JPH10503820A - 内燃エンジン用燃料噴射装置 - Google Patents
内燃エンジン用燃料噴射装置Info
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Abstract
(57)【要約】
燃料噴射装置(1)は、ノズル(7)内に開放した貫通燃料通路(6)を有する。圧縮ばね(17)は、長手方向に移動自在の弁スライダを閉鎖方向に付勢する。圧縮ばねの一端にある第1ピストン(21)は、不動の構成要素(9)とともに、チャンネル(24)を通して燃料通路(6)と連通した第1圧力チャンバ(28)を構成する。第2圧力チャンバ(34)は、第1ピストン及び第2ピストン(29)によって構成されている。第1ピストンを、チャンバ内の容積が最少の端位置から、第1圧力チャンバ内の燃料圧力によって押し離したとき、二つのチャンバ間の長手方向連結部(35)が開放し、その結果、圧力が第2圧力チャンバ内に発生する。チャンバ内に発生した圧力により、圧縮ばねに負荷を自動的に加える。第2チャンバ内に閉じ込められたオイルは、燃料噴射装置がその閉鎖位置にある場合に、圧縮ばねを負荷が加わった状態に保持する。
Description
【発明の詳細な説明】
内燃エンジン用燃料噴射装置
本発明は、内燃エンジン、特に大型の2ストロークディーゼルエンジン用の燃
料噴射装置に関する。この燃料噴射装置は、シリンダカバーに取り付けるための
外ハウジングと、ノズル内に開放した貫通燃料通路と、負荷が予め加えてある圧
縮ばねによってその弁座に向かう所定方向に作用が及ぼされ、燃料通路内の燃料
の圧力によって逆方向に作用が及ぼされる、スライダ案内体内で長手方向に移動
自在の弁スライダと、ハウジング内で軸線方向に移動自在であり、圧縮ばねの一
端に配置されており、ばねから遠ざかる方向に向いた第1面を持ち、チャンネル
を通して燃料通路と連通した第1圧力チャンバを不動の構成要素とともに構成す
る第1ピストンとを有し、前記圧縮ばねは、第1圧力チャンバ内の最少の燃料容
積で第1ピストンを端位置に向かう所定方向に押圧する。
日本国特許第1851989と対応するデンマーク特許第152 619号に
記載されたこのような噴射装置にあっては、燃料通路から第1圧力チャンバまで
延びるチャンネルは、スロットルチャンネルとして設計されているため、チャン
ネル内の圧力は、所定の遅延を伴って燃料通路内の現在の圧力に追従する。噴射
期間中に燃料の圧力が上昇すると、圧力チャンバ内の圧力もまた増大するため、
第1ピストンが閉鎖ばねに向かって押し付けられ、該ばねが弁スライダにその弁
座に向かう方向に作用する力を増大し、これによって、噴射装置の閉鎖圧力が増
大する。
これにより、閉鎖圧力、即ち送出期間の終わりに弁スライダをその弁座に向か
って移動させる圧力が、通常は、開放圧力、即ち送出期間の始めに弁スライダを
その弁座から持ち上げて離す燃料通路内の圧力よりも小さいという問題点が解決
された。閉鎖圧力が小さいのは、噴射装置が閉鎖位置にあるとき、燃料の圧力が
弁スライダの有効領域に作用するためである。弁スライダの有効領域は、弁スラ
イダがその開放位置にある場合よりも小さく、その場合には、圧力は座面の下の
スライダ領域にも作用する。
前記デンマーク特許に記載された噴射装置では、第1ピストンは、噴射装置の
送出期間中及びこの期間の終了直後に調節移動を連続的に行う。このため、ピス
トンの案内面が無視できない程度に摩耗し、従って、圧力チャンバからの漏れが
大きくなる。各送出期間の終了後、圧縮ばねは第1ピストンを後方にその端位置
まで押し、圧縮チャンバ内の燃料の容積を最少にし、その結果、噴射装置の開放
圧力には、圧縮ばねの油圧負荷によって作用が及ぼされない。
エンジンのシリンダ内の圧縮圧力は、エンジンの負荷で決まり、そのため、全
負荷時の圧力は低負荷時よりもかなり高い。全負荷時の圧縮圧力は、例えば約1
20バールであるが、アイドリング負荷時の圧縮圧力は約40バールである。
弁スライダがその閉鎖位置にあるとき、エンジンのシリンダ内の圧力は、ノズ
ル穴を通り、これに沿って座面の下のスライダ領域まで、即ち、弁座のノズル側
に位置決めされたスライダ区分まで拡がる。従って、現在の圧縮圧力が弁スライ
ダに作用し、所定の力が開放方向に作用する。かくして、圧縮圧力がエンジンの
負荷に従って増大するため、周知の噴射装置の開放圧力は、高エンジン負荷時に
低下する。大型の2ストロークディーゼルエンジン用の代表的な燃料噴射装置で
は、開放圧力は、アイドリング負荷時の400バールからエンジンの全負荷時の
325バールにまで低下する。全負荷時の開放圧力が低いため、噴射期間の開始
時に燃料の霧化が促進されない。
エンジンの低負荷時には、噴射装置内の燃料圧力はその開放圧力によって決ま
る。これは、燃料ポンプが、ノズル内の流れ抵抗が燃料の圧力に全く影響しない
程少量の燃料しか供給しないためである。これに反し、エンジンの高負荷時にポ
ンプから圧送される燃料の量は、非常に大きいため、ノズル内での流れ抵抗は噴
射装置内の燃料圧力に対して決定的要因となる、即ち燃料圧力は、この場合には
噴射装置の開放圧力よりもかなり高くなる。
周知の噴射装置の開放圧力は、圧縮ばねの予負荷によって決定される。ばねの
製造には製造上の特定の許容誤差が適用され、その結果、内燃エンジン内の燃料
噴射装置は、必ずしも、全てが正確に同じ開放圧力に設定されているわけではな
い。噴射装置毎の開放圧力のばらつきは、エンジンの長期間に亘る作動の後、更
に大きくなる。これは、作動中にばねが弛む、即ちばね力が或る程度低下するた
めである。かくして、噴射装置の開放圧力は経時的に変化し、そのため、エンジ
ンの十分な作動を維持するため、ばねの制御及び再調節を定期的に行わなければ
ならない。これには手間がかかり、望ましくない。
本発明の目的は、エンジンの高負荷時の開放圧力を増大し、保守の必要性が低
い燃料噴射装置を提供することである。
この目的に鑑み、本発明による燃料噴射装置は、ばねが第2ピストンに力を伝
達するように連結されており、第2ピストンは、ばねから遠ざかる方向に向いて
おり、第2圧力チャンバの端壁を構成する第2面を持ち、前記端位置から遠ざか
る方向への移動時に第1ピストンが第1圧力チャンバと第2圧力チャンバとの間
の流れ連結部を開放し、第2圧力チャンバの有効断面領域は、第1チャンバより
も大きく、制限されたドレン通路が第2圧力チャンバをドレンに連結する。
上述のように、エンジンの負荷が増大すると、ノズル内での流れ抵抗のため、
燃料通路内の圧力が上昇する。かくして、第1圧力チャンバ内の圧力も増大し、
これにより第1ピストンが移動し、第1圧力チャンバと第2圧力チャンバとの間
の流れ連結部が開き、所定量の燃料が第2圧力チャンバに流入する。この第2圧
力チャンバの有効断面積が第1チャンバよりも大きいため、第2チャンバ内で発
生する圧力により第1ピストンが最少の燃料容積でその端位置に戻され、これと
同時に、第1ピストンがチャンバ間の流れ連結を遮断するため、第2圧力チャン
バ内に所定量の燃料が閉じ込められる。第2ピストンがばねに力を伝達するよう
に連結されているため、ばねはチャンバの充填に従って短くなり、これにより、
ばね力が高くなる。少量の燃料がドレンされることを別にすれば、燃料は、燃料
を再度噴射するために燃料噴射装置を再び作動させなければならなくなるまで圧
力チャンバ内に閉じ込められたままであり、及びかくして、大きなばね力を維持
する。これは、燃料噴射装置の開放圧力及び閉鎖圧力の両方を大きくする。
エンジン負荷の上昇のため、次の噴射期間中の燃料通路内の最高圧力が前の噴
射期間中の最高圧力よりも高くなった場合には、第1圧力チャンバ内の燃料圧力
が第1ピストンに、対抗するばね力よりも大きい力を及ぼす。これにより第1ピ
ストンが移動し、チャンバ間の流れ連結部が開放する。チャンバ間の流れ連結部
は、第2圧力チャンバ内の圧力が上昇し、ばね力が、第1圧力チャンバの有効断
面領域に作用する燃料圧力よりも僅かに大きくなるまで開放したままである。ば
ね力が大きくなると、第1ピストンがその端位置に再び戻り、チャンバ間の流れ
連結部を遮断する。
ドレン通路が制限されているため、少量の燃料が第2圧力チャンバからドレン
し続ける。これにより、ばねの負荷及びかくして燃料通路内の最高圧力が減少す
ると、ばねの負荷も減少する。負荷が減少しない場合には、ドレンされてなくな
る燃料の量は、燃料がドレンされてなくなるために第2圧力チャンバ内の圧力が
僅かに下がるため、次の噴射期間で新たな燃料に代わり、その結果第1ピストン
は流れ連結部を再び開放することができる。
エンジンの上方の負荷範囲内の特定の負荷での燃料噴射装置の開放圧力は、第
1チャンバの有効断面積で決まる。このような領域は、非常に高精度に製造でき
るため、エンジンの全ての燃料噴射装置は、それ自体を同じ開放圧力及び閉鎖圧
力を持つように調節する。圧縮ばねのばね特性及びこれらのばねの作動期間中の
種々の弛みにおける、製造によって決まる種々のバラツキは、これらのばねが、
噴射装置内の最高燃料圧力に合わせて調節された同じばね力を生じるまでこれら
のばねを圧縮することによって等しくされる。この調節は、エンジンの作動中に
自動的に行われ、これによって、噴射装置を定期的に手作業で調節する必要の大
部分をなくす。
流れ連結部を、第1ピストンの移動時に、第1ピストンによって覆われたり、
露呈されたりする側開口部を持つように設計することは可能であるが、第1ピス
トンに、不動の構成要素に設けられた対応する座区分との接触によって、第1圧
力チャンバと第2圧力チャンバとの間の流れ連結部を遮断する座区分を備えるよ
うにすることが好ましい。このような座区分は、燃料噴射装置において、非常に
信頼性が高いということが多年に亘って証明されている。これらの座区分は、大
きな圧力差に耐えることができるよく構成された閉鎖体を製造する。
ドレン通路の大きさは、好適には、エンジンの全負荷作動中にドレンされる容
積が、第2圧力チャンバの燃料容積の1/2乃至1/20の範囲であるように制
限されている。ドレンされる容積が1/2以上である場合には、特にエンジンの
低負荷時に、開放圧力を所望の通りに増大させるのが困難であり、更に、各噴射
期間毎に第2圧力チャンバを再充填しなければならないため、ピストンの移動が
大きくなり且つ頻繁になる。このことは、エンジンの負荷が一定である場合にも
いえる。ドレンされる容積が1/20以下である場合には、開放圧力は、エンジ
ンの負荷が突然低下したとき、不適当な程ゆっくりと下がる。前記ドレン比はエ
ンジンの全負荷時に適用される。
一実施例では、第1圧力チャンバの有効断面領域は、弁スライダの開放領域よ
りも小さい。この結果、第1ピストンは、ばねの機械的な予負荷のみによって作
り出された噴射装置の開放圧力により燃料の圧力が決定される場合、上述のエン
ジンの低負荷時に端位置にとどまる。エンジンの高負荷時に燃料の圧力が上昇し
た場合にのみ、第1チャンバの有効断面領域に作用する圧力により、ばね力に打
ち勝って第1ピストンをその端位置から遠ざけることができる力を生じる。
好ましくは、第2圧力チャンバの有効断面領域は第1チャンバの数倍である。
この結果、第2ピストンがばねに作用し、これにより、第1ピストンに作用する
力が第1ピストンに作用する燃料圧力による逆方向の力と均衡したとき、第2圧
力チャンバ内の圧力は対応する数だけ第1チャンバ内の圧力よりも小さくなる。
かくして、第2チャンバの有効断面領域が大きいため、第2チャンバは、有利に
低いチャンバ圧力で閉鎖する。このため、ドレン通路での圧力降下が比較的小さ
く、従って、第2圧力チャンバからドレンされる燃料が少量になる。更に、第2
チャンバの領域が大きいため、第2ピストンが所定量移動し、これと対応してば
ねが圧縮されたとき、チャンバが大容積の燃料で充填されるという利点が得られ
る。これらの二つの環境は、両方とも、噴射装置が、二つの噴射期間の間で閉鎖
位置にあるときにばねの力が僅かしか変わらないようにする上で役立つ。
両方のピストンをばねのノズルに近い方の端部に位置決めすることができる。
この場合、第1ピストンに対して不動の構成要素が弁スライダによって構成され
る。このように設計されている場合には、ピストンは弁スライダの調節移動に関
係する。この場合には、ピストンは、スライダの質量を増大させるものとして作
用し、これにより、噴射装置の調節移動は緩慢になる。これは、通常は欠点であ
ると考えられるため、代わりとして、第1ピストンをばねの反対端に形成する。
このようにすると、二つの圧力チャンバ間の流れ連結部が細長くなり、製造が比
較的困難になるという欠点が生じる。これらの欠点をなくし、かつ製造を簡単に
した好ましい実施例では、燃料噴射装置は、圧縮ばねがハウジング内で不動の中
間スラスト部材上で長手方向に移動自在の二つのばね案内体間にそれ自体周知の
方法で取り付けられる。ノズルとは反対側に配置された上部ばね案内体には第2
ピストンが形成されている。この第2ピストンは、圧力密封をなしてスラスト部
材を包囲する下管状壁、下壁よりも内径が大きく、第1ピストンを圧力密封をな
して包囲する上管状壁、及びこれらの壁を相互連結し、上壁が第2面を形成する
中間部材を有する。第1ピストンは、環状であり、スラスト部材と第2ピストン
の上壁との間に包囲され、下部内方カラーを有し、この下部内方カラーの上面が
第1面を構成し、この第1面の内側に座区分があり、スラスト部材の対応する座
区分は下方に向いており、この座区分は、燃料通路に通じる貫通チャンネルと、
二つのチャンバ間に流れ連結部を形成する下縮径領域との間に位置決めされてい
る、ように形成されている。
ドレン通路は、独立した部材として形成でき、例えば第2ピストンを通って第
2チャンバ内に延びる小さなボアの形状に形成できるが、好ましくは、ドレン通
路は、第2ピストンの二つの壁と第1ピストン及びスラスト部材の夫々との間の
圧力密封環状スリットからなる。これらの環状スリットは、それ自体が完全に圧
力を逃がさないように作るのが困難である。ドレンされる燃料の量は、これと同
時に、互いに対して摺動する面を潤滑する。
次に、本発明の一実施例を添付図面を参照して以下に詳細に説明する。
第1図は、本発明による燃料噴射装置の長手方向部分断面図であり、
第2図は、圧縮ばね及びこれと関連した部材を示す、第1図の一部の拡大図で
あり、
第3図は、エンジンの負荷と、周知の種類の噴射装置及び本発明の噴射装置の
夫々の開放圧力との間の相関関係を示すグラフである。
第1図は、全体に参照番号1を附した燃料噴射装置を示す。燃料噴射装置1は
シリンダカバーに取り付けるための外ハウジング2を有する。この外ハウジング
は、細長く、その上端に取り付け部材3が設けられる。取り付け部材は、側方に
突出しており、カバーに取り付けられたボルトによって、ハウジングの下端にあ
る接触面4をカバーに形成された対応する接触面に押し付ける。燃料ポンプ(図
示せず)、又は高圧の燃料を定期的に供給する同様の燃料供給源が、圧力導管を
介して噴射装置の頂部にある燃料入口5に連結されている。この燃料入口から燃
料通路6が噴射装置の中央を中央キャビティ8を持つノズル7まで下方に貫通し
ている。燃料をエンジンのシリンダ内に送出するため、ノズル穴(図示せず)が
中央キャビティから放射状に延びている。
燃料通路には弁が設けられている。この弁は、噴射期間の間、噴射装置内の予
熱された燃料の循環のために開く。燃料通路は、スラスト部材9の形態の不動の
構成要素を通る。スラスト部材9の上側は、ハウジング内で不動の部材10と接
触し、スラスト部材9の下側は、ハウジング内で不動のスライダ案内体12にし
っかりと押し付けられた中間部材11と接触している。弁スライダ13は、中央
案内ボア12’内で長手方向に移動自在であるようにスライダ案内体に受け入れ
られており、その一端が、中間部材の下方に突出した円筒形区分11’を包囲し
ている。案内ボアは、弁スライダの下端に配置されているニードルをなして形成
された環状で円錐形の座面14が、スライダ案内体12の対応する弁座と同軸で
あるように、スライダを中央に置く。弁スライダが閉鎖位置にあり、座面がスラ
イダ案内体の弁座に押し付けられている場合には、ニードルの先端がノズル7の
中央キャビティ8内に突出しており、ここでエンジンのシリンダの圧力に露呈さ
れている。エンジンのシリンダの圧力は、ノズルの穴を通ってキャビティ8内に
拡がり、弁スライダに開放方向の力を作用する。弁スライダの下端及びスライダ
案内体12は、斜めのボア16を介して燃料通路6と連通した圧力チャンバ15
を構成する。内側がニードルによって構成された弁スライダの環状の下端面は、
開き方向の力で弁スライダに燃料圧力が作用するとき、チャンバ15内の燃料圧
力の影響を受ける。弁スライダの開放領域は、円筒形区分11’の外径と案内ボ
ア12’の内径との間の直径の差によって実質的に決まる。
弁スライダは、また、圧縮ばね17により、閉鎖方向、即ち弁座に向かって下
方に荷重が加えられている。圧縮ばね17の上端は、スラスト部材9に移動自在
に取り付けられた上部ばね案内体18と接触しており、圧縮バネの下端は、スロ
ットを備えたスラストブッシュ20によってスラスト部材9上で移動自在に案内
さ
れた下部ばね案内体19を介して支持されている。スラストブッシュの下端面は
、弁スライダ13に設けられた上部カラーと接触している。かくして、ばね力は
、ばね案内体19及びスラストブッシュ20を介して弁スライダ13に伝達され
る。
環状第1ピストン21が、スラスト部材9の上部区分の周りに軸線方向に移動
自在に取り付けられている。ピストンの摺動面22(第2図参照)の内径は、こ
れと向き合ったスラスト部材の案内面23に対し、これらの表面間の環状スリッ
トが、ピストンがスラスト部材を密封関係で包囲するのに十分に狭幅であるよう
に適合している。案内面23の下側は、機械加工によってスラスト部材に形成し
た凹所で終端する。この凹所は、チャンネル24を通してスラスト部材の中央燃
料通路6と連通している。凹所の下方には、案内面23よりも小径の円筒形区分
25が設けられている。スラスト部材は、区分25の下に、環状で円錐形の下座
区分26を有する。
第1ピストン21は、その下側に内方に突出したカラー27を有する。このカ
ラーは、円錐形の上座区分26’を有し、この上座区分は、圧力密封をなして下
座区分26と当接している。凹所及び円筒形区分25の周囲の領域では、第1ピ
ストン及びスラスト部材が第1圧力チャンバ28を構成する。第1圧力チャンバ
は、区分25と案内面23との間の直径の差で決まる有効断面領域を有する。有
効断面領域は、カラー27の上面の上に、即ちばねとは逆方向に向いた第1面上
に位置し、そのため、チャンネル24を通して供給された第1圧力チャンバ内の
燃料圧力は、第1ピストンに下向きの力を作用する。
第2ピストン29は、上部ばね案内体18と一体に形成されており、上下の管
状壁31及び32を支持する環状中間部材30を有する。下壁31の内側は、ス
ラスト部材9の円筒形の第2案内面33と、圧力密封をなして長手方向に移動自
在に接触しており、上壁32の内側は、第1ピストン21の外側と、圧力密封を
なして長手方向に移動自在に接触している。第1及び第2のピストンは、スラス
ト部材9とともに第2圧力チャンバ34を構成する。第2圧力チャンバは、下壁
31の円筒形の内側と上壁32の円筒形の内側との間の直径の差で決まる有効断
面領域を有する。スラスト部材の外側に形成され、座区分26の真下に位置決め
された円筒形の凹所は、第1ピストンを座区分26から遠ざかるように移動した
とき、二つの圧力チャンバ間に流れ連結部35を形成する。
カラー27の下側には、一つ又はそれ以上の突起、又は切り込み部を持つ環状
突起が設けられる。これらの突起は、中間部材30の上側と当接したとき、突起
と半径方向に整合して位置決めされた第2圧力チャンバ34の部分を流れ連通状
態に保持する。変形例(図示せず)では、突起は環状で、下壁31の内側はカラ
ー27の内側よりも小径であり、その結果、流れ連結部35の最も近くに位置決
めされた第2圧力チャンバ34の部分は、作用を上方に及ぼす有効断面領域を持
つ。この有効断面領域は、カラー27に設けられた突起が中間部材30の上側と
当接したときに流れ連結部35に対して開放しており、圧力チャンバ34の残り
の部分に対し、連結部を遮断する。流れ連結部35内の圧力が適当に増加したと
き、この有効領域により、第2ピストン29を第1ピストン21から遠ざかるよ
うに移動させ、これと同時に第2圧力チャンバの全有効断面領域を露呈する。
第2圧力チャンバ34は、上壁32の内側と第1ピストンの円筒形の外側との
間の圧力密封環状スリット及び下壁31とスラスト部材の案内面33との間の圧
力密封環状スリットからなる制限されたドレン通路と連続的に接触している。
次に、二つのピストンが圧縮ばね17に所望のばね力を自動的に発生させる方
法を説明する。エンジンが停止し、燃料通路6が加圧されていない場合には、二
つのピストンは添付図面に示す位置をとり、この位置では、圧縮ばね17は、工
場予負荷力で第2ピストン29を上方に押圧して第1ピストン21と当接させ、
これによって、ばね力を座区分26及び26’を介してスラスト部材9に伝達す
る。
エンジンが始動し、負荷が増大すると、燃料通路6内の圧力が各噴射期間中に
最も高い圧力にまで上昇する。この圧力は、低負荷時には、噴射装置の開放圧力
に相当し、高負荷時にはノズルの穴の流れ抵抗によって決定される。かくして、
燃料通路内の最大圧力は、エンジンの負荷の増大に従って増大する。
燃料通路6内の圧力は、チャンネル24を通って第1圧力チャンバ28に拡が
り、このチャンバ内の圧力が、第1ピストンに作用する下方への力が所定のばね
力を越える所定のレベルに到ったとき、第1ピストンはばねに向かって移動し、
該ばねはばね案内体18と19との間で圧縮され、これと同時に燃料が流れ連結
部35を介して第2圧力チャンバに流入し、第2チャンバ内の圧力が第1ピスト
ン21を戻して座区分26と接触させる所定レベルにまで上昇する。この際、第
2ピストン29は、ばねに過剰の負荷が加わった位置にとどまる。
これに続く噴射期間で燃料チャンネル6内の圧力が更に高いレベルにまで上昇
する場合には、燃料通路6内の最大圧力に線形に応答する所与の負荷がばね17
に加わるようにピストンの移動が繰り返される。
少量の燃料が、圧力密封環状スリットを通して、第2圧力チャンバから連続的
にドレンされ、この燃料は、ハウジング2の内部キャビティを介してドレン開口
部(図示せず)を通過する。
このようにして、本発明による燃料噴射装置は、所定のばね力を得て、第3図
に示すように、エンジンの負荷の増大に従って増大する開放圧力を得る。これに
より、噴射装置が全負荷時に必要な高い開放圧力を自動的に発生させるため、エ
ンジンの低負荷時の開放圧力を低下させることができる。かくして、圧縮ばねは
、約200バールの低負荷時に開放圧力を生じるように負荷が予じめ加えられて
いるように予め製造できる。これにより、エンジンは部分負荷時に安定して作動
すると同時に、全負荷時の開放圧力を周知の噴射装置よりも高くする。これによ
り、燃料は、噴射期間の開始時に良好に霧化する。
上述の中央通路の代わりに、燃料通路6は、周知のように、不動の中間部材内
をばねの外側に沿って延び、スライダ案内体の斜めのチャンバを介して圧縮チャ
ンバ15内に開放した多数のチャンネルから形成してもよい。この設計では、弁
スライダの開放領域は、ニードルを取り囲む下向きの環状端面によって決定され
る。
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
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UA,UG,US,UZ,VN
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.内燃エンジン、特に大型の2ストロークディーゼルエンジン用の燃料噴射装 置(1)用の燃料噴射装置であって、シリンダカバーに取り付けるための外ハウ ジング(2)と、ノズル(7)内に開放した貫通燃料通路(6)と、負荷が予め 加えてある圧縮ばね(17)によってその弁座に向かう所定方向に付勢され、ま た燃料通路内の燃料の圧力によって逆方向に付勢される、スライダ案内体(12 )内で長手方向に移動自在の弁スライダ(13)と、ハウジング内で軸線方向に 移動自在であり、圧縮ばねの一端に配置されており、ばねから遠ざかる方向に向 いた第1面を持ち、チャンネル(24)を通して燃料通路と連通した第1圧力チ ャンバ(28)を不動の構成要素(9)とともに構成する第1ピストン(21) とを有し、前記圧縮ばねは、第1圧力チャンバ内の最少の燃料容積で第1ピスト ンを端位置に向かう所定方向に押圧する、燃料噴射装置において、前記ばねは、 第2ピストン(29)に力を伝達するように連結されており、前記第2ピストン は、前記ばねから遠ざかる方向に向いており、第2圧力チャンバ(34)の端壁 を構成する第2面を持ち、前記端位置から遠ざかる方向への移動時に第1ピスト ン(21)が第1圧力チャンバと第2圧力チャンバとの間の流れ連結部(35) を開放し、前記第2圧力チャンバ(34)の有効断面領域は前記第1チャンバ( 28)よりも大きく、制限されたドレン通路が前記第2圧力チャンバをドレンに 連結している、ことを特徴とする燃料噴射装置。 2.前記第1ピストン(21)は、不動の構成要素に設けられた対応する座区分 (26)との接触によって、前記第1圧力チャンバと前記第2圧力チャンバとの 間の前記流れ連結部(35)を遮断する座区分(26’)を有する、ことを特徴 とする請求項1に記載の燃料噴射装置。 3.前記ドレン通路の大きさは、エンジンの全負荷作動中にドレンされる容積が 、前記第2圧力チャンバ(34)の燃料容積の1/2乃至1/20の範囲である ように制限されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料噴射装置 。 4.前記第1圧力チャンバ(28)の有効断面領域が前記弁スライダの開放領域 よりも小さい、ことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の 燃料噴射装置。 5.前記第2圧力チャンバ(34)の有効断面領域が前記第1チャンバ(28) よりも数倍大きい、ことを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記 載の燃料噴射装置。 6.前記圧縮ばね(17)は、前記ハウジング内で不動の中間スラスト部材(9 )上で長手方向に移動自在の二つのばね案内体(18、19)間にそれ自体周知 の方法で取り付けられ、前記第2ピストンは、前記ノズル(7)とは反対側に配 置された上ばね案内体(18)内に形成されており、前記第2ピストンは、圧力 密封をなして前記スラスト部材を包囲する下管状壁(31)、該下管状壁よりも 内径が大きく、前記第1ピストン(21)を圧力密封をなして包囲する上管状壁 (32)、及びこれらの壁を相互連結し、その上壁が前記第2面を形成する中間 部材(30)を有し、前記第1ピストン(21)は、環状であり、前記スラスト 部材と前記第2ピストンの上壁との間に包囲され、下部内方カラー(27)を有 し、この下部内方カラーの上面が前記第1面を構成し、この第1面の内側に座区 分(26’)があり、前記スラスト部材の対応する座区分(26)は下方に向い ており、この座区分(26)は、前記燃料通路(6)に通じる貫通チャンネル( 24)と、二つのチャンバ間に前記流れ連結部(35)を形成する下縮径領域と の間に位置決めされている、ことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか 一項に記載の燃料噴射装置。 7.前記ドレン通路は、前記第2ピストンの二つの壁(31、32)と前記第1 ピストン(21)及び前記スラスト部材(9)の夫々との間の圧力密封環状スリ ットからなる、ことを特徴とする請求項6に記載の燃料噴射装置。
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