JP3811527B2 - 新規複合糖質の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素の糖鎖転移反応を利用した新規な複合型糖鎖を持つ複合糖質およびその製造方法に関する。医薬分野に応用される。
【0002】
【従来の技術】
糖質および複合糖質は生物の細胞、体液等に存在し、細胞の基質認識や細胞−細胞間の認識等に深く関わっている。中でもシアル酸を含む複合型糖鎖を有する複合糖質は細胞の認識機能に最も深く関わり、また生体内物質の吸収、分解等の代謝の速度に関係している。タンパク質には糖鎖を持つものが知られ、例えばエリスロポエチンの場合、糖鎖末端のシアル酸をはずすと生体内での活性が速やかに消失し、シアロ複合型糖鎖が生理的に特に重要な役割を果たしている。これらの生理的機能に着目して、例えば動物細胞等を用いて遺伝子工学的に作られたエリスロポエチンやティシュープラスミノーゲンアクチベーター等の糖タンパク質が医薬として利用されている。また、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)等ペプチドホルモンの中にも糖鎖を持つものが知られている。一方、タンパク質、生理活性ペプチドあるいはセラミド等に糖鎖を付けたりあるいは今ある糖鎖を別の糖鎖に換えることにより、生理機能の強化や生理活性の改変に役立つことが期待される。
【0003】
糖鎖を酵素的に改変する方法としては、1)転移酵素あるいはエキソグリコシダーゼによる方法と、2)エンドグリコシダーゼによる方法が考えられる。
【0004】
1)の方法としては、例えばD.H.ジョジアッセ(D. H. Joziasse)ら[ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー(Eur. J. Biochem.)、 第191巻、第75〜83頁(1990)]があるが、これは糖鎖の非還元末端からの逐次反応である。また、最近、M.シャスター(M. Schuster)ら[ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエテイ(J. Amer. Chem. Soc.)、第116巻、第1135〜1136頁(1994)]は数種のグリコシルトランスフェラーゼを組み合わせた糖鎖の固相合成法を報告している。しかしこれらエキソグリコシダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼを用いた糖鎖合成反応は糖残基一つ一つについてその酵素反応を逐次的に行わねばならず、反応ステップが多く、大変煩雑である。
【0005】
一方、2)のエンドグリコシダーゼを用いた糖転移反応としては、R.B.トリムブル(R. B. Trimble)ら[ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第261巻、第12000〜12005頁(1986)]のフラボバクテリウム メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンド−F)に関するもの、R.M.バーデールス(R. M. Bardales)ら[ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第264巻、第19893〜19897頁(1989)]のディプロコッカス ニューモニエ(Diprococcus pneumoniae)由来のエンド−α−N−アセチルガラクトサミニダーゼに関するものがあり、前者はグリセロールが受容体に、また後者はグリセロール、p−ニトロフェノール、セリン、スレオニン等が受容体になるという報告である。その後、竹川ら[特開平5−64594号(1993)]がアルスロバクター プロトホルミエ(Arthrobacter protophormiae)由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンド−A)による糖質への高マンノース型糖鎖の転移反応を、また、K.ヤマモト(K. Yamamoto) ら[バイオケミカル バイオフィジカルリサーチ コミュニケーション(Biochem. Biophys. Res. Commun.)、第203巻、第244〜252頁(1994)]はムコール ヒエマリス(Mucor hiemalis)由来のエンド−Mによる糖質への糖鎖転移反応を報告した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
糖質に糖鎖を新たに付与したりあるいは他の糖鎖と入れ換えたりする、いわゆる糖鎖の改変(リモデリング)により複合糖質の生体内での安定性や生物活性が天然の複合糖質に比べて増強されたり、天然にない生物機能が付加されれば医薬品に応用した場合に有用である。また、複合糖質における糖鎖のもつ生理的機能は今まで糖鎖改変の有効な手段がなかったために、十分には解明されていないが、その役割の解析のための重要な手段を提供する。
【0007】
エンドグリコシダーゼの糖鎖転移反応による方法は、天然の糖鎖がブロックのまま糖鎖受容体へ転移付加されて複合糖質が合成される点で新しい方法を提供するものであった。
【0008】
複合型糖鎖の転移活性を有するエンドグリコシダーゼとしてムコール ヒエマリス由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンド−M)は、糖鎖受容体のAsnにβ配置で結合したN−アセチル−D−グルコサミン残基(GlcNAc)に糖鎖を転移することが知られているが、本発明者らは糖鎖受容体の糖残基がGlcNAc以外の糖残基の場合にも酵素が認識して糖鎖転移が起きることを見出し、本発明を考案した。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、β−GlcNAc以外の糖残基を有する糖鎖受容体にエンドグリコシダーゼを用いて複合型糖鎖を転移付加させることにより合成される天然にはない配列の複合型糖鎖を有する複合糖質とその製造方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明を概説すれば、本発明は天然にはない配列の複合型糖鎖を有する複合糖質の製造法に関する。エンドグリコシダーゼの存在下、下記式(式1):
X−GlcNAc−β−GlcNAc−Y + R−Z → X−GlcNAc−R−Z + β−GlcNAc−Y (式1)
(式中、Xは複合型糖鎖、GlcNAcはN−アセチル−D−グルコサミン、Yは糖質、複合糖質、ペプチドあるいはタンパク質、Rはβ−GlcNAc以外の糖残基、Zは糖質、複合糖質あるいはペプチド等)で表される転移反応を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明に用いるエンドグリコシダーゼとしては、例えばS.カドワキ(S. Kadowaki )ら[アグリカルチュラル アンド バイオロジカル ケミストリー(Agr. Biol. Chem.)、第54巻、第97〜106頁(1990)]により報告されたムコール ヒエマリス(Mucor hiemalis)により生産されるエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(EC3.2.1.96)、エンド−Mがある。
【0012】
該酵素は下記式(式2):
X−GlcNAc−β−GlcNAc−Asn−(ペプチド) (式2)
(式中Xは複合糖鎖を示す)のアスパラギン(Asn)結合型糖鎖のキトビオース(GlcNAc−β−GlcNAc)部分のグリコシド結合を加水分解する。
【0013】
(式2)のX−GlcNAc部分が水の水酸基(この時、加水分解)でなく、糖鎖受容体の水酸基に移れば糖鎖の転移反応が成立する。酵素エンド−Mは高マンノース型糖鎖よりもシアル酸のついた複合型糖鎖をより効率よく転移させることが出来る。
【0014】
エンドグリコシダーゼによる糖鎖転移反応の糖鎖受容体の糖部分は、通常、元の糖鎖配列にあったのと同一構造の糖である。例えば酵素エンド−Mによる複合型糖鎖の転移を例にとると、エンド−Mは(式2)で示される複合型糖鎖のキトビオース(GlcNAc−β−GlcNAc)部分に作用して切り取った糖鎖を受容体のβ−GlcNAc部分に転移させる。即ち、(式1)Rがβ−GlcNAcである。
X−GlcNAc−β−GlcNAc−Y + β−GlcNAc−Z →
X−GlcNAc−β−GlcNAc−Z + β−GlcNAc−Y (式3)
【0015】
本発明者らは、酵素エンドグリコシダーゼによる糖鎖転移反応の糖鎖受容体の糖残基の認識の特異性を調べたところ、β−GlcNAc以外の糖残基の場合にも複合型糖鎖の転移反応が起きることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
即ち、この方法によればβ−GlcNAcに類縁の糖残基を有する糖鎖受容体を合成して用いることにより、これに酵素的に糖鎖が転移付加して天然にはない新しい配列の糖鎖を有する複合糖質を合成することが可能となる。
【0017】
β−GlcNAcに代わる糖残基としては、例えばα−GlcNAc(GlcNAcのαアノマー)、α及びβ−D−グルコース(Glc)、D−マンノース(Man)であり、キトビオース(GlcNAc)2 や1−S−置換−D−グルコースあるいはD−キシロース(Xyl)等も用いられる。これらはいずれもβ−GlcNAcと同じ4位の水酸基がエクアトリアルな立体配置をとるヘキソピラノースあるいはペントピラノースである。
【0018】
糖鎖受容体として糖の1位のパラ−ニトロフェニル(PNP)誘導体を用いて酵素エンド−Mによる複合型糖鎖の転移反応における糖の認識の特異性を調べた結果を表1に、またその構造を図1(化1)に示す。これら複合型糖鎖の受容体となる糖残基の構造はいずれも4位水酸基の立体配置がβ−GlcNAcと同じエクアトリアルなヘキソピラノースあるいはペントピラノースであり、この構造を有する糖に複合型糖鎖が転移する。
糖鎖転移反応収率は、PNP−β−D−GlcNAcを糖鎖受容体とした時の反応収率を100として、これに対する相対値(%)で表示した。
【化1】
(式中、PNPはパラ−ニトロフェニル基を示し、化合物1〜8は表1に示した糖鎖受容体に対応する)。
【0019】
糖鎖受容体となるのはβ−GlcNAc以外の糖残基を有する糖質あるいは複合糖質であり、糖残基は4位水酸基の立体配置がエクアトリアルな構造をとるヘキソピラノースあるいはペントピラノース誘導体である。また、糖の1位水酸基はβでなくα−アノマーでもよい。例えば、D−グルコース(Glc)残基を有する糖ペプチド誘導体等が用いられる。これらは化学合成して用いられる。
【0020】
例えば、糖−Asn残基を有するペプチド(糖−Asn−ペプチド)およびその誘導体は、例えばT.イナヅ(T. Inazu)ら[シンレット、第869〜870頁(1993)]に述べた方法に準じて合成された糖−Asn誘導体を用い、同じくT.イナヅ(T. Inazu)ら[ペプチド ケミストリー 1993(Peptide Chemistry 1993)、第101〜104頁(1994)]の方法により固相合成法を用いて合成される。誘導体はN末端アミノ酸のαアミノ基が無保護あるいは9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)誘導体[GlcNAc−Asn−(ペプチド)−Fmoc]あるいは第3ブチルオキシカルボニル(BOC)誘導体[GlcNAc−Asn−(ペプチド)−BOC]等である。保護基を付けたまま(この時は転移反応後に常法により保護基を外す)、あるいは遊離型で糖鎖受容体として反応に供する。
【0021】
本発明の転移反応において、糖鎖供与体としてはシアル酸を含有するシアロ複合型糖鎖あるいはシアル酸のないアシアロ複合型糖鎖を有する複合糖質が用いられる。例えば、ヒトトランスフェリンや牛フェツイン等のシアロ複合糖質であり、そのまま用いてもよいが、プロナーゼ等のタンパク質加水分解酵素によりタンパク質部分をアスパラギン(Asn)残基のみにまで小さくした複合型糖質がより適している。
【0022】
このようにして天然の複合型糖鎖が受容体の糖残基に転移して生じた糖鎖は、天然にはなかった全く新しい配列の糖鎖となる。例えば、(化2)に示したようにGlc残基を有する糖質に2本鎖シアロ複合型糖鎖を転移させると、生じた糖鎖は新しい配列の複合型糖鎖になる。即ち、トランスフェリン由来のシアロ2本鎖複合型糖鎖は(NeuAc−Gal−GlcNAc−Man)2−Man−GlcNAc−GlcNAc−の構造であるが、転移生成した糖鎖は(NeuAc−Gal−GlcNAc−Man)2−Man−GlcNAc−Glc−と、エンドグリコシダーゼにより認識され加水分解されるGlcNAc−GlcNAc部分がGlcNAc−Glcに変わった全く新しい配列の糖鎖である。
【0023】
例えばヒトトランスフェリン由来シアロ複合型糖鎖のD−グルコース残基を有するAsn誘導体(Fmoc−Asn−Glc)への転移反応の例(化2)を示す。ここで、NeuAcはシアル酸を、GalはD−ガラクトースを、ManはD−マンノースを、またFmocはアミノ酸(Asn)のN末端の保護基9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基を示す。点線で囲った部分は、天然の元の形の糖鎖(上)及び形成されたGlcNAc−Glcを含む新しい配列の糖鎖(下)を示す。
【化2】
【0024】
用いるエンドグリコシダーゼとしては、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(EC3.2.1.96)であり、複合型糖鎖の転移活性を有するものが使われる。例えば、エンド−M等が用いられる。
【0025】
本発明の糖鎖転移反応は、基質の糖鎖供与体である複合型糖質、糖鎖受容体および酵素のエンドグリコシダーゼを緩衝溶液中で混合することにより行われる。この時、基質である糖鎖供与体と糖鎖受容体の仕込濃度を共に高濃度にすることにより反応が高収率で進行する。また酵素の添加量を制限して反応を行うことにより高い収率が得られる。
【0026】
緩衝液としては、pH5〜8程度の適当な緩衝液が用いられる。エンド−Mの場合、通常pH5.5〜6.5の酢酸あるいはリン酸緩衝液中で反応が行われる。反応温度は通常、室温〜50℃程度、好ましくは30〜40℃で行われ、反応時間は1〜24時間程度である。エンド−M酵素の場合、通常、温度37℃で3〜18時間程度反応が行われる。
【0027】
生成した新規な複合型糖質は公知の手段に従って反応終了液から容易に分離精製することが出来る。例えば、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィー、レクチンカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により反応終了液から反応生成物新規複合型糖質を分離し、更に濃縮、脱塩、凍結乾燥等を行えばよい。
【0028】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【実施例1】
複合型糖鎖のパラ−ニトロフェニル(PNP)グリコシドへの転移反応:糖鎖供与体として、ヒトトランスフェリン(生化学工業)をプロナーゼ処理とセファデックスG−25ゲルろ過を繰り返して得たAsn残基のみを有する2本鎖複合型糖鎖からなるシアロ糖ペプチド(以下TF−SGPと略する、分子量2338)を調製した。TF−SGPをノイラミニダーゼ処理してシアル酸のないアシアロ糖ペプチド(以下TF−ASGPと略する)を調製した。糖鎖受容体は各種の糖の1位のPNP誘導体(PNP−糖)(生化学工業、シグマ社)を用いた。TF−SGP 1μmolとPNP−糖 500nmolを0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶解し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μlを加え、37℃で3時間反応した。加熱処理により反応を停止後反応液を蒸留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLCで分析した。各種PNP−糖へのシアロ複合型糖鎖の転移反応収率を、PNP−β−D−GlcNAcを糖鎖受容体とした時の転移反応収率(12.2%)を100(%)として、その相対値で先の表1に示した。これら糖鎖転移反応生成物をHPLCにより単離し、質量分析の結果、PNP−糖へのシアロ複合型糖鎖の転移生成物であることを確認した。TF−ASGPを糖鎖供与体として同様に反応した時、PNP−β−GlcNAc、PNP−β−グルコースへの相対反応収率は各81%及び84%であった。
【0030】
【実施例2】
ヒトトランスフェリン由来シアロ糖鎖のFmoc−Asn−Glcへの糖鎖転移反応: 糖鎖受容体にはN末をFmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)で保護したAsnにβ−D−グルコースを結合させたFmoc−Asn−Glc(分子量517)を用いた。この合成はT・イナヅらの先の文献記載のFmoc−Asn−GlcNAcの合成法に準じて行った。TF−SGP 1μmol(2.24mg)とFmoc−Asn−Glc 500nmol(0.258mg)を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶解し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μlを加え、37℃で6時間反応した。加熱処理により反応を停止後反応液を蒸留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLCで分析した。転移反応生成物が15.8%(対仕込糖鎖受容体、モル比)の収率で得られた。反応生成物をHPLC分取により単離し、質量分析の結果、m/z[M−H]2518にシグナルが観測され、トランスフェリン由来のシアル酸が2個ついた(ジシアロ)2本鎖複合型糖鎖がFmoc−Asn−Glcに転移した化合物(分子量2519)であることが確認された。これをシアリダーゼで処理するとアシアロ体の化合物(分子量1937)が得られシアル酸の存在が確認された。
【0031】
【実施例3】
ヒトトランスフェリン由来シアロ糖鎖のGlc残基を有するペプチドへの糖鎖転移反応:糖鎖受容体にはAsnとアラニン(Ala)からなるペプチドのAsn残基にβ−D−グルコースを結合させたFmoc−Asn(Glc)−Ala(分子量588)を、T.イナヅらの文献記載の方法に準じてAlaとFmoc−Asn(Glc)とから合成した。TF−SGP 1μmol(2.24mg)とFmoc−Asn(Glc)−Ala 500nmol(0.294mg)を0.1Mリン酸緩衝液(pH6.25)24μlに溶解し、エンド−M 160μUを含む酵素溶液16μlを加え、37℃で6時間反応した。加熱処理により反応を停止後反応液を蒸留水で1mlに希釈して、反応生成物をHPLCで分析した。転移反応生成物が16.3%(対仕込糖鎖受容体、モル比)の収率で得られた。反応生成物をHPLC分取により単離し、質量分析の結果、m/z[M−H]2590にシグナルが観測され、トランスフェリン由来のシアル酸が2個ついた(ジシアロ)2本鎖複合型糖鎖がFmoc−Asn(Glc)−Alaに転移した化合物(分子量2590)であることが確認された。
【0032】
【発明の効果】
本発明により、複合型糖鎖をβ−GlcNAc以外の糖残基を有する他の糖質、複合糖質あるいはペプチド等(糖鎖受容体)に転移させて新規な配列の複合型糖鎖を有する複合糖質を容易に合成することが可能となった。例えば、糖鎖受容体としてβ−GlcNAc以外の糖残基を持つ生理活性ペプチドを合成して糖鎖を転移付加させることにより、天然には無かった新規な糖鎖配列の複合糖ペプチドを合成出来る。このような糖鎖は生体内の糖鎖分解酵素に対して安定化することが期待され、本発明は、医薬への応用に有効である。また、天然にはない複合型糖鎖の調製法としても有用である。
【0033】
Claims (2)
- ムコール ヒエマリス( Mucor hiemalis )由来のエンド - β -N- アセチルグルコサミニダーゼ (EC3.2.1.96) の存在下、α -N- アセチル -D- グルコサミン ( α -GlcNAc) 、 D- グルコース (Glc) 、 D- マンノース (Man) あるいは D- キシロピラノース (Xyl) を非還元末端に有する糖質あるいは複合糖質(糖鎖受容体)に複合型糖鎖を転移させることにより複合糖質を製造する方法。
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