を持つ還流冷却器およびモノマー貯蔵容器を備えた反
応容器中で
303部の水
3部のラウリルアルコール−ジグリコールエーテル硫酸ナトリウム、
60部のモノマーエマルジョン
よりなる混合物を80℃に加熱し、15部の水に0.45部のペルオキソ二硫酸
アンモニウムを溶解した溶液と混合する。次いで残りのモノマーエマルジョンの
計量供給を開始する。全計量供給時間は3時間であり、重合温度および後加熱時
間の間の温度は80〜83℃の間である。この反応混合物を、5部の水に0.1
5部のペルオキソ二硫酸アンモニウムを溶解した溶液と混合し、更に60分加熱
しそして次に冷却する。pH値を25% 濃度アンモニア溶液にて9.5に調整す
る。固形分含有量は約50% である。
比較例4b:
比較例4aに記載したのと同様に実施するが、全計量供給時間を7時間とする
。
比較例4c:
比較例4aに記載したのと同様に実施するが、全計量供給時間を9時間とする
。
比較例4a、4bおよび4cで製造される分散物の性質を表2に総括掲載する
。
用途特性を評価するために、比較例4a〜4cにおいて製造された分散物から
顔料結合能力を測定する。この目的の為に分散物を次の処方に従って屋内用エマ
ルジョン塗料の製造に使用する:
285.0部の水、
3.0部のAdditol(R)XW330(消泡剤、Vianova Kunstharz)、
0.5部のAdditol(R)XW375(消泡剤、Vianova Kunstharz)、
4.5部のTylose(R)MHB 10000タイプ(メチルヒドロキシエチル
セルロース、Hoechst 社)、
15.0部のCalgon(R)N、10% 濃度(ポリメタ燐酸塩、Hoechst 社
)、
40.0部のMicro(R)Talc AT 1(マグネシウム−層状珪酸塩
、Norwegian Talc)、
40.0部の(R)China Clay B(アルミニウム珪酸塩水和物、EEC-
International Speciality Business Group)、
70.0部のKronos(R)2065(二酸化チタン、Kronos Titan)、
100.0部のSocol(R)P2(炭酸カルシウム、Solvay Alkali)、
150.0部のOmyacarb(R)2GU(炭酸カルシウム、Omya)、
190.0部のOmyacarb(R)5GU(炭酸カルシウム、Omya)、
1.5部のMergal(R)K10(保存剤、Riedel de Haeen)、
0.5部のアンモニア(25% 濃度)、
91.0部の比較例4a、4b、4cの分散物、
12.5部のホワイト・スピリット、
7.0部のブチルジグリコールアセテート。
1日の貯蔵時間の後に、こうして製造されたエマルジョン塗料を約200μm
のウエット塗膜厚で“Srub(R)テストパネル・ブラックフィルム”(カーボ
ンブラック含有PVCフィルム、The Leneta Co.)に塗布する。
この塗膜を23℃、50% の相対湿度で7日乾燥した後にDIN 53,778
に従うガードナー(Gardner)装置を用いてブラシ掛けする。塗膜がブラ
シ掛けに耐えることができる、ガードナー装置の往復のブラシ掛け回数(DBS
)を測定する。DBSが多ければ、塗料品質が高い。
表2から、長時間の重合時間によってK−値が著しく減少することが明瞭に判
る。更に重要な用途特性である顔料結合能力が長い重合時間によってマイナスの
影響を受ける。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年10月21日
【補正内容】
第4頁:
東ドイツ特許(DD−A)第 145,401号明細書には、水と混和しない
有機組成物の存在下に水性モノマー溶液をバッチ法により水中での溶液重合によ
ってあるいは“逆の”(水/油−型)乳化重合によってポリマー粒子およびポリ
マー溶液を製造する方法が開示されている。この場合、いずれの場合も水溶性で
あるモノマーの重合が減圧下に実施されている。
ドイツ特許出願公開(A)第3,522,419号明細書には、少なくとも1
種類の水溶性モノマーを水/油型分散物の状態でバッチ法によって重合すること
により濃厚なエマルジョンポリマーを製造する方法が開示されている。この場合
、重合熱は反応混合物中に含まれる水の蒸留除去によって搬出される。
ダーウエント(Derwent)−アブストラクト No 93/19151
2(Derwent Information LTD)並びにフランス特許出
願公開(A)第1,462,866号明細書には、低温で減圧下に重合すること
によって酢酸ビニルポリマーを製造する方法が開示されている。この方法は比較
的に親水性のビニルエステルに使用できる。
それ故に本発明の課題は、2〜80m3の利用可能容積を持つ反応器において
疎水性のモノマーを乳化重合するに当たって、一度選択されそしてプロセス全体
にとって有利と見なされる反応温度およびモノマーの計量供給時間を反応器容量
に無関係に充分に一定に維持することができそしてその際に壁付着物および微小
粒子の発生または粒度または粒度分布へのマイナスの影響を回避することである
。
この課題は、供給される全モノマーの15〜60重量% のモノマーを1時間当
たりに供給する速度で計量供給しながら乳化重合することおよび減圧下に水/モ
ノマー混合物を蒸留することおよび冷却によって凝縮された水/モノマー混合物
を重合反応混合物中に再循環することによって解決できる。
第12頁:
よりなる混合物を81℃に加熱し、100kgの水に3kgのペルオキソ二硫酸
アンモニウムを溶解した溶液と混合する。次いで残りのモノマーエマルジョンの
計量供給を開始する。同時に反応容器を注意深く470〜540hPaの減圧状
態に調整する。還流冷却器中で生じる凝縮液は、計量供給されるモノマーエマル
ジョンとの混合区域において混合しそしてモノマーエマルジョンと一緒に反応混
合物中に計量供給する。全計量供給時間は3.5時間であり、重合温度および後
加熱時間の間の温度は80〜83℃の間である。モノマーの計量供給の終了後に
、反応混合物に窒素ガスを通気しそして従って減圧状態を開放する。この反応混
合物を、30kgの水に1kgのペルオキソ二硫酸アンモニウムを溶解した溶液
と混合し、更に1時間加熱しそして次に冷却する。pH値を25% 濃度アンモニ
ア溶液にて9.3に調整する。固形分含有量は約50% である。
比較例1a:
実施例1に記載したのと同様に実施するが、反応混合物を常圧で重合する。モ
ノマーの計量供給の全時間は8時間である。
実施例2:(比較)
実施例1に記載したのと同様に実施するが、還流する凝縮液をモノマーエマル
ジョンの計量供給とは無関係に反応混合物中に再循環する。
実施例3:
高速回転攪拌機を備えた10m3の有効容積を持つ容器中で以下の成分よりな
るモノマーエマルジョンを製造する:
請求の範囲
1. 2〜80m3の利用可能容積を持つ攪拌機付き反応器において、
供給される全モノマーの15〜60重量% のモノマーが1時間当たりに計量
供給される速度での計量供給法に従って重合すること、および減圧下に水/モノ
マー混合物を蒸留すること、および冷却によって凝縮された水/モノマー混合物
を再循環することによって
A)20〜80重量% の、メチルメタクリレート、スチレンおよびビニルト
ルエンより成る群から選ばれる硬質性化モノマー、
B)20〜80重量% の、アルコール残基が炭素原子数2〜8の直鎖状のま
たは枝分かれしたアルキル残基を有するアクリル酸エステルおよびメタクリル酸
エステルより成る群から選ばれる軟質性化モノマー、
C)0.1〜5重量% の、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メ
タクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルア
ミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒド
ロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジル
アクリレートおよびグリシジルメタクリレートより成る群から選ばれるコモノマ
ー、
D)0〜20重量% の、これらと共重合し得る他のモノマー
からエマルジョンポリマーを製造する方法。
2. 乳化重合を55〜90℃の温度範囲において120〜700hPaの圧力
のもとで実施する請求項1に記載の方法。
3. エマルジョンポリマーの製造に必要とされる乳化剤量の3〜98重量% を
モノマーと一緒にモノマーの予備乳化段階を経て添加する請求項1に記載の方法
。
4. 冷却器から流出する凝縮液をモノマー予備乳化物と一緒に混合領域を経て
重合バッチ中に連続的に再循環する請求項1に記載の方法。
5. 方法をモノマーの計量供給の間に等温で実施する請求項1に記載の方法。
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(72)発明者 シャルト・リヒアルト
ドイツ連邦共和国、デー−65520 バー
ト・カムベルク、パウル−エールリッヒ−
ストラーセ、6
(72)発明者 ツィムメルシャイト・クラウス
ドイツ連邦共和国、デー−65205 ヴィー
スバーデン、ファーザネンヴェーク、19