JPH1042893A - 新規複合糖質の製造法 - Google Patents
新規複合糖質の製造法Info
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- JPH1042893A JPH1042893A JP22310696A JP22310696A JPH1042893A JP H1042893 A JPH1042893 A JP H1042893A JP 22310696 A JP22310696 A JP 22310696A JP 22310696 A JP22310696 A JP 22310696A JP H1042893 A JPH1042893 A JP H1042893A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 酵素による糖鎖の転移反応を利用して新規な
複合糖ペプチドを製造する方法を提供する。 【構成】 エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
(糖鎖供与体)の糖鎖を下記式(化1) 【化1】 (式中、R1 はH、アミノ保護基、アミノ酸、ペプチド
あるいはN末端アミノ酸のαアミノ基を保護したペプチ
ドを示す。R2 はOH、カルボキシル保護基、アミノ
酸、ペプチドあるいはC末端アミノ酸のカルボキシル基
を保護したペプチドを示す。nは1あるいは2であ
る。)で示されるN−アセチルグルコサミン(GlcN
Ac)残基の結合したD−アスパラギン(n=1)ある
いはD−グルタミン(n=2)を含む糖ペプチド(糖鎖
受容体)に転移させることにより新規複合糖ペプチドを
製造する方法。 【効果】 天然にはない新規な生理活性複合糖ペプチド
の合成に有効である。
複合糖ペプチドを製造する方法を提供する。 【構成】 エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
(糖鎖供与体)の糖鎖を下記式(化1) 【化1】 (式中、R1 はH、アミノ保護基、アミノ酸、ペプチド
あるいはN末端アミノ酸のαアミノ基を保護したペプチ
ドを示す。R2 はOH、カルボキシル保護基、アミノ
酸、ペプチドあるいはC末端アミノ酸のカルボキシル基
を保護したペプチドを示す。nは1あるいは2であ
る。)で示されるN−アセチルグルコサミン(GlcN
Ac)残基の結合したD−アスパラギン(n=1)ある
いはD−グルタミン(n=2)を含む糖ペプチド(糖鎖
受容体)に転移させることにより新規複合糖ペプチドを
製造する方法。 【効果】 天然にはない新規な生理活性複合糖ペプチド
の合成に有効である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ペプチドの合成反
応と酵素による糖鎖転移反応を組み合わせた生理活性複
合糖ペプチドの製造方法に関する。本発明は医薬分野に
応用される。
応と酵素による糖鎖転移反応を組み合わせた生理活性複
合糖ペプチドの製造方法に関する。本発明は医薬分野に
応用される。
【0002】
【従来の技術】糖質および複合糖質は生物の細胞、体液
等に存在し、細胞の基質認識や細胞−細胞間の認識等に
深く関わっている。また糖質は生体内物質の吸収、分解
等の代謝の速度に関係している。タンパク質には糖鎖を
持つものが知られ、例えばエリスロポエチンやティシュ
ープラスミノーゲンアクチベーターがあり、医薬として
利用されている。またペプチドホルモンの中にも糖鎖を
持つものが知られ、例えばヒト絨毛性性腺刺激ホルモン
(hCG)等がある。これら糖タンパク質あるいは糖ペ
プチドでは糖鎖がN結合型糖鎖として、ペプチド鎖のL
−アスパラギン(L−Asn)にN−アセチルグルコサ
ミン(GlcNAc)を介して結合している。
等に存在し、細胞の基質認識や細胞−細胞間の認識等に
深く関わっている。また糖質は生体内物質の吸収、分解
等の代謝の速度に関係している。タンパク質には糖鎖を
持つものが知られ、例えばエリスロポエチンやティシュ
ープラスミノーゲンアクチベーターがあり、医薬として
利用されている。またペプチドホルモンの中にも糖鎖を
持つものが知られ、例えばヒト絨毛性性腺刺激ホルモン
(hCG)等がある。これら糖タンパク質あるいは糖ペ
プチドでは糖鎖がN結合型糖鎖として、ペプチド鎖のL
−アスパラギン(L−Asn)にN−アセチルグルコサ
ミン(GlcNAc)を介して結合している。
【0003】タンパク質あるいは生理活性ペプチド等に
糖鎖を付けたり、あるいは今ある糖鎖を別の糖鎖に換え
ることにより、生理機能の強化や生理活性の改変に役立
つことが期待される。糖鎖を酵素的に改変する方法とし
ては、エンドグリコシダーゼによる方法が考えられる。
糖鎖を付けたり、あるいは今ある糖鎖を別の糖鎖に換え
ることにより、生理機能の強化や生理活性の改変に役立
つことが期待される。糖鎖を酵素的に改変する方法とし
ては、エンドグリコシダーゼによる方法が考えられる。
【0004】エンドグリコシダーゼを用いた糖転移反応
としては、R.B.トリムブル(R.B. Trimble)ら[ジ
ャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(J. B
iol. Chem.)、第261巻、第12000〜12005
頁(1986)]のフラボバクテリウム メニンゴセプ
チカム(Flavobacterium meningosepticum)由来のエン
ド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンド−
F)に関するもの、R.M.バーデールス(R. M. Bard
ales)ら[ジャーナル オブ バイオロジカルケミスト
リー(J. Biol. Chem.)、第264巻、第19893〜
19897頁(1989)]のディプロコッカス ニュ
ーモニエ(Diprococcus pneumoniae)由来のエンド−α
−N−アセチルガラクトサミニダーゼに関するものがあ
り、前者はグリセロールが受容体に、また後者はグリセ
ロール、p−ニトロフェノール、セリン、スレオニン等
が受容体になるという報告である。その後、竹川ら[特
開平5−64594号(1993)]およびK.タケガ
ワ(K. Takegawa)ら[ジャーナル オブ バイオロジ
カル ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第270巻、
第3094〜3099頁(1995)]がアルスロバク
ター プロトホルミエ(Arthrobacter protophormiae)
由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ
(エンド−A)による糖質への糖鎖転移反応を、また、
K.ヤマモト(K. Yamamoto)ら[バイオケミカル バ
イオフィジカル リサーチ コミュニケーション(Bioc
hem. Biophys. Res. Commun.)、第203巻、第244
〜252頁(1994)]はムコール ヒエマリス(Mu
cor hiemalis)由来のエンド−Mによる糖質への糖鎖転
移反応を報告した。
としては、R.B.トリムブル(R.B. Trimble)ら[ジ
ャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(J. B
iol. Chem.)、第261巻、第12000〜12005
頁(1986)]のフラボバクテリウム メニンゴセプ
チカム(Flavobacterium meningosepticum)由来のエン
ド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンド−
F)に関するもの、R.M.バーデールス(R. M. Bard
ales)ら[ジャーナル オブ バイオロジカルケミスト
リー(J. Biol. Chem.)、第264巻、第19893〜
19897頁(1989)]のディプロコッカス ニュ
ーモニエ(Diprococcus pneumoniae)由来のエンド−α
−N−アセチルガラクトサミニダーゼに関するものがあ
り、前者はグリセロールが受容体に、また後者はグリセ
ロール、p−ニトロフェノール、セリン、スレオニン等
が受容体になるという報告である。その後、竹川ら[特
開平5−64594号(1993)]およびK.タケガ
ワ(K. Takegawa)ら[ジャーナル オブ バイオロジ
カル ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第270巻、
第3094〜3099頁(1995)]がアルスロバク
ター プロトホルミエ(Arthrobacter protophormiae)
由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ
(エンド−A)による糖質への糖鎖転移反応を、また、
K.ヤマモト(K. Yamamoto)ら[バイオケミカル バ
イオフィジカル リサーチ コミュニケーション(Bioc
hem. Biophys. Res. Commun.)、第203巻、第244
〜252頁(1994)]はムコール ヒエマリス(Mu
cor hiemalis)由来のエンド−Mによる糖質への糖鎖転
移反応を報告した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】複合糖質は糖鎖部分と
糖鎖が付加する側のタンパク質、ペプチドあるいはセラ
ミド部分等から構成されている。糖質に糖鎖を新たに付
与したりあるいは他の糖鎖と入れ換えたりする、いわゆ
る糖鎖の改変(リモデリング)により複合糖質の生体内
での安定性や生物活性が天然の複合糖質に比べて増強さ
れたり、あるいは天然にない生物機能が付加されれば医
薬品に応用した場合に有用である。また、複合糖質にお
ける糖鎖のもつ生理的機能は今まで糖鎖改変の有効な手
段がなかったために、十分には解明されていないが、そ
の役割の解析のための重要な手段を提供する。
糖鎖が付加する側のタンパク質、ペプチドあるいはセラ
ミド部分等から構成されている。糖質に糖鎖を新たに付
与したりあるいは他の糖鎖と入れ換えたりする、いわゆ
る糖鎖の改変(リモデリング)により複合糖質の生体内
での安定性や生物活性が天然の複合糖質に比べて増強さ
れたり、あるいは天然にない生物機能が付加されれば医
薬品に応用した場合に有用である。また、複合糖質にお
ける糖鎖のもつ生理的機能は今まで糖鎖改変の有効な手
段がなかったために、十分には解明されていないが、そ
の役割の解析のための重要な手段を提供する。
【0006】糖質あるいは複合糖質に糖鎖を新たに付加
あるいは改変する方法としては、エンド−Aやエンド−
M等のエンドグリコシダーゼによる方法があり、複合糖
鎖をブロックとして糖質や複合糖質に転移させる、より
効率的な方法を提供する。
あるいは改変する方法としては、エンド−Aやエンド−
M等のエンドグリコシダーゼによる方法があり、複合糖
鎖をブロックとして糖質や複合糖質に転移させる、より
効率的な方法を提供する。
【0007】天然の糖タンパク質あるいは糖ペプチドの
糖鎖は、通常N結合型糖鎖として、L−Asn−X−L
−Ser(L−Thr)[Xは任意のアミノ酸、L−S
er(L−Thr)はL−セリンまたはL−スレオニン
を示す]のアミノ酸配列のペプチド鎖のL−Asnのア
ミド基に結合したGlcNAcを介して結合している。
即ちこのアミノ酸配列のL−Asnに、末端にGlcN
Ac残基を有する糖鎖が付加され更に修飾を受けてN結
合型複合糖鎖が生合成される。従って、天然にはこのア
ミノ酸配列のL−Asnに結合した糖鎖以外のN結合型
糖鎖は見出されていない。
糖鎖は、通常N結合型糖鎖として、L−Asn−X−L
−Ser(L−Thr)[Xは任意のアミノ酸、L−S
er(L−Thr)はL−セリンまたはL−スレオニン
を示す]のアミノ酸配列のペプチド鎖のL−Asnのア
ミド基に結合したGlcNAcを介して結合している。
即ちこのアミノ酸配列のL−Asnに、末端にGlcN
Ac残基を有する糖鎖が付加され更に修飾を受けてN結
合型複合糖鎖が生合成される。従って、天然にはこのア
ミノ酸配列のL−Asnに結合した糖鎖以外のN結合型
糖鎖は見出されていない。
【0008】上述の酵素による糖鎖の付加あるいは改変
には糖鎖受容体であるタンパク質あるいはペプチドにG
lcNAc残基があることが必要であり、このGlcN
Ac残基に糖鎖が転移付加する。ここでGlcNAc残
基が結合しているアミノ酸残基はL−Asnである。
には糖鎖受容体であるタンパク質あるいはペプチドにG
lcNAc残基があることが必要であり、このGlcN
Ac残基に糖鎖が転移付加する。ここでGlcNAc残
基が結合しているアミノ酸残基はL−Asnである。
【0009】L−Asn残基にGlcNAcを結合した
糖ペプチド(GlcNAc−L−Asn−ペプチド)を
化学的に合成し、上述の酵素法によりL−Asnに結合
したGlcNAc残基に糖鎖を付加した新しい複合糖ペ
プチドを合成できる。また、L−Asnに類縁のアミノ
酸であるL−グルタミン(L−Gln)にGlcNAc
残基を付けた糖ペプチドを合成すれば、同様の複合糖ペ
プチドが合成できる。
糖ペプチド(GlcNAc−L−Asn−ペプチド)を
化学的に合成し、上述の酵素法によりL−Asnに結合
したGlcNAc残基に糖鎖を付加した新しい複合糖ペ
プチドを合成できる。また、L−Asnに類縁のアミノ
酸であるL−グルタミン(L−Gln)にGlcNAc
残基を付けた糖ペプチドを合成すれば、同様の複合糖ペ
プチドが合成できる。
【0010】天然の糖ペプチドは通常L−アミノ酸から
構成されているが、抗生物質等D−アミノ酸の含まれる
生理活性ペプチドも多く、また、L−アミノ酸をD−ア
ミノ酸に置換することにより生理活性の強化や安定化が
もたらされることがある。
構成されているが、抗生物質等D−アミノ酸の含まれる
生理活性ペプチドも多く、また、L−アミノ酸をD−ア
ミノ酸に置換することにより生理活性の強化や安定化が
もたらされることがある。
【0011】
【課題を解決するための手段】一方、本発明者らはGl
cNAcの結合するアミノ酸がL−AsnでなくそのD
−体のアミノ酸であるD−Asnの場合、更にD−Gl
nの場合にもこれらに結合したGlcNAc残基に酵素
により糖鎖が転移し得ることを見出し、本発明を完成し
た。
cNAcの結合するアミノ酸がL−AsnでなくそのD
−体のアミノ酸であるD−Asnの場合、更にD−Gl
nの場合にもこれらに結合したGlcNAc残基に酵素
により糖鎖が転移し得ることを見出し、本発明を完成し
た。
【0012】即ち本発明は、糖を結合したD−Asnあ
るいはD−Glnを少なくとも1個含むペプチドを化学
的に合成し、この足がかりの糖残基へ糖鎖を酵素的に転
移させて新規複合糖ペプチドを合成する方法を提供す
る。
るいはD−Glnを少なくとも1個含むペプチドを化学
的に合成し、この足がかりの糖残基へ糖鎖を酵素的に転
移させて新規複合糖ペプチドを合成する方法を提供す
る。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明を概説すれば、本発明は
1)糖鎖受容体となるGlcNAc残基の結合したD−
AsnあるいはD−Glnを含む糖ペプチドの合成と、
2)このGlcNAc残基を有する糖ペプチド(糖鎖受
容体)への酵素による糖鎖の転移反応の2つの構成から
なる。
1)糖鎖受容体となるGlcNAc残基の結合したD−
AsnあるいはD−Glnを含む糖ペプチドの合成と、
2)このGlcNAc残基を有する糖ペプチド(糖鎖受
容体)への酵素による糖鎖の転移反応の2つの構成から
なる。
【0014】本発明にいうGlcNAc残基の結合した
D−AsnあるいはD−Glnを含む糖ペプチドとは、
下記式(化1)
D−AsnあるいはD−Glnを含む糖ペプチドとは、
下記式(化1)
【0015】
【化1】 (式中、R1 はH、アミノ保護基、アミノ酸、ペプチド
あるいはN末端アミノ酸のαアミノ基を保護したペプチ
ドを示す。R2 はOH、カルボキシル保護基、アミノ
酸、ペプチドあるいはC末端アミノ酸のカルボキシル基
を保護したペプチドを示す。nは1あるいは2であ
る。)で示される化合物である。nが1のときGlcN
Acが結合したD−Asnを含む糖ペプチド、2のとき
GlcNAcが結合したD−Glnを含む糖ペプチドを
示す。
あるいはN末端アミノ酸のαアミノ基を保護したペプチ
ドを示す。R2 はOH、カルボキシル保護基、アミノ
酸、ペプチドあるいはC末端アミノ酸のカルボキシル基
を保護したペプチドを示す。nは1あるいは2であ
る。)で示される化合物である。nが1のときGlcN
Acが結合したD−Asnを含む糖ペプチド、2のとき
GlcNAcが結合したD−Glnを含む糖ペプチドを
示す。
【0016】GlcNAcの結合したD−Asnあるい
はD−Gln誘導体は、例えばN末端をFmoc(9−
フルオレニルメチルオキシカルボニル)で保護したFm
oc−D−Asn(GlcNAc)を例にとると、Gl
cNAcのアジドとD−アスパラギン酸とからT.イナ
ヅ(T.Inazu)ら[シンレット(Synlett)、第869〜
870頁(1993)]に述べた方法に準じて合成され
る。
はD−Gln誘導体は、例えばN末端をFmoc(9−
フルオレニルメチルオキシカルボニル)で保護したFm
oc−D−Asn(GlcNAc)を例にとると、Gl
cNAcのアジドとD−アスパラギン酸とからT.イナ
ヅ(T.Inazu)ら[シンレット(Synlett)、第869〜
870頁(1993)]に述べた方法に準じて合成され
る。
【0017】(化1)に示すGlcNAc残基の結合し
たD−AsnあるいはD−Glnを含む糖ペプチドの合
成は如何なる方法によってもよいが、例えばT.イナヅ
(T.Inazu)ら[ペプチド ケミストリー 1993(P
eptide Chemistry 1993 )、第101〜104頁(19
94)]の報告した方法に準じて合成される。
たD−AsnあるいはD−Glnを含む糖ペプチドの合
成は如何なる方法によってもよいが、例えばT.イナヅ
(T.Inazu)ら[ペプチド ケミストリー 1993(P
eptide Chemistry 1993 )、第101〜104頁(19
94)]の報告した方法に準じて合成される。
【0018】例えば、予め、N末端をFmocで保護し
たD−AsnあるいはD−Glnのアミド基にGlcN
Acが結合したFmoc−D−Asn(GlcNAc)
あるいはFmoc−D−Gln(GlcNAc)誘導体
を合成しておき、ペプチドの固相合成の段階でL−As
nあるいはD−Glnの代わりに用いてペプチド合成を
行うと、D−AsnあるはD−GlnにGlcNAc残
基が結合した糖ペプチド誘導体が合成される。
たD−AsnあるいはD−Glnのアミド基にGlcN
Acが結合したFmoc−D−Asn(GlcNAc)
あるいはFmoc−D−Gln(GlcNAc)誘導体
を合成しておき、ペプチドの固相合成の段階でL−As
nあるいはD−Glnの代わりに用いてペプチド合成を
行うと、D−AsnあるはD−GlnにGlcNAc残
基が結合した糖ペプチド誘導体が合成される。
【0019】このD−AsnあるいはD−Glnに結合
したGlcNAcに糖鎖を転移させて天然にはない複合
糖ペプチドを合成することが可能となる。
したGlcNAcに糖鎖を転移させて天然にはない複合
糖ペプチドを合成することが可能となる。
【0020】(化1)のR1 にある末端アミノ酸のαア
ミノ基の保護基としては、例えば、9−フルオレニルメ
チルオキシカルボニル(Fmoc)基、第3ブチルオキ
シカルボニル(Boc)基、3−ニトロ−2−ピリジン
スルフェニル(Npys)基、ベンジルオキシカルボニ
ル(Z)基あるいはダンシル(DNS)基等が用いられ
る。N末端アミノ酸の保護基は糖鎖転移反応後に常法に
より外すか、あるいは予め保護基を外した後に糖鎖転移
反応に供してもよい。
ミノ基の保護基としては、例えば、9−フルオレニルメ
チルオキシカルボニル(Fmoc)基、第3ブチルオキ
シカルボニル(Boc)基、3−ニトロ−2−ピリジン
スルフェニル(Npys)基、ベンジルオキシカルボニ
ル(Z)基あるいはダンシル(DNS)基等が用いられ
る。N末端アミノ酸の保護基は糖鎖転移反応後に常法に
より外すか、あるいは予め保護基を外した後に糖鎖転移
反応に供してもよい。
【0021】(化1)のR2 にあるカルボキシル基の保
護基としては、第3ブチル(But)基、ベンジル(B
zl)基あるいはメチル(Me)基等であるが、水への
溶解性を上げるために保護基を外し、遊離型で用いるこ
とが多い。
護基としては、第3ブチル(But)基、ベンジル(B
zl)基あるいはメチル(Me)基等であるが、水への
溶解性を上げるために保護基を外し、遊離型で用いるこ
とが多い。
【0022】本発明の第2の構成は、糖鎖受容体である
合成基質への糖鎖供与体からの糖鎖の転移反応による付
加である。
合成基質への糖鎖供与体からの糖鎖の転移反応による付
加である。
【0023】エンドグリコシダーゼの存在下、下記式
(式1):X−GlcNAc−Y + Z → X−G
lcNAc−Z + Y (式1)[式中、Xは複合
糖鎖、Yは糖質あるいは複合糖質、Zは(化1)に示し
た合成基質]で表される転移反応を行うことを特徴とす
る。
(式1):X−GlcNAc−Y + Z → X−G
lcNAc−Z + Y (式1)[式中、Xは複合
糖鎖、Yは糖質あるいは複合糖質、Zは(化1)に示し
た合成基質]で表される転移反応を行うことを特徴とす
る。
【0024】本発明に用いるエンドグリコシダーゼとし
ては、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ
(EC3.2.1.96)であり、例えば、エンド−M
やエンド−A等が用いられる。該酵素は下記式(式
2): R−GlcNAc−GlcNAc−L−Asn−(ペプチドまたはタンパク質 )(式2) (式中Rは複合糖鎖を示す)のアスパラギン(Asn)
結合型糖鎖のキトビオース部分(GlcNAc−Glc
NAc)の間を加水分解するが、この時に適当な糖鎖受
容体があると、受容体に糖鎖(R−GlcNAc)部分
が転移する。(式1)の反応はそれを利用したものであ
る。
ては、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ
(EC3.2.1.96)であり、例えば、エンド−M
やエンド−A等が用いられる。該酵素は下記式(式
2): R−GlcNAc−GlcNAc−L−Asn−(ペプチドまたはタンパク質 )(式2) (式中Rは複合糖鎖を示す)のアスパラギン(Asn)
結合型糖鎖のキトビオース部分(GlcNAc−Glc
NAc)の間を加水分解するが、この時に適当な糖鎖受
容体があると、受容体に糖鎖(R−GlcNAc)部分
が転移する。(式1)の反応はそれを利用したものであ
る。
【0025】エンドグリコシダーゼによる糖鎖転移反応
の糖鎖受容体となるのは、通常、ペプチドのL−Asn
に結合したGlcNAc残基である。
の糖鎖受容体となるのは、通常、ペプチドのL−Asn
に結合したGlcNAc残基である。
【0026】驚くべきことに、天然には存在しないD−
体のAsnやGlnに結合したGlcNAc残基を含む
ペプチドのGlcNAc残基にもL−Asnの場合と同
様に糖鎖の転移反応が起きることが分かった。
体のAsnやGlnに結合したGlcNAc残基を含む
ペプチドのGlcNAc残基にもL−Asnの場合と同
様に糖鎖の転移反応が起きることが分かった。
【0027】(化1)に示すGlcNAc残基を有する
合成基質は、かかる知見に基づき調製されたものであ
り、この合成基質への酵素による糖鎖の転移反応を行う
本発明を完成させた。
合成基質は、かかる知見に基づき調製されたものであ
り、この合成基質への酵素による糖鎖の転移反応を行う
本発明を完成させた。
【0028】酵素の糖鎖供与体の基質特異性について
は、エンド−Mは複合型、混成型あるいは高マンノース
型糖鎖のいずれにも作用するが、エンド−Aは高マンノ
ース型糖鎖のみに作用する。
は、エンド−Mは複合型、混成型あるいは高マンノース
型糖鎖のいずれにも作用するが、エンド−Aは高マンノ
ース型糖鎖のみに作用する。
【0029】これらの酵素の本来の機能は加水分解であ
り、(式1)のZの代わりに水が入り加水分解反応が転
移反応とともに副反応として進行する。糖鎖転移反応を
効率よく行わせるには加水分解反応を抑えて(式1)の
反応を優先的に行わせることが必要である。与酵素量を
減らし、基質である糖鎖供与体(X−GlcNAc−
Y)と糖鎖受容体(Z)の仕込濃度を、そのモル比を1
近くにしつつ高濃度にすることにより反応の場(酵素の
活性中心)における水の影響を排して転移反応を効率よ
く進行させることができる。
り、(式1)のZの代わりに水が入り加水分解反応が転
移反応とともに副反応として進行する。糖鎖転移反応を
効率よく行わせるには加水分解反応を抑えて(式1)の
反応を優先的に行わせることが必要である。与酵素量を
減らし、基質である糖鎖供与体(X−GlcNAc−
Y)と糖鎖受容体(Z)の仕込濃度を、そのモル比を1
近くにしつつ高濃度にすることにより反応の場(酵素の
活性中心)における水の影響を排して転移反応を効率よ
く進行させることができる。
【0030】本発明に用いる糖鎖供与体としては、複合
型、混成型、高マンノース型いずれの糖鎖も用いられ
る。シアル酸を含有する複合型糖鎖は例えばヒトトラン
スフェリンや牛フェツイン等から調製され、シアリダー
ゼ処理等によりシアル酸を外せばアシアロ複合型糖鎖が
調製される。また高マンノース型糖鎖は例えば卵白アル
ブミン等から調製される。酵素的あるいは化学的に修飾
された糖鎖、あるいは化学合成された糖鎖も用いること
ができる。
型、混成型、高マンノース型いずれの糖鎖も用いられ
る。シアル酸を含有する複合型糖鎖は例えばヒトトラン
スフェリンや牛フェツイン等から調製され、シアリダー
ゼ処理等によりシアル酸を外せばアシアロ複合型糖鎖が
調製される。また高マンノース型糖鎖は例えば卵白アル
ブミン等から調製される。酵素的あるいは化学的に修飾
された糖鎖、あるいは化学合成された糖鎖も用いること
ができる。
【0031】本発明の反応は、基質の糖鎖供与体、糖鎖
受容体および酵素のエンドグリコシダーゼを緩衝溶液中
で混合することにより行われる。通常、糖鎖供与体の濃
度を10mM以上、望ましくは15〜75mM、糖鎖受
容体の濃度を2.5mM以上、望ましくは7.5〜35
mMになるように加える。酵素量は500U/モル(供
与体)以下、望ましくは80〜400U/モル(供与
体)程度に制限し、例えば、エンド−Mの場合、2〜1
0mU/ml程度の量で用いる。緩衝液としては、pH
5〜8程度、濃度25〜200mM、望ましくは50〜
100mMの適当な緩衝液が用いられる。エンド−Mの
場合、通常pH5.5〜6.5、濃度50〜100mM
の酢酸あるいはリン酸緩衝液中で反応が行われる。基本
的な反応液組成の一例は、糖鎖供与体25mM、糖鎖受
容体10mM、エンド−M4mU/mlおよび60mM
リン酸緩衝液(pH6.25)である。
受容体および酵素のエンドグリコシダーゼを緩衝溶液中
で混合することにより行われる。通常、糖鎖供与体の濃
度を10mM以上、望ましくは15〜75mM、糖鎖受
容体の濃度を2.5mM以上、望ましくは7.5〜35
mMになるように加える。酵素量は500U/モル(供
与体)以下、望ましくは80〜400U/モル(供与
体)程度に制限し、例えば、エンド−Mの場合、2〜1
0mU/ml程度の量で用いる。緩衝液としては、pH
5〜8程度、濃度25〜200mM、望ましくは50〜
100mMの適当な緩衝液が用いられる。エンド−Mの
場合、通常pH5.5〜6.5、濃度50〜100mM
の酢酸あるいはリン酸緩衝液中で反応が行われる。基本
的な反応液組成の一例は、糖鎖供与体25mM、糖鎖受
容体10mM、エンド−M4mU/mlおよび60mM
リン酸緩衝液(pH6.25)である。
【0032】反応温度は通常、室温〜50℃程度、好ま
しくは30〜40℃で行われ、反応時間は1〜24時間
である。例えば、エンド−M酵素の場合、通常、37℃
で3〜18時間程度反応が行われる。
しくは30〜40℃で行われ、反応時間は1〜24時間
である。例えば、エンド−M酵素の場合、通常、37℃
で3〜18時間程度反応が行われる。
【0033】生成した複合糖質は公知の手段に従って反
応終了液から容易に分離精製することが出来る。例え
ば、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹
脂カラムクロマトグラフィー、レクチンカラムクロマト
グラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
等により反応終了液から反応生成物の複合糖質を分離
し、更に濃縮、脱塩、凍結乾燥等を行えばよい。
応終了液から容易に分離精製することが出来る。例え
ば、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹
脂カラムクロマトグラフィー、レクチンカラムクロマト
グラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
等により反応終了液から反応生成物の複合糖質を分離
し、更に濃縮、脱塩、凍結乾燥等を行えばよい。
【0034】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0035】
【実施例1】 ヒトトランスフェリン由来シアロ糖鎖のFmoc−D−
Asn(GlcNAc)への転移反応: 糖鎖供与体と
して、ヒトトランスフェリン(生化学工業)をプロナー
ゼ処理、セファデックスG−25ゲルろ過を繰り返して
得たL−Asn残基のみを有するシアロ糖ペプチド(T
F−SGP、分子量2338)を調製した。糖鎖受容体
のFmoc−D−Asn(GlcNAc)はN末を保護
したD−アスパラギン酸(D−Asp)とGlcNAc
のアジドをT.イナヅらのFmoc−L−Asn(Gl
cNAc)の合成法に準じて調製した。TF−SGPを
1μmol(終濃度25mM)とFmoc−D−Asn
(GlcNAc) 400nmol(同10mM)を
0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶解
し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μlを
加え、37℃で6時間反応した。反応停止後反応液を蒸
留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLCで分析
した。転移反応生成物が反応6時間で13.0%の収率
で得られた。Fmoc−L−Asn(GlcNAc)を
糖鎖受容体とした場合の反応収率は14.2%であっ
た。反応生成物をHPLC分取により単離し、質量分析
の結果、m/z[M−H]2560にシグナルが観測さ
れ、ジシアロ2本鎖複合型糖鎖がFmocーD−Asn
(GlcNAc)に転移した化合物(分子量2560)
であることが確認された。
Asn(GlcNAc)への転移反応: 糖鎖供与体と
して、ヒトトランスフェリン(生化学工業)をプロナー
ゼ処理、セファデックスG−25ゲルろ過を繰り返して
得たL−Asn残基のみを有するシアロ糖ペプチド(T
F−SGP、分子量2338)を調製した。糖鎖受容体
のFmoc−D−Asn(GlcNAc)はN末を保護
したD−アスパラギン酸(D−Asp)とGlcNAc
のアジドをT.イナヅらのFmoc−L−Asn(Gl
cNAc)の合成法に準じて調製した。TF−SGPを
1μmol(終濃度25mM)とFmoc−D−Asn
(GlcNAc) 400nmol(同10mM)を
0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶解
し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μlを
加え、37℃で6時間反応した。反応停止後反応液を蒸
留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLCで分析
した。転移反応生成物が反応6時間で13.0%の収率
で得られた。Fmoc−L−Asn(GlcNAc)を
糖鎖受容体とした場合の反応収率は14.2%であっ
た。反応生成物をHPLC分取により単離し、質量分析
の結果、m/z[M−H]2560にシグナルが観測さ
れ、ジシアロ2本鎖複合型糖鎖がFmocーD−Asn
(GlcNAc)に転移した化合物(分子量2560)
であることが確認された。
【0036】
【実施例2】 ヒトトランスフェリン由来アシアロ糖鎖のFmoc−D
−Asn(GlcNAc)への転移反応: 糖鎖供与体
として、ヒトトランスフェリン由来のシアロ糖ペプチド
(TF−SGP)をシアリダーゼ処理してシアル酸を外
したアシアロ糖ペプチド(TF−ASGP、分子量17
56) 1μmol(終濃度25mM)とFmoc−D
−Asn(GlcNAc) 400nmol(同10m
M)を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μl
に溶解し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16
μlを加え、37℃で6時間反応した。反応停止後、反
応液を蒸留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPL
Cで分析した。転移反応生成物が8.5%の収率で得ら
れた。反応生成物をHPLC分取により単離し、質量分
析の結果、m/z[M−H]1979にシグナルが観測
され、アシアロ2本鎖複合型糖鎖がFmoc−D−As
n(GlcNAc)に転移した化合物(分子量197
8)であることが確認された。
−Asn(GlcNAc)への転移反応: 糖鎖供与体
として、ヒトトランスフェリン由来のシアロ糖ペプチド
(TF−SGP)をシアリダーゼ処理してシアル酸を外
したアシアロ糖ペプチド(TF−ASGP、分子量17
56) 1μmol(終濃度25mM)とFmoc−D
−Asn(GlcNAc) 400nmol(同10m
M)を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μl
に溶解し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16
μlを加え、37℃で6時間反応した。反応停止後、反
応液を蒸留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPL
Cで分析した。転移反応生成物が8.5%の収率で得ら
れた。反応生成物をHPLC分取により単離し、質量分
析の結果、m/z[M−H]1979にシグナルが観測
され、アシアロ2本鎖複合型糖鎖がFmoc−D−As
n(GlcNAc)に転移した化合物(分子量197
8)であることが確認された。
【0037】
【実施例3】 高マンノース型糖鎖のFmoc−D−Asn(GlcN
Ac)への糖鎖転移反応: 糖鎖供与体として、卵白ア
ルブミンをプロナーゼ処理、セファデックスG−25ゲ
ルろ過、更にDowex50イオン交換クロマトにより
分離精製して得た高マンノース型糖鎖(Man)6−
(GlcNAc)2−Asn(分子量1651)を1μ
mol(終濃度25mM)、糖鎖受容体としてFmoc
−D−Asn(GlcNAc)(分子量558)を40
0nmol(同10mM)、エンド−Mを160μU
(同4mU/ml)加え、60mMリン酸緩衝液(pH
6.25)40μl中で37℃、18時間反応させた。
加熱処理により反応停止後、反応液を蒸留水で1mlに
希釈し反応生成物をHPLCで分析した。5.2%の反
応収率(対糖鎖受容体、モル比)でFmoc−D−As
n(GlcNAc)への転移反応生成物が得られた。反
応生成物をHPLC分取し、質量分析の結果、m/z
[M−H]1732にシグナルが観察され、(Man)
6−(GlcNAc)2−AsnからFmoc−D−As
n(GlcNAc)への転移反応生成物、即ち(Ma
n)6 −(GlcNAc)2 −Asn−Fmoc(分子
量1734)であることが確認された。
Ac)への糖鎖転移反応: 糖鎖供与体として、卵白ア
ルブミンをプロナーゼ処理、セファデックスG−25ゲ
ルろ過、更にDowex50イオン交換クロマトにより
分離精製して得た高マンノース型糖鎖(Man)6−
(GlcNAc)2−Asn(分子量1651)を1μ
mol(終濃度25mM)、糖鎖受容体としてFmoc
−D−Asn(GlcNAc)(分子量558)を40
0nmol(同10mM)、エンド−Mを160μU
(同4mU/ml)加え、60mMリン酸緩衝液(pH
6.25)40μl中で37℃、18時間反応させた。
加熱処理により反応停止後、反応液を蒸留水で1mlに
希釈し反応生成物をHPLCで分析した。5.2%の反
応収率(対糖鎖受容体、モル比)でFmoc−D−As
n(GlcNAc)への転移反応生成物が得られた。反
応生成物をHPLC分取し、質量分析の結果、m/z
[M−H]1732にシグナルが観察され、(Man)
6−(GlcNAc)2−AsnからFmoc−D−As
n(GlcNAc)への転移反応生成物、即ち(Ma
n)6 −(GlcNAc)2 −Asn−Fmoc(分子
量1734)であることが確認された。
【0038】
【実施例4】 ヒトトランスフェリン由来複合型糖鎖のFmoc−D−
Gln(GlcNAc)への転移反応: 糖鎖供与体と
して、ヒトトランスフェリンから調製したシアロおよび
アシアロ糖ペプチド(TF−SGPおよびTF−ASG
P)を1μmol(終濃度25mM)とFmoc−D−
Gln(GlcNAc)を200nmol(同5mM)
を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶
解し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μl
を加え、37℃で3時間反応した。反応停止後、反応液
を蒸留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLCで
分析した。転移反応生成物がTF−SGPの場合7.5
%、TF−ASGPの場合10.6%の収率で得られ
た。転移反応生成物をHPLC分取により単離し、質量
分析の結果、TF−SGPの転移反応生成物には分子量
2574に相当するイオンピーク(m/z[M−H]2
575)が、またTF−ASGPの転移反応生成物には
分子量1992に相当するイオンピーク(m/z[M−
H]1992)が観測され、各々ジシアロ2本鎖複合型
糖鎖がFmoc−D−Gln(GlcNAc)に転移し
た化合物およびアシアロ2本鎖複合型糖鎖がFmoc−
D−Gln(GlcNAc)に転移した化合物であるこ
とが確認された。
Gln(GlcNAc)への転移反応: 糖鎖供与体と
して、ヒトトランスフェリンから調製したシアロおよび
アシアロ糖ペプチド(TF−SGPおよびTF−ASG
P)を1μmol(終濃度25mM)とFmoc−D−
Gln(GlcNAc)を200nmol(同5mM)
を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶
解し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μl
を加え、37℃で3時間反応した。反応停止後、反応液
を蒸留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLCで
分析した。転移反応生成物がTF−SGPの場合7.5
%、TF−ASGPの場合10.6%の収率で得られ
た。転移反応生成物をHPLC分取により単離し、質量
分析の結果、TF−SGPの転移反応生成物には分子量
2574に相当するイオンピーク(m/z[M−H]2
575)が、またTF−ASGPの転移反応生成物には
分子量1992に相当するイオンピーク(m/z[M−
H]1992)が観測され、各々ジシアロ2本鎖複合型
糖鎖がFmoc−D−Gln(GlcNAc)に転移し
た化合物およびアシアロ2本鎖複合型糖鎖がFmoc−
D−Gln(GlcNAc)に転移した化合物であるこ
とが確認された。
【0039】
【発明の効果】本発明により、ペプチド鎖のアミノ酸配
列の中にL−アスパラギン(L−Asn)またはL−グ
ルタミン(L−Gln)があればこれをD体のアミノ酸
(D−AsnまたはD−Gln)に変えて、あるいはD
−AsnまたはD−Glnがあれば、これらアミノ酸に
GlcNAc残基を付加した糖ペプチドを合成した後に
酵素的に糖鎖を転移付加して、天然には無い全く新しい
複合糖ペプチドを合成することが可能になった。付加す
る糖鎖はシアル酸を含む複合型糖鎖あるいは高マンノー
ス型糖鎖いずれでもよく、望み通りの非天然の複合糖ペ
プチドを合成できる。本発明は、医薬への応用とともに
複合糖質の糖鎖の果たしている生理的役割を解明するた
めの研究手法を提供する。
列の中にL−アスパラギン(L−Asn)またはL−グ
ルタミン(L−Gln)があればこれをD体のアミノ酸
(D−AsnまたはD−Gln)に変えて、あるいはD
−AsnまたはD−Glnがあれば、これらアミノ酸に
GlcNAc残基を付加した糖ペプチドを合成した後に
酵素的に糖鎖を転移付加して、天然には無い全く新しい
複合糖ペプチドを合成することが可能になった。付加す
る糖鎖はシアル酸を含む複合型糖鎖あるいは高マンノー
ス型糖鎖いずれでもよく、望み通りの非天然の複合糖ペ
プチドを合成できる。本発明は、医薬への応用とともに
複合糖質の糖鎖の果たしている生理的役割を解明するた
めの研究手法を提供する。
【0040】
【化1】エンドグリコシダーゼによる糖鎖転移反応に用
いる糖鎖受容体を示す。(式中、R1 はH、アミノ保護
基、アミノ酸、ペプチドあるいはN末端アミノ酸のαア
ミノ基を保護したペプチドを示す。R2 はOH、カルボ
キシル保護基、アミノ酸、ペプチドあるいはC末端アミ
ノ酸のカルボキシル基を保護したペプチドを示す。nは
1あるいは2である。)nが1のときGlcNAcが結
合したD−Asnを含む糖ペプチド、2のときGlcN
Acの結合したD−Glnを含む糖ペプチドを示す。
いる糖鎖受容体を示す。(式中、R1 はH、アミノ保護
基、アミノ酸、ペプチドあるいはN末端アミノ酸のαア
ミノ基を保護したペプチドを示す。R2 はOH、カルボ
キシル保護基、アミノ酸、ペプチドあるいはC末端アミ
ノ酸のカルボキシル基を保護したペプチドを示す。nは
1あるいは2である。)nが1のときGlcNAcが結
合したD−Asnを含む糖ペプチド、2のときGlcN
Acの結合したD−Glnを含む糖ペプチドを示す。
【手続補正書】
【提出日】平成8年9月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】削除
Claims (3)
- 【請求項1】エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
(糖鎖供与体)の糖鎖をN−アセチルグルコサミン(G
lcNAc)残基の結合したD−アスパラギン(D−A
sn)あるいはD−グルタミン(D−Gln)を含む合
成ペプチド(糖鎖受容体)に転移させることにより新規
複合糖ペプチドを製造する方法。 - 【請求項2】エンドグリコシダーゼがエンド−β−N−
アセチルグルコサミニダーゼ(EC3.2.1.96)
である請求項1に記載の方法。 - 【請求項3】エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
(糖鎖供与体)の糖鎖をGlcNAc残基の結合したD
−AsnあるいはD−Glnを含む合成ペプチド(糖鎖
受容体)に転移させることにより製造される新規複合糖
ペプチド。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22310696A JPH1042893A (ja) | 1996-08-05 | 1996-08-05 | 新規複合糖質の製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22310696A JPH1042893A (ja) | 1996-08-05 | 1996-08-05 | 新規複合糖質の製造法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1042893A true JPH1042893A (ja) | 1998-02-17 |
Family
ID=16792927
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22310696A Pending JPH1042893A (ja) | 1996-08-05 | 1996-08-05 | 新規複合糖質の製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH1042893A (ja) |
-
1996
- 1996-08-05 JP JP22310696A patent/JPH1042893A/ja active Pending
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20060620 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |