【発明の詳細な説明】
水素結合を形成する現像能安定剤を有する、オンプレス現像可能な印刷版
発明の分野
本発明は、一般に、オンプレス現像に適切なフォトレジスト組成物に関し、さ
らに特定すると、それらのオンプレス(on-press)現像能を向上させるための、平
版印刷版のフォトレジストへの、両性水素結合を形成する現像能安定剤の取り込
みに関する。
背景
現在では、実際に全ての印刷コピーは、3種の基本的なタイプの印刷版を使用
して製造されている。1つのタイプには、凸版があり、これは、隆起した表面か
ら印刷する。別のタイプは、凹版であり、これは、窪んだ表面から印刷する。第
3のタイプは、平版であり、これは、隣接し、かつ周囲の非印刷領域よりそれほ
ど高くも低くもない、実質的に平坦な表面から印刷する。印刷は、異なる化学特
性を有する領域に対する、インクの個々の親和性および/または反発性により起
こる。平版印刷版は、一般に、撥水性(疎水性)で受油性(親油性)の画像領域およ
び受水性(親水性)の非画像領域を有するように、加工される。
使用のための加工前には、従来の平版は、代表的には、親水性基材上にコーテ
ィングしたまたは析出させた疎水性の光反応性ポリマーのフォトレジスト(すな
わち、フォトレジスト)を有する。
印刷機で使用する従来の平版を調製する際には、この平版は、まず、活性放射
線に曝される。活性放射線に曝すことにより、平版のフォトレジストにて、特定
の化学反応が起こる。このような光誘起した化学反応は、レジストがネガティブ
ワーキング(negative-working)またはポジティブワーキング(positive-working)
に依存して、フォトレジストの溶解性を低下させるかまたは増強させるかいずれ
かであり得る。ネガティブワーキング版では、活性放射線への曝露により、一般
に、フォトレジストの「硬化」が起こる。ポジティブワーキング版では、活性放
射線への曝露により、一般に、フォトレジストの軟化または可溶化が起こる。
光の曝露後、通常、湿式現像工程が行われる。このような湿式現像の目的は、
フォトレジストのうち、光誘起による化学変化を受けた領域、または光に曝され
なかった領域を取り除くことにある。従来の現像技術下での溶媒和は、代表的に
は、現像浴中で曝露された版を有機溶媒で処理することを包含する。ネガティブ
ワーキングレジストについては、溶媒は、レジストの非曝露部分を膨張させ、そ
して溶解させる。溶媒は、曝露部分を膨張させるべきではない。そうでなければ
、現像した画像に歪みが生じる場合がある。ポジティブワーキングレジストにつ
いては、非曝露コーティングおよび曝露コーティングの応答は逆になるが、同様
の一般原理が適用される。
フォトレジストの一部の優先的な溶媒和および洗い落としの結果として、下部
の親水性基材に対応する部分が、コーティングを解かれる。ネガティブワーキン
グ版については、上記疎水性画像領域は、溶媒和および洗浄の後に残留している
フォトレジストの一部に相当する。上記親水性非画像領域は、基材の非コーティ
ング部分に相当する。画像領域および非画像領域は、このように区別され、次い
で加工された版は、印刷機上に載せられ、そして操作され得る。
湿式現像が必要なことに妨げられて、印刷機上で使用する前の従来の平版の加
工には時間と労力との両方がかかり、そしてかなりの有機化学物質が使用される
。従来の平版印刷の長時間にわたる湿式現像操作への依存を充分に除くかまたは
低減させ、それにより、曝露後の前プレス加工を必要とすることなく、曝露後す
ぐに平版を印刷機で使用することを可能にする手段が、非常に望まれていること
が分かる。
過去には、乾燥現像可能な平版印刷版が示唆され、これによれば、曝露後の平
版印刷版の湿式加工工程が省かれ、そして曝露された版を印刷機に直接載せるこ
とにより、印刷を行うことが可能になる。オンプレス現像可能(またはそれに関
連している)ように特徴付けられ得る印刷版には、以下がある:例えば、米国特
許第4,273,851号(1981年6月16日に、Muzyczkoらに発行);米国特許第5,258,263
号(1993年11月2日に、Z.K.Cheema、A.C.Giudice、E.L.Langlais、およびC.F
. St.Jacquesに発行);および米国特許第5,395,734号(1995年3月7日に、Voge
lらに発行)。
上記特許で具体化された方法論およびアプローチにもかかわらず、印刷機上で
容易に現像され得、かつ良好な操作期間のために必要な耐久性のある画像領域を
有する版を製造する平版印刷版が、引き続き必要とされている。このようなオン
プレス現像可能な印刷版についての出願が提出されている。
米国特許出願第08/147,045号および第08/146,711号(1993年11月1日に、W.C.
Schwarzel、F.R.Kearney、M.J.Fitzgerald、およびR.C.Liangにより出願)は
、従来の印刷版またはオンプレス現像可能な平版印刷版のいずれかにおいて、感
光速度を増強させるために使用され得る光反応性ポリマーバインダーを記述して
いる。簡単には、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートの
ポリマーは、そのイソシアネート基をヒドロキシアルキルアクリレート(例えば
、4-ヒドロキシブチルアクリレート)と反応させることにより、ビニル基の反応
性について誘導体化する。得られた光ポリマーのバインダーは、印刷版の製造に
代表的に使用される非反応性バインダーを含有する組成物よりも、高い感光速度
を提供する。光反応性ポリマーバインダーを使用する平版印刷版は、(良好な操
作期間により明らかなように)良好な耐久性を有し、そして比較的弱い現像剤を
用いて現像され得る。光反応性バインダーの調製に関して、これらの出願は、電
子欠陥モノマー(例えば、無水マレイン酸)との複合化によってm-イソプロペニル
-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートを共重合して、他のモノマーとのフリ
ーラジカル共重合を促進する方法を記述している。この無水マレイン酸促進方法
は、速度論的により効率的であり、そしてより大きなモノマーからポリマーへの
転化率を提供する。得られた生成物を平版印刷版のフォトレジストに使用するこ
とにより、その接着性が改善する。同一譲渡人に譲渡された米国特許出願第08/1
47,045号および第08/146,711号の開示内容は、本明細書中で参考として援用され
ている。同一譲渡人に譲渡され、そして1995年4月27日に出願された米国特許出
願、弁護士事件番号第C8024号の内容もまた、参考とされる。
米国特許出願第08/147,044号(1993年11月1日に、F.R.Kearney、J.M.Hardin
、M.J.Fitzgerald、およびR.C.Liangにより出願)は、オンプレス現像可能なネ
ガティブワーキング平版印刷版の現像助剤として、可塑剤、界面活性剤およびリ
チウム塩の使用を記述している。簡単には、プレスファウンテン(press fountai
n)
溶液に分散可能かまたは可溶であって、かつアクリルモノマーおよびオリゴマー
に可溶な可塑剤が、フォトレジストに混合される。このような可塑剤は、架橋前
に、フォトレジストを、ファウンテン溶液に対してさらに浸透性にさせ、その一
方で、架橋後には、インクおよびファウンテン溶液で容易に抽出される。界面活
性剤は、ファウンテン溶液における疎水性画像形成組成物の分散を促進し、そし
て薄皮形成(scumming)を低減させる。さらに、リチウム塩もまた、フォトレジス
トに混合され得、例えば、水素結合によって結合する傾向のあるウレタンアクリ
レートポリマーの水素結合を分離し、それゆえ、現像能を高め得る。同一譲渡人
に譲渡された米国特許出願第08/147,044号の開示内容は、本明細書中で参考とし
て援用されている。
米国特許出願第08/146,479号(1993年11月1日に、L.C.Wan、A.C.Giudice、W
.C.Schwarzel、C.M.Cheng、およびR.C.Liangにより出願)は、オンプレス現像
可能な印刷版の耐久性を高めるために、ゴムおよび界面活性剤を使用することを
記述している。このゴムは、好ましくは、分離したゴム粒予として、フォトレジ
ストに混合される。均一かつ安定な分散対を得るために、ゴム成分は、好ましく
は、約7.0と18.0との間のHLBを有する界面活性剤によって、フォトレジストに懸
濁される。同一譲渡人に譲渡された米国特許出願第08/146,479号の開示内容は、
本明細書中で参考として援用されている。
上記出願で述べた主題を実施することにより、いわゆる「ロングラン」印刷版
のための適切な「オンプレス」現像可能な印刷版が製造され得る一方で、この主
題は、望ましくは、米国特許出願第08/146,710号(1993年11月1日に、L.C.Wan
、A.C.Giudice、J.M.Hardin、C.M.Cheng、およびR.C.Liangにより出願;こ
れは、同一譲渡人に譲渡され、本明細書中で参考として援用されている)の主題
と組み合わされる。米国特許出願第08/146,710号は、印刷機上で使用するための
平版印刷版であって、活性放射線に曝された後、さらに処理する必要が最小であ
るかまたはその必要性がない平版印刷版を記述している。印刷版の実施態様には
、印刷版基材、画像に沿って光劣化または光硬化し得るポリマーレジスト層、お
よびポリマーレジストの曝露領域または非曝露領域のいずれかの洗浄をブランケ
ット様に促進し得る複数のマイクロカプセル化現像剤が挙げられる。マイクロカ
プ
セル化現像剤は、ポリマーレジスト層に取り込まれ得、またはポリマーレジスト
層上に析出した分離層を形成し得るか、あるいは特定の他の実施態様では、レジ
スト層と面対面で接触可能な別の基材にコーティングされ得る。
さらに、上記出願のうち、米国特許出願第08/430,461号(1995年4月28日に、M
aurice J.Fitzgerald、Donna J.Guarrera、John M.Hardin、Frederick R.Ke
arney、Rong-Chang Liang、William C.Schwarzel、およびJohn C.Warnerによ
り出願);米国特許出願第08/430,359号(1995年4月28日に、Daoshen Bi、Mauric
e J.Fitzgerald、Frederick R.Kearney、Rong-Chang Liang、William C.Schw
arzel、およびTung-Feng Yehにより出願);ならびに米国特許出願第08/430,876
号(1995年4月28日に、Yee-Ho Chia、Joseph Hanlon、John M.Hardin、Rong-Ch
ang Liang、Yi-Hua Tsao、およびTung-Feng Yehにより出願)にも、言及され得る
。これらの出願のそれぞれは、同一譲渡人に譲渡され、そして本明細書中で参考
として援用されている。
上記出願で述べられているオンプレス版現像のストラテジーは、良好な結果を
提供する一方で、高温に長期間曝すと、得られた平版印刷版のいくつかでは、良
好なオンプレス現像能(および解像度)の損失がある程度観察され得る。それゆえ
、例えば、新たに調製したオンプレス現像可能な印刷版は、比較的に容易にオン
プレス現像され得るが、60℃のオーブンに長期間置いた同様の印刷版は、「鮮明
な」(すなわち、「薄皮形成」がほとんどない)画像を得る前に、印刷機に数回か
ける必要があり得る。「薄皮形成」は、公知のように、インクが、印刷版の非画
像領域(すなわち、ネガティブワーキング印刷版においては、平版基材を剥がし
て得られる親水性で疎油性の領域)に集まり、そして受容媒体に移動する場合に
起こる。
本発明は、現像能の上記損失を防止することに関し、オンプレス現像可能な平
版印刷版のフォトレジストに、本明細書中に開示される1種またはそれ以上のエ
ーテル−カルボン酸、および/またはウレイド、アミド、またはラクタム現像能
安定剤(特に、3,6-ジオキサヘプタン酸、DHTA)を混合することにより、重要なこ
とに、印刷版をオンプレスで現像する場合に、耐久性を損なわないか、またはフ
ァウンテンインクのバランスに影響することなく、現像能の安定性が改善される
ことを見出した。
本発明者らは、本発明の説明において、いずれの理論にも束縛することを所望
しない一方で、これらの選択した現像能安定剤の添加により得られる結果は、い
くつかの機構から得られ、この機構は、単独でまたは組合わせて作用すると考え
ている。
まず、経時的に所望でない現像能が観察されたある印刷版において、印刷版が
、水素結合供与部分および水素結合受容部分の両方を有するいくつかの成分を含
有するフォトレジストでコーティングされた、特別に処理された極性表面を含む
ことを見出した。これらの印刷版では、現像能の損失に寄与するこれらの基の主
要なソースは、そのウレタン結合を有するそのエステル含有バインダーおよびそ
の光活性バインダー(すなわち、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソ
シアネートの上記の誘導体化されたポリマー)であった。ウレタン基を含有する
ポリマーは、経時的に水素結合を介して、目的の構造を現像するに周知である。
水素結合を形成し得る(従って、利用可能な水素結合部位と競争し得る)小分子を
使用することにより、この目的の構造が分解されると考えられている。さらに、
ファウンテンおよびインクに可溶性または分散性の親水性水素結合形成剤(例え
ば、DHTA)を使用すると、オンプレス現像における効果は、可逆性を示す。水素
結合形成剤は溶解され、そしてウレタン結合が再形成され、それゆえ、耐久性が
改良されるかおよび/または維持されるように影響する。
第二に、経時的に所望でない現像能が観察された他の印刷版においては、印刷
版基材の酸化アルミニウム表面は、ポリ(ビニルホスホン酸)で処理されるか、ま
たはケイ酸塩処理される(silicated)ことを見出した。空気−コーティングの界
面の過剰なホスホン酸基により、非画像領域の親水性が保持され、次の工程にて
、その領域への極性画像コーティングの付着が促進される。時間が経つと、酸基
は、水素結合または酸−塩基相互作用により、印刷版の塩基性アルミナ表面に対
する立体配座を変化させ得、非画像領域内に薄皮形成または調色を生じる。極性
表面に代わって、ポリ(ビニルホスホン酸)の非極性骨格は、外側に向くからであ
る。(ケイ酸塩処理した印刷版基材において、類似の反応が起こると考えられて
いる(その程度は低いが))。小さい、水素結合分子(例えば、DHTA)の使用により
、酸
化アルミニウム表面の活性部位に対して、ポリ(ビニルホスホン酸)のホスホン酸
基を効果的に競争させ得、これらの極性ホスホン酸基の再配置および吸着を防止
する。添加剤(例えば、DHTA)の両性的な性質は、アルミナ表面の結合部位に対し
て、ホスホン酸基と競争させる場合、さらに使用され得る。酸性末端(「頭部」)
は、アルミナと結合するので、「尾部」もまた極性であり、そしてポリ(ビニル
ホスホン酸)の場合とは対照的に、アルミナ表面の親水性を保持する。
第三には、上記印刷版のフォトレジストに使用されるロイコ染料の塩基性ジメ
チルアミノ基は、親水性亜リン酸−OH結合をブロックさせ得、それゆえ、その表
面を、非常に疎水性のトリアリールメタン部分に転化させる。DHTAは、(プロト
ン化または水素結合によって)ジメチルアミノロイコ染料に対して、表面ホスホ
ン酸基と競争し得、そしてアルミナ表面の親水性を保持し得る。得られたDHTA−
染料複合体は親水性であり、そしてフォトレジストと混和し得る。他の強酸(例
えば、硫酸またはリン酸)もまた、塩基性ロイコ染料をプロトン化するに有用で
ある。しかし、それらは、しばしばフォトレジストまたは表面活性の高い化合物
(例えば、ドデシルベンゼンスルホネート)おける溶解性に乏しいロイコ染料塩を
生じ、それにより、画像領域の耐久性または接着性を乏しくさせる。
発明の要旨
本発明は、平版インクおよびファウンテン水溶液を印刷版に送達する手段を備
えた平版印刷機で現像可能な平版印刷版を提供し、平版印刷版は、順に、(a)印
刷版基材;および(b)画像に沿った活性放射線の曝露により光硬化可能なフォト
レジストを有し、フォトレジストは、少なくとも、(i)有機高分子バインダー;(
ii)連鎖成長重合により高ポリマーを形成し得る少なくとも1個の末端エチレン
性基を有する光重合可能なエチレン性不飽和モノマー;(iii)活性放射線により
活性化し得る重合開始剤;ならびに(iv)両性水素結合を形成する現像能安定剤を
含有し、水素結合を形成する現像能安定剤は、不揮発性であり、フォトレジスト
に対して混和性であり、そして平版インクおよびファウンテン溶液に可溶性であ
り、両性水素結合を形成する現像能安定剤は、親水性を示す分子の残りを有する
強力な水素結合を形成する官能基を有する。
本発明の目的は、経時的に良好なオンプレス現像能を有するオンプレス現像可
能な平版印刷版を提供することにある。
本発明の目的は、良好な貯蔵安定性を有するオンプレス現像可能な平版印刷版
を提供することにある。
本発明の目的は、ウレタン基を有するポリマーバインダーを含有するフォトレ
ジストを備える、平版印刷版を提供することにあり、印刷版の経時的な現像能は
、その耐久性を損なうことがないか、または印刷機に使用した場合に、ファウン
テン−インクのバランスに影響することなく、著しく改善される。
本発明の目的は、そのフォトレジストに、両性水素結合を形成する現像能安定
剤を混合したオンプレス現像可能な平版印刷版を提供することにあり、水素結合
を形成する現像能安定剤は、フォトレジストにおいて不揮発性で混和性であり、
かつ従来の平版印刷インクまたはファウンテン溶液に可溶性の化合物であり、両
性水素結合を形成する現像能安定剤は、親水性を示す分子の残りを有する強力な
水素結合官能基を有する。
本発明の目的は、そのフォトレジストに、両性水素結合を形成する現像能安定
剤を混合したオンプレス現像可能な平版印刷版を提供することにあり、両性水素
結合を形成する現像能安定剤は、式R(OCH2CH2)nBXを有する化合物であり、ここ
で、nは、1〜20の整数であり、Bは、存在する場合、アルキル基、オキサアル
キル基、アリール基、オキサアリール基、シクロアルキル基またはオキサシクロ
アルキル基であり、Xは、水素結合に関与し得る官能基であり、そしてRは、水素
、メチルまたはエチルである。
本発明の目的は、そのフォトレジストに混合された3,6-ジオキサヘプタン酸を
有するオンプレス現像可能な平版印刷版を提供することにある。
本発明の目的は、そのフォトレジストに混合された3,6,9-トリオキサデカン酸
を有するオンプレス現像可能な平版印刷版を提供することにある。
発明の主題の詳細な説明
本開示内容を通じて、用語「オンプレス」は、現像および印刷版の両方を記述
するために、使用される(例えば、「オンプレス現像」、「オンプレス現像す
る」、「オンプレス現像可能な平版印刷版」など)。本明細書中で使用される修
飾語「オンプレス」とは、湿式現像工程または類似の中間加工に頼ることなく、
画像に沿った曝露後に、印刷機において、親油性で疎水性のポリマー領域の画像
に沿った有用な分布を現像する能力を示すように、定義される。「オンプレス」
技術は、他のいわゆる「乾燥現像」技術(例えば、乾燥コロタイプ技術およびレ
ーザーアブレーション技術(ここで、曝露の際には、親油性で疎水性の画像領域
が形成される);およびピールアパート(peel-apart)技術および熱移動技術)こ
こで、積層分離の後には、親油性で親水性の画像領域が形成される)とは対比さ
れるべきである。
本発明は、画像に沿った曝露の直後に、平版印刷機で現像され得る平版印刷版
を提供する。この平版印刷版は、経時的に、比較的安定に保持する良好な曝露後
の現像能により特徴付けられる。平版印刷版は、印刷版基材、およびその上に設
けられた、活性放射線に画像に沿った曝露により光硬化可能なフォトレジストを
備える。特に、本発明に使用されるフォトレジストは、有機高分子バインダー;
連鎖成長重合により高ポリマーを形成し得る少なくとも1個の末端エチレン性基
を有する光重合可能なエチレン性不飽和モノマー、活性放射線により活性化し得
る重合開始剤、および最も重要なことには、両性水素結合を形成する現像能安定
剤を含有する。
好ましい、両性水素結合を形成する現像能安定剤は、フォトレジストと混和し
得る化合物であり、比較的不揮発性である。それらの両性的な性質に従って、本
発明に有用な現像能安定剤は、親水性を示す分子の残りを有する強力な水素結合
部位を有する。好ましい現像能安定剤は、エチレンオキシド単位を含有する分子
であり、そして親水性官能基、および水素結合の形成に関与し得る酸性または塩
基性官能基の両方を有する。このような分子は、式R(OCH2CH2)nBXで表わされ得
、ここで、nは1〜20の整数であり、Bは、任意ではあるが、存在する場合は、
アルキル基、オキサアルキル基、アリール基、オキサアリール基、シクロアルキ
ル基、またはオキサシクロアルキル基(例えば、−CH2、−C6H10、−C6H4、−OCH2
など)であり、Xは、水素結合の形成に関与し得る酸性または塩基性の官能基で
あり、そしてRは、水素、メチル、またはエチルである。酸性または塩基性の
官能基に関して、Xは、例えば、−COOH、−PO3H2、−PO4H2、−SO3H、−SO2H、
−SO4H、−NR2R3にこで、R2およびR3は、アルキルである)、−ピリジン、−C(O)
NH2、−C(S)NH2、−NHC(O)NH2、−NHC(S)NH2、またはそれらの有機塩である。3,
6-ジオキサヘプタン酸は、特に好ましい現像能安定剤である(以下の実施例3お
よび4を参照)。3,6,9-トリオキサデカン酸もまた、良好な結果を与える(例えば
、以下の実施例5および6を参照)。3,6-ジオキサヘプタン酸は、使用する場合
、好ましくは、乾燥フィルムの約0.2重量%〜5.0重量%、さらにより好ましくは
、乾燥フィルムの0.5重量%と3.0重量%との間の濃度で混合される。
本発明のフォトレジスト組成物を調製する際には、水素結合を形成する現像能
安定剤は、代表的には、少なくともバインダー、重合可能なモノマーおよび開始
剤を含有するフォトレジストに混合される。好ましいフォトレジストは、有機溶
媒(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、および1-ブタノール)中に
、示された成分を含有するフォトレジスト組成物から調製される。溶媒ベースの
レジストとして、オンプレス現像する場合、除去したレジストの残りは、このプ
レスインク溶液により「吸収」される。従って、プレスファウンテン溶液の汚染
(および付随する印刷品質の劣化)が回避される。
重合可能なモノマーには、任意の種類の化合物、混合物、または光曝露の領域
における層の特性を光曝露によって物理的に変化させ得るかまたは物理的変化(
例えば、硬化)を促進し得る反応化合物または物質の混合物が挙げられ得る。こ
の目的に適切な化合物および物質には、フリーラジカル重合またはカチオン開始
重合を受ける光重合可能なモノマー化合物が挙げられる。多数の有用な化合物が
利用可能であり、一般には、複数の末端エチレン性基により特徴付けられる。
ポリマーレジスト層の光硬化を促進するのに特に好ましいものには、光曝露時
に高分子物質またはポリマー物質を形成する重合可能モノマー、好ましくは、フ
リーラジカルにより開始する連鎖成長重合により高ポリマーを形成し得る少なく
とも1個の末端エチレン性基を有する光重合可能なエチレン性不飽和モノマーが
ある。このような不飽和化合物の例には、アクリレート、アクリルアミド、メタ
クリレート、メタクリルアミド、アルキド化合物、ビニルエーテル、ビニルエス
テル、N-ビニル化合物、スチレン、クロトネートなどが包含される。重合は、光
開始剤(例えば、活性放射線により活性化し得るフリーラジカルを生じる付加重
合開始系)を用いることにより行われ得る。このような開始系は公知であり、そ
れらの例を以下に記述する。
好ましい重合可能なモノマーには、多官能性のアクリレートモノマー(例えば
、エチレングリコール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールの
アクリレートおよびメタクリレートエステル)がある。これらは、光開始剤の存
在下にて、ポリマーフォトレジストの曝露領域において、重合され得る。適切な
光開始剤には、アセトフェノンの誘導体(例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルア
セトフェノン)、ベンゾフェノン、ベンジル、ケトクマリン(例えば、3-ベンゾイ
ル-7-メトキシクマリン)、キサントン、チオキサントン、ベンゾインまたはアル
キル置換アントラキノン、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウ
ム塩、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾービス-4-シアノ-ペンタン酸が挙
げられるが、他のものも使用され得る。
使用されるモノマーの実用的な濃度は、組成物の全固形分を基準にして、約7.
5重量%〜70重量%、好ましくは、15重量%と40重量%との間である。
ほとんどの印刷版用のポリマーフォトレジストの他の主要な成分は、適切な親
油性およびインク受容性を有する溶媒溶解性の疎水性バインダーである。適切な
バインダーの物質には、以下が挙げられる:塩化ビニリデンコポリマー(例えば
、塩化ビニリデン/アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニリデン/メチルメタク
リレートコポリマーおよび塩化ビニリデン/酢酸ビニルコポリマー);エチレン/
酢酸ビニルコポリマー;セルロースのエステルおよびエーテル(例えば、セルロ
ースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、およびメチ
ル、エチルベンジルセルロース);合成ゴム(例えば、ブタジエン/アクリロニト
リルコポリマー;塩素化イソプレンおよび2-クロロ-1,3-ブタジエンポリマー);
ポリビニルエステル(例えば、酢酸ビニル/アクリレートコポリマー、ポリ(酢酸
ビニル)および酢酸ビニル/メチルメタクリレートコポリマー);アクリレートお
よびメタクリレートコポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート);塩化ビニ
ルコポリマー(例えば、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー);およびジアゾ樹脂(
例えば、ホルムアルデヒドポリマーおよびp-ジアゾ-ジフェニルアミンのコポリ
マー)
が挙げられる。
本発明のフォトレジスト組成物は、好ましくは、光曝露時に、重合可能なモノ
マーの重合およびモノマーのポリマーバインダーへのグラフト化の結果として、
硬化をする層に適切にコーティングされ得る。所望であれば、重合可能なモノマ
ーまたはバインダーの架橋を促進するために、他の架橋剤(例えば、ビス-アジド
およびポリチオール)が含有され得る。
所望であれば、ペンダントピリジウムイリド基(この基は、光曝露時に、不
溶化を伴って、ジアゼピン基への環拡大(光転位)を受ける)を有する前形成ポリ
マーもまた、本発明の光反応性ポリマーとブレンドされ得る。このようなピリジ
ウムイリド基を有するポリマーの例は、米国特許第4,670,528号(1987年6月2日
に、L.D.TaylorおよびM.K.Haubsに発行)に示されている。
本発明の平版印刷版を調製するために、フォトレジスト組成物は、基板に層と
してコーティングされる。基材に適切な物質を決定する際には、一定のファクタ
ーが考慮される。このような要因は、個々のプロジェクトの特定の平版印刷の要
求とともに変わり、当業者の範囲内であると考えられている。それにもかからわ
ず、想定されるほとんどの平版印刷の要求に対しては、適切な基材は、一般に、
光曝露の前に、ポリマーレジスト層が充分に接着され得るものであって、かつ光
曝露の後に、光が曝露された印刷(画像)領域が付与されるものが挙げられる。他
の関係する要件は、本発明の開示に基づいて、推定され得る。
実際には、印刷版の製造に使用するための基材材料は、米国特許第4,492,616
号(1985年1月8日に、E.Pliefkeらに発行)に記述のように、フォトレジストへ
の接着性を改良するためか、または基材材料の親水性を高めるため、および/ま
たは感光性コーティングの現像能を改良するために、しばしば、1つまたはそれ
以上の処理にかけられる。それゆえ、基材は、ポリマーレジスト層の所望の接着
性を促進するために、(例えば、ポリビニルホスホン酸またはシリケートにより
、またはアノード処理により、あるいはコロナ放電またはプラズマ処理により、
あるいは粗面化または粒状化(graining)処理により)処理され得る。
特に好ましい基材には、アルミニウム、亜鉛またはスチールの金属製基材があ
る。他の好ましい基材は、シリコーンゴムおよび金属化プラスチックシート(例
えば、ポリ(エチレンテレフタレート)をベースにしたもの)がある。
好ましい印刷版は、粒状化したアノード処理アルミニウム板であり、この印刷
版の表面は、粗面化処理の組合せにより、機械的または化学的(例えば、電気化
学的)に粗くされる。アノード処理した印刷版は、酸化物表面を得るために使用
され得る。他の望ましい印刷版は、例えば、ポリビニルホスホン酸で処理した、
アノード処理したアルミニウム板、または樹脂製またはポリマー製の親水性層と
共に提供される、アノード処理したアルミニウム板である。
本発明の印刷版の製造に使用され得る印刷版基材材料、およびこのような基材
を粒状化し、かつ親水性にする方法の例は、例えば、米国特許第4,153,461号(19
特許第4,492,616号;米国特許第4,618,405号(1986年10月21日に、D.Mohrらに発
行);米国特許第4,619,742号(1986年10月28日に、E.Pliefkeに発行);および米
国特許第4,661,219号(1987年4月28日に、E.Pliefkeに発行)に記述されている
。
フォトレジスト組成物を調製する際に、光増感剤、共開始剤(coinitiator)お
よび活性剤の使用は、通例行われている。光増感剤および共開始剤は、曝露する
放射線の光子の捕捉に依存する。それらは、主な光開始剤からの異なる波長の光
を吸収し得る。対照的に、活性剤は、曝露する放射線に対する直接の応答には依
存しないが、むしろ、隣接する活性剤および光増感剤の分子が、光子捕捉による
後者の励起に続いて、反応し、フリーラジカルを放出し、代わりに、エチレン性
不飽和部位にて固定化付加反応を誘発する。
印刷版の光の曝露は、ポリマーフォトレジストの特定の組成およびそれらの厚
みにより決定される必要条件に従って達成され得る。一般に、光の曝露には、従
来の光源由来の活性放射線(例えば、比較的長波長の紫外線照射または可視光照
射)が使用され得る。UV源は特に好ましく、そしてこれには、炭素アークランプ
、「D」電球、キセノンランプおよび高圧水銀ランプが挙げられる。
フォトレジストの厚みは、特定の必要条件と共に変化し得る。一般に、それは
、耐久性のある光硬化した印刷表面を提供するに充分な厚みであるべきである。
しかし、それが、曝露−時間必要条件の範囲内で曝され得るように厚みを制御す
べきであり、そして曝露(または非曝露)領域の層を、現像剤ですぐに除去できな
い
ような厚みで付与されるべきではない。上述のように、本発明の分散した微粒子
ゴムを使用することにより、比較的薄いフォトレジストの使用が可能となること
が分かる。アノード処理し、粒状化したアルミニウム基材を使用するとき、粒子
の微細構造体の上部が約0.2ミクロン〜約3ミクロンの範囲、好ましくは、「こ
の粒子の上部」が約0.2〜0.6ミクロンの範囲の厚みを有するポリマーフォトレジ
ストを用いることにより、良好な結果が得られる。
所望かつ所定の視覚的外観を提供するために、ポリマーフォトレジストは、着
色剤(例えば、淡色染料)と共に提供され得る。着色剤、またはそれぞれ無色にな
り得る種かまたは印刷版を製造する光の曝露工程の照射により着色される種の前
駆体が、特に好ましい。このような染料化合物または染料−前駆体化合物、およ
び光の曝露により促進される光の吸収差により、印刷版の製造者は、光が曝され
た印刷版を印刷機に載せ、かつ操作するに先だって、印刷版の曝露領域を非曝露
領域から容易に区別し得る。
さらに、ある種の添加剤を添加することにより、ポリマーフォトレジストの操
作性が改善され得る。例えば、ポリマーフォトレジストは、可塑剤、さらなる硬
化剤、またはコーティング能を改良する他の試薬を含有し得る。ポリマーフォト
レジストはまた、望ましくない(早すぎる)重合を防止するために、酸化防止物質
を含有し得る。例には、ヒドロキノン誘導体;メトキシヒドロキノン;2,6-ジ(t
-ブチル)-4-メチルフェノール;2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェ
ノール);テトラキス{メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)
プロピオネート}メタン;チオジプロピオン酸のジエステル;およびトリアリー
ルホスファイトが包含される。このような添加剤の使用は、本発明の操作性には
必要ではないものの、このような添加剤を混合すると、性能が著しく向上し得る
。
可塑剤、コントラスト染料、画像形成染料および他の添加剤は、マイクロカプ
セル化され、そしてフォトレジスト自体、あるいはフォトレジスト上面に位置し
ているか、または位置し得る別の層に混合され得る。マイクロカプセル中に含有
させることにより、このような添加剤の選択における許容範囲が広くなる。この
ような系では、光重合可能な組成物における添加剤の溶解性も、重合におけるい
くつかの添加剤の抑制効果または遅延効果も、いずれも問題ではないからである
。
本発明の光曝露した印刷版の現像は、使用するフォトレジストの特定の性質に
依存して、多くの方法で達成され得る。例えば、重合可能なエチレン性不飽和モ
ノマーをベースにしたネガティブワーキングフォトレジストの場合には、好まし
くは、10容量%までの有機溶媒を含有する希釈アルカリ溶液を用いて、従来の湿
式現像が使用され得る。有用なアルカリ化合物の例には、無機化合物(例えば、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、安息香酸ナトリウム、ケ
イ酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム);および有機化合物(例えば、アンモニ
ア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン)
が包含される。現像剤として有用な水溶性有機溶媒には、イソプロピルアルコー
ル、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジアセトンア
ルコールなどが挙げられる。特定の要求に依存して、現像溶液は、界面活性剤、
染料、フォトレジストの膨張を抑制するための塩、または金属基材を腐食させる
ための塩を含有し得る。
他の現像手段として、本発明の実施態様は、曝露後にさらなる処理を行うこと
なく、操作上、オンプレス現像され得、現像は、印刷機にて、ファウンテン溶液
および平版印刷インクの作用により達成されることを留意すべきである。特に、
例えば、オフセット平版印刷の方法を例に用いると、印刷版は、印刷機の印刷版
シリンダー上に載せられ得、シリンダーが回転すると、ファウンテン溶液で湿っ
たローラーおよびインクで湿ったローラーと連続的に接触する。ファウンテン溶
液およびインク溶液(これらは、それぞれ、湿式ローラーおよびインクローラー
に噴霧されるか、またはその上に析出する)は、印刷版と接触して、ファウンテ
ン溶液およびインク溶液と、フォトレジストとの上記相互作用を生じる。最終的
に、ファウンテン溶液は、印刷版の非印刷領域と接触し、そしてインクがこれら
の領域と接触することを防止する。同様に、インクは画像領域と接触し、引き続
いて、中間ブランケットシリンダーに移動する。インクが付いた画像は、中間ブ
ランケットシリンダーと印刷シリンダーとの間を通るにつれて、受容媒体(例え
ば、紙)に移動する。
本発明のオンプレス現像可能な印刷版は、多くの印刷用途に適切であるものの
、印刷版は、フォトレジスト組成物を適切に改変させることにより、または印刷
機
上の除去能を改良するためにフォトレジスト層を処理することにより、オンプレ
ス現像能に関して改良され得る。例えば、上記の相互参照した米国特許出願第08
/146,479号に記述のように、マイクロカプセル化した現像剤系に接触する、また
は接触させられているフォトレジストでは、上記の相互参照した米国特許出願第
08/146,710号に記述のように、分散させたゴムを用いると、良好な結果が達成さ
れ得る。フォトレジストはまた、上記の相互参照した米国特許出願第08/147,045
号、第08/146,479号、および第08/146,711号に記述のように、可塑剤系および光
反応性のポリマーバインダーを混合してもよい。これらのオンプレス現像系と、
本明細書中で相互参照した他の特許出願に記述のものとの組み合わせは、使用様
式として示唆される。
本発明を、その実施態様のいくつかを有する以下の限定されない実施例により
、さらに詳細に記述する。実施例では、Radcure Ebecryl PU 8301は、六官能性
のウレタンアクリレートオリゴマーであり、Elvacite 2042(du Pontから入手)は
、高分子量ポリ(エチルメタクリレート)であり、Sartomer SR399は、ジペンタエ
リトリトール(ペンタクリレート)であり、Rohm & Haas A-11は、ポリメチルメタ
クリレート樹脂であり、Rohm & Haas B-72は、ポリ(エチルメタクリレート−コ
ーメチルアクリレート)(poly(ethylmethacrylate-co-methyl acrylate))樹脂で
あり、Irganox 1035(Ciba-Geigyから入手)は、酸化防止剤であり、Aerosol OTは
、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステルであり、そしてTX-100は、ア
ルキルフェノール−エチレンオキシド付加物である。他に指示がない限り、全て
の部、パーセント、比などは、重量基準である。
実施例
実施例1
電気化学的に粒状化され、アノード処理され、そしてポリビニルホスホン酸で
処理された8ミル(0.2mm)の親水性アルミニウム基材に、80〜110mg/フィート2の
適用範囲で、疎水性フォトレジストを析出させた。フォトレジスト(2-プロパノ
ンおよびシクロヘキサノンの88%/12%の溶媒混合物から、約5.50%の固形分を
コーティングした)を、以下の表1-1で示されるように配合する。
次いで、この印刷版を、厚み0.25μmの保護オーバーコートで上塗りした。こ
のオーバーコート配合物を以下の表1-2に示されるように調製した。
コーティングした印刷版を、60℃のオーブンで24時間エージングし、次いで、
標準的なハロゲン化水銀ランプからの活性放射線に曝露した(このランプは、362
〜365nmの紫外光範囲にて発光ピークを有する)。次いで、光曝露した印刷版を、
さらに加工(例えば、洗浄またはゴム付け(gumming))することなく平版印刷機に
使用した。この配合物を使用して印刷版から印刷したページを、コントロール画
像コーティングと比較した。コントロール画像コーティングは、DHTAがないこと
以外は本質的に同一であった。DHTAを含有する配合物は、比較的に迅速に(すな
わち、数枚の印刷ページの後に)、「明瞭な」画像を生じたのに対して、コント
ロール印刷版を用いると、「明瞭な」画像を得るには100ページ以上の印刷を要
した。
実施例2
電気化学的に粒状化され、アノード処理され、そしてポリビニルホスホン酸で
処理した8ミル(0.2ミリメートル)の親水性アルミニウム基材に、80〜110mg/フ
ィート2の適用範囲にて、疎水性フォトレジストを析出させた。フォトレジスト(
2-プロパノンおよびシクロヘキサノンの88%/12%の溶媒混合物から、約5.50%
の固形分をコーティングした)を、以下の表2-1で示されるように配合する。
実施例1と同様にして、印刷版を、次いで、厚み0.25μmの保護オーバーコー
トで上塗りした。オーバーコートの配合物を、以下の表2-2に示されるように調
製した。
実施例1と同様にして、コーティングした印刷版を、60℃のオーブンで24時間
エージングし、次いで、標準的なハロゲン化水銀ランプからの活性放射線に曝し
た(このランプは、362〜365nmの紫外光範囲にて発光ピークを有する)。次いで、
光曝露した印刷版を、さらに加工(例えば、洗浄またはゴム付け)することなく、
平版印刷機に使用した。この配合を使用して印刷版から印刷したページを、コン
トロール画像コーティングと比較した。コントロール画像コーティングは、DHTA
がないこと以外は本質的に同一であった。実施例1と同様に、DHTAを含有する配
合物は、比較的に迅速に(すなわち、数枚の印刷ページの後に)、「明瞭な」画像
を生じたのに対して、コントロール印刷版を用いると、「明瞭な」画像を得るに
は100ページ以上の印刷を要した。
実施例3〜10
以下のベース配合物(85/15MEK/シクロヘキサノン中の7%固形分)に、水素結合
を形成する現像能安定剤を添加することにより、フォトレジスト溶液を作製した
。
特に、3,6-ジオキサヘプタン酸を、ベース配合物に0.5%の乾燥フィルム(実施
例3)および2.0%の乾燥フィルム(実施例4)にて混合した。3,6,9-トリオキサデ
カン酸を、ベース配合物に0.5%の乾燥フィルム(実施例5)および2.0%の乾燥フ
ィルム(実施例6)にて混合した。3,6,9-トリオキサウンデカンジオン酸を、ベー
ス配合に0.5%の乾燥フィルム(実施例7)および2.0%の乾燥フィルム(実施例8)
にて混合した。そして、ポリグリコール二酸を、ベース配合物に0.5%の乾燥フ
ィルム(実施例9)および2.0%の乾燥フィルム(実施例10)にて混合した。コント
ロール組成物を、水素結合を形成する現像能安定剤を含有させることなく調製し
た。
フォトレジスト組成物を、アノード処理したアルミニウム板にスピンコートし
、活性放射線に曝し、次いで、オンプレス現像した。これらの特定の実施例では
、フォトレジストのオンプレス現像は、印刷機に載せる前に、印刷版に、マイク
ロカプセル保持現像剤シート(マイクロカプセルは、高沸点で低蒸気圧の現像剤
(ジエチルアジペート)を含有する)をラミネートすることにより容易となった。
マイクロカプセル保持現像剤シートの製造および使用の記述に対して、上記米国
特許出願第08/146,710号および第08/469,475号が参照され得る。
実施例3〜10を、コントロールと比較して評価した。オンプレス現像の前に、
時間を変えて60℃で保存した試料についての、Dminインク密度範囲の観察結果を
、以下の表にまとめる。
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フロントページの続き
(72)発明者 ジュレック, マイケル ジェイ.
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
01803, バーリントン,サウス ベッド
フォード ストリート 22
(72)発明者 ライアン, ロン−チャン
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02159, ニュートン,ホバート ロード
185
(72)発明者 スルー, リチャード ジェイ.
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02169, クインシー,バージニア ロー
ド 50