【発明の詳細な説明】
平滑筋細胞増殖阻害薬
本発明は、ベンゼン三酸アミドの新規なポリアニオンベンジルグリコシドに関
する。さらに詳しくは、本発明は、ベンゼン三酸アミドのポリアニオンベンジル
グリコシド、ならびに、それらの平滑筋細胞抗増殖阻害薬としての、および、過
剰な平滑筋細胞によって特徴付けられる疾患および状態(例えば、再狭窄)を治
療するための治療組成物としての使用に関する。
発明の背景
平滑筋細胞(SMC)増殖は、アテローム性の動脈硬化症や移植時の動脈硬化
症の発症に関わる重要な事象であり、また、血管形成術などのすべての形態の血
管再構築から生じる損傷に対する応答の重要な事象でもある(ライネス,イー・
ダブリュー(Raines E.W.);ロス,アール(Ross R.)、ブリティッシュ・ハー
ト・ジャーナル(Br.Heart J.)1993年,69巻(補遺),S30頁;クロウズ,エ
イ・ダブリュー(Clowes,A.W.)、レイディ,エム・エイ(Reidy,M.A.)、ジ
ャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー(J.Vasc.Surg)1991年,13巻
,885頁;アイシック,エフ・エフ(Isik,F.F.);マクドナルド,ティー・オ
ー(McDonald,T.O.);ファーガソン,エム(Ferguson,M.);ヤマナカ,イー
(Yamanaka,E.);ゴードン(Gordon)、アメリカン・ジャーナル・オブ・パソ
ロジー(Am.J.Pathol.)1992年,141巻,1139頁)。しかし、抗再狭窄薬とし
て用いるための平滑筋細胞増殖の臨床上有効な阻害薬は、今日まで成功していな
い(ヘルマン,ジェイ・ピー・アール(Herrman,J.P.R.);ヘルマンズ,ダブ
リュー・アール・エム(Hermans,W.R.M.);ヴォス,ジェイ(Vos,J.);サー
ルイズ,ピー・ダブリュー(Serruys P.W.)、ドラッグズ(Drugs)1993年,4巻
,18および249頁)。
平滑筋細胞増殖に伴う損傷領域の内皮再形成は、再狭窄を阻害するための重要
な問題である(キャッセルズ,ダブリュー(Casscells,W.)、サーキュレーシ
ョ
ン(Circulation)1992年,86巻,722頁;レイディ,エム・エイ(Reidy,M.A.)
;リドナー,ヴイ(Lidner,V.)、エンドテリアル・セル・ディスファンクショ
ンズ(Endothelial Cell Dysfunctions)中,サイミオネスク,エヌ(Simionesc
u,N.)およびサイミオネスク,エム(Simionescu,M.)編,プレナム・プレス(
Plenum Press),ニューヨーク,ニューヨーク,(1992年),31頁)。かくして
、SMC増殖を首尾よく阻害するアプローチは、内皮細胞の修復または他の細胞
型の正常な機能に支障をきたしてはならない(ワイスベルグ,ピー・エル(Weis
sberg,P.L.);グレインガー,ディー・ジェイ(Grainger,D.J.);シャナハ
ン,シー・エム(Shanahan,C.M.);メトカルフェ,ジェイ・シー(Metcalfe,J.
C.)、カーディオバスキュラー・リサーチ(Cardiovascular Res.)1993年,27巻
,1191頁)。
グリコサミノグリカンヘパリンおよびヘパラン硫酸は、SMC増殖の内因性阻
害薬であるが、内皮細胞の増殖を促進させることができる(カステロット,ジェ
イ・ジェイ・ジュニア(Castellot,J.J.Jr.);ライト,ティー・シー(Wright
,T.C.);カルノフスキー,エム・ジェイ(Karnovsky,M.J.)、セミナーズ・イ
ン・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Seminars in Thrombosis and Hemos
tasis)1987年,13巻,489頁;ワイト,ティー・エヌ(Wight,T.N.)、アルテ
リオスクレロシス(Arteriosclerosis)1989年,9巻,1頁)。しかし、ヘパリン
、ヘパリン断片、化学的に修飾されたヘパリン、低分子量ヘパリン、および他の
ヘパリン類似のアニオン多糖類が有する臨床上のすべての利益は、様々な調製物
の不均一性と共に他の薬理学的に不利な点(特に、抗凝血効果から生じる過剰な
出血)によって損なわれることがある(ボーマン,エス(Borman,S.)、ケミカ
ル・アンド・エンジニアリング・ニューズ(Chemical and Engineering News),1
993年6月28日号,27頁;シュミット,ケイ・エム(Schmid,K.M.);プレイサッ
ク,エム(Preisack,M.);ヴェルカー,ダブリュー(Voelker,W.);スジャ
ッタ,エム(Sujatta M);カルッシュ,ケイ・アール(Karsch,K.R.)、セミ
ナーズ・イン・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Seminars in Thrombosis
and Hemostasis)1993年,19巻(補遺1),155頁;アマン,エフ・ダブリュー(
Amann,
F.W.);ノイエンシュバンデル,チェー(Neuenschwander,C.);マイヤー,ベ
ー(Meyer,B.)、セミナーズ・イン・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(S
eminars in Thrombosis and Hemostasis)1993年,19巻(補遺1),160頁;ラ
ダクリシュナマーシー,ビー(Radhakrishnamurthy,B.);シャルマ,シー(Sh
arma,C.);バンダルー,アール・アール(Bhandaru,R.R.);ベレンソン,ジ
ー・エス(Berenson,G.S.);スタンザニ,エル(Stanzani,L.);マスタッキ
,アール(Mastacchi,R.)、アテロスクレロシス(Atherosclerosis),1986年
,60巻,141頁;マッフランド,ジェイ・ピー(Maffrand,J.P.);ハーバート
,エム・エム(Hervert,M.M.);ベルナート,エイ(Bernat,A.);デフレイ
ン,ジー(Defreyn,G.);デレヴァッシー,ディー(Delevassee,D.);サヴ
ィ,ピー(Savi,P.);ピノット,ジェイ・ジェイ(Pinot,J.J.);サンポー
ル,ジェイ(Sampol,J.)、セミナーズ・イン・トロンボシス・アンド・ヘモス
タシス(Seminars in Thrombosis and Hemostasis)1991年,17巻(補遺2),1
86頁)。これら薬剤の多くが有する抗凝結効果はSMC抗増殖活性とは無関係で
あるので、より均一な組成と、より明確な分子構造を有するポリアニオン薬剤は
、上記のアニオン多糖類に関連した副作用をほとんど伴わずに、より望ましくバ
ランスの取れたプロフィールを示すであろうと期待される。
従来の技術
WO 92/18546は、SMC抗増殖活性を示し、合成またはヘパリン断片の単離に
よって純粋な形態で得ることができる特異的な系列のヘパリンを開示している。
β−シクロデキストリンテトラデカスルフェートは、平滑筋細胞増殖の阻害薬お
よび再狭窄の有効な阻害薬として報告されている(ワイス,ピー・ビー(Weisz,
P.B.);ヘルマン,エイチ・シー(Hermann,H.C.);ジュリー,エム.エム(J
oullie,M.M.);クモール,ケイ(Kumor,K.);レヴィン,イー・エム(Levin
e,E.M.);マカラック,イー・ジェイ(Macarak,E.J.);ワイナー,ディー・
ビー(Weiner,D.B.)、アンギオジェネシス:キー・プリンシプル−サイエンス
−テクノロジー−メディスン(Angiogenesis:Key Principle-Science-
Technology-Medicine)、シュタイナー,アール(Steiner R.)、ワイス,ピー
・ビー(Weisz,P.B.);ランガー,アール(Langer,R.)編、バークハウザー
・フェアラーク(Birkhauser Verlag)、バーゼル(Basel)、スイス、1992年,
107頁;ヘルマン,エイチ・シー(Hermann,H.C.);オカダ,エス・エス(Okad
a S.S.);ホザコフスカ,イー(Hozakowska,E.);レヴィーン,アール・エフ
(LeVeen,R.F.);ゴールデン,エム・エイ(Golden,M.A.);トマスチェフス
キー,ジェイ・イー(Tomaszewski J.E.);ワイス,ピー・ビー(Weisz,P.B.
);バルナタン,イー・エス(Barnathan E.S.)、アルテリオスクレロシス・ア
ンド・トロンボシス(Arteriosclerosis and Thrombosis)1993年,13巻,924頁
;レイリー,シー・エフ(Reilly,C.F.);フジタ,ティー(Fujita,T.);マ
ックフォール,アール・シー(McFall,R.C.);スタビリト,アイ・アイ(Stab
ilito,I.I.);ワイ−シィ・イー(Wai-si E.);ジョンソン,アール・ジー(J
ohnson,R.G.)、ドラッグ・デベロップメント・リサーチ(Drug Development Re
search)1993年,29巻,137頁)。米国特許第5,019,562号は、有害な細胞または
組織の増殖に関連する病的状態を治療するためのシクロデキストリンのアニオン
誘導体を開示している。WO 93/09790は、糖残基あたり少なくとも2個のアニオ
ン残基を有する、シクロデキストリンの抗増殖性ポリアニオン誘導体を開示して
いる。EP312087 A2およびEP 312086 A2は、硫酸化されたビス−アルドン酸アミ
ドの抗血栓性および抗凝血性を開示している。
米国特許第4,431,636号、第4,431,637号、第4,431,638号、および第4,435,387
号は、ポリ硫酸化されたチオ−およびオキシ−アリールグリコシド誘導体を補体
系の調節薬として記載している。
本発明のSMC抗増殖性化合物は、これらのSMC抗増殖性化合物が(a)ヘ
パリンまたは硫酸化シクロデキストリンに対する構造類似性を有しないベンゼン
三酸アミドのポリアニオンベンジルグリコシドであり、(b)わずか3個の連続
した糖残基(三糖類)を含有し、および(c)明確な構造を有する点で、これら
従来の技術のいずれとも異なる。
発明の説明
本発明は、式I
[式中、R1、R2、R3、およびR4の各々は、独立して、H、SO3M、または
および各オリゴ糖基は、1〜3個の糖基を有し;
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウム;
nは、1または2;
Xは、ハロゲン、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、または1〜6個
の炭素原子を有する低級アルコキシ;
Yは、カルボニルまたはスルホニル]
で示されるベンゼン三酸アミドのポリアニオンベンジルグリコシドまたはその医
薬上許容される塩の組成物および有用性を記載する。
式Iで示される所定の分子に見られる幾つかのR1は、各々、同一であっても
、異なっていてもよいと理解される。同様に、幾つかのR2、R3またはR4は、
各々、他のR2、R3またはR4と同一であっても、異なっていてもよい。同様に
、
所定の分子に見られる幾つかのYおよび所定の分子に見られる幾つかのnは、各
々、他のYまたはnと同一であっても、異なっていてもよい。
低級アルキル基は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、例えば、メチ
ル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル基であると理解される。同様
に、低級アルコキシ基は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、例えば、
メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシまたはブトキシ基である。
本発明のより好ましい態様は、式I:
[式中、R1、R2、R3、およびR4の各々は、独立して、H、SO3M、または
および各オリゴ糖基は、1または2個の糖基を有し;
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウム;
nは、1または2;
Xは、ハロゲン、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、または1〜6個
の炭素原子を有する低級アルコキシ;
Yは、カルボニル]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩である。
本発明の最も好ましい化合物は、
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−メチル−5−(テトラ−
O−スルファト−β−グルコピラノシルオキシメチル)フェニル]アミド}ドデ
カナトリウム塩またはその医薬上許容される塩;
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−メチル−5−(ヘプタ−
O−スルファト−β−セロビオシルオキシメチル)フェニル]アミド}ヘンエイ
コサナトリウム塩またはその医薬上許容される塩;
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−クロロ−5−(ヘプタ−
O−スルファト−β−D−マルトシルオキシメチル)フェニル]アミド}ヘンエ
イコサナトリウム塩またはその医薬上許容される塩;
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−クロロ−5−(ヘプタ−
O−スルファト−β−D−セロビオシルオキシメチル)フェニル]アミド}ヘン
エイコサナトリウム塩またはその医薬上許容される塩;
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−クロロ−5−(ヘプタ−
O−スルファト−β−D−ラクトシルオキシメチル)フェニル]アミド}ヘンエ
イコサナトリウム塩またはその医薬上許容される塩;
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[3,5−ビス−(テトラ−O−
スルファト−β−D−グルコシルオキシメチル)フェニル]アミド}テトラコサ
ナトリウム塩またはその医薬上許容される塩;
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[3,5−ビス−(ヘプタ−O−
スルファト−β−D−セロビオシルオキシメチル)フェニル]アミド}テトラテ
トラコンタナトリウム塩またはその医薬上許容される塩。
発明の方法
本発明の化合物は、下記のスキームに概説する一般的な反応経路に従って調製
される。
[式中、R、n、およびXは上記と同意義]
このように、グリコシルブロミド1は、ジクロロメタン、エーテル、トルエン
、またはニトロメタンなどの非プロトン溶媒中、−40℃から周囲温度までの温
度にて、臭化第二水銀、シアン化第二水銀、銀トリフラート、または過塩素酸銀
などの触媒の存在下で、ベンジルアルコール2とカップリングさせ、グリコシド
3を得る。
酢酸エチルなどの極性非プロトン溶媒中、周囲温度から還流までの温度にて、
塩化第一スズなどの還元剤を用いて、あるいは、パラジウム/炭素などの触媒の
存在下における接触還元によって、3のニトロ基を還元して、アニリノ化合物4
を得る。
4とベンゼン三酸クロリドまたはベンゼントリスルホニルクロリドとのカップ
リングは、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフランなどの非プロトン溶媒中、
トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなどのアミン塩基の存在下
で行うことができる。糖上に存在する酢酸基を、周囲温度から還流までの温度に
て、メタノール中のナトリウムメトキシドまたはメタノール中の水酸化ナトリウ
ム水溶液などの塩基で加水分解し、糖上に存在する遊離水酸基の一部または全部
を、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン溶
媒中、0℃〜100℃の温度にて、三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体または三
酸化硫黄−ピリジン錯体などの試薬で硫酸化することによって、目的化合物Iを
得る。
本発明は、単独または賦形剤(すなわち、薬理学的効果を有しない医薬上許容
される物質)と組み合わせた有効量の1種またはそれ以上の本発明のベンゼン三
酸アミドのポリアニオンベンジルグリコシドからなる医薬組成物にも関する。こ
のような組成物は、血管の再構築手術および移植(例えば、バルーン血管形成術
、血管移植手術、冠動脈バイパス手術、および心臓移植)から最も頻繁に生じる
過剰な平滑筋細胞増殖によって特徴付けられる疾患および状態に有用である。有
害な血管増殖が存在する他の疾患状態としては、高血圧、喘息、およびうっ血性
心不全が挙げられる。かくして、本発明の化合物は、これらの疾患および状態を
治療するのに有用である。
本発明の化合物は、例えば、典型的には5〜30日間にわたる0.1〜10m
g/kg/時の範囲内の静脈注射によって、または、静脈注射より低い薬用量の
皮下注射によって、静脈注射より高い薬用量の経口投与によって、全身的に投与
すればよい。本発明の化合物の局所的な送達は、適用可能な場合には、支持マト
リクスなどの適当な連続放出デバイスを用いて、経膜的、経皮的、または他の局
所投与経路によって達成してもよい。本発明の組成物は、充填剤、崩壊剤、結合
剤、滑沢剤、香味剤などの従来の賦形剤を用いて処方すればよい。これらは、従
来の方法で処方される。本発明の化合物は、特定の受容体に対して有効な方法お
よび濃度で投与すればよいことが理解される。送達の方法ならびに薬用量の組成
および濃度は、個々の主成分について、その受容体を治療する医師または他の熟
練した医学専門家によって決定される。
細胞増殖に対する効果
A.細胞の起源
本発明の化合物が平滑筋細胞の増殖を阻害し、内皮細胞増殖を調節する能力は
、商業的な起源から得るか、あるいは、場合によっては自家製の単離した大動脈
細胞を用いて確立した。この試験に用いた細胞系は、ヒトおよびブタの大動脈平
滑筋細胞およびヒト大動脈内皮細胞である。ヒト大動脈細胞系は、クロネティッ
クス・コーポレーション(Clonetics Corporation)(サンディエゴ)から得た
。
ブタの大動脈は、地方の屠殺場から入手した。この材料は、運送中、氷冷した
。この大動脈は、丁寧に脂肪組織を除去し、2%抗生物質/抗真菌薬(ギブコ(
Gibco)カタログ#600-5240AG)を含む滅菌リン酸緩衝食塩水ですすいだ。次いで
、I型コラゲナーゼ、165U/mL;III型エラスターゼ、15U/mL;B
SA、2mg/mL;およびダイズトリプシンインヒビター、0.375mg/m
Lを含有する10〜15mLの「酵素混合物」中で、この組織を消化させた後、
5%CO2下、37℃で10〜15分間インキュベートした。この処理後、外部
表面の外膜は、ピンセットで引きはがすことによって、容易に除去された。次い
で、この大動脈を縦方向に切開し、内皮層をけずって除去した。
中膜細胞層を酵素溶液中ですすいで、10mLの酵素溶液を含む新しい100
mmの皿に入れた。この大動脈を小さいハサミで切り刻み、30mLの新鮮な酵
素溶液中、37℃で2〜3時間消化させた。消化後、火炎処理チップを取り付け
た滅菌パスツールピペット、または、200〜1000mLの滅菌ピペットチッ
プを取り付けたエッペンドルフピペッターを用いて、この組織をホモジネート化
した。次いで、この懸濁液を8000rpmで10分間遠心し、得られたペレッ
トを4〜6mLの新鮮な培地に懸濁し、4〜6個のベントキャップ付100mm
フラスコにプレートした。集密になるまで細胞を増殖させ、0.25%トリプシ
ンを用いて分離した。SMCアクチンに対する抗体を用いて、細胞を純度および
総合的な品質について評価した。
B.3Hチミジン取込みを用いた細胞増殖に対する化合物の効果
集密状態の前段階にある初期継代(一般的には3〜7継代)の細胞をアッセイ
した。10%ウシ胎児血清および2%抗生物質/抗真菌薬を補足した培地199
を含む16mm(24ウェル)マルチウェル培養皿で培養を行った。集密状態の
前段階で、これらの細胞は、実験プロトコルを開始する前に24〜48時間、所
定の無血清培地(AIM−V;ギブコ(Gibco))に入れた。
化合物はプレインキュベーションが長いほど有効であることが見い出されたが
、一般的には、化合物と3Hチミジンおよび血清/増殖因子を無血清下の同期細
胞に添加して実験を開始した。本発明の結果は、それに応じて報告する。増殖因
子および血清刺激は、各細胞型に対して最適化した。
化合物は各ウェルに50倍の希釈率(20μL/ウェル)で添加し、これらの
プレートは5%CO2中、37℃で24〜36時間インキュベートした。この一
連の操作において、すべての化合物はH2O溶解性であると判明したので、試験
化合物は、まずH2Oに希釈した後、培地に系列希釈した。化合物は、1、10
、および100μMで慣例的にアッセイした。対照としては、シグマ(Sigma)
から入手したブタ腸粘膜ヘパリン(ナトリウム塩)II級品(H-7005)を、すべて
の細胞調製物について、0.1〜100μg/mLの濃度で慣例的にアッセイし
た。
実験が完了すれば、プレートを氷上に置き、氷冷したPBSで3回洗浄し、氷
冷した10%トリクロロ酢酸(TCA)中で30分間インキュベートして、酸可
溶性タンパクを除去した。0.4N HCl(NaOHを中和するために500μ
L/バイアル)を含むシンチレーションバイアルに溶液を移し、各ウェルを水(
500μL)で2回すすいで、全容量を2mL/バイアルとした。
対照および実験試料の両方について、データを3通りに得た。対照(100%
)のデータは、増殖因子または血清刺激の結果として、最大限に刺激した細胞か
ら得た。実験データは、増殖因子または血清で最大限に刺激し、化合物で処理し
た細胞から得た。データは、対照の百分率として表し、それからIC50を求めた
。本発明の化合物は、表Iに示すように、平滑筋細胞増殖の有効な阻害薬である
。さらに、本発明の化合物は、ヒト平滑筋細胞(HAOSMC)抗増殖活性を示
した。なお、この場合、増殖は10%ウシ胎児血清(FBS)または血小板由来
増殖因子(PDGF;ヒト組換え型PDGF−AB、購入先はアップステート・
バ
イオテクノロジー・インク(Upstate Biotechnology Inc.)、レイク・プラシッ
ド、ニューヨーク州)のいずれかによって誘導される。例えば、実施例11の硫
酸化された化合物は、5ng/mLのPDGF(IC50100nM)によって誘
導された場合だけでなく、FBS(IC50100nM)によって誘導された場合
にも、HAOSMC増殖を阻害する。
C.平滑筋細胞増殖と比較した内皮細胞増殖に対する効果
平滑筋細胞増殖の阻害を伴う内皮細胞増殖の促進は、血管再構築から生じる損
傷に対する過度の応答を阻害する上で重要な問題である。本発明の化合物は、図
1に示すごとく実施例11の硫酸化された化合物によって示されるように、10
%FBSによって誘導されるヒト平滑筋細胞増殖を阻害する薬用量で、2%FB
Sによって誘導されたヒト内皮細胞増殖を高める。
D.細胞毒性:
視覚的には、すべての細胞は高レベルの全化合物に対して全くよく耐えること
が見い出されたが、毒性が存在しないことを保証するために、MTTアッセイの
商業的変法を用いて、化合物の細胞毒性を調べた。簡単には、細胞を24ウェル
プレート中で集密度70〜80%まで再増殖させ、以前と同様に、実験プロトコ
ルを開始する前に24〜48時間、無血清とした。MTTアッセイが増殖よりむ
しろ毒性をモニターすることを保証するために、細胞は、加湿CO2インキュベ
ータ内、37℃で、新鮮な無血清培地中における250μMの薬物と共に、24
時間インキュベートした。化合物処理が完了すれば、MTT指示色素を37℃で
4時間添加した。次いで、細胞を溶解し、各ウェルからアリコート(分割量)を
分析用の96ウェルプレートに移した。ELISAプレート読み取り機を用いて
、波長570nmにおける吸光度(参照波長630nm)を記録した。結果は、
薬物を用いず(100%生存可能)、また、前可溶化(0%生存可能)標準を用
いて、%生存率として報告する。実施例8〜14の硫酸化された化合物は、25
0μMまで毒性を示さなかった。
E.抗凝血活性
本発明の化合物の抗凝血活性は、フェニチェル(Fenichel)ら(クリニカル・
ケミストリー(Clin.Chem.)1964年,10巻,69頁)の手順を用いて、5人の供
血者から採取した正常なヒト血漿を用いた部分トロンボプラスチン時間(APT
T)アッセイで評価した。0.3mLのプローブを利用するBBLフィブロメー
ター(Fibrometer)製の自動精密血液凝固時間測定器を採用した。これらの実験
には、エラグ酸で活性化された部分トロンボプラスチンを用いた。この試薬を、
血液凝固時間測定器のプラスチックウェル中における37℃で平衡化したクエン
酸塩添加ヒト血漿に添加する。37℃でカルシウムを添加し、血液凝固時間測定
器を始動させ、フィブリン凝塊が形成する時間(秒単位)を記録した。12.5
〜200μg/mLの濃度で血漿に添加した化合物の効果を調べた。240秒後
に凝固しなかった血漿は、血液凝固時間を240秒とした。未分画ヘパリン比較
物を1.25〜10μg/mLの濃度範囲で用いた。すべての濃度における血液
凝固試験は、3通りに実施した。無作為ブロックデザインに対する分散分析を用
いて、血液凝固時間に観察される差の有意性を求めた。有効性はヘパリンと比べ
て報告する。なお、比率>1は、あるμg/mL値を基準として、ヘパリンと比
べて活性が弱いことを示す。
F.再狭窄の実験的モデルにおける効果
体重0.3〜0.4kgの雄スプラーグードーりー(Sprague-Dawley)ラットを
、トウモロコシ穂軸の寝所を備えたポリカーボネート製のカゴ(1ボックスあた
り2匹)で飼育し、プリナ(Purina)5001ラット餌および水を与えた(任意に;
7:00AMに点灯し、12時間/12時間の明:暗周期を維持した)。新しい
環境に順応した後、ラットを無作為に処理グループ(1グループあたり12匹)
に割り当てた。これらのラットをケタミン、アセプロマジン(Acepromazone)、
およびキシラジンで麻酔した。前頸部を剃毛し、正中線に沿って3cm切開し、
下側の組織および筋肉を穏やかに切り離すことによって気管を露出させた。牽引
器を挿入して筋肉および組織を側方に保持し、総頸動脈を周辺組織から単離した
。
頸動脈の内側および外側分枝の分岐点から約2および7cm手前で血管に11
mmの近置器(approximator)が配置されるように、右総頸動脈の2cmセグメ
ントを持ち上げた。近置器のクランプ間における総頸動脈の5mmセグメントに
、各クランプの端から約0.5mmの位置で30Gの針を用いて穴をあけ、単離
したセグメントに等張性食塩水を穏やかな流れで注入して、血液を洗い流した。
次いで、この動脈に定常的な空気の流れ(流量30〜35cc/分)を5分間流
して、血管を乾燥させた。まず近置器を緩めてこのセグメントから空気を除去し
た後、取り外して血流を回復させた。出血が止まるまで、首に穏やかな圧力を印
加した。首の切開部分を縫合して閉じ、この動物を各々の飼育器(トウモロコシ
穂軸の寝所を備えたポリカーボネート製ボックス)に戻した。
頸動脈を露出させたが風乾しなかった対照グループのウサギに偽の手術を施し
た。
実験用薬物を、風乾の2日前から開始して2週間、2台のアルザ(ALZA)
製2ml浸透圧ポンプから静脈内投与した。ラットの後頸部正中線に沿って、1
2mm切開した。ポンプを挿入するために、この動物の背中に沿った切開部分を
通じて皮下ポケットを形成し、このポケットにポンプを埋め込み、そして、装着
したカニューレは前頸部まで皮下を引き寄せたが、それは損傷を受けた動脈血管
に対して反対側の頸動脈に挿入した。
手術してから2週間後、ラットを麻酔して放血させることよって犠牲に供した
。損傷を受けた動脈組織は、Zn2+ホルマリンを灌流することによってその場で
固定した後、組織学的な加工および評価のために取り出した。動脈組織は、20
0〜500ミクロン間隔で、5ミクロン部分に切断した。断面積を写真撮影し、
動脈の血管中膜および内膜を計数化して測定した。これらの値を用いて、中膜/
内膜(I/M)比を求めた;グループ間の差は、ANOVAによって比較した。
本発明の化合物は、再狭窄の当該実験的モデルにおいて、内膜の肥厚化の有効な
阻害薬であることが判明した。例えば、実施例11の硫酸化された化合物は、上
記の手順に従えば、125μg/mLの薬用量で、未処理の動物と比較して内膜
の肥厚化を50%阻害した。
特定の手順は、以下の実施例に記載されている。これらの実施例は、本発明を
例示するために与えるものであって、添付の請求の範囲に記載された発明を限定
するものとして解釈すべきではない。
実施例1
工程1
5−(テトラ−O−アセチル−β−
グルコピラノシルオキシメチル)−2−メチル−1−ニトロベンゼン
ニトロメタン(150mL)中における10.3g(61.5ミリモル)の4−
メチル−3−ニトロベンジルアルコール、30.3g(73.7ミリモル)のアセ
トブロモグルコース、13.3g(51.7ミリモル)のHg(CN)2、および
18.6g(52.0ミリモル)のHgBr2の溶液を室温で20時間撹拌した。
この反応混合物を250mLの2.0M KBrでクエンチした後、CH2Cl2中
に抽出した。有機相を飽和NaHCO3および食塩水で洗浄した。有機相をMg
SO4で乾燥させ、濃縮して油状物とし、石油エーテル/酢酸エチル(2:1)
を用いたフラッシュクロマトグラフィーによって半精製した。溶媒を除去して、
合計16.4g(収率54%)の表題化合物を無色の固形物として得た。1H−N
MR(CDCl3,300MHz)δ7.92(d,1H),7.43(dd,1
H),7.33(d,1H),5.06−5.24(m,3H),4.92(d,
1H),4.66(d,1H),4.59(d,1H),4.28(dd,1H)
,4.18(dd,1H),3.68−3.72(m,1H),2.60(s,3H
),2.11(s,3H),2.07(s,3H),2.03(s,3H),およ
び2.01ppm(s,3H)。
工程2
5−(テトラ−O−アセチル−β−
グルコピラノシルオキシメチル)−2−メチルフェニルアミン
21.4g(94.8ミリモル)のSnCl2二水和物を含有するEtOAc(
150mL)中における5−(テトラ−O−アセチル−β−グルコピラノシルオ
キシメチル)−2−メチルニトロベンゼン(6.73g、13.5ミリモル)の溶
液を75℃で3時間撹拌した。この反応混合物を冷却し、約450mLの飽和N
aHCO3でクエンチし、CH2Cl2で希釈し、ソルカ・フロック(solka floc
)で濾過した。濾液の有機相を(MgSO4で)乾燥させ、濃縮して、黄色の固
形物を得た。これを少量のEt2Oで洗浄して、3.85(収率63%)の表題化
合物を得た。1H−NMR(CDCl3,300MHz)δ7.02(d,1H)
,6.64(s,1H),6.63(d,1H),5.02−5.17(m,3H)
,4.79(d,1H),4.50−4.55(m,2H),4.29(dd,1H
),4.17(dd,1H),3.64−3.68(m,1H),2.18(s,3
H),2.11(s,3H),2.02(s,3H),2.01(s,3H),お
よび2.00ppm(s,3H)。
実施例2
工程1
5−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−
セロビオシルオキシメチル)−2−メチル−1−ニトロベンゼン
表題化合物は、実施例1の工程1の手順により、4−メチル−3−ニトロベン
ジルアルコールおよびアセトブロモセロビオースならびにクエンチ工程で飽和N
aClを用いて、収率47%で調製した。フラッシュクロマトグラフィー(Et
OAc/石油エーテル、1:2〜1:1〜2:1)によって精製した。1H−N
MR(CDCl3,300MHz)δ7.91(s,1H),7.40(d,1H)
,7.32(d,1H),4.80−5.20(m,6H),4.40−4.80(
m,4H),4.36(dd,1H),4.02−4.13(m,2H),3.81
(t,1H),3.60−3.68(m,2H),2.60(s,3H),2.14
(s,3H),2.08(s,3H),2.06(s,3H),2.03(s,3
H),2.02(s,3H),2.01(s,3H),および1.98ppm(s
,3H)。
工程2
5−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−
セロビオシルオキシメチル)−2−メチルフェニルアミン
表題化合物(融点180〜182℃)は、実施例1の工程2の手順を用いて、
5−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−セロビオシルオキシメチル)−2−メチ
ル−1−ニトロベンゼンから、収率62%で調製した。フラッシュクロマトグラ
フィー(EtOAc/石油エーテル、1:1〜2:1)によって精製した。1H
−NMR(DMSO−d6,400MHz)δ6.86(d,1H),6.48(
d,1H),6.36(dd,1H),5.24(t,1H),5.10(m,1
H),4.80−4.90(m,3H),4.61−4.72(m,2H),4.5
6(d,1H),4.30−4.31(m,2H),4.22(dd,1H),4.
08(dd,1H),3.99−4.03(m,1H),3.94(dd,1H)
,3.73−3.81(m,2H),2.10(s,3H),2.10(s,3H)
,2.00(s,3H),1.98(s,3H),1.96(s,3H),1.95
(s,3H),1.94(s,3H),および1.91ppm(s,1H);質量
スペクトル(+FAB)m/z 778。元素分析の結果−計算値(C34H46N
O18として):C,53.97;H,6.13;N,1.85。実測値:C,53.
67;H,5.92;N,1.62。
実施例3
工程1
5−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−
セロビオシルオキシメチル)−2−クロロ−1−ニトロベンゼン
表題化合物は、実施例1の工程1に記載の手順により、4−クロロ−3−ニト
ロベンジルアルコールおよびアセトブロモセロビオースならびにクエンチ工程で
飽和NaClを用いて、収率45%で調製した。1H−NMR(CDCl3,30
0MHz)δ7.82(d,1H),7.53(d,1H),7.42(dd,1
H),4.8−5.2(m,5H),4.73(d,1H),4.51−4.66(
m,4H),4.3−4.4(m,1H),4.03−4.11(m,2H),3.
81(t,1H),3.60−3.68(m,2H),2.13(s,3H),2.
09(s,3H),2.06(s,3H),2.03(s,3H),2.01(s
,3H),2.01(s,3H),1.99(s,3H),および1.57ppm
(s,3H)。
工程2
5−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−
セロビオシルオキシメチル)−2−クロロフェニルアミン
表題化合物は、実施例1の工程2の手順を用いて、5−(ヘプタ−O−アセチ
ル−β−D−セロビオシルオキシメチル)−2−クロロ−1−ニトロベンゼンか
ら、エーテルと共に摩砕することにより固形物として、収率61%で調製した。1
H−NMR(CDCl3,300MHz)δ7.20(d,1H),6.75(s
,1H),6.60(d,1H),4.89−5.19(m,5H),4.73(d
,1H),4.47−4.60(m,4H),4.36(dd,1H),4.02−
4.13(m,2H),3.80(t,1H),3.55−3.67(m,2H),
2.14(s,3H),2.08(s,3H),2.03(s,3H),2.02(
s,6H),2.01(s,3H),および2.00ppm(s,3H)。
実施例4
工程1
5−(ヘプタ−O−アセチル−β−
マルトシルオキシメチル)−2−クロロ−1−ニトロベンゼン
表題化合物は、実施例1の工程1に記載の手順により、4−クロロ−3−ニト
ロベンジルアルコールおよびアセトブロモマルトースならびにクエンチ工程に飽
和NaCl用いて、収率50%で調製した。フラッシュクロマトグラフィー(C
H2Cl2:EtOAc(5:1))によって精製して、表題化合物を得た。部分
的な1H−NMR(CDCl3,300MHz)δ7.83(d,1H),7.53
(d,1H),7.42(dd,1H),5.42(d,1H),5.36(t,
1H),5.06(t,1H),2.15(s,3H),2.11(s,3H),
2.04(s,3H),2.03(s,3H),2.02(s,3H),および2.
01ppm(s,3H)。
工程2
5−(ヘプタ−O−アセチル−β−
マルトシルオキシメチル)−2−クロロフェニルアミン
表題化合物は、実施例1の工程2の手順により、5−(ヘプタ−O−アセチル
−β−マルトシルオキシメチル)−2−クロロ−1−ニトロベンゼンから、収率
96%で調製した。粗生成物は、固形物として得て、さらに精製することなく用
いた。部分的な1H−NMR(CDCl3,300MHz)δ7.20(d,1H
),6.73(d,1H),6.60(dd,1H),5.41(d,1H),5.
30−5.39(m,2H),5.23(t,1H),5.05(t,1H),4.
83−4.89(m,2H),4.74(d,1H),2.16(s,3H),2.
11(s,3H),2.032(s,3H),2.027(s,3H),および2
.00ppm(s,6H)。
実施例5
工程1
5−(ヘプタ−O−アセチル−β−
ラクトシルオキシメチル)−2−メチル−1−ニトロベンゼン
表題化合物は、実施例1の工程1に記載の手順により、4−クロロ−3−ニト
ロベンジルアルコールおよびアセトブロモラクトースならびにクエンチ工程に飽
和NaClを用いて、収率51%で調製した。まずフラッシュクロマトグラフィ
ー(CH2Cl2:EtOAc(4:1))に付した後、再びフラッシュクロマト
グラフィー(CH2Cl2:EtOAc(9:1))に付すことによって精製して
、表題化合物を固形物として得た。部分的な1H−NMR(CDCl3,300M
Hz)δ7.82(d,1H),7.53(d,1H),7.42(dd,1H)
,5.35(d,1H),5.21(s,1H),4.87(d,1H),4.66
(d,1H),2.15(s,3H),2.13(s,3H),2.06(s,6
H),2.05(s,6H),および1.97ppm(s,3H)。
工程2
5−(ヘプタ−O−アセチル−β−
ラクトシルオキシメチル)−2−クロロフェニルアミン
表題化合物は、実施例1の工程2の手順1により、5−(ヘプタ−O−アセチ
ル−β−ラクトシルオキシメチル)−2−クロロ−1−ニトロベンゼンから、収
率94%で調製した。粗生成物は、固形物として得て、さらに精製することなく
用いた。部分的な1H−NMR(CDCl3,300MHz)δ7.19(d,1
H),6.72(d,1H),6.59(dd,1H),5.35(d,1H),
5.08−5.20(m,2H),4.73(d,1H),2.15(s,3H),
2.14(s,3H),2.06(s,3H),2.05(s,3H),2.02(
s,3H),および1.97ppm(s,3H)。
実施例6
工程1
3,5−ビス(ヘプタ−O−アセチル−β−D−
セロビオシルオキシメチル)−1−ニトロベンゼン
表題化合物は、実施例1の工程1に記載の手順により、1当量の5−ニトロ−
m−キシレン−α,α'−ジオール、2当量のアセトブロモセロビオース、および
2当量のすべての他の試薬ならびにクエンチ工程に飽和NaClを用いて、収率
42%で調製した。まずフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/CH2C
l2(3:1))に付した後、エーテルから摩砕することによって精製した。1H−
NMR(CDCl3,300MHz)δ8.10(s,2H),7.48(s,1
H),4.88−5.30(m,12H),4.68(d,2H),4.52−4.
59(m,6H),4.38(dd,2H),4.0−4.13(m,4H),3.
82(t,2H),3.58−3.68(m,4H),2.13(s,6H),2.
08(s,6H),2.07(s,6H),2.03(s,12H),2.01(
s,6H),および1.98ppm(s,6H)。
工程2
3,5−ビス(ヘプタ−O−アセチル−β−D−
セロビオシルオキシメチル)フェニルアミン
表題化合物は、実施例1の工程2の手順により、3,5−ビス(β−D−セロ
ビオシルオキシメチル)−1−ニトロベンゼンを用いて、収率54%で調製した
。EtOAc/石油エーテル(1:1)を用いて精製した。1H−NMR(CD
Cl3,300MHz)δ6.73(bs,2H),6.67(bs,1H),5.
03−5.30(m,6H),4.97(d,2H),4.91(d,2H),4.
75(d,2H),4.49−4.61(6H),4.37(dd,2H),4.02
−4.13(m,6H),3.81(t,2H),3.57−3.69(m,4H)
,2.15(s,6H),2.08(s,6H),2.03(s,6H),2.01
(s,18H),および1.98ppm(s,6H)。
実施例7
工程1
3,5−ビス(テトラ−O−アセチル−β−D−
グルコシルオキシメチル)−1−ニトロベンゼン
表題化合物は、実施例1の工程1に記載の手順により、1当量の5−ニトロ−
m−キシレン−α,α'−ジオール、2当量のアセトブロモグルコース、および2
当量のすべての他の試薬ならびにクエンチ工程に飽和NaClを用いて調製した
。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/CH2Cl2(1:4〜1:2)
)によって精製して、収率29%のほとんど純粋な表題化合物を得た。これはさ
らに精製することなく用いた。
工程2
3,5−ビス(テトラ−O−アセチル−β−D−
グルコシルオキシメチル)フェニルアミン
表題化合物は、実施例1の工程2の手順により、5.29gの3,5−ビス(テ
トラ−O−アセチル−β−D−グルコシルオキシメチル)−1−ニトロベンゼン
を用いて調製した。フラシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/EtOAc(3
:2))によって精製して、2.00g(収率39%)の表題化合物を黄色の油状
物として得た。部分的な1H−NMR(CDCl3,300MHz)δ6.56(
s,3H),5.0−5.2(m,6H),4.8(d,2H),4.4−4.6(
m,4H),3.7ppm(brd,2H)。
実施例8
工程1
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−メチル−
5−(β−グルコピラノシルオキシメチル)フェニル]アミド}
THF(35mL)中における5−(テトラ−O−アセチル−β−グルコピラ
ノシルオキシメチル)−2−メチルフェニルアミン(1.51g、3.22ミリモ
ル)および3.22ミリモルのトリエチルアミンの溶液に、285mg(1.01
ミリモル)のベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸クロリドを添加した。この反
応混合物を4時間撹拌し、MeOHでクエンチし、CH2Cl2で希釈し、H2O
で洗浄した。有機相を(MgSO4で)乾燥させ、濃縮して油状物とした。これ
はフラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2:EtOAc(1:1))によっ
て精製して、粗生成物(1.17g、収率70%)を得た。MeOH(25mL
)中における983mg(0.631ミリモル)のこの粗製物の溶液に、1N N
aOH(9.47mL、9.47ミリモル)を添加した。50℃で3時間撹拌した
後、この反応混合物を1N HCl(7.58mL、7.58ミリモル)でクエン
チし、生成物を濾過によって単離した。真空中で乾燥させて、700mg(収率
100%)の粗製の表題化合物を得た。この固形物をH2Oに懸濁して付加的な
塩を除去し、純粋な表題化合物を得た。融点>200℃;1H−NMR(DMS
O−d6,400MHz)δ10.3(s,3H),8.73(s,3H),7.3
7(s,3H),7.28(d,3H),7.23(d,3H),5.10(br
,3H),
4.84(d、3H),4.57(d,3H),4.25(d,3H),3.69(
dd,3H),3.44−3.49(m,3H),3.0−3.2(m,6H),お
よび2.28ppm(s,9H);13C−NMR(DMSO−d6,100MHz
)δ164.6,136.1,135.3,133.0,130.3,129.8,1
26.0,125.7,102.1,77.0,76.8,73.6,70.2,69.
2,61.2,および17.8ppm;質量スペクトル(−FAB)m/e 10
52.3,890.3;IR(KBr)1650cm-1。元素分析の結果−計算値
(C51H63N3O21・4H2Oとして):C,54.40;H,6.35;N,3.
73。実測値:C,54.44;H,6.15;N,3.68。
工程2
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸
トリス{[2−メチル−5−(テトラ−O−スルファト− β−グルコピラノシルオキシメチル)フェニル]アミド}ドデカナトリウム塩
DMF(30mL)中におけるベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{
[2−メチル−5−(β−グルコピラノシルオキシメチル)フェニル]アミド}
(761mg、0.748ミリモル)および三酸化硫黄(6.24g、44.9ミ
リモル)の溶液を70℃で4日間撹拌した。この反応混合物を室温にてH2Oで
クエンチし、濃縮した。セファデックス(Sephadex)G−10クロマトグラフィ
ー(H2O溶出)に付した後、ダウエックス(Dowex)50×8強酸性樹脂(Na
型)のカラムを用いてカチオンイオン交換することによって精製して、825m
g(収率48%)の表題化合物を無色の固形物として得た。融点>200℃;1
H−NMR(D2O,400MHz)δ8.73(s,3H),7.46−7.51
(bm,9H),4.97−5.00(m,6H),4.87(d,3H),4.7
6(t,3H),4.47−4.53(m,6H),4.22−4.27(m,3H
),4.15−4.19(m,3H),および2.37ppm(s,9H);13C
−NMR(D2O,100MHz)δ168.3,135.3,135.2,135
.0,134.3,131.1,130.0,128.1,127.0,99.1,7
6.2,75.9,73.4,72.6,70.7,67.8,および16.8pp
m;質量スペクトル(エレクトロスプレイ)(m−zNa)/z 736.5(m−
3Na)3-,546.2(m−4Na)4-,および433.4(m−5Na)5-。
元素分析の結果−計算値(C51H51N3Na12O51S12・12H2O):C,24
.55;H,3.01;N,1.68;S,15.40。実測値:C,24.29;
H,2.78;N,2.69;S,15.84。
実施例9
工程1
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−メチル−
5−(β−セロビオシルオキシメチル)フェニル]アミド}
THF(35mL)中における5−(テトラ−O−アセチル−β−セロビオシ
ルオキシメチル)−2−メチルフェニルアミン(1.49g、1.97ミリモル)
および217μL(1.97ミリモル)のトリエチルアミンの溶液に、174m
g(0.66ミリモル)のベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸クロリドを添加
した。この反応混合物を4時間撹拌し、MeOHでクエンチし、CH2Cl2で希
釈し、H2Oで洗浄した。有機相を(MgSO4で)乾燥させ、濃縮して油状物と
した。これをエーテルと共に摩砕することによって精製して、873mg(収率
55%)のオフホワイト色の固形物を得た。MeOH(25mL)中におけるこ
の粗製物の溶液に、1N NaOH(9.1mL、9.1ミリモル)を添加した。
50℃で3時間撹拌した後、この反応混合物を1N HCl(7.64mL、7.
64ミリモル)でクエンチし、生成物を濾過によって単離した。真空中で乾燥さ
せて、408mg(収率80%)の表題化合物を得た。融点>200℃;部分的
な1H−NMR(DMSO−d6,400MHz)δ10.33(s,3H),8.
75(s,3H),7.36(s,3H),7.27(d,3H),7.23(d
,3H),5.2−5.3(br,6H),5.00(br,6H),4.84(d
,3H),4.70(s,3H),4.56−4.64(m,9H),4.33(d
,3H),4.26(d,3H),3.77(dd,3H),3.64−3.70(
m,6H),および2.27ppm(s,9H);13C−NMR(DMSO−d6
,100MHz)δ164.5,136.0,135.9,135.1,133.0
,1
30.2,129.8,125.9,125.6,103.2,101.8,80.5
,76.8,76.4,75.0,74.9,73.3,73.2,70.0,69.4
,61.0,60.4,および17.8ppm;質量スペクトル((−)−FAB
)1539.2(m)。
工程2
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸
トリス{[2−メチル−5−(ヘプタ−O−スルファト−β−
セロビオシルオキシメチル)フェニル]アミド}ヘンエイコサナトリウム塩
DMF(30mL)中における279mg(149ミリモル)のベンゼン−1
,3,5−トリカルボン酸トリス−{[2−メチル−5−(β−セロビオシルオキ
シメチル)フェニル]アミド}および三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体(3.
19g)の溶液を70℃で4日間撹拌した。この反応混合物を室温にてH2Oで
クエンチし、真空中で濃縮した。残渣をセファデックス(Sephadex)G−10ク
ロマトグラフィー(H2O溶出)によって精製した。ダウエックス(Dowex)50
×8強酸性樹脂(Na型)のカラムを用いてカチオン交換して、375mgの表
題化合物を黄褐色の固形物として得た。融点>200℃;部分的な1H−NMR
(D2O,400MHz)δ8.70(s,3H),7.44−7.52(m,9H
),4.99(d,3H),4.97(d,3H),4.86(d,3H),4.8
3(d,3H),4.68(d,3H),4.64(d,3H),4.58(dd,
3H),4.01−4.04(m,6H),および2.34ppm(s,9H);13C
−NMR(D2O,100MHz)δ168.17,135.4,135.0,13
4.9,134.2,131.0,129.9,127.9,126.7,99.9,
99.2,77.6,77.34,77.31,77.02,74.3,73.6,7
3.4,73.0,70.6,67.6,66.5,および16.7ppm;質量スペ
クトル(エレクトロスプレイ)(m−zNa)/z 897.8(m−4Na)4-,
713.2(m−5Na)5-,および590.8(m−6Na)6-。元素分析の結
果−計算値(C69H72N3Na21O99S21・18H2O):C,20.67;H,
2.70;N,1.05;S,16.78。実測値:C,20.35;H,2.78
;
N,1.00;S,14.19。
実施例10
工程1
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸
トリス{[5−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−
マルトシルオキシメチル)−2−クロロフェニル]アミド}
173μL(1.24ミリモル)のトリエチルアミンを含有するTHF(20
mL)中における962mg(1.24ミリモル)の5−(ヘプタ−O−アセチ
ル−β−マルトシルオキシメチル)−2−クロロフェニルアミンの溶液に、11
0mg(0.413ミリモル)のベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸クロリド
を添加した。この反応混合物を90分間撹拌し、MeOHでクエンチし、CH2
Cl2で希釈し、H2Oで洗浄した。有機相を(MgSO4で)乾燥させ、濃縮し
て明るい黄色の固形物とした。フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2:E
tOAc(2:1〜1:1))によって精製して、607mg(収率59%)の
表題化合物を無色の固形物として得た。融点132℃(分解):部分的な1H−
NMR(CDCl3,400MHz)δ8.66(s,3H),8.65(s,3H
),8.48(d,3H),7.42(d,3H),7.08(dd,3H),5.
40(d,3H),5.33(t,3H),5.23(t,3H),5.03(t
,3H),4.82−4.93(m,9H),4.66(d,3H),4.62(d
,3H),4.53(dd,3H),3.67−3.70(m,3H),2.14(
s,3H),2.10(s,3H),2.04(s,3H),2.01(s,3H
),1.99(s,3H),1.995(s,3H),1.986(s,3H),
および1.97ppm(s,3H);13C−NMR(CDCl3,100MHz)
δ170.5,170.2,169.9,169.7,169.4,162.9,13
7.0,136.1,134.1,129.2,128.9,124.2,123.1
,121.1,99.1,95.5,75.4,72.6,72.2,72.0,70.
1,70.0,69.3,68.5,68.0,62.8,61.5,20.9,20.
7,20.6,および20.5ppm;質量スペクトル(ポジティブ(Ca2+)エ
レクトロ
スプレイ)1262(m+Ca2+)/2。元素分析の結果−計算値(C108H126
Cl3N3O57・1H2O):C,51.83;H,5.16;N,1.68。実測値
:C,51.64;H,5.11;N,1.53。
工程2
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−クロロ−
5−(β−D−マルトシルオキシメチル)フェニル]アミド}
MeOH(15mL)における983mg(0.194ミリモル)のベンゼン
−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[5−(ヘプタ−O−アセチル−β−D−
マルトシルオキシメチル)−2−クロロフェニル]アミド}の溶液に1N Na
OH(4.67mL、4.67ミリモル)を添加した。50℃で4時間撹拌した後
、この反応混合物を1N HCl(4.08mL、4.08ミリモル)でクエンチ
し、生成物を濾過によって単離した。真空中で乾燥させて、309mg(収率9
9%)の表題化合物を得た。融点>200℃;部分的な1H-NMR(DMSO−
d6,400MHz)δ10.56(s,3H),8.78(s,3H),7.60
(d,3H),7.56(d,3H),7.37(dd,3H),5.02(d,
3H),4.89(d,3H),および4.63ppm(d,3H);13C−NM
R(DMSO−d6,100MHz)δ164.57,137.83,134.73
,134.61,130.13,129.36,128.67,127.53,12
6.85,102.12,100.75,79.54,76.37,75.28,73
.45,73.24,73.02,72.42,69.87,68.72,60.76
,および60.64ppm;質量スペクトル((−)−FAB)m/z 1598
.4(M−H),1436.3,および1274.3。元素分析の結果−計算値(
C66H84Cl3N3O36・9H2Oとして):C,44.94;H,5.83;N,
2.38。実測値:C,44.48;H,5.46;N,2.78。
工程3
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸
トリス{[2−クロロ−5−(ヘプタ−O−スルファト−β−D−
マルトシルオキシメチル)フェニル]アミド}ヘンエイコサナトリウム塩
DMF(20mL)中におけるベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス−
{[2−クロロ−5−(β−D−マルトシルオキシメチル)フェニル]アミド}
(208mg、130ミリモル)および三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体(1
.90g)の溶液を70℃で2.5日間撹拌した。この反応混合物を室温にてH2
Oでクエンチし、真空中で濃縮した。残渣をセファデックス(Sephadex)G−1
0クロマトグラフィー(H2O溶出)によって精製した。ダウエックス(Dowex)
50×8強酸性樹脂(Na型)のカラムを用いてカチオン交換して、400mg
(収率82%)の表題化合物を黄褐色の固形物として得た。融点>178℃(分
解);部分的な1H−NMR(D2O,400MHz)δ8.74(s,3H),
7.67−7.70(m,6H),7.57(d,3H),5.62(d,3H),
5.09(d,3H),5.04(d,3H),4.66(t,3H),4.61(
dd,3H),および4.52ppm(t,3H);13C−NMR(D2O,10
0MHz)δ168.1,136.9,134.7,132.9,130.3,13
0.1,129.7,128.6,127.6,98.8,94.1,77.4,76.
0,74.8,73.4,73.2,72.3,71.8,69.9,69.7,67.
6,および66.1ppm;質量スペクトル(エレクトロスプレイ)(m−zN
a)/z 1225.0(m−3Na)3-,921.8(m−4Na)4-,725.
6(m−5Na)5-,および601(m−6Na)6-。元素分析の結果−計算値
(C66H63Cl3N3Na21O99S21・4Na2SO4・21H2Oとして):C,
16.90;H,2.25;N,0.90;S,17.09。実測値:C,16.7
7;H,2.29;N,0.97;S,16.90。
実施例11
工程1 ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[5−(ヘプタ−O−アセチル−
β−D−セロビオシルオキシメチル)−2−クロロフェニル]アミド}
254μL(1.85ミリモル)のトリエチルアミンを含有するTHF(25
mL)中における1.43g(1.85ミリモル)の5−(ヘプタ−O−アセチル
−β−セロビオシルオキシメチル)−2−クロロフェニルアミンの溶液に、
163mg(0.615ミリモル)のベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸クロ
リドを添加した。この反応混合物を90分間撹拌し、MeOHでクエンチし、C
H2Cl2で希釈し、H2Oで洗浄した。有機相を(MgSO4で)乾燥させ、濃縮
してオフホワイト色の固形物とした。フラッシュクロマトグラフィー(CH2C
l2:EtOAc(1:1))によって精製して、937mg(収率62%)の
生成物を得た。白色の結晶(融点>200℃)として得た分析試料は、別の実験
から調製した。13C−NMR(CDCl3,100MHz)δ170.5,170
.4,170.2,169.8,169.6,169.3,169.0,163.0,
137.0,136.1,134.0,129.2,128.9,124.7,123
.2,121.2,100.75,99.4,76.37,72.90,72.8,7
2.47,71.93,71.59,71.46,70.1,67.8,61.8,6
1.5,20.87,20.66,20.60,および20.50ppm;質量スペ
クトル(ポジティブ(Ca2+)エレクトロスプレイ)(m+Ca)2+/2 12
62。元素分析の結果−計算値(C108H126Cl3N3O57・2H2Oとして):
C,51.46;H,5.20;N,1.67。実測値:C,51.44;H,4.
88;N,1.71。
工程2
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−クロロ−
5−(β−D−セロビオシルオキシメチル)フェニル]アミド}
MeOH(25mL)中における917mg(0.375ミリモル)のベンゼ
ン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[5−(ヘプタ−O−アセチル−β−D
−セロビオシルオキシメチル)−2−クロロフェニル]アミド}の溶液を、9.
0mL(9.0ミリモル)の1N NaOHで処理した。50℃で3時間撹拌した
後、この反応混合物を室温にて1N HCl(7.9mL、7.9ミリモル)でク
エンチし、10分間撹拌した。固形物を採取し、真空中で乾燥させて、579m
g(収率96%)の表題化合物を無色の固形物として得た。融点>200℃;部
分的な1H−NMR(DMSO−d6,400MHz)δ10.57(s,3H),
8.78(s,3H),7.58(s,3H),7.55(d,3H),7.36
(s,3H),4.87(d,3H),4.34(d,3H),4.25(d,3
H),3.77(d,3H),および3.68ppm(d,3H);13C−NMR
(DMSO−d6,100MHz)δ164.6,137.9,134.7,134
.6,130.2,129.4,128.7,127.5,126.9,103.2,
102.0,80.5,76.8,76.5,75.0,73.3,73.2,70.0
,68.8,61.0,および60.4ppm;IR(KBr)1655cm-1;
質量スペクトル(+FAB)m/z 1622.2(M+Na)。元素分析の結果
−計算値(C66H84Cl3N3O36・5H2Oとして):C,46.86;H,5.
60;N,2.48。実測値:C,46.84;H,5.46;N,2.37。
工程3
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸
トリス[2−クロロ−5−(ヘプタ−O−スルホ−β−D−
セロビオシルオキシメチル)フェニル]アミド}ヘンエイコサナトリウム塩
DMF(25mL)中における403mg(0.252ミリモル)のベンゼン
−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−クロロ−5−(β−D−セロビオシ
ルオキシメチル)フェニル]アミド}および三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体
(3.89g、28ミリモル)の溶液を70℃で5日間撹拌した。この反応混合
物を室温にてH2Oでクエンチし、真空中で濃縮した。残渣をセファデックス(S
ephadex)G−10クロマトグラフィー(H2O溶出)によって精製した。ダウエ
ックス(Dowex)50×8強酸性樹脂(Na型)のカラムを用いてカチオン交換
して、949mgの表題化合物を黄褐色の固形物として得た。融点>178℃(
分解):部分的な1H−NMR(D2O,400MHz)δ8.73(s,3H)
,7.70(s,3H),7.67(d,3H),7.57(d,3H),4.99
−5.03(m,6H),4.68(t,3H),4.64(t,3H),4.60
(dd,3H),4.24(d,3H),4.20(t,3H),および4.02
−4.05ppm(m,3H);13C−NMR(D2O,100MHz)δ168
.1,139.0,134.7,132.8,130.3,130.0,129.6,
128.5,127.4,99.9,99.4,77.5,77.4,77.3,
77.0,74.3,73.7,73.3,73.1,70.1,67.6,および6
6.6ppm。元素分析の結果−計算値(C66H63Cl3N3Na21O99・33H2
Oとして):C,18.28;H,2.93;N,0.97;S,15.53。実測
値:C,18.20;H,2.67;H,0.76;S,15.51。キャピラリー
電気泳動は、98%以上の純度を示した。
実施例12
工程1
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−クロロ−
5−(β−D−ラクトシルオキシメチル)フェニル]アミド}
178μL(1.28ミリモル)のトリエチルアミンを含有するTHF(20
mL)中における993mg(1.28ミリモル)の5−(ヘプタ−O−アセチ
ル−β−ラクトシルオキシメチル)−2−クロロフェニルアミンの溶液に、11
3mg(0.427ミリモル)のベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸クロリド
を添加した。この反応混合物を90分間撹拌し、MeOHでクエンチし、CH2
Cl2で希釈し、H2Oで洗浄した。有機相を(MgSO4で)乾燥させ、濃縮し
てオフホワイト色の固形物とした。フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2
:EtOAc(2:1〜1:1))によって精製して、431mg(収率41%
)の生成物を得た。MeOH(15mL)中における431mg(0.174ミ
リモル)の化合物の溶液を4.2mL(4.2ミリモル)の1N NaOHで処理
した。50℃で4時間撹拌した後、この反応混合物を室温にて1N HCl(3.
6mL、3.6ミリモル)でクエンチした。固形物を採取し、真空中で乾燥させ
て、193mg(収率69%)の表題化合物を無色の固形物として得た。融点>
200℃;部分的な1H−NMR(DMSO−d6,400MHz)δ10.58
(s,3H),8.79(s,3H),7.59(d,3H),7.56(d,3
H),7.36(dd,3H),4.88(d,3H),4.63(d,3H),
4.35(d,3H),4.20(d,3H),3.79(d,3H),および3.
11(s,3H);13C−NMR(DMSO−d6,100MHz)δ164.6
,137.8,134.7,134.6,130.2,129.4,128.7,12
7.5,126.
8,103.8,102.0,80.7,75.5,75.0,74.9,73.22
,73.19,70.5,68.8,68.1,60.5,および60.3ppm;質
量スペクトル((−)−FAB)m/z 1598.8および1600.8(両方と
もM−H)。元素分析の結果−計算値(C66H84Cl3N3O36・9H2Oとして
):C,44.94;H,5.83;N,2.38。実測値:C,44.24;H,
5.38;N,2.29。
工程2
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸
トリス−{[2−クロロ−5−(ヘプタ−O−スルファト−β−D−
ラクトシルオキシメチル)フェニル]アミド}ヘンエイコサナトリウム塩
DMF(20mL)中における126mg(0.079ミリモル)のベンゼン
−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[2−クロロ−5−(β−D−ラクトシル
オキシメチル)フェニル]アミド}および三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体(
1.5g、8.26ミリモル)の溶液を70℃で2.5日間撹拌した。この反応混
合物を室温にてH2Oでクエンチし、真空中で濃縮した。残渣をセファデックス
(Sephadex)G−10クロマトグラフィー(H2O溶出)によって精製した。ダ
ウエックス(Dowex)50×8強酸性樹脂(Na型)のカラムを用いてカチオン
交換して、207mg(収率70%)の表題化合物を黄褐色の固形物として得た
。融点>171℃(分解);部分的な1H−NMR(D2O,400MHz)δ8
.73(s,3H),7.68(s,3H),7.67(d,3H),7.58(d
,3H),5.13(d,3H),5.08(d,3H),5.01(d,3H)
,4.43(t,3H),および4.24ppm(t,3H);13C−NMR(D2
O,100MHz)δ168.1,137.0,134.7,132.8,130.
3,130.1,130.0,129.6,128.5,127.5,100.9,9
9.2,77.6,77.0,75.6,75.3,75.04,74.97,73.2
,71.7,70.0,66.5,および66.3ppm;質量スペクトル(エレク
トロスプレイ(m−zNa)/z 913(M−4Na)4-および725.9(M
−5Na)5-。元素分析の結果−計算値(C66H63Cl3N3Na21O99S21・2
1
H2Oとして):C,19.23;H,2.57;N,1.02;S,16.33。
実測値:C,19.51;H,2.61;N,1.11;S15.97。
実施例13
工程1
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[3,5−ビス−(テトラ−
O−アセチル−β−D−グルコピラノシルオキシメチル)フェニル]アミド}
147μL(1.06ミリモル)のトリエチルアミンを含有するTHF(20
mL)中における861mg(1.06ミリモル)の3,5−ビス(テトラ−O−
アセチル−β−D−グルコシルオキシメチル)フェニルアミンの溶液に、93.
6mg(0.353ミリモル)のベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸クロリド
を添加した。この反応混合物を90分間撹拌し、MeOHでクエンチし、CH2
Cl2で希釈し、H2Oで洗浄した。有機相を(MgSO4で)乾燥させ、濃縮し
て明るい黄色の固形物とした。エーテルと共に摩砕することによって精製して、
849mg(0.327ミリモル)の表題化合物を無色の結晶として得た。融点
120〜129℃;1H−NMR(CDCl3,400MHz)δ9.1(bs,
3H),8.73(s,3H),7.67(s,6H),6.99(s,3H),
5.18(t,6H),5.10(t,6H),5.03(dd,6H),4.84
(d,6H),4.65(d,6H),4.61(d,6H),4.27(br s
,12H),3.72−3.74(m,6H),2.06(s,18H),2.01
(s,36H),および1.97ppm(s,18H);13C−NMR(CDC
l3,100MHz)δ171.2,170.2,169.4,163.9,138.
4,138.2,135.7,129.2,123.1,119.5,100.1,7
2.8,71.9,71.3,71.1,68.4,62.0,20.8,20.64,
および20.56ppm。元素分析の結果−計算値(C117H141N3O63・2H2
Oとして):C,53.36;H,5.55;N,1.60。実測値:C,53.2
9;H,5.29;N,1.61。
工程2
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸
トリス{[3,5−ビス−(テトラ−O−スルファト−β−D−
グルコシルオキシメチル)フェニル]アミド}テトラコサナトリウム塩
8.1mL(8.1ミリモル)の1N NaOHを含有するMeOH(15mL
)中における780mg(0.300ミリモル)のベンゼン−1,3,5−トリカ
ルボン酸トリス{[3,5−ビス−(テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピ
ラノシルオキシメチル)フェニル]アミド}の溶液を50℃で5時間撹拌した。
この反応混合物を室温に冷却し、1N HCl (7.2mL、7.2ミリモル)で
クエンチした。生成物であるベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[3
,5−ビス−(β−D−グルコシルキシメチル)フェニル]アミド}を採取し(
338mg、収率81%)、次の反応に直接用いた。部分的な1H−NMR(D
MSO−d6,400MHz)δ10.73(s,3H),8.74(s,3H)
,7.78(s,6H),7.22(s,3H),4.88(d,6H),4.57
(d,6H),4.29(d,6H),3.71(d,6H),および3.48(
dd,6H);13C−NMR(DMSO−d6,100MHz)δ164.5,1
38.7,138.4,135.3,129.8,123.0,119.1,102.
2,77.0,76.8,73.5,70.1,70.0,および61.1ppm。
DMF(25mL)中における317mg(0.200ミリモル)のベンゼン
−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[3,5−ビス−(β−D−グルコシルオ
キシメチル)フェニル]アミド}および三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体(3
.59g、25.8ミリモル)の溶液を70℃で3日間撹拌した。この反応混合物
を室温にてH2Oでクエンチし、真空中で濃縮した。残渣をセファデックス(Sep
hadex)G−10クロマトグラフィー(H2O溶出)によって精製して、黄色の固
形物を得た。これは、NMRによると、残渣の硫酸トリメチルアンモニウムを少
量含有していた。ダウエックス(Dowex)50×8強酸性樹脂(Na型)のカラ
ムを用いてカチオン交換して、771mg(収率約95%)の表題化合物(融点
174℃)を無色の固形物として得た。1H−NMR(D2O,400MHz)δ
8.63(s,3H),7.68(br s,6H),7.44(br s,3H)
,5.02(d,6H),4.98(d,6H),4.85(d,6H),
4.54(t,6H),4.46−4.50(m,12H),4.24(dd,6H
),および4.16ppm(dt,6H);13C−NMR(D2O,100MHz
)δ167.7,138.0,137.1,135.3,129.9,125.3,1
22.0,99.5,76.2,75.9,73.4,72.6,70.9,および6
7.6ppm。元素分析の結果−計算値(C69H69N3Na24O111S24・24H2
O・4Na2SO4として):C,16.45;H,2.34;N,0.83;S,
17.82。実測値:C,16.51;H,2.17;N,0.84;S18.17
。
実施例14
工程1
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[3,5−ビス−(β−D−
セロビオシルオキシメチル)フェニル]アミド}
80.6μL(1.28ミリモル)のトリエチルアミンを含有するTHF(25
mL)中における802mg(0.577ミリモル)の3,5−ビス(ヘプタ−O
−アセチル−β−D−セロビオシルオキシメチル)フェニルアミンの溶液に、5
1.2mg(0.193ミリモル)のベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸クロリ
ドを添加した。この反応混合物を90分間撹拌し、MeOHでクエンチし、CH2
Cl2で希釈し、H2Oで洗浄した。有機相を(MgSO4で)乾燥させ、濃縮し
て明るい黄色の固形物とした。CH2Cl2/石油エーテルから摩砕することによ
って精製して、777mg(収率94%)の生成物を得た。MeOH(25mL
)中における777mg(0.180ミリモル)のこの化合物の溶液を8.1mL
(8.1ミリモル)の1N NaOHで処理した。50℃で2.5時間撹拌した後
、この反応混合物を室温にて1N HCl(7.6mL、7.6ミリモル)でクエ
ンチした。固形物を採取し、MeOH/H2O(3:7)の溶出を用いた逆相ク
ロマトグラフィー(RPシリカ60)に付した後、セファデックス(Sephadex)
G−10クロマトグラフィー(H2O溶出)に付すことによって精製して、26
2mg(収率57%)の表題化合物を無色の固形物として得た。融点>171℃
(分解);13C−NMR(D2O,100MHz)δ165.3,138.4,1
37.2,134.0,130.0,123.9,119.9,102.6,101.
7,78.7,75.9,75.5,74.6,74.2,73.1,72.8,70.
6,69.4,60.5,および60.0ppm。
工程2
ベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸 トリス{[3,5−ビス−(ヘプタ−O−スルファト−β−D−セロビオシル−
オキシメチル)フェニル]アミド}テトラテトラコンタナトリウム塩
DMF(25mL)中における139mg(0.0543ミリモル)のベンゼ
ン−1,3,5−トリカルボン酸トリス{[3,5−ビス−(β−D−ラクトシル
オキシメチル)フェニル]アミド}および三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体(
1.68g、12.07ミリモル)の溶液を70℃で3日間撹拌した。この反応混
合物を室温にてH2Oでクエンチし、真空中で濃縮した。残渣をセファデックス
(Sephadex)G−10クロマトグラフィー(H2O溶出)によって精製した。ダ
ウエックス(Dowex)50×8強酸性樹脂(Na型)のカラムを用いてカチオン
交換して、317mg(収率85%)の表題化合物を黄褐色の固形物として得た
。融点>180℃(分解);部分的な1H−NMR(D2O,400MHz)δ8
.64(s,3H),7.67(s,6H),7.46(s,3H),5.02(d
,6H),4.96(d,6H),4.64(t,6H),および3.88−4.0
1(m,12H);13C−NMR(D2O,100MHz)δ167.7,138
.0,137.0,135.3,129.9,125.1,121.8,99.8,7
7.7,77.5,77.4,77.0,74.2,73.5,73.4,72.9,7
1.0,67.6,66.1ppm;質量スペクトル(エレクトロスプレイ)(m
−zNa)/z 883.4(m−8Na)8-,738.2(m−9Na)9-,6
62.0(m−10Na)10-,599.5(m−11Na)11-。元素分析の結果
−計算値(C105H111N3Na42O195S42・42H2Oとして):C,16.59
;H,2.58;N,0.55;S,17.71。実測値:C,16.47;H,2
.86;N,0.45;S,14.72。
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(72)発明者 ソル,リチャード・マイケル
アメリカ合衆国08648ニュージャージー州
ローレンスビル、グレン・アベニュー
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