【発明の詳細な説明】
ヒトガン胎児性抗原に関連する
組換えモノクローナル抗イディオタイプ抗体3H1配列
関連出願の引用
本出願は、1995年12月28日に出願された、米国特許出願第08/365,484号の一部
継続出願であり、その全ては本明細書中に参考として援用される。
技術分野
本発明は、モノクローナル抗イディオタイプ抗体に関する。より詳細には、本
発明は、免疫寛容を回避し、そしてガン胎児性抗原(CEA)のエピトープに対す
る免疫応答を誘発する、抗イディオタイプ抗体3H1に対するポリヌクレオチド配
列およびポリペプチド配列に関する。
発明の背景
広範な医学研究および多くの進歩にもかかわらず、依然としてガンは米国にお
ける主な死亡原因の第2位である。結腸直腸ガンは3番目に多いガンであり、そ
してガン死亡の主な原因の第2位である。従来の治療様式(例えば、外科手術、
放射線療法、および化学療法)が広く用いられ、そして多くの成功例が存在する
一方、結腸直腸ガンのようなガンによる死亡率は依然として高く、新たな治療様
式が強く求められている。
腫瘍細胞、または腫瘍由来のワクチンを使用するヒトガンの免疫治療は、いく
つかの理由のため期待されている程ではない。大量の、または精製された腫瘍関
連抗原を得るのは通常困難である。これらは、しばしば化学的に明確なものでは
なく、かつ精製が困難である。さらに、これらには腫瘍抗原に対する免疫生物学
的応答能の問題が依然として残されている。すなわち、言い換えれば、ガン患者
が自己の腫瘍に対する免疫応答を効果的に増大させ得るか否かという問題である
。腫瘍関連抗原(TAA)は、しばしば「自己(self)」の一部であり、そして通
常、
抗原に対する寛容(例えば、T細胞が媒介する抑制)のために、TAAが腫瘍保有
宿主中において惹起する免疫応答は非常に乏しい。免疫生物学者は、分子環境を
変化させることにより、(免疫応答の誘発の見地から)弱い抗原を強い抗原に変
換させ得ることを習得している。ハプテンキャリアを変更すると、T細胞ヘルパ
ー細胞が活性化され、免疫応答全体がより強力になる。従って、キャリアの変更
はまた、寛容性抗原を有効な抗原に変換し得る。McBridgeら(1986)Br .J.Can cer
53:707。たいてい、ガン患者の免疫学的状態は抑制され、これにより患者は
特定のT-依存性抗原に応答し得るにすぎず、他の抗原形態には応答し得ない。こ
れらを考慮すると、抗原をワクチンとして使用する前に腫瘍関連抗原への分子の
変更を導入することが理解される。不運なことに、これはほとんどの腫瘍抗原に
ついて達成不可能である。なぜなら、それらは十分に同定されておらず、そして
、その精製が非常に困難であるからである。
Lindemann((1973)Ann .Immunol. 124:171-184)およびJerne((1974)Ann .Immun ol.
125:373-389)のネットワーク仮説は、エピトープ構造を、抗体の表面で発現
されるイディオタイプの決定因子に変換するための優れたアプローチを提供する
。このネットワーク概念によれば、所定の腫瘍関連抗原による免疫化は、この腫
瘍関連抗原に対する抗体(Ab1という)の産生を生じ、次いでこのAb1は、Ab1に
対する一連の抗イディオタイプ抗体(Ab2という)を産生するのに使用される。
これらのAb2分子のいくつかは、Ab1により同定された腫瘍関連抗原の三次元構造
を事実上模倣し得る。Ab2βと呼ばれるこれらの特定の抗イディオタイプは、Ab1
のパラトープに適合し、そして腫瘍関連抗原の内部イメージを発現する。Ab2β
は、オリジナルの腫瘍関連抗原によって誘導されるものと類似の特異的な免疫応
答を誘導し得、これにより、代理の腫瘍関連抗原として使用され得る。Ab2βに
よる免疫化は、Ab1によって同定される対応するオリジナルの腫瘍関連抗原を認
識する、抗-抗イディオタイプ抗体(Ab3)の産生をもたらし得る。このAb1様の
反応性のために、Ab3はまたAb1'とも呼ばれ、Ab3がAb1由来の他のイディオトー
プと異なり得ることを示す。
ガン処置に対する有望なアプローチは、抗イディオタイプ抗体を使用する免疫
療法である。この治療の形態では、腫瘍関連タンパク質を介して腫瘍に対する患
者の免疫系を刺激しようとする場合、腫瘍関連タンパク質のエピトープを模倣す
る抗体が投与される。WO 91/11465は、ヒトにおいて霊長類の抗イディオタイプ
抗体を使用する、悪性細胞または感染性因子に対して免疫応答を刺激する方法に
ついて記載している。しかし、腫瘍に対する治療レジメにおいて、全ての抗イデ
ィオタイプ抗体が使用され得るわけではない。さらに、異なるガンは広範に変化
する分子および臨床的特徴を有するので、抗イディオタイプ治療は、場合に応じ
て、腫瘍の起源および抗原発現に基づいて評価されるべきである。
腫瘍関連抗原に構造的に類似している抗Idモノクローナル抗体は、ガン患者に
おける抗原置換物として使用される。Herlynら、(1987)PNAS 84: 8055-8059;Mit
tlemanら、(1992)PNAS 89:466-470;Chatterjeeら、(1993)Ann .N.Y.Acad.Sci .
690:376-278。抗Idは、免疫原性に関して、腫瘍関連抗原の部分的アナログを
提供することが提唱されている。
ガン胎児性抗原(CEA)は、胃腸管の内胚葉由来の新生物(例えば、結腸直腸
ガンおよび膵臓ガン、ならびに乳ガンおよび肺ガンのような他の腺ガン)に存在
する、180,000キロダルトンの糖タンパク質の腫瘍関連抗原である。CEAはまた、
ヒト胎児の消化器官中にも見出される。循環CEAは、CEAポジティブ腫瘍を有する
患者の大部分に検出され得る。特定のモノクローナル抗体がCEAに対し惹起され
、そしてそのいくつかが診断および臨床的研究のために放射性標識化される。Ha
nsenら、(1993)Cancer 71:3478-3485;Karokiら、(1992)Hybridoma 11:391-407;G
oldenberg(1993)Am .J.Med.94:297-312。免疫系により、自己抗原として認め
られるほとんどの腫瘍関連抗原の場合と同様に、ガン患者は免疫学的にCEAに「
寛容」である(おそらく、CEAが胎児性起源であるため)。CEAポジティブ腫瘍を
有する患者に関する現在までの研究は、CEAに対する免疫を生ずる能力を示して
いなかった。従って、CEAに基づく免疫療法は、これまで不可能であった。
それにも関わらず、CEAは、抗イディオタイプ抗体を用いる積極的な免疫治療
に対して、優れた腫瘍関連抗原である。CEAは、代表的には腫瘍細胞表面に高レ
ベルで存在する。CEAはまた、遺伝子配列が既知であり、そしてその三次元構造
が同定されている最も良く特徴が調べられている抗原の1つである。CEAは、細
胞-細胞相互作用に関与すると考えられている第19染色体上に位置する、免疫グ
ロブリン超遺伝子ファミリーのメンバーである。
CEA上のエピトープの中には正常な組織により共有されるものもあるので、イ
ンタクト(intact)なCEA分子で免疫化すると、有害と思われる自己免疫反応を
引き起こし得る。他方、腫瘍関連エピトープに対する免疫反応が所望される。多
くの研究者が、ラット、マウス、ヒヒ、およびヒトにおいて、CEAを模倣する抗
イディオタイプ抗体を作製した。例えば、Hinodaら、(1995)Tumor Biol. 16:48-
55;Losmanら、(1994)Int .J.Cancer 56:580-584;Irvineら、(1993)Cancer Immu nol .Immunother.
36:281-292を参照のこと。しかし、CEA(およびおそらく多く
のエピトープ)のサイズと、CEAがいくつかの正常な組織上で発現するという事
実とを考慮すれば、抗イディオタイプ抗体が、抗腫瘍免疫を引き起こす抗CEA応
答を誘発するのに有効であるかどうかは知られていなかった。
胃腸管のガン腫は、しばしば、標準的な治療により治療不可能である。従って
、この疾患に対する新規の治療上のアプローチが必要とされる。本発明は、進行
性の疾患を有する胃腸ガン患者において、免疫寛容を回避し、そして抗CEA免疫
応答を誘導するモノクローナル抗イディオタイプ抗体(3H1)に対するポリヌク
レオチドおよびポリペプチド配列を提供することによって、先行技術の欠点を克
服している。
本明細書中に引用する全ての刊行物は、その全体が本明細書中に参考として援
用される。
発明の開示
本発明は、抗イディオタイプ抗体3H1の可変領域の少なくとも一部を含むポリ
ペプチド、およびこれらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包含す
る。本発明はまた、3H1ポリペプチドおよび3H1ポリヌクレオチドを含む、薬学的
組成物およびワクチンを包含する。本発明はまた、3H1ポリペプチドおよび3H1ポ
リヌクレオチドを使用する診断キットおよび方法を包含し、この方法には、CEA
関連腫瘍を処置する方法が含まれる。
さらに、本発明の目的は、胃腸ガンなどのCEA関連疾患を有する患者の抗腫瘍
免疫性を誘導するための、抗イディオタイプ(抗Id)モノクローナル3H1ポリヌ
クレオチドおよびポリペプチドの組成物および使用方法を提供することである。
従って、1つの局面において、本発明は、モノクローナル抗イディオタイプ抗
体3H1の免疫学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを包
含する。ここでこのポリヌクレオチドは、3H1の可変軽鎖の少なくとも5アミノ
酸の配列をコードする配列を含む。別の局面では、本発明は、モノクローナル抗
イディオタイプ抗体3H1の免疫学的活性を有するポリペプチドをコードする、単
離されたポリヌクレオチドを包含する。ここで、このポリヌクレオチドは、3H1
の可変重鎖の少なくとも5アミノ酸の配列をコードする配列を含む。
別の局面では、本発明は、3H1の軽鎖可変領域の一部をコードするヌクレオチ
ド配列を含むポリヌクレオチドにハイブリダイズする、ポリヌクレオチドを提供
する。ここで、このポリヌクレオチドは、配列番号1の少なくとも10の連続する
ヌクレオチドを含む。本発明はまた、3H1の重鎖可変領域の一部をコードするヌ
クレオチド配列を含むポリヌクレオチドにハイブリダイズする、ポリヌクレオチ
ドを提供する。ここで、このポリヌクレオチドは、配列番号3の少なくとも10の
連続するヌクレオチドを含む。
本発明の別の局面は、本発明のポリヌクレオチドを含むクローニングベクター
および発現ベクターである。本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞もまた、
含まれる。
別の局面では、3H1の軽鎖領域および重鎖領域をコードするポリヌクレオチド
を含むプラスミドが提供される。これらのプラスミドはそれぞれ、ATCC お
よび で指定されている。
本発明の別の局面は、モノクローナル抗イディオタイプ抗体3H1の免疫学的活
性を有するポリペプチドである。ここで、このポリペプチドは、3H1の可変軽鎖
アミノ酸配列の少なくとも約5アミノ酸の配列を含み、そして、ここでこのポリ
ペプチドは、インタクトな3H1のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列からなるも
のではない。別の局面では、ポリペプチド3H1の可変重鎖アミノ酸配列の少なく
とも5アミノ酸の配列を含むポリペプチドが提供され、そして、ここでこのポリ
ペプチドは、インタクトな3H1のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列からなるも
のではない。
別の局面では、CEAに相同な領域を含む3H1ポリペプチドが提供される。
別の局面では、本発明は、配列番号2の少なくとも10の連続するアミノ酸、お
よび配列番号4の少なくとも10の連続するアミノ酸を含む、融合ポリペプチドを
提供する。ポリマー性3H1ポリペプチドもまた、本発明に含まれる。
別の局面では、本発明は、有効量の3H1ポリペプチドまたは3H1ポリヌクレオチ
ドを含む、薬学的組成物およびワクチンを包含する。
別の局面では、本発明はまた、適切なパッケージング中に3H1ポリペプチドま
たは3H1ポリヌクレオチドを含む診断キットを提供する。
別の局面では、本発明は、3H1ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを個体に
投与する工程を包含する、抗CEA免疫応答を誘導する方法を提供する。
別の局面では、本発明は、3H1ポリペプチドを投与する工程を包含する、CEA関
連疾患を有する個体においてT細胞応答を刺激する方法を提供する。
別の局面では、生物学的サンプル中で、3H1に結合する抗体を検出するための
方法が提供される。これらの方法は、安定な抗原-抗体複合体の形成が可能な条
件の下で、個体から得られたサンプル由来の抗体を3H1ポリペプチドと接触させ
る工程、および形成された安定な複合体が存在する場合、これを検出する工程を
包含する。
別の局面では、本発明は、3H1重鎖ヌクレオチド、3h1重鎖アミノ酸、3H1軽鎖
ヌクレオチド、3H1軽鎖アミノ酸、および1〜5のさらなるヌクレオチドまたは
アミノ酸を有するそれらの類似した機能的に等価な配列からなる群から選択され
る、3H1重鎖および軽鎖のフラグメント、ならびに重鎖および軽鎖のフラグメン
トをコードするポリヌクレオチドを包含する。
本発明の上記および他の目的は、下記の詳細な説明および図面により、当業者
に容易に明らかになる。ここで、本発明の好ましい実施態様のみが、単に本発明
の実施における最善の形態として例示のために示され、そして記載される。容易
に理解されるように、本発明は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく
当業者によって改変され得る。
図面の簡単な説明
図1は、3H1の軽鎖可変領域のcDNA配列(配列番号1;図1-1)およびアミノ酸
配列(配列番号2;図1-2)ならびに隣接する残基を示す。
図2は、3H1の重鎖可変領域のcDNA配列(配列番号3;図2-1)およびアミノ酸
配列(配列番号4;図2-2)ならびに隣接する残基を示す。
図3は、3H1の軽鎖可変領域(配列番号5;図3-1)および重鎖可変領域のアミ
ノ酸配列(配列番号6;図3-2)を示す。各可変領域は、4つのフレームワーク
領域および3つのCDRからなる。
図4は、マウスおよびラットの免疫グロブリンκ鎖の遺伝子配列を示し、これ
は異なる株に対するκ鎖定常領域中の配列を比較し、そしてアロタイプの相異を
強調している。BALB/c(配列番号7)、PL(配列番号8)、SJL(配列番号9)
、およびM.spretus(配列番号10)に対するκ鎖定常領域の配列を含む。4つの
遺伝子のアロタイプは、2つのタンパク質アロタイプをコードする。他の天然に
存在するアロタイプは可能である。この図はSolinら、(1993)Immunogenetics 37
:401-407より引用され、それは本明細書中で参考として援用される。
図5は、マウス免疫グロブリン重鎖の2つのアロタイプを示す。コードされた
タンパク質(配列番号12)と共に、新生マウス由来の生殖細胞系DNA配列(配列
番号11)を示す。ラインの上に、マウスミエローマMOPC 21から得られた別のタ
ンパク質配列(配列番号13)を示す。他の天然に存在するアロタイプも可能であ
る。この図はHonjoら、(1979)Cell 18:559-568から引用され、それは本明細書中
で参考として援用される。
図6は、3H1の反応性を種々の抗体と比較した棒グラフである。直接結合RIAに
よって主要なIgサブクラスに属する、mAbの種々の特異性のパネルに対して、125
I-3HIが試験された。
図7は、3H1による、放射性標識8019(Ab1)の半精製CEAへの結合の阻害を示す
グラフである。丸印は3H1を示し、正方形は4EA2および非関連抗イディオタイプ
抗体を示す。3H1は25ngの濃度から結合を100%阻害し始めた。
図8は、CEAへの8019(Ab1)の3H1による結合の阻害を示すグラフである。黒丸
は半情製CEAを示し、白丸は8019に結合しないコントロールの糖タンパク質を示
す。2.5μgの半精製CEAは、抗Id 3H1のヨウ素化8019への結合を50%阻害したが
、非関連糖タンパク質は、それより高濃度でも結合を阻害しなかった。
図9は、3H1で免疫化したマウス由来の血清の、CEAへの結合を示す棒グラフで
ある。第1のバーはPBS-BSAであり、第2のバーは抗4EA2であり、第3のバーは
免疫化前の血清であり、そして第4のバーは3H1で免疫化したマウス由来の血清
である。
図10-1〜10-4は、8019(図5-1);3H1で免疫化したマウス由来の血清(図5-2);
免疫化前の血清(図5-3)と反応させたLS14T細胞のFACS分析の結果を示す。3H1で
免疫化したマウス由来の血清は、8019(Ab1)(図5-1)で得られた結合パターンと類
似である明確な結合(図5-2)を示した。CEAを発現しないヒトB細胞リンパ腫細胞
では、顕著な結合は得られなかった(図5-4)。
図11は、3H1で免疫化したウサギ由来の血清によりLS174-T細胞に結合した8019
の阻害を示すグラフである。白丸は8019(Ab1)を示し、黒丸はウサギ#730由来の
血清を示す。白正方形はウサギ#729由来の血清を示し、白三角形は免疫化前の血
清を示す。
図12は、ウサギ血清中のAb3のCEAへの結合を示す、免疫ブロットの弱い発色の
(half-tone)複写物である。全ての反応は、CEAの半精製抽出物と共にSDS-PAGE
によって分離された。レーン1、分子量マーカー;レーン2、バッファローブラ
ックで染色されたCEA抽出物;レーン3、8019;レーン4、ウサギ血清(3H1で免
疫化後);レーン5、免疫化前のウサギ血清;レーン6、非関連抗Id 4EA2で免
疫化された、ウサギ由来のコントロール血清。
図13は、マウス血清中Ab3のCEAへの結合を示す、免疫ブロットの弱い発色の複
写物である。レーン1、8019(Ab1);レーン2、モノクローナルマウスAb3;レー
ン3、コントロール。
図14は、Ab3によって免疫染色された(イムノペルオキシダーゼ)正常組織お
よびガン組織の切片を示す、弱い発色の複写物である。正常および悪性結腸の組
織の両方におけるAb3の反応性のパターンは、Ab1について得られたものとほぼ同
一であった。
図15は、Ab3によって免疫染色された(イムノペルオキシダーゼ)正常組織お
よびガン組織の切片を示す、弱い発色の複写物である。mAb Ab3との反応が、腫
瘍細胞の染色を示したが分泌されたムチンの染色は示さなかったのに対して、80
19(Ab1)との反応は、腫瘍細胞ならびに分泌されたムチン物質の染色をもたらし
た。
図16は、ヒト胃腸ガン腫に対するイディオタイプのスキームである。
図17は、3H1ポリペプチドLCD-2(IYRANRLIDGV)についての、1人の患者由来の
T細胞増殖アッセイを示した棒グラフである。各図について、各バーは以下の存
在下のT細胞増殖を示す:フィトヘマグルチニン(第1のバー);インタクトな3
H1(第2のバー);精製CEA(第3のバー);コントロールペプチド(第4のバ
ー);CEAから誘導されるT細胞ペプチド(第5のバー);および3H1ポリペプチ
ドLCD-2(第6のバー)を示す。
図18は、3H1ポリヌクレオチドの発現のための一般的なワクシニアベクター(
プラスミド)である、pVVの構築のためのスキームを示す。薄暗いボックスはワ
クシニアTK遺伝子を示し、平行線のついたボックスは7.5K ワクシニアプロモー
ターを示す。制限部位は、A、Apa I;Ns、Nsi I;C、Cla I;E、Eco RI;P
、Pst I;Nc、Nco I;Sm、Sma Iである。(E)および(C)は、潜在的なEcoRIおよび
ClaI部位をそれぞれ示す。3つの停止コドンを、S1、S2、およびS3で示す。VLお
よびVRは、左および右のワクシニア隣接配列を表わす。TKおよび7.5Kは、ワクシ
ニアの野生型WR株由来のDNAを使用したPCRにより得られた。
図19は、3H1およびCEAの軽鎖可変領域と重鎖可変領域との間の選択されたアミ
ノ酸配列の比較を示す。組み合せるアミノ酸を、実線で示す。
図20は、3H1 scFvまたはインタクトな3H1による、放射性標識8019(Ab1)のCEA
ポジティブLS174-T細胞への結合の阻害パーセントを比較したグラフである。こ
の実験は、漸増量(ナノグラムで表わす)のscFv(またはインタクトな3H1)を
用いて行った。点線で結ばれた四角は、3H1 scFvを示す。実線で結ばれた丸は、
インタクトな3H1を示す。
図21は、3H1融合タンパク質(A)およびキメラ(B)の産生に適切なプラス
ミドを示す。発明を実施するための形態
本発明者らは、抗イディオタイプ抗体3H1の可変領域をコードするポリヌクレ
オチド配列およびそれによりコードされる3H1のポリペプチドフラグメントを見
い出した。従って、本発明は、抗イディオタイプ抗体3H1をコードするポリヌク
レオチド配列およびその機能的に等価なフラグメント、3H1のポリペプチドフラ
グメント、これらの3H1ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを産生するための
組換え方法、3H1ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含む薬学的組成物およ
びワクチン組成物、3H1ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含む診断キット
、ならびに3H1ポリペプチドおよび/または3H1ポリヌクレオチドを用いる方法を
包含する。
これらのポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、結腸直腸ガンのようなCEA
関連疾患の評価および処置に有用である。本発明の3H1ポリヌクレオチドおよび3
H1ポリペプチドのこれらおよび他の使用を、下記により詳細に記載する。
ガン患者はしばしば免疫抑制されており、そしていくつかの腫瘍関連抗原(TA
A)に寛容である。このようなTAAに対する活性な免疫応答を引き起こすことは、
ガン治療における重要な挑戦を表わす。本発明は、内部イメージ抗原を用いるワ
クチン治療に対するネットワーク理論アプローチを用いる。所定の抗原での免疫
化により、抗原に対する抗体の産生が生じる。本明細書で用いる「Ab1」は、抗
腫瘍モノクローナル抗体を表わし;「Ab2」は抗イディオタイプモノクローナル
抗体を表わし:そして「Ab3」は抗-抗イディオタイプモノクローナル抗体を表わ
す。
本発明者らは、3H1の可変領域をコードするcDNA配列をクローン化し、そして
単離した。3H1はマウスモノクローナル抗イディオタイプ(Id)抗体(Ab2)であ
り、これは、180,000mwのガン胎児性抗原(CEA)の別個の特異的なエピトープを
模倣するようであり、3H1はCEAに対する免疫寛容を効果的に回避し、そして進行
性のCEA関連疾患(例えば、結腸直腸ガン)を有する患者において免疫応答を誘
発する。3H1はまた、マウス、ウサギおよびサルを含む試験した全ての種におい
て免疫応答を誘発することが示されている。いずれか1つの理論に拘束されるつ
もりはないが、1つの説明は、3H1結合部位が、それをより免疫原性にする1つ
以上の他のエピトープの意味において、CEAにおけるエピトープと少なくとも部
分的に類似した領域を提示し得ることである。3H1のエピトープに類似したCEAの
エピトープは、CEA上の別個の特異的なエピトープを認識する抗CEA mAb8019(Ab
1)によって同定され、そして抗Id mAb 3H1の産生用に同系BALB/cマウスを免疫
化するために使用された。その作製および特徴付けを含む3H1の完全な記載は、
共同所有の特許出願番号 (代理人書類番号30414-20001.21)(実施例
1)に見い出される。
本発明の有用な材料およびプロセスは、3H1をコードするポリヌクレオチド配
列の提供によって可能となる。これらの配列は、例えば、CEA関連疾患の処置の
ためのワクチンとして、またはAb1および/またはAb3の存在を検出するための試
薬として有用であり得るポリペプチドの設計を可能にする。さらに、これらの配
列は、3H1の標的領域の検出および増幅のためのプローブおよびプライマーとし
て有用なポリヌクレオチド、ならびにワクチンとして有用な3H1ポリヌクレオチ
ドの設計を可能にする。
定義
「3H1」は、主としてヒト膵臓および結腸腫瘍細胞によって高密度で発現され
る180,000 m.w.のガン胎児性抗原(CEA)の別個の特異的なエピトープに少なく
とも部分的に類似したエピトープを含有する抗イディオタイプ抗体(Ab2)であ
る。3H1の作製および特徴付けは、下記の実施例1に記載されている。種々の生
物学的機能が3H1に関連しており、これらには、Ab1および/またはAb3への結合
およびCEAに対する免疫応答(体液性および/または細胞性)を誘導する能力が
含まれるが、これに限定されない。特に特定しない限り、用語「インタクトな3H
1」は、3H1の全分子のアミノ酸配列をいう。3H1の「フラグメント」は3H1の一部
分である。
本明細書で用いるように、3H1の「免疫学的活性」は、以下の活性:(a)Ab1
(8019)に結合する能力;(b)特異的免疫応答、特に抗体(体液性)応答および
/またはT細胞応答、ならびにそれから生じるエフェクター機能を誘発する能力
のいずれかをいう。T細胞応答には、Tヘルパー細胞機能、細胞傷害性T細胞機
能、炎症インデューサーT細胞、およびT細胞抑制が含まれる。免疫学的活性は
ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相酵素免疫アッセイ(ELISA)、補体結合、オ
プソニン作用、T細胞増殖の検出、および種々の51Cr放出アッセイのような当該
分野で公知の標準的な方法によって測定可能である。これらの方法を特に本明細
書中に記載する。
3H1の「活性」、「機能」、または「特徴」は、相互に交換して使用され、そ
して3H1の種々の特性をいう。3H1機能の例として、Ab1および/またはAb3への結
合、Ab3の誘導、ならびに/あるいは細胞性免疫応答の誘導、好ましくは抗CEA応
答の誘導、ならびにCEA関連疾患の改善または緩和が挙げられるが、これに限定
されない。
本明細書中で用いる「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド、リ
ボヌクレオチド、および/またはそれらのアナログを含有する任意の長さのヌク
レオチドのポリマー形態である。本明細書中で用いる用語「ポリヌクレオチド」
および「ヌクレオチド」は、相互に交換して用いられる。ポリヌクレオチドは、
任意の三次元構造を有し得、そして既知または未知の任意の機能を行い得る。用
語「ポリヌクレオチド」には、二本鎖、一本鎖、および三重らせん分子が含まれ
る。他に特定または要求されない限り、ポリヌクレオチドである本明細書中に記
載する本発明のいずれの実施態様も、二本鎖形態、および二本鎖形態を形成する
ことが知られるか、または予測される2つの相補的一本鎖形態の各々を包含する
。
以下のものは、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子
フラグメント、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、
組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意
の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポ
リヌクレオチドはメチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログのような修
飾されたヌクレオチドを含み得る。プリンおよびピリミジンのアナログは当該分
野で公知であり、そしてアジリジニルシトシン、4-アセチルシトシン、5-フル
オロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ
ウラシル、5-カルボキシメチル-アミノメチルウラシル、イノシン、N6-イソペ
ンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチ
ルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、
2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、シュードウラシ
ル、5-ペンチニルウラシル、および2,6-ジアミノプリンを含むが、これに限定
されない。デオキシリボ核酸におけるチミンの置換物としてのウラシルの使用も
またピリミジンの類似形態と考えられる。
存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組立ての前また
は後に加えられ得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって妨げ
られ得る。ポリヌクレオチドは、例えば、標識成分との結合によって、重合後に
さらに修飾され得る。他のタイプの修飾、例えば、「キャップ」、1つ以上の天
然に存在するヌクレオチドのアナログでの置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、
非荷電結合での修飾(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホス
ホアミデート、カバメートなど)および荷電結合での修飾(例えば、ホスホロチ
オエート、ホスホロジチオエートなど)、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、
トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリーL−リジンなど)のようなペンダン
ト部分を含む修飾、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレンなど
)での修飾、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)
を含む修飾、アルキレーターを含む修飾、修飾された結合(例えば、アルファア
ノマー核酸など)での修飾、ならびにポリヌクレオチドの非修飾形態もこの定義
に含まれる。
さらに、通常糖に存在するヒドロキシル基のいずれかをホスホネート基、ホス
フェート基で置き換え、標準的な保護基で保護するか、またはさらなるヌクレオ
チドへのさらなる連結を調製するために活性化し得、あるいは固体支持体に結合
し得る。5’および3’末端OH基をリン酸化するか、あるいは1〜20個の炭素原
子のアミンまたは有機キャッピング基部分で置換し得る。他のヒドロキシルもま
た、標準的な保護基に誘導体化され得る。
ポリヌクレオチドはまた、2’-O-メチル−、2’-O-アリル、2’-フルオ
ロ-もしくは2’-アジド-リボース、カルボサイクリック糖アナログ、α-アノマ
ー糖、エピマー糖(例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース)、ピ
ラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、および無塩基
性ヌクレオシドアナログ(例えば、メチルリボシド)を含むが、これに限定され
ない、一般に当該分野で公知のリボースまたはデオキシリボース糖の類似形態を
含有し得る。
上記のように、1つ以上のホスホジエステル結合が、別の結合基によって置き
換えられ得る。これらの別の結合基は、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」
)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R,P(O)OR'
、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)によって置き換えられた実施態様(こ
こで、各RまたはR’は、独立して、Hであるか、あるいは必要に応じてエーテ
ル(-O-)結合を含む置換もしくは無置換アルキル(1−20C)、アリール、アル
ケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジルである)を含む
が、これに限定されない。ポリヌクレオチドにおける全ての結合が同一である必
要はない。
従来の糖および塩基を本発明の方法を適用するのに使用するが、糖、プリンお
よびピリミジンの類似形態の置換は、ポリアミド骨格に似た別の骨格構造が有利
であり得るように、最終産物を設計するのに有利であり得る。
3H1ポリヌクレオチド(すなわち、3H1をコードするポリヌクレオチド)の「フ
ラグメント」(「領域」とも呼ばれる)は3H1ポリヌクレオチド配列の一部であ
り、そして少なくとも10個のポリヌクレオチドを有する。好ましいフラグメント
は、3H1の可変領域の少なくとも5つの連続するアミノ酸をコードする領域を含
む。より好ましくは、可変領域の少なくとも10の連続するアミノ酸、さらにより
好ましくは可変領域の少なくとも15の連続するアミノ酸を含む。
用語「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、および「タンパ
ク質」は、本明細書で相互に交換して用いられ、任意の長さのアミノ酸のポリマ
ーをいう。このポリマーは、線状または分岐状であり得、修飾されたアミノ酸を
含み得、そして非アミノ酸により妨げられ得る。また、この用語は、天然に、あ
るいは介在(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化(lipidatio
n)、アセチル化、リン酸化、あるいは標識成分との結合のような任意の他の操作
または修飾)によって修飾されるアミノ酸ポリマーを包含し得る。また、この定
義には、例えば、1つ以上のアミノ酸のアナログ(例えば、非天然アミノ酸など
を含む)を含有するポリペプチド、ならびに当該分野で公知の他の修飾も含まれ
る。本発明のポリペプチドは抗体に基づくので、このポリペプチドは単鎖または
会合した鎖として生じ得ることが理解される。
3H1のポリペプチド「フラグメント」(「領域」とも呼ばれる)は、3H1のアミ
ノ酸配列の一部分であって、そして少なくとも5アミノ酸を有する。好ましくは
、3H1のフラグメントは、3H1の可変領域の少なくとも4つの連続するアミノ酸、
より好ましくは少なくとも5アミノ酸、そしてなおより好ましくは約10アミノ酸
を含む。本発明の目的では、3H1のフラグメントは以下の機能のうちのいずれか
により同定され、そして特徴付けられ得る:(a)CEAとの相同性;(b)Ab1ま
たはAb3に結合する能力;(c)免疫応答、好ましくは抗CEAである免疫応答を誘
発する能力;(d)CEA関連腫瘍の改善、遅延、防止または遅延化および/また
は関連疾患状態の改善または緩和をもたらす能力。(b)、(c)または(d)
項は用語「免疫学的に反応性」の範囲内に入る。3H1フラグメントは任意の、1
つより多い、または全ての上記で同定される機能を有し得る。これらの機能(a
)〜(d)を決定するための方法を下に記載する。
CEAに「相同である」またはCEAと「相同性を共有する」3H1ポリペプチドは、C
EAおよび3H1ポリペプチドのアミノ酸配列を任意の方法(相互に対して同じ方向
または逆方向を含む)で並べた場合に、ポリペプチド内の少なくとも2、好まし
くは3、より好ましくは4つの連続するアミノ酸がCEAに一致することを意味す
る。機能的ペプチドフラグメントは本発明の目的では非常に小さい可能性がある
ので、ほんの数個のアミノ酸のみが一致し得る(例えば、結合部位および/また
は抗原提示に必要な連続するアミノ酸の所要数は、2〜5個と少ないアミノ酸で
あり得る)。CEAに対して「相同性の領域を含有する」3H1ポリペプチドは、上記
で定義されたように、そのアミノ酸配列内にCEAに対する相同性を共有する。
「融合ポリペプチド」は、天然に存在する位置とは配列中の異なる位置におけ
る領域を含むポリペプチドである。この領域は、通常異なるタンパク質中に存在
し得、そして融合ポリペプチドにおいて結合される。あるいは、これらは、通常
同じタンパク質中に存在し得るが、融合ポリペプチド中の新しい配置に置かれる
。
本明細書で用いる「免疫応答」は、体液性応答、細胞性応答、または両方をい
う。
3H1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「機能的に等価なフラグメント」
は、3H1ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性および/
または機能を維持する。例えば、免疫性を誘導する配列の機能性が改変されない
ように、当該分野で公知のような、さらなるヌクレオチドまたはペプチドを付加
することによって配列を変化させ得る。他の例は、配列の欠失および/または置
換である。あるいは、ヌクレオチドまたはアミノ酸を置換し、あるいは付加、欠
失または置換を組み合わせることによって配列を変化させ得る。当業者に明らか
なように、免疫性を誘導するポリペプチド配列の機能性は、Ab1および/またはA
b3への結合のような他の特徴および/または活性を含む。さらに、「免疫性を誘
導すること」は、体液性応答または細胞性応答のようないずれの局面の免疫応答
をも含むことは当業者に明らかである。ポリヌクレオチド配列の機能性は、部分
的にはその意図される使用に依存し、そしてポリヌクレオチドフラグメントに維
持されたいずれの機能性もこの定義を満たすこともまた明らかである。例えば、
3H1ポリヌクレオチドの「機能的に等価なフラグメント」は、所望のポリヌクレ
オチドをプローブとして使用し得るように、ハイブリダイズする能力が維持され
たフラグメントであり得る。あるいは、3H1ポリヌクレオチドの「機能的に等価
なフラグメント」は、ポリヌクレオチドが、インタクトな3H1に関連した機能、
そして好ましくは抗CEA免疫性の誘導に関連した機能を有する3H1のフラグメント
(可変領域の一部を含む)をコードすることを意味し得る。3H1ポリペプチドま
たはポリヌクレオチドの機能的に等価なフラグメントは、3H1ポリペプチドまた
はポリヌクレオチドと比較した場合に、同一、増強された、または減少した機能
を有し得る。3H1の他の機能を上記に列挙した。機能的に等価なフラグメントは
、少なくとも5ヌクレオチドまたは少なくとも5アミノ酸を有し、好ましくは少
なくとも10ヌクレオチドまたは少なくとも10アミノ酸を有し、なおより好ましく
は少なくとも20ヌクレオチドまたは少なくとも20アミノ酸を有する。
「細胞系」または「細胞培養」は、インビトロで増殖または維持された高等真
核生物細胞を示す。細胞の子孫は親細胞と(形態学的、遺伝子型的、または表現
型的のいずれかで)完全には同一でない場合があることは理解される。
「ベクター」は、挿入された核酸分子を宿主細胞中におよび/またはその間で
移行させる自己複製核酸分子である。この用語は、主として核酸分子の細胞への
挿入のために機能するベクター、主として核酸の複製のために機能するベクター
の複製、およびDNAまたはRNAの転写および/または翻訳のために機能する発現ベ
クターを含む。上記機能の2つ以上を提供するベクターもまた含まれる。
「宿主細胞」は、ベクター、あるいは核酸分子および/またはタンパク質の組
み込みのレシピエントとなり得るか、またはレシピエントである個々の細胞また
は細胞培養物を含む。宿主細胞は、単一宿主細胞の子孫を含み、そしてこの子孫
は自然の、偶然の、または意図的な変異のために元の親細胞とは(形態または全
DNA相補性のゲノムにおいて)必ずしも完全には同一でない場合がある。宿主細
胞は、本発明のポリヌクレオチドでインビボにおいてトランスフェクトされた細
胞を含む。
「発現ベクター」は、適切な宿主細胞に導入した場合に、ポリペプチドに転写
および翻訳され得るポリヌクレオチドと定義される。「発現系」は、通常、所望
の発現産物を生じるように機能し得る発現ベクターを含む適切な宿主細胞を含む
。
「シグナル配列」は、小胞体のような細胞性の膜におよびそれを通して新しく
合成された分泌タンパタ質または膜タンパク質を指向する短いアミノ酸配列であ
る。シグナル配列は、代表的には、ポリペプチドのN末端部分にあり、そしてポ
リペプチドが膜を横切った後に切断される。
本明細書で使用される用語「組換え」ポリヌクレオチドは、その起源または操
作により(1)それが天然で会合するポリヌクレオチドの全てまたは一部とは会
合しないか、(1)それが天然で連結するポリヌクレオチド以外のポリヌクレオ
チドに連結されるか、または(3)天然に生じない、ゲノム、cDNA、半合成、ま
たは合成起源のポリヌクレオチドを意図する。
「単離された」ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、それが天然で会合す
る物質が実質的にないものである。実質的にないとは、それが天然で会合する物
質が少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80
%、そしてなおより好ましくは少なくとも90%ないことを意味する。
「ワクチン」は、ヒトまたは動物用途の薬学的組成物であり、これは特定の標
的または標的群に対する一定の程度の特異的免疫学的反応性をレシピエントに付
与する意図で投与される。免疫学的反応性は、標的に対して免疫学的に反応性で
ある抗体または細胞(特に、B細胞、形質細胞、Tヘルパー細胞、および細胞傷
害性Tリンパ球、およびそれらの前駆体)、またはそのいずれかの組合せであり
得る。本発明の目的では、この標的は、腫瘍関連抗原CEA、または3H1によって結
合される任意の腫瘍関連抗原である。免疫学的反応性は、実験目的のため、特定
の状態の処置のため、特定の物質の排除のため、または予防のために望まれ得る
。
生物学的「サンプル」は、個体から得られ、そして代表的には診断手順または
アッセイで使用される種々のサンプルタイプを包含する。この定義は血液および
生物学的起源の他の液体サンプル、バイオプシー標本または組織培養物、あるい
はそれらから得られる細胞およびその子孫のような固体組織サンプルを包含する
。この定義はまた、それらの獲得後に任意の方法(例えば、試薬での処理、可溶
化、またはタンパク質もしくはポリヌクレオチドのようなある成分の富化による
)により操作されたサンプルを含む。用語「生物学的サンプル」は臨床サンプル
を包含し、そしてまた、培養物、細胞上清、および細胞溶解物を包含する。
本明細書で用いる「処置」は、有利なまたは所望の臨床結果を得るためのアプ
ローチである。本発明の目的では、有利なまたは所望の臨床結果は、検出可能ま
たは検出不可能を問わず、徴候の改善、疾患の程度の減少、疾患の安定化された
(すなわち、悪化しない)状態、疾患の拡大(すなわち、転移)の防止、疾患の
発生または再発の防止、疾患進行の遅延または遅延化、疾患状態の改善または緩
和、および(部分的または全体的を問わず)軽減を含むが、これに限定されない
。「処置」はまた、処置を受けない場合に予測される生存と比較して延長した生
存も意味し得る。
「有効量」は、有利なまたは所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。
有効量は、1回またはそれ以上の投与で投与され得る。本発明の目的では、有効
量の3H1ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、免疫応答、特に抗CEA応答を誘
導するのに十分な3H1の量である。処置に関して、3H1ポリヌクレオチドまたはポ
リペプチドの「有効量」は、CEA関連疾患気状態の進行を緩和、改善、安定化、
逆行、または延長させるのに十分な量である。効能のこれらのインジケーターの
検出および測定を下記で議論する。
「個体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺
乳動物は、飼育動物、競技動物およびペットを含むが、これに限定されない。
一般的技術
本発明の実施は、特に示さない限り、当業者の範囲内である分子生物学(組換
え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の通常の技術を使
用する。このような技術は、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第
2版(Sambrookら,1989);「Oligonucleotides Synthesis」(M.J.Gait編,198
4);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney編、1987);「Methods in Enzymolog
y」(Academic Press,Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」(D.
M.Wei & C.C.Blackwell編);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells
」(J.M.Miller & M.P.Calos編,1987);「Current Protocols in Molcecular
Biology」(F.M.Ausubelら編,1987);「PCR: The Polymerase Chain React
ion」(Mullisら編,1994);「Current Protocols in Immunology」(J.E.Col
liganら編,1991)のような文献に十分に説明されている。
これらの技術は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの生産に適用
可能であり、それゆえ、これらの発明の局面を熟慮する場合に考慮すべきである
。個々の局面に特に有用な系を以下に記する。
3H1ポリヌクレオチド
本発明は、抗イディオタイプ抗体3H1または3H1のフラグメントをコードするポ
リヌクレオチドを含む。これらのポリヌクレオチドは、化学的方法および/また
は組換え方法、またはこれらの方法の組合せによって単離および/または産生さ
れる。特に言及のない限り、用語「ポリヌクレオチド」または「3H1ポリヌクレ
オチド」は、本発明のポリヌクレオチドの全実施態様を含むべきである。
本発明の3H1ポリヌクレオチドは、発現系において、およびワクチンを含む薬
学的調製物においてプローブ、プライマーとして有用である。このポリペプチド
の特に有用な適用を以下で議論する。
1つの実施態様において、本発明は、3H1の可変領域の少なくとも一部を含有
する3H1の軽鎖または重鎖の免疫学的活性可変領域を有するポリペプチドをコー
ドするポリヌクレオチド配列を提供する。別の実施態様において、3H1の免疫学
的活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供し
、ここで、該ポリヌクレオチドは3H1の可変軽鎖の少なくとも5アミノ酸の配列
をコードする配列を含む。別の実施態様において、3H1の免疫学的活性を有する
ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供し、ここで、該ポ
リヌクレオチドは3H1の可変重鎖の少なくとも5アミノ酸をコードする配列を含
む。
本発明はまた、図1および図2に示す3H1ポリヌクレオチドを提供する。1つ
の実施態様において、3H1の免疫学的活性を有するポリペプチドをコードする単
離されたポリヌクレオチドを提供し、ここで、該ポリヌクレオチドは3H1の可変
軽鎖の少なくとも5アミノ酸の配列をコードする配列を含み、そして可変軽鎖ア
ミノ酸配列を図1に示す(配列番号1)。別の実施態様において、3H1の免疫学
的活性を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供し
、ここで、該ポリヌクレオチドは3H1の可変重鎖の少なくとも5アミノ酸の配列
をコードする配列を含み、そして可変重鎖アミノ酸配列を図2に記す(配列番号
3)。図1は、3H1の軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列(配列番号1)および
導かれるアミノ酸配列(配列番号2)を示す。図2は、3H1の重鎖の可変領域の
ヌクレオチド配列(配列番号3)および導かれるアミノ酸配列(配列番号1)を
示す。配列番号1のヌクレオチド配列は、447塩基対であり、実施例2に記載の
クローンから得られた。配列番号3のポリヌクレオチド配列は462塩基対であり
、実施例2に記載のクローンから得られた。配列番号3のポリヌクレオチド配列
は462塩基対であり、実施例2に記載のように得られた。
別の実施態様において、本発明は、配列番号1の少なくとも約70の連続するヌ
クレオチド、好ましくは少なくとも約80の連続するヌクレオチド、より好ましく
は少なくとも約100の連続するヌクレオチド、さおさらに好ましくは少なくとも
約150ヌクレオチドを含む、3H1軽鎖可変領域の一部をコードするポリヌクレオチ
ドを含む。本発明はまた、3H1軽鎖可変領域の一部の配列をコードするCDR1の少
なくとも約25の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも約30の連続するヌ
クレオチド、なおさらに好ましくは少なくとも約35の連続するヌクレオチドを含
む、3H1軽鎖可変領域の一部をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明はま
た、3H1軽鎖可変領域の一部の配列をコードするCDR2またはCDR3の少なくとも約2
0の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも約25の連続するヌクレオチド
、なおさらに好ましくは少なくとも約35の連続するヌクレオチドを含む、3H1軽
鎖可変領域の一部をコードするポリヌクレオチドを含む。
別の実施態様において、本発明は、配列番号3の少なくとも約70の連続するヌ
クレオチド、好ましくは少なくとも約80の連続するヌクレオチド、より好ましく
は少なくとも約100の連続するヌクレオチド、なおさらに好ましくは少なくとも
約150のヌクレオチドを含む、3H1重鎖可変領域の一部をコードするポリヌクレオ
チドを含む。本発明はまた、3H1軽鎖可変領域の一部の配列をコードするCDR1の1
5の連続するヌクレオチドを含む、3H1軽鎖可変領域の一部をコードするポリヌク
レオチドを含む。本発明はまた、3H1軽鎖可変領域の一部の配列をコードするCDR
2またはCDR3の少なくとも約20の連続するヌクレオチド、好ましくは少なくとも
約25の連続するヌクレオチド、なおさらに好ましくは少なくとも約35の連続する
ヌクレオチドを含む、3H1軽鎖可変領域の一部をコードするポリヌクレオチドを
含む。
別の実施態様において、本発明は、3H1の免疫学的活性を有するポリペプチド
をコードする単離された3H1ポリヌクレオチドを含み、ここで、該ポリペプチド
は、配列番号2に示す3H1の可変軽鎖の少なくとも5アミノ酸をコードする。別
の実施態様において、本発明は、3H1の免疫学的活性を有するポリペプチドをコ
ードする単離された3H1ポリヌクレオチドを含み、ここで、該ポリヌクレオチド
は配列番号4に示す3H1の可変重鎖の少なくとも5アミノ酸をコードする。該ポ
リヌクレオチド配列は、配列番号1(図1)または配列番号3(図12)に示し
たものに類似であり、コドン使用または安定性を最適化するために設計された少
しの変化を有し得るか、または有意に変化し得る。配列番号2または配列番号4
のアミノ酸配列があれば、このようなポリヌクレオチドを設計することは当業者
の範囲内である。
別の実施態様において、本発明は、任意の上述の3H1ポリヌクレオチドを含み
、
ここで、該ポリヌクレオチドは相補性決定領域(CDR)の少なくとも5アミノ酸
をコードする。CDRは以下に記載される。
(定常領域の一部と共に)3H1の軽鎖および重鎖可変領域についてのcDNAを含
有するプラスミドは、特許手続の目的のための微生物の寄託の国際的承認に関す
るブダペスト条約の規定に基づき、 に、アメリカンタイプカル
チャーコレクション(ATCC),12301 Parklawn Drive,Rockville,メリーランド
州,米国20852に寄託した。それらは、特に、受託番号 および
にて記録された。これらの寄託は、配列情報および本明細書中に提供
する教示が本発明の特許請求する実施態様を十分に可能とする点で、便宜のため
のみなされる。
本発明は、欠失、置換、付加、または任意の核酸部分における性質の変化のよ
うな、上記の3H1ポリヌクレオチドに対する改変を含む。「修飾」とは、3H1ポリ
ペプチドフラグメントをコードする本明細書中に示したポリヌクレオチドと比較
したヌクレオチド配列の任意の相違、および/またはポリヌクレオチドの核酸部
分の任意の相違である。このような変化は、3H1ポリヌクレオチドのクローニン
グおよび発現改変を容易にするために有用であり得る。このような変化はまた、
安定性のような所望の特性をポリヌクレオチドに付与するのに有用であり得る。
本明細書中に提供するポリヌクレオチドの定義は、これらの修飾の例を与える。
本発明は、3H1ポリヌクレオチドのその完全長(プロセスされていない)、プ
ロセスされたポリヌクレオチド、コードポリヌクレオチド、非コードポリヌクレ
オチド、またはその部分を含む3H1ポリヌクレオチドを含む。但し、これらのポ
リヌクレオチドは3H1の可変領域の少なくとも一部をコードする領域を含む。可
変領域コードセグメントの一部を含むmRNA配列およびcDNA配列およびそのフラグ
メントもまた包含する。
本発明はまた、それによりコードされるポリペプチドの特性を増強し得るか、
減少し得るか、または有意には影響しなくてもよい3H1の機能的に等価な変異体
および誘導体ならびにその機能的に等価なフラグメントについてコードするポリ
ヌクレオチドを包含する。これらの機能的に等価な変異体、誘導体およびフラグ
メントは、免疫応答、好ましくは抗CEA免疫応答を誘導する能力を示す。例えば
、
コードされたアミノ酸配列を変化させないDNA配列の変化、ならびにアミノ酸残
基の保存的置換を生じる変化、1または数個のアミノ酸欠失または付加を生じる
変化、およびアミノ酸アナログによるアミノ酸残基の置換を生じる変化は、コー
ドされたポリペプチドの特性に有意に影響しない変化である。コードされたアミ
ノ酸残基を変更しないヌクレオチド置換は、異なる系における遺伝子発現を最適
化するために有用であり得る。適切な置換は当業者に公知であり、例えば、特定
の発現系における好ましいコドン使用を反映させるためになされる。別の例にお
いて、オルタナティブにスプライスされたポリヌクレオチドは、3H1の機能的に
等価なフラグメントまたは変異体を生じさせ得る。オルタナティブにプロセスさ
れたポリヌクレオチド配列変異体は、相互に配列が異なるが、同じゲノム領域に
由来するmRNA、例えば、1)オルタナティブなプロモーターの使用;2)オルタ
ナティブなポリアデニル化部位の使用;または3)オルタナティブなスプライス
部位の使用により生じるmRNAに対応するポリヌクレオチド配列として規定される
。
本発明の3H1ポリヌクレオチドはまた、他の3H1フラグメントをコードするポリ
ヌクレオチドを含む。3H1フラグメントをコードするポリヌクレオチドは、例え
ば、プローブ、治療剤として、および3H1の種々の機能ドメインおよび/または
結合ドメインをコードするテンプレートとして有用である。従って、本発明は、
3H1の軽鎖可変領域の一部をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチ
ドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含み、ここで、該ポリヌクレオチド
は配列番号1の少なくとも10の連続するヌクレオチドを含む。別の実施態様にお
いて、本発明は、3H1の重鎖可変領域の一部をコードするヌクレオチド配列を含
むポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含み、ここで、該
ポリヌクレオチドは配列番号3の少なくとも10の連続するヌクレオチドを含む。
このおよその大きさのフラグメントはAb1抗体またはAb3抗体の結合部位をコード
し得る。別の実施態様において、3H1ポリヌクレオチドフラグメントは、図1(
配列番号1)または図2(配列番号3)に示した配列の約15、好ましくは20、な
おさらに好ましくは30塩基を含む。適切なフラグメントは、それらがプライマー
またはプローブとして効果的であるように、3H1 DNAまたはRNAに特異的にハイブ
リダイズするフラグメントである。プライマーはポリメラーゼ連鎖反応(PC
R)で特に有用である。
ハイブリダイゼーション反応は異なる「ストリンジェンシー」の条件下で行わ
れ得る。この条件は、当該分野で広く知られたおよび刊行されたハイブリダイゼ
ーション反応のストリンジェンシーを増大させる条件である。例えば、Sambrook
およびManiatisを参照のこと。関連条件の例としては、(ストリンジェンシーを
増加する順に):25℃、37℃、50℃および68℃のインキュベーション温度;10×
SSC、6×SSC、1×SSC、0.1×SSC(ここで、SSCは0.15M NaClおよび15mMクエン酸緩
衝液)および他の緩衝液系を用いるそれらの等価な濃度;0%、25%、50%およ
び75%のホルムアミド濃度;5分間〜24時間までのインキュベーション条件;1
回、2回またはそれを越える洗浄工程;1、2または15分の洗浄インキュベーシ
ョン時間;および6×SSC、1×SSC、0.1×SSC、または脱イオン水の洗浄溶液が挙げ
られる。
「Tm」は、ワトソン−クリック塩基対合によって逆平行向きに水素結合した相
補鎖より作製されたポリヌクレオチド二本鎖の50%が実験条件下で一本鎖に解離
する摂氏度での温度である。Tmは以下の標準式に従って予測され得る:
Tm=81.5+16.6log[Na+]+0.41(%G/C)-0.61(%F)-600/L
ここで、[Na+]はモル/Lで表したカチオン(通常ナトリウムイオン)濃度
である;(%G/C)は二本鎖における全残基のパーセントとしてのGおよびC残
基の数である;(%F)は溶液中のホルムアミドパーセント(wt/vol)であり;
そしてLは二本鎖の各鎖におけるヌクレオチドの数である。
3H1のフラグメントをコードする有用な3H1ポリヌクレオチドは(例えば、図1
中の配列番号1または図2中の配列番号3に基づいて)ポリヌクレオチドフラグ
メントを生じさせ、そして目的の機能について、それによりコードされるポリペ
プチドを試験することによって得ることができる。あるいは、所望の3H1ポリペ
プチドがあれば、ポリヌクレオチド配列は、3H1ポリペプチドのアミノ酸配列か
ら得られ得る。例えば、3H1ポリペプチドをAb1および/またはAb3に結合する、
または免疫応答を誘発するそれらの能力について試験し得る。これらの種々の機
能についてのアッセイは、以下で述べる。
本発明はまた、scFv、ポリマー、融合タンパク質、およびキメラをコードする
ポリヌクレオチドのような、1以上の3H1ポリペプチドを含む3H1誘導体または変
異体をコードするポリヌクレオチドを含む。3H1のこれらの形態を以下に記載す
る。
本発明はまた、検出可能な標識と共有結合したポリヌクレオチドを提供する。
このようなポリヌクレオチドは、例えば、関連のヌクレオチド配列の検出用プロ
ーブとして有用である。
3H1ポリヌクレオチドの調製
本発明のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え法、またはPCRを用い得るこ
とができる。
ポリヌクレオチドの化学的合成の方法は、当該分野で周知であり、本明細書中
に詳細に記載する必要はない。当業者は、本明細書中に提供した配列および市販
のDNA合成器を用いて所望のDNA配列を生成し得る。
組換え法を用いて3H1ポリヌクレオチドを調製するために、所望の配列を含む
ポリヌクレオチドを適切なベクターに挿入し得、次いで、該ベクターを、複製お
よび増幅のための適切な宿主細胞に導入し得る。ポリヌクレオチドは当該分野で
公知の任意の手段によって宿主細胞に挿入し得る。直接取り込み、エンドサイト
ーシス、トランスフェクション、接合またはエレクトロポレーションにより外因
性ポリヌクレオチドを導入することによって細胞を形質転換する。一旦導入すれ
ば、外因性ポリヌクレオチドは非組込みベクター(例えば、プラスミドのような
)として細胞内に維持され得るか、または宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。そ
のように増幅されたポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法によって宿主細
胞から単離され得る。例えば、Sambrookら(1989)を参照のこと。
あるいは、PCRはDNA配列の再生を可能にする。PCR技術は当該分野で周知であ
り、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,6
83,202号、ならびにPCR: The Polymerase Chain Reaction,Mullisら編,Birkau
swer Press,Boston(1994)に記載されている。
RNAは、適切なベクター中の単離DNAを用い、適切な宿主細胞にそれを挿入する
ことによって得ることができる。細胞が複製され、そしてDNAがRNAに転写される
場合、次いで、該RNAは、例えばSambrookら(1989)に記載されているような当業
者に周知の方法を用いて単離され得る。
ワクチンとして使用する場合、Hornら((1995)Human Gene Therapy 6:565-573)
(これは、投与に適した医薬用のプラスミドDNAを生産する)によって記載され
ているように、3H1ポリヌクレオチドを含むプラスミドが調製される。
3H1ポリヌクレオチドを含むクローニングベクターおよび発現ベクター
本発明は、さらに、クローン化された3H1ポリヌクレオチドを有する様々なベ
クターを含む。これらのベクターは組換えポリペプチドの発現のためにならびに
3H1ポリヌクレオチドの供給源として使用され得る。クローニングベクターは、
それらが含有する3H1ポリヌクレオチドの複製コピーを得るために、または将来
の回収のために、寄託所にポリヌクレオチドを保存する手段として使用され得る
。発現ベクター(およびこれらの発現ベクターを含む宿主細胞)を用いて、それ
らが含有するポリヌクレオチドから生産されたポリペプチドを得ることができる
。ベクターはまた、遺伝子治療におけるように、個体において3H1ポリペプチド
を発現することが望ましく、従ってポリペプチドを合成し得るインタクトな細胞
を有する場合に使用され得る。適切なクローニングベクターおよび発現ベクター
は当該分野で公知の任意ベクター、例えば、細菌発現系、哺乳動物発現系、酵母
発現系および昆虫発現系で使用されるベクターを含む。特異的ベクターおよび適
切な宿主細胞は当該分野で公知であり、本明細書中に詳細に記載する必要はない
。例えば、GacesaおよびRamji,Vectors,John Wiley & Sons(1994)を参照のこ
と。
クローニングベクターおよび発現ベクターは、典型的には、選択マーカー(例
えば、該ベクターで形質転換した宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質
をコードする遺伝子)を含むが、このようなマーカー遺伝子は、宿主細胞に同時
導入された別のポリヌクレオチド配列に担持され得る。選択遺伝子が導入された
宿主細胞のみが、選択的条件下で生存および/または増殖する。典型的な選択遺
伝子は、(a)抗生物質または他のトキシン物質(例えば、アンピシリン、ネオ
マイシン、メトトレキセート等)に対する耐性を付与するタンパク質;(b)栄
養要求性欠陥を相補するタンパク質;または(c)複合培地から利用できない重
要な栄養を補給するタンパク質をコードする。適切なマーカー遺伝子の選択は、
宿主細胞に依存し、異なる宿主用の適切な遺伝子は、当該分野で公知である。ク
ローニングベクターおよび発現ベクターはまた、典型的には、宿主によって認識
される複製系を含有する。
適切なクローニングベクターは標準的な技術に従って構築され得るか、または
当該分野で入手可能な非常に多数のクローニングベクターから選択され得る。選
択されたクローニングベクターは使用することを意図する宿主細胞に従って変化
し得、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有し、特定
の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を保有し得、および/または該ベ
クターを含有するクローンを選択するにおいて使用され得るマーカー用の遺伝子
を担持し得る。適切な例としては、プラスミドおよび細菌、ウイルス(例えば、
pUC18、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、PR4、ファージDNA、およびpSA3およ
びpAT28のようなシャトルベクター)が挙げられる。これらのクローニングベク
ターおよび多くの他のクローニングベクターは、BioRad、Strategene、およびIn
vitrogenのような供給業者から入手可能である。
発現ベクターは、一般に、目的の3H1ポリペプチドをコードするポリヌクレオ
チドを含有する複製可能なポリヌクレオチド構築物である。3H1ポリペプチドを
コードするポリヌクレオチドは、プロモーター、エンハンサーおよびターミネー
ターのような適切な転写制御エレメントに作動可能に連結される。発現(すなわ
ち、翻訳)のために、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および停止コドンの
ような1以上の翻訳制御エレメントがまた、通常必要とされる。これらの制御エ
レメント(転写エレメントおよび翻訳エレメント)は、3H1ヌクレオチド(すな
わち、3H1遺伝子)に由来し得るか、またはそれらは異種であり得る(すなわち
、他の遺伝子および/または他の生物に由来し得る)。また、3H1ポリペプチド
が細胞膜を通過すること、および/またはそこに止まることを可能にするために
、または細胞から分泌させるために、シグナルペプチドをコードするポリヌクレ
オチド配列がまた包含され得る。酵母、トリおよび哺乳動物細胞を含む真核生物
細胞での発現に適切な多数の発現ベクターが当該分野で知られている。発現ベク
ターの一つの例は、pcDNA3(Invitrogen,San Diego CA)であり、ここでは、転写
はサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーター/エンハンサーによって駆動
される。このベクターはまた、目的の3H1ポリヌクレオチドの挿入のための複数
の制限酵素の認識部位を含む。発現ベクター(系)の別の例は、バキュロウイル
ス/昆虫系である。
目的のポリヌクレオチドを含むベクターは、塩化カルシウム、塩化ルビジウム
、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を使用するエレクト
ロポレーション、トランスフェクション;マイクロプロジェクタイルボンバード
メント(microprojectile bombardment);リポフェクション;および感染(ここ
でベクターは以下に記するワクシニアウイルスのような感染性因子である)を含
む任意の多くの適切な手段によって宿主細胞に導入され得る。ベクターまたは3H
1ポリヌクレオチドを導入する手段の選択は、しばしば、宿主細胞に依存する。
一旦適切な宿主細胞、例えば大腸菌(E.coli)またはCOS-7に導入されると、本
明細書中に記載される任意のアッセイを用いて3H1ポリペプチドの発現は測定さ
れ得る。例えば、3H1ポリペプチドの存在は、(3H1ポリペプチドが分泌される場
合)培養上清または細胞溶解物のRIAまたはELISAによって検出され得る。
3H1ポリヌクレオチドに特に有用な発現ベクターは、3H1ポリヌクレオチド配列
を含むワクシニアウイルスであり、これはまたワクチン調製において使用され得
る。Moss(1991)Science 252:1662-1667。3H1ポリペプチドフラグメントを含む3H
1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をワクシニアに導入するため
に、目的のポリヌクレオチド配列を、まず、複製に必須でないワクシニアDNAに
相同な隣接配列と共にワクシニアウイルスプロモーターを含むプラスミドに挿入
する。次いで、プラスミド含有細胞をワクシニアで感染させ、これにより、プラ
スミドとウイルスとの間の低レベルの相同組換えに導かれ、ワクシニアプロモー
ターおよび3H1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列がワクシニアウ
イルスのゲノムに移入される。典型的には、3H1ポリヌクレオチドはウイルスtk
(チミジンキナーゼ)遺伝子に挿入される。tk部位への挿入により、野生型と比
較してウイルスは10,000倍を越えて減弱される(Flexnerら(1980)Vaccine 88(Col
d Spring Harbor Laboratory),179-184)。組換えウイルスは、tk-表現型によっ
て同定される。好ましくは、3H1ポリヌクレオチドの発現は、ワクシニア初
期/後期プロモーター(7.5K)の制御下であり、それにより、得られる3H1ポリ
ペプチドはウイルスのライフサイクルを通じて感染細胞において発現され得る。
しかし、pH6、合成プロモーター、SV40プロモーター、またはアデノウイルス由
来のプロモーターのような当該分野で知られている他のプロモーターが使用され
得る。3H1ポリペプチドの発現は、組換えワクシニアで感染させた細胞または組
換えワクシニア生ウイルスで免疫化された個体で生じる。3H1ポリペプチドの発
現のためのワクシニアベクターの構築は、実施例4に提供される。限定されない
が、WR、ALVACおよびNYVACを含むワクシニアのいくつかの株のうちの任意の1つ
が使用され得る。トリ細胞を感染するためにALVACおよびNYVAC株を用いる。
本発明のワタシニアベクターは、3H1ポリペプチドをコードする1以上のポリ
ヌクレオチドを含有し得る。ワクシニアベクターはまた、所望の結果を増強し、
容易にし、または調節する他のポリペプチド(例えば、限定されないが、IL-2、
IL-4およびGM-CSFを含むリンホカイン)をコードするポリヌクレオチド配列を含
み得る。好ましいリンホカインは、GM-CSFである。GM-CSFを使用する場合、組換
え法によって、RNA転写産物の3’非翻訳領域からAU-リッチエレメントを排除し
および/またはヘアピンループを形成し得る5’非翻訳領域における配列を排除
することもまた好ましい。また、scFvs、キメラ、およびポリマー(以下に記載
)のような3H1ポリペプチドを含む組換え3H1変異体をコードするワクシニアベク
ターが本発明に包含される。
3H1ポリヌクレオチドで形質転換した宿主細胞
本発明の別の実施態様は、3H1ポリヌクレオチドおよび/または3H1ポリヌクレ
オチド配列を有する上述のようなベクターで形質転換された宿主細胞である。原
核生物および真核生物の両方の宿主細胞が使用され得る。原核生物宿主としては
細菌細胞(例えば、E.coliおよびマイコバクテリア)を包含する。真核生物宿主
の中には、酵母、昆虫、トリ、植物および哺乳動物細胞がある。宿主系は当該分
野で知られており、本明細書中に詳細に記載する必要はない。哺乳動物宿主細胞
の1つの例は、European Collection of Cell Cultures(英国)から得ることがで
きるNSOである。例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CMV)プロモーター
によって駆動される、プラスミドでのNSO細胞のトランスフェクション、その後
のグルタミンシンテターゼを用いるこのプラスミドの増幅により、タンパク質産
生のための有用な系が提供される。Cockettら(1990)Bio/Technology 8:662-667
。
本発明の宿主細胞は、とりわけ、3H1ポリヌクレオチドの貯蔵場所および/ま
たは3H1ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生のためのビヒクルとして使
用され得る。これらはまた、3H1ポリペプチドのインビボでの送達のためのビヒ
クルとして使用され得る。
3H1の可変領域をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド
ATCC受託番号 にて寄託した3H1の軽鎖可変領域をコードするポ
リヌクレオチドを含むプラスミドはまた、本発明に包含される。本発明はまた、
ATCC受託番号 にて寄託した3H1の重鎖可変領域をコードするポリ
ヌクレオチドを含むプラスミドを包含する。ベクター(プラスミド)3H1VL0は3H
1の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む。ベクター(プラスミド
)3H1VH0は、3H1の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を包含する。こ
れらのポリヌクレオチド(またはそのフラグメント)は、当該分野で周知の方法
によって得ることができる。ベクターを含む宿主細胞を適切な条件下で増殖させ
、そしてベクターDNAを標準的な方法を用いて単離する。一旦単離されると、単
離DNAの適切な制限酵素消化により所望のポリヌクレオチドをベクターから遊離
させることにより、所望のポリヌクレオチドが得られる。ゲル電気泳動のような
適切な分離技術を用い、他の制限フラグメントからポリヌクレオチドを単離し得
る。制限部位の位置決定は配列解析を用いて容易に可能である。
3H1ポリヌクレオチドの用途および使用方法
本発明のポリヌクレオチドはいくつかの用途を有する。3H1ポリヌクレオチド
は、例えば、3H1または3H1フラグメントの組換え産生のための発現系において有
用である。それらはまた、当業者に周知の方法を用いてサンプル中の3H1ポリヌ
クレオチド(または関連の)配列の存在についてアッセイするためのハイブリダ
イゼーションプローブとしても有用である。さらに、3H1ポリヌクレオチドはま
た、所望のポリヌクレオチドの増幅を達成するためのプライマーとしても有用で
ある。本発明のポリヌクレオチドはまた、ワクチンとしておよび遺伝子治療のた
めに有用である。
本発明の3H1ポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)におけるよう
に、3H1またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドの増幅用プライ
マーとして使用され得る。PCRは上述した。PCR反応を行うための条件は、所望の
特異性に依存し、これは使用されるプライマーおよび反応条件によって調整され
得る。このような調整は、当該分野で公知であり、本明細書中に詳細に記載する
必要はない。
3H1ポリヌクレオチドはまた、例えば、細胞における3H1ポリヌクレオチドの存
在の検出用のハイブリダイゼーションプローブとしても使用され得る。例えば、
3H1ポリヌクレオチドは、遺伝子治療で使用する細胞における3H1ポリヌクレオチ
ド配列の存在を決定するためのプローブとして使用され得る。これらの方法につ
いて、適切な細胞サンプルまたは細胞由来のサンプル(いずれも、3H1ポリヌク
レオチド配列を含むと考えられるサンプル)を得、サンプル由来のポリヌクレオ
チドと3H1ポリヌクレオチドプローブとを接触させることによって3H1ポリヌクレ
オチドの存在について試験する。この方法を行って、3H1プローブと目的の3H1ポ
リヌクレオチドとの間にハイブリダイゼーションが生じることを可能にし、得ら
れた(もしあれば)ハイブリダイズした複合体が検出される。このような方法は
、細胞培養、ポリヌクレオチド調製、ハイブリダイゼーション、およびもしあれ
ば形成されたハイブリッド複合体の検出のような当該分野で周知の手順を必要と
する。同様の方法を用い、プローブはまた、次に3H1ポリペプチド、インタクト
な3H1、または3H1の組換え体、変異体形態を産生するためのベクターを検出する
ために使用され得る。
本発明の3H1ポリヌクレオチドは、3H1ポリペプチド、インタクトな3H1、増強
された特性、等価な特性、3H1の組換え形態を産生するための発現系において使
用され得、または異なる特性、所望特性を有する、インタクトな3H1を含む。こ
れらの組換え形態は当該分野におけるルーチン的方法を用いることにより作製さ
れる。3H1の組換え形態および3H1ポリペプチドの例として、限定されないが、サ
イトカインのような他の成分を含む、ハイブリッド、キメラ、一本鎖変異体、お
よび融合タンパク質を包含する。これらの3H1の組換え形態および3H1ポリペプチ
ドおよびその作製のより詳細な記載は、以下に提供する。
3H1ポリヌクレオチドの別の用途は、ワクチンおよび遺伝子治療にある。一般
的な原理は、そこにコードされたポリペプチドの発現を促進または減弱のいずれ
かをするようにポリヌクレオチドを投与することである。従って、本発明は、免
疫応答を誘導する方法、および有効量の3H1ポリヌクレオチドを個体に投与する
工程を含む治療方法を包含する。これらの方法において、3H1ポリペプチドをコ
ードする3H1ポリヌクレオチドを、直接または3H1ポリヌクレオチドでトランスフ
ェクトした細胞を介するかのいずれかで個体に投与する。好ましくは、3H1ポリ
ヌクレオチドを細胞内で複製させる。従って、3H1ポリヌクレオチドを、標的組
織型の細胞において内在的に活性である異種プロモーターのような適切なプロモ
ーターに作動可能に連結させる。ポリヌクレオチドの細胞への侵入は、ワクシニ
アまたはアデノウイルスベクターのようなウイルス発現ベクターを介するような
当該分野で公知の技術により、またはポリヌクレオチドをカチオン性リポソーム
と結合させることにより達成される。好ましくは、3H1ポリヌクレオチドは、環
状プラスミドの形態であり、好ましくは超らせん配置である。好ましくは、一旦
細胞核に入れると、プラスミドは環状の非複製エピソーム分子として存続する。
次いで、例えば、所望のHLAモチーフを有するより免疫原性分子またはT細胞エ
ピトープをコードするように、プラスミド構築物を用いてインビトロ変異誘発を
行い得る。
3H1ポリヌクレオチドを含むプラスミドが真核生物細胞において発現され得る
か否かを決定するために、例えばCOS-7細胞、CHO(トリ起源)細胞、またはHeLa
(ヒト起源)細胞のような真核生物細胞は、プラスミドでトランスフェクトされ
得る。次いで、3H1ポリペプチドが得られる発現を、RIAまたはELISAによって測
定する。プローブとして8019(Ab1)を用いる細胞溶解物を用いてウェスタンブロ
ットを行って、細胞に会合した3H1ポリペプチドを確認し得る。あるいは、より
小さい3H1ポリペプチドについては、得られた3H1ポリペプチドが、例えば酵素標
識を用いて組換えにより標識されるように、プラスミドを構築することにより、
発現が検出され得る。さらに、3H1ポリペプチドの精製、その後の本明細書中に
記載する機能アッセイ(例えば、細胞結合阻害アッセイ)を行うことによって発
現された3H1ポリペプチドの特徴付けが達成される。
本発明はまた、3H1ポリヌクレオチドのエクスビボトランスフェクションを含
み、ここでは、個体から取り出した細胞を3H1ポリペプチドをコードするベクタ
ーでトランスフェクトし、個体に再導入する。適切なトランスフェクト細胞は限
定されないが、末梢血単核細胞を包含する。
3H1ポリヌクレオチドの治療的投与を以下により詳細に記載する。
3H1ポリペプチド
本発明は、3H1の可変領域の少なくとも一部を含有する3H1のポリペプチドフラ
グメントおよび3H1フラグメントを含むタンパク質を含む。以下の基準:(a)A
b1および/またはAb3に結合する能力;(b)CEAに対する免疫応答を誘導する能
力;(c)CEAのいずれかの部分に対する相同性(すなわち、実質的な配列の同
一性);(d)CEA関連腫瘍を緩和、改善、減少、遅延または防止する能力のい
ずれか(1以上)によって、配列番号2(図1)または配列番号4(図2)のい
ずれかの領域またはサブ領域を含み得る3H1のポリペプチドフラグメント(但し
、フラグメントは可変領域の少なくとも一部を含む)を同定し、そして特徴付け
る。
3H1のポリペプチドフラグメントは、Ab1および/またはAb3レベルをモニター
するための診断ツールとしての薬学的組成物およびワクチンにおけるそれらの使
用、CEAに結合する抗体を作製するためのそれらの使用、および標識抗CEA抗体を
受容した個体からの標識Ab1を除去する際のそれらの使用を包含する種々の使用
を有する。
特に断りのない限り、用語「3H1ポリペプチド」は、本発明のポリペプチドの
全ての実施態様を包含する。全ての例において、本発明の「3H1ポリペプチド」
はインタクトな3H1と同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含まない。
本発明は、3H1の可変領域の少なくとも一部を含有する3H1のポリペプチドフラ
グメントを含む。1つの実施態様において、本発明は、3H1の免疫学的活性を有
するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは3H1の可変軽鎖アミノ酸配
列の少なくとも5アミノ酸の配列を含む。別の実施態様において、3H1の可変軽
鎖アミノ酸配列を図1(配列番号2)に示す。別の実施態様において、本発明は
3H1の免疫学的活性を有するポリペプチドを提供し、ここで、ポリペプチドは3H1
の可変重鎖アミノ酸配列の少なくとも5アミノ酸を有する配列を含む。別の実施
態様において、3H1の可変重鎖アミノ酸配列を図2(配列番号4)に示す。これ
らの実施態様の全てにおいて、ポリペプチドはインタクトな3H1のアミノ酸配列
と同一のアミノ酸配列からなるものではない。
配列番号2(図1)および配列番号4(図2)のアミノ酸配列を図3に示し、
これは、各々、3H1の軽鎖および重鎖の可変領域のフレームワークおよびCDR配列
を示す。フレームワーク配列はVLおよびVHドメインの正しいβシート折り畳み
およびドメインを一緒に有する鎖間相互反応を担う。相補性決定領域(CDR)と
は、一緒になって抗原結合部位を形成すると考えられる可変領域の6つの超可変
配列(VLから3つおよびVHから3つ)をいう。これらの領域の脱線状化ならび
に3H1のリーダー配列の同定は、BLASTプログラムによるKabatの免疫学データベ
ースのサーチおよび分析に基づくものであった。
本発明の別の実施態様は、図3に示すアミノ酸配列(フラグメント)からなる
群より選択される配列を含む3H1のポリペプチドフラグメントである。これらの
ポリペプチドは軽鎖および重鎖可変領域の機能的サブ領域(すなわち、フレーム
ワークおよびCDR)を表わす。好ましくは、これらの3H1ポリペプチドはCDRを含
む。
別の実施態様において、本発明は、配列番号2(図1)の少なくとも25の連続
するアミノ酸、より好ましくは30の連続するアミノ酸、またはそのCDR1の5つの
連続するアミノ酸、あるいはそのCDR2またはCDR3の少なくとも7つの連続するア
ミノ酸、好ましくは少なくとも9つの連続するアミノ酸を含む3H1重鎖可変領域
のポリペプチドフラグメントを含む。また、本発明は、配列番号4(図2)の少
なくとも25の連続するアミノ酸、より好ましくは少なくとも30の連続するアミノ
酸、またはそのCDR2の7つの連続するアミノ酸、あるいはそのCDR1またはCDR3の
少なくとも8つの連続するアミノ酸、好ましくは10の連続するアミノ酸を含む3H
1軽鎖可変領域のポリペプチドフラグメントを含む。
3H1ポリペプチドフラグメントのサイズは、活性を生じるのに要する長さは非
常に小さくてよいので、広範囲に変化させることができるが、最大長さは典型的
に活性を生じるのに有害ではない。最小サイズは所望の機能を提供するのに十分
なものでなければならない。例えば、ポリペプチド上の結合部位はわずか約5ア
ミノ酸長と短くてもよく、その一方で他の結合部位は、空間的に近位であるが隣
接配列にはないアミノ酸の集合によって形成される。このように、本発明は、配
列番号2(図1)または配列番号4(図2)に示すアミノ酸配列の一部を含む3H
1のポリペプチドフラグメントを含み、ここで、3H1ポリヌクレオチドは約5アミ
ノ酸長である。また、本発明は、配列番号2(図1)または配列番号4(図2)
に示すアミノ酸配列の一部を含む3H1のポリペプチドフラグメントを提供し、こ
こで、3H1ポリヌクレオチドは約10、15、25、30、50、100、または150アミノ酸
長である。また、本発明は、少なくとも約5アミノ酸、多くても約100アミノ酸
を有する配列番号2(図1)または配列番号4(図2)に示すアミノ酸配列の一
部を含む3H1のポリペプチドフラグメントを提供する。当業者に明らかなように
、それらのサイズに係わらず、これらの3H1ポリペプチドはまた、他の物質また
は因子と会合させ、または結合させて、3H1ポリペプチドの機能および/または
特異性を容易にし、増強し、または調節し得る。このような改変の例は後記する
。
別の実施態様において、CEAに対して相同性の領域を含有するポリペプチドフ
ラグメントを提供する。免疫学的にmAb8019と反応性の180-kDa CEAの広範な配列
データが入手可能である。Paxtonら(1987)Proc .Natl.Acad.Sci.USA 84:290。
このような相同フラグメントは少なくとも部分的には名目的に抗原CEAに類似し
、それゆえ、CEA(最終標的抗原)を模倣することによって抗原提示に参加し得
る。また、これらの3H1ポリペプチドはクラスI主要組織適合性複合体(MHC)抗
原と協同して抗原提示に参加し、それゆえ、細胞傷害性T細胞の殺傷を引き起こ
す。図19はアミノ酸配列を両方向に並べた場合に(すなわち、同方向および逆向
きに並べた場合に)、3H1およびCEAの同様の配列の間のアラインメントを示す。
本発明に含まれるCEAに対して相同性の領域の例は(配列番号5;図3に基づく
アミノ酸のナンバリング):(a)アミノ酸9-11および9-14、重鎖;(b)ア
ミノ酸31-32、重鎖;(c)アミノ酸11-12および14-16、重鎖(逆向きのアライ
ンメ
ント);(d)アミノ酸16-19、軽鎖;(e)アミノ酸29-31、軽鎖;アミノ酸54
-57、軽鎖;(e)アミノ酸31-33、軽鎖(逆向きのアラインメント)である。従
って、本発明はまた、図3−1(配列番号5)に示す配列の、約アミノ酸24〜約
アミノ酸34、約アミノ酸48〜約58、または約アミノ酸12〜約アミノ酸26のアミノ
酸配列を含む3H1ポリペプチド、ならびに図3−2(配列番号5)に示す配列の
、約アミノ酸9〜約アミノ酸14、約アミノ酸29〜約アミノ酸37、約アミノ酸50〜
約アミノ酸66、または約アミノ酸31〜約アミノ酸35を含むポリペプチドを含む。
また、本発明者らは、配列IYRANRLIDGV(図3における配列番号5のアミノ酸48-
58)を有する軽鎖の可変領域のCRD-2領域にわたる3H1ポリペプチドが、予めイン
タクトな3H1を受容した、進行性のCEA関連疾患を有するマウスおよび患者におい
て、T細胞増殖を刺激することを見い出した(実施例3)。このポリペプチドは
CEAの3つの相同反復ドメインの一部に相同であり(Orkawaら(1987)Biochem . Biophys.Res.Commun.
142:511-518)、分子認識理論に基づくコンピューターア
ルゴリズムに基づき、イディオタイプ−抗イディオタイプ−接触に関与する領域
として同定された。それゆえ、本発明はまた、配列IYRANRLIDGV(配列番号14
)を有する3H1ポリペプチドを含む。典型的には、CEAに相同性の領域を含有する
3H1ポリペプチドは、約8〜20アミノ酸長である。
本発明は、3H1ポリペプチドに対する修飾を包含し、それらの特性に有意には
影響しない3H1ポリペプチドの機能的に等価なフラグメント、および増強された
または低下した活性を有する変異体を含む。ポリペプチドの修飾は当該分野にお
けるルーチン的実施であり、本明細書において詳細に記載する必要はない。修飾
されたポリペプチドの例として、アミノ酸残基の保存的置換、機能的活性を顕著
有害に変化させないアミノ酸の1以上の欠失または付加を有するポリペプチド、
または化学的アナログの使用が挙げられる。相互に保存的に置換され得るアミノ
酸残基は、限定されるものではないが、グリシン/アラニン;バリン/イソロイ
シン/ロイシン;アスパラギン/グルタミン;アスパラギン酸/グルタミン酸;
セリン/スレオニン;リジン/アルギニン;およびフェニルアラニン/チロシン
を含む。これらのポリペプチドはまた、グリコシル化されたおよびグリコシル化
されていないポリペプチド、ならびに例えば異なる糖でのグリコシル化、アセチ
ル化およびリン酸化のように他の翻訳後修飾を受けたポリペプチドを含む。好ま
しくは、アミノ酸置換は保存的である、すなわち、置換されたアミノ酸は本来の
アミノ酸のものと同様の化学的特性を有する。このような保存的置換は当該分野
で公知であり、例は前記にて提供した。アミノ酸の修飾は1以上のアミノ酸の変
化または修飾から可変領域のような領域の完全な再設計の範囲であり得る。可変
領域の変化は結合アフィニティーおよび/または特異性を改変し得る。修飾の他
の方法は、限定されるものではないが、酵素的手段、酸化的置換およびキレート
化を包含する、当該分野で公知のカップリング技術の使用を包含する。修飾は、
例えば、ラジオイムノアッセイのための放射性部位の結合のような、免疫アッセ
イのための標識の結合のために用いられ得る。修飾された3H1ポリペプチドは当
該分野で確立された手順を用いて作製され、そして当該分野で公知の標準的アッ
セイを用いてスクリーニングされ得、そのうちいくつかについては実施例にて後
記する。
また、本発明は、1以上の3H1ポリペプチドを含む融合タンパク質を含む。1
つの実施態様において、配列番号2(図1)の少なくとも10の連続するアミノ酸
および配列番号4(図2)の少なくとも10アミノ酸を含む融合ポリペプチドを提
供する。別の実施態様において、融合ポリペプチドは異種免疫グロブリン定常領
域を含有する。本発明の目的のために、3H1融合タンパク質は1以上の3H1ポリペ
プチドおよびネイティブの分子ではそれに結合していない別のアミノ酸配列、例
えば、異種配列または別の領域由来の同種配列を含有する。有用な異種配列は、
限定されるものではないが、宿主細胞からの分泌を提供する配列を含み、免疫学
的反応性を増強させ、あるいは当該ポリペプチドのイムノアッセイ支持体または
ワクチンキャリアへのカップリングを容易とする。他の例は、スタフィロコッカ
スエンテロトキシンA(SEA)のようないわゆる細菌「スーパー抗原」である。D
ohlstenら(1994)Proc .Natl.Acad.Sci.USA 91:8945-8949。例えば、3H1ポリ
ペプチドは生物学的反応修飾物質と融合させ得る。生物学的反応修飾物質の例は
、限定されるものではないが、GM-CSF、インターロイキン−2(IL-2)、インタ
ーロイキン−4(IL-4)、およびγ−インターフェロンのようなリンホカインを
含む。図21は3H1ポリペプチドと好ましいリンホカインGM-CSFまたはIL-2との融
合
のためのプラスミド構築物の例を示す。(示されるように、3H1重鎖をコードす
る)このプラスミドの、3H1軽鎖をコードするプラスミドとの同時トランスフェ
クション(co-transfection)はまた、3H1融合ポリペプチドを産生する。あるいは
、図16のプラスミドは重鎖消失変異体にトランスフェクトし得る。例えば、重鎖
消失変異体は2×107個の3H1細胞を供給者の指示に従ってフルオレセイン標識ウ
サギ抗マウスIgG(H鎖特異的、DAKO Corporation,Carpinteria,CA)で処理す
ることによって得ることができる。染色したおよび染色されていない細胞集団を
フルオレセイン活性化セルソーターで分析する。未染色細胞を滅菌チューブに回
収し、限界希釈によって1細胞/ウェルにて96ウェルプレートに入れる。次いで
、培養上清を、ヤギ抗マウスIgG(重鎖特異的)およびヤギ抗マウスκを用いるELI
SAによってアッセイする。κポジティブおよびIgGネガティブ表現型を有するク
ローンを少なくとも3回サブクローンして安定な3H1(-H)変異体を得る。推定重
鎖消失変異体(3H1(-H))クローン由来のmRNAを単離し得、軽鎖可変領域cDNAの配
列を決定する。3H1VHについてのmRNAの逆向きPCRを、2セットの5'-および3'-
プライマーで行い、3H1(-H)cDNAのクローニングに用いる(実施例2)。重鎖消
失変異体は検出可能なDNAバンドを生じるべきでない。次いで、エレクトロポレ
ーションのような当該分野において標準的な方法を用いて、重鎖構築物によるこ
れらの細胞のトランスフェクションを達成し得る。
3H1融合ポリペプチドは、例えば、化学合成によって、またはペプチド領域が
所望の関係にコードされるポリヌクレオチドを生成し翻訳することによって作製
され得る。これらの融合タンパク質は、3H1ポリペプチドの活性を増強し、改変
し、および/または容易とするのに有用であり得る。
また、本発明は、3H1ポリペプチドを含む3H1の改変された組換え体、すなわち
、図1および2に示す3H1の可変領域の少なくとも一部を含有する3H1ポリペプチ
ドを含む。本明細書で用いる3H1の「改変体」または「組換え体」は、インタク
トな3H1とは異なる配列および/またはコンフィギュレーションの3H1ポリペプチ
ドを含有する。本発明に含まれる3H1抗体の組換え体はハイブリッド抗体であり
、ここで、重鎖と軽鎖との一方の対は、第1抗体のそれらと相同であり、これは
重鎖と軽鎖との他方の対が、別の第2抗体と相同である。本発明の目的のために
、
軽鎖と重鎖との1対は、3H1由来である。典型的には、これらの2対の各々はCEA
の異なるエピトープに結合する。このようなハイブリッドもまた、後述するよう
に、キメラ鎖を用いて形成される。
別の実施態様において、重鎖および/または軽鎖が融合タンパク質である3H1
キメラが提供される。典型的には、鎖の定常ドメインは1つの特定の種および/
またはクラス由来であり、可変ドメインは異なる種および/またはクラス由来で
ある。例えば、「ヒト化」3H1抗体は、定常領域がヒト起源であって、可変領域
が3H1由来(すなわち、マウス)の抗体である。また、フレームワーク領域はヒ
ト配列に由来するが、CDR領域が3H1アミノ酸配列を含むヒト化可変領域を有する
抗体を本発明において例証する。例えば、欧州特許第0329400号を参照のこと。
また、キメラの機能的フラグメントを例証する。その例としては、ヒト化Fabフ
ラグメントであり、これは、ヒトのヒンジ領域、ヒトの第1定常領域、ヒトκ軽
鎖または重鎖定常領域、および3H1由来の可変領域を含有する。ヒト化3H1 Fabフ
ラグメントはFabダイマーを形成するように順に作製される。典型的には、本発
明の3H1融合タンパク質および3H1キメラは、本明細書に記載の組換え方法を用い
て、それらをコードする発現するポリヌクレオチドを調製し、そして発現させる
ことによって作製されるが、それらはまた、例えば化学合成を含む当該分野で公
知の他の手段によっても調製され得る。
本発明に含まれる3H1の改変された組換え体の別の例は、改変された抗体であ
り、これは、3H1のアミノ酸配列を改変した抗体をいう。標準的な組換え技術を
用い、3H1抗体を設計して所望のタンパク質を得ることができる。例えば、アミ
ノ酸配列における変化の結果、得られる3H1ポリペプチドの免疫原性が大きくな
り得る。変化は1以上のアミノ酸の変化から領域、例えば、定常領域の完全な再
設計までの範囲にわたる。一般に、定常領域の変化は、所望の細胞プロセスの特
徴、例えば、補体結合、膜との相互作用、および他のエフェクター機能の変化を
達成し得る。可変領域における変化は結合特性を改変するようになすことができ
る。改変された/組換え3H1抗体を設計して、エフェクター細胞への(リンホカ
インのような)物質の特異的送達を助けることもできる。他のアミノ酸配列の修
飾は前記した。
また、本発明は、3H1の単一鎖可変領域フラグメント(「scFv」)を含む。単
一鎖可変領域フラグメントは、短い連結ペプチドを用いることによって、軽鎖お
よび/または重鎖可変領域を連結することによって作製される。Birdら(1988) S cience
242:423-426。連結ペプチドの例は(GGGGS)3であり、これは、1つの可変
領域のカルボキシ末端と他の可変領域のアミノ末端との間の約3.5nmを架橋する
。他の配列のリンカーは設計され使用されている。Birdら(1988)。次いで、リン
カーは、薬物の結合または固体支持体への結合のような、さらなる機能のために
修飾され得る。
従って、本発明の1つの実施態様は、配列番号2(図1)の少なくとも10の連
続するアミノ酸および配列番号4(図2)の少なくとも10の連続するアミノ酸を
含む融合ポリペプチドであり、ここで、アミノ酸セグメントは約5〜20アミノ酸
のリンカーポリペプチドによって連結される。別の実施態様において、融合ポリ
ペプチド(scFv)は配列番号2(図1)に示すアミノ酸配列の軽鎖可変領域およ
び配列番号4(図2)に示すアミノ酸配列の重鎖可変領域を含む。
十分なフレキシビリティおよび長さを有するいずれのペプチドもscFvにおける
リンカーとして使用し得る。通常、リンカーは免疫原性をほとんどまたは全く有
さないように選択される。scFvの3H1成分に関して、重鎖および/または軽鎮の
全てまたは一部を使用し得る。典型的には、全可変領域がscFvに含まれる。例え
ば、軽鎖可変領域は重鎖可変領域に連結され得る。あるいは、軽鎖可変領域の一
部を重鎖可変領域の全部または一部に連結し得る。(GGGGS)3のように非対称リ
ンカーについては、scFvをいずれかの順序、例えば、VH--(リンカー)--VLまた
はVL--(リンカー)--VHのように組み立て得る。しかし、E.coliで発現させれ
る場合、これらの2つのコンフィギュレーションの発現レベルに差異があり得る
。また、ハイブリッドの(または2つの相を持つ)scFv(ここで、1つの成分が
3H1ポリペプチドであって、もう1つの成分がT細胞エピトープのような異なる
ポリペプチドである)を構築することも可能である。(X)--(リンカー)--(X)--
(リンカー)--(X)(ここで、Xは3H1ポリペプチド、または3H1ポリペプチドと他
のポリペプチドとの組合せである)のようなタンデムscFvも作製し得る。
単一鎖変異体は組換えまたは合成のいずれかで生産し得る。scFvの合成的生産
では、自動合成装置を使用し得る。scFvの組換え生産では、scFvをコードするポ
リヌクレオチドを含有する適切なプラスミドを、酵母、植物、昆虫または哺乳動
物細胞のような真核細胞、あるいはE.coli.のような原核細胞のいずれかの適切
な宿主細胞に導入し得る。目的のscFvをコードするポリヌクレオチドは、ポリヌ
クレオチドの連結のようなルーチン的操作によって作製し得る。得られるscFvを
、当該分野で公知の標準的なタンパク質精製技術を用いて単離し得る。
3H1 scFvの生産に特に有用な系はE.coli.におけるプラスミドベクターpET-22
b(+)(Novagen,Madison,WI)である。pET-22b(+)は、scFv精製の基礎として働く
、6つの連続するヒスチジン残基からなるニッケルイオン結合ドメインを含有す
る。(実施例5に示す)この例は単に例示的目的であるが、限定的なものではな
い。使用し得るベクターの別の例は前記のpcDNA3(Invitrogen,San Diego,CA)
である。
E.coli.をscFv生産に使用する場合、scFvポリペプチドが最適の三次および四
次構造を保証し得るような条件とすべきである。使用するプラスミド(特に、プ
ロモーターの活性)および宿主細胞に応じて、scFvの生産を調節する必要があり
得る。例えば、より弱いプロモーターの使用、またはより低温での発現の使用が
scFvの生産を最適化するのに必要であろう。あるいは、酵母、昆虫、植物または
哺乳動物のように真核生物におけるscFv発現は適切であり得る。
例えば、Ab1への直接結合を試験することによって、あるいは本明細書に記載
の競合実験において種々のscFvを使用することによって、種々のscFvを結合活性
について試験し得る。3H1活性についてフラグメントを試験する後記のアッセイ
のいずれも、scFvを試験するのに使用し得る。例えば、試験すべきscFvの非存在
下または存在下(量を増大させる)で、放射性標識Ab1(8019)をLS174-T細胞のよ
うなCEA+細胞と反応させる。観察された阻害パーセントを3H1または別のAb2と比
較する。3H1 scFvは非関連の抗イディオタイプ抗体のようなネガティブコントロ
ールと比較する場合、scFvがCEAポジティブ細胞に対するAb1の結合を阻害すれば
、結合可能と特徴付けられる。あるいは、scFvは、免疫応答を誘発する能力のよ
うな、本明細書に記載の他の免疫学的アッセイを用いて特徴付けられ得る。さら
に、scFvは、scFvの分泌形態または細胞会合形態が所望されるか否かに依存し
て、免疫グロブリンリーダー配列(分泌のために)を伴ってまたは伴わず構築さ
れ得る。
別の実施態様において、リンカーを含まないか、または非常に短いフレキシビ
リティのないリンカーを含む、単一鎖3H1抗体ポリペプチドが提供される。これ
らのいわゆる「二価」抗体は、リンカーが存在しないために(または非常に短い
リンカーが存在するために)、鎖内相互作用に関与し得ず、それゆえ、他の単一
鎖と相互作用し、「二価抗体(diabodies)」を形成する。例えば、二価3H1抗体ポ
リペプチドは、以下のコンフィギュレーション:VL--VHまたはVH--VLのいず
れかにおいて組換え方法を用いて作製され得る。
また、本発明は、3H1ポリペプチドのポリマー形成を包含する。本明細書で用
いる3H1ポリペプチドのポリペプチド形態は複数の(すなわち、1を越える)3H1
ポリペプチドを含有する。1つの実施態様において、3H1ポリペプチドの線状ポ
リマーを提供する。これらの3H1線状ポリマーは、キャリアに結合し得る。これ
らの線状ポリマーは、単一3H1ポリペプチド、または異なる3H1ポリペプチドとの
組合せの複数コピーを含み得、そしてタンデム3H1ポリペプチドまたは他のアミ
ノ酸配列と区別される3H1ポリペプチドを有し得る。これらの線状ポリマーは、
当該分野で周知の標準的な組換え方法を用いて作製され得る。別の実施態様にお
いて、3H1多抗原性ペプチド(MAP)を提供する。MAPは、放射状に分岐するリジ
ン樹状突起を有する小さな免疫学的不活性コアを有し、そのリジン樹状突起上に
多数の3H1ポリペプチドをつなぎ止め得る(すなわち、共有結合する)。Posnett
ら(1988) J .Biol.Chem. 263:1719-1725; Tam(1989) Meth .Enz. 168:7-15。そ
の結果は、コアに対する3H1ポリペプチドの高いモル比を有する大きなマクロ分
子である。MAPは有用で効果的な免疫原であり、そしてELISAのようなアッセイに
有用な抗原である。3H1 MAPは合成により作製され得、市販されている(Quality
Controlled Biochemicals,Inc.,Hopkington,MA)。典型的なMAP系において、
コアマトリックスは3つのレベルのリジンおよび3H1ポリペプチドをつなぎ止め
るための8個のアミノ酸からなる。MAPは当該分野で公知のいずれかの方法、例
えば、固相方法によって合成し得る。例えば、R.B.Merrifield(1963)J .Am .Chem.Soc.
85:2149。
本発明の別の実施態様において、3H1ポリペプチドの免疫原性を、例えば、3H1
ポリペプチドがB型肝炎表面抗原と会合するように、粒子形成タンパク質と融合
または組み立てられる発現系でそれらを調製することによって、増強し得る。例
えば、米国特許第4,722,840号を参照のこと。3H1ポリペプチドが粒子形成タンパ
ク質コーディング配列に直接連結する構築物は、3H1ポリペプチドに関して免疫
原性であるハイブリッドを生じる。さらに、調製した全てのベクターは、例えば
、プレSペプチドのように種々の程度の免疫原性を有するHBVに特異的なエピト
ープを含む。それゆえ、3H1配列を含む粒子形成タンパク質から構築した粒子は
、3H1およびHBVに関して免疫原性である。3H1ポリペプチドのこれらの形態は、
酵母または哺乳動物細胞のような真核細胞内で作製され得る。
別の実施態様において、3H1ポリペプチドをキャリアに結合し得る。3H1ポリペ
プチドが結合部位を供するように正しい立体配置をとるが、免疫原性となるには
非常に小さい場合、ポリペプチドを適切なキャリアに連結し得る。このような連
結を得るための多数の技術が当該分野で公知であり、本明細書において詳細に記
載する必要はない。それ自体は宿主に有害な抗体の生産を誘導しないいずれのキ
ャリアも使用し得る。適切なキャリアは、タンパク質;ラテックス機能化セファ
ロース(latex functionalized sepharose)、アガロース、セルロース、セルロー
スビーズなどのようなポリサッカライド;ポリグルタミン酸、ポリリジンなどの
ようなポリマー性アミノ酸:アミノ酸コポリマー;および不活性ウイルス粒子、
またはサルモネラのような弱毒化細菌のような典型的に大きくかつゆっくりと代
謝されるマクロ分子である。特に有用なタンパク質基質は、血清アルブミン、キ
ーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、チログロブリン、オボ
アルブミン、破傷風トキソイド、および当業者に周知の他のタンパク質である。
当業者に明らかなように、融合タンパク質のような3H1ポリペプチドおよび3H1の
上記の組換え体を、他のアミノ酸配列と順に融合させ得る。例えば、3H1 scFvを
、IL-2のようなサイトカインに融合させ得る。図6は、このような融合タンパク
質を産生するプラスミド構築物の例を提供する。
本発明の3H1ポリペプチドは、多くの方法で同定し得る。例えば、軽鎖および
重鎖の可変領域は、一緒になって可変領域アミノ酸配列全体にわたる一連の短い
ポリペプチドを調製することによって、スクリーニングし得る。例えば、50mer
または20merポリペプチドで出発することによって、所望の特性の存在について
各ポリペプチドを試験するのはルーチン的である。このようなポリペプチドのス
クリーニングは十分に当該分野の技量内である。また、可能性として興味深いポ
リペプチドを同定するためのタンパク質配列、例えば、CEAに対する相同性のコ
ンピューター解析、またはイディオタイプ-抗イディオタイプ接触に関連する推
定領域を同定し、次いで試験するためにこれらの領域を含むこれらのポリペプチ
ドを調製するための分子認識理論に基づくコンピューターアルゴリズムを実行す
るのも公知である。
3H1ポリペプチドの調製
本発明のポリペプチドは当該分野で公知の手順によって作製され得る。ポリペ
プチドは3H1のタンパク分解または他の分解によって、上記の組換え法(すなわ
ち、単一または融合ポリペプチド)によって、あるいは化学合成によって生産さ
れ得る。3H1ポリペプチド、特に約50までのアミノ酸の短いポリペプチドは、化
学合成によって簡便に作製され得る。化学合成の方法は当該分野で公知であり、
市販されている。例えば、3H1ポリペプチドは、固相法を使用して、自動ポリペ
プチド合成装置によって生産してもよい。
好ましくは、ポリペプチドは他の細胞成分から少なくとも部分的に精製される
。好ましくは、ポリペプチドは少なくとも50%の純度である。この意味では、純
度は調製物の全タンパク質含量の重量パーセントとして算出される。より好まし
くは、タンパク質は50-70%の純度である。より高度に精製されたポリペプチド
を得ることもでき、本発明に含まれる。臨床的用途では、ポリペプチドは、好ま
しくは、高度に精製され、少なくとも80%純度であり、発熱物質および他の汚染
物は認められない。タンパク質精製の方法は当該分野で公知であり、本明細書に
おいては詳細に記載していない。あるいは、3H1ポリペプチドが植物種子のよう
な適切な貯蔵媒体で発現される場合、3H1ポリペプチドは精製する必要がなく、
精製することなく投与してもよい。Fiedlerら(1995)Biotechnology 13:1090-109
3。
3H1ポリペプチドはインタクトな3H1から得ることができ、インタクトな3H1は3
H1を産生するハイブリドーマ(ATCC HB 12003)から順に単離し得、これは共願
の米国特許出願第 号(代理人書類番号30414-20001.21)に記載されて
いる。ハイブリドーマから抗体を単離する技術は当該分野で周知である。例えば
、Harlow およびLane(1988)を参照のこと。一旦インタクトな3H1が得られたなら
ば、3H1ポリペプチドを、例えば、タンパク分解酵素(プロテイナーゼ)を用い
ることにより、インタクトな3H1の分解によって得ることができる。タンパク分
解酵素の例は限定されるものではないが、トリプシン、プラスミンおよびトロン
ビンを含む。インタクトな3H1は1以上のプロテイナーゼと共にインキュベート
し得、あるいは消化を順次行い得る。タンパク分解切断の性質および程度は、所
望のポリペプチド長ならびに使用する酵素に依存する。これらの技術は当該分野
で周知である。あるいは、またはさらに、インタクトな3H1は、ジスルフィド還
元剤で処置して、分子を解離させ得る。
3H1ポリペプチドは当該分野で公知の技術を用いて化学合成によって作製し得
る。
また、組換え法を用い、発現系によって3H1ポリペプチドを作製できる。3H1ポ
リペプチドをコードする3H1ポリヌクレオチドを利用することができれば、イン
タクトな3H1、その機能的に等価なフラグメント、または3H1の組換え体をコード
する発現ベクターの構築が可能である。融合形態または成熟形態にかかわらず、
分泌を可能にするシグナル配列を含有するか否かにかかわらず、所望の3H1ポリ
ペプチドをコードするポリヌクレオチドを、いずれかの都合のよい宿主に適した
発現ベクターに連結し得る。真核生物宿主系および原核生物宿主系の両方を用い
得る。次いで、ポリペプチドを溶解細胞または培養培地から単離し、そしてその
意図する用途に必要な程度まで精製する。宿主系で発現されるポリペプチドの精
製または単離は、当該分野で公知のいずれかの方法によって達成され得る。例え
ば、インタクトな3H1またはそのフラグメントをコードするcDNAを適切なプロモ
ーターに作動可能に連結させ、発現ベクターに挿入し、適切な宿主細胞にトラン
スフェクトし得る。次いで、宿主細胞を、転写および翻訳が起こり得る条件下で
培養し、所望のポリペプチドを回収する。ポリペプチドを(すなわち分泌のため
に)特異的細胞コンパートメントに指示するシグナル配列のような、他の転写ま
たは翻訳を制御するセグメントも用い得る。原核宿主細胞の例は当該分野で公知
であり、例えば、E.coli.を含む。真核宿主細胞の例は当該分野で公知であり、
酵母、トリ、昆虫、植物、ならびにCOS7、HeLa、CHOおよび他の哺乳動物細胞の
ような動物細胞を含む。
本発明のポリペプチドはまた、ベクターとして組換えワクシニアウイルスを用
いて発現され得る。異種抗原決定基を含有するワクシニアウイルスキャリアは、
首尾よい免疫原であることが明かにされているので、本出願はワクチン製剤にお
いて特に有用である。ワクシニアベクターにおける3H1ポリペプチドの発現およ
びそれらの使用は上記および下記に記載されている。
3H1ポリペプチドの特徴付け
本発明の3H1ポリペプチドはいくつかの方法で特徴付けできる。例えば、3H1ポ
リペプチドはAb1および/またはAb3に結合する能力について試験され得る。ある
いは、3H1ポリペプチドは免疫応答、好ましくは抗CEA応答を誘発するそれらの能
力について試験され得る。3H1ポリペプチドはまた、CEA関連腫瘍のようなCEA関
連疾患を緩和または改善するそれらの能力について試験され得る。それらの特性
のうち1つのみが、ポリペプチドが本発明に適合するように存在させるのに必要
であるが、これらの特性のうち1を越えて存在させ得ることは理解される。
3H1ポリペプチドがAb1および/またはAb3に結合する能力はいくつかの方法で
評価され得る。1つの試験において、3H1ポリペプチドのAb1への結合は、実施例
1(図1)に記載のように、直接的に、例えば、放射性標識3H1ポリペプチドを
マイクロタイタープレートに被覆させたAb1またはAb3と反応させることにより、
ラジオイムノアッセイ(RIA)によって試験し得る。
別の手順において、Ab1またはAb3への結合は競合イムノアッセイによって測定
される。この手順の1つの改変において、標識3H1ポリペプチドまたは機能的に
等価なフラグメントのAb1(8019)への結合は、異なるAb1、他のAb2、3H1またはそ
のアナログ、他の3H1ポリペプチド、CEAまたはCEAを含有する抽出物、または他
のタンパク質の存在下で測定される。阻害パーセントは以下の式によって計算さ
れる:
別の改変において、推定3H1活性を有する試験フラグメントを、Ab1とAb2との
間、またはAb1とCEAとの間の結合を妨げる能力について試験する。この試験はい
くつかの適用においてより感受性である。何故ならば、3H1とAb1との間のより低
いアフィニティー相互作用は非常に弱くて安定な結合を形成できないが、十分な
濃度で存在させた場合は、別のリガンド−レセプター対の結合を妨げるのに十分
であるからである。CEAは精製された抗原またはCEA発現細胞として提供され得る
。アッセイはAb1またはCEAまたはAb2いずれかを標識し、分離を容易にするため
に必要に応じてリガンド−レセプター対の他のメンバーを固体支持体に固定化さ
せることによって行い得る。試験フラグメントを標識試薬と共にインキュベート
し、次いで、混合物を固定化標的または試験細胞に提示して、試験フラグメント
が結合を阻害し得るかを測定する。阻害の程度は3H1活性に相関する。
競合アッセイの種々の例は実施例のセクションで後記する。3H1ポリペプチド
活性を示す1つの試験は、種々の量の3H1ポリペプチドの存在下で、放射性標識A
b1(8019)の半精製もしくは精製CEAへの結合を測定することである。例えば、実
施例1を参照のこと。次いで、Ab1-CEA混合物を3H1ポリペプチドで被覆したプレ
ートに添加し、そして結合を標識Ab1単独の結合と比較する。好ましくは、この
試験は標識Ab1の非飽和量で行って、少量の競合CEAでの結合の変化を検出する。
インタクトな3H1で行ったこの試験の例を実施例1に示す。別の競合アッセイに
おいて、(LS174-TまたはMC38ceaのような)CEAポジティブ標的細胞をコンフルエ
ントな単層として96ウェル組織培養プレート中で増殖させる。3H1ポリペプチド
の非存在下または存在下での放射性標識Ab1(8019)の結合を測定する。阻害の程
度は、インタクトな3H1または他の3H1ポリペプチドの阻害と比較し得る。インタ
クトな3H1を用いるこの競合アッセイの例を実施例1に示す。3H1 scFvとインタ
クトな3H1との間の阻害の程度を比較するこのアッセイの別の例を実施例5に示
す。
Ab1に結合しない非関連の抗イディオタイプ抗体のようなネガティブコントロ
ールと比較する場合に阻害があれば、3H1ポリペプチドはAb1に結合すると考えら
れる。
上記の全てのアッセイを用いれば、標識分子を、放射性同位体(すなわち、12 5
I)を用いる、ならびにビオチン化分子、および酵素検出のための分子、蛍光標
識および化学蛍光標識のような非放射性標識を用いるような種々の方法で標識し
得ることが当業者に明かである。
また、上記試験を用いて、種々の3H1ポリペプチドフラグメントの特徴を比較
し得る。例えば、競合アッセイを行うことができ、ここで、第1の3H1ポリペプ
チドが、種々の量の第2の3H1ポリペプチドの存在下で、Ab1(8019)への結合に対
して競合する。このような試験は、結合アフィニティーまたは他の特徴の相対的
程度を示し得る。
3H1ポリペプチドを特徴付ける別の方法は、免疫応答を生じるそれらの能力を
試験することである。本明細書で用いる「免疫応答」とは体液性応答、細胞性応
答、またはその両方のいずれかを示す。本明細書で用いる「免疫応答を誘発する
能力」は、ヒトを含むいずれかの個体に関する。
3H1ポリペプチドが体液性応答を生じる能力は、3H1ポリペプチドの投与後に3H
1ポリペプチドに結合する抗体の存在を試験することによって測定し得る。この
抗体(Ab3)は、3H1ポリペプチドの投与前には存在しないか、あるいは低量で存
在したことが理解される。免疫原性は、好ましくは、先の抗3H1応答を伴わない
個体で試験する。適切な個体の例は限定されるものではないがマウス、ウサギ、
サルおよびヒトを含む。この試験の場合、個体に3H1ポリペプチドを投与する。
投与当たりの量および投与回数は、個体に応じて変化する。インタクトな3H1を
用いる本発明者らの先の実験に基づくと、マウスでは、用量および3回の投与当
たりCFAおよびIFAの存在下で、KLHにカップリングした3H1ポリペプチドの約100
μgを要した。サルはほぼ2mgを要する。本発明の目的のために、ヒトに投与し
得る3H1ポリペプチドの範囲は約10μg〜10mg、好ましくは50μg〜8mg、好まし
くは100μg〜5mg、より好ましくは100μg〜2mgである。
Ab3の存在は、まず、血清をオートロガスな免疫グロブリンと共にプレインキ
ュベートしてイソタイプおよびアロタイプ抗原決定基に対する抗体をブロックし
、
次いで、例えば、ELISAまたはRIAを用いて、CEAおよび/または3H1ポリペプチド
に対する結合について血清を試験することによって決定され得る。例えば、予め
反応させた血清の異なる希釈をマイクロタイタープレート上に被覆した3H1(ま
たは3H1ポリペプチド)と反応させる。非関連Ab2をコントロールとして供する。
洗浄の後、例えば、同種サンドイッチアッセイにおいて125I−標識3H1を用いて
、Ab3−3H1複合体を標識する。このアッセイからの結果を3H1ポリペプチドの投
与前に得られた結果と比較する。マウスにおいてインタクトな3H1によって惹起
されたAb3のこのような検出用アッセイのより詳細な記載は実施例1に記載する
。あるいは、ヒト大腸癌腫LS174-T細胞のようなCEAポジティブ細胞への結合が免
疫フローサイトロトリーを用いて試験され得る。
CEAに対するAb3の結合はまた、CEAポジティブ組織サンプルでの免疫沈降また
はそれとの免疫反応性によって決定され得る。例えば、CEAを含有する半精製抽
出物をSDS-PAGEによって分離し、そしてニトロセルロースフィルターにブロット
する。次いで、フィルターをAb3を含有する血清と共にインキュベートし、ELISA
によって反応を発現させる(実施例1)。もしAb3がCEAに結合すれば、ほぼ180,
000mwのバンドが出現するはずである。組織サンプルでの試験には、イムノペル
オキシダーゼアッセイが使用され得る(実施例1)。
所望ならば、3H1ポリペプチドによって誘発されたAb3はさらに特徴付けされ得
る。例えば、競合アッセイが、Ab3がAb1イディオトープを有するか否かを決定す
るために行われ得る。この試験では、3H1ポリペプチドで免疫化した個体由来の
血清を、標識3H1ポリペプチド(またはインタクトな3H1)のAb1への結合の阻害
について試験する。阻害はAb3およびAb1が少なくとも類似の結合決定基を含有す
ることを示す。同様に、(部分的に精製した、精製した、またはCEAポジティブ
細胞の表面上にあるを問わず)CEAに対する結合についてのAb3とAb1との競合は
、固定量の標識Ab1(8019)を、Ab3含有血清またはAb1調製物およびCEA(またはLS
174-T細胞)の種々の希釈物と共に同時インキュベートすることによって試験さ
れ得る。これらの試験を実施例1においてインタクトな3H1について説明する。
当業者に明らかにように、上記したアッセイを使用し、Ab3は、順に3H1ポリペ
プチドを特徴付けるために用いられ得る。
3H1ポリペプチドを特徴付ける別の方法は細胞傷害性である抗体を誘発するそ
の能力を試験することによる。補体が媒介する細胞傷害性(CMC)の決定のため
に、LS174-T(標的)細胞(すなわち、CEAを発現する細胞)を51Crで標識する。
標識は、106細胞をほぼ200μCiのNa2SO4と共に37℃で60分間インキュベートし、
続いて洗浄することによって達成され得る。このアッセイは、抗体を含有すると
考えられる血清を添加し、そしてインキュベートすることによって行なわれる。
次いで、LS174-T細胞を予め吸着したモルモット血清(または他の補体源)を添
加する。37℃における適切なインキュベーション時間の後、次いで、51Cr放出の
程度を測定し、そして未オプソニン化コントロール細胞の51Cr放出の程度と比較
する。51Crの放出はCMC活性と相関する。Herlynら(1981)Int .J.Cancer 27:769
。
3H1ポリペプチドを特徴付ける別の方法は、ADCC応答に関与する抗CEA抗体を誘
発するその能力を試験することによる。Chereshら(1986)Cancer Research 46:51
12-5118。このアッセイでは、培養ヒトLS-174T細胞(これは、それらの表面でCE
Aを発現する)が51Crで標識され、標的細胞として使用される。正常ヒト末梢血
単核細胞(PBMC)がエフェクター細胞として使用される。好ましくは、ADCCアッ
セイは、100:1のエフェクター:標的細胞比にて、熱不活化血清の存在下で4
時間行われるが、他の適切な条件もまた用いられ得る。次いで、51Cr放出の量を
測定する。
本発明の3H1ポリペプチドはまた、細胞性応答を誘発するそれらの能力によっ
て特徴付けられ得る。本明細書で用いる「細胞性応答」とは、T細胞が関与する
応答であり、そしてインビトロまたはインビボで観察され得る。
細胞性免疫応答を検出する1つの方法は、T細胞増殖活性についてアッセイす
ることによる。この試験では、細胞性免疫応答を、3H1ポリペプチドと共にイン
キュベートした末梢血単核細胞(PBM)の増殖によって測定する。所要数の3H1ポ
リペプチドの投与後に末梢血単核細胞を血液から単離し、種々の濃度の3H1ポリ
ペプチドと共にインキュベートする。マウスを用いる場合、T細胞は脾臓から得
られる。T細胞は、例えば、FicollTMのようなグラジエント上の遠心によって富
化させ得る。PHAのような非特異的マイトジェンをポジティブコントロールとし
て供する:非関連抗イディオタイプ抗体とのインキュベーションをネガティブコ
ントロールとして供する。好ましくは、刺激細胞は、特に組織適合性Call II抗
原において、応答細胞に関してオートロガスである。PBMを適切な日数インキュ
ベートさせることにより増殖させた後、[3H]チミジン取込みを測定する。多
くの場合、適切な時間は5日間である。3H1ポリペプチドフラグメント(LCD-2;I
YRANRLIDGV)を用いるT細胞増殖の刺激を示す例を実施例3で提供する。所望な
らば、いずれのT細胞サブセットが増殖するかの決定がフローサイトメトリーを
用いて行われ得る。必要に応じて、脾臓T細胞は、モノクローナル抗体RL.172(
抗CD4+)またはmAb.168(抗CD8+)および補体とのインキュベーションによって
、増殖アッセイ前にCD4+またはCD8+細胞いずれかを予め枯渇され得る。
細胞性免疫応答を検出する別の方法は、T細胞傷害性(CTL)活性について試
験することである。この試験では、Tリンパ球(すなわち、富化T細胞集団)を
、標準的51Cr放出アッセイにおいて標的として用いるために、(典型的には、脾
臓細胞から)単離する。Kantorら(1992)J .Natl.Cancer Inst. 84:1084-1091。51
Cr放出アッセイの例は以下の通りである。略言すると、CEAポジティブ腫瘍細
胞(典型的には、1〜2×106細胞)を標的細胞として約200μCiのNa2 51CrO4(Am
ersham Corp.,Arlington Heights,III)で37℃で60分間放射性標識し、続いて
、徹底的に洗浄して取り込まれなかったアイソトープを除去する。共に培地に再
懸濁したT細胞および標的(1×104/ウェル)を、次いで、96ウェルU底プレ
ート(Costar Corp.)中、種々のエフェクター:標的比にて組み合わせる。プレー
トを100×gで5分間遠心して細胞接触を開始させ、そして5%CO2にて37℃で4
または16時間インキュベートする。インキュベーション後、上清をSupernatant
Collection System(Skatron,Inc.,Sterling,VA)を用いて収集し、そして放射
能をガンマカウンター(Beckman Instruments)で定量する。51Crの自然放出をエ
フェクターの非存在下における標的のインキュベーションによって決定し、他方
、51Crの最大または全放出を0.1%Triton X-100中における標的のインキュベー
ションによって決定する。51Crの特異的放出パーセントは以下の式によって決定
する。
特異的放出パーセント=[(実験−自然放出)/(最大−自然放出)]×100
3H1ポリペプチドLCD-2(IYRANRLIDGV;配列番号14)を用いるCTLアッセイの
例を実施例3に提供する。
3H1ポリペプチドを特徴付ける別の方法は、CEA関連腫瘍の進行を改善し、遅延
させ、および/またはその程度を減少させるそれらの能力を試験することである
。このような試験は炎症インジケーター、ラジオシンチグラフィー、または算定
CEAレベルの測定を含み得る(このようなアッセイは商業的に入手できる)。
3H1ポリペプチドの使用および使用する方法
3H1ポリペプチドは多数の用途を有する。3H1ポリペプチドは、個体における免
疫応答、好ましくは抗CEA応答を誘導するために用いられ得る。それらはまた、A
b3のレベルを検出およびモニターするため、またはAb3を精製するために用いら
れ得る。3H1ポリペプチドはまた、例えば、結腸直腸ガン、ある種の肺ガン(ア
デノカルシノーマ)、胃ガン、膵ガン、およびある種の乳ガンのようなCEA関連
疾患の処置に有用である。
このように、本発明は、免疫応答を誘導するのに有効な量で3H1ポリペプチド
を投与する工程を包含する、個体において免疫応答を誘導する方法を含む。この
意味では、「有効量」とは体液性および/または細胞性を問わず、測定可能な免
疫応答を誘発するのに十分な量である。有効量は1回またはそれ以上の投与で投
与され得る。
本発明はまた、生物学的サンプルにおいてAb3(および/またはAb1)を検出す
る方法を含む。これらの方法は、例えば、個体においてAb1またはAb3レベルをモ
ニターするために臨床状況において、ならびにAb3の市販生産が望まれる産業状
況において適用可能である。これらの方法は、サンプル中のAb3および/またはA
b1を3H1ポリペプチドと、Ab3および/またはAb1と3H1ポリペプチドとの間の安定
な複合体の形成を可能とするのに適切な条件下で接触させ、もしあれば形成され
た安定な複合体を検出することを要する。「安定な」複合体は、複合体の形成お
よびその引き続いての検出の間持続するように十分に長く継続する複合体である
。多数の免疫アッセイ方法が当該分野で公知であり、そして本明細書中に記載さ
れている。さらなる説明のために、可能性としてAb3および/またはAb1を含有す
る
試験サンプルが、典型的には(例えば、放射性同位体または酵素で)検出可能に
標識した3H1ポリペプチドの所定の非限定量と混合され得る。液相アッセイにお
いては、未反応試薬は、濾過またはクロマトグラフィーのような分離技術によっ
て除去される。これらの免疫アッセイ技術において、複合体と会合した標識の量
は、サンプル中に存在するAb3および/またはAb1の量と正に相関する。同様のア
ッセイが設計され得る。そこでは、試験サンプル中のAb3および/またはAb1が、
限定量の3H1ポリペプチドへの結合について標識抗体と競合する。ここでは、標
識の量は、サンプル中のAb3および/またはAb1の量と負に相関する。Ab3および
/またはAb1レベルを測定するための適切なサンプルは生物学的サンプルであり
、血清または血漿を含み、好ましくは血清である。他のサンプルは組織サンプル
を含む。
さらに、本発明はまた、Ab3(および/またはAb1)を含有する生物学的サンプ
ルを3H1ポリペプチドと接触させる工程、およびもしあればそれにより形成され
た複合体を得る工程を包含する、Ab3(またはAb1)を精製する方法を含む。典型
的には、3H1ポリペプチドをアフィニティーカラム精製のためにアフィニティー
マトリックスにカップリングさせる。このような方法は当該分野ではルーチン的
であり、本明細書中に詳細に記載する必要はない。
また、本発明には、有効量の3H1ポリペプチドを投与する工程を包含する、CEA
関連腫瘍のようなCEA関連疾患を処置する方法が含まれる。「CEA関連腫瘍」は、
CEA、特に腫瘍細胞の表面で発現されたCEAを含有するものであり、その例は上記
した。この意味では、治療のための有効量は、疾患状態を緩和するのに十分な量
である。有効量は、1回または1回より多い投与にて与えられ得る。有効量の3H
1ポリペプチドでの個体の処置は、例えば、そのような処置をしなかった個体と
比較して、疾患の進行の速度を減少させ得る。
別の実施態様において、CEA関連疾患を有する個体においてT細胞応答を刺激
する方法が提供される。このT細胞応答は、3H1ポリペプチド、特にCEAに対して
相同である3H1ポリペプチドを用いる、T細胞の増殖および/または細胞傷害性
T細胞活性の促進として現れ得る。3H1ポリペプチドは、(ポリペプチドとして
または3H1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するプラスミドと
して)直接に投与され得るか、あるいは適切な細胞のエクスビボ培養に添加され
得る。3H1ポリペプチドは、例えば、所望のT細胞活性を刺激するのに有効な量
で、単離された末梢血単核細胞に添加される。次いで、刺激されたT細胞が個体
に再導入される。添加される3H1ポリペプチドの量は、個体の状態、従前および
/または併用の処置手順、および使用される他の物質のようないくつかの要因に
依存する。このような量は経験的に決定され得る。LCD-2ポリペプチドの使用に
おいて、本発明者らは、0.5〜2.0μg/mlを使用した場合に(50μg/mlの全タンパ
ク質)、(患者において)有意なT細胞増殖を見い出した。
本発明のポリペプチドは単独でまたは所望の活性/目的を促進する他の因子と
組み合わせて使用され得る。3H1ポリペプチドはまた、相互に種々に組み合わせ
て使用され得る。この意味では、「因子」とは種々の物質のいずれでもあり得る
。さらに、「併用して」とは、因子がポリペプチドと同時に、その前に、または
その後に使用され得ることを意味する。因子はまた、融合タンパク質のようなポ
リペプチドに共有結合され得、またはポリペプチドに物理的に近接し得る。所望
の活性は、3H1ポリペプチドを使用するにおける所望の目的を容易とし、増強し
、促進し、または改変するいずれの活性でもある。
使用され得る因子は、サイトカイン、リンホカイン、アジュバント、および薬
物を含むが、これらに限定されない。因子はまた、リポソームのようなポリペプ
チドの送達を容易とする物質、またはポリペプチドの特定の標識、例えば、細胞
レセプターへの送達を促進する物質を含む。例えば、1つ以上の3H1ポリペプチ
ドが、GM-CSFのようなサイトカインもまた含有する融合タンパク質として生産さ
れ得る。あるいは、1つ以上の3H1ポリペプチドは、GM-CSFのようなサイトカイ
ンと共に投与され得る。
本発明はまた、例えば、ラジオシンチグラフィーまたは放射線療法のために、
標識抗CEA抗体(Ab1)を受容した個体から標識(例えば、放射能)を除去するた
めに3H1ポリペプチドを使用する方法を含む。抗体標的化放射性核種の使用(す
なわち、放射線免疫療法)に共通した1つの問題は、治療用の放射性標識抗体の
投与量を制限する系における過剰のAb1の存在である。さらに、放射性標識抗体
を用いる効果的イメージングは、しばしば、循環および組織を浄化するのに数日
を要する過剰の循環放射性標識抗体のため妨害される。本発明のこれらの方法に
おいて、3H1ポリペプチドは、標識抗CEAの投与後の特定の時期に個体に投与され
る。3H1ポリペプチドは、循環および間隙におけるように、腫瘍以外の部位にお
いて抗CEAと複合体化し、そしてそれによりそのクリアランスを促進することが
意図される。その結果、非患部組織における(放射性同位体のような)標識部位
のレベルが減少し、そして(隣接組織に比較して)腫瘍のイメージが増強される
。同様に、放射性核種を腫瘍部位の照射のために被験体に与えた場合、非患部組
織の付帯暴露を減少させるのが望ましい。このように、本発明は、放射性標識抗
CEA抗体を治療用量で投与し、続いてモル過剰の3H1を投与する治療方法を含む。
これらの適用のいずれにおいても、3H1ポリペプチドの量は、腫瘍部位に局在
化されないいずれの抗CEAをも位置決定し結合させるために、標識抗CEAよりも十
分にモル過剰であるように選択される。投与のタイミングおよび3H1ポリペプチ
ドの量は放射性標識抗体の性質、使用される放射性同位体のタイプ、および個体
の状態に依存する。好ましくは、3H1ポリペプチドと抗CEA抗体とのモル比は、少
なくとも約5:1、より好ましくは約25:1〜200:1である。好ましくは、3H1ポ
リペプチドは、個体が抗CEA抗体を受容した5〜24時間後に投与される。
3H1ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含む薬学的組成物およびワクチン
本発明は、3H1ポリヌクレオチドおよび/または3H1ポリペプチドを含有する薬
学的組成物およびワクチンを含む。このような薬学的組成物/ワクチンは、免疫
応答を誘発するのに、および/または結腸直腸癌腫のようなCEA関連疾患の処置
に有用である。薬学的組成物/ワクチンは、単独で、または化学療法または放射
線療法のような他の形態の治療と併用してのいずれかで、CEA関連疾患を緩和ま
たは改善し得る。薬学的に受容可能な賦形剤において有効量の3H1を含むこれら
の薬学的組成物は、単位投与量形態、滅菌非経口溶液または懸濁液、滅菌の非経
口以外の溶液または経口溶液または懸濁液、水中油型または油中水型エマルジョ
ンなどでのヒトおよび動物への全身投与に適する。処方または非経口および非経
口でない薬物送達は当該分野で公知であり、そしてRemingtons' Pharmaceutical Sciences
第18版,Mack Publishing(1990)に記載されている。
薬学的に受容可能な賦形剤は、薬理学上有効な物質の投与を容易とする比較的
不活性な物質である。例えば、賦形剤は、ワクチン組成物に形態および稠度を与
え得、あるいは希釈剤として作用し得る。適切な賦形剤は、安定化剤、湿潤剤お
よび乳化剤、浸透圧を変化させるための塩、カプセル剤、緩衝液、および皮膚浸
透促進剤を含むが、これらに限定されない。薬学的に受容可能な賦形剤の例はRe mingtons' Pharmaceutical Sciences
(1990)、前掲に記載されている。
1つの実施態様において、3H1ポリペプチドを含有する薬学的組成物は、例え
ば、個体由来の末梢血単球(PBM)のエクスビボ培養を刺激するために用いられる
。次いで、PBMを個体に再導入する。薬学的組成物は、単独でまたはリンホカイ
ンのような他の生体応答改変因子と組み合わせて用いられる。
1つのタイプの薬学的組成物はワクチンである。従って、本発明はまた、3H1
ポリヌクレオチド、3H1ポリペプチド、または両者の組合せを含むワクチンを含
む。これらのワクチンはCEA関連疾患の発症の処置、調節、および/または防止
に特に有用である。
上述した3H1ポリヌクレオチドを含有するワクチンはいわゆる「遺伝子免疫化
」またはDNAワクチンとして使用され得、ここでは、抗原性ポリペプチドをコー
ドするポリヌクレオチドが、保護的免疫応答を誘発するために、宿主細胞に導入
される。Tangら(1992)Nature 356:152-154。一旦細胞核に入ったら、プラスミド
は環状の非複製エピソームとして持続し得、これは用量依存的かつ長期の発現に
導く。Spoonerら(1995)Gene Therapy 2:173-180。ポリヌクレオチドを用いる免
疫化が細胞性ならびに体液性応答を生じることが示されている。Spoonerら(1995
);Wangら(1995)Human Gene Therapy 6:407-418。遺伝子免疫化は、感染の危険
がなく免疫応答を誘発するビヒクルとしての生微生物または弱毒微生物の多くの
利点を有する。
好ましくは、3H1ポリヌクレオチドは、プロモーター、エンハンサーおよびシ
グナル配列のような転写および翻訳のための適切な制御配列を含有するプラスミ
ドベクターとして導入される。1またはそれ以上の3H1ポリヌクレオチドが単一
クローニングベクター内で使用され得、および/または複数のベクターが使用さ
れ得る。複数の3H1ポリヌクレオチドが使用される場合、それらはベクター内に
インフレームで挿入されるか、または別のプロモーターの制御下に置かれるべき
である。使用される3H1ポリヌクレオチドの長さおよび/またはタイプは変化さ
せられ得、そしてワクチン投与の臨床目的、個体の状態、および個体の免疫学的
プロフィールのようないくつかの要因に依存する。さらに、免疫応答を増強し、
容易とし、および/または増加させる他の物質をコードするポリヌクレオチドも
また、ベクターに挿入され得る。GM-CSFのようなこのような物質の例は上述した
。
例えば、1つの実施態様においては、3H1のscFvをコードするポリヌクレオチ
ドが上記発現ベクター(プラスミド)の1つに挿入される。別の例においては、
図19に示される3H1フラグメントをコードするポリヌクレオチドが、ワクチンと
して投与するために発現ベクターに挿入される。別の例においては、3H1の免疫
原性フラグメントをコードするポリヌクレオチドが、発現ベクターに挿入される
。
3H1ポリヌクレオチドを使用する別のタイプのワクチンは、いわゆる発現ライ
ブラリー免疫化であり、ここでは、(3H1の種々の部分をコードする)3H1ポリヌ
クレオチドの発現ライブラリーを用いて宿主を免疫化する。Barryら(1995)Natur
e 377:632-635。得られた多部分構成性非感染性ワクチンは、可能な免疫原とし
て複数のペプチドを提示するので、特に有用であることが判明し得る。複数の免
疫原の提示は、それを投与する各特定の宿主(すなわち、個体)が免疫学的に有
効なポリペプチドを選択し得るというさらなる利点を有し、それは個体間で変化
し得る。3H1ポリペプチドの発現で用いる発現ライブラリーは包括的(すなわち
、全3H1分子を集合的にコードする)であり得るか、あるいは部分的であり得る
。免疫化用の発現ライブラリーは、適切なベクター系を用い、上述した一般的組
換え方法によって作製される。典型的には、3H1ポリヌクレオチドは分泌を媒介
するシグナル配列とインフレームに融合される。
投与すべき3H1ポリヌクレオチドの量は、投与の様式および経路(すなわち、
直接的注射−対−エクスビボ培養およびトランスフェクション)、3H1ポリヌク
レオチドによりコードされた3H1ポリペプチド、(免疫学的および/または疾患
状態のような)個体の状態、および所望の目的のようないくつかの要因に依存す
る。典型的には、直接的に投与する場合、投与当たりの量は約10μg〜1mg、好
ましくは25μg〜500μg、より好ましくは30μg〜250μg、さらに好ましくは50〜
100μgである。
別の実施態様において、3H1ポリヌクレオチドは、ワクチン処方のためのコー
ドされた3H1ポリペプチドを発現できる生存ウイルスまたは弱毒化ウイルスまた
はウイルスベクターにおいて用いられる。例は、アデノウイルス、アデノ随伴レ
トロウイルス(AAV)、およびSV40を含むが、これらに限定されない。好ましく
は、ウイルスはワクシニアである。組換えワクシニアウイルスは、免疫原性ウイ
ルス粒子と共に3H1ポリヌクレオチドによってコードされる3H1ポリペプチドを有
効に共提示するのに強力な因子を提供し得る。ワクシニアウイルスベクターの構
築は上述した。一般に、組換えウイルスベクターを宿主細胞のインビボ感染を行
うのに十分な量で添加する。この量は使用するウイルスのタイプ、コードされる
3H1ポリペプチドの性質、個体の状態、および所望の結果に依存する。(3H1ポリ
ペプチドまたはscFvのような3H1ポリペプチドを含有する3H1変異体をコードし得
る)組換えワクシニアは、用量当たり約107〜108プラーク形成単位でワクチン接
種のために直接使用され得る。ワクシニアは、非経口にて(例えば、皮下または
筋肉内注射によって)、ならびに鼻孔内のような粘膜を介して、経口にて、また
は吸入によって投与され得る。あるいは、ワクシニアは、ワクシニア感染細胞を
介して投与され得る。この技術において、腫瘍細胞のような適切な細胞を培養中
のワクシニアで感染させる。次いで、感染細胞を個体に再導入する。ワクシニア
で細胞を感染させる方法およびそれらの感染細胞を再導入する方法は記載されて
いる。例えば、Moss(1991)参照のこと。
ワクチンはまた、1以上の3H1ポリペプチドから調製され得る。3H1ポリペプチ
ドは、上述の方法のうちのいずれかによって、特に適切な発現ベクターからの精
製によって調製され得る。1つの実施態様において、ワクチンは、1またはそれ
以上の3H1ポリペプチドを含む。3H1ポリペプチドは、中性もしくは塩形態として
ワクチンに処方できる。薬学的に受容可能な塩は、(3H1ポリペプチドの遊離ア
ミノ基で形成された)酸付加塩を含み、これは、例えば、塩酸またはリン酸のよ
うな無機酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸などのような有機酸で形成さ
れる。また、遊離カルボキシル基で形成された塩は、例えば、水酸化ナトリウム
、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二
鉄
のような無機塩基、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノ
エタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来し得る。
別の実施態様において、b型肝炎表面抗原のようなウイルス粒子に融合させた
3H1ポリペプチドを含有するワクチンが提供される。
活性成分として3H1ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含有するワクチン
の調製は、当該分野における標準的なプラクティスを含む。典型的には、このよ
うなワクチンは注射剤として、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製され
る;注射に先立って液体中の溶液または懸濁液に適切な固体形態もまた調製され
得る。ワクチンはまた乳化され得、あるいはリポソームと会合させた3H1ポリペ
プチドおよび/またはポリヌクレオチドであり得る。
ワクチン中の3H1ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドはそのまま使
用され得るが、しばしば、薬学的に受容可能な賦形剤と混合される。適切な賦形
剤は、例えば、水、食塩水、生理学的緩衝化食塩水、デキストロース、グリセロ
ール、エタノール、およびそれらの組合せである。所望ならば、ワクチンはまた
、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、および/またはアジュバントのよ
うな少量の補助物質をも含有し得る。アジュバントの例は、水酸化アルミニウム
、ミョウバン、QS-21(米国特許第5,057,540号)、前駆体および修飾形態(例え
ば、DHEA-S、DHEAのスルホン化形態)を含めたDHEA(米国特許第5,407,684号お
よび同第5,077,284号)、β-2-ミクログロブリン(WO91/16924)、ムラミルジ
ペプチド、ムラミルトリペプチド(米国特許第5,171,568号)、モノホスホリル
リピドA(米国特許第4,436,728号;WO92/16231)およびその誘導体(例えば、D
etoxTM)、およびBCG(米国特許第4,726,947号)を含むが、これらに限定されな
い。他の適切なアジュバントは、アルミニウム塩、スクワレン混合物(SAF-1)
、ムラミルペプチド、サポニン誘導体、マイコバクテリウム壁調製物、ミコール
酸誘導体、非イオン性ブロック共重合体界面活性剤、Quil A、コレラ毒素Bサブ
ユニット、ポリホスファゼンおよび誘導体、およびTakahashiら(1990)Nature 34 4
:873-875に記載されているような免疫刺激性複合体(ISCOM)を含むが、これら
に限定されない。獣医学的用途および動物における抗体の生産のために、フロイ
ントのアジュバントの分裂促進成分が使用され得る。アジュバントの選択は、特
に
ヒトに使用することを意図する場合は、部分的には、アジュバントの存在下にお
けるワクチンの安定性、投与経路、およびアジュバントの調節受容性に依存する
。例えば、ミョウバンは、ヒトにおけるアジュバントとしての使用について米国
食品医薬品局(FDA)によって認可されている。3H1ポリヌクレオチドを含有する
ワクチンを用いて免疫応答を増強させるために、カチオン性脂質中のカプセル化
が使用され得る。3H1ポリペプチドの送達のために、リポソーム中へのカプセル
化もまた使用され得る。細胞への送達のために、ポリヌクレオチドおよび/また
はポリペプチドをパッケージングするのに適したリポソームは、当該分野で公知
である。
3H1ポリペプチドは、特に3H1ポリペプチドが100アミノ酸またはそれ未満のア
ミノ酸を含む場合、その免疫原性を増強させるために、必要に応じて化学的に処
理され得る。このような処理は、例えば、グルタルアルデヒドでの架橋;キーホ
ールリンペットヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイドのようなタンパク
質キャリアへの連結を含み得る。
最適下の免疫応答が本発明のワクチンによって誘導されたサプレッサーT細胞
に起因すると推定される場合、シクロホスファミド(100mg/kg体重)もまた腹腔
内投与され得る。
本発明のワクチンは、典型的には、例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、または皮
内のいずれかで、注射によって非経口投与される。投与はまた、鼻孔内、肺内(
例えば、エアロゾルによる)、経口、および静脈内であり得る。他の投与様式に
適したさらなる処方は、坐薬、およびある場合には経口処方を含む。投与経路は
、治療すべき個体の状態および所望の臨床的効果に依存する。
投与は、免疫応答(体液性および/または細胞性)の誘発のような、所望の測
定可能なパラメーターが検出されるまで一週間毎または二週間毎のベースで開始
させ得る。投与は、次いで、二週間毎または一カ月毎のようなより低い頻度ベー
スで継続され得る。
ワクチンは、投与処方に適合する様式で、予防的および/または治療的に有効
となるような量で投与される。投与すべき量は、処置すべき個体、抗体を合成す
る個体の免疫系の能力、投与経路、および所望の保護の程度に依存する。投与す
るために必要な活性成分の正確な量は、実施者の判断に依存し得、そして個体に
特有であり得る。3H1ポリヌクレオチドおよびポリペプチドについての一般投与
量範囲は上述に示した。
典型的には、ワクチンは一連の用量にて投与され、免疫応答を開始させるため
の一群の用量で開始し、続いてより間隔をあけた「維持」用量で行う。例えば、
ワクチンは免疫応答を確立させるために一週間毎ベースで、続いて応答を維持す
るために二週間毎または一月毎で投与され得る。
ワクチン中のポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドは、単独で、他の
3H1ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドと組み合わせて、インタクト
な3H1と組み合わせて、および/または所望の効果を増強し、容易とし、または
調節する、リンホカインおよび薬物のような他の物質と組み合わせて投与され得
る。このような物質の例は上述した。3H1ポリペプチドは溶液中の3H1ポリペプチ
ドの混合物を調製するか、または融合タンパク質を合成することによって組み合
わせられ得る。
本発明のワクチンはまた、CEAをコードするポリヌクレオチドまたはそのフラ
グメントを含有する組換えワクシニアおよび/またはGM-CSFのようなリンホカイ
ンをコードするポリヌクレオチドを含有する組換えワクチンと併用して投与され
得る。さらに、本発明のワクチンは、確立されているかまたは実験的であるかを
問わず、他の治療様式と併用して使用され得る。このような使用は、例えば、化
学療法または放射線療法のような、他の治療様式の投与のみと比較して、ワクチ
ンの投与が臨床的結果を改善する場合に示される。
3H1ワクチンの免疫原性は、Ab3のレベルを測定しおよび/または疾患状態をモ
ニターすることによってモニターされ得る。RIAまたはELISAを用いるAb3の検出
および測定ならびにT細胞活性(すなわち、増殖および/または細胞傷害活性)
の測定は上述した。一例として、Ab3は以下のように定量され得る。マイクロタ
イタープレートを8019(Ab1)で被覆し、そして固定量の125I−標識3H1ポリペ
プチドと反応させる。阻害剤として精製8019を用いて標準阻害曲線を作成する。
異なる希釈の血清を、Ab1-Ab2反応を阻害する能力について試験し、そして血清
中のAb3の量を標準阻害曲線から見積もる。あるいは、T細胞応答は、上述した
ア
ッセイのうちのいずれかを用いてモニターされ得る。疾患状態は、腫瘍関連マー
カー、X線、CTスキャン、および他の測定可能な臨床的発現の測定のような当該
分野における標準的技術を用いてモニターされ得る。
本明細書中に記載したものに限定されない多数の代替的なワクチン組成物が免
疫反応を誘導するのに効果的であり得ることが認識される。全てのこのような組
成物は、それらが3H1ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを活性成分として含
む限り、本発明の範囲内で具体化される。
3H1ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含むキット
本発明はまた、3H1ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドを含有する
キットを含む。本発明の3H1ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを用いる診断
手順は、診断研究所、実験研究所、実施者、または私的な個人によって行われ得
る。本発明により具体化されるキットは、本明細書中に開示したもののいずれか
のような抗CEAまたは抗3H1活性についてのアッセイを行うことを可能とするもの
を含み、それにより、それらの活性を検出および/または定量する。本発明によ
って具体化されるキットはまた、例えば、エクスビボまたはインビボでトランス
フェクトされた細胞における3H1ポリヌクレオチドの検出を可能とするキットを
含む。
例えば、生物学的サンプル中のAb3の存在が、3H1ポリヌクレオチドを用いて試
験され得る。このサンプルは、Ab3の富化のために、必要に応じて前処理され得
る。
本発明のキットは、適切なパッケージングにおける3H1ポリヌクレオチド(単
数または複数)またはポリペプチド(単数または複数)を含む。キットは、必要
に応じて、手順において有用なさらなる成分を提供し得る。これらの必要に応じ
た成分は、以下を包含するが、これらに限定されない:緩衝液、捕獲試薬(capt
ure reagent)、発現試薬(developing reagent)、標識、反応表面、検出手段
、コントロールサンプル、使用説明書、および説明的資料。
以下の実施例を例示のために提供するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例
実施例1.3H1抗イディオタイプ抗体の生成および特徴づけ
モノクローナル抗イディオタイプ抗体産生ハイブリドーマ細胞株3H1を作製し
、そして、以下の記載に従って同定を行った。所望の特異性と機能性を有する抗
体を得るためには、免疫化手順およびスクリーニング手順の両方の局面が重要で
あった。3H1は初期に産生された多くのAb2の1つであり、そしてもっとも望まし
い特性を備えた候補として同定された。
3H1は、抗イディオタイプ応答のための免疫原として8019抗体を用いることに
より得られた。8019は、CEAファミリーの他のメンバー上には存在しないCEAの独
特のエピトープに、正常な成人組織または造血細胞(顆粒球を含む)と実質的な
交差反応性を伴わずに結合する。Koprowskiら、(1979)Somatic Cell Genet.5:9
57; Mitchell(1980)Cancer Immunol .Immunother.10:1。
この免疫化抗体(Ab1)はマウス抗CEAモノクローナル抗体8019であった。応答動
物もまたマウスであったため、生成したAb2は8019のイディオタイプの特性に対
するものと予想された。しかし、その中の一画分のみが8019パラトープに対する
ものであり、さらにより小さい集団が、免疫原性であり、そしてAb3を誘発し得
、そしてさらにより小さな集団が腫瘍関連抗原と交差反応するAb3を誘発する。
8019をオートロガスな種において十分に免疫原性とするために、キャリアKLH
に結合し、フロイントアジュバントで乳化した。これを用量の間が2週間のみの
通常でないスケジュールでレシピエント動物に反復投与した。このスケジュール
に従って5匹のマウスを免疫化した。約3匹のマウスで、4回目の免疫化後にの
み実質的な応答が起きた。応答動物に、5回目の8019静注投与量によって追加抗
原刺激を行い、脾臓細胞を単離し、そして各動物から個別にハイブリドーマを調
製した。クローニングは標準的な技術に従って行った。
スクリーニング手順は、以下の四つの重要な工程を包含する:(1)8019に結合
する抗体に対するポジティブ選択、(2)アイソタイプまたはアロタイプ決定基を
認識する抗体に対するネガティブ選択、(3)CEAに対する8019の結合を阻害する能
力に対するポジティブ選択、および(4)マウスおよびウサギの両方において、オ
リジナルの腫瘍関連抗原(CEA)に対する体液性免疫応答を誘導する能力に対す
るポジティブ選択。このセクションの残り部分(rest)に、以下のセクションで
より詳細に既定されるスクリーニング手順の概要を提供する。
初期スクリーニングはイムノアッセイによって行い、8019と反応するが、同じ
アロタイプ決定基またはアイソタイプ決定基を共有する他の標的モノクローナル
抗体とは反応しないクローンを同定した。決定的なアッセイは、8019を固相に付
着し、培養上清で重層し、そして放射性ヨウ素標識8019で発現するサンドイッチ
RIAであった。このアッセイでは、ハイブリドーマ上清中の抗体が、機能的に二
価であって、かつ捕獲8019と発現する8019との間をつなぎ得ることが要求される
。イディオタイプ特異的であり、かつこのアッセイで強いシグナルを発した数個
のクローンをさらなる研究用に選択した。
8019のCEAへの結合をブロックするためにAb2を必要とする競合アッセイにより
次のスクリーニングを行った。これによると、Ab2が8019のパラトープを認識し
たことが立証された。CEAは、細胞表面でCEAを発現するヒト乳房細胞腫瘍株であ
る、MCF-7細胞の形態で提供された。このアッセイの性質上、Ab2が腫瘍細胞上で
その特異的な提示様式で8019と腫瘍抗原との間の相互作用をブロックすることが
必要である。最低限、それ以前のスクリーニング試験を通過した候補のAb2は、8
019の細胞への結合を少なくとも85%阻害することが必要であった。この最低条
件を実質的に超えたAb2は約3個あり、3H1がほぼ最高レベルの阻害を提供した。
最終的なスクリーニング試験は、候補のAb2をレシピエントに注入したときに
、所望の特異性のAb3を誘発し得るか否かを決定することであった。マウス腹水
から十分な量のAb2を調製し、そしてマウスとウサギで試験を行った。これらの
試験動物由来の血清について、最初、免疫化に使用した同じ標識Ab2を用いるサ
ンドイッチイムノアッセイでAb3の存在についてアッセイした。次いで、ポジテ
ィブの試験結果を示す血清を、腫瘍関連抗原、すなわちCEAに対して反応するAb3
の能力についてアッセイした。CEAの半精製調製物を用いてマイクロタイタープ
レートを被覆し、系列希釈した試検血清を重層し、そして標識抗免疫グロブリン
を用いて、結合したAb3を検出した。CEAに結合するAb3の力価により、抗CEA誘導
物
質としてのその能力の反映としてAb2の「質」を規定した。
モノクローナル抗体3H1は最高の質を有する抗イディオタイプとして明らかに
され、そして本発明で具体化される種々の成分、組成物、および手順の原型の基
礎となる。
材料
ガン胎児性抗原(CEA):Rougler Biotech,Montreal,Canadaから精製CEAを購
入した(カタログ番号70015)。あるいは、過塩素酸抽出によって結腸腺ガンの
ヒト肝臓転移巣からCEAを単離し、そしてイオン交換クロマトグラフィーによっ
て2回精製した後、ゲル濾過と数段階のHPLCクロマトグラフィーを行った。この
方法によって得られたCEAは純度100%であり、HPLCおよびSDS-PAGEによって分子
量180,000に単一バンドを生じ、そしてウマ抗CEA抗体およびウサギ抗CEA抗体に
より単一バンドとして免疫沈降した。分子量180,000と200,000の二つの近接して
泳動するバンドが、8019抗体および他のマウスmAb抗CEAを用いるウェスタンブロ
ット分析法によって示された。この精製CEAを上記のマウスポリクローナルAb3血
清およびウサギポリクローナルAb3血清を用いるELISA実験に使用した。
その他の実験を、一般に、ヒト腺ガン細胞由来の半精製抽出物を用いて行った
。これは過塩素酸抽出後、大規模な透析によって調製した。抽出物中のCEAの存
在を、SDS-PAGEに続いてmAb8019を用いた免疫沈降を行うことによって確認した
。
抗体:モノクローナル抗体8019を産生するハイブリドーマ細胞株は、アメリカ
ンタイプカルチャーコレクション(ATCC Rockville,MD)より入手した。この抗体
は、当初、IgMκと記載されたが、再クローニングの間に自発スイッチ変異体が
出現し、そして本発明者らの8019はIgG1κである。8019の特異性は、CEAを発現
する細胞を用いるイムノペルオキシダーゼ染色および流動微小蛍光測定分析によ
って再確認した。本明細書中に記載した種々の実験においては、モノクローナル
抗体1E3 mAb(IgG1κ;ヒト卵巣粘液ガン腫に特異的)、その他のモノクローナル
抗体およびミエローママウス免疫グロブリンをコントロールとして使用した。
プリスタンで初回刺激した個々のマウスに、2〜10×106個の生存細胞を腹腔
内注入することによって、8019ハイブリドーマおよびその他の細胞株の腹水を調
製した。この腹水から45%飽和硫酸アンモニウム沈殿およびその後のProtein A
Sepharose(TM)CL-4B(Eyら(1978)Immunochemistry 15:429)上のクロマトグ
ラフィーによってIgG画分を単離した。単離されたIgGの純度は免疫拡散法、免疫
電気泳動、および高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分画によってチェックした
。
8019のF(ab')2フラグメントの調製:標準的なペプシン消化(Parham(1983年
)J .Immunol 131:2895)によりF(ab')2フラグメントを調製した。要約すれば、
8019腹水由来のIgG画分を0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.5)に対して透析し、そして
ペプシン(25μg/mg IgG)を用い、37℃で8時間消化した。切断後、3.0Mトリス
緩衝液(pH8.6)でpHを7.0に調整し、そして低温で溶液をリン酸緩衝化生理食塩
水(PBS)に対して透析した。消化物をSepharose6カラムを用いるHPLCによって分
離した。単離されたF(ab')2の純度は免疫拡拡散法により、および標準的なELISA
での抗アイソタイプ試薬との反応により決定した。
抗体のKLHとのカップリング:Maloneyら(1985、Hybridoma 4:191)によって
記載された方法に従って、8019をキーホールリンペットヘモシニアン(KLH)とカ
ップリングした。抗体ストック溶液(1mg/ml)を新たに希釈したグルタルアルデヒ
ド溶液の存在下(最終濃度0.05%)PBS中でKLH(1mg/ml)と混合した。混合物を室
温で1時間くるくると回転し、次いで、PBSに対して4℃で完全に透析した。
同系BALB/cマウスの免疫化:BALB/cの雌を、2ヶ月の期間にわたって4回免疫
化した。最初の注入は、完全フロイントアジュバントで乳化した100μgの8019を
用いて腹腔内に与えた。次の2回の注入は、不完全フロイントアジュバント中、
KLHとカップリングした100μgの8019を皮下注入または腹腔内注入のいずれかで
与えた。マウスは時々採血を行い、そして8019のF(ab')2フラグメントおよびコ
ントロールとしてプールした正常BALB/cマウス血清IgGを用いることにより、結
合アッセイ中のELISAによって抗Id活性をチェックした。融合の3日前に、PBS中
の8019を静脈内に注入してマウスを追加免疫した。抗イディオタイプハイブリドーマの生成
ハイブリドーマ株の生成に用いた融合パートナーは、ATCCからNo.CRL-1580と
して入手でき、P3X63Ag8,653と祖先が関係するマウス非分泌性ミエローマ細胞株
P3-653であった。樹立ヒト細胞株を他の箇所で記載されたように(Seonら(1984)J . Immunol.
132:2089)5%ウシ胎児血清を補充したRPMI1640中で培養した。
ハイブリドーマは、本質的に、OiおよびHerzenberg((1980)「Selected Met
hods of Cellular Immunology」、MishellおよびShiigi編、Freeman Publs.351
〜372)の方法に従って生成した。50%ポリエチレングリコール(PEG、分子量約
4500)の存在下、免疫化マウス由来の脾臓細胞を、P3-653細胞と1:1から1:10の
割合で混合した。次に、融合細胞を洗浄し、そして培養した。ヒポキサンチン-
アミノプテリン-チミジン培地を用いてハイブリッドを選択した。ハイブリドーマクローンを分泌する抗イディオタイプ抗体(Ab2)の初期選択
RIAおよびELISAによってハイブリドーマクローンの初期スクリーニングを行っ
た。ELISAはマイクロタイタープレートのウェルを8019抗体(またはコントロー
ル)500ng/ウェルで被覆することによって行った。4℃で一夜インキューベート
した後、プレートをPBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックした。ハイ
ブリドーマの培養上清または20×濃縮物の100μlをウェル中室温で4時間インキ
ュベートした。PBSで洗浄後、さらにプレートを室温で4時間または4℃で一晩
、アルカリ性ホスファターゼ標識抗イディオタイプ試薬とインキュベートし、そ
して基質で発現させた。ELISA検出試薬は、抗マウス免疫グロブリンであったの
で、プレートを被覆するために使用した8019はF(ab')2フラグメントであった。E
LISAアッセイは特異的抗体のクラスおよびサブクラスの同定に有用である。一般
に、特定のIgGサブクラスの抗体が、安定でプロテインAクロマトグラフィーに
よって簡単に精製でき、かつ有用なエフェクター機能を有し得るので所望される
。
ハイブリドーマの上清をまた、サンドイッチRIAにより試験した。精製8019を
クロラミンT法(Hunter(1970)Proc .Soc.Exp.Biol.Med. 133:989)によっ
て放射性ヨウ素標識した。8019、またはコントロール抗体(種々のアイソタイプ
および非関連特異性のモノクローナル抗体、ならびにBALB/c正常IgG)を、500ng
/ウェルでPVCプレート上に被覆した。一般に、インタクトの抗体を使用した。4
℃で一晩インキュベートした後、プレートをPBS中の1%BSAでブロックした。被
覆したプレートをハイブリドーマ上清の系列希釈液と4時間インキュベートし、
そして約50,000cpmの125I-8019を用いて発現した。このRIAアッセイは抗体につ
いてよりストリンジェントな特異性試験であり、そしてまた抗体が2つの8019分
子の間をつなぎ得ることを必要とする。
所望の特性を備えるこれらのスクリーニングアッセイから多くのモノクローナ
ルAb2分泌細胞株が明らかにされた。その中にモノクローナル抗体3H1が存在した
。Ab2 が8019イディオタイプに特異的であることの確認
Ab2のイディオタイプ特異性はAb1への直接結合により確認された。種々の精製
Ab2を125Iで標識し、そしてモノクローナル抗TAA Ab1のパネルで被覆したプレー
トへの結合について試験した。125I-3H1を用いた実験の結果を図6に示す。結果
は平均cpmで示される(n=3、標準偏差10%未満)。3H1は、8019とほぼ独占的に
結合した;試験された他のAb1のいずれとも交差反応性は一つの例外を除いて実
際まったく無かった:その例外とは、CEA上の関連(おそらく重複する)エピト
ープを認識する抗CEA抗体RWP1.1(IgG2b、κ)との軽度の交差反応である。
8019イディオタイプに対する特異性は、競合実験でさらに確立された。約25,0
00cpmの種々の標識Ab2を、Ab2、Ab1、およびその他のマウス免疫グロブリンを含
む非標識競合物質のパネルの異なるメンバーと混合した。次いでこのAb2を、801
9被覆プレートへの結合について試験した。結果を表1に示す(平均cpm、n=3、
標準偏差10%未満)。競合物質として250ngの非標識3H1または8019を用いて、90
%より大きい阻害が得られた。潜在的な競合物質としてその他の免疫グロブリン
を用い、5μgの濃度までは、関連Ab1抗体RWP1.1を除いて、阻害は、実際、得ら
れなかった。
8019 パラトープに対する抗イディオタイプに対するスクリーニング
Ab2が8019のパラトープに対するものか否かを決定するため、Ab2を使用して放
射性標識8019のCEAへの結合について競合させた。これは以下の二つの方法で行
った:(1)プレート結合アッセイは、半精製CEA抽出物を用いて行った;(2)細胞
結合アッセイは、CEAを膜成分として発現するヒト結腸ガン細胞株であるLS174T
細胞を用いて行った。
プレート結合アッセイは、プレートを、過塩素酸で可溶化した半精製CEAAg抽
出物の100μl(0.1mgタンパク質/ml)と4℃で一晩インキュベートすることによ
って被覆した。LS174T細胞を96ウェルの組織培養プレート中でコンフルエントな
単層として増殖させた。試験Ab2の種々の希釈物(培養上清または精製抗体のい
ずれか)を標識8019と混合し、次いで、被覆されたプレートまたは培養細胞に加
えた。アッセイの阻害パーセントを次式に従って計算した。
ここでRTはインヒビターを有する実験ウェルの平均cpmであり;RCは平均バック
グラウンドcpmであり;そしてRMAXは任意のインヒビターを有さない平均最大結
合である。
図7は、プレート結合アッセイにおけるモデル競合物質として3H1を用いて行
ったこのタイプの実験の結果を示す。3H1は25ngという少量で標識8019のCEAへの
結合を阻害した。精製抗体4EA2(非関連特異性のIgG1,k)をネガティブコントロ
ールとして使用したところ、まったく阻害を示さなかった。関連する実験で、3H
1は別の抗CEA抗体(D14)のCEA被覆プレートへの結合を阻害し得なかった。結合特異性の確認
もっとも有望なAb2について8019への結合の特異性を確認するため、競合アッ
セイにおける役割を逆転させた確認実験を行った。
約40,000cpmの125I-8019を、CEA Agの半精製調製物、または8019と反応しない
非関連糖タンパク質Agと同時にインキュベートした(Bhattacharyaら(1982)Ca ncer Res.
42:1560)。この抗体Ag混合物をAb2被覆プレートに添加し(500ng/ウ
ェル)、そしてCEAの結合阻害能力を測定した。Ab2の量は、結合し得た8019の量
に関して限定されず、そしてそれ故少量の競合するCEAに対する鋭敏なインジケ
ーターであった。
図8に代表的な実験の結果を示す。2.5μgの半精製CEAによって3H1のヨウ素化
8019への結合が50%阻害された。非関連糖タンパク質はより高い濃度でさえ結合
を阻害しなかった。このことは、3H1が結合部位特異的な抗Idであることを示唆
する。
これまでに記載されたスクリーニング試験でポジティブであると試験された抗
体産生クローンを用いて、マウス腹水をAb2の供給源として調製した。このAb2を
標準的な技術によりProteinAおよびProteinGアフィニティー樹脂を用いるクロ
マトグラフィーによって精製した。腫瘍特異的な免疫応答を誘発し得る抗イディオタイプについてのスクリーニング
Ab2がネットワーク抗原として挙動するとすれば、Agへの曝露のない状態で遺
伝的に制限されない様式で、かつ種の障壁を横切って、Ag特異的なAb3の産生を
誘導するはずである。従って、先のスクリーニング試験を通過したAb2を、免疫
化実験でさらにスクリーニングした。その目的は、Ab1とイディオタイプを共有
するAb3を誘発し得、かつ腫瘍関連抗原に対して類似の結合特異性を示す候補を
同定することである。
試験されるべき各Ab2について、BALB/cマウス5匹とニュージーランドホワイ
ト種ウサギ2匹を免疫化した。マウスの免疫化には、Ab2をKLHと結合させた。50
μgを注入し、そして応答を試験するためにマウスから定期的に採血した。ウサ
ギ1匹につき500μgを、0日目に完全フロイントアジュバントで乳化して、14日
目に不完全フロイントアジュバントで乳化し、その後2ヶ月の間は生理食塩水(
筋肉内)で注入した。このウサギから最終の注入の14日間後に採血した。
抗CEA活性をELISA(一般に、Engvallら(1972)J .Immunol. 109:129を参照の
こと)によって測定した。試験血清の種々の希釈物をCEA被覆されたウェル中で
インキュベートし、そして結合した抗体をこの種に適した酵素連結抗免疫グロブ
リンで検出した。このアッセイはオリジナルの腫瘍関連抗原に結合する抗体を必
要とし、そして抗イディオタイプによる免疫化によって誘導されたAb3の少なく
とも一部分が腫瘍抗原特異的であることを立証する。CEA特異的Ab3のレベルを系
列希釈によって力価決定し、そしてAb2を免疫化する「質」を規定した。非関連
モノクローナル抗体(4EA2)で免疫化したマウスおよびウサギ由来の血清をネガテ
ィブ特異性コントロールとして使用した。
3H1モノクローナル抗体は、試験した候補の中で最高の質を有することが明ら
かにされた。
図9に示すように、3H1で免疫化したマウスの血清中に存在するAb3は、不溶化
CEAに特異的であった。免疫化したマウス(2グループ中6匹)の全ては、ELISA
で測定したとき、抗CEA抗体を発現した。免疫前のマウスまたは非関連Ab2-KLH(4
EA2)で免疫化したマウス由来のコントロール血清は、純粋なCEAに対する結合を
示さなかった。平行実験では、同じ抗血清の結合を、非関連卵巣腫瘍糖タンパク
質で被覆したプレート上で比較した。各々の場合で得られた最大結合は0.3〜0.4
ODの間であり、PBS-BSAコントロールで得られたのと同じであった。
関連する実験では、Ab3の培養ヒト結腸ガン腫LS174-T細胞への結合を間接免疫
蛍光アッセイおよびフローサイトメトリーで試験した。図10に示すように、3H1
免疫化マウスから得たAb3含有血清は、8019(Ab1)(A)で得た結合パターンと類似
であった明瞭な結合(B)を示した。CEAを発現しないヒトB細胞リンパ腫細胞との
有意な結合は得られなかった(図10D)。3H1 によって誘発されたAb3が所望の特異性を有していたことの確認
3H1の治療上の目的は、腫瘍関連抗原に対して反応する応答を誘発するその能
力にあるため、得られたAb3の特異性を以下の数種類の実験で確認した。
4BとカップリングしたBALB/cマウス血清の免疫グロブリン画分をカップリング
させて作製した吸着剤上を通過させることにより、ウサギおよびマウスAb3抗血
清から特異性の実験の使用のための抗アイソタイプ活性と抗アロタイプ活性とを
除去した。免疫拡散法によって抗アイソタイプ活性または抗アロタイプ活性が検
出されなくなるまで吸着を繰り返した。吸着したAb3を含む血清を、1%BSA、0.
05%Tween20含有PBSで希釈し、それ以上精製しないで特異性の決定に使用した。
先に述べたのと同様のハイブリドーマ技術を使用し、3H1で免疫化したマウス
由来の脾臓細胞を用いてモノクローナルAb3産生細胞株を生成した。
阻害アッセイ:ヒト結腸ガン腫細胞への結合について、Ab3血清がAb1と競合す
るかどうかを決定するため、放射性ヨウ素化標識8019のLS174-T細胞のコンフル
エントな単層への結合を、異なるAb3血清およびAb1の存在下で阻害について試験
した。
Ab1と3H1との間の直接結合アッセイのため、精製3H1を用いてプレートを被覆
し(155ng/ウェル)、放射性標識8019の3H1への結合を、異なるAb3およびAb1の
存在下で試験した。アッセイの阻害パーセントを前記の式によって計算した。
3H1で免疫化した同系マウス由来の血清は、1/10希釈で、ヨウ素化3H1(Ab2)のA
b1への結合を90%阻害した。免疫前血清、あるいは非関連Ab2、すなわち4EA2-KL
Hで免疫化したマウス由来の血清による阻害は観察されなかった。これらのアッ
セイでは、Ab3結合による立体的妨害を排除し得ないが、これらの結果によると
、Ab1(8019)とイディオトープを共有するAb3抗体の存在が示唆される。1/10希釈
の
3H1で免疫化したウサギ729および730由来の抗血清は、ヨウ素化8019のAb2への結
合を、それぞれ88%および57%阻害した。免疫前ウサギ血清を用いては有意な阻
害は得られなかった。
Ab3がAb1と類似の結合部位を有するとすれば、ヒトガン腫細胞株LA174-Tによ
って発現されたときCEAへの結合についてAb1と競合するはずである。一定量の放
射性標識8019を、ウサギAb3血清またはAb1調製物およびLS174-T細胞の種々の希
釈物と同時にインキュベートした(図11)。20ngの精製8019-IgG1(Ab1)は、結合
を50%阻害したが、その一方、1/10希釈のウサギ血清は、ウサギ729および730に
ついてそれぞれ47%および49%阻害を生じた。このことから、ポリクローナルウ
サギAb3血清は、Ab1と同じAgに結合し、そしてそれ故Ab1の特性を備えたいくつ
かの抗体分子を含有することが示された。
ウェスタンブロット分析:半精製CEA抽出物を、β-メルカプトエタノールを使
用しない非還元条件下で7.5%ゲル中の標準的なSDS-PAGEによって分離した。電
気泳動後、Towbinらの手順((1979)Proc .Natl.Acad.Sci.USA 76:4350)に
従って、ゲルをニトロセルロースフィルターにトランスブロッティング(transb
lot)した。フィルター細片をPBS-1%BSAでブロックした後、8019、ポリクロー
ナルウサギAb3血清、コントロールである、非関連Ab2に対するウサギAb3血清、
ならびにモノクローナルAb3培養上清と別々にインキュベートした。インキュベ
ート後、フィルター細片をPBSで洗浄し、そしてヤギ抗マウスIgまたはヤギ抗ウ
サギIg-アルカリ性ホスファターゼ標識試薬とインキュベートした。このフィル
ター細片を再度洗浄し、イムノブロットキット(Bio-Rad Laboratories、Richmo
nd,CA)で提供されるBCIP試薬とNBT試薬で反応を発現させた。
SDS-PAGE分析によって、mAb8019が分子量180,000のCEAを特異的に免疫沈降さ
せることが示されている(Mitchell(1980)Cancer Immunol .Immunother. 10:1
)。3H1によって誘導されたAb3がCEA分子に対して特異的であったことを確認す
るため、CEAの半精製抽出物をSDS-PAGEで分離し、ニトロセルロースフィルター
にトランスブロッティングした。1つのフィルター細片(図12、レーン2)をバ
ッファローブラックで染色した。分子量180,000の領域に二つの重複するバンド
があり(CEA)、分子量50,000の領域に1つの主要なバンド(正常な交差反応性のA
g)および2〜3の薄い低分子量バンドがあった。次いで、残りのフィルター細
片を、mAb8019、ウサギAb3血清、および非関連アイソタイプ適合Ab2β4EA2(ネ
ガティブコントロール)で免疫化したウサギ血清とインキュベートした。反応は
上記のようにELISAアッセイによって発現させた。抗体8019(図12、レーン3)
およびウサギAb3(レーン4)はこの複合体混合物から分子量180,000ダルトンの
分子だけを免疫沈降した。mAb8019またはウサギAb3血清によって沈降しなかった
物質には広範囲の低分子量CEA関連Agが含まれていた。免疫前血清(図12、レー
ン5)またはコントロール血清(レーン6)とは反応性がなかった。このウェス
タンブロッティング分析によって、分子量180,000のCEAに対するmAB8019の特異
性とウサギAb3の反応性が確認された。
図13はマウス血清を用いて行った同様の実験である。3H1で免疫化したマウス
で誘発されたAb3は、ウェスタンブロットにおけるCEAと同じ分子量180,000形態
を同定した。
Ab1およびAb3を用いた組織切片のイムノペルオキシダーゼ染色:モノクローナ
ルAb1、およびAb3(ポリクローナルおよびモノクローナルの両方)の反応性を、
Vialeら、((1989)J .Immunol. 143: 4338)に詳細に記載されるような非常に感受
性の高い染色方法(ビオチン−ストレプトアビジン試薬、Vector,Burlingame,
CA)により、正常な結腸と結腸腺ガンの外科的標本と比較した。全ての切片を、
マイヤー(Meyer)のヘマトキシリンを用いて対比染色した。内因性ペルオキシダ
ーゼのブロック、第1層の脱落、または特異的抗血清の代わりの非免疫性同種血
清の代用およびAb3培養上清の代わりのP3-653ミエローマ培養上清の代用を包含
する適切な特異性試験を行った。
8019の反応性を、正常な結腸および結腸腫瘍標本に対するAb3(ポリクローナ
ルおよびモノクローナルの両方)の反応性と比較した。正常結腸組織および悪性
の結腸組織の両方に対するAb3の反応性のパターンは、Ab1で得られた反応性のパ
ターンとほぼ同一であった(図14)。正常な結腸粘膜とは反応しなかったが、80
19および全てのAb3は、結腸腫瘍と強く反応した。染色は、より分化の少ない領
域における腺様構造および(細胞質の)顆粒で顕著であった。8019(IgG1,κ)
とモノクローナルAb3(IgM,κ)とを用いて得られた染色パターンの間に、微妙
な違いが存在した。モノクローナルAb3との反応により、分泌ムチンは染色され
ずに腫瘍細胞が染色され、8019との反応により、腫瘍細胞および分泌ムチン様物
質が染色された(図15)。
細胞性免疫の試験:3H1で免疫化した動物もまた、CEA指向細胞性免疫応答を有
することを示すために、さらなる実験がまた行われ得る。3H1で免疫化したマウ
ス由来の脾臓細胞が、T細胞増殖アッセイに用いられ得る。脾臓細胞を半精製CE
Aの存在下で5日間培養し、次いで[3H]チミジンでパルスした。3H1免疫化動物由
来の細胞中の取り込みがコントロールよりも大きいことは、イディオタイプ特異
的細胞性免疫応答の存在に一致する。免疫化したウサギもまた、CEAの半精製調
製物または精製したCEAに対するDTH皮膚反応について試験され得る。T細胞細胞
傷害性アッセイもまた、本開示において記載されるように行われ得る。
実施例2 3H1 cDNAのクローニングおよび配列決定
他に特定されない限り、全てのクローニング技法は、本質的にSambrookら(198
9)に記載され、そして全ての試薬は、製造者の指示書に従って使用された。
3H1 の種々の領域のcDNAクローニングおよび配列決定
VH領域の配列決定のために、1×1073H1ハイブリドーマ細胞から全RNAを単離し
た。全RNAの収量は約100μgであった。オリゴチミジレート−セルロースカラム
の2サイクルのクロマトグラフィーを通じる通過により、mRNAを調製した。mRNA
の収量は約10μgであった。第1鎖cDNAを、SuperScript Preamplificationキッ
ト(GIBCO/BRL)を用いて合成した。次いで、3H1のVHをコードするDNAフラグメン
トを、リーダー(シグナルペプチド)領域アミノ酸−20〜−13、およびガンマ定
常領域アミノ酸126〜119の配列に対応する5'プライマーGGGAATTCATGRAATGSASCTG
GGTYWTYCTCTTおよび3'プライマーCCCAAGCTTCCAGGGRCCARKGGATARACIGRTGG(I=イノ
シン,R=AまたはG,Y=CまたはT,K=GまたはT,S=CまたはG,W=AまたはT)を用い
るPCRにより増幅した。さらに、5'-III部位は、他のクローニングストラテジー
を提供する(Novagen,Madison Wisconsin)。増幅されたcDNAフラグメントをpT
7プラスミドにサブクローン化し、そして、NovaBlueコンピテント細胞を、供
給者(Novagen)により提供されたプロトコルを用いて形質転換した。組換え体
コロニーを、色選択(color selection)により釣り上げ、そしてプラスミドDNA
をミニプレップ手順により調製した。2本鎖プラスミドのDNA配列を、Sequenase
Version 2.0キット(USB,Cleveland,Ohio)により決定した。プラスミド内の
DNA挿入片の配列を、T7プロモータープライマー(TAATACGACTCACTATAGGG)およ
びU-19プライマー(CTTTTCCCAGTCACGACGT)を用いて両方向から決定した。配列
決定のために少なくとも8つのクローンを釣り上げた。3H1軽鎖の配列を同様に
決定した。軽鎖のための正方向プライマーは、5'-ACTAGTCGACATGGTRTCCWCASCTCA
GTTCCTTG、および逆方向プライマーは、5'-CCCAAGCTTACTGGATGGTGGGAAGATGGAで
あり、リーダー配列の−20〜−12アミノ酸およびマウスκ鎖の定常領域の122〜1
16アミノ酸に対応する。
PCR増幅におけるエラー率を最小にするために、pfu DNAポリメラーゼ(Strata
gene,San Diego)をその後のすべての実験における増幅のために使用した。こ
の熱安定性DNAポリメラーゼを用いた変異頻度は、Taq DNAポリメラーゼと比較し
て10分の1である。
アミノ酸配列によるcDNAクローンの確認
本発明者らが釣り上げた3つのクローンは全て同一の配列を有していたが、本
発明者らは、単離したcDNAが実際に3H1のcDNAであったことを確認することが必
要であると考えた。精製した3H1抗体の50μgを、サンプルローディング緩衝液(
50mM Tris-HCl,pH6.8,1%SDS,1%グリセロール,0.1% β-メルカプトエタノ
ール)で希釈し、そして100℃で3分間加熱した。変性させたタンパク質を、SDS
を含む7.5%ポリアクリルアミドゲル(BioRad Miniprotean II Dual Slab Cell
)上にロードし、そして200Vで1時間電気泳動を行った。ゲル内のタンパク質を
、Towbinら((1979)Proc .Natl.Acad.Sci.USA. 78:4350-4354)に記載の手順
により、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜に150mAで一晩トランスファ
ーした。トランスファー緩衝液は、25mM Tris、192mM グリシン、20%(v/v)メタ
ノールを含んでいた。膜を、50%メタノール−50%酢酸中の0.1%クマシーブリ
リアントブルー中に迅速に浸すことにより染色し、続いて10%酢酸を加えた
40%メタノールを含む溶液で洗浄した。膜を室温で乾燥させた後、染色された重
鎖および軽鎖のバンドを清潔な剃刀の刃で切り出した。膜スライス上のタンパク
質を、パルス化−液体化学(pulsed-liquid chemistry)およびオンラインのフ
ェニルエチオヒダンチオンアミノ酸同定を使用するApplied Biosystem Model 47
7Aタンパク質シークエンサーを用いる自動化エドマン分解により、N-末端のマイ
クロシークエンシングを行った。各タンパク質を10〜15分解サイクルにかけ、そ
して各サイクルからの変換した切断産物を、逆相HPLCにより解析した。配列決定
を、University of KentuckyのMacromolecular Structural Facilityにより行っ
た。ペプチド配列は、(Glu)ValGlnLeuGlnGlnSerGlyProGluLeuValLysProGlyであ
った。最初のGlu(その同一性は不確かである)を除いて、このペプチドの14ア
ミノ酸残基は、3H1重鎖のアミノ酸2〜15と正確に一致した。これは、釣り上げ
たcDNAクローンが3H1重鎖のcDNAクローンであることを確証した。
3H1の軽鎖可変領域のcDNA配列(配列番号1)およびcDNA由来のアミノ酸配列
(配列番号2)を図1に示す。3H1の重鎖可変領域のcDNA配列(配列番号3)お
よびcDNA由来のアミノ酸配列(配列番号4)を図2に示す。
実施例3 3H1ポリペプチドフラグメントによるT細胞増殖
T細胞エピトープとして作用する(T細胞増殖により測定される)3H1ポリペ
プチドフラグメントの潜在性を調べるために、CEA(LCD-2、3H1の軽鎖由来CDR-2
を含み、そして配列IYRANRLIDGV;アミノ酸48-58を有する)と相同性を共有する
ポリペプチドを、431Aペプチド合成機(Advanced Biotechnogies,Inc.,Columbia,
Maryland)を用いて合成した。T細胞増殖アッセイを、刺激剤としてこのペプチ
ドを用いて、3H1-KLH結合体で免疫化したマウスから単離した膵臓細胞(splenocy
te)について行った。
細胞性免疫応答を、LCD-2および水酸化アルミニウムで沈澱したイソトープ適
合コントロール抗イディオタイプ抗体4DC6と共にインキュベートした膵臓中のT
細胞の増殖により測定した。
膵臓Tリンパ球を、第2の追加抗原刺激の7〜10日後にマウスから単離し、そ
してナイロンウールカラムにより富化した。単離したT細胞を、抗原提示細胞と
して作用する照射した正常同系膵臓細胞と共にインキュベートし、そしてウェル
あたり5×106細胞を、種々の濃度の3H1ポリペプチド(0.5〜2.0μg/ml、ウェル
あたり50μl、5%熱不活化ウシ胎児血清ならびにペニシリンおよびストレプト
マイシンを含むRPMI培地中に、3H1ポリペプチド(ポリペプチドおよびコントロ
ール4DC6-Alugel(10μg〜2μg)を含む)を含む)と共にインキュベートした。非
特異的マイトジェンのフィトヘマグルチニン-Pを、ポジティブコントロールとし
てウェルあたり2μgおよび1μgで使用した。細胞を5%二酸化炭素を含む雰囲
気下で37℃で5日間インキュベートした後、3H-チミジン(ウェルあたり1μCi
)を用いて20時間パルスした。3H-チミジンの取り込みを、治療前のサンプルお
よび治療後のサンプルにおいて測定した。データを、3H-チミジンの取り込みの
1分あたりの平均カウント(3連のウェル)として表す。データの標準偏差は、
各測定値について10%未満であった。3H1ポリペプチドLCD-2に応答するT細胞増
殖の刺激を、コントロールと比較して観察した。
次いで、本発明者らは、ミョウバン沈澱した3H1を用いた投与前および投与後
の進行した結腸直腸ガンを有する患者由来のT細胞を刺激する、このポリペプチ
ドの能力を試験した。5人の結腸直腸ガン患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、
標準的なFicoll-Hypaque密度勾配遠心分離により得、そして上記のT細胞増殖ア
ッセイのために使用した。1人の患者についての結果を図17に示す。T細胞増殖
の刺激は、治療前のこれらの患者において観察されなかった。5人の患者のうち
2人からのPBMCを、3H1を用いた治療経過の間、複数回これらのポリペプチドに
より刺激した。
これらの結果は、CEAポジティブ結腸直腸ガン患者の治療ワクチン接種のため
のT細胞の刺激についての3H1ポリペプチドフラグメントの使用の可能性を示唆
する。
実施例4 3H1ポリペプチドフラグメントをコードする組換えワクシニアベクタ
ーの構築
プラスミド構築および組換えワタシニアウイルスの産生
一般的なワクシニアベクター(rvv)の構築スキームを図18に示す。本発明者ら
は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)からBLASTプログラ
ムにより、ワクシニアウイルスの野生型WR株のTK遺伝子の完全な配列(GenBank,
受託番号J02425)を検索した。Aitschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403-410。こ
の配列データから、TK配列のヌクレオチド22〜39および727〜708にそれぞれ対応
する正方向PCRプライマーおよび逆方向PCRプライマー5'-CAGATGGAAGGGCCCAACお
よび5'-GATTGATGCATATCATTACCを合成した。Hrubyら、(1983)Pro.Natl.Acad.Sci
.USA 80:3411-3415。プラスミドpGEM-7Zf(+)(Promega)への挿入のために、ApaI
部位(下線)を正方向プライマーに導入し、そしてNsiI部位(下線)を逆方向プ
ライマーに導入した。ワクシニアの野生型WR株由来のDNAを単離し、そしてTK遺
伝子をPCRにより増幅した。予想される大きさのDNAフラグメント(約700bp)を、P
CRにより得た。このDNAを低融点アガロースでの電気泳動により分離し、そしてG
ELase(Epicentre Tech.)を用いた消化により精製した。TK DNAフラグメントを、
ApaIおよびNsiIを用いた消化の後、pGEM-7Zf(+)に連結した。得られたプラスミ
ド(pGEM-TK)を、標準的な形質転換技術により増幅した。挿入を制限マッピング
により確認した。
プロモーター7.5Kを、7.5Kプロモーター配列のヌクレオチド69〜88および335
〜312に対応する、正方向プライマー5'-GTTATCGATGTCGAATAGCCおよび逆方向プ
ライマー5'-TTGCTGCAGATTGAGTACTGTTCTを用いたPCR増幅により、野生型ワクシ
ニアウイルスから増幅した。Cochranら(1985)J.Virol.54:30-37。ClaI部位(正
方向)およびPstI部位(逆方向)がプライマー中に含まれた。増幅したDNAフラグ
メントをPstIを用いて消化した。より小さなオリゴヌクレオチドを用いてポリヌ
クレオチドアダプターを合成し、ポリヌクレオチドキナーゼにより5'末端でリ
ン酸化した。半リン酸化アダプターを、PstI消化されPCR増幅された7.5Kプロモ
ーターDNAフラグメントに連結した。この産物を、ClaI/EcoRI消化されたpGEM-TK
を用いて消化した。
3H1ポリペプチドをコードするcDNAインサートを、pVVのNcoI部位とXmaI(SmaI)
部位との間に挿入する。このプラスミドはまた、scFv cDNAの5'末端にVHのリー
ダー配列を含む。所望の場合には、E.coli βガラクトシダーゼのcDNAを含むワ
クシニアコントロールプラスミドを構築し得る。
rvvの構築
Rvvを、Mackettらの手順(DNA Cloning,第II巻、D.M.Glover編、IRL Press 198
5)に従って、CV-1細胞を用いて、ワクシニアプラスミドおよびワクシニアウイル
スの野生型WR株の相同組換えにより構築する。βガラクトシダーゼを発現する組
換えウイルスクローン(コントロール)を、5'-ブロモデオキシウリジンおよび5
-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトシダーゼ(X-Gal)の存在下で、
TK-143B細胞の増殖により選択する。青色の組換えウイルスを、パスツールピペ
ットにより採集し、そしてプラークを精製する。クローン選択の第2の工程とし
て、抽出したDNAのサザンブロットを、プローブとして3H1 cDNAを用いて行う。r
vvのさらなる選択を、ELISAによるウイルス感染CV-1または任意の他の真核細胞
の培養上清のアッセイにより行う。細胞に結合した3H1ポリペプチドがrvvにおい
て存在する場合(すなわち、リーダー配列を欠失する場合)、細胞溶解物をアッ
セイする。プローブとして8019(Ab1)を用いるウエスタンブロッティングもまた
行う。ワクシニアウイルスにより合成された3H1ポリペプチドの生物学的活性を
、上記のように細胞結合阻害アッセイにより決定する。3H1ポリヌクレオチドを
含むrvvクローンを、0.1%ニュートラルレッドを用いた染色により選択し、そし
て上記のようにプラークを精製する。ウイルスクローンを、標準的技術を用いて
高力価溶解物中で増殖させる。Mackettら(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:741
5-7419。代表的には、最も高い量の3H1ポリペプチドを産生するクローンを、さ
らなる研究のために選択する。
組換えワクシニアウイルスにより発現される3H1ポリペプチド(外来タンパク
質)のアッセイ
CV-1細胞を、25cm2フラスコまたは6ウェルクラスターフラスコ中で、10%ウ
シ胎児血清、ならびに1mlあたり100ユニットのペニシリンおよび100μgのスト
レプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において増殖させ
る。細胞に、30のMOIでrvvを接種する。このウイルスを組織培養インキュベータ
ー中で37℃で2時間吸収させ、続いて接種物を培養培地で交換し、そしてインキ
ュベーションを続けた。上清を指示された時間のインキュベーション後取り出し
、そして分泌された3H1ポリペプチドをアッセイする。コントロールとして、擬
似
(mock)感染細胞由来の上清を使用する。3H1ポリペプチドのアッセイを、例えば
、実施例1および5に記載したように、8019(Ab1)に対する結合について試験す
ることにより行い得る。rvv-lacZにより産生されるβ-D-ガラクトピラノシドを
、基質としてp-ニトロ-β-D-ガラクトピラノシドを用いて、Miller(Experimen
ts in Molecular Genetics,Cold Spring Harbor Pines 1972)に従ってアッセイ
する。アッセイの前に、ウイルス感染細胞由来の培養上清をβ-プロピオネート
で処理して、ウイルスを不活化する。Corcoranら、(1988)J.Parasit.74:763。NF
S60細胞による3Hチミジンの取り込みを、細胞増殖の測定として使用した。Jaffe
eら、(1993)Cancer Res.53:2221-2226。擬似感染CV-1細胞由来の上清の存在下で
の3Hチミジンの取り込みによる放射能をバックグラウンドとして引く。ポジティ
ブコントロールとして、かつ生物学的活性の標準のために、インタクトな3H1を
使用する。あるいは、GM-CSFの標準溶液をQinら、(1996)Gene Therapyに記載さ
れるように使用し得る。
ワクシニア3H1ワクチンの試験
ワクシニアの投与のために、104〜107pfuのウイルス力価をマウスに注射する
。注射は、皮下、筋肉内、皮内または腹腔内であり得る。免疫化を毎週行う。マ
ウスを、Ab3(Ab1'を含む)の決定のために各免疫化の7日後に採血する。T細胞
免疫性の発生についての試験を、追加抗原刺激免疫化の10日後に行う。マウスも
また、腫瘍チャレンジにより試験し得、ここで腫瘍細胞を用いた注射後の生存を
モニターする。
ウイルス感染した腫瘍細胞によるワクシニアの投与のために、オートロガスな
腫瘍細胞を、10%(容量/容量)ウシ胎児血清、2mMグルタミンおよびゲンタマイ
シンを含むイーグル培地中で維持する。75cm2フラスコにおけるコンフルエント
な細胞の単層に、(3×108)プラーク形成単位(pfu)のrvvを接種する。37℃で
の2時間後、接種物をDMEMで交換し、そしてインキュベーションをもう24時間続
けた。顕微鏡下の検査の後、細胞をかき取ることにより回収し、そしてPBSで2
回洗浄し、そして所望の濃度(103〜105/200μl)でPBS中に再懸濁する。雌性C57B
L/6マウス(6〜8週齢)を、Harlan Bioproducts for Science Inc.,(IN)から
購入する。動物を、後左横腹に細胞ワクチンを用いて皮下に注射し、そして2週
間
後、腫瘍細胞をチャレンジのために後右横腹に注射する。腫瘍チャレンジの後の
マウスの生存および腫瘍の存在を、毎日モニターする。腫瘍が測定可能な場合、
腫瘍を2次元においてカリパスにより毎週測定し、そして容量を式(幅2×長さ
)/2を用いて計算する。触診できるが、正確な容量の測定のためには小さすぎる
腫瘍は、ゼロ容量として記録するが、腫瘍の発生はポジティブとして記録する。
腫瘍容量を、120日の観察期間にわたって実際に腫瘍を発達させる腫瘍について
のみ平均する。ゼロ値は、最終的に腫瘍を発達させるが、所定の時点で腫瘍がな
かった、これらのマウスに対して含まれる。
統計学的評価
統計学的評価を、SigmaStat software(Jandel,Inc.San Rafael,CA,USA)を用い
て行う。0.05未満のP値を、統計学的有意差を示すとみなした。
実施例5 3H1 scFvの発現および特徴付け
本発明者らの配列データに基づいて、本発明者らは、3H1のVH--(GGGS)3--VLを
コードするcDNA構築物を調製した。この3H1フラグメントのcDNAを、pET-22b(+)
プラスミドベクター(Novagen,Madison,WI)に組み込み、そしてE.coli内で発現さ
せた。配列分析を行い、プラスミド構築物を確認した。この構築物はフレームワ
ークのVLに連結されたVHのカルボキシ末端を含み、そして6つの連続したヒスチ
ジン残基(His6)からなるニッケルイオン結合ドメインを含むリーダー領域pET-22
b(+)を含まなかった。His6ドメインはニッケルに対して高親和力を有す。これを
、組換え3H1 scFvの精製のために使用した。
細胞結合競合アッセイを、3H1 scFvがインタクトな3H1により示される抗原模
倣性を保持するかどうかを調べるために行った。CEAポジティブLS174-T細胞(50
μl容量中に1×105細胞/ウェル)を、96ウェルプレート中に入れた。この細胞
を、漸増濃度の3H1または3H1 scFvフラグメントの非存在下および存在下で、[12 5
I]8019(Ab1)、100,000 cpmを用いて室温で2時間インキュベートした。阻害%
を以下の式に従って計算した。
RTは、実験ウェルの平均放射能であり、RMAXは、タンパク質の非存在下での放
射能であり、そしてRCはバックグラウンドの放射能である。この実験の結果を図
20に示す。この結果により、3H1 scFvは抗原(CEA)を模倣し得るが、代理の抗原
として作用するその能力はインタクトな3H1より低いことが示唆される。この低
い模倣性は、おそらくタンパク質の不完全な復元に起因する。より活性が少ない
プロモーターを用いたE.coliにおける発現の調節は、例えば、この結果を改善す
るはずである。コントロールとして用いた非関連抗イディオタイプ抗体(11D10)
は阻害を全く示さなかった。
実施例6 マウスにおける組換え3H1ポリヌクレオチドワクチンの試験
組換え候補3H1ポリヌクレオチドワクチンを、本明細書中で記載するように調
製する。2群の10〜15匹の雌性C57BL/6マウス(6〜8週齢)を、Bhattacharya-
Chatterjeeら(1988)により記載のようにグルタルアルデヒド用いてKLHとカップ
リングさせた50〜100μgの精製プラスミドの用量を用いて筋肉内に免疫する。
さらに、種々の投与経路(例えば、筋肉内、皮内、皮下および腹腔内)を比較
する。
マウスを、上記のようにAb3(Ab1'を含む)産生の決定のために各免疫化の7日
後に採血する。各群からの3匹のマウスを、追加抗原刺激免疫化の10日後、T細
胞増殖アッセイのための脾臓の単離のために屠殺する。
観察された効果がいずれも特異的であるかどうかを決定するために、非特異的
な体液性または細胞性免疫(注射したポリヌクレオチドにより誘導されるサイト
カイン産生のような間接機構による)とは異なり、以下の制御を使用する:(a)3
H1ポリヌクレオチド挿入物を含まないプラスミド;(b)反対方向(すなわち、ア
ンチセンス)に3H1ポリヌクレオチド挿入物を含むプラスミド;および(c)非関連
Ab2をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミド。
前記の発明を、理解の明瞭化の目的のために例示および実施例として詳細に記
載したが、特定の変化および改変が実行されることは当業者には明らかである。
従って、説明および実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべ
きでなく、本発明は付随の請求の範囲により明確に叙述される。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C07K 19/00 C07K 19/00
C12N 5/10 C12P 21/02 C
C12P 21/02 21/08
21/08 G01N 33/574 E
G01N 33/574 C12N 5/00 B
//(C12P 21/02
C12R 1:91)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,C
A,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI
,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,
KR,KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,M
G,MN,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU
,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TT,
UA,US,UZ,VN
(72)発明者 チャッタージー,スニル ケイ.
アメリカ合衆国 ケンタッキー 40502,
レキシントン,ザ ウッズ レーン 2400
(72)発明者 フーン,ケニース エイ.
アメリカ合衆国 ケンタッキー 40536−
0093,レキシントン,ローズ ストリート
800