【発明の詳細な説明】
5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質II
本発明は、新たに同定したポリヌクレオチド、このようなポリヌクレオチドに
よりコードされるポリペプチド、このようなポリヌクレオチドおよびポリペプチ
ドの使用、ならびにこのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの生成に関
する。より詳細には、本発明のポリペプチドは、5-リポキシゲナーゼ活性化タン
パク質II「FLAP II」である。本発明はまた、このようなポリペプチドの作用を
阻害することに関する。
ロイコトリエン(LT)は、顆粒球、単球/マクロファージ、および肥満細胞で
形成され、免疫応答および炎症応答を仲介する。多数の過敏性疾患および炎症性
疾患(喘息および炎症性腸疾患)における臨床サンプル中のLTのレベル増加は、
これらの化合物の関与を示唆する(implicate)。(Ford-Hutchinsonら、Leukotri
enes and Lipoxygenases,J.Rokach編、Elsevier Science Publishing,New Yo
rk,405-425(1989);Konigら、Eicosanoids 3: 1-22;Robinson and Holgate A
dv.prostaglandin Thromboxane Leukotriene Res.20: 209-216,(1990))。
最近になって、炎症応答の主要な病態生理学的なメディエーターとして、LTが
大きく注目されている。何故なら、それらは、血管透過性を増加させること、血
管壁への白血球の接着、および浮腫産生においてプロスタグランジン(PG)より
もはるかに強力であるからである。LT合成のインヒビターは、現在抗炎症剤とし
て可能性のある臨床適用のために開発されている。最近の研究は、PGよりむしろ
LTを気管支喘息の疾患の原因における最も中心的な因子として位置づけているよ
うである。これらは、緩徐に反応する物質として以前は知られていた因子である
と同定されており、そしてヒスタミンの200〜20,000倍の気管支収縮剤活性を有
する。現在では、LTアンタゴニストまたは合成インヒビターは、気管支喘息の処
置において大きな有望性を有すると考えられている。LTは、インシュリン分泌を
増加することが示されており、そして現在のそれに代わる仮説は、糖尿病のいく
らかの患者における炭水化物過敏症は、島細胞におけるPGに対するLT比におけ
るアンバランスから生じ得る。
LTの生合成における最初の2つの工程は、アラキドン酸の5-ヒドロペルオキシ
-6,8,11,14-エイコサテトラエン酸(5HPETE)、そして引き続くロイコトリエンA4
への転化を触媒するCa2+およびATP依存性酵素5-リポオキシゲナーゼ(5-LO)に
より触媒される(Samuelsonら、Science 237: 1171-1176,(1987))。プロスタ
グランジンもまた、アラキドン酸前駆体から合成される。アスピリン様薬剤、お
よび他の酵素は、アラキドン酸からのプロスタグランジン合成を防止して炎症を
防止し、そして一般に疼痛を軽減するのに効率的である。しかし、これらのアス
ピリン様薬剤および他の酵素は、アラキドン酸からのLTの合成を防止することに
関しては効果を有さない。サイトゾルから膜画分への5-LOのCa2+依存性輸送は、
酵素の活性化において重要な工程であるようである(RouzerおよびKargman,J.B
iol.Chem.263:10980-10988,Wongら、Biochemistry 27:6763-6769,(1988))。
インドールおよびキノリンクラスのLT生合成インヒビターならびにこれらの化合
物の一連の構造的なハイブリッドは、細胞非含有アッセイにおいて、5-LOに有意
な阻害効果を有さないが、この膜会合をブロックする。MK-886(Gillardら、Can
.J.Physiol.Pharmacol.67:456-464,(1989))およびMK-0591(Brideauら、Ca.J
.Physiol.Pharmacol.70:799-807,(1992))は、これらのインヒビターの強力な
メンバーである。FLAPは、このクラスのインヒビターの細胞性標的として同定さ
れた(Millerら、Nature,343:278-281,(1990))。FLAPに結合するインヒビタ
ーは、タンパク質への結合に関して5-LOと直接競合し得るか、またはFLAPにおい
て立体配置的な変化を引き起こし得、これは、膜結合部位に関する5-LOの親和性
の減少を導く。
FLAPに関するcDNAクローンは、いくつかの種(ヒト、マウス、ウマ、ブタ、ヒ
ツジ、ウサギ、ラット、およびマウス、Vickersら、Mol.Pharmacology 42:1014-
1019(1992)を参照のこと)から単離された。推定されるアミノ酸配列は、3つの
潜在的な膜スパンニングドメイン(membrane-spanning domain)を有する疎水性
タンパク質に相当する。
本発明の1つの局面によれば、FLAP IIである新規成熟ポリペプチドならびに
そのフラグメント、アナログ、および誘導体が提供される。本発明のポリペプチ
ドは、ヒト起源である。
本発明の別の局面によれば、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレ
オチド(DNAまたはRNA)が提供される。
本発明のさらに別の局面によれば、このようなポリペプチドを組換え技術によ
り生成する方法が提供される。
本発明のなお別の局面によれば、このようなポリペプチド、またはこのような
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを利用して、FLAP IIと5-リポキシ
ゲナーゼとの相互作用を防止する物質を同定し、そしてLTの生合成に関するイン
ヒビターを開発する方法が提供される。
本発明の他の局面によれば、このようなポリペプチドに対する抗体が提供され
る。
本発明のさらに他の局面によれば、例えば、喘息、内毒素ショック、炎症病態
(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、リウマチ関節炎、炎症性腸疾患、変形性関
節炎、鍵炎、滑液嚢炎、潰瘍性結腸炎、および他の即時性過敏反応)、およびLT
が仲介する鼻-気管支の閉塞性気道病態(例えば、アレルギー性気管支喘息、ア
レルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎)、ヒト糸球体腎炎、偏頭痛の処置におい
て、および胃の細胞保護薬剤として、このようなポリペプチドの作用を阻害する
ために用いられ得る、このようなポリペプチドに対するアンタゴニストが提供さ
れる。
本発明のさらなる局面によれば、本発明の核酸配列に特異的にハイブリダイズ
するのに十分な長さの核酸分子を含む核酸プローブが提供される。
本発明のさらに別の局面によれば、本発明のポリペプチドをコードする核酸配
列における変異に関連する疾患または疾患に対する感受性を検出するための診断
アッセイが提供される。
本発明のなおさらなる局面によれば、科学的研究に関するインビトロの目的(
例えば、DNAの合成およびDNAベクターの製造)のための、このようなポリペプチ
ド、またはこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを利用する方
法が提供される。
本発明のこれらおよび他の局面は、本明細書中の教示から当業者に明らかであ
る。
以下の図面は、本発明の実施態様の例示であり、請求の範囲に含まれる本発明
の範囲を限定することを意図しない。
図1は、FLAP IIのポリヌクレオチド配列および相当する推定アミノ酸配列を
示す。示されるFLAP IIポリペプチドは、147のアミノ酸からなる成熟ポリヌクレ
オチドである。アミノ酸に対する標準的な1文字略記が用いられる。
図2は、FLAP II(上部の線)とヒトFLAP I(下部の線)との間のアミノ酸の
比較を示す。
本発明の1つの局面によれば、図1の推定アミノ酸配列(配列番号2)を有する
成熟ポリペプチドをコードする単離された核酸(ポリヌクレオチド)、または19
94年5月12日にATCC受託番号75771として寄託されたクローンのcDNAによりコー
ドされる成熟ポリペプチドをコードする単離された核酸(ポリヌクレオチド)が
提供される。
本発明のポリヌクレオチドは、腫瘍壊死因子αで誘導された大動脈内皮細胞に
由来するcDNAライブラリーにおいて発見された。このポリヌクレオチドは、FLAP
ファミリーに構造的に関連している。このポリヌクレオチドは、147アミノ酸残
基のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む。このタンパ
ク質は、ヒトFLAPタンパク質に対する最高の相同性を示す(完全なコード配列に
わたって、34%の同一性および51%の類似性)。さらに、多くの異なる種にわた
ってFLAP Iの高度に保存された領域(残基42〜61)が存在する(Vickers,P.J.ら、
J.Lipid Mediat.,6:31-42(1993))。本発明の配列は、この保存領域に有意な相
同性(55%)を示す。
本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形態またはDNA(このDNAはcDNA、ゲノムD
NA、および合成DNAを包含する)の形態であり得る。DNAは二本鎖または一本鎖で
あり得、そして一本鎖はコード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る
。成熟ポリペプチドをコードするコード配列は、図1に示すコード配列(配列番
号1)または寄託したクローンのコード配列と同一であり得、あるいはそのコー
ド配列が、遺伝コードの重複または縮重の結果として、図1のDNA(配列番号1
)または寄託したcDNAと同じ成熟ポリペプチドをコードする異なるコード配列で
あ
り得る。
図1の成熟ポリペプチド(配列番号2)または寄託したcDNAによりコードされ
る成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、以下を包含し得るがこれ
らに限定されない:成熟ポリペプチドのコード配列のみ;成熟ポリペプチドのコ
ード配列およびリーダー配列または分泌配列のようなさらなるコード配列あるい
はプロタンパク質配列;成熟ポリペプチドのコード配列(および必要に応じて、
さらなるコード配列)および非コード配列(例えば、イントロンまたは成熟ポリ
ペプチドのコード配列の5'および/または3'非コード配列)。
したがって、用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、ポリペ
プチドのコード配列のみを含むポリヌクレオチドならびにさらなるコード配列お
よび/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。
本発明はさらに、図1の推定アミノ酸配列(配列番号2)を有するポリペプチ
ドまたは寄託したクローンのcDNAによりコードされるポリペプチドのフラグメン
ト、アナログ、および誘導体をコードする本明細書中上記のポリヌクレオチドの
変異体に関する。ポリヌクレオチドの変異体は、ポリヌクレオチドの天然の対立
遺伝子変異体またはポリヌクレオチドの非天然の変異体であり得る。
したがって、本発明は、図1に示すものと同じ成熟ポリペプチド(配列番号2
)または寄託したクローンのcDNAによりコードされる同じ成熟ポリペプチドをコ
ードするポリヌクレオチド、ならびにこのようなポリヌクレオチドの変異体を包
含する。この変異体は、図1のポリペプチド(配列番号2)または寄託したクロ
ーンのcDNAによりコードされるポリペプチドのフラグメント、誘導体、またはア
ナログをコードする。このようなヌクレオチド変異体は、欠失変異体、置換変異
体、および付加または挿入変異体を包含する。
本明細書中上記で示したように、ポリヌクレオチドは、図1に示すコード配列
(配列番号1)または寄託したクローンのコード配列の天然の対立遺伝子変異体
であるコード配列を有し得る。当該分野で公知であるように、対立遺伝子変異体
は、1以上のヌクレオチドの置換、欠失、または付加を有し得るポリヌクレオチ
ド配列の別の形態であり、これはコードされるポリペプチドの機能を実質的には
変化させない。
本発明はまた、成熟ポリペプチドのコード配列は同じリーディングフレーム内
で宿主細胞からのポリペプチドの発現および分泌を補助するポリヌクレオチド配
列(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機
能するリーダー配列)に融合され得るポリヌクレオチドを包含する。リーダー配
列を有するポリペプチドは、プレタンパク質であり、そして宿主細胞により切断
されてポリペプチドの成熟形態を形成するリーダー配列を有し得る。ポリヌクレ
オチドはまた、成熟タンパク質+さらなる5'アミノ酸残基であるプロタンパク質
をコードし得る。プロ配列を有する成熟タンパク質はプロタンパク質であり、そ
してそれは不活性型のタンパク質である。一旦プロ配列が切断されると、活性な
成熟タンパク質が残る。
したがって、例えば、本発明のポリヌクレオチドは、成熟タンパク質、または
プロ配列を有するタンパク質またはプロ配列およびプレ配列(リーダー配列)の
両方を有するタンパク質をコードし得る。
本発明のポリヌクレオチドはまた、本発明のポリペプチドの精製を可能にする
マーカー配列にインフレームで融合されたコード配列を有し得る。マーカー配列
は、細菌宿主の場合、マーカーに融合された成熟ポリペプチドの精製を提供する
pQE-9ベクターにより供給されるヘキサヒスチジンタグであり得る。または、例
えば、マーカー配列は、哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞)が使用される場合
は、ヘマグルチニン(HA)タグであり得る。HAタグは、インフルエンザヘマグル
チニンタンパク質由来のエピトープに対応する(Wilson,_I.ら、Cell、37:767(1
984))。
用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖を産生することに関与するDNAのセグメン
トを意味する;これは、コード領域の上流および下流の領域(リーダーおよびト
レーラー)ならびに個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イント
ロン)を含む。
本発明の完全長の遺伝子のフラグメントは、完全長のcDNAを単離するため、お
よびこの遺伝子に対して高い配列類似性または類似した生物学的活性を有する他
のcDNAを単離するために、cDNAライブラリーのハイブリダイゼーションプローブ
として用いられ得る。このタイプのプローブは、好ましくは、少なくとも30塩基
を有し、そして例えば、50以上の塩基を含有し得る。このプローブはまた、完全
長の転写物に相当するcDNAクローンおよびゲノムクローンまたは本発明の完全な
遺伝子(調節領域およびプロモーター領域、エキソン、ならびにイントロンを含
む)を含有するクローンを同定するために用いられ得る。スクリーニングの例は
、既知のDNA配列を用いてオリゴヌクレオチドプローブを合成することにより、
この遺伝子のコード領域を単離する工程を包含する。本発明の遺伝子の配列に相
補的な配列を有する、標識されたオリゴヌクレオチドが、ヒトcDNA、ゲノムDNA
またはmRNAのライブラリーをスクリーニングするために用いられ、プローブがハ
イブリダイズするライブラリーのメンバーが決定される。
本発明はさらに、配列間に少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、そし
てより好ましくは少なくとも95%の同一性が存在する場合、本明細書中上記の配
列にハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。本発明は特に、本明細書中
上記のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリ
ヌクレオチドに関する。本明細書中で用いられる用語「ストリンジェントな条件
」は、ハイブリダイゼーションが配列間に少なくとも95%および好ましくは少な
くとも97%の同一性が存在する場合のみに生じることをいう。好ましい実施態様
において本明細書中上記のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオ
チドは、図1のcDNA(配列番号1)または寄託したcDNAによりコードされる成熟
ポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能または生物学的活性のいずれかを保持
するポリペプチドをコードする。
あるいは、このポリヌクレトチドは、本発明のポリヌクレオチドにハイブリダ
イズし、そしてそれに上記のような同一性を有する、少なくとも20塩基、好まし
くは30塩基、そしてより好ましくは少なくとも50塩基を有し得、そして活性を保
有し得るか、または保有し得ない。例えば、このようなポリペプチドは、例えば
、ポリヌクレオチドの回収のために、または診断プローブとしての配列番号1の
ポリヌクレオチドのためのプローブあるいはPCRプライマーとして用いられ得る
。
従って、本発明は、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
ならびにそのフラグメント(このフラグメントは、少なくとも30塩基、そして好
ましくは少なくとも50塩基を有する)に対して、少なくとも70%の同一性、好ま
しくは少なくとも90%、そしてより好ましくは少なくとも95%の同一性を有する
ポリヌクレオチドおよびこのようなポリヌクレオチドによりコードされるポリペ
プチドに関する。
本明細書中でいう寄託物(1つまたは複数)は、特許手続きの目的のための微
生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の下に維持される。これらの寄
託物は、当業者に便宜上のみ提供され、そして米国特許法第112条の下で寄託が
必要とされることを容認するものではない。寄託物に含まれるポリヌクレオチド
の配列、ならびにそれによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は、本明
細書中に参考として援用されており、そして本明細書中の配列の記載とのいかな
る不一致の場合も管理されている。寄託物を製造し、使用し、または販売するた
めには実施許諾が必要とされ得、そしてこのような実施許諾は本発明によって与
えられるわけではない。
本発明はさらに、図1の推定アミノ酸配列(配列番号2)を有するか、または
寄託したcDNAによりコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチド、ならびに
このようなポリペプチドのフラグメント、アナログ、および誘導体に関する。
用語「フラグメント」、「誘導体」、および「アナログ」は、図1のポリペプ
チド(配列番号2)または寄託したcDNAによりコードされるポリペプチドをいう
場合は、このようなポリペプチドと本質的に同じ生物学的機能または生物学的活
性を保持するポリペプチドを意味する。したがって、アナログは、プロタンパク
質部分の切断により活性化されて活性な成熟ポリペプチドを生成し得るプロタン
パク質を包含する。
本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド、天然のポリペプチド、または
合成ポリペプチドであり得、好ましくは組換えポリペプチドであり得る。
図1のポリペプチド(配列番号2)または寄託したcDNAによりコードされるポ
リペプチドのフラグメント、誘導体、またはアナログは、(i)その中で1以上の
アミノ酸残基が保存または非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)
で置換され、そしてこのような置換されるアミノ酸残基が、この遺伝コードによ
りコードされるアミノ酸残基であり得るかまたはあり得ないフラグメント、誘導
体、またはアナログ、または(ii)その中で1以上のアミノ酸残基が置換基を含有
するフラグメント、誘導体、またはアナログ、あるいは(iii)その中で成熟ポリ
ペプチドがポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレング
リコール)のような別の化合物に融合されているフラグメント、誘導体、または
アナログ、または(iv)その中でリーダー配列または分泌配列あるいは成熟ポリペ
プチドまたはプロタンパク質配列の精製に用いられる配列のようなさらなるアミ
ノ酸が成熟ポリペプチドに融合されるフラグメント、誘導体、またはアナログで
あり得る。このようなフラグメント、誘導体、およびアナログは、本明細書中の
教示から、当業者の範囲内にあると考えられる。
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、好ましくは単離された形態
で提供され、そして好ましくは均質に精製される。
用語「単離された」は、物質がその本来の環境(例えば、天然に存在する場合
は、天然の環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きている動
物に存在する天然のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが
、天然系において共存する物質の幾らかまたは全部から分離された同一のポリヌ
クレオチドまたはポリペプチドは単離されている。このようなポリヌクレオチド
は、ベクターの一部であり得、そして/またはこのようなポリヌクレオチドまた
はポリペプチドは、組成物の一部であり得、そしてさらにこのようなベクターま
たは組成物がその天然の環境の一部ではないため単離されている。
本発明のポリペプチドは、配列番号2のポリペプチド(特に成熟ポリペプチド
)ならびに配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも70%の類似性(好まし
くは少なくとも70%の同一性)を有し、そしてより好ましくは配列番号2のポリ
ペプチドに対して少なくとも90%の類似性(より好ましくは少なくとも90%の同
一性)を有し、そしてさらにより好ましくは配列番号2のポリペプチドに対して
少なくとも95%の類似性(さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性)を有
するポリペプチドを含み、そしてさらに、一般に少なくとも30のアミノ酸および
より好ましくは少なくとも50のアミノ酸を含有するこのようなポリペプチドの部
分を含む。
当該分野で公知である、2つのポリペプチド間の「類似性」は、あるポリペプ
チドのアミノ酸およびその保存されたアミノ酸置換物と第2のポリペプチドの配
列とを比較することにより決定される。
本発明のポリペプチドのフラグメントまたは部分は、ペプチド合成により相当
する完全長のポリペプチドを産生するために用いられ得る;それ故、このフラグ
メントは、完全長のポリペプチドを産生するための中間体として用いられ得る。
本発明のポリヌクレオチドのフラグメントまたは部分は,本発明の完全長のポリ
ヌクレオチドを合成するために用いられ得る。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のベクター
を用いて遺伝子操作される宿主細胞、および組換え技術による本発明のポリペプ
チドの生成に関する。
宿主細胞は、(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る
)本発明のベクターを用いて遺伝子操作(形質導入または形質転換またはトラン
スフェクト)される。ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファー
ジなどの形態であり得る。操作された宿主細胞は、プロモーターを活性化し、形
質転換体を選択し、または本発明の遺伝子を増幅するために適切に改変した従来
の栄養培地中で培養され得る。培養条件(例えば、温度、pHなど)は、発現のた
めに選択される宿主細胞で以前に使用された条件であり、そして当業者には明ら
かである。
本発明のポリヌクレオチドは、組換え技術によりポリペプチドを生成するため
に用いられ得る。したがって、例えば、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発
現するための種々の発現ベクターのいずれか1つに含まれ得る。このようなベク
ターは、染色体、非染色体、および合成DNA配列を包含し、例えば、SV40の誘導
体;細菌性プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プ
ラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ワクシニア、ア
デノウイルス、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病のようなウイルスDNAである。
しかし、宿主において複製可能で、そして存続可能である限り、任意の他のベク
ターも使用され得る。
適切なDNA配列は、種々の手順によりベクターに挿入され得る。一般に、DNA配
列は当該分野で公知の手順により適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(1つまた
は複数)に挿入される。このような手順および他の手順は、当業者に公知の範囲
内であると考えられる。
発現ベクター中のDNA配列は、適切な発現制御配列(1つまたは複数)(プロ
モーター)に作動可能に連結され、mRNAの合成を指示する。このようなプロモー
ターの代表的な例としては、以下が挙げられ得る:LTRまたはSV40プロモーター
、E.coli lacまたはtrp、λファージPLプロモーター、および原核生物細胞また
は真核生物細胞あるいはそのウイルス内で遺伝子の発現を制御することが公知で
ある他のプロモーター。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合
部位および転写ターミネーターを含有する。ベクターはまた、発現を増幅するた
めの適切な配列を含有し得る。
さらに、発現ベクターは、好ましくは、形質転換された宿主細胞の選択のため
の表現型特性(例えば、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼ
またはネオマイシン耐性、またはE .coliにおけるテトラサイクリン耐性または
アンピシリン耐性)を提供する1以上の選択マーカー遺伝子を含有する。
本明細書中上記のような適切なDNA配列ならびに適切なプロモーター配列また
は制御配列を含有するベクターは、適切な宿主を形質転換して宿主にタンパク質
を発現させるために用いられ得る。
適切な宿主の代表的な例としては、以下が挙げられ得る:細菌細胞(例えば、E .coli
、Streptomyces、Salmonella typhimurium);真菌細胞(例えば酵母)
;昆虫細胞(例えば、Drosophila S2およびSpodoptera Sf9);動物細胞(例え
ば、CHO、COS、またはBowes黒色腫);アデノウイルス;植物細胞など。
適切な宿主の選択は、本明細書中の教示により当業者の範囲内であると考えられ
る。
さらに詳細には、本発明はまた、上で広範に記載した1以上の配列を含む組換
え構築物を包含する。構築物は、ベクター(例えば、プラスミドベクターまたは
ウイルスベクター)を包含し、このベクターの中には本発明の配列が正方向また
は逆方向に挿入されている。この実施態様の好ましい局面において、構築物はさ
らに、配列に作動可能に連結された調節配列(例えば、プロモーターを包含する
)を含む。多数の適切なベクターおよびプロモーターが当業者には公知であり、
そして市販されている。以下のベクターが例として提供される。細菌性:pQE70
、
pQE60、pQE-9(Qiagen)、pBS、pD10、phagescript、psiX174、pBluescript SK、p
bsks、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46a(Stratagene);ptrc99a、pKK223-3、pKK2
33-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia)。真核生物性:pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1
、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。しかし、宿主にお
いて複製可能で、そして存続可能である限り、任意の他のプラスミドまたはベク
ターも使用され得る。
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベク
ターまたは選択マーカーを有する他のベクターを使用して、任意の所望の遺伝子
から選択され得る。2つの適切なベクターは、PKK232-8およびPCM7である。細菌
プロモーターとしては、特に名前を挙げるとlacI、lacZ、T3、T7、gpt、λPR、PL
、およびtrpが含まれる。真核プロモーターは、CMV即時型、HSVチミジンキナー
ゼ、初期SV40および後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロ
チオネインIを包含する。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に
当業者のレベルの範囲内にある。
さらなる実施態様では、本発明は上記の構築物を含有する宿主細胞に関する。
宿主細胞は、高等真核生物細胞(例えば、哺乳動物細胞)または下等真核生物細
胞(例えば、酵母細胞)であり得るか、または宿主細胞は原核生物細胞(例えば
、細菌細胞)であり得る。構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトラ
ンスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、またはエレ
クトロポレーションにより達成され得る(Davis,L.、Dibner,M.、Battey,I.、
Basic Methods in Molecular Biology、(1986))。
宿主細胞中の構築物は、組換え配列によりコードされる遺伝子産物を産生する
ために、従来の方法で使用され得る。あるいは、本発明のポリペプチドは、従来
のペプチド合成機により合成的に生成され得る。
成熟タンパク質は、哺乳動物細胞、酵母、細菌、または他の細胞中で適切なプ
ロモーターの制御下で発現され得る。無細胞翻訳系もまた、このようなタンパク
質を生成するために、本発明のDNA構築物に由来するRNAを使用して用いられ得る
。原核宿主および真核宿主で使用される適切なクローニングベクターおよび発現
ベクターは、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版(
Co
ld Spring Harbor、N.Y.、1989)(この開示は、本明細書中に参考として援用さ
れている)に記載されている。
本発明のポリペプチドをコードするDNAの高等真核生物による転写は、ベクタ
ーにエンハンサー配列を挿入することにより増大される。エンハンサーはDNAの
シス作用因子であり、通常は約10〜約300bpであり、これはプロモーターに作用
してその転写を増大させる。例としては、複製開始点(bp100〜270)の後期側のSV
40エンハンサー、サイトメガロウイルスの早期プロモーターエンハンサー、複製
開始点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサー
を包含する。
一般に、組換え発現ベクターは、複製開始点および宿主細胞の形質転換を可能
とする選択マーカー(例えば、E .coliのアンピシリン耐性遺伝子およびS .cere visiae
のTRP1遺伝子)および下流の構造配列の転写を指示する高発現遺伝子に由
来するプロモーターを含有する。このようなプロモーターは、特に解糖酵素(例
えば、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、α因子、酸性ホスファターゼ、ま
たは熱ショックタンパク質)をコードするオペロンに由来し得る。異種構造配列
は、翻訳開始配列および翻訳終止配列、および好ましくは翻訳されたタンパク質
を細胞周辺腔または細胞外培地へ分泌することを指示し得るリーダー配列と適切
な相内で組立てられる。必要に応じて、異種配列は、所望の特徴(例えば、発現
された組換え産物の安定化または簡略化された精製)を与えるN末端同定ペプチ
ドを含む融合タンパク質をコードし得る。
細菌での使用に有用な発現ベクターは、機能的なプロモーターと作動可能な読
みとり相で、所望のタンパク質をコードする構造DNA配列を適切な翻訳開始シグ
ナルおよび翻訳終止シグナルと共に挿入することにより構築される。ベクターは
、1以上の表現型選択マーカー、ならびに、ベクターの維持を保証するため、そ
して所望により宿主内での増幅を提供するために複製開始点を含有する。形質転
換のために適切な原核生物宿主は、E .coli、Bacillus subtilis、Salmonella t yphimurium
、ならびにPseudomonas属、Streptomyces属、およびStaphylococcus
属の種々の種を包含するが、他の種もまた選択対象として用いられ得る。
代表的な、しかし限定しない例として、細菌での使用に有用な発現ベクターは
、
周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝エレメントを含む市販
のプラスミドに由来する選択マーカーおよび細菌の複製開始点を含有し得る。こ
のような市販のベクターは、例えば、pKK223-3(Pharmacia Fine Chemicals、Up
psala、Sweden)およびGEM1(Promega Biotec、Madison、WI、USA)を包含する
。これらのpBR322「骨格」部分は、適切なプロモーターおよび発現されるべき構
造配列と組み合わされる。
適切な宿主株の形質転換および適切な細胞密度への宿主株の増殖に続いて、選
択されたプロモーターは、適切な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘導)
により誘導され、そして細胞はさらなる期間培養される。
細胞は、代表的には遠心分離により収集され、物理的手段または化学的手段に
より破砕され、そして得られた粗抽出物はさらなる精製のために保持される。
タンパク質の発現において用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音
波処理、機械的破砕、または細胞溶解剤の使用を包含する任意の便利な方法によ
り破砕され得る。このような方法は、当業者に周知である。
種々の哺乳動物細胞の培養系もまた、組換えタンパク質を発現するために用い
られ得る。哺乳動物発現系の例は、Gluzman、Cell、23: 175(1981)に記載されて
いるサル腎臓繊維芽細胞のCOS-7株、および適合性のベクターを発現し得る他の
細胞株(例えば、C127、3T3、CHO、HeLa、およびBHK細胞株)を包含する。哺乳
動物発現ベクターは、複製開始点、適切なプロモーターおよびエンハンサー、な
らびにまた、任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライ
スドナー部位およびスプライスアセプター部位、転写終止配列、および5’フラ
ンキング非転写配列を含有する。SV40のスプライス部位、およびポリアデニル化
部位由来のDNA配列は、必要な非転写遺伝因子を提供するために使用され得る。
ポリペプチドは、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽
イオン交換クロマトグラフィー、リン酸セルロースクロマトグラフィー、疎水性
相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシ
アパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを包含する
方法により組換え細胞培養物から回収され、そして精製される。必要に応じて、
タンパク質の再折りたたみ(refolding)工程が、成熟タンパク質の配置を完全
にするために使用され得る。最終的に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が、
最終的な精製工程に用いられ得る。
本発明のポリペプチドは、天然の精製された産物、または化学合成手順の産物
であり得るか、あるいは原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、培養物中の
細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物細胞)から組換え技術により生成
され得る。組換え産生手順に用いられる宿主に依存して、本発明のポリペプチド
は、グリコシル化され得るか、あるいはグリコシル化され得ない。本発明のポリ
ペプチドはまた、開始メチオニンアミノ酸残基を含み得る。
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、ヒト疾患に対する処置およ
び診断の発見のための研究試薬および物質として用いられ得る。
本発明はまた、FLAP IIの5-LOとの相互作用を阻害する化合物の能力を測定す
るアッセイに関する。ヒト骨肉腫細胞株は、FLAP IIおよび5-LOのDNAでトランス
フェクトされる。次いでこの細胞は、Ca2+イオノホアA23187で処理され、5-LO産
物の有意な産生を生じる。次いで細胞は、潜在的なアンタゴニスト/インヒビタ
ー化合物の存在下でトランスフェクトされ、そして5-LO産物のレベルが減少して
いるかどうかを決定するために比較が行われる。減少している場合、この化合物
は、FLAP IIと5-LOとの相互作用を防止することによる、FLAP IIの効果的なアン
タゴニスト/インヒビターである。
例は、ポリペプチドに対する抗体であるか、ある場合では、ポリペプチドに結
合するオリゴヌクレオチドである。生物学的機能を有さないFLAP IIのペプチド
誘導体は、基質を認識し、そして基質に結合するので、FLAP IIの作用を防止す
る。
他の可能性のあるアンタゴニストは、アンチセンス技術を用いて調製されたア
ンチセンス構築物である。アンチセンス技術は、3重ヘリックスの形成あるいは
アンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAを介して遺伝子発現を制御するために使
用され得る。これらの方法は両方とも、DNAまたはRNAへのポリヌクレオチドの結
合に基づく。例えば、本発明の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
配列の5'コード部分が、約10塩基対〜40塩基対の長さのアンチセンスRNAオリゴ
ヌクレオチドを設計するために使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に
関わる遺伝子の領域に相補的であるように設計され(3重ヘリックス-Leeら、Nu
cl.Acids Res.、6:3073(1979);Cooneyら、Science、241:456(1988);およびDe
rvanら、Science、251:1360(1991)を参照のこと)、その結果FLAP IIの転写およ
び生成を防ぐ。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、インビボでmRNAにハイ
ブリダイズし、そしてFLAP IIポリペプチドへのmRNA分子の翻訳をブロックする
(アンチセンス-Okano、J.Neurochem.、56:560(1991);Oligodeoxynucleotides
as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC Press、Boca Raton、FL(1
988))。上記のオリゴヌクレオチドはまた、アンチセンスRNAまたはアンチセン
スDNAがインビボで発現されてFLAP IIの生成を阻害し得るように、細胞に送達さ
れ得る。
インヒビターの他の例は、5-LOが、活性化されず、FLAP IIの活性レセプター
部位に結合し、それによりレセプター部位を5-LOに接近不能にし、その結果5-LO
は活性化されず、そしてLTの産成を触媒しない、小分子である。小分子の例は、
小ペプチドまたはペプチド様分子を包含するが、それらに限定されない。
それ故、アンタゴニストは、喘息、内毒素ショック、炎症病態(例えば、乾癬
、アトピー性皮膚炎、リウマチ関節炎、潰瘍性結腸炎、および他の即時性過敏反
応)を処置するために用いられ得る。これらのアンタゴニスト/インヒビターは
また、LTが仲介する鼻-気管支の閉塞性の空気通路の病態(例えば、アレルギー
性気管支喘息、アレルギー性鼻炎、およびアレルギー性結膜炎)を処置するため
に用いられ得る。これらはまた、胃の細胞保護剤として用いられ得る。
本発明のアンタゴニストはまた、偏頭痛および糸球体腎炎を処置するために用
いられ得る。なぜなら、LTは、糸球体において拡散性の炎症の変化を引き起こし
てタンパク尿、高血圧症、および浮腫を導くためである。糖尿病はまた、このア
ンタゴニストで処置され得る。なぜなら、糖尿病を有する患者における炭水化物
過敏症は、ランゲルハンス島細胞におけるLT対PGの過度のアンバランスから生じ
得るためである。
アンタゴニストは、例えば本明細書中上記のような薬学的に受容可能なキャリ
アを有する組成物中で用いられ得る。
本発明のアンタゴニスト化合物が、抗炎症剤および/または細胞保護剤として
、
アレルギー性気道障害の処置に用いられる場合、それらは、経口剤形(例えば、
錠剤、カプセル剤など)に処方され得る。この化合物は、単独で投与され得るか
、または従来のキャリア(例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウ
ム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、スターチ、ゼラチン、
トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルナトリウム-セルロース、
低融点ワックス、ココアバターなど)とそれらを組み合わせることにより投与さ
れ得る。希釈剤、香料剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、錠剤-崩壊剤
などが用いられ得る。化合物は、他のキャリアありまたはなしでカプセル化され
得る。全ての場合において、固体および液体の両方の前記組成物における活性な
成分の割合は、少なくとも、経口投与においてそれらに所望の活性を与える割合
である。化合物はまた、非経口的に注入され得る。この場合、それらは、他の溶
質(例えば、溶液を等張にするに十分な生理食塩水またはグルコース)を含有す
る滅菌溶液の形態で用いられる。吸入またはガス注入による投与のために、化合
物は、水溶液または部分的に水溶液に処方され得る。これは、次いでエアロゾル
の形態で利用され得る。
投与要件は、用いられる特定の組成物、投与の経路、現れる徴候の重篤さ、お
よび処置される特定の被験者に応じて変化する。処置は、一般に、化合物の最適
な用量よりも少ない少用量で始められる。その後、用量は、環境下で最適な効果
が達成されるまで、増加される。一般に、本発明の化合物は、最も望ましくは、
一般にいかなる有毒または有害な副作用をも引き起こすことなく効果的な結果を
与える濃度で投与され、そして単一ユニット用量として投与され得るか、または
所望であれば、用量は、1日を通して適切な回数で投与される好都合なサブユニ
ットに分けられ得る。
ポリペプチドであるアンタゴニストはまた、本発明に従って、インビボでのこ
のようなポリペプチドの発現により用いられ得る。これは、しばしば「遺伝子治
療」と称される。
従って、例えば、患者由来の細胞は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオ
チド(DNAまたはRNA)を用いてエクソビボで操作され得、次いで、操作された細胞
はこのポリペプチドで処置されるべき患者に提供される。このような方法は当
該分野で周知であり、そして本明細書の教示から明らかである。例えば、細胞は
、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミド
ベクターの使用により、当該分野で公知の手順によって操作され得る。
同様に、細胞は、インビボでのポリペプチドの発現のために、例えば当該分野
で公知の手順によりインビボで操作され得る。例えば、パッケージング細胞は、
このパッケージング細胞がまさに目的の遺伝子を含有する感染性のウイルス粒子
を産生するように、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウ
イルスプラスミドベクターで形質導入される。これらの産生細胞は、インビボで
細胞を操作し、そしてインビボでポリペプチドを発現するために患者に投与され
得る。このような方法により本発明のポリペプチドを投与するためのこれらの方
法および他の方法は、本発明の教示により当業者には明らかである。
上記のレトロウイルスプラスミドベクターが由来し得るレトロウイルスは、モ
ロニーマウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ラウス肉腫ウイルスのような
レトロウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血症ウイルス、テナガザル白血
病ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、アデノウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイル
ス、および哺乳動物腫瘍ウイルスを包含するが、これらに限定されない。1つの
実施態様では、レトロウイルスプラスミドベクターは、モロニーマウス白血病ウ
イルスに由来する。
ベクターは、1つ以上のプロモーターを含有する。用いられ得る適切なプロモ
ーターは、レトロウイルスLTR;SV40プロモーター;およびMillerら、Biotechni ques
,7巻、第9号、980-990(1989)に記載されるヒトサイトメガロウイルス(C
MV)プロモーター、または任意の他のプロモーター(例えば、真核生物細胞のプ
ロモーターのような細胞のプロモーターは、ヒストンプロモーター、pol IIIプ
ロモーター、およびβアクチンプロモーターを包含するが、これらに限定されな
い)を包含するが、これらに限定されない。用いられ得る他のウイルスプロモー
ターは、アデノウイルスプロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、
およびB19パルボウイルスプロモーターを包含するが、これらに限定されない。
適切なプロモーターの選択は、本明細書に含まれる教示から当業者に明らかであ
る。
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、適切なプロモーターの制御下
にある。用いられ得る適切なプロモーターは、アデノウイルスのプロモーター(
例えば、アデノウイルスの主要後期プロモーター);または異種プロモーター(
例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター);呼吸器シンチウムウイ
ルス(RSV)プロモーター;誘導性プロモーター(例えば、MMTプロモーター);
メタロチオネインプロモーター;ヒートショックプロモーター;アルブミンプロ
モーター;ApoAIプロモーター;ヒトグロビンプロモーター;ウイルスのチミジ
ンキナーゼプロモーター(例えば、単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター
);レトロウイルスのLTR(上記の改変されたレトロウイルスのLTRを含む);β
アクチンプロモーター;およびヒト成長ホルモンプロモーターを包含するが、こ
れらに限定されない。プロモーターはまた、このポリペプチドをコードする遺伝
子を制御する天然のプロモーターであり得る。
レトロウイルスプラスミドベクターは、パッケージング細胞株を形質導入し、
産生細胞株を形成するために用いられる。トランスフェクトされ得るパッケージ
ング細胞の例は、PE501、PA317、ψ-2、ψ-AM、PA12、T19-14X、VT-19-17-H2、
ψCRE、ψCRIP、GP+E-86、GP+envAm12、およびMiller,Human Gene Therapy,1
巻、5-14頁(1990)(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)に記載
のDAN細胞株を包含するが、これらに限定されない。このベクターは、当該分野
で公知の任意の手段によりパッケージング細胞に形質導入され得る。このような
手段は、エレクトロポレーション、リポソームの使用、およびCaPO4沈澱を包含
するが、これらに限定されない。1つの代替方法では、レトロウイルスプラスミ
ドベクターは、リポソーム中にカプセル化されるか、あるいは脂質にカップリン
グされ得、次いで宿主に投与され得る。
産生細胞株は、ポリペプチドをコードする核酸配列(単数または複数)を含む
感染性レトロウイルスベクター粒子を産生する。次いで、このようなレトロウイ
ルスベクター粒子は、インビトロまたはインビボのいずれかで、真核生物細胞を
形質導入するために用いられ得る。形質導入された真核生物細胞は、ポリペプチ
ドをコードする核酸配列(単数または複数)を発現する。形質導入され得る真核
生物細胞は、胚幹細胞、胚ガン細胞、ならびに造血幹細胞、肝細胞、線維芽細胞
、
筋芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、および気管支上皮細胞を包含するが、こ
れらに限定されない。
本発明はまた、種々の組織におけるFLAP IIタンパク質のレベルの変化を検出
するための診断アッセイに関する。なぜなら、このタンパク質の正常なコントロ
ール組織サンプルと比較した過剰発現により、FLAP II活性に関連した条件の存
在を検出し得るからである。宿主に由来するサンプル中のFLAP IIタンパク質の
レベルを検出するために用いられるアッセイは、当業者に周知であり、そして放
射免疫アッセイ、競合結合アッセイ、ウエスタンブロット分析、および好ましく
はELISAアッセイを包含する。ELISAアッセイは、最初に、FLAP II抗原に特異的
な抗体、好ましくはモノクローナル抗体を調製する工程を包含する。さらに、リ
ポーター抗体は、このモノクローナル抗体に対して調製される。リポーター抗体
に、検出可能な試薬(例えば、放射活性、蛍光、または本発明の実施例では、西
洋ワサビペルオキシダーゼ酵素)が結合される。ここで、サンプルは、宿主から
取り出され、サンプル中のタンパク質を結合する固体支持体(例えば、ポリスチ
レンディッシュ)上でインキュベートされる。次いで、このディッシュ上の任意
の未結合タンパク質結合部位は、ウシ血清アルブミンのような非特異的タンパク
質でインキュベートすることによりカバーされる。次に、このモノクローナル抗
体は、このモノクローナル抗体がポリスチレンディッシュに結合した任意のFLAP
IIタンパク質に結合する時間の間ディッシュ中でインキュベートされる。全て
の非結合モノクローナル抗体は、緩衝液で洗い出される。ここで、西洋ワサビペ
ルオキシダーゼに結合されたリポーター抗体がディッシュに配置され、FLAP II
に結合された任意のモノクローナル抗体へのリポーター抗体の結合が生じる。次
いで非結合リポーター抗体は洗い出される。次いでペルオキシダーゼ基質がディ
ッシュに添加され、そして一定の時間の発色量は、検量線に対して比較した場合
、患者サンプルの一定容量中に存在するFLAP IIタンパク質の量の尺度である。
競合アッセイが用いられ得、ここで、FLAP IIに特異的な抗体は固体支持体に
結合され、そして標識されたFLAP IIおよび宿主由来のサンプルは、固体支持体
を通過させられ、そして固体支持体に結合した検出された標識の量は、サンプル
中のFLAP IIの量に相関し得る。
本発明を以下の実施例を参照にしてさらに記載する;しかし、本発明はこのよ
うな実施例に限定されないことを理解されたい。すべての部または量は、他に明
記しない限り重量基準である。
以下の実施例の理解を容易にするために、現れる頻度の高い特定の方法および
/または用語を記載する。
「プラスミド」は、小文字のpの前および/または後の大文字および/または
数字により示される。本明細書中の出発プラスミドは、市販であるか、制限基準
なく公的に入手可能であるか、または公表された手順に従って入手可能なプラス
ミドから構築され得るかのいずれかである。さらに、記載されるプラスミドと等
価なプラスミドが当該分野で公知であり、そして当業者には明らかである。
DNAの「消化」は、DNA中の特定の配列でのみ作用する制限酵素でそのDNAを触
媒反応的に切断することをいう。本明細書中で使用される種々の制限酵素は、市
販されており、そしてそれらの反応条件、補因子、および他の必要条件は当業者
に公知のものが使用された。分析目的には、代表的には1μgのプラスミドまた
はDNAフラグメントを、約2単位の酵素とともに約20μlの緩衝溶液中で使用する
。プラスミド構築のためのDNAフラグメントを単離する目的のために、代表的に
は5〜50μgのDNAを20〜250単位の酵素で、より大きな容量中で消化する。特定
の制限酵素のための適切な緩衝液および基質量は、製造者により特定される。37
℃での約1時間のインキュベーション時間が通常使用されるが、これは供給者の
説明書に従って変化し得る。消化後、反応物をポリアクリルアミドゲルで直接電
気泳動して所望のフラグメントを単離する。
切断されたフラグメントのサイズ分離は、Goeddel,D.ら、Nucleic Acids Res
.、8:4057(1980)により記載された8%ポリアクリルアミドゲルを使用して行わ
れる。
「オリゴヌクレオチド」は、1本鎖ポリデオキシヌクレオチドまたは2つの相
補的なポリデオキシヌクレオチド鎖のいずれかをいい、これらは化学的に合成さ
れ得る。このような合成オリゴヌクレオチドは、5'リン酸を有さず、従ってキ
ナーゼの存在下てリン酸とATPとを添加しなければ別のオリゴヌクレオチドに連
結しない。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されていないフラグメントに
連結する。
「連結」は、2つの2本鎖核酸フラグメントの間でホスホジエステル結合を形
成するプロセスをいう(Maniatis,T.ら、前出、146頁)。他に提供しない限り
、連結は、ほぼ等モル量の連結されるべきDNAフラグメント0.5μgあたり10単位
のT4DNAリガーゼ(「リガーゼ」)とともに、公知の緩衝液および条件を用いて
達成され得る。
他に記載しない限り、形質転換はGraham,F.およびVan der Eb,A.、Virology
、52:456-457(1973)の方法に記載されるように行った。
実施例1 E.coli を用いてのFLAP IIのクローニングおよび発現
FLAP IIタンパク質をコードするDNA配列であるATCC#75771を、遺伝子の5’
および3’配列に対応するPCRオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅した
:正方向プライマーは以下の配列を有する:
CGCGGGATCCGCCGGGAACTCGATCCTGCTGGCTGCT (配列番号3)。
これは、制限エンドヌクレアーゼBamHIに対する認識部位と、それに続くアミ
ノ酸2〜10をコードするFLAP II遺伝子の27ヌクレオチドを含有する。最初のメ
チオニンをコードするAUGコドンは省略されている。開始コドンは、ベクターpQE
-9(Qiagen,Inc.,9259 Eton Avenue,Chartsworth,CA 91311)により提供される。
逆方向プライマーは、以下の配列を有する:
GCGCAAGCTTAGAATTGCCGCCTCAGTTTCTTGGC (配列番号4)。
これは、FLAP II遺伝子の3’末端とそれに続く転写終止コドン(下線を付す)
に相補的な最後の24ヌクレオチドおよび制限ヌクレアーゼHindIII(太字)に対
する認識部位を含有する。
増幅した配列を、市販のキット(「Geneclean」 BIO 101 Inc.,La Jolla,C
a.)を用いて1%アガロースゲルから単離した。次いで、フラグメントを、エン
ドヌクレアーゼBamHIおよびAsp 718で消化し、次いで再び1%アガロースゲルか
ら単離して精製した。このフラグメントをF1と称した。
pQE-9は、抗生物質耐性(Ampr)、細菌の複製起点(ori)、IPTG調節可能プロモー
ターオペレーター(P/O)、リボソーム結合部位(RBS)、6-Hisタグ、およびユニー
クな制限酵素切断部位をコードする。
4μgのプラスミドpD10(Qiagen)を、酵素BamHIおよびHindIIIで消化し、次い
で当該分野で公知のプロトコルを用い、仔ウシ腸ホスファターゼを用いて脱リン
酸化した。
次いで、プラスミドを、市販のキット(「Geneclean」)を用いて1%アガロ
ースゲルから単離した。脱リン酸化ベクターDNAは、V1と称される。
脱リン酸化ベクターV1を、当該分野で公知の手順を用い、T4 DNAリガーゼを用
いてフラグメントF1と連結した。次いで、連結混合物をE.coli M15(Villarejo
ら,J.Bacteriol.210: 466-474[1974]によりリプレッサープラスミドpDMI.1(Ce
rtaら,1986,EMBO Journal 5: 30513056)を含有する株OZ 291として記載される
)に形質転換した。M15/pDMI.1は、多コピーのプラスミドpDMI.1を含有し、これ
は、lacIリプレッサーを発現し、そしてまたカナマイシン耐性(Kanr)を与える。
次いで、形質転換した細菌のプラスミドを単離し、そして制限酵素BamHIおよ
びHindIIIを用いてFLAP II遺伝子の正しい挿入を特徴付けた。正しい挿入物を含
むプラスミドを単離し、そしてpHIS-FLAPIIと呼んだ。
pDMI.1を含有するE.coli M15細胞をpHIS-FLAP IIで形質転換し、続いて37℃に
て100mg/lアンピシリンおよび25mg/lカナマイシンを含有するLB培地(1リット
ルあたり10g バクトトリプトン、5g 酵素抽出物、5g NaCl)中で増殖させ
た。600nmで0.8の吸光度で、IPTGを最終濃度2mMで添加した。37℃にてさらに2.
5時間後、細胞を遠心分離により回収した。
E.coli中で発現されたFLAP IIタンパク質を、Ni-キレートアフィニティークロ
マトグラフィーにより精製した。誘導された培養物1リットルのE.coli細胞を、
緩衝液A(6M グアニジン−ヒドロクロリド、0.1M リン酸ナトリウム、pH8.0)
を添加して溶解させ、そして懸濁物を2時間撹拌した(100rpm)。次いで、懸濁
物を100,000×gで10分間遠心分離した。上清を、3mlのNTA樹脂(Qiagen Inc.
)を含有するカラムに載せた。次いで、カラムを30mlの緩衝液Aで洗浄した。続
いて、カラムを20mlの緩衝液B(8M 尿素、0.1M リン酸ナトリウム、0.01M Tri
s、pH8.0)で洗浄し、次いで、20mlの緩衝液B(pH6.5)で洗浄した。最後に、
FLAP IIタンパク質を緩衝液B(pH4.5)で溶出した。FLAP IIタンパク質の存在
を、SDS-PAGE(Laemmli,Nature 227,680-685(1970))により確認した。種々のHi
sタグタンパク質の精製についての記載は、Hochuliら,J.Chromatography 411:
177-184(1984)、Hochuliら,J.Chromatography 411: 177-184(1984),Hochuliら
,Bio/Technology 11: 1321-1325およびGentzら,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.US
A 86: 821-824に見出され得る。
実施例2 バキュロウイルス発現系を用いるFLAP IIのクローニングおよび発現
完全長FLAP IIタンパク質をコードするDNA配列であるATCC#75771を、この遺伝
子の5’および3’配列に対応するPCRオリゴヌクレオチドプライマーを用いて
増幅した。
5’プライマーは配列 CCGGATCCGCCACCATGGCCGGGAACTCGATCCT(配列番号5)
を有し、そしてBamHI制限酵素部位(太字)とそれに続く真核生物細胞における
翻訳開始のために効果的なシグナル(J.Mol.Biol.1987,196,947-950,Kozak,M
.)に類似した6ヌクレオチド、および直後にFLAP II遺伝子の最初の20ヌクレオ
チド(翻訳開始コドン「ATG」に下線を付す)を含有する。
3’プライマーは配列 CACAGGTACCAGCTTCTGCAAGCATTAAAG(配列が番号6)を
有し、そして制限エンドヌクレアーゼAsp718に対する切断部位およびFLAP II遺
伝子の3’非翻訳配列に相補的な20ヌクレオチドを含有する。増幅した配列を、
市販のキット(「Geneclean」BIO 101 Inc.,La Jolla,Ca.)を用い、1%アガ
ロースゲルから単離した。次いで、フラグメントをエンドヌクレアーゼBamHIお
よびAsp718で消化し、次いで実施例1に記載のように精製した。このフラグメン
トをF2と称する。
ベクターpRG1(pVL941ベクターの改変物、以下に論ずる)を、バキュロウイル
ス発現系を用いるFLAP IIタンパク質の発現のために用いた(概説は、Summers,M
.D.およびSmith,G.E.1987,A manual of methods for baculovirus vectors an
d insect cell culture procedures,Texas Agricultural Experimental Statio
n Bulletin 番号1555を参照のこと)。この発現ベクターは、自己カリフォルニ
ア
核ポリヘドローシスウイルス(Autographa california nuclear polyhedrosis vi
rus)(AcMNPV)の強力なポリヘドリン(polyhedrin)プロモーターならびにそれに続
く制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびAsp718に対する認識部位を含有する。サ
ルウイルス(SV)40のポリアデニル化部位を、効率的なポリアデニル化のために用
いた。組換えウイルスの容易な選択のために、E.coli由来のβガラクトシダーゼ
遺伝子を、ポリヘドリンプロモーターと同じ方向に挿入し、それにポリヘドリン
遺伝子のポリアデニル化シグナルが続く。ポリヘドリン配列は、同時トランスフ
ェクトした野生型ウイルスDNAの細胞媒介性相同組換えのためにウイルス配列に
両側で接している。多くの他のバキュロウイルスベクター(例えば、pAc373、pVL
941、およびpAcIMI(Luckow,V.A.およびSummers,M.D.,Virology,170: 31-39)
)が、pRG1の代わりに用いられ得る。
プラスミドを、制限酵素BamHIおよびAsp718で消化し、次いで仔ウシ腸ホスフ
ァターゼを用いて当該分野で公知の手順により脱リン酸化した。次いで、DNAを
、実施例1に記載のように1%アガロースゲルから単離した。このベクターをV2
と称する。
フラグメントF2および脱リン酸化プラスミドV2をT4 DNAリガーゼで連結した。
次いで、E.coli HB101細胞を形質転換し、そしてFLAP II遺伝子を有するプラス
ミド(pBacFLAPII)を含有する細菌を、酵素BamHIおよびAsp718を用いて同定し
た。クローン化したフラグメントの配列を、DNA配列決定により確認した。
5μgのプラスミドpBacFLAPIIを、1.0μgの市販の直鎖状バキュロウイルス(
「BaculoGoldTM バキュロウイルスDNA」,Pharmingen,San Diego,CA.)とと
もにリポフェクション法(Felgnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84: 7413-7417
(1987))を用いて同時トランスフェクトした。
1μgのBaculoGoldTMウイルスDNAおよび5μgのプラスミドpBacFLAP IIを、50
μlの無血清Grace培地(Life Technologies Inc.,Gaithersburg,MD)を含有す
るマイクロタイタープレートの無菌ウェル中で混合した。その後、10μlのLipof
ectinおよび90μlのGrace培地を添加し、混合し、そして室温にて15分間インキ
ュベートした。次いで、トランスフェクション混合物を、1mlの無血清Grace培
地を有する35mm組織培養プレート中に播種したSf9昆虫細胞(ATCC CRL 1711)に
滴下した。プレートを前後に揺り動かして新しく添加した溶液と混合させた。次
いで、プレートを27度にて5時間インキュベートした。5時間後、トランスフェ
クション溶液をプレートから除去し、そして10%ウシ胎児血清を添加した1mlの
Grace昆虫培地を添加した。プレートをインキュベーターに戻し、そして培養を2
7℃にて4日間続けた。
4日後、上清を回収し、そしてプラークアッセイを、SummersおよびSmith(前
出)により記載されたのと同様に行った。改変として、「Blue Gal」(Life Tec
hnologies Inc.,Gaithersburg)を有するアガロースゲルを用い、これにより青
く染まったプラークの単離が容易となった。(「プラークアッセイ」の詳細な説
明はまた、Life Technologies Inc.,Gaithersburgにより配布される昆虫細胞培
養およびバキュロウイルス学のための使用者の手引きの9から10頁に見出され得
る。)
4日後、ウイルスの系列希釈物を細胞に添加し、青く染まったプラークをエッ
ペンドルフピペットのチップでつついた。次いで、組換えウイルスを含む寒天を
、200μlのGrace培地を含むエッペンドルフチューブに再懸濁した。寒天を、短
時間の遠心分離により除去し、そして組換えバキュロウイルスを含有する上清を
用いて35mm皿に播種したSf9細胞を感染させた。4日後、これらの培養皿の上清
を採集し、次いで4℃にて貯蔵した。
Sf9細胞を、10%熱失活FBSを添加したGrace培地中で増殖させた。細胞を、2
の感染多重度(MOI)で組換えバキュロウイルスV-FLAP IIで感染させた。6時間
後、培地を除去し、そしてメチオニンおよびシステインを含まないSF900 II培地
(Life Technologies Inc.,Gaithersburg)に取り替えた。42時間後、5μCiの35
S−メチオニンおよび5μCiの35Sシステイン(Amersham)を添加した。細胞
を、遠心分離により回収する前にさらに16時間インキュベートし、そして標識タ
ンパク質をSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーにより視覚化した。
実施例3 哺乳動物細胞におけるFLAP IIの発現
実施例2に記載のフラグメントF2を、哺乳動物発現ベクターpCMV11に挿入する
ために用いた。
プラスミドpCMV11は、ヒトサイトメガロウイルス(「HCMV」;Boshartら,Cel
l,41: 521-530 (1985))の「主要な即時型」遺伝子の強力なプロモーターおよ
びエンハンサーを含有し、このプロモーターの後ろには制限エンドヌクレアーゼ
HindIII、BamHI、Pvull、およびAsp718に対する単一の切断部位を含有する。Asp
718切断部位の後には、ラットのプレプロインシシュリンのポリアデニル化部位(
Lomedicoら,Cell,18: 545-558(1979))が位置する。さらに、プラスミドは、SV
40ウイルスの複製起点、ならびにアンピシリン耐性およびE.coliにおける複製を
E.coliに与えるpBR322由来のフラグメントを含有する。プラスミドpCMV11をBamH
IおよびAsp718を消化し、次いで実施例1に記載のように仔ウシ腸ホスファター
ゼを用いて脱リン酸化した。その後、脱リン酸化ベクターを実施例1に記載のよ
うにアガロースゲルから単離した。
ベクターフラグメントV3をフラグメントF2と連結し、E.coli HB101細菌を形質
転換し、形質転換細胞のプラスミドを当該分野で公知の手順により単離した。公
知の方法による制限分析およびDNA配列決定の手段により、正しい方向に挿入物
を有するプラスミドを含有する形質転換体を同定した。このベクターは、略称pC
MV-FLAP IIとされた。
プラスミドpCMV-FLAP IIを用いるCOS1(ATCC CRL 1650)、Raji-(ATCC CRL 8
163)、およびJurkart-(ATCC CCL 86)細胞のトランスフェクションを、Felgne
rら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84: 7413-7417 (1987))により公開されたリポフェ
クション方法またはDEAE Dextran(Pharmacia)を用いる周知の技術のいずれか
に従って行った。FLAP II遺伝子を有さない発現ベクターpCMV11をコントロール
として供した。トランスフェクションを細胞に行って72時間後、細胞を回収し、
そして5-リポキシゲナーゼの活性化について分析した。
実施例5 遺伝子治療による発現
線維芽細胞を、皮膚生検により被験体から得る。得られる組織を組織培養培地
中に置き、そして小片に分ける。組織小塊を組織培養フラスコの湿表面に置き、
各フラスコに約10片を置く。フラスコを逆さにし、堅く密閉し、そして室温にて
一晩置いた。室温にて24時間後、フラスコを反転し、そして組織塊をフラスコの
底に固定したままにし、そして新鮮な培地(例えば、10%FBS、ペニシリン、お
よびストレプトマイシンを有するHam F12培地)を添加する。次いで、これを37
℃にて約1週間インキュベートする。この時点で、新鮮な培地を添加し、その後
数日毎に取り替える。さらに2週間培養後、線維芽細胞の単層が生じる。単層を
トリプシン処理し、そして大きなフラスコの中にはぎ落とす。
Moloneyマウス肉腫ウイルスの長い末端反復に隣接するpMV-7(Kirschmeier,P.T
.ら,DNA,7: 219-25(1988))を、EcoRIおよびHindIIIで消化し、続いて仔ウシ腸
ホスファターゼで処理する。直鎖状ベクターをアガロースゲルで分画し、そして
ガラスビーズを用いて精製する。
本発明のポリペプチドをコードするcDNAを、それぞれ5’および3’末端配列
に対応するPCRプライマーを用いて増幅する。5’プライマーは、EcoRI部位を含
有し、そして3’プライマーはさらにHindIII部位を含有する。等量のMoloneyマ
ウス肉腫ウイルス直鎖状骨格ならびに増幅したEcoRIおよびHindIIIのフラグメン
トを、T4 DNAリガーゼの存在下で一緒に添加する。得られる混合物を、2つのフ
ラグメントの連結に適切な条件下で維持する。連結混合物を用いて細菌HB101を
形質転換し、次いでこれを、ベクターが適切に挿入された目的の遺伝子を有する
ことを確認するために、カナマイシン含有寒天上にプレートする。
両種性(amphotropic)pA317またはGP+am12パッケージング細胞を細胞培養中で
増殖させ、10%仔ウシ血清(CS)、ペニシリン、およびストレプトマイシンを有す
るDulbeccoの改変Eagles培地(DMEM)中で集密的な密度にする。次いで、遺伝子を
含有するMSVベクターを培地に添加し、そしてパッケージング細胞をベクターで
形質導入する。この時点で、パッケージング細胞は、遺伝子を含有する感染性ウ
イルス粒子を産生する(この時点で、パッケージング細胞は、産生細胞と呼ばれ
る)。
新鮮な培地を、形質導入した産生細胞に添加し、その後、培地を集密的な産生
細胞の10cmプレートから回収する。感染性ウイルス粒子を含有する使用済み培地
をミリポアフィルターを通して濾過し、分離した産生細胞を除去し、次いで、こ
の培地を用いて線維芽細胞を感染させる。培地を半集密的な線維芽細胞のプレー
トから除去し、そしてすばやく産生細胞由来の培地と取り替える。この培地を除
去し、そして新鮮な培地と取り替える。ウイルスの力価が高い場合、実質的に全
ての線維芽細胞が感染し、そして選択は必要ない。力価が非常に低い場合、選択
マーカー(例えば、neoまたはhis)を有するレトロウイルスベクターの使用が必
要である。
次いで、操作された線維芽細胞を、単独で、またはサイトデックス3マイクロ
キャリアビーズ(cytodex 3 microcarrier bead)上で集密的に増殖させた後に、
宿主中に注射する。この時点で、線維芽細胞はタンパク質産物を産生する。
上記の教示に照らせば、本発明の多くの改変および変化が可能である。従って
、添付の請求の範囲の範囲内で、本発明は特に記載した以外の方法でも実施し得
る。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12Q 1/68 0276−2J G01N 33/566
G01N 33/566 9735−4B C12N 5/00 B
// A61K 38/00 ABE 9051−4C A61K 37/02 ABG
ABG 9051−4C ABE
ABL 9051−4C ADS
ACD 9051−4C ACL
ACL 9051−4C ACD
ADS 9051−4C ABL
(C12N 5/10
C12R 1:91)
(C12P 21/02
C12R 1:91)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,GE
,HU,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,
LT,LU,LV,MD,MG,MN,MW,MX,N
O,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SI
,SK,TJ,TT,UA,US,UZ,VN
(72)発明者 フレイシャマン, ロバート ディー.
アメリカ合衆国 ワシントン ディーシー
20008, エヌ.ダブリュー. ナンバ
ー134, ウッドリー ロード 2800