【発明の詳細な説明】
アミノカルボン酸廃棄物質のアミドカルボン酸へのリサイクル方法
発明の分野
本発明は、アミノカルボン酸オリゴマー又はポリマー及びアミドカルボン酸オ
リゴマー又はポリマーから選択された廃棄物質のアミドカルボン酸へのリサイク
ル方法に関する。
発明の背景
アミドカルボン酸は、商業で使用される多くの化学薬品の製造のための工業的
化学中間体である。アミドカルボン酸は、ラクタムをカルボン酸と反応させるこ
とによって製造される。アミドカルボン酸はまた、カルボン酸、カルボン酸クロ
リド、カルボン酸無水物又はカルボン酸エステルを、アミノカルボン酸と反応さ
せることによっても製造される。アミドカルボン酸を生成するこれらの方法は、
アミド化反応と呼ばれている。
塩酸のような加水分解促進剤の存在下に、ラクタムを加水分解により対応する
アミノカルボン酸に転換することは知られている。しかしながら、純粋のアミノ
カルボン酸は直接的には得られない。促進剤として塩酸を使用する場合には、ア
ミノカルボン酸塩酸塩が得られ、遊離のアミノカルボン酸の分離は複雑で高価で
ある。
米国特許第2,453,234号には、ラクタム1モル当たり水少なくとも10モルによ
りラクタムを加水分解して、アミノカルボン酸を製造することによるアミノカル
ボン酸の製造方法が開示されている。英国特許第648,889号には、脂肪族又は脂
環式ラクタムを、ラクタム1モル当たり水20モル以上の存在下で加熱することに
よるアミノカ
ルボン酸の製造方法が開示されている。米国特許第2,956,068号には、ラクタム
を遊離カルボン酸と触媒量の水の存在下で反応させることによるアミドカルボン
酸の製造方法が開示されている。反応生成物は固体結晶塊として得られ、これは
続いて水中に懸濁され、中和される。この反応生成物には、顕著な量の、カルボ
ン酸鎖と2個又はそれ以上の繰り返しアミノカルボン酸単位から構成されている
アミドカルボン酸オリゴマーが含有されている。これらのアミドカルボン酸オリ
ゴマーは、多くの応用のために望ましくない。
米国特許出願第08/228,611号には、ラクタム加水分解、カルボン酸エステル
加水分解及びアミド化反応を同時に行う、アミドカルボン酸の水性製造方法が開
示されている。この方法には、水、ラクタム又はアミノカルボン酸及びカルボン
酸又はエステルを加熱して反応混合物を生成させ、反応混合物を冷却して水相及
び有機相を含有する2相系を得ることが含まれている。アミドカルボン酸を含有
する有機相を、水相から分離する。反応生成物には、顕著な量の、カルボン酸鎖
と2個又はそれ以上の繰り返しアミノカルボン酸単位から構成されているアミド
カルボン酸オリゴマーが含有されている。これらのアミドカルボン酸オリゴマー
は、多くの応用のために望ましくない。
アミノカルボン酸モノマーを重合させたとき、廃棄物質も生じる。例えば、ナ
イロン6ポリマー(ポリカプロアミド)の製造によって、廃棄物として約8〜10
%の低分子量オリゴマー(抽出可能)が生成する。ナイロン6繊維の製造により
、約5〜12%の固体廃棄物が生じる。Indian Journal of Fibre & Textile Rese arch
、第16巻、1991年3月、46〜51頁によれば、インドでは毎年約7000〜8000メ
ートルトンの固体廃棄物(ナイロン6)が生じている。それで、この抽出可能物
質及び固体廃棄物をリサイクルすることが、経済的及
び環境的理由のために望ましい。
米国特許第4,605,762号には、縮合ポリマーの解重合方法が開示されている。
この方法には、縮合ポリマー廃棄物質を加水分解ゾーン内で水性加水分解に付し
、ポリマー廃棄物質が導入されるレベルより下で加水分解ゾーン内に高圧スチー
ムを導入し、そして加水分解ゾーンの上部から加水分解反応の生成物の水溶液を
取り出すことが含まれている。
米国特許第5,169,870号には、ナイロン6カーペットからカプロラクタムを回
収する方法が開示されている。この方法には、このカーペットをナイロン6及び
非ナイロン6バッキング材料を含有するスクラップに解体することが含まれてい
る。このスクラップは解重合反応器内に供給され、そこでスクラップは解重合触
媒、少なくともナイロン6の融点の温度及び過熱スチームに付されて、カプロラ
クタム含有留出物が生成する。留出物中のカプロラクタムは、他の揮発物から分
離される。
発明の要約
本発明には、アミノカルボン酸及びアミドカルボン酸オリゴマー又はポリマー
廃棄物質のアミドカルボン酸へのリサイクル方法であって、該方法が、
(A)容器内で150℃〜300℃の温度で0.1〜10時間、
(1)1個又はそれ以上のラクタム又はアミノカルボン酸繰り返し単位を有す
るアミノカルボン酸オリゴマー又はポリマー、1個又はそれ以上のラクタム又は
アミノカルボン酸繰り返し単位を有するアミドカルボン酸オリゴマー又はポリマ
ー及びこれらの組合せからなる群から選択されたオリゴマー又はポリマー廃棄物
質、
(2)アミノカルボン酸オリゴマー又はポリマー廃棄物質中に含
有されるアミノカルボン酸の1当量重量当たり0.25〜10当量の、炭素数6〜26で
、カルボン酸、カルボン酸エステル及びこれらの組合せからなる群から選択され
る、カルボン酸化合物、並びに
(3)アミノカルボン酸オリゴマー又はポリマー廃棄物質中に含有されるアミ
ノカルボン酸の1当量重量当たり0.001〜50当量の水を含有する混合物を反応さ
せて、アミドカルボン酸を含有する反応混合物を生成する工程、
(B)工程(A)で生成した反応混合物を、アミドカルボン酸を含有する有機相
と水相との相分離を達成させるための温度まで冷却する工程、
(C)アミドカルボン酸含有有機相を水相から分離する工程、
(D)水、カルボン酸、アミノカルボン酸及びラクタムを含有する低沸点成分を
除去することを含む第一段階及びアミドカルボン酸モノマーを除去することを含
む第二段階からなる2段階蒸留によって、有機相からアミドカルボン酸モノマー
を単離し、アミドカルボン酸オリゴマー及びポリマーの残留物を残す工程、並び
に
(E)工程(D)から、蒸留の第一段階で捕集した低沸点成分を、アミドカルボ
ン酸オリゴマー及びポリマーの残留物と一緒に工程(A)内にリサイクルさせる
工程、
からなる方法が含まれる。
発明の説明
本発明の方法には、アミノカルボン酸及びアミドカルボン酸オリゴマー又はポ
リマー廃棄物質をアミドカルボン酸にリサイクルさせることが含まれる。本発明
の目的のための用語「リサイクル」は、未反応成分のより効率的な転換の目的の
ために及び望ましくない反応副生物を消費するために、反応生成物の一部を方法
の第一工程に
戻す操作を意味する。用語「リサイクル」には、本発明の請求の範囲によって定
義されるもの以外の方法から生じた廃棄物又はスクラップ物質の回収及び再使用
も含まれる。本発明の目的のための用語「アミド」は、少なくとも1個のアミノ
カルボン酸繰り返し単位及び1個のカルボン酸末端基を有する化合物を指す。
本発明の方法には、少なくとも1個の工程が含まれる。工程(A)に於いて、
アミノカルボン酸オリゴマーもしくはポリマー又はアミドカルボン酸オリゴマー
もしくはポリマーから選択されたオリゴマー又はポリマー廃棄物質、カルボン酸
又はエステル及び水が反応器内で一緒にされる。反応器は、加熱することができ
なくてはならず且つ反応の圧力を含まなくてはならない。好ましくは、反応器は
オートクレーブである。工程(A)に於ける反応には、同時に起こる下記の独立
の反応、即ち、カルボン酸及びアルコールを生成するカルボン酸エステルの加水
分解、アミノカルボン酸を生成するアミノカルボン酸オリゴマー又はポリマー廃
棄物質の加水分解、アミノカルボン酸及びカルボン酸を生成するアミドカルボン
酸オリゴマーの加水分解、並びにアミドカルボン酸を生成するためのアミノカル
ボン酸によるカルボン酸のアミド化の3個以下が含まれる。カルボン酸エステル
の加水分解によって生成されるアルコールは、蒸留のような当該技術分野で公知
の方法によって除去される。
成分(1)は、1個もしくはそれ以上のラクタムもしくはアミノカルボン酸繰
り返し単位を有するアミノカルボン酸オリゴマーもしくはポリマーから、又は1
個もしくはそれ以上のラクタムもしくはアミノカルボン酸繰り返し単位を有する
アミドカルボン酸オリゴマーもしくはポリマーから選択されたオリゴマー又はポ
リマー廃棄物質である。この廃棄物質には、アミノカルボン酸及びアミドカルボ
ン酸の組合せ又は混合物が含有されていてもよい。アミノカルボン
酸繰り返し単位は、一般式NH2(CRR′)nCOOHを有し、塩基性アミノ基(NH2)及
び酸性カルボキシル基(COOH)によって特徴付けられる。式中の文字nは1〜26
、好ましくは1〜10である。R基及びR′基は独立に、水素、非置換又は置換直
鎖又は分枝鎖C1〜C20アルキル、非置換又は置換C3〜C8シクロアルキル、C3
〜C8アルケニル、C3〜C8アルキニル及びC6〜C14アリールから選択される。
上記の非置換又は置換C3〜C8シクロアルキル基は、環内に3〜8個の炭素、
好ましくは5個又は6個の炭素を含む脂環式炭化水素基及び1個又は2個のC1
〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ヒドロキシ又はC1〜C4アルカノイルオ
キシで置換されたこれらのシクロアルキル基を指す。
C3〜C8アルケニル基及びC3〜C8アルキニル基は、鎖中に3〜8個の炭素を
含み、それぞれ炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を含む直鎖又は分枝
鎖炭化水素基を表す。
用語「アリール」は、14個以下の炭素を含む炭素環式アリール基、例えば、フ
ェニル及びナフチル並びにC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ、C1〜
C4−アルコキシカルボニル、C1〜C4−アルカノイルオキシ、C1〜C4−アル
カノイルアミノ、ハロゲン、シアノ、C1〜C4−アルキルスルホニル、C1〜C4
−アルキレン−(OH)n、O−C1〜C4−アルキレン−(OH)n、−S−C1〜C4
−アルキレン−(OH)n、−SO2−C1〜C4−アルキレン−(OH)n、−CO2−C1
〜C4−アルキレン−(OH)n、SO2N(R17)C1〜C4−アルキレン−(OH)n、
−SO2N(C1〜C4−アルキレン−OH)2、−CON(R17)C1〜C4−アルキレン−
(OH)n、−CON(C1〜C4−アルキレン−OH)2、−N(SO2C1〜C4−アルキル
)−アルキレン−(OH)n又は−
N(SO2フェニル)−C1〜C4−アルキレン−(OH)n(但し、nは1又は2であ
る)から選択された1個又は2個の基で置換されたものを含めるために使用され
る。
用語「アリール」はまた、1個の酸素原子及び/又は1個の硫黄原子及び/又
は3個以下の窒素原子を含有する5又は6員の複素環式芳香環のような複素環式
アルール基(該複素環式アリール環は任意に、1個又は2個のフェニル環又は他
の5もしくは6員の複素アリール環と縮合している)を含めるために使用される
。このような環系の例には、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラ
ゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリ
アゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリ
ル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、
チアジニル、オキサジニル、トリアジニル、チアジアジニル、オキサジアジニル
、ジチアジニル、ジオキサジニル、オキサチアジニル、テトラジニル、チアトリ
アジニル、オキサトリアジニル、ジチアジアジニル、イミダゾリニル、ジヒドロ
ピリミジル、テトラヒドロピリミジル、テトラゾロ−[1,5−b]ピリダジニ
ル及びプリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル
、インドリルなど、並びに用語「アリール」の定義で上記した1個又はそれ以上
の置換基で置換されたこれらの環が含まれる。
更に、用語「アリール」にはアリーレン基が含まれる。用語「アリーレン」は
、14個以下の炭素を含有する二価の炭素環式アリール炭化水素単位、例えば、o
−、m−及びp−フェニレン並びにC1〜C4−アルキル、C1〜C4−アルコキシ
又はハロゲンから選択された1個又は2個の基で置換されたものを表すために使
用される。好ましくは、オリゴマー又はポリマー廃棄物質は、ポリカプロア
ミドの製造の間に生じたオリゴマー又はポリカプロアミド自体から選択される。
成分(2)はカルボン酸化合物である。このカルボン酸化合物は、カルボン酸
もしくはカルボン酸エステル又はこれらの組合せであり、これには直鎖もしくは
分枝鎖を有する脂肪族基、脂環式基又はヒドロ芳香族基が含まれる。このカルボ
ン酸又はカルボン酸エステルは、6〜26個の炭素原子、好ましくは8〜20個の炭
素原子、最も好ましくは8〜10個の炭素原子を有する。これらの基は、芳香族基
を介してカルボキシル基に結合していてもよい。このカルボン酸及びカルボン酸
エステルは、飽和性又は不飽和性のものであってよい、天然又は合成起源の直鎖
又は分枝鎖脂肪酸であってよい。このカルボン酸及びエステルには、1個より多
いカルボン酸又はエステル基が含有されていてよい。カルボン酸のエステルには
、カルボン酸のメチル、エチル、プロピル及びブチルエステルが含まれるが、こ
れらに限定されない。このカルボン酸及びカルボン酸エステルは、純粋の形で又
は他の市販されているようなこれらの混合物の形で使用することができる。
カルボン酸及びカルボン酸エステルの例は、カプリル酸、カプリル酸メチル、
ペラルゴン酸、ペラルゴン酸メチル、カプリン酸、カプリン酸メチル、カプリン
酸イソプロピル、ウンデシル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オ
レイン酸、リノレン酸、ベヘン酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、フタ
ル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカ
ルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル−4,4′−ジカルボン酸、コハ
ク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などである。好まし
いカルボン酸は、カプリン酸、ペラルゴン酸及びカプリル酸である。好ましいカ
ルボン酸エステルは、カプ
リン酸メチル、ペラルゴン酸メチル及びカプリル酸メチルである。
成分(3)は、全ての源から生じ得る水であり、これには生水、蒸留水及び反
応混合物の全ての他の成分中に存在する水が含まれる。生水には、カルボン酸と
の組合せで界面活性剤を生成し、生成物の単離を抑制し得る金属塩が含有されて
いるかもしれないので、蒸留水が好ましい。成分(3)として使用するための水
は、オリゴマー又はポリマー廃棄物質の水性懸濁液中に存在していてもよい。更
に、成分(3)として使用するための水は、カルボン酸化合物中に存在していて
もよい。カルボン酸とアミノカルボン酸との間のアミド化反応で水が生成され、
このような水が成分(3)として含まれることに注目することが重要である。
工程(A)にはまた、ラクタム又はアミノカルボン酸から選択される窒素含有
化合物、即ち成分(4)が含まれていてよい。この窒素含有化合物は、アミドカ
ルボン酸生成物の精製の際の蒸留又は結晶化工程で捕集される低沸点成分として
工程(A)中にリサイクルすることができる。適当なラクタムモノマーには、1
分子当たり少なくとも3個の炭素原子、好ましくは1分子当たり4〜7個の炭素
原子が含有される。適当なラクタムモノマーには、ブチロラクタム、バレロラク
タム、ε−カプロラクタム、β−プロピオラクタム、δ−バレロラクタム及び同
様のラクタムが含まれる。これらのラクタムは、窒素原子で例えば、炭素数1〜
3の低級炭化水素基によって置換されていてもよい。例えば、メチルカプロラク
タムが使用できる。ε−カプロラクタム及びその置換誘導体は、好ましいラクタ
ムモノマーである。アミノカルボン酸は、成分(1)のアミノカルボン酸繰り返
し単位について記載したものと同じ構造を有する。
工程(A)にはまた、カルボン酸、即ち成分(2)に加えて、反応の速度を上
昇させるための酸触媒が含有されていてよい。適当な
触媒には、酢酸のようなカルボン酸又は硫酸のような鉱酸が含まれる。反応混合
物中の反応剤の重量基準で0.0001%〜1%のような少量の触媒が十分である。
工程(A)の反応は、広範囲の温度及び時間に亘って行うことができる。加水
分解の速度が非常に遅くなるので、150℃より低い温度は好ましくない。更に、
モノマー物質の競合分解反応が起こるかもしれないので、300℃より高い温度は
好ましくない。従って、150℃〜300℃の温度が好ましい。最も好ましくは、工
程(A)は酸素の実質的不存在下で200℃〜250℃の温度で行われる。反応の時間
は、アミドカルボン酸を生成するために十分でなくてはならない。好ましくは、
工程(A)での反応の時間は、0.1〜10時間、更に好ましくは1〜4時間である
。しかしながら、好ましい範囲の外の時間及び温度を使用することは、本発明の
範囲内である。
カルボン酸化合物は、オリゴマー又はポリマー廃棄物質中のアミノカルボン酸
の1当量重量当たり、0.25〜10当量、好ましくは1〜5当量の量で存在する。最
も好ましくは、カルボン酸化合物は、オリゴマー又はポリマー廃棄物質中のアミ
ノカルボン酸の1当量重量当たり、2〜4当量の量で存在する。不十分なカルボ
ン酸によって、アミドカルボン酸オリゴマーの画分が増加し、一方、アミドカル
ボン酸モノマー生成物の画分が減少する。カルボン酸化合物の量についての臨界
的な上限は存在しないが、実際には、全ての所定の場合に所望の結果をもたらす
ために厳密に必要なものよりも高い比率は使用されないであろう。それは、その
ようにすると、所望の生成物を純粋な形で回収する観点から方法を不必要に高価
にするからである。
水は、オリゴマー又はポリマー廃棄物質中のアミノカルボン酸の1当量重量当
たり、0.001〜50当量の量で存在する。相分離を望む
場合には、必要な水の量は、相分離の温度で反応混合物有機相中に可溶であるも
のを越えていなくてはならない。水は好ましくは、オリゴマー又はポリマー廃棄
物質中のアミノカルボン酸の1当量重量当たり、20〜40当量の量で存在する。水
を添加することにより、廃棄物質中のアミノカルボン酸の1当量重量当たりのカ
ルボン酸の当量の比を、アミノカルボン酸オリゴマー又はポリマーを加水分解す
ることにより、実質的に低くすることが可能になる。
不十分な水は、モノマー性物質の重合になる。水の量についての臨界的な上限
は存在しないが、オリゴマー又はポリマー廃棄物質中のアミノカルボン酸の1当
量重量当たり50当量より多量の水を使用すると、小さい有機相を水相から分離す
ることが次第に困難になる状況を作り、所望の生成物を純粋な形で回収する観点
から方法を不必要に高価にする。十分でない水を使用する場合には、有機相中の
水の溶解度によって、二つの相の形成が妨げられる。
所望により、水相及び有機相を含む2相系が作られる、工程(B)。工程(A
)で生成した反応混合物を、反応混合物の成分の凝固点より高い温度まで冷却す
る。水相と有機相とが分離する温度は、特定の反応剤に依存する。しかしながら
、一般的に相分離のために150℃より低い温度が必要である。好ましくは、反応
混合物を100℃より低い温度、最も好ましくは70℃〜90℃まで冷却する。工程(
B)は、回分式方法では工程(A)と同じ容器内で行うことができ、又は工程(
B)は回分式方法又は連続式方法を使用して、別々の容器内で行うことができる
。冷却は、水、氷でのような外部冷却又は冷却ジャケットを使用することによる
ような当該技術分野で公知の方法によって達成できる。水に可溶性であるアミノ
カルボン酸は、反応温度で有機相と混和性になる。反対に、水に可溶性ではない
カルボン酸は、反応温度で少なくとも部分的に水相と混和性になる
。相の混和性によって、反応が一層容易に進行することが可能になる。相分離は
冷却によって起こる。通例、カルボン酸は有機相内に留まり、アミノカルボン酸
及びラクタムは水相内に留まるが幾らかのアミノカルボン酸、ラクタム及び水が
有機相内に溶解する。
工程(B)で生成した2相系は、デカンテーション又は凝集のような当該技術
分野で公知の方法によって分離することができる。工程(C)には有機相を水相
から分離することが含まれる。工程(C)は、回分式方法では工程(A)及び工
程(B)と同じ容器内で行うことができ、又は工程(C)は回分式方法又は連続
式方法を使用して、別々の容器内で行うことができる。
アミドカルボン酸生成物を回収するための有機相の精製は、蒸留又は結晶化の
ような当該技術分野で公知の方法によって達成される。好ましくは、アミドカル
ボン酸生成物を回収するために、2段階蒸留が工程(D)に於いて使用される。
第一蒸留段階に於いて、アミドカルボン酸生成物に比較して低沸点化合物である
水、カルボン酸及び未反応窒素含有化合物が、有機相から除去されて、アミドカ
ルボン酸富化残留物が得られる。第二蒸留段階に於いて、温度を上昇させ、圧力
を低下させて、アミドカルボン酸生成物が蒸留の第一段階で生成したアミドカル
ボン酸富化残留物から除去される。アミドカルボン酸生成物がアミドカルボン酸
富化残留物から除去されたとき、残留する高沸点物質には高レベルの高沸点アミ
ドカルボン酸オリゴマーが含有されている。
本発明の方法にはまた、工程(D)で生じた高沸点アミドカルボン酸オリゴマ
ー残留物を、廃棄物質として工程(A)内にリサイクルする第5の工程、即ち工
程(E)が含まれていてよい。他の起源からのオリゴマー又はポリマー廃棄物質
を、工程(A)で使用する工程(D)からの残留物と一緒にすることができる。
更に、工程(
D)で除去された水、カルボン酸及び未反応窒素含有化合物のような低沸点化合
物を、工程(A)にリサイクルすることもできる。
本発明の方法を、本発明の例示であることが意図される下記の例を考慮するこ
とによって更に示す。例 I
オクタン酸796ポンド、デカン酸530ポンド、水1500ポンド及びカプロラクタム
290ポンドを混合し、500ガロンの撹拌したオートクレーブ中で2時間225℃〜230
℃になるまで加熱した。反応混合物を60℃まで冷却し、この温度で相分離が起こ
った。生成物をオートクレーブから取り出した。生成物を含有する有機相を、デ
カンテーションにより水相から単離した。
有機相中の生成物を、液−液相分離によって単離して、1536ポンド又は95%質
量回収率の生成物混合物を得た。有機相についての分析データを表Iに要約する
。
例Iは、オクタン酸、デカン酸及びカプロラクタムの混合物が水中で反応して
、アミドカルボン酸を生成することを示す。例 II
例Iで製造した有機相を、蒸留によって、カルボン酸及び未反応窒素含有化合
物、アミドカルボン酸モノマー生成物を含有する低沸点成分と、廃棄残留物とし
て容器中に残留する高沸点アミドカルボン酸オリゴマーとに分離した。アミドカ
ルボン酸生成物の組成を表IにIIaとして記載する。オリゴマー性アミドカルボ
ン酸残留物の組成を表IにIIbとして記載する。
例IIは、アミドカルボン酸モノマー生成物が、第一段階蒸留残留物から単離で
きることを示す。例 III
例IIで得られたアミドカルボン酸オリゴマー残留物15.0グラムを、オクタン酸
60%及びデカン酸40%を含有する混合物84.4グラムと混合し、95℃まで加熱した
。この試験結果を表Iに要約する。例 IV
例IIで製造したアミドカルボン酸オリゴマー残留物15.0グラムを、オクタン酸
60%及びデカン酸40%を含有する混合物84.4グラムと混合し、開放ビーカー中で
210℃になるまで加熱した。反応混合物を室温にまで冷却した。この試験結果を
表Iに要約する。
例IVは、例IIIで製造した反応混合物についての分析結果が、添加した水の不
存在下で210℃まで加熱することによって顕著に変化しなかったことを示してい
る。例 V
例IIで製造したアミドカルボン酸オリゴマー残留物15.0グラムを、オクタン酸
60%及びデカン酸40%を含有する混合物84.4グラム並びに蒸留水100.7グラムと
混合した。得られた混合物を振動オートクレーブ中で230℃で1時間加熱した。
室温にまで冷却した後、有機相を単離した。この試験結果を表Iに要約する。
例Vは、例III及びIVと比較したとき、水の添加及び230℃までの加熱によって
、有機相のアミドカルボン酸含有量の収率が増加することを示している。例 VI
例IIで製造したアミドカルボン酸オリゴマー残留物15.0グラムを、オクタン酸
60%及びデカン酸40%を含有する混合物84.4グラム並びに蒸留水100.7グラムと
混合した。得られた混合物を振動オートクレーブ中で230℃で4時間加熱した。
室温にまで冷却した後、有機相をデカンテーションによって単離した。この試験
結果を表Iに要約する。
例VIは、例Vについての1時間に対立するものとして4時間の反応時間を有し
ていた。同様の分析結果が、例Vと例VIとについて得られた。例 VII
ナイロン6ペレット18.7グラムを、300mLの振動オートクレーブ中でノナン酸8
4.4グラム及び蒸留水100.7グラムと一緒にした。この混合物を230℃になるまで
1時間加熱した。冷却した後、デカンテーションによって有機相を分離した。こ
の試験結果を表Iに要約する。
例VIIは、ナイロン6を含有する廃棄物質をアミドカルボン酸にリサイクルで
きることを示している。例 VIII
ナイロン6ペレット18.7グラムを、300mLの振動オートクレーブ中でノナン酸8
4.4グラム及び蒸留水100.7グラムと一緒にした。この混合物を230℃になるまで
4時間加熱した。冷却した後、デカンテーションによって有機相を分離した。こ
の試験結果を表Iに要約する。
例VIIIは、230℃の温度で4時間の反応時間を使用する本発明の方法によって
、アミドカルボン酸を得ることができることを示している。例 IX
ナイロン6ペレット18.7グラムを、300mLの振動オートクレーブ中でノナン酸8
4.4グラム及び蒸留水100.7グラムと一緒にした。この混合物を250℃になるまで
4時間加熱した。冷却した後、デカンテーションによって有機相を分離した。こ
の試験結果を表Iに要約する。
例IXは、250℃の温度で4時間の反応時間を使用する本発明の方
法によって、アミドカルボン酸を得ることができることを示している。例 X
ナイロン6ペレット36.9グラムを、300mLの振動オートクレーブ中でノナン酸1
66.8グラムと一緒にした。この混合物を250℃になるまで8時間加熱し、冷却し
、単一有機相として単離した。得られた生成物の水含有量は、ポリマー廃棄物質
(ナイロン6)の1当量重量当たり0.045当量であった。この試験結果を表Iに
要約する。
例Xは、如何なる水も添加しないで本発明の方法によって、アミドカルボン酸
を得ることができることを示している。
上記の詳細な記載に照らして、多数の変形が当業者の心に浮かぶであろう。全
てのこのような自明の変形は、付属する請求の範囲の意図する全範囲の中に入る
。
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(72)発明者 マクチェスニー,ギャリー ウェスリー
アメリカ合衆国,アーカンソー 72501,
ベイツビル,パーカー ドライブ 38
(72)発明者 ウィリアムス,トーマス ヒュー
アメリカ合衆国,テネシー 37656,フォ
ール ブランチ,ピー.オー.ボックス
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