JPH11113593A - 新規複合糖ペプチドとその製法及び中間体 - Google Patents

新規複合糖ペプチドとその製法及び中間体

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JPH11113593A
JPH11113593A JP9270443A JP27044397A JPH11113593A JP H11113593 A JPH11113593 A JP H11113593A JP 9270443 A JP9270443 A JP 9270443A JP 27044397 A JP27044397 A JP 27044397A JP H11113593 A JPH11113593 A JP H11113593A
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JP
Japan
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sugar chain
glcnac
group
residue
amino acid
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JP9270443A
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English (en)
Inventor
Katsuji Haneda
羽田勝二
Toshiyuki Inazu
稲津敏行
Masamori Mizuno
水野真盛
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Noguchi Institute
Original Assignee
Noguchi Institute
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】酵素による糖鎖の転移反応を利用して天然には
糖鎖の付け得ないアミノ酸残基に糖鎖の付いた複合糖ペ
プチドを製造する方法、およびこの方法により合成され
る新規複合糖ペプチド誘導体とその合成中間体を提供す
る。 【解決手段】1)エンドグリコシダーゼの存在下、複合
糖質(糖鎖供与体)の糖鎖を合成糖ペプチド中のL−セ
リン(Ser)あるいはL−トレオニン(Thr)等の
側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基の水酸基とO−グリ
コシド結合したN−アセチル−D−グルコサミン(Gl
cNAc)残基、またはL−アスパラギン酸(Asp)
のβ−カルボキシル基あるいはL−グルタミン酸(Gl
u)のγ−カルボキシル基等の酸性アミノ酸の側鎖カル
ボキシル基とエステル結合したGlcNAc残基(糖鎖
受容体)に転移させることにより新規複合糖ペプチドを
製造する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ペプチドの合成反
応と酵素による糖鎖転移反応を組み合わせた新規複合糖
ペプチドの製造方法に関する。本発明は医薬分野に応用
される。
【0002】
【従来の技術】糖質および複合糖質は生物の細胞、体液
等に存在し、細胞の基質認識や細胞−細胞間の認識等に
深く関わっている。また糖質は生体内物質の吸収、分解
等の代謝の速度に関係している。タンパク質には糖鎖を
持つものが知られ、例えばエリスロポエチンやティシュ
ープラスミノーゲンアクチベーターがあり、医薬として
利用されている。またペプチドホルモンの中にも糖鎖を
持つものが知られ、例えばヒト絨毛性性腺刺激ホルモン
(hCG)等がある。これら糖タンパク質あるいは糖ペ
プチドでは糖鎖がN結合型糖鎖として、ペプチド鎖のL
−アスパラギン(Asn)にN−アセチル−D−グルコ
サミン(GlcNAc)を介して結合している。
【0003】タンパク質あるいは生理活性ペプチド等に
糖鎖を付けたり、あるいは今ある糖鎖を別の糖鎖に換え
ることにより、生理機能の強化や生理活性の改変に役立
つことが期待される。
【0004】糖鎖を酵素的に改変する方法としては、エ
ンドグリコシダーゼによる方法が考えられる。エンドグ
リコシダーゼを用いた糖転移反応としては、R.B.ト
リムブル(R. B. Trimble)ら[ジャーナル オブ バ
イオロジカル ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第2
61巻、第12000〜12005頁(1986)]の
フラボバクテリウム メニンゴセプチカム(Flavobacte
rium meningosepticum)由来のエンド−β−N−アセチ
ルグルコサミニダーゼ(エンド−F)に関するもの、
R.M.バーデールス(R. M. Bardales)ら[ジャーナ
ル オブ バイオロジカル ケミストリー(J. Biol. C
hem.)、第264巻、第19893〜19897頁(1
989)]のディプロコッカス ニューモニエ(Diproc
occus pneumoniae)由来のエンド−α−N−アセチルガ
ラクトサミニダーゼに関するものがあり、前者はグリセ
ロールが受容体に、また後者はグリセロール、p−ニト
ロフェノール、セリン、トレオニン等が受容体になると
いう報告である。その後、K.タケガワ(K. Takegaw
a)ら[ジャーナル オブ バイオロジカル ケミスト
リー(J. Biol. Chem.)、第270巻、第3094〜3
099頁(1995)]がアルスロバクター プロトホ
ルミエ(Arthrobacter protophormiae)由来のエンド−
β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(エンド−A)に
よる糖質への糖鎖転移反応を、また、K.ヤマモト(K.
Yamamoto)ら[バイオケミカル バイオフィジカル
リサーチ コミュニケーション(Biochem. Biophys. Re
s. Commun.)、第203巻、第244〜252頁(19
94)]はムコール ヒエマリス(Mucor hiemalis)由
来のエンド−Mによる糖質への糖鎖転移反応を報告し
た。また、K.ハネダ(K. Haneda)ら[カーボハイドレ
−ト リサーチ(Carbohydr. Res.)、第292巻、第6
1〜70頁(1996)]はAsn残基にGlcNAc
を結合させた合成ペプチドに酵素エンド−Mにより天然
のN結合型糖鎖を転移付加させて複合糖ペプチドを合成
出来ることを報告した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】複合糖質は糖鎖部分と
糖鎖が付加する側のタンパク質、ペプチドあるいはセラ
ミド部分等から構成されている。糖質に糖鎖を新たに付
与したりあるいは他の糖鎖と入れ換えたりする、いわゆ
る糖鎖の改変(リモデリング)により複合糖質の生体内
での安定性や生物活性が天然の複合糖質に比べて増強さ
れたり、あるいは天然にない生物機能が付加されれば医
薬品に応用した場合に有用である。また、複合糖質にお
ける糖鎖のもつ生理的機能は今まで糖鎖改変の有効な手
段がなかったために、十分には解明されていないが、そ
の役割の解析のための重要な手段を提供する。
【0006】天然の糖タンパク質あるいは糖ペプチドの
糖鎖は、通常アスパラギン(N)結合型糖鎖として、A
sn−X−Ser(Thr)[Xは任意のアミノ酸、S
er(Thr)はL−セリンまたはL−トレオニンを示
す]のアミノ酸配列のペプチド鎖のAsnのアミド基に
結合したGlcNAcを介して結合している。即ちこの
アミノ酸配列のAsn残基に、還元末端にGlcNAc
残基を有する糖鎖が転移し更に修飾を受けてN結合型糖
鎖が生合成される。従って、天然にはこのアミノ酸配列
のAsn以外の他のアミノ酸に結合したN結合型糖鎖は
見出されていない。
【0007】天然の糖タンパク質あるいは糖ペプチドに
はN結合型糖鎖の他にムチン型糖鎖(O結合型糖鎖)が
ある。この場合、糖の結合するアミノ酸はSerあるい
はThrであり、糖としてGlcANcではなくN−ア
セチルガラクトサミン(GalNAc)あるいはキシロ
ース(Xyl)がアミノ酸の水酸基とO−グリコシド結
合し、更に順次糖が転移付加されて種々のムチン型糖鎖
が生合成される。
【0008】また最近、タウ(Tau)等の特殊なタン
パク質のSerやThrにGlcNAcがO−グリコシ
ド結合した例が報告されているが、GlcNAc単独で
糖鎖は伸びていない。
【0009】一方、Asnに結合した糖鎖(N結合型糖
鎖)を有する複合糖質は普遍的であるが、L−アスパラ
ギン酸(Asp)のβ−カルボキシル基やL−グルタミ
ン酸(Glu)のγ−カルボキシル基にエステル結合し
た糖鎖を有する複合糖質は知られていない。
【0010】糖質あるいは複合糖質に糖鎖を新たに付加
あるいは改変する方法としては、エンド−Mやエンド−
A等のエンドグリコシダーゼによる方法があり、複合糖
鎖をブロックとして糖質や複合糖質に転移させる、より
効率的な方法を提供する。
【0011】上述のエンドグリコシダーゼによる糖鎖の
転移付加反応の糖鎖受容体になるのはタンパク質あるい
はペプチド中のAsn残基にアミド結合したGlcNA
c残基であり、Asn残基にGlcNAcの結合した糖
ペプチド[Asn(GlcNAc)−ペプチド]を化学
的に合成し、上述の酵素法により天然糖タンパク質由来
のN結合型糖鎖を合成糖ペプチドのGlcNAc残基に
転移付加させて新しい複合糖ペプチドを合成できる。ま
た、Asnに類縁のアミノ酸であるL−グルタミン(G
ln)にアミド結合したGlcNAc残基を付けた糖ペ
プチドを合成すれば、同様の複合糖ペプチドが合成でき
る[羽田ら、特開平9−31095号(1997)]。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らはSerある
いはThr等の側鎖に水酸基を有するアミノ酸の水酸基
にO−グリコシド結合したGlcNAc残基にもエンド
グリコシダーゼの作用によりN結合型糖鎖が転移し得る
ことを見出した。更に驚くべきことに、Aspあるいは
Glu等の酸性アミノ酸のβ−あるいはγ−カルボキシ
ル基とエステル結合したGlcNAc残基にもエンドグ
リコシダーゼによりN結合型糖鎖が転移し得ることを見
出し、本発明を完成した。
【0013】即ち本発明は、ペプチド中のSerあるい
はThr残基の水酸基にムチン型糖鎖でなくN結合型糖
鎖を付加することを可能にし、また本来糖鎖のないAs
pのβ−あるいはGluのγ−カルボキシル基にN結合
型糖鎖を付加することを可能にする。本発明により、ペ
プチドホルモン等の生理活性ペプチドのAsnやGln
残基のみならずSer、Thr、AspあるいはGlu
残基等に糖鎖を付けることが出来、ほとんど全ての生理
活性ペプチドに糖鎖を付けることを可能にする。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明を概説すれば、本発明は
1)糖鎖受容体となるGlcNAc残基がO−グリコシ
ド結合したSerあるいはThr等の側鎖に水酸基を有
するアミノ酸残基またはGlcNAc残基がエステル結
合したAspあるいはGlu等の酸性アミノ酸残基を含
む糖ペプチドの合成と、2)このGlcNAc残基を有
する糖ペプチド(糖鎖受容体)への酵素エンドグリコシ
ダーゼによる糖鎖の転移反応の2つの構成からなる。
【0015】本発明の第1の構成であるGlcNAc残
基がO−グリコシド結合したSerあるいはThr等の
側鎖に水酸基を有するアミノ酸残基を含む糖ペプチド、
またはGlcNAc残基がエステル結合したAspある
いはGlu等の酸性アミノ酸残基を含む糖ペプチドと
は、下記式(化1)
【0016】
【化1】 [式中、YはCH2、CH(CH3)、CH2−CO、あ
るいはCH2−CH2−CO等を示す。各Ser、Th
r、AspあるいはGlu等に対応する。R1はH、ア
ミノ保護基、アミノ酸、ペプチドあるいはN末端のα−
アミノ基を保護したペプチドを示す。R2はOH、カル
ボキシル保護基、アミノ酸、ペプチドあるいはC末端ア
ミノ酸のカルボキシル基を保護したペプチドを示す。]
で示される化合物である。
【0017】第2の構成では式(化1)に示すGlcN
Ac残基を有する糖ペプチドを糖鎖受容体としてエンド
グリコシダーゼによる糖鎖転移反応により式(化2)に
示す目的の糖鎖を有するペプチドが合成される。
【0018】
【化2】 [式中、Rは複合型、高マンノース型あるいは混成型の
N結合型糖鎖を示す。Y、R1およびR2は式(化1)と
同じ内容を示す。]
【0019】式(化1)に示すGlcNAc残基のO−
グリコシド結合したSerあるいはThr等の誘導体を
含む糖ペプチド誘導体の合成、およびGlcNAc残基
のエステル結合したAspあるいはGlu等の誘導体を
含む糖ペプチドの合成は如何なる方法によってもよい。
【0020】GlcNAcのO−グリコシド結合したS
erあるいはThr誘導体は、例えばGlcNAcの
3、4、6位水酸基をベンジル(Bn)基で保護した
後、1位水酸基のジメチルホスフィノチオエート体と
し、α−アミノ基をベンジルオキシカルボニル(Z)
基、カルボキシル基をBn基で保護したセリンと反応さ
せて、O−グリコシドを合成し、パラジウムカーボンを
触媒とする接触還元によりZ基およびBn基の脱保護を
行いセリンにGlcNAcがO−グリコシド結合したH
−Ser(GlcNAc)−OHを調製した。次いでセ
リンのα-アミノ基を常法により9−フルオレニルメチ
ルオキシカルボニル(Fmoc)化してFmoc−Se
r(GlcNAc)−OHを得た。同様の手法によりF
moc−Thr(GlcNAc)−OHを調製した。こ
れらをペプチドの固相合成の段階でSerあるいはTh
rの代わりに用いてペプチド合成を行うと、Serある
いはThrにGlcNAc残基がO−グリコシド結合し
た糖ペプチド誘導体が合成される。
【0021】一方、GlcNAcのエステル結合したA
spあるいはGlu誘導体は、例えばα−アミノ基をブ
チルオキシカルボニル(Boc)基で保護したアスパラ
ギン酸のβ−カルボキシル基とGlcNAcの1位水酸
基がエステル結合したBoc−Asp(O−GlcNA
c)−OHを以下の如く調製した。α−アミノ基をBo
c基、α−カルボキシル基をBn基で保護したアスパラ
ギン酸と3、4、6位水酸基をBn基で保護したGlc
NAcをジクロロメタン中、水溶性カルボジイミドと
0.1当量の4−ジメチルアミノピリジン存在下に縮合
させ、次いでパラジウムカーボンによる接触還元により
脱保護して目的の化合物Boc−Asp(O−GlcN
Ac)−OHを調製し、NMRにより構造を確認した。
同様の手法によりBoc−Glu(O−GlcNAc)
−OHを調製した。これらをペプチドの固相合成の段階
でAspあるいはGluの代わりに用いてペプチド合成
を行うと、AspあるいはGluにGlcNAc残基が
エステル結合した糖ペプチド誘導体が合成される。
【0022】(化1)あるいは(化2)の化合物のR1
に示す末端アミノ酸のα−アミノ基の保護基としては、
例えば、Fmoc基やBoc基の他、3−ニトロ−2−
ピリジンスルフェニル(Npys)基、Z基あるいはダ
ンシル(Dns)基等が用いられる。N末端アミノ酸の
保護基は予め常法により脱保護した後に酵素による糖鎖
転移反応に供するが、糖鎖転移反応後に外してもよい。
【0023】(化1)あるいは(化2)の化合物のR2
に示すカルボキシル基の保護基としては、第3ブチル(
tBu)基、ベンジル(Bn)基あるいはメチル(M
e)基、エチル(Et)基、フェナシル(Pac)基、
トリクロロエチル(Tce)基等であるが、水への溶解
性を上げるために保護基を外し、遊離型で酵素反応に用
いることが多い。
【0024】本発明の第2の構成は、(化1)に示す糖
鎖受容体である合成基質への糖鎖供与体からの酵素エン
ドグリコシダーゼによる糖鎖の転移反応による付加であ
る。
【0025】本発明に用いるエンドグリコシダーゼとし
ては、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ
(EC3.2.1.96)であり、例えば、エンド−M
やエンド−A等が用いられる。該酵素は下記式(式
1): R3−GlcNAc−GlcNAc−Asn−(ペプチドまたはタンパク質) (式1) (式中R3は糖鎖を示す)のAsn(N)結合型糖鎖の
N、N´−ジアセチルキトビオース部分(GlcNAc
−GlcNAc)の間を加水分解するが、この時に適当
な糖鎖受容体を存在させると、受容体に糖鎖(R3−G
lcNAc)部分が転移する。
【0026】エンド−β−N−アセチルグルコサミニダ
ーゼによる糖鎖転移反応の糖鎖受容体となるのは、通
常、ペプチドのAsnとN−グリコシド結合したGlc
NAc残基であるが、驚くべきことに、天然には存在し
ないSerあるいはThrにO−グリコシド結合したG
lcNAc残基、またはAspあるいはGluにエステ
ル結合したGlcNAc残基を含む糖ペプチドのGlc
NAc残基にもAsnに結合したGlcNAcの場合と
同様に糖鎖の転移反応が起きることが分かった。
【0027】(化1)に示すGlcNAc残基を有する
合成基質は、かかる知見に基づき調製されたものであ
り、この合成基質への酵素による糖鎖の転移反応により
式(化2)に示す天然にはない糖鎖を有するペプチドを
合成する本発明を完成させた。
【0028】酵素の糖鎖供与体の基質特異性について
は、エンド−Mは複合型、混成型あるいは高マンノース
型糖鎖のいずれにも作用するが、エンド−Aは高マンノ
ース型糖鎖のみに作用する。
【0029】これらの酵素の本来の機能である糖鎖の加
水分解反応を抑えての糖鎖転移反応を優先的に行わせる
ことが必要である。与酵素量を減らし、基質である糖鎖
供与体と糖鎖受容体の仕込濃度を、そのモル比を1以上
にしつつ高濃度にすることにより反応の場(酵素の活性
中心)における水の影響を排して転移反応を効率よく進
行させることができる。
【0030】本発明に用いる糖鎖供与体としては、複合
型、高マンノース型あるいは混成型のいずれのN結合型
糖鎖も用いられ、天然の糖タンパク質等から調製され
る。シアル酸を含有する複合型糖鎖は例えばヒトトラン
スフェリン、牛フェツインあるいは卵黄等から調製さ
れ、シアリダーゼ処理等によりシアル酸を外せばアシア
ロ複合型糖鎖が調製される。また高マンノース型糖鎖は
例えば卵白アルブミン等から調製される。これらのタン
パク質部分は通常プロテアーゼ処理によりAsnのみに
まで小さくして用いる。酵素的あるいは化学的に修飾さ
れた糖鎖、あるいは化学合成された糖鎖も用いることが
できる。
【0031】本発明の反応は、基質の糖鎖供与体、糖鎖
受容体および酵素のエンドグリコシダーゼを緩衝溶液中
で混合することにより行われる。通常、糖鎖供与体の濃
度を10mM以上、望ましくは15〜75mM、糖鎖受
容体の濃度を2.5mM以上、望ましくは7.5〜35
mMになるように加える。酵素量は500U/モル(供
与体)以下、望ましくは80〜400U/モル(供与
体)程度に制限し、例えば、エンド−Mの場合、2〜1
0mU/ml程度の量で用いる。緩衝液としては、pH
5〜8程度、濃度10〜200mM、望ましくは20〜
100mMの適当な緩衝液が用いられる。エンド−Mの
場合、通常pH5.5〜6.5、濃度20〜100mM
の酢酸あるいはリン酸緩衝液中で反応が行われる。基本
的な反応液組成の一例は、糖鎖供与体25mM、糖鎖受
容体10mM、エンド−M4mU/mlおよび60mM
リン酸緩衝液(pH6.25)である。時に混在するプ
ロテアーゼによる分解を抑えるためにEDTAが加えら
れる。
【0032】反応温度は通常、室温〜50℃程度、好ま
しくは30〜40℃で行われ、反応時間は1〜24時間
である。例えば、エンド−M酵素の場合、通常、37℃
で3〜18時間程度反応が行われる。
【0033】生成した複合糖質は公知の手段に従って反
応終了液から容易に分離精製することが出来る。例え
ば、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換樹
脂カラムクロマトグラフィー、レクチンカラムクロマト
グラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
等により反応終了液から反応生成物の複合糖質を分離
し、更に濃縮、脱塩、凍結乾燥等を行えばよい。
【0034】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0035】
【実施例1】 Dns−Ser(GlcNAc)−OHへの糖鎖転移反
応: (1)GlcNAcがO−グリコシド結合したセリンの
Dns化誘導体[Dns−Ser(GlcNAc)−O
H]の調製:GlcNAcの3、4、6位水酸基をベン
ジル(Bn)基で保護した後、1位水酸基のジメチルホ
スフィノチオエート体とし、α−アミノ基をZ、カルボ
キシル基をBn基で保護したセリンと反応させて、O−
グリコシドを合成し、パラジウムカーボンによる接触還
元により脱保護してセリンにGlcNAcがO−グリコ
シド結合したH−Ser(GlcNAc)−OHを調製
した。次いでセリンのα-アミノ基を常法によりダンシ
ル化してDns−Ser(GlcNAc)−OHを得、
NMRにより構造を確認した。
【0036】(2)糖鎖供与体の調製:ヒトトランスフ
ェリン(生化学工業)をプロナーゼ処理、セファデック
スG−25ゲルろ過を繰り返してAsn残基のみを有す
るシアロ糖ペプチド[TF−SGP,(NeuAc−G
al−GlcNAc)2−(Man)3−(GlcNA
c)2−Asn (分子量2338)]を調製した。ヒ
トトランスフェリン由来シアロ糖ペプチド(TF−SG
P)をシアリダーゼ処理してシアル酸を除いてアシアロ
糖ペプチド[TF−ASGP、(Gal−GlcNA
c)2−(Man)3−(GlcNAc)2−Asn
(分子量1756)]を調製した。卵白アルブミンをプ
ロナーゼ処理、セファデックスG−25ゲルろ過、更に
Dowex50イオン交換クロマトにより分離精製し
て、マンノース6個からなる高マンノース型糖ペプチド
[M6−GP;(Man)6−(GlcNAc)2−As
n(分子量1511)]を調製した。
【0037】(3)糖鎖転移反応:シアロ糖ペプチド
(TF−SGP)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASG
P)あるいは高マンノース型糖ペプチド(M6−GP)
500nmol(終濃度25mM)とDns−Ser
(GlcNAc)−OH 200nmol(同10m
M)を100mMリン酸緩衝液(pH6.25)12μ
lに溶解し、エンド−M 80μUを含む酵素溶液8μ
lを加え、37℃で6時間反応させた。反応停止後反応
液を蒸留水で500μlに希釈して、反応生成物をHP
LC[マイクロボンダスフェアC18カラム(φ3.9
x150mm、ウォータース)、10%〜17.5%
(40分)アセトニトリル25mM硼酸緩衝溶液0.5
ml/分]で励起320nm、吸収540nmの蛍光吸
収により分析した。シアロ糖ペプチド(TF−SG
P)、アシアロ糖ペプチド(TF−ASGP)あるいは
高マンノース型糖ペプチド(M6−GP)から糖鎖受容
体であるDns−Ser(GlcNAc)−OH誘導体
への糖鎖転移反応生成物がHPLC分析により検出さ
れ、その収率(対糖鎖受容体、モル比)は各18.7
%、17.6%および9.0%であった。各糖鎖転移反
応生成物に相当する区分をHPLC[Mightysi
l RP−18カラム(φ6x250mm、関東化
学)、0.1%TFA/10%〜25%(30分)アセ
トニトリル溶液 1.0ml/分、検出254nm]に
より分取し凍結乾燥後、MALDI−TOF質量分析に
かけた。各m/z[M−H]-2549.6、196
3.0および1718.7に主イオンピークが認めら
れ、各々、Dns−Ser(GlcNAc)−OHへシ
アロ複合型糖鎖の転移した物質(分子量 2544.
4)、アシアロ複合型糖鎖の転移した物質(分子量 1
961.6)および高マンノース型糖鎖の転移した物質
(分子量 1717.6)であることが確認された。
【0038】
【実施例2】 Dns−Thr(GlcNAc)−OHへの糖鎖転移反
応:GlcNAcがO−グリコシド結合したトレオニン
のDns化誘導体[Dns−Thr(GlcNAc)−
OH]は実施例1と同様に調製し、NMRにより構造を
確認した。Dns−Thr(GlcNAc)−OHを糖
鎖受容体とし、各種糖鎖供与体を用いて実施例1と同様
に反応させ、実施例1の如くHPLC分析した。各TF
−SGP、TF−ASGPおよびM6−GPからの糖鎖
転移生成物が検出され、その収率は各23.6%、1
4.7%および6.6%であった。各々の転移生成物を
実施例1と同様にHPLC分取し質量分析したところ、
各[M−H]-2562.8、1976.9および17
33.3に主イオンピークが認められ、各々、Dns−
Thr(GlcNAc)へシアロ複合型糖鎖の転移した
物質(分子量 2558.4)、アシアロ複合型糖鎖の
転移した物質(分子量 1975.9)および高マンノ
ース型糖鎖の転移した物質(分子量 1731.7)で
あることが確認された。
【0039】
【実施例3】 Fmoc−Ser(GlcNAc)−OHへの糖鎖転移
反応: (1)Fmoc保護基を有するセリンにGlcNAcが
O−グリコシド結合した誘導体[Fmoc−Ser(G
lcNAc)−OH]の調製:実施例1と同様に調製し
たH−Ser(GlcNAc)−OHのN末端α−アミ
ノ基をFmocのO−サクシニル体と反応させてFmo
c基で保護したFmoc−Ser(GlcNAc)−O
Hを調製した。NMRにより構造を確認した。δTMS(DM
SO-d6):1.77(s, 3H, N-Ac).
【0040】(2)糖鎖転移反応:Fmoc−Ser
(GlcANc)−OHを糖鎖受容体とし、各種糖鎖供
与体を用いて実施例1と同様に反応させた。反応生成物
をHPLC[Mightysil RP−18カラム
(φ6x250mm、関東化学)、0.1%TFA/2
0%〜44%(36分)アセトニトリル溶液 1.2m
l/分]で254nmの紫外吸収により分析した。各T
F−SGP、TF−ASGPおよびM6−GPからの糖
鎖転移生成物が検出され、その収率は各12.5%、1
3.5%および8.9%であった。各々の転移生成物を
実施例1と同様にHPLC分取し質量分析したところ、
各[M−H]- 2537.1、1950.1および1
706.4に主イオンピークが認められ、各々、Fmo
c−Ser(GlcNAc)−OHへシアロ複合型糖鎖
の転移した物質(分子量 2533.3)、アシアロ複
合型糖鎖の転移した物質(分子量 1950.8)およ
び高マンノース型糖鎖の転移した物質(分子量 170
6.6)であることが確認された。
【0041】
【実施例4】 Fmoc−Thr(GlcNAc)−OHへの糖鎖転移
反応: (1)Fmoc保護基を有するトレオニンにGlcNA
cがO−グリコシド結合した誘導体[Fmoc−Thr
(GlcNAc)−OH]の調製:実施例1と同様に調
製したH−Thr(GlcNAc)−OHのN末端α−
アミノ基をFmocのO−サクシニル体と反応させてF
moc基で保護したFmoc−Thr(GlcNAc)
−OHを調製し、NMRにより構造を確認した。δ
TMS(DMSO-d6):1.27(d, 3H, Thr-Me), 2.09(s, 3H, N-A
c).
【0042】(2)糖鎖転移反応:Fmoc−Thr
(GlcANc)−OHを糖鎖受容体とし、各種糖鎖供
与体を用いて実施例1と同様に反応させた。反応生成物
をHPLC[Mightysil RP−18カラム
(φ6x250mm、関東化学)、0.1%TFA/2
0%〜44%(36分)アセトニトリル溶液 1.2m
l/分]で254nmの紫外吸収により分析した。各T
F−SGP、TF−ASGPおよびM6−GPからの糖
鎖転移生成物が検出され、その収率は各14.8%、1
5.1%および7.8%であった。各々の転移生成物を
実施例1と同様にHPLC分取し質量分析したところ、
各[M−H]- 2545.0、1963.9および1
719.1に主イオンピークが認められ、各々、Fmo
c−Thr(GlcNAc)−OHへシアロ複合型糖鎖
の転移した物質(分子量 2547.4)、アシアロ複
合型糖鎖の転移した物質(分子量 1964.9)およ
び高マンノース型糖鎖の転移した物質(分子量 172
0.6)であることが確認された。
【0043】
【実施例5】 Boc−Asp(O−GlcNAc)−OHへの糖鎖転
移反応: (1)Boc−Asp(O−GlcNAc)−OHの調
製:α−アミノ基をBoc基で保護したアスパラギン酸
とβ−カルボキシル基とGlcNAcの1位水酸基がエ
ステル結合したBoc−Asp(O−GlcNAc)−
OHを以下の如く調製した。α−アミノ基をBoc基、
α−カルボキシル基をBn基で保護したアスパラギン酸
と3、4、6位水酸基をBn基で保護したGlcNAc
をジクロロメタン中、水溶性カルボジイミドと0.1当
量の4−ジメチルアミノピリジン存在下に縮合させ、次
いでパラジウムカーボンによる接触還元により脱保護し
て目的の化合物Boc−Asp(O−GlcNAc)−
OHを調製し、NMRにより構造を確認した。δTMS(DM
SO-d6):1.81(s, 3H, N-Ac).
【0044】(2)Boc−Asp(O−GlcNA
c)−OHへの各種糖鎖の転移反応:Boc−Asp
(O−GlcNAc)−OHを糖鎖受容体として、実施
例1と同様に反応させた。反応生成物をHPLC[In
ertsil ODS−2 カラム(φ4.6x150
mm)、0.1%TFA/6%〜16%(30分)アセ
トニトリル溶液 1.0ml/分、検出210nm]で
分析した。各々の糖鎖に対応して1つの転移生成物と推
定されるピークが認められ、シアロ複合型糖鎖、アシア
ロ複合型糖鎖および高マンノース型糖鎖からの転移反応
収率は各々8.0%、11.3%および6.0%であっ
た。各々の糖鎖に対応する転移反応生成物をHPLC分
取し凍結乾燥後質量分析にかけた。シアロ複合型糖鎖の
転移生成物はm/z[M+K]+2475.3、アシア
ロ複合型糖鎖の転移生成物は[M+Na]+1882.
1、高マンノース型糖鎖の転移生成物は[M+Na]+
1637.1に主イオンピークが認められ、各々Boc
−Asp(O−GlcNAc)−OHへのシアロ複合型
糖鎖の転移生成物(分子量 2439.2)、アシアロ
複合型糖鎖の転移生成物(分子量 1856.7)およ
び高マンノース型糖鎖の転移生成物(分子量 161
2.5)であることが確認された。
【0045】
【実施例6】 Boc−Glu(O−GlcNAc)−OHへの糖鎖転
移反応: (1)Boc−Glu(O−GlcNAc)−OHの調
製:α−アミノ基をBoc基で保護したグルタミン酸を
用い実施例5と同様の手法で目的の化合物Boc−Gl
u(O−GlcNAc)−OHを調製し、NMRにより
構造を確認した。
【0046】(2)Boc−Glu(O−GlcNA
c)−OHへの各種糖鎖の転移反応:Boc−Glu
(O−GlcNAc)−OHを糖鎖受容体として、実施
例1と同様に反応させた。反応生成物をHPLC[In
ertsil ODS−2 カラム(φ4.6x150
mm)、0.1%TFA/6%〜16%(30分)アセ
トニトリル溶液 1.0ml/分、検出210nm]で
分析した。各々の糖鎖に対応して1つの転移生成物と推
定されるピークが認められ、シアロ複合型糖鎖、アシア
ロ複合型糖鎖および高マンノース型糖鎖からの転移反応
収率は各々9.5%、9.1%および6.8%であっ
た。各々の糖鎖に対応する転移反応生成物をHPLC分
取し凍結乾燥後質量分析にかけた。シアロ複合型糖鎖の
転移生成物はm/z[M+K]+2486.5、アシア
ロ複合型糖鎖の転移生成物は[M+Na]+1895.
6、高マンノース型糖鎖の転移生成物は[M+Na]+
1650.9に主イオンピークが認められ、各々Boc
−Glu(O−GlcNAc)−OHへのシアロ複合型
糖鎖の転移生成物(分子量 2453.3)、アシアロ
複合型糖鎖の転移生成物(分子量 1870.7)およ
び高マンノース型糖鎖の転移生成物(分子量 162
6.5)であることが確認された。
【0047】
【実施例7】 Fmoc−Asp(O−GlcNAc)−OHへの糖鎖
転移反応: (1)Fmoc−Asp(O−GlcNAc)−OHの
調製:実施例5で調製したBoc−Asp(O−Glc
NAc)−OHのBoc基をトリフルオロ酢酸(TF
A)により脱保護した後、FmocのO−サクシニル体
と反応させてα−アミノ基をFmoc基で保護したFm
oc−Asp(O−GlcNAc)−OHを調製し、N
MRにより構造を確認した。δTMS(DMSO-d6):1.78(s, 3
H, N-Ac), 5.95(d, 1H, H-1, 12.85(br, 1H, COOH).
【0048】(2)Fmoc−Asp(O−GlcNA
c)−OHへの各種糖鎖の転移反応:Fmoc−Asp
(O−GlcNAc)−OHを糖鎖受容体として、実施
例1と同様に反応させた。反応生成物をHPLC[Mi
ghtysil RP−18カラム(φ6x250m
m、関東化学)、0.1%TFA/25%〜45%(4
0分)アセトニトリル溶液 1.2ml/分、検出25
4nm]で分析した。各々の糖鎖に対応して1つの転移
生成物と推定されるピークが認められ、シアロ複合型糖
鎖、アシアロ複合型糖鎖および高マンノース型糖鎖から
の転移反応収率は各々21.2%、23.5%および
8.0%であった。各々の糖鎖に対応する転移反応生成
物をHPLC分取し凍結乾燥後質量分析にかけた。シア
ロ複合型糖鎖の転移生成物はm/z[M−H]-256
2.8、アシアロ複合型糖鎖の転移生成物は[M−H]
-1979.3、高マンノース型糖鎖の転移生成物は
[M−H]-1733.2に主イオンピークが認めら
れ、各々Fmoc−Asp(O−GlcNAc)−OH
へのシアロ複合型糖鎖の転移生成物(分子量 256
1.4)、アシアロ複合型糖鎖の転移生成物(分子量
1978.8)および高マンノース型糖鎖の転移生成物
(分子量 1734.6)であることが確認された。
【0049】
【実施例8】 Fmoc−Glu(O−GlcNAc)−OHへの糖鎖
転移反応: (1)Fmoc−Glu(O−GlcNAc)−OHの
調製:実施例6で調製したBoc−Glu(O−Glc
NAc)−OHから実施例7と同様の手法でグルタミン
のγ−カルボキシル基にGlcNAcがエステル結合し
た目的の化合物Fmoc−Glu(O−GlcNAc)
−OHを調製し、NMRにより構造を確認した。δ
TMS(DMSO-d6):1.80(s, 3H, N-Ac), 5.94(d, 1H, H-1, 1
2.68(br, 1H, COOH).
【0050】(2)Fmoc−Glu(O−GlcNA
c)−OHへの各種糖鎖の転移反応:Fmoc−Glu
(O−GlcNAc)−OHを糖鎖受容体として、実施
例1と同様に反応させた。反応生成物をHPLC[Mi
ghtysil RP−18カラム(φ6x250m
m、関東化学)、0.1%TFA/25%〜45%(4
0分)アセトニトリル溶液 1.2ml/分、検出25
4nm]で分析した。各々の糖鎖に対応して1つの転移
生成物と推定されるピークが認められ、シアロ複合型糖
鎖、アシアロ複合型糖鎖および高マンノース型糖鎖から
の転移反応収率は各々24.1%、27.4%および
9.4%であった。各々の糖鎖に対応する転移反応生成
物をHPLC分取し凍結乾燥後質量分析にかけた。シア
ロ複合型糖鎖の転移生成物はm/z[M−H]-257
6.4、アシアロ複合型糖鎖の転移生成物は[M−H]
-1991.0、高マンノース型糖鎖の転移生成物は
[M−H]-1747.6に主イオンピークが認めら
れ、各々Fmoc−Glu(O−GlcNAc)−OH
へのシアロ複合型糖鎖の転移生成物(分子量 257
5.4)、アシアロ複合型糖鎖の転移生成物(分子量
1992.9)および高マンノース型糖鎖の転移生成物
(分子量 1748.6)であることが確認された。
【0051】
【発明の効果】本発明により、ペプチド鎖のアミノ酸配
列の中にAsnのみならずSer,Thr等の側鎖に水
酸基を有するアミノ酸あるいはAsp,Glu等の酸性
アミノ酸があれば、これらアミノ酸にGlcNAc残基
を付加した糖ペプチドを合成し、次いで酵素的に糖鎖を
転移付加して、天然には無い全く新しい複合糖ペプチド
を合成することが可能になった。付加する糖鎖はシアル
酸を含む複合型糖鎖あるいは高マンノース型糖鎖等いず
れでもよく、望み通りの非天然の複合糖ペプチドを合成
できる。本発明は、医薬への応用とともに複合糖質の糖
鎖の果たしている生理的役割を解明するための研究手法
を提供する。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
    (糖鎖供与体)の糖鎖をアミノ酸、あるいはペプチド中
    の側鎖と結合したN−アセチル−D−グルコサミン(G
    lcNAc)残基(糖鎖受容体)に転移させることによ
    り新規複合糖ペプチドを製造する方法。
  2. 【請求項2】エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
    (糖鎖供与体)の糖鎖をアミノ酸、あるいはペプチド中
    の側鎖水酸基とO−グリコシド結合したN−アセチル−
    D−グルコサミン(GlcNAc)残基(糖鎖受容体)
    に転移させることにより新規複合糖ペプチドを製造する
    方法。
  3. 【請求項3】アミノ酸がL−セリン(Ser)あるいは
    L−トレオニン(Thr)である請求項1に記載の方
    法。
  4. 【請求項4】エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
    (糖鎖供与体)の糖鎖をペプチド中の酸性アミノ酸のカ
    ルボキシル基とエステル結合したN−アセチル−D−グ
    ルコサミン(GlcNAc)残基(糖鎖受容体)に転移
    させることにより新規複合糖ペプチドを製造する方法。
  5. 【請求項5】アミノ酸がL−アスパラギン酸(Asp)
    あるいはL−グルタミン酸(Glu)である請求項3に
    記載の方法。
  6. 【請求項6】エンドグリコシダーゼがエンド−β−N−
    アセチルグルコサミニダーゼ(EC3.2.1.96)
    である請求項1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】エンドグリコシダーゼの存在下、複合糖質
    (糖鎖供与体)の糖鎖をペプチド中のSerあるいはT
    hr残基の水酸基とO−グリコシド結合したGlcNA
    c残基、またはAsp残基のβ−カルボキシル基あるい
    はGlu残基のγ−カルボキシル基とエステル結合した
    GlcNAc残基(糖鎖受容体)に転移させることによ
    り製造される新規複合糖ペプチド。
  8. 【請求項8】N−アセチル−D−グルコサミン(Glc
    NAc)残基を側鎖に有し、αアミノ基を9−フルオレ
    ニルオキシカルボニル基または第三ブチルオキシカルボ
    ニル基で保護した糖アミノ酸誘導体。
  9. 【請求項9】N−アセチル−D−グルコサミン(Glc
    NAc)残基が側鎖水酸基にO−グリコシド結合し、α
    アミノ基を9−フルオレニルオキシカルボニル基または
    第三ブチルオキシカルボニル基で保護したセリンまたは
    トレオニン誘導体。
  10. 【請求項10】N−アセチル−D−グルコサミン(Gl
    cNAc)残基が側鎖カルボキシル基にエステル結合
    し、αアミノ基を9−フルオレニルオキシカルボニル基
    または第三ブチルオキシカルボニル基で保護したアスパ
    ラギン酸またはグルタミン酸誘導体。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002176998A (ja) * 2000-12-15 2002-06-25 Meiji Milk Prod Co Ltd ムチン型糖ペプチドおよび糖タンパク質製造法
WO2005019465A1 (ja) * 2003-08-26 2005-03-03 Seikagaku Corporation 糖鎖切断剤
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CN114591391A (zh) * 2022-03-22 2022-06-07 湖北强耀生物科技有限公司 一种o-糖肽键多肽的合成工艺

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