JPH1046443A

JPH1046443A - 電磁波シールド織物

Info

Publication number: JPH1046443A
Application number: JP8227295A
Authority: JP
Inventors: Shigeyuki Yanagisawa; 重幸柳沢; Akio Kimura; 明夫木村
Original assignee: Teijin Ltd
Current assignee: Teijin Ltd
Priority date: 1996-07-26
Filing date: 1996-07-26
Publication date: 1998-02-17

Abstract

(57)【要約】【課題】電磁波による人体障害を防護するための衣服
に好適な、後染め（布染め）可能で、有効な電磁波シー
ルド性が繰り返し洗濯後も維持される、柔軟な織物を提
供する。【解決手段】任意の繊維素材、織組織、織密度、目付
けの織物中に、摂氏１３０度熱水中での収縮率が３パー
セント以下のナイロン６６銀メッキ導電性繊維を格子状
に配列せしめ、任意の繊維素材の常法により布染め（後
染め）する事を特徴とする、周波数３００メガヘルツに
於ける電解は遮蔽効果が２６デシベル以上、且つ１ギガ
ヘルツに於ける電解は遮蔽効果が２６デシベル以上であ
る電磁波シールド織物。加藤テック（株）製の純曲げ試
験機（ＫＥＳ−Ｆ−２）で測定したタテ方向及びヨコ方
向それぞれの曲げ剛性（グラム×平方センチメートル／
センチメートル）が、導電性繊維を含まない、任意繊維
素材のみで構成される同一織物の１５０パーセントを越
えない事を特徴とする請求項１の電磁波シールド織物。

Description

【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】本発明は、電磁波による人体障害
を防護するための衣服を構成するのに有用な織物に関す
る。

【従来の技術】従来、電磁波シールド布帛としては、ポ
リエステル織編み物にニッケル、或いは、銅とニッケ
ル、を布帛状で無電解、或いは、電解メッキを施したも
のが主として用いられてきた。これらの布帛は外観が褐
色乃至は黒褐色で金属光沢を有しており、手触りも粗硬
であるため、殆どが衣服の裏地として使用されている。
この製品の最も重大な欠点は、洗濯に対するシールド性
能の耐久性が全く乃至は殆どないことであり、洗濯の際
には電磁波シールド裏地を取り外し、洗濯後再び取り付
けて着用するように表示している製品が多い。この他
に、アクリル繊維を化学処理して硫化銅錯体としたも
の、その上に更にニッケル電解メッキを行ったものもあ
るが、外観や風合いは前記製品と同様であり、布染めの
加工工程にも耐えない。又、一般に布染め工程に耐えな
いものは、洗濯耐久性がない。又、糸を同様の技術で処
理した導電性繊維を通常繊維織物の一部に挿入配列する
事も行われているが、通常繊維を夫々の素材の常法によ
って染色すると、染色工程でシールド性能の喪失乃至は
低下を招き、特にポリエステルの染色条件では性能を維
持できるものはなく、通常繊維を前以て染色しておく、
いわゆる先染め織物の手法に頼らざるを得ない。そのよ
うにして得られた織物のシールド性能の洗濯耐久性は最
良でも数回の域を出ず、実用的に、洗濯が可能な織物と
は云えない。別の技術手段として、連続した金属細線
（銅、等）に通常繊維を巻き付けた、所謂、カバーリン
グ糸を導電性繊維として織物中に挿入したものは洗濯耐
久性はあるが、金属特有の塑性変形を伴い、衣服として
不適当な風合いとなる上、非常に高価である。同様な技
術手段で、短繊維状の金属細線（ステンレススチール、
等）を通常繊維と混紡した糸を導電性繊維として用いた
織物は、金属細線が皮膚に刺さる可能性等着用上の問題
があり、電磁波シールド性の洗濯耐久性も金属細線の折
損、脱落により良好とは云えないレベルである。

【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、布染め（後染め）による生産が可能で、且
つ、繰り返し洗濯後も有効な電磁波シールド性能が維持
され、衣服用素材に相応しい風合いと外観を有する電磁
波シールド織物を提供することにある。

【課題を解決するための手段】電磁波シールド性能を有
する織物を得るには、織物の表面抵抗率が１０^１台、
（望ましくは１０^０台）オーム以下となるように、織物
中に導電性繊維を配置するが、導電性繊維としては、従
来の技術の項に記した様な問題を有する金属細線を避
け、衣服に相応しい風合い重視の観点から、合成繊維表
面に金属薄膜を析出させたものを採用する。合成繊維の
表面にメッキ、その他の手段により金属を析出させた従
来の導電性繊維は、染色加工工程或いは洗濯によって、
導電性を低下乃至は喪失し、織物の電磁波シールド性能
が損なわれるが、その現象は（１）金属析出層の亀裂、
分断（２）合成繊維表面と金属析出層の層間剥離、脱
落、（３）析出金属自体の変質（酸化、等）である。こ
れらの中、（１）（２）は析出金属層と合成繊維糸の熱
収縮挙動の差、即ち析出金属層の熱収縮が合成繊維に較
べて極端に小さい事によって誘起され、析出金属層の厚
さが大きい程その影響は顕著となる。従って、電磁波シ
ールド織物がその製造工程中、或いは製品として遭遇す
る最も苛酷な熱的条件での導電性繊維の収縮を一定限度
以下に抑えると同時に、金属析出層の厚さを一定水準以
下に制御することが、染色加工、洗濯に対するシールド
性能の耐久性を維持するための要件であり、風合いの硬
化を回避するためにも有効である。本発明では、（３）
の観点から、金属として、銅、ニッケルより化学的に安
定で、金、白金より価格的に有利な銀を選び、（２）の
観点で各種の合成繊維との組合せを検討した結果、６６
ナイロンとの相容性が最良であって、風合いの硬化の観
点からも有効なる事を見出し、この組合せで導電性繊維
の熱収縮率、金属析出層の厚さと様々な熱処理、洗濯に
よる表面抵抗、電磁波シールド性能の変化について検討
を行った。この織物が遭遇する最も苛酷な熱的条件は、
導電性繊維と組み合わせる通常繊維がポリエステルを含
む素材である場合の染色加工工程であって、ヒートセッ
ト時の乾熱、摂氏１８０〜１９０度、染色時の湿熱、摂
氏１３０〜１３５度が想定される。従来、合成繊維を無
電解又は電解金属メッキをするに先立って、油剤等の不
純物の除去を目的とする洗浄、繊維と金属の相容性を高
めるためのエッチング等の前処理が行われているが、何
れも摂氏１００度以下であって、上記のような苛酷な温
度条件下での収縮抑制効果は少なく、そのようにして得
られた導電性繊維はポリエステル繊維の標準的染色温度
（摂氏１３０度）に於いて７〜９パーセントに及ぶ収縮
を示し、染色後の導電性低下、有効な電磁波シールド効
果の喪失を招いている。これを回避するため、染色加工
工程での収縮をある限度以下に抑制することを狙って、
常法によって前処理したナイロン６６に、様々な乾熱、
湿熱温度で収縮熱処理を施した上、常法により銀析出層
の厚さが０．０５〜０．３マイクロメートルにわたる銀
メッキを行い、それらを標準的な染色加工工程のモデル
条件（乾熱、摂氏１８０度、次いで、熱水、摂氏１３０
度）で処理し、染色加工工程モデル条件での収縮率及び
処理後の表面抵抗を測定した結果、収縮率３パーセント
以下のものが表面抵抗１０^１オーム／センチメートル台
（有効な電磁波シールド効果が期待できる水準）の抵抗
値を維持できることを見出した。染色加工工程モデル条
件処理による収縮率が３パーセント以下の導電性繊維は
前処理条件、乾熱（摂氏１７０〜１９０度）のみによる
収縮熱処理によっては得られず、湿熱（熱水中、摂氏１
３０度）による収縮熱処理が有効であった。染色加工工
程モデル条件を経て、１０^１オーム／センチメートル台
以下の表面抵抗を維持した導電性繊維のみを選んで、導
電性繊維を格子状に挿入した織物を作成し、それらの織
物を前記染色加工モデル条件で処理した後、水洗い商業
洗濯条件（弱アルカリ性合成洗剤、摂氏６０度、１５分
洗濯後、摂氏４０度すすぎ３回）に準拠して繰り返し洗
濯を実施し、洗濯後の織物の表面抵抗率を尺度として導
電性能の洗濯耐久性を評価した結果、銀析出層の厚さが
０．０５〜０．１５マイクロメートルの導電性繊維を挿
入した織物は、洗濯７５回後も１０^１オーム／センチメ
ートル台の表面抵抗率を維持するのに対し、０．２マイ
クロメートルのものは洗濯５０回、０．３マイクロメー
トルのものは洗濯３０回前後で表面抵抗率が１０^２オー
ム／センチメートル台を示した。即ち、任意の繊維素材
との組合せで後染め（布染め）が可能で、且つ、優れた
洗濯耐久性を備えた柔軟な電磁波シールド織物を得るた
めの導電性繊維は、ナイロン６６に予め摂氏１３０度の
熱水による収縮熱処理を施し、しかる後に金属析出層の
厚さが０．０５〜０．１５マイクロメーター（概略、使
用ナイロン糸単繊維半径の１／１５０〜１／５０相当）
の銀メッキを行い、その染色加工工程での収縮率が３パ
ーセント以下に抑えられたものが有効である。一方、各
国の電磁波による人体障害防護指針を概観すると、西側
諸国の指針値はほぼ共通レベルであるのに対し、旧ソ連
のそれは１０〜１００倍厳しい基準であり、前者は電磁
波の加熱現象を対象にしているのに対して、後者は遺伝
子、細胞への影響までを考慮したものである事によると
云う。又、生活空間、労働空間の電磁波環境も様々であ
り、人体防護衣服は、特別な場合を除いて、電波雑音の
ような放射イミュニティを対象とする９９．９パーセン
ト（６０デシベル）を超えるような高度の遮蔽は必要で
なく、９５〜９９パーセント（２６〜４０デシベル相
当）で効果があると判断される。電磁波シールド織物の
遮蔽効果は、挿入導電性繊維の密度と太さが大きい程良
好であるが、衣服用素材としての外観、風合いの観点か
らは、導電性繊維の挿入密度、太さ、は小さい方がよ
い。前記電磁波シールド性、加工耐久性、洗濯耐久性を
満たし、衣服としての風合い特性を実用的に残存せしめ
る事が可能な導電性繊維の使用条件範囲を、導電性繊維
の太さ（デニール）と導電性繊維だけを対象としたカバ
ーファクター（挿入密度の指標）で表現すると次のよう
になる事を見出した。カバーファクターの範囲＝１．６×導電性繊維デニール
＋３６０±１００但し、カバーファクター＝導電性繊維のデニールの平方
根×｛（タテ方向本数＋ヨコ方向本数）／２．５４セン
チメートル｝である。尚、ここに於いて、タテ、ヨコ方向の糸本数は
同数に近い事が望ましい。即ち、前記の特性を備えた導
電性繊維を、任意の通常繊維織物の中に、上記の範囲で
挿入する事によって、導電性繊維を含まない通常繊維の
みの同一織物の、加藤テック（株）製純曲げ試験機（Ｋ
ＥＳ−Ｆ−２）によって測定した曲げ剛性（グラム×平
方センチメートル／センチメートル）の１５０パーセン
ト以内にとどまる柔軟、且つ、後染め（布染め）が可
能、洗濯耐久性を有する、実用的に有効な電磁波遮蔽効
果を有する電磁波シールド織物を得る事ができるのであ
る。

【発明の作用】本発明により、後染めが可能で経済的に
生産ができ、洗濯耐久性に優れ、且つ柔軟性を維持した
電磁波シールド織物、衣服を提供するものである。

【実施例】５０デニール、１７フィラメントのナイロ
ン６６糸を、常法により洗浄、表面エッチングの後、摂
氏１３０度の熱水中で１０分間処理し、金属析出層の厚
さが０．１マイクロメーターとなるように、常法により
銀メッキを行って、６５．７デニールの導電性繊維を得
た。この導電性繊維の、摂氏１３０度熱水中の収縮率
は、２．３パーセントであった。タテ、ヨコ糸共、１０
０デニール、４８フィラメントのポリエステルウーリー
加工糸の平織物に、この導電性繊維を、導電性繊維のみ
のカバーファクターが、１．６×デニール＋３６０＝
１．６×６５．７＋３６０≒４６５となるように、格子
状に挿入した織物を作成し、ポリエステル織物の常法に
より染色加工を行った。この織物のアドバンテスト法に
よる電磁波シールド性の測定結果は、洗濯なしの状態
で、周波数３００メガヘルツで２７．３デシベル、１ギ
ガヘルツで３３．２デシベル、洗濯５０回後では、３０
０メガヘルツで２７．１デシベル、１ギガヘルツで３
３．０デシベルであり、繰り返し洗濯による性能の劣化
はわずかで、実用効果のある電磁波シールド性を維持し
ていた。導電性繊維を含まない同一のポリエステル平織
物の、純曲げ試験機による曲げ剛性は、タテ，０．０３
０３，ヨコ、０．０１９６（グラム×平方センチメート
ル／センチメートル）、導電性繊維を配列した電磁波シ
ールド織物の曲げ剛性はタテ、０．０４３６、ヨコ、
０．０２６０（グラム×平方センチメートル／センチメ
ートル）であり、タテヨコ共に、導電性繊維を含まない
同一ポリエステル織物の１５０パーセント以下の値であ
った。

【比較例】１００デニール、５０フィラメントのアク
リロニトリル糸を、硫化銅錯体とした後、ニッケル電解
メッキを行った、厚さ０．２３マイクロメーターの金属
析出層を有する、１５３．３デニールの、摂氏１３０度
熱水中での収縮率が５．７パーセントの導電性繊維を、
実施例と同一のタテ、ヨコ共１００デニール、４８フィ
ラメントのポリエステルウーリー加工糸の平織物に、導
電性繊維のみのカバーファクターが、１．６×デニール
＋３６０＝１．６×１５３．３＋３６０≒６０５となる
ように格子状に挿入した織物を作成し、実施例と同様
に、ポリエステル織物の常法により染色加工を行った。
この織物のアドバンテスト法による電磁波シールド性の
測定結果は、洗濯なしの状態で、周波数３００メガヘル
ツで１１．３デシベル、１ギガヘルツで７．３デシベル
であり、有効な電磁波シールドの水準を大幅に下回って
いた。ちなみにこの織物の製織直後（染色加工前）の電
磁波シールド性は、３００メガヘルツで３４．２デシベ
ル、１ギガヘルツで３０．７デシベルと優れたシールド
性を示しており、染色加工により電磁波シールド性が低
下したことが明らかである。従って、洗濯耐久性の試験
は無意味であり、実施していない。導電性繊維を含まな
い同一のポリエステル平織物の、純曲げ試験機による曲
げ剛性は実施例と同じく、タテ０．０３０３、ヨコ０．
０１９６（グラム×平方センチメートル／センチメート
ル）であるが、導電繊維を配列した織物の曲げ剛性は、
タテ０．０６０９、ヨコ０．１２１２（グラム×平方セ
ンチメートル／センチメートル）に達し、導電性繊維を
含まない同一ポリエステル織物の２００％を越え、導電
性繊維挿入による風合いの硬化が甚だしく、衣服用織物
素材として不適当なものであった。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】任意の繊維素材、織組織、織密度、目付
けの織物中に、摂氏１３０度熱水中での収縮率が３パー
セント以下のナイロン６６銀メッキ導電性繊維を格子状
に配列せしめ、任意の繊維素材の常法により布染め（後
染め）する事を特徴とする、周波数３００メガヘルツに
於ける電界波遮蔽効果が２６デシベル以上、且つ１ギガ
ヘルツに於ける電界波遮蔽効果が３０デシベル以上であ
る電磁波シールド織物。
【請求項２】加藤テック（株）製の純曲げ試験機（Ｋ
ＥＳ−Ｆ−２）で測定したタテ方向及びヨコ方向それぞ
れの曲げ剛性（グラム×平方センチメートル／センチメ
ートル）が、導電性繊維を含まない、任意繊維素材のみ
で構成される同一織物の１５０パーセントを越えない事
を特徴とする請求項１の電磁波シールド織物。