【発明の詳細な説明】
遠隔的シーリングおよびコーティングのためのエーロゾルの
製造および送達の方法ならびに装置
本明細書中に述べる発明は、Lawrence Berkeley National Laboratoryの運営
のための合衆国エネルギー省とカリフォルニア大学との間での契約番号DE-AC03-
76SF00098のもとで政府の援助のもとに行われた。政府はこの発明に関して一定
の権利を保持する。発明の分野
本発明は遠隔的シーリングおよびコーティングのためのエーロゾルの製造およ
び供給の方法ならびに装置に関する。より詳細には、本発明は、シールされるべ
き包囲構造(enclosure)にエーロゾルを注入する手段によって包囲構造の内側か
ら漏れをシールすること、または遠隔的にそれら包囲構造の内側表面に平坦なコ
ーティングを付与することに関する。発明の背景
遠隔シーリングおよびコーティングの方法はかなりの必要性がある。研究は、
ダクトの漏れをシールすることによる可能なエネルギー節約量は、炉または空調
装置のエネルギー使用量のほぼ20%であることを示している(Modera,M.P(1993)E
nergy and Buildings,20:65-75)。通常のシーリング技術はダクトテープおよび
マスチックを包含する。しかしながら、一般的にそのような技術は遠隔的にシー
ルするダクト作業にとっては不十分である。ダクトシステムのためのカプセル材
料(encapsulants)は以前から開示され、そしてこれらのいくつかはダクトシステ
ム中に霧状物を導入することによって適用されている。
Shinnoはパイプの内側表面をミストで覆うことでパイプをシールおよびコート
することを教示する(米国特許第4,327,132号、パイプの内側表面のライニング
方法(1982年4月27日))。この特許は、速い空気流で付与され、それから同じ速
い空気流でその場所で乾燥される複数成分のエポキシベースのミスト成分の使用
について述べている。またその特許は、パイプ出口から排出される残りの塗料の
除去および再生についても述べている。Shinno特許は複数の気体流、すなわち1
つには付与される液体を霧状にするための気体流、およびミストをパイプに沿っ
て吹き流すための別の気体流を必要とする。Shinnoはまた30メーター/秒と100
メーター/秒との間の混合速度を必要とする。
Kogaは、パイプの内側表面上に堆積するプラスチックミストを発生させるため
の方法と装置について教示する(米国特許第4,454,173号、パイプラインにおけ
るパイプをライニングするための方法(1984年6月12日)および米国特許第4,454
,174号、パイプラインにおけるパイプをライニングするための方法(1984年6月1
2日))。これらの特許はパイプの内側表面へのプラスチックミストの送達に限
定されている。Koga特許はパイプライン中でミストを運ぶための圧縮装置および
真空発生装置の使用について述べている。さらに、これらの特許はある段階では
低空気圧および別の段階では高空気圧を使用することを教示する。Koga特許にお
いてはプラスチックを液体状に保つためにヒータが使用される。
Hyodoらは、パイプにエーロゾルタイプの泡状シーラントを流し込む工程を包
含するパイプのシーリング方法を教示する(米国特許第4,768,561号、パイプを
シールする方法(1988年9月6日))。開示されたシーラントは、主成分としてエ
マルジョンおよびラテックスからなる群から選択される水性樹脂を含有し、そし
てFreon 12/Freon 114のようなプロペラントを添加したものである。発明の要旨
本発明は内側から包囲構造を遠隔的にシールおよびコートするための方法およ
び装置である。本発明は、カプセル材料が堆積する場所の正確な制御を考慮に入
れ、そして屈曲部、T型、Y型の複雑なネットワークを伴う包囲構造の場合でも
効率的に漏れを遠隔的にシールし得る。
包囲構造の内側から漏れをシールするために、または包囲構造の内側表面に沿
って平坦なコーティングをするためにエーロゾルを使用することは、エーロゾル
の慎重な調製および包囲構造を通る流れの制御を必要とする。漏れをシールする
場合、包囲構造内の圧力もまたエーロゾルが漏れを見つけ出すために制御されな
ければならない。
本発明はこの技術における劇的な躍進である。なぜなら、それは包囲構造を内
側から遠隔的にシールおよびコートすることの両方を可能とするからである。こ
の技術は、ダクトをシールおよびコートすることに有用であるばかりではなく、
構造上の完全性、防音および絶縁性の向上のために建造物および他の空洞の空間
を埋めることに用いられ得る。本出願において述べられるシーリングおよびコー
ティングの方法ならびに装置は従来の技術に重要な進歩を与える。
本発明の目的は、包囲構造の内側から複数の漏れをシールすることが可能な方
法および装置を提供することである。
本発明の別の目的は、特定の開口部を指向することなしに漏れをシールし得る
方法および装置を提供することである。
本発明のさらなる目的は、容易に輸送し得る装置を提供することである。
本発明のさらなる目的は、安全かつ容易に使用される装置を提供することであ
る。
次の発明の詳細な説明を添付の図面とともに読むとき、これらおよび他の本発
明の目的ならびに特徴は充分明らかになる。図面の簡単な説明
図1は本発明の方法を実行するための装置の切取側面図である。発明の詳細な説明
本発明は内部から構造物の遠隔的シーリングおよびコーティングを行うための
方法および装置である。特に本発明は、エーロゾルを調製し、輸送し、そして包
囲構造の内側表面に沿って遠隔的に堆積する方法を包含する。本発明はまたこの
方法を実行することが可能な装置を包含する。方法
本発明の概略的な方法には4段階の工程がある。はじめに固体を懸濁させた液
体からエーロゾルを調製する。2番目にキャリア流を発生させる。3番目にエー
ロゾルをキャリア流に導入する。4番目にエーロゾルを入れたキャリア流を使用
して、シールされるべき包囲構造を加圧する。
本発明のためにエーロゾルを調製することの最も重大な局面は、シールされる
べき漏れに到達する前にエーロゾルを適切な大きさにし、そして実質的に凝固さ
せなければならないことである。エーロゾルは重力沈降によってキャリア流から
離れる前に漏れにたどり着くのに充分小さくなければならず、かつ一旦漏れに到
達したら、空気流から離れ、そして漏れの境界に沿って堆積するのに充分大きく
なければならない。シーリングのために使用される場合、粒子は、包囲構造の内
側表面上に衝突するとき十分にその形状を保っていなければならない。
本発明のある実施態様において、この調製は、1)固体が懸濁した液体のエーロ
ゾルの注入の前に空気を乾燥するか、あるいは2)エーロゾル注入の前に流入する
空気流を加熱することのいずれかにより達成される。シーラントエーロゾルのた
めに液体ベースを使用する場合は、エーロゾル粒子の大きさを制御する手段は使
用する注入ノズルのタイプおよび粒子の希釈の程度によって決定される。あるい
は、固相エーロゾルを直接使用することも可能である。
エーロゾルの輸送および堆積に影響する最も重要な変数は、ダクト流速、粒子
サイズ、およびダクト圧である。3変数はすべて、シーリングおよびコーティン
グが起こる速度および効率に影響する。それらはまた粒子が重力沈降より前にパ
イプに沿ってどのくらい遠くまで移動するかを決定する。
これら変数は一旦特定のシーリング効率を選ぶと算出し得る。シーリング効率
は浸透効率(P)および堆積効率(η)の積である。
ストークス数は以下で定義される:
計算は乱流拡散により引き起こされる速度(Vd)についてのモデルを使用して行わ
れた。
そして摩擦係数fはブラジウスの式より与えられる:
Veは数値によって決定され得る:
記号
Cc Cunninghamすべり補正係数 [-]
Cd 抵抗係数 [-]
Cm エーロゾルの重量濃度 [kg/m3]
Cp オリフィスの抵抗係数〔-〕
c スロット(ブラックピクセル)に相当する表面〔m2〕
D ダクト直径[m]
d() 微分 [-]
dp 粒子直径 [m]
e ダクト壁厚さ [m]
f 摩擦係数 [-]
g 重力加速度 [m/s2]
h 漏れ幅 [m]
L ダクト長さ [m]
P 浸透 [-]
Q 流速 [m3/s]
Rep 粒子レイノルズ数(相対速度に基づく) [-]
r 流線の曲率半径 〔-〕
S 粒子対空気の密度比 [-]
t 時間[s]
U ダクト中の平均速度 [m/s]
Us y=ysでのスロットの上流速度 [m/s]
u x方向の速度 [m/s]
Vd 乱流拡散速度 [m/s]
Ve 壁上での有効平均堆積速度 [m/s]
Vg 重力沈降速度 [m/s]
V* 無次元堆積速度 [-]
ν y方向の速度 [m/s]
νr 粒子の半径方向速度 [m/s]
W シールの厚さ [m]
Wr 粒子の相対速度
x 水平座標 [m]
y 垂直座標 [m]
ys 分割した吸引流線の高さ [m]ギリシャ文字
β 角度[rd]
ΔP スロットに沿った圧力差 [Pa]
γ 角度 [rd]
η 堆積効率 [-]
V 問題の流体の動粘性率 [m2/s]
ρ 密度 [kg/m3]
σ cの測定に関連する不確定性 [m2]
τ 粒子緩和時間 [s]
τ* 無次元粒子緩和時間 [-]
ω うず度[s-1]下付文字および上付文字
f 問題の流体に関連するもの
ι 実験の開始からi分
O 実験の開始時、t=0
D ダクトに関連するもの
p 粒子に関連するもの
ref 参照圧力差で
s スロットに関連するもの
seal 粒子ビルドアップ(buil dup)に関連するもの
- 平均値略号
ELA 有効漏れ領域
これらの式を満たし得る流速、粒子サイズ、およびダクト圧の1つを越える組
み合わせがある。本発明において固体のエーロゾル粒子は1〜100ミクロンの間で
あり得る。その好ましい範囲において粒径は直径2〜40ミクロンの間であり、最
も好ましくは直径3〜15ミクロンの間の範囲である。流速は1時間当たり20〜20,
000立方メーターの範囲であり得る。住宅でのダクト作業において流速の好まし
い範囲は1時間当たり100〜50000立方メーターの間であり、最も好ましくは1時
間当たり200〜600立方メーターの間の範囲である。商業的なダクト作業において
流速の好ましい範囲は1時間当たり500〜5000立方メーターの間である。シール
される包囲構造の構造完全性により規定されるダクト圧の上限がある。
漏れをシールすることに関して、粒子堆積は包囲構造における漏れによって形
成された境界間に「橋を築き上げる」ことにより達成される。ある実施態様にお
いて、微粒子状のシーラント物質は液体のベース中に懸濁される。固相エーロゾ
ルはエーロゾルを注入する間に液体を除去することにより形成される。適切な物
質の一例はエーロゾルとして使用するために水中にビニルプラスチックを懸濁さ
せることである。具体的には、エーロゾルはアセテート−アクリレートビニルポ
リマーの懸濁液から生成され、次いで固体の粘着性粒子を得るために乾燥される
。選択される物質にかかわらず、粒子は漏れの境界での衝撃時にその形状を保っ
ていることが重要である。もし粒子が変形し易す過ぎるなら、粒子は、漏れの境
界を越えて広がる傾向を示し、粒子のビルドアップ(build up)が漏れに橋を架け
ることを妨げる。
上述した方法の実際の実施において、包囲構造内のダクト流速および圧力はシ
ーラント物質の損失を最小にするように維持されるべきである。実施において圧
力および流速は最小値より上に維持されなければならない。
シールされるべき包囲構造の準備は典型的には、包囲構造の意図的な開口部を
閉じることを包含する。例えば加熱系における通気穴はふさがれる。包囲構造の
準備における別の可能な工程は、系内における速度を維持するためのバッグフィ
ルタの導入である。現実的には、コーティングに影響されやすい包囲構造内の物
体を隔離する必要がある。
シーリング用途において、意図的な開口を閉じることおよびキャリアとしてガ
スを使用することによって、本発明によれば、シールされるべき包囲構造の機密
性に対して即座にフィードバックを与えることが可能となる。これはシーリング
プロセスの間、キャリア流速および包囲構造圧力をモニターすることにより達成
される。装置
本発明の1つの局面は上述の方法を実行するための装置である。図1は本発明
の1つの実施態様を示す。装置は調製端部4および送達端部6に分けられる、中
空構造体から構成される本体2から成り立っている。1つの実施態様において本
体2は調製端部4が端を先細りさせて円錐台にした円筒状である。
ファン8は本体2の調製端部4に接続されている。ファン8は本体2の中空部
を通って、本体2の送達端部6に抜ける空気流を発生する。発生した空気流は、
固相エーロゾルが導入され、そしてシールされるべき包囲構造に加圧するために
使用されるキャリア流である。ファン8と本体2の送達端部6との間に位置する
エアヒータ10は、導入された空気流を加熱する。別の実施態様においてヒータ
10に代えて乾燥剤を使用し得る。フィルタ12をエアヒータ10と本体2の送
達端部6との間に装着し、エーロゾルの注入の前に粒子状不純物を取り除き、そ
してエーロゾル粒子がヒータ10に接触しないことを確実にする。
サーモスタット14は本体2の中に配置される。圧力スイッチ16は本体2の
中に配置される。本実施態様において、スイッチ16は本体2の送達端部6に配
置される。ファン8、圧力スイッチ16、エアヒータ10、およびサーモスタッ
ト14に接続するコントロール機構18はそれらの部品と共同で温度およびキャ
リア流の速度を制御する。
流れ測定センサ19はファン8の入口に接続している。1つの実施態様におい
て、オリフィスプレート前後の圧力差は圧力変換器で測定される。このユニット
を通る流れはオリフィスプレート前後の圧力差の平方根に比例する。
注入ノズル20はフィルタ12と本体2の送達端部6との間で本体2に配置さ
れる。エーロゾルの懸濁液はエーロゾル源22から注入ノズル20に送達される
。1つの実施態様においてエーロゾル源22は空気圧縮機、圧力調整機、および
液体貯蔵タンクから構成される。最良の結果は注入ノズルおよびエーロゾル源が
単分散エーロゾルを製造する場合に得られる。乾燥エーロゾル源を使用する場合
、ヒータ8は除かれ得る。
一対のハンドル24が装置の本体2に取り付けられ、装置の輸送および操作を
補助する。さらに、一組の足26が本体2の底部に取り付けられ、ユニットを安
定化し、そして装置の位置決めを補助する。
現実の使用において、送達端部6はシールされるべき包囲構造における開口部
と接続される。ファン8はキャリア流を発生し、流れ測定センサ19を介して引
かれ、エアヒータ10によって加熱され、次いで不純物を取り除くためにフィル
タ12を通過する。エーロゾルは注入ノズル22を介して装置の調製端部4にエ
ーロゾル源22から注入される。エーロゾルは、ファン8によって発生したキャ
リア流によって運ばれ、そして装置の送達端部6から放出される。エーロゾル中
の液体は気化し、そして残った固相エーロゾルがシールされるべき包囲構造を加
圧するのに使用される。
包囲構造の内側と外気との間の圧力差により固相エーロゾルの粒子が包囲構造
の漏れを見つけ出す。エーロゾルが漏れの内側境界に衝突したとき、粒子は接触
した場所に粘着する。このプロセスによって、「橋」は包囲構造における漏れに
よって形成された境界の間に築き上げられる。
漏れがシールされると、包囲構造の圧力は上がる。圧力上昇は装置に対するフ
ィードバックとして働き、そして一旦圧力が漏れがシールされたことを示すレベ
ルに到達すると、制御機構18と接続する圧力スイッチ16は装置を停止する。
この記述がこの装置の可能な唯一の説明、またはもっとも正確な説明では必ず
しもないということは、当業者によって理解され得る。
実施例1
実験を本明細書中で述べた実施態様と同様の装置を使用して行った。本発明の
方法および装置の使用により、30分未満で包囲構造における16cm2有効漏れ領域
(Effective Leakage Area(ELA))をシールし得ることを見出した。表1の結果
はエーロゾルを用いた包囲構造のシーリングの概念の証拠(proof-of-concept)を
提供する。表1は典型的な結果を示す。
表1に要約された実施例(#)1-11において、インラインヒータを使用して、エ
ーロゾル注入の前にエーロゾル粒子の水含量を低減させた。
表1から、包囲構造のELAが20〜45分間で90%より多く減少し得ることが理解
され得る。さらに、初期流速はブランチ当たり40立方メーターまで下げることが
でき、そしてなお十分なエーロゾルおよび十分なELAの減少を提供し得る(実験
6
および7を参照のこと)。本発明者らの実験によれば、16cm2相当をふさぐこと
は約30分間でできた。初期の漏れがより大きい場合、シーリングにはより時間が
かかる(実験10および11を参照のこと)。
実施例2
下記のグラフは流速および粒径の関数としての浸透効果を示す。この実施例は
、直径15cmおよび長さ10メーターのダクトにおいて本発明の方法を使用して実行
した。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
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TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,B
Y,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI
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KZ,LK,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M
N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU
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