【発明の詳細な説明】
ロウの水素化異性化方法
発明の属する技術分野
本発明は、2種の脱ロウ触媒を相乗的に作用させる方法を用いて高粘度指数潤
滑油を製造することに関する。フィードは、接触脱ロウプロセスの前に水素化分
解されてもよい。脱ロウプロセスからの流出物を、水素化処理してもよい。
発明の背景
従来、鉱油系潤滑油は、大気圧におけるパラフィン系原油の分別と、それに続
く減圧での分別を含む製油所において実施される別個の工程により製造されてお
り、この方法により溜出物フラクション(中性油)および残留フラクションが得
られ、後者は、脱アスファルト処理および苛酷な溶媒処理の後、潤滑油ベースス
トックとしても使用できる。この精製残留フラクションは、通常ブライトストッ
クと呼ばれる。従来中性油は、低粘度指数(V.I.)成分を除去するために溶
媒抽出した後、所望の流動点を得るために溶媒または接触脱ロウプロセスにより
脱ロウされていた。脱ロウされた潤滑油ストックは、安定性を向上し、着色成分
を除去するために、水素化仕上げしてもよい。
粘度指数(V.I.)は、温度の上昇に伴って潤滑油の粘度が減少する割合を
反映する。溶媒脱ロウの製品は、脱ロウ潤滑油および粗ロウである。粗ロウは、
典型的に、60〜90%のロウと残部の連行油を含んでいる。ある場合には、粗
ロウを脱ロウ溶媒で希釈し、粗ロウを製造するために用いた濾過工程における温
度よりも高い温度で濾過する脱ロウ工程に粗ロウを付すことにより、連行油を粗
ロウから除いて精製することが望ましい。精製ロウは、脱油ロウと呼ばれ、95
%を越えるロウを含んでいる。第2の濾過の副生物は、典型的に、ロウ50%を
含み、ロウ下油と呼ばれる。
潤滑油ストックの接触脱ロウは、分解によるロウ質分子の軽質生成物への転化
、または脱ロウ潤滑油に残る分子種を形成するロウ質分子の異性化を伴う。脱ロ
ウ触媒は、通常ロウを構成しているほぼ直鎖の分子の触媒活性点への容易な接近
を
許容しながら、脱ロウ潤滑油に一般に含まれている環状および高分岐分子種の分
解を阻害する孔構造を有することが主たる理由で、高い収量を保持する。分子の
寸法に基づいて分子種の接近可能性を顕著に低下させる触媒は、形状選択的と呼
ばれる。脱ロウ触媒の形状選択性を増すと、多くの場合脱ロウ油の収量が増す。
脱ロウ触媒の形状選択性は、実際には、わずかに分岐した構造を有するロウ質
分子を変換する能力により制限される。このような種類の種は、ブライトストッ
クのようなより重質の潤滑油ストックと、より一般的に関連している。形状選択
性がより高い脱ロウ触媒は、室温で潤滑油の外観を濁らせ、流動点に比べて高い
曇点にする重質の分岐ロウ種を転化することはできないであろう。
従来の潤滑油精製技術は、通常パラフィン系特性の粗ストックの適切な選択お
よび使用に依存しており、これにより、所望の品質を持つ潤滑油フラクションが
適当な量で製造される。しかしながら、許容できる粗原料の範囲は、劣った品質
、通常最良のパラフィン系粗ストックよりも高い芳香族含有量を有する粗ストッ
クを用いることができる潤滑油水素化分解プロセスにより広げることができる。
潤滑油水素化分解プロセスは、石油精製産業によいて確立されており、一般に、
高圧高温において、原料中に存在する芳香族成分の部分飽和および開環を生じさ
せる2官能性触媒の存在下に実施される最初の水素化分解工程を含む。次いで、
水素化分解生成物は、目標の流動点に達するように脱ロウに付される。これは、
水素化分解生成物は、通常、比較的高い流動点の種を含んでいるからである。多
くの場合、脱ロウ工程からの液体生成物は、潤滑油の芳香族含有量を所望の水準
まで低下させるために低温高圧水素化処理に付される。
自動車用エンジン設計の現在の傾向は、エンジンの効率が上昇するにつれて、
より高い作動温度に向かっている。このようなより高い作動温度は、従ってより
高い品質の潤滑油を必要とする。1つの要求は、エンジン潤滑油の粘度に対する
より高い作動温度の影響を減らすために、より高い粘度指数(V.I.)に対す
る要求である。高い粘度指数は、これまで、粘度指数向上剤、例えばポリアクリ
レートおよびポリスチレンを使用することにより達成されてきた。粘度指数向上
剤は、エンジン内で発生する高温および高剪断速度の故に、劣化しやすい。高性
能エンジンの中で発生するより厳しい条件により、顕著な量の粘度指数向上剤を
用いているオイルはより早く劣化する。それ故、高粘度指数を有する液体をベー
スとし、現代のエンジン内で発生する高温高剪断速度条件に耐性のある自動車用
潤滑油に対する要求が引き続き存在している。
ある種の触媒の存在下にオレフィンを重合することによって製造される合成潤
滑油は、優れた粘度指数を有することが知られているが、製造コストが比較的高
い。従って、石油精製において現在採用されているのに匹敵する技術によって製
造できる鉱油ストックから高粘度指数潤滑油を製造することに対する要求がある
。
米国特許第4,975,177号は、ロウ質原料ストックから高粘度指数の潤滑
油ストックを製造するための2段階脱ロウ法を開示している。この方法の第1段
階では、ロウ質原料を、ゼオライトベータを用いた異性化により接触脱ロウする
。異性化工程の生成物は、ロウ質種をなお含んでおり、目標とする流動点を達成
するにはさらに脱ロウする必要がある。第2段階の脱ロウは、溶媒脱ロウ(この
場合、除去されたロウは収量を高めるために異性化段階へリサイクルされる)、
または接触脱ロウのいずれかを採用する。第2段階で使用され得る触媒は、ZS
M−5、ZSM−22、ZSM−23およびZSM−35である。収量および粘
度指数を保持する為に、第2段階の脱ロウ触媒は、溶媒脱ロウと同様の選択性を
有しなければならない。米国特許第4,919,788号も、2段階脱ロウ法を教
示しており、この方法では、ロウ質原料を、シリカYまたはベータ触媒を用いた
異性化により部分脱ロウし、次いで生成物を、溶媒脱ロウまたは接触脱ロウのい
ずれかにより所望の流動点まで脱ロウする。高い形状選択性を有する脱ロウ触媒
、例えばZSM−22およびZSM−23が好ましい触媒である。しかしながら
、これらの例は、2種以上の脱ロウ触媒を用いることの相乗効果を教示していな
い。
米国特許出願番号08/017,949は、2段階水素化分解/水素化異性化
方法を開示している。第1段階では、無定形酸性担体に担持された金属水素化成
分を含む2官能性触媒を用いる。第2段階では、水素化異性化を、ゼオライトベ
ータにより行う。この後の脱ロウは任意であるが、推奨される。目標の粘度指数
および流動点を得るために、溶媒脱ロウまたは接触脱ロウのいずれかを用いてよ
い。この発明にも触媒の相乗性の教示はない。
米国特許出願番号08/017,955では、石油ロウ原料を、低酸性度を有
する貴金属含有ゼオライト触媒を用いて水素化異性化している。原料中に存在す
るパラフィン類は、高粘度指数を有するが流動点は低いイソパラフィン類へ選択
的に転化されるので、良好な粘度特性を有する最終潤滑油生成物は、最小程度の
後の脱ロウにより製造される。高圧で実施されるこの方法は、芳香族含有量が1
5重量%より高い粗ロウのようなロウ質原料を、生成物の脱ロウの必要性が少な
く、高い単流収率で高粘度指数潤滑油に改質するのに非常に適している。
関連したケースは、可能な別工程または第2工程として、接触脱ロウを伴った
溶媒脱ロウを主として強調している。異性化段階の生成物を溶媒脱ロウすること
の利点は、ロウが除去されて、高粘度指数潤滑油の収量を向上するために異性化
触媒ヘリサイクルできることである。しかしながら、溶媒脱ロウの作業コストは
、接触脱ロウの場合よりも高い。加えて、溶媒脱ロウされた潤滑油ストックの流
動点は、−21〜−18℃への溶媒の冷却能力により限定される。接触脱ロウに
より、溶媒脱ロウにより達成できるよりも著しく低い流動点を有する高粘度指数
潤滑油を製造することができる。全接触脱ロウ法の予期しなかった改良は、溶媒
脱ロウにより製造された潤滑油と同等かそれより低い流動点で同等かまたはより
高い粘度指数を有する潤滑油を製造できることである。
発明の概要
本発明は、高粘度指数低芳香族含量の低流動点潤滑油ストックを製造するため
に、統合触媒システムを用いてロウ質炭化水素原料を処理することを含む。原料
は、最初に、高圧(少なくとも5617kPaabsの水素分圧)下、金属、好ま
しくはPtのような貴金属を組み込んだ低酸性度大孔ゼオライト触媒に接触させ
る。原料中のロウ質物質の実質的なフラクションは、この触媒により選択的に異
性化される。次いで反応生成物は、やはり貴金属を含む拘束された中間孔結晶性
物質と接触させる。この触媒により、さらに異性化および脱ロウされる。最終生
成物は、高粘度指数および低流動点を有する潤滑油である。潤滑油の芳香族含有
量を所望の目標値に下げるために、更なる水素化処理工程を含ませてもよい。
本発明で使用される触媒は、相乗的に挙動する。統合触媒システムの生成物の
収率および粘度指数(V.I.)は、2つの触媒のいずれかを単独で用いた場合
の生成物の収率および粘度指数を越える。相乗性を発揮させるには、原料中のロ
ウ質種の40〜90%を転化するように操作される大孔ゼオライトを含む反応器
が必要である。残留ロウの転化は、第2脱ロウ工程で完結される。粘度指数およ
び収率の両方が、約27℃の流動点以下で流動点と反比例的な関係にある。本発
明の方法の相乗性は、流動点の低下に伴う収率と粘度指数の低下が、いずれかの
脱ロウ触媒を単独で使用した場合よりも著しく小さいことにより示される。収率
および粘度指数の改良は、各触媒個々の研究によっては予測できない。加えて、
生成物の外観および曇点が、選択性脱ロウ触媒を単独で使用した場合に比べ、2
段階脱ロウシステムにより改良される。
本発明の方法は、真空溜出油の溶媒抽出または水素化分解により得られるよう
な、低ロウ含有量の原料を改質するのに使用することができる。しかしながら、
相乗性は、50%を越えるロウ含有量を有する原料について最も顕著である。
統合した低酸性度大孔ゼオライト触媒および中間孔触媒の相乗性によって、全
触媒ルートにより高品質ベースストックの製造が可能である。そのようなベース
ストックは、一般に120より大きい、より好ましくは130より大きい粘度指
数を有し、10%未満、より好ましくは1%未満の芳香族を含む。
図面の簡単な説明
図1、2、3および4は、本発明の触媒の相乗的関係を示すプロットである。
触媒を一緒に用いて得られた粘度指数および収率が、流動点に対してプロットさ
れている。図は、以下に記載する実施例においてより詳細に説明する。
詳細な説明
本発明の方法では、比較的高いロウ含有量の原料、例えば粗ロウを、相乗的特
性を有する2種の触媒を用いる統合法において、高粘度指数潤滑油に転換する。
貴金属含有低酸性度ゼオライト水素化異性化触媒を用いた水素化異性化プロセス
を最初に用いる。このプロセスの中間生成物を、次いで貴金属含有中間孔結晶性
物質と接触させて、更に脱ロウを行う。生成物の粘度指数は、原料の流動点、ロ
ウ含有量、および原料を予備処理に付したか否かに依存する。窒素および硫黄含
有種を除去するために水素化精製された重質中性粗ロウの場合、生成物の粘度指
数は、典型的には、−18℃の流動点で少なくとも140であり、通常143〜
147の範囲にある。完全な脱ロウを行うために触媒のいずれかを単独で用いる
ことによっては、相乗的触媒システムによって得られた場合よりも大きい粘度指
数を有するベースストックを製造することはできない。
原料
本発明の方法は、良好な性能特性を有するある範囲の潤滑油生成物を製造する
ために、広い範囲の鉱油起源の原料を用いて実施することができる。そのような
特性には、低流動点、低曇点および高粘度指数が含まれる。得られる生成物の品
質および生成物を得る収率は、原料の品質および本発明の触媒による処理への順
応性に依存する。高粘度指数の生成物は、粗ロウ、ロウ下油、脱油ロウ、または
ロウ質粗油から誘導される真空溜出油などの好ましいロウ原料を用いることによ
り得られる。合成ガスのフィッシャー−トロプシュ処理により製造されるロウも
原料として使用することができる。低粘度指数を有する生成物も、低い初期ロウ
成分量を持つ他の原料から得ることができる。
使用できる原料は、所望の潤滑油の初溜点よりも低くない初溜点を有していな
ければならない。原料の典型的な初溜点は345℃を越える。使用することがで
きるこのような原料には、減圧軽油や、他の高沸点フラクション、例えば常圧残
留油の真空蒸留により得られる溜出油、そのような溜出フラクションの溶媒抽出
からの抽残油、水素化分解した真空溜出油並びに抽残油および水素化分解物の溶
媒脱ロウからのロウが含まれる。
水素化異性化工程において満足に処理するために、原料の予備処理が必要かも
しれない。一般に必要な予備処理工程は、芳香族および多環式ナフテン類のよう
な低粘度指数成分を除去する処理である。これらの物質の除去により、高粘度指
数低流動点のイソパラフィン類に転化されるロウ質パラフィン類をより高い量で
含む、水素化異性化工程用原料が得られる。触媒の相乗性は、50%を越えるロ
ウ含有量を有する原料について、最も顕著に現れるが、より低いロウ含有量の原
料も効果的に使用し得る。
水素化異性化に用いる原料を調製するための適当な予備処理工程は、芳香族お
よび他の低粘度指数成分を元の原料から除去する工程である。水素化処理は、特
に、芳香族の飽和に有効である高水素圧、例えば5617kPaabsまたはそれ
以上の圧力において、有効な予備処理である。穏和な水素化分解も、予備処理と
して使用でき、予備処理が必要な場合に本発明では好ましい予備処理である。後
記の実施例3で、脱ロウ法の原料を調製するために本発明で使用する水素化分解
条件を説明する。6996kPaabsを越える圧力が、水素化分解処理にとって
好ましい。水素化分解により、窒素含有種および硫黄含有種が除去され、後記表
6に示されるように芳香族含有量が低下する。この例での水素化分解は、原料の
沸点範囲をわずかに変化させ、より低い範囲で沸騰するようにした。市販触媒、
例えばアルミナ担持フッ素化ニッケル−タングステン(NiWF/Al2O3)を、
水素化分解予備処理に使用してよい。
好ましい軽油および真空溜出油原料は、(ASTM D−3235により測定
して)高いロウ含有量、好ましくは50重量%を越えるロウ含有量を有するもの
である。この種の原料は、ある東南アジアおよび中国産油を含む。インドネシア
産のミナス軽油はそのような原料である。これら原料は、通常高パラフィン含有
量を有する(パラフィン類、ナフテン類および芳香族の通常の分析法により測定
して)。この種の典型的な原料の特性は、米国特許出願番号07/017,95
5に記載されている。
先に述べたように、好ましい原料のロウ含有量は高く、予備処理前で一般に少
なくとも50重量%(ASTMテストD−3235により測定して)である。予
備処理前のロウ含有量は、より一般的には、少なくとも60〜80重量%であり
、残部はイソパラフィン類、芳香族およびナフテン類を含む吸蔵油である。この
ようなロウ質高パラフィン系ロウストックは、通常低い粘度を有する。これは、
ロウ質パラフィン類の高い含有量が、更に処理しなければストックを潤滑油とし
ては不適切にしてしまう融点および流動点を与えるにも拘わらず、芳香族および
ナフテン類の含有量が比較的低いからである。ロウ原料は、米国特許出願07/
0
17,955において、さらに説明されている。
最も好ましい種類のロウ原料は、粗ロウ(slack wax)である(後掲表2参照
)。これは、溶媒脱ロウ法、例えばMEKまたはプロパン脱ロウ法から直接得ら
れるロウ製品である。粗ロウは、固体または半固体製品であり、主として高ロウ
質パラフィン類(ほとんどはn−およびモノメチルパラフィン類)と吸蔵油を含
んでおり、そのままで使用でき、あるいは、吸蔵油を除去するために通常の条件
の初期脱油工程に付す。油の除去により、より硬い、よりパラフィン性の高いロ
ウが得られ、これを原料として使用することできる。脱油工程の副産物は、ロウ
下油と呼ばれ、これも本発明の方法の原料として使用してよい。ロウ下油は、元
の粗ロウ中に存在する芳香族のほとんどと、これら芳香族と共にほとんどの異項
原子を含む。粗ロウおよびロウ下油は、典型的には、接触脱ロウの前に予備処理
を必要とする。脱油されたロウの油含有量は、非常に低く、再現性よく測定する
には、ASTM D721の方法による油含有量測定が必要となる。これは、上
述のD−3225は、15重量%未満の油含有量では信頼性が低いからである。
しかしながら、10重量%未満の油含有量では、本発明の利点は、10〜50重
量%の油含有量におけるほど顕著ではないであろう。この理由から、上記要求を
満たすロウ原料を通常は使用する。
いくつかの典型的なロウの組成を以下の表1に示す。
典型的な粗ロウ原料は、下記表2の組成を有している。この粗ロウは、アラブ
ライト原油から得られた40℃で65cStの中性油の溶媒(MEK)脱ロウに
よって得た。
本発明において使用するのに適した別の粗ロウは、後記実施例3の一部として
示した表6に示す特性を有する。このロウは、重質中性フルフラール抽残油の溶
媒脱ロウにより調製される。先に説明したように、水素化異性化に用いる粗ロウ
を調製するために、水素化分解を採用してもよい。
水素化分解プロセス(所望工程)
予備処理工程として水素化分解を採用するなら、比較的高いパラフィン性の水
素化分解生成物を製造するように原料中の低品質芳香族成分の飽和および開環を
促進するために無定形二官能性触媒を使用するのが好ましい。水素化分解は、芳
香族の飽和に有利である高圧で実施するが、原料の飽和成分並びに芳香族成分の
飽和および開環により得られた生成物の分解を最小するために沸点範囲転換を比
較的低い水準に保持する。このような方法の目的と一致するように、水素化分解
段階における水素圧は、少なくとも5617kPaabsであり、通常6696〜
20786kPaabsの範囲にある。一般に、少なくとも1044kPaabsの水
素分圧が、高い水準の芳香族飽和を達成するためには、最もよい。少なくとも1
80n.1.1-1、好ましくは900〜1800n.1.1-1の範囲の水素循環速度が適当
である。
水素化分解プロセスでは、本発明の特徴である所望の高単流収率を維持するた
めに、潤滑油沸点範囲未満で沸騰する生成物、典型的には345℃−生成物への
原料の転化は、原料の50重量%以下に制限され、通常30重量%以下である。
実際の転化率は、原料の質に依存し、粗ロウについては、より低い品質の多環成
分を除去しなければならないペトロラタムに比べて、より低い転化率でよい。中
性ストックの脱ロウにより得られる粗ロウ原料の場合、345℃−生成物への転
化率は、すべての実用目的に対して、10〜20重量%を越えず、典型的にはほ
とんどの粗ロウについて5〜15重量%である。ペトロラタム原料では転化率を
より高くする。これは、ペトロラタムが典型的に低品質成分をより多く含んでい
るからである。ペトロラタム原料について、水素化分解転化率は、高粘度指数製
品を製造するには、典型的には15〜15重量%である。転化率は、水素化分解
段階での温度を制御することにより所望の値に維持できる。そのような温度は、
315〜430℃、より一般的には345〜400℃である。空間速度の変化も
苛酷度を制御するために利用できるが、システムに対する機械的制約の面から、
実際には一般的でない。通常、空間速度は0.25〜2LHSV,hr-1であり、一般
に0.5〜1.5LHSVである。
水素化分解操作の特徴は、2官能性触媒を用いることである。一般的に言うと
、
このような触媒は、所望の芳香族の飽和反応を促進する金属成分を含んでおり、
通常、鉄族(VIII族)からの金属とVIB族の金属とを組み合わせた卑金属の組み
合わせが用いられる。すなわち、ニッケルまたはコバルトのような卑金属がモリ
ブデンまたはタングステンと組み合わせられる。好ましい組み合わせは、ニッケ
ル/タングステンである。これは、この組み合わせが所望の芳香族水素化分解反
応を促進するのに非常に効果的であるからである。白金またはパラジウムのよう
な貴金属も、硫黄が存在しない場合には良好な水素化活性を有しているので用い
ることができるが、通常はそれ程好ましくない。触媒上に存在する金属の量は、
この種の潤滑油水素化分解触媒について通常の量であり、一般に、触媒全重量に
対して、VIII族金属1〜10重量%およびVI族金属10〜30重量%である。白
金またはパラジウムのような貴金属成分をニッケルまたはコバルトのような卑金
属に代えて用いる場合、これら貴金属のより高い水素化活性の故に、比較的少な
い量でよく、典型的には、0.5〜5重量%で十分である。金属は、あらゆる適
当な方法で組み込むことができ、例えば、多孔質担体を所望の寸法の粒子に成形
した後に含浸させることにより、または焼成の前に担体物質のゲルに添加するこ
とにより組み込むことができる。ゲルへの添加は、比較的多量の金属成分、例え
ばVIII族金属10重量%以上およびVI族金属30重量%以上を添加する場合に、
好ましい方法である。これらの方法は通常の方法であり、潤滑油水素化分解触媒
の製造に用いられている。
触媒の金属成分は、一般に、多孔質無定形金属酸化物担体に担持され、この目
的にはアルミナが好ましいが、シリカ−アルミナも用いることができる。他の金
属酸化物成分も、担体中に存在していてよいが、好ましくはない。潤滑油水素化
分解触媒の要求と一致するように、担体は、高沸点原料の比較的大きい成分が触
媒の内部孔構造に入り、そこで所望の水素化分解反応が起こるのを可能にする孔
径および分布を有する必要がある。この点で、触媒は通常50Åの最小孔径を有
する。すなわち、5%より少なくない孔が50Å未満の孔径を有し、孔の大多数
は50〜400Åの孔径を有する(5%を越えない孔が約400Åの孔径を有す
る)。好ましくは、30%を越えない孔が200〜400Åの孔径を有する。第
1段階にとって好ましい触媒は、孔の少なくとも60%が50〜200Åの範囲
にあるものである。水素化分解に使用するのに適したいくつかの典型的な潤滑油
水素化分解(LHDC)触媒の孔径分布および他の特性を下記表3に示す。
所望の転化率を得る為に必要なら、触媒調製時にフッ素を導入するかまたは原
料に添加したフッ素化合物の存在下に水素化分解を行うことにより、触媒の性能
をフッ素により向上させることができる。フッ素含有化合物は、調製時に適当な
フッ素化合物、例えばフッ化アンモニウム(NH4F)または二フッ化アンモニ
ウム(NH4F・HF)により含浸することにより組み込むことができる。例示
した2つのフッ化物の内、後者が好ましい。フッ素を含有する触媒中に含まれる
フッ素の量は、触媒の全重量に対して、通常1〜10重量%、好ましくは2〜6
重量%である。触媒調製時にフッ素化合物を金属酸化物担体のゲルに添加するこ
とにより、またはゲルを乾燥または焼成して触媒粒子を形成した後に含浸するこ
とにより、フッ素を組み込むこともできる。先に記載したように、触媒が比較的
多量のフッ素と多量の金属を含むなら、最終触媒を形成するためにゲルを乾燥お
よび焼成する前に金属酸化物ゲルに金属およびフッ素化合物を組み込むことが好
ましい。
触媒活性も、操作のこの段階で触媒上を通過する流れにフッ素化合物を添加す
るその場での(in situ)フッ素化により、所望の水準に保つことができる。フ
ッ素化合物は、原料へ連続的または断続的に添加することができ、あるいは、実
際に水素化分解が開始される前に触媒中のフッ素含有量を増すために、初期活性
化工程を、原料の不存在下に、すなわち水素気流中でフッ素化合物を触媒上に流
して行うことができる。このような方法による触媒のその場でのフッ素化は、操
作までにフッ素含有量を1〜10%にするように行い、その後、所望の活性を維
持するのに十分な維持量に減少することができる。その場でのフッ素化に適当な
化合物は、オルトフルオロトルエンおよびジフルオロエタンである。
触媒上に存在する金属は、好ましくは硫化物の形で用いられ、その為に、水素
化分解の開始前に触媒の予備硫化処理を行わなければならない。硫化処理は、確
立された技術であり、典型的には、通常水素の存在下に、触媒を硫黄含有ガスに
接触させて行う。この目的のためには、水素および硫化水素、二硫化炭素または
メルカプタン、例えばブチルメルカプタンの混合物が一般的である。予備硫化処
理は、触媒を水素および硫黄含有油、例えばサワー軽油または軽油と接触させる
ことによっても行える。
相乗的触媒プロセス
元のロウ原料中に含まれるパラフィン性成分は、良好な粘度指数特性を有して
いるが、そのパラフィン性の故に比較的高い流動点を有している。従って、本発
明の相乗的触媒プロセスの目的は、潤滑成分の特徴であるより分岐した種の転化
を最小にしながら、ロウ質種の選択的転化を行うことである。
ロウの転化は、より低い流動点および曇点を有するより分岐した種を生成する
異性化によって優先的に生じる。異性化に伴ってある程度の分解は起こり、分解
は、非常に低い流動点の潤滑油の製造に必要である。本方法の選択性は、第1の
触媒がロウ質種を異性化によって選択性に転化し、第2の触媒が残りのロウを異
性化および分解によって転化する2触媒システムを採用することにより、最大に
される。第1の触媒の孔構造の拘束は、第2の触媒の孔構造よりも著しく小さく
、
嵩高いロウ分子の転化を可能にし、曇点および濁った外観を、第2の脱ロウ触媒
を単独で用いた場合よりも低い程度に下げる。
水素化異性化触媒
水素化異性化工程で用いる触媒は、ロウ質の直鎖またはほぼ直鎖のパラフィン
類をロウ特性が低いイソパラフィン類に異性化する高選択性を有する触媒である
。この種の触媒は、特性として2官能性であり、比較的酸性度が小さい大孔径の
多孔質担体に担持された金属成分を含んでいる。酸性度は、操作のこの段階で潤
滑油沸点範囲外の沸点を有する生成物への転化を減少させるために、低い水準に
保たれる。一般的に言うと、触媒は、金属の添加前に30未満のアルファ値を有
すべきであり、好ましいアルファ値は20未満である(実施例1参照)。
アルファ値は、標準触媒と比べた触媒の接触分解活性のおおよその指標である
。アルファ試験は、アルファ値を1とする(速度定数=0.016sec-1)標準触
媒に対する試験触媒の相対的速度定数(単位時間当たり触媒単位体積当たりのn
−ヘキサン転化速度)を与える。アルファ試験は、米国特許第3,354,078
号、並びにジャーナル・オブ・キャタリシス(J.Catalysis)第4巻527(
1965);同第6巻278(1966);および同第61巻395(1980
)に記載されている。これらを、試験方法の記述について参照する。本明細書に
おいて言及されているアルファ値を決定するのに採用した試験の実験条件は、5
38℃の定温およびジャーナル・オブ・キャタリシス第61巻395(1980
)に記載されている可変流量を含む。
水素化異性化触媒は、大孔ゼオライトを含む。大孔ゼオライトは、通常多孔質
バイダーに担持されている。大孔ゼオライトは、通常、酸素12員環からなる少
なくとも1つの孔チャンネルを有している。大孔ゼオライトは、通常、7Åより
大きい主寸法を有する少なくとも1つの孔チャンネルを有している。ゼオライト
ベータ、Yおよびモルデナイトは、大孔ゼオライトの例である。
好ましい水素化異性化触媒は、ゼオライトベータを使用する。これは、ゼオラ
イトベータは、米国特許第4,419,220号に開示されているように、芳香族
の存在下でのパラフィン異性化に対して顕著な活性を有することが示されている
からである。ゼオライトベータの低酸性度形は、高シリカ形のゼオライト、例え
ばシリカ/アルミナ比が500:1以上のゼオライトの合成により得られ、より
簡単には、低シリカ/アルミナ比のゼオライトを所望の酸性度水準まで水蒸気処
理することにより得ることができる。また、そのようなゼオライトベータは、米
国特許第5,200,168号に開示されているように、酸、例えばカルボン酸に
より抽出することによっても得ることができる。米国特許第5,164,169号
は、合成用混合物中に四級アルケノールアミンのようなキレート化剤を用いるこ
とにより、高シリカゼオライトベータを製造することを開示している。
最も好ましいゼオライトは、激しく水蒸気処理され、骨格のシリカ/アルミナ
比が200:1以上である。好ましくは、シリカ/アルミナ比は400:1以上
、より好ましくは、シリカ/アルミナ比は600:1以上である。
水蒸気処理条件は、最終触媒において所望のアルファ値が得られるように調節
すべきであり、典型的には427℃〜595℃の温度で100%水蒸気の雰囲気
を用いる。通常、水蒸気処理は、酸性度を所望通り低下させるために、538℃
以上の温度において12〜120時間、典型的には96時間行われる。
他の方法は、ゼオライトの骨格アルミニウムの一部を他の3価原子、例えばホ
ウ素により置換することであり、ゼオライトのより低い固有の酸活性度が得られ
る。この種の好ましいゼオライトは、骨格ホウ素を含むものである。通常、ホウ
素は、他の金属の添加前にゼオライト骨格に添加される。この種のゼオライトで
は、骨格は、四面体配位し、酸素架橋により相互に結合された珪素から主として
構成される。少量の元素(アルミノシリケートゼオライトベータの場合はアルミ
ニウム)も配位し、骨格の一部を形成する。また、ゼオライトは、ゼオライトの
特徴的な構造を構成する骨格の一部は形成しないような物質を、構造の孔中に含
んでいてよい。「骨格」ホウ素という用語は、本明細書では、ゼオライトのイオ
ン交換能に寄与することにより示されるゼオライトの骨格中の物質を、孔中に存
在し、ゼオライトの全体のイオン交換能に影響を与えない物質から区別するため
に使用する。ゼオライトベータは、316℃〜399℃の温度において0.60
〜2.0の拘束指数を有する。1未満の拘束指数が好ましい。
骨格ホウ素を含む高シリカ含有ゼオライトの製法は、例えば米国特許第4,2
69,813号に記載されている。骨格ホウ素を含むゼオライトベータの製法は
、米国特許第4,672,049号に記載されている。それらに記載されているよ
うに、ゼオライトに含まれるホウ素の量は、例えばシリカおよびアルミナの原料
に対して異なる量のホウ酸を用いることにより、異なる量のホウ素イオンをゼオ
ライト形成用溶液に含ませることによって変化させることができる。これら特許
の開示を、このようなゼオライトを製造する方法の記載として引用する。
低酸性度ゼオライトベータ触媒は、少なくとも0.1重量%の骨格ホウ素、好
ましくは少なくとも0.5重量の骨格ホウ素を含むべきである。ホウ素は、他の
金属の添加前に骨格に添加される。通常、ホウ素の最大含有量は、ゼオライトの
5重量%であるが、多くの場合、ゼオライトの2重量%を越えない。通常、骨格
はいくらかのアルミナを含んでいる。シリカ/アルミナ比は、合成されたままの
ゼオライトの状態では、通常少なくとも30:1である。好ましいホウ素置換ゼ
オライトベータ触媒は、少なくとも1重量%のホウ素(B2O3として)を含む最
初のホウ素含有ゼオライトを、20を越えない、好ましくは10を越えない最終
アルファ値となるように水蒸気処理することにより、製造される。
特性
酸性度は、窒素化合物、例えばNH3または有機窒素化合物を原料と共に水素
化異性化触媒に導入することにより、減少することができる。しかしながら、原
料中の全窒素含有量は、100ppm、好ましくは20ppmを越えてはならない。触
媒は、触媒の強酸部位の数を減少させ、分解反応に対する異性化反応の選択性を
改良する金属を含んでいてもよい。この目的にとって好ましい金属は、IIA族に
属する金属、例えばカルシウムおよびマグネシウムである。
ゼオライトは、完成触媒を形成するために、マトリックス物質と複合化してよ
く、この目的には、通常の非常に酸性度の低いマトリックス物質、例えばアルミ
ナ、シリカ−アルミナおよびシリカが好ましいが、アルファベーマイト(アルフ
ァアルミナ一水和物)のようなアルミナ類を用いてもよい。ただし、これれらは
マトリックスに含まれるゼオライトに実質的な程度の酸性活性を与えない。ゼオ
ラ
イトは、通常、80:20〜20:80、典型的には80:20〜50:50の
ゼオライト:マトリックス重量比で、マトリックスと複合化される。複合化は、
物質を摩砕し、次いで所望の最終触媒粒子に押し出すことを含む、常套の方法で
行うことができる。ゼオライトをバインダーとしてのシリカと共に押し出すため
の好ましい方法は、米国特許第4,582,815号に開示されている。所望の低
酸性度を達成するために触媒を水蒸気処理しなければならない場合、通常通り、
触媒をバインダーとともに処方した後に行う。水蒸気処理した触媒に好ましいバ
インダーは、アルミナである。
水素化異性化触媒も、不飽和遷移種を介して進行し、水素化−脱水素化成分に
よる仲介を必要とする所望の水素化異性化反応を促進する為に、金属成分を含む
。触媒の異性化活性を最大にする為、強い水素化能を有する金属が好ましく、こ
の理由から、白金または他の貴金属、例えばレニウム、金およびパラジウムが好
ましい。貴金属水素化成分の量は、典型的に、全触媒の0.1〜5重量%、通常
0.1〜2重量%である。白金は、白金錯体イオン、例えば白金テトラアミンに
よるイオン交換を含む常套の方法、または溶解性白金成分、例えば白金テトラア
ミンクロリドのような白金テトラアミン塩の溶液による含浸により、触媒に組み
込むことができる。触媒は、貴金属を還元形に転化し、所望の機械的強度を触媒
に与える為に、通常の条件で最終的に焼成されてよい。使用する前に、水素化分
解予備処理用触媒について先に記載したように、予備硫化処理に付してもよい。
水素化異性化条件
水素化異性化工程(異性化工程とも呼ぶ)の条件は、ロウ質供給材料中のロウ
質、直鎖およびほぼ直鎖のパラフィン系成分の、ロウ質は少ないが高い粘度指数
であって比較的低流動点のイソパラフィン系物質への異性化の目的を達成するよ
うに、調節される。この目的は、非潤滑油沸点範囲の生成物(通常、345℃−
の物質)への転化を最小にしながら達成される。水素化異性化に使用される触媒
は、低い酸性度を有するため、低沸点生成物への転化は、通常比較的低いレベル
であり、また好適な苛酷度の選択によって、プロセスの操作を分解よりも異性化
にとって最適化することができる。1の通常の空間速度において、20よりも小
さいアルファ値の白金/ゼオライトベータ触媒を用い、水素化異性化の温度を代
表的には300〜415℃の範囲とすると共に、345℃−への転化率を、代表
的にはロウ質供給原料の5〜30重量%、より一般的には10〜25重量%とす
る。供給原料中のロウの約40〜90重量%が異性化工程において転化される。
しかしながら、温度はこの範囲外の温度、例えば260℃ほどに低い温度および
425℃までの温度であってもよいが、高温は通常好適ではない。なぜなら、水
素化反応は徐々に高い操作温度では熱力学的にやや好適ではない結果として、高
温では潤滑油生成物の低い異性化選択率および劣った安定性を伴うからである。
空間速度は、代表的には0.5〜2LHSV(hr-1)の範囲である。水素化異
性化工程からの流出物の流動点は、−1〜43℃、好適には5〜39℃である。
水素化異性化は、少なくとも5516kPaabs、通常は5167〜20786
kPaabs、最も通常には5517〜17339kPaabsの水素分圧(反応器入口
)で操作される。水素循環速度は、通常は90〜900n.1.1.-1の範囲である。
当初の供給原料中に存在する芳香族系成分のいくらかの飽和は、触媒上の貴金属
水素化成分の存在下に生じるため、所望の異性化反応が水素バランスの状態の場
合でさえ水素は水素化異性化において消費される。この理由から、水素循環速度
は、供給原料の芳香族分および水素化異性化に使用される温度にしたがい調節す
ることが必要となる。なぜなら、より高温では、より高いレベルの分解および、
その結果としてのより高いレベルのオレフィンの生成を伴うからであり、これら
のうちのいくつかは、潤滑油沸点範囲のものであり、このため生成物の安定性を
、飽和によって確実にすることが必要である。少なくとも180n.1.1.-1の水素
循環速度によって、所期の水素消費を補償するためならびに触媒の老化速度の低
下を補償するために十分な水素が通常得られる。
層間の急冷は、プロセスの温度の維持に望ましい。急冷剤として冷却水素が一
般に使用されるが、液体急冷剤、通常は再循環生成物も使用することができる。
形状選択性接触脱ロウ段階
異性化段階からの流出物は、よりロウ質の直鎖、n−パラフィンと共により高
融点の非n-パラフィンを含む。これらの望ましくない流動点への寄与のため、
および流出物が生成物の目標の流動点以上の流動点を有するため、これらのロウ
質成分の除去が必要となる。生成物の高粘度指数に寄与する所望のイソパラフィ
ン系成分を除去せずに、これを行うには、形状選択性脱ロウ触媒が使用される。
この触媒は、n−パラフィンと共にロウ質のわずかに分岐した鎖のパラフィンを
除去する一方、プロセス流中のより分岐した鎖のイソパラフィンを残す。形状選
択性接触脱ロウ方法では、異性化触媒、ゼオライトベータよりもn−パラフィン
およびわずかに分岐した鎖のパラフィンをより高度に選択するような触媒を用い
る。このため、相乗的方法のこの段階は、米国特許第4919788号記載のよ
うに実施する(この段階についての、この米国特許の記載をもって本明細書の記
載とする)。本発明の方法の接触脱ロウ工程は、アルミノ−ホスフェートのよう
な拘束された中間孔寸法の結晶性物質を基本とする、拘束された形状選択性脱ロ
ウ触媒を用いて実施する。拘束された中間孔寸法の結晶性物質は、少なくとも1
つの孔チャンネル(孔路)の10員酸素環と共に、8員環を有する交差孔チャン
ネルを有する。ZSM−23は、この目的に好適なゼオライトであるが、他の高
度に形状選択性のゼオライト、例えばZSM−22または合成フェリエライトZ
SM−35を、とくに軽質の原料について使用できる。シリコアルミノホスフェ
ート、例えばSAPO−11およびSAPO−41も選択性脱ロウ触媒として使
用することができる。
脱ロウ触媒として使用するのに適した触媒は、比較的拘束された中間孔寸法の
ゼオライトである。このような好適なゼオライトは、米国特許第4016218
号記載の方法によって測定されているように、1〜12の拘束指数を有する。こ
れらの好適なゼオライトはまた、それらの比較的拘束された拡散特性に関連する
特異的な収着特性によって特徴付けられる。この収着特性は、ゼオライト、例え
ばゼオライトZSM−22、ZSM−23、ZSM−35およびフェリエライト
について米国特許第4810357号に示された特性である。これらのゼオライ
トは、以下のような特異的な組合せの収着特性をもたらすような孔開口部を有す
る:
(1)P/Po=0.1並びに温度50℃(n−ヘキサン)および温度80℃(o
−キシレン)で測定した、3よりも大きいn−ヘキサン対o−キシレンの収着比
(容量%基準)、および
(2)538℃で測定した2を越えるk3MP/kDMBの速度定数比でもって、n−
ヘキサン/3-メチルペンタン/2,3-ジメチルブタン混合物(重量比1/1/
1)から、538℃および1気圧において2つの分岐を持つ2,3-ジメチルブ
タン(DMB)よりも3-メチルペンタン(3MP)を選択的に分解する能力。
前記式:P/Poは、例えば文献〔“The Dynamical Char
acter of Adsorption”(J.H.deBoer)第2版、
Oxford University Press(1968)〕に記載のよう
なその通常の意味と一致しており、また収着温度における収着質の分圧:収着質
の蒸気圧の比率として定義される相対的圧力である。速度定数比、k3MP/kDMB
は、一次速度論から、常法に従い、以下の式によって決定される:
k=(1/Tc)ln(1/1−ε)
式中、kは、各成分の速度定数、Tcは接触時間、εは各成分の転化率である
。
これらの収着条件に適合するゼオライトには、天然のゼオライトフェリエライ
ト並びにZSM-22、ZSM-23およびZSM-35が包含される。これらの
ゼオライトは、本発明の方法に使用する場合、少なくとも部分的に酸形または水
素形である。
ゼオライトZSM-22の調製および特性は、米国特許第4810357号(
Chester)に記載されており、この開示をもって本明細書の記載とする。
合成ゼオライトZSM-23は米国特許第4076842号および第4104
151号に記載され、このゼオライト、その調製および特性についての開示をも
って本明細書の記載とする。
ZSM-35と呼ばれる中間孔寸法の合成結晶性物質(「ゼオライトZSM-3
5」または単に「ZSM-35」)は、米国特許第4016245号に記載され
ており、このゼオライトおよびその調製についての開示をもって本明細書の記載
とする。SAPO-11の合成は、米国特許第4943424号および第444
0871号に記載される。SAPO-41の合成は、米国特許第4440871
号に記載される。
フェリエライトは、文献記載の天然の鉱物であり(例えばD.W.Breck
,ZEOLITE MOLECULAR SIEVES,John Wiley
and Sons(1974)125〜127、146、219および625
頁参照)、このゼオライトについての開示をもって本明細書の記載とする。
形状選択性接触脱ロウに使用される脱ロウ触媒には金属水素化-脱水素化成分
が包まれる。この成分は、選択性分解反応の促進に厳密には必要でないかもしれ
ないが、この成分の存在は、2触媒脱ロウ系の相乗作用に寄与する、ある種の異
性化反応の促進に望ましいことが判明している。金属成分の存在は、生成物の改
善、とくに粘度指数の改善および安定性並びに触媒老化の遅延寄与につながる。
形状選択性接触脱ロウは、通常水素雰囲気下に加圧して実施する。金属は、好適
には白金またはパラジウムである。金属成分の量は、代表的には0.1〜10重
量%とできる。マトリックス材料およびバインダーは必要に応じて使用すること
ができる。表5は、白金含有ZSM−23触媒の特性を示す。
高度に拘束された高形状選択性の触媒を用いる形状選択性脱ロウは、第1異性
化段階について前記したもののような、他の接触脱ロウ方法と同じ常法で実施す
ることができる。よって条件は、水素雰囲気下に高い温度および圧力、代表的に
は250〜500℃、より一般的には300〜450℃、多くの場合370℃以
下の温度とすることができる。圧力は、20786kPa(絶対圧)まで、より
一般的には17339kPa(絶対圧)の範囲である。空間速度は、0.1〜10
hr-1(LHSV)、より一般的には0.2〜5hr-1の範囲である。水素循環
速度は、500〜1000n.1.1.-1、より一般的には200〜400n.1.1.-1の
範囲である。形状選択性接触脱ロウ工程についてのより詳細な説明は、米国特許
第4919788号を参照。前記したように、水素を床間急冷剤として用いて、
反応器の最大温度制御を得ることができる。実施例6および図4は、統合触媒系
においてZSM-23をゼオライトベータと組み合わせて用いる効果を示す。本
来は形状選択性触媒であるが、白金/ZSM-23は、増分(インクレメンタル
)異性化能力をも含む。
脱ロウ工程における、低沸点類への転化の程度は、この時点で所望の脱ロウ化
の程度、即ち目標の流動点と異性化工程からの流出物の流動点の差異に従い変化
させることができる。また転化の程度は、使用される形状選択性触媒の選択率に
依存しうる。より低い生成物流動点において比較的小さい選択性の脱ロウ触媒を
用いた場合、より高い転化率および対応するより高い水素消費量に遭遇する。一
般的な条件では、潤滑油範囲外の沸点、例えば315−℃、より代表的には34
5℃−の生成物への転化率は、少なくとも5重量%、殆どの場合少なくとも10
重量%であると共に、必要な選択性の触媒を用いて最も低い流動点を達成するた
めにのみ、30重量%までの転化率が必要である。345℃基準の沸点範囲の転
化率は、通常10〜25重量%の範囲である。
油の流動点を選択的脱ロウによって所望の値に低下させたのちに、脱ロウした
油を水素化処理のような処理に付して、着色体を除去すると共に所望の特性の潤
滑油生成物を製造することができる。分別結晶化を用い、軽質油分を除去して揮
発度の規格に適合させることができる。
潤滑油の収率、粘度指数および他の生成物特性に関し、本発明によって達成さ
れる非常に有利な結果が、2つの接触段階の相乗的機能に帰することは、明白で
ある。第1段階において、大孔のゼオライトは、供給原料中の高分子量ロウ質種
、すなわち供給原料中の後段留分に対し、従来からの脱ロウ触媒よりもより優先
的に作用して、このような物質を最小の分解で異性化する。これら高分子量ロウ
質種は、脱ロウ方法においてほぼ完全に除去されなければ、ほぼ室温において高
い曇り点および不透明な外観に寄与する。大孔寸法のゼオライトの孔構造への接
近は、従来からの脱ロウ触媒の孔構造への接近よりもより少ない程度でしか制限
されないため、大孔寸法のゼオライトは、分岐鎖種の分解によって収率および粘
度指数の実質的な損失を被ることなく、供給原料を低流動点(−12℃よりも低
い流動点)に脱ロウすることができない。しかしながらゼオライトベータは、2
工程脱ロウ方法への供給原料中のロウの40〜90%、より好適には50〜80
%を転化するように操作する際に、嵩高いロウ分子を選択的に転化するのに有効
である。約345℃+を基準に異性化工程に存在する生成物の流動点は、供給原
料
の特性に依存するが、代表的には5〜32℃である。これとは対照的に中間孔の
触媒は、供給原料の前段留分(低沸点成分)中のロウを除去する際により有効で
ある。以下の実施例6および図4に記載のように、中間孔寸法のモレキュラーシ
ーブ、例えば白金/ZSM-23は、形状選択性脱ロウ能力に加え、増分異性化
能力を有する。すなわち、中間孔寸法のモレキュラーシーブのこれらの特性を、
前記したような大孔寸法のゼオライトの特性と組み合わせて適用することによっ
て、2つの種類のゼオライトを最も有効に利用するような相乗的接触脱ロウ方法
の実現が可能になる。大孔寸法のゼオライトは、第1段階において異性化によっ
てロウ質パラフィンをロウ質が少ないイソパラフィンに転化させるのに用い、こ
れにより供給原料の後段留分中のロウ質成分に対し優先的に作用させる。次いで
部分的に脱ロウした供給原料を、中間孔寸法のゼオライトによって処理して残存
ロウ質成分を転化させると、最終生成物は、低流動点および低曇り点を有するこ
とになる。
生成物
本発明の方法による生成物は、優れた収率で得られる、高粘度指数、低流動点
および低曇り点の物質である。優れた粘度特性を有することに加え、本発明の生
成物は、酸化的および熱的に非常に安定性が高い。生成物は、また紫外線に露出
させた場合に安定である。プロセスに好適なロウ供給原料を用いれば、130〜
150範囲の粘度指数値が代表的に得られる。−18℃の流動点で少なくとも1
40の値を容易に達成できると共に、流動点−18℃の生成物収率は、当初のロ
ウ供給原料に基づき、少なくとも50重量%、通常少なくとも60重量%である
。パラフィンの、低流動点において高粘度指数のイソパラフィンへの異性化は、
低流動点と高粘度指数の特異的な組み合わせを有する潤滑油生成物の製造を可能
にする。代表的には、現時点での生成物は130〜150℃範囲の粘度指数(流
動点−18℃)および120〜145℃範囲の粘度指数(流動点−40℃)を有
する。
実施例
次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって
制限されるものではない。以下の実施例1および2は、各々、低酸性度白金/ゼ
オライトベータ触媒および白金/ZSM-23触媒の製造例を示す。
実施例1
Hisi1233沈降シリカおよびLUDOX HS-40ナトリウム-安定化
コロイド状シリカを用い、65%のゼオライト組成で全SiO2/Al2O3比=
40のゼオライトベータを結合した。混合物を3%NaOH溶液を用いて押出成
形し、これにより1/16”の四葉状押出成形品を形成した。触媒を窒素雰囲気
下、482℃にて3時間焼成し、次いで大気中にて538℃でさらに6時間焼成
した。焼成ののち、押出成形品を2Mシュウ酸によって6時間、71℃で処理し
た。酸抽出の後、触媒を大気中で538℃にて焼成し、白金を触媒に、Pt(N
H3)4Cl2を用いるイオン交換によって添加した。白金の添加後、触媒を乾燥
し、大気中で349℃で3時間焼成した。触媒の特性を表4に示す。
実施例2
全SiO2/Al2O3比=120のZSM-23ゼオライトをVersalアル
ミナと共に1/16”の円筒形押出成形品に押出成形した。押出成形ののち、材
料を窒素雰囲気下、538℃で3時間焼成し、次いで室温に冷却した。これを、
次いでアンモニウム交換してナトリウムレベルを減少させ、538℃で6時間空
気焼成し、その後482℃で4時間スチーム処理した。スチーム処理ののち、触
媒を室温まで冷却し、次いで白金を、Pt(NH3)4Cl2を用いるイオン交換
によって触媒に添加した。白金添加ののち、触媒を乾燥し、349℃にて3時間
焼成した。触媒の特性を表5に示す。
実施例3
重質中性フルフラールラフィネートの溶剤脱ロウによって得られた粗ロウ(H
NSW)を、市販のフッ化-NiW/Al2O3触媒を用いて低沸点範囲の転化率
(345℃またはそれ以下に対する9%の転化率)で水素化分解することによっ
て前処理した。粗ロウの水素化分解はロウ中窒素分の低下およびロウ中吸蔵油の
高粘度指数成分への向上に役立つ。水素化分解の条件は、1LHSV、393℃
、8375kPa(絶対圧)および712n.1.1.-1循環であった。粗ロウおよび
穏やかに水素化分解した粗ロウの特性を、表6に示す。
実施例4
実施例1の白金/ゼオライトベータ触媒および実施例2の白金/ZSM-23
触媒約70ccを2つの別の反応器内に充填した。ゼオライトベータは第1反応
器内に充填し、ZSM-23は第2反応器内に充填した。実施例3の穏やかに水
素化分解した粗ロウをゼオライトベータ含有第1反応器に、水素と共に下方並流
で供給した。第1反応器からの流出物全量は第2反応器を迂回させた。実験の条
件は以下のとおりである。
LHSV、時-1 1.0
H2、n.1.1.-1 712n.1.1.-1
圧力 13891kPaabs
反応プロセスからの液体生成物全量を、模擬化した蒸留によって分析し、次い
で公称345℃+カットッポイントに蒸留した。蒸留残液を粘度および流動点に
ついて分析した。図1は、白金/ゼオライトベータ(単独使用)の流動点に対し
粘度指数が変化する状態を示す。図3は、蒸留残液の流動点を減少させるにつれ
て、各粘度指数が変化する状態を示す。潤滑油の収率は、穏やかな水素化分解前
処理工程へのHNSW(重質中性粗ロウ)供給原料に基づく。
これらの実験から生成した液体生成物のいくつかを−18℃の流動点に溶剤脱
ロウした。溶剤脱ロウ化潤滑油の収率とロウ転化率の関係を図4に示す。ロウ転
化率は、以下の式によって定義される。
ロウ転化率=(供給原料のロウ分−反応生成物のロウ分)/供給原料のロウ分
低酸性度白金/ゼオライトベータは、ロウ転化率55〜60%までの軽質生成
物へのミネラル(mineral)分解によってロウを潤滑油に転化する、有効な異性
化触媒である。ロウ転化率を80%以上に増加させる場合、白金/ゼオライトベ
ータの孔構造への接近が容易な異性化パラフィンは、それらが残留ロウの異性化
によって形成されうるよりもより急速に分解する。その結果、収率が急速に減少
すると共に、転化率はさらに増加する。
実施例5
実施例3の穏やかに水素化分解した粗ロウは、第1反応器を迂回させると共に
白金/ZSM-23含有第2反応器に供給した。プロセス条件は、実施例4の条
件と同じである。液体生成物全量を実施例4のように処理した。残液の流動点に
対する粘度指数および収率の変化を、各々図1および3に示す。
図1は、白金/ゼオライトベータまたは白金/ZSM-23のいずれかによる
異性化/脱ロウについて、粘度指数が流動点の減少につれて急激に減少すること
を示す。流動点に対する粘度指数の変化を示す曲線の傾斜は、反応を白金/ゼオ
ライトベータまたは白金/ZSM-23を単独で用いて行うと、所定の流動点に
おいて類似する。所定の流動点において、白金/ゼオライトベータについてより
も白金/ZSM-23の方が粘度指数の数値が約5〜6より高いにもかかわらず
、白金/ゼオライトベータまたは白金/ZSM-23単独のいずれかの使用によ
って135よりも大きな粘度指数を有する潤滑油原料を製造して、−12の流動
点に潤滑油を脱ロウすることはできない。単独で作用するこれら触媒のいずれか
によって135+の粘度指数の基礎原料を製造するには、代表的には85%より
も小さいロウ転化率を達成する触媒の作用と共に、残留ロウを溶剤脱ロウによっ
て生成物から除去することが必要である。
実施例6
実施例3の穏やかな水素化分解粗ロウを白金/ゼオライトベータ反応器に供給
すると共に、白金/ゼオライトベータからの流出物を白金/ZSM-23に通し
た。両方の反応器は、実施例4の条件(各反応器について1LHSV)で操作し
た。ゼオライトベータを322℃で作用させて、穏やかな水素化分解ロウ質供給
原料中の約70%のロウを転化する。ここで、ロウ転化率は実施例4の式によっ
て定義される。
第1反応器からの生成物の試料を、流動点30℃を有することが判明した34
5℃釜残液と共に蒸留した。第1反応器からの流出物全量を白金/ZSM-23
反応器においてカスケード処理し、第2反応器の温度を変化させて、生成物の流
動点を変化させた。釜残液の流動点に対する粘度指数および収率の変化を、各々
、独立して触媒を作用させることによって得られた各変化と、図2および3によ
って比較した。
白金/ゼオライトベータを蒸留釜残液(流動点30℃)に作用させると共に、
残留ロウを白金/ZSM-23と共に除去すると、図2に示すように、単独で作
用するいずれの触媒によって生成された潤滑油よりも、流動点変化に対しより鋭
敏ではない粘度指数を有する潤滑油が得られる。統合相乗的触媒系は、単独作用
の触媒のいずれでも起こらない−12℃の流動点において135+の粘度指数を
有する潤滑油を製造することが可能になる。
比較的浅い傾斜は、非常に低い流動点を、実質的な粘度指数の損失を受けるこ
となく達成できることも意味する。
また統合触媒系は、単独作用触媒(図3)のいずれよりも著しい収率上の利点
を与える。白金/ゼオライトベータが322℃で作用する、白金/ゼオライトベ
ータ曲線部分から分岐する分岐線の浅い傾斜は、非常に低い流動点を実質的な収
率の損失を被ることなく相乗作用触媒系によって達成できることを意味する。
この系の相乗作用は、2つの触媒の形状選択性が相違して、それらのロウ異性
化能力が相違することを反映している。白金/ZSM-23の増分異性化能力は
、図4に示され、これは、−12℃よりも大きい流動点を有する、これらの実験
によって形成した生成物のロウ転化率の関数としての溶剤脱ロウ潤滑油を示す。
75%よりも大きいロウ転化率の脱ロウ油の収率は、単独作用白金/ゼオライト
ベータでは減少する。しかしながら、白金/ゼオライトベータ流出物を脱ロウす
る白金/ZSM-23を用いると、溶剤脱ロウ潤滑油の収率の増加が得られ、こ
れは、白金/ZSM-23が増分異性化能力をも含むことを意味する。ある種の
ロウ質種を潤滑油に転化することに加え、白金/ZSM-23は、白金/ゼオラ
イトベータよって形成した大半のイソパラフィンが分解して潤滑油の収率を低下
させることを防止する。
実施例7
実施例3の穏やかに水素化分解した粗ロウを白金/ゼオライトベータ反応器に
、実施例4の条件で供給した。白金/ゼオライトベータ反応器を329℃で操作
して、約88%のロウ転化率(実施例4で定義)を達成した。第1反応器からの
生成物の試料を蒸留すると、345℃の釜残液は、流動点16℃を有することが
判明した。第1反応器からの流出物全量を白金/ZSM-23反応器に供給し、
第
2反応器の温度を変化させて生成物の流動点を変化させた。釜残液流動点に対す
る粘度指数および収率の変化を、各々図2および3に示す。潤滑油の収率は、水
素化分解反応器に供給した重質中性粗ロウを基準とする。
実施例6と同様に、流動点に対する粘度指数および潤滑油収率の曲線の傾斜は
、単独作用触媒のいずれの場合よりも実質的に浅い。これは、二重触媒系の相乗
作用が白金/ゼオライトベータ作用条件の範囲に存在することを意味する。実施
例3は、低い流動点、例えば−12℃よりも低い流動点の収率は、2触媒系が最
も高いことを示す。いずれの単独作用触媒も、55%を越える収率が得られない
のに対し、2触媒系の2つの各実施例は、−12℃の流動点において少なくとも
60%の収率が得られる。
表7は、10°Fの流動点の潤滑油について、実施例4〜7の収率および粘度
指数の比較を示す。
実施例8
実施例3の穏やかに水素化分解した粗ロウを、白金/ゼオライトベータを用い
実施例4の条件で処理して、約82%のロウ転化率を達成した。反応器流出物全
量を、白金/ZSM-23を用い、温度346℃で処理した。反応生成物を公称
345℃のカットポイントに蒸留した。蒸留釜残液は以下の特性を有する。
この実施例は、統合的白金/ゼオライトベータ/白金/ZSM-23触媒系が
非常に低い流動点において135℃を越える粘度指数を有するベースストックを
生成できることを示す。−24℃の優れた曇点は、ZSM-23に先立ち、ゼオ
ライトベータで供給原料を処理する利点を反映する。ゼオライトベータは、拘束
された孔特性が小さいため、しばしば大きな流動点/曇点の差をもたらす大きな
ロウ質分子を転化する能力を有する。ZSM-23のような中間孔寸法のゼオラ
イトは、しばしば低流動点の基礎原料と共に比較的高い曇点をもたらす高分子量
のロウを転化するのがより困難である。
UV吸光度の測定は、粘度指数が高く芳香族が少ないベースストックの生成の
ためには高い圧力が有効であることを示す。
実施例9
以下の特性を有する、重質水素化分解真空蒸留物を、単独作用白金/ZSM-
23および白金/ゼオライトベータ//白金/ZSM-23接触脱ロウ系によっ
て脱ロウした。
API比重 30.3
粘度、KV、100℃、cSt 9.90
流動点、℃ 49
硫黄、ppm <20
窒素、ppm 2
ロウ分、% 15模擬蒸留、℃
初留点 368
5%オフ 385
10% 399
50% 485
90% 564
以下の表に示したデータは、収率が少なくとも同等であって場合により一定の
流動点においてわずかに高い点で、低ロウ分供給原料に対する、組み合わせ触媒
系のわずかな相乗作用を示す。白金/ゼオライトベータ触媒の拘束が少ない特性
によって、組み合わせ触媒系について曇点の低下をもたらす高沸点ロウのある種
の増分転化が可能になる。これは、とくに臨界的な利点である。なぜなら、高い
形状選択性脱ロウ触媒が、重質供給原料の脱ロウの際に高い曇点を有する不透明
な生成物を形成しうるからである。
実施例10
650SUS重質中性粗ロウを、水素化分解し、ストリッピングしてアンモニ
アおよびH2Sを除去した。以下の特性を有する物質を生成した。
API比重 37.4
硫黄、ppm 2
窒素、ppm <2
650°F+留分の油分、℃ >49模擬化蒸留、℃
初留点/5%留去 125/255
10%/20% 330/434
50%/80% 497/527
90%/終留点 538/566
この水素化分解した物質を、実施例2の白金/ZSM-23触媒を用いて非常
に低い流動点に脱ロウした。またこの物質を非常に低い流動点に、白金/ゼオラ
イトベータ//白金/ZSM-23触媒系を用い、白金/ゼオライトベータ温度
を水素化分解供給原料中のロウの65%が転化するように維持しながら脱ロウし
た。ロウ転化率は実施例4に定義したものである。二重触媒系に用いた白金/Z
SM-23触媒は、実施例2で使用した触媒と同じである。
ベータゼオライトをVersal250プソイドベーマイトアルミナと共に押
出成形して1/16”の押出成形品を形成した。押出成形品を、乾燥し、窒素雰
囲気下に3時間、482℃で焼成し、次いで大気中で1000℃にて6時間焼成
した。焼成後、押出成形品を100%のスチームによって549℃で96時間ス
チーム処理した。白金を押出成形品に、テトラアミン塩化白金の水溶液によるイ
オン交換によって組み込み、これにより0.6重量%の充填を達成した。次いで
、触媒を大気中にて349℃で3時間焼成した。
脱ロウした生成物を公称345℃+のカットポイントに蒸留し、流動点および
曇り点を測定して、以下の結果を得た。
この実施例は、白金/ゼオライトベータを用いる高流動点ロウの増分転化が低
い生成物曇り点をもたらすことを示す。白金/ZSM-23は、接近可能な構造
が少ないため、比較的高い曇り点をもたらす供給原料沸点全範囲のロウ質種を転
化する際に、同等の効果を示さない。
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