JPH1036925A - 排水からのセレン回収方法 - Google Patents

排水からのセレン回収方法

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JPH1036925A
JPH1036925A JP21057296A JP21057296A JPH1036925A JP H1036925 A JPH1036925 A JP H1036925A JP 21057296 A JP21057296 A JP 21057296A JP 21057296 A JP21057296 A JP 21057296A JP H1036925 A JPH1036925 A JP H1036925A
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JP
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selenium
recovering
wastewater
biological
sludge
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JP21057296A
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Haruki Akega
春樹 明賀
Katsuo Takada
尅男 高田
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Organo Corp
Original Assignee
Organo Corp
Japan Organo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属の電解精錬工場等の副生物とは別のセレ
ン供給源からセレンを得る方法を提供することである。 【解決手段】 本セレン回収方法は、排水中に含まれる
セレン化合物を嫌気性生物学的還元処理法によりセレン
単体に還元して不溶化させる生物学的還元工程と、生成
した単体セレンを生物汚泥と共に処理水から分離する分
離工程と、分離したセレン含有生物汚泥からセレンを回
収する回収工程とを有する。本方法では、排水中に含ま
れるセレン化合物を嫌気性生物学的還元処理法よりセレ
ン含有汚泥を生成し、分離し、セレン含有汚泥から単体
セレンを回収する。本発明方法では、生物学的還元工程
を経た処理水に後処理工程を実施することにより、排水
中から回収できるセレンの量を最大限にすると共に排水
の完全浄化も合わせて行っている。後処理工程は、金属
化合物を処理水に添加して、残存するセレン化合物を不
溶化する化学的処理工程と、処理水から不溶化物を分離
する二次分離工程とを有し、二次分離工程で得た不溶化
物から上記回収工程によりセレンを回収する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セレン含有排水か
ら単体セレンを回収する方法に関し、更に詳細には、石
炭火力発電所排水、金属精練工場排水、鉱山排水、ガラ
ス製造工場排水等のセレン含有排水から単体セレンを回
収し、合わせてセレン含有排水を浄化する方法に関する
ものである。
【0002】セレンは、天然には、親銅元素の硫化物中
にセレン化物として含まれ、その存在量は極めて僅か
で、例えば0.05ppm 程度であると言われている。工
業的には、銅或いは鉛等の重金属の電解精錬工場から出
るアノードスライム及び硫酸工場から出るミストコット
レルスライム等の副生物を主要セレン供給源としてお
り、そのセレン含有率は5〜10%程度である。セレン
を生産するには、例えば、アノードスライムにソーダ灰
を加えて、500℃でばい焼し、SeとTeの可溶性塩
とする。この水溶液をpH6.2に調整すると、Te塩
が沈澱する。Te塩を除去して残った溶液を二酸化硫黄
で還元し、単体セレンを得ている。現在、日本のセレン
生産量は年間500〜600トン程度であると言われて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、セレンの需
要は、セレンを使用する製品、例えば電子、電気製品或
いはセラミックス製品等の生産量の増大と共に増大しつ
つある。一方、セレンの供給は、アノードスライム、ミ
ストコットレルスライム等の副生物の量、即ち銅、鉛等
の重金属の生産高或いは硫酸の生産高によって規定され
る。従って、現状では、需要に応じて供給量を増やすこ
とは難しい。そこで、本発明の目的は、金属の電解精錬
工場等の副生物とは別のセレン供給源からセレンを得る
方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、セレン化合
物が、石炭火力発電所、金属精錬工場、ガラス製造工
場、鉱山等から排出される排水に比較的高濃度で含まれ
るていることに着目した。例えば、或る金属精練工場で
は、セレン濃度3mg/l程度の排水が5万m3/d程
度の流量で排出されている。ここから排出されるセレン
の量は、年間約50トンとなり、国内のセレン生産高に
照らして十分に回収の価値がある。ところで、セレン
は、平成6年に一部改正された水質汚濁防止法で、毒性
が強い有害物質であると認定され、規制値0.1mgSe/l
として新たに規制項目に指定されている。セレン含有排
水からセレンを回収することは、一方では、セレン含有
排水を浄化することにもなる。そこで、本発明者は、セ
レン供給源として工場から流出するセレン含有排水に着
眼し、セレン含有排水からセレンを回収する方法を研究
することにした。
【0005】排水からセレンを回収する技術、逆に言え
ば排水からセレンを除去する技術としては、塩化第一
鉄、塩化第二鉄等の鉄塩、或いは硫酸バンド、PAC等
のアルミニウム化合物等を用い、物理化学的に凝集沈澱
・共沈除去する方法が、従来、代表的な処理技術と考え
られている。しかし、凝集沈澱・共沈法によりセレンを
排水中から除去する場合、多量の鉄塩やアルミニウム化
合物を排水に添加し、鉄の水酸化物やアルミニウム水酸
化物にセレンを吸着させた大量の凝集沈澱汚泥としてセ
レンを回収している。そのため、汚泥中のセレン含有率
が低くなり、汚泥からセレンを回収する費用が嵩む。従
って、凝集沈澱・共沈法を利用して排水からセレンを回
収する方法は、ランニングコストが高くなり、経済的に
不利であって、実用性に劣る。
【0006】また、排水中のセレン化合物を活性アルミ
ナやイオン交換樹脂に吸着させて除去する吸着法も研究
されている。しかし、吸着特性が必ずしも良くないこ
と、及び、吸着したセレンを活性アルミナやイオン交換
樹脂から分離することが難しいこと等の問題があって、
吸着法を利用して排水からセレンを回収する方法は、技
術的及び経済的に見て実用化が難しい。
【0007】そこで、本発明者は、排水中のセレン化合
物がセレン酸イオン(SeO4 2- )、亜セレン酸イオン
(SeO3 2- )等の酸化物形態で含まれるていることに
着目し、排水中のセレン化合物を生物学的に単体セレン
に還元し、回収する方法を研究した。その結果、本発明
者は、排水からセレンを生物学的に還元、回収する場
合、還元用有機物の添加量が、セレン化合物を生物学的
に単体セレンに還元するのに必要な化学量論的な量に若
干量上乗せした量程度で良いこと、従って生物学的還元
処理により得られるセレン含有汚泥はその量が比較的少
なく、全汚泥中に含まれる単体セレンの含有率が、5〜
50%程度に達することを見い出した。そこで、本発明
者は、生物学的還元法によるセレン回収方法は、生物学
的処理に使用する有機物量が比較的少ないので、汚泥か
ら単体セレンを回収し易いと判断した。
【0008】以上の知見に基づいて、本発明者は、セレ
ン化合物を含有する排水を生物学的還元法により還元処
理することにより、効率的にセレンを回収する方法を研
究し、実験を重ねて、本発明方法を完成した。上記目的
を達成するために、本発明に係るセレン回収方法は、セ
レン含有排水を嫌気性生物学的還元処理法により処理し
て排水中に含まれるセレン化合物を単体セレンに還元し
て不溶化する生物学的還元工程と、生物学的還元工程に
おいて生成した単体セレンを生物汚泥と共に処理水から
分離する分離工程と、分離したセレン含有生物汚泥から
単体セレンを回収する回収工程とを有することを特徴と
している。本発明方法では、排水中に含まれるセレン化
合物を嫌気性生物学的還元処理法により単体セレンに還
元して不溶化し、不溶化したセレンを生物学的処理の副
産物である生物汚泥と共にセレン含有生物汚泥として処
理水から分離し、このセレン含有生物汚泥から単体セレ
ンを回収する。
【0009】生物学的還元工程 更に説明すると、生物学的還元工程では、セレン含有排
水中に存在するセレン酸イオン及び亜セレン酸イオンを
嫌気性生物学的処理により単体セレンに還元して不溶化
する。析出した単体セレンは、後述の分離工程において
大部分がセレン含有生物汚泥として処理水から分離さ
れ、一部は処理水中に残留する。生物学的還元工程での
嫌気性生物学的処理は、通性嫌気性条件で行えば良く、
絶対嫌気性条件までは要求されない。すなわち、水中に
溶存酸素が実質的に存在しない状態(無酸素状態)であ
ればよく、硝酸イオン、亜硝酸イオンといった酸素を含
むイオン等は存在していてもよい。
【0010】セレン酸化物を嫌気性生物学的処理により
単体セレンに還元するには、窒素、リン等の生物学的処
理に必須の元素の他に、水素供与体を必要とする。窒
素、リン及び有機物などの水素供与体がセレン含有排水
中に不足している場合には、生物学的還元工程において
不足分の窒素、リン及び水素供与体を排水に添加してそ
の不足を解消する。また、排水中に硝酸イオンや硫酸イ
オンが存在する場合には、硝酸イオンや硫酸イオンがセ
レン酸化物と共に還元されて水素を消費するので、硝酸
イオンや硫酸イオンの還元に必要な水素供与体の量も考
慮して不足分の水素供与体を排水に添加するようにす
る。
【0011】水素供与体としては、例えば、メタノー
ル、エタノール等のアルコール類、酢酸等の有機酸類、
グルコース等の糖類等の有機物、更には別の排水源から
出るこれら有機物を含む排水を挙げることができる。ま
た、水素供与体の添加量は、水中の水素供与体の量が化
学量論的な必要量の1.3倍量以上となるような添加量
とすることが適当である。なお、窒素、リン及び水素供
与体は、生物学的還元工程の手前で排水に添加してもよ
く、また生物学的還元工程中に排水に添加してもよい。
【0012】分離工程 生物学的還元工程で生成した単体セレンを生物汚泥と共
に処理水から分離する方法は、特に限定するものではな
いが、例えば重力による自然沈澱、遠心分離、あるいは
精密濾過膜等の膜を用いる膜濾過等の方法を用いること
ができる。生物学的還元工程で添加する有機物の量が少
ないので、この工程で得たセレン含有生物汚泥中のセレ
ン含有率は、5〜50%に達し、単体セレンの製造原料
として十分に経済性がある。
【0013】回収工程 セレン含有生物汚泥からセレンを回収する方法は、特に
限定するものではないが、好適には、生物学的還元工程
で得たセレン含有汚泥は主として有機物からなる生物汚
泥を含むため、加熱して有機物を分解した後、さらに加
熱し単体セレンを蒸発、回収する。具体的には、セレン
含有生物汚泥を200℃〜450℃の範囲の温度に加熱
して有機物を分解する有機物分解工程と、次いで更に5
00℃以上の温度に加熱して単体セレンを蒸発させて回
収する単体セレン回収工程とからなる。また、別法とし
て、セレン含有生物汚泥を650℃〜750℃の範囲の
温度で酸化ばい焼して、単体セレンを2酸化セレンに転
化して揮発させ、続いて揮発した2酸化セレンを水に溶
解して亜セレン酸溶液とし、次いで二酸化硫黄で還元し
て単体セレンとして回収する方法がある。
【0014】後処理工程 本発明方法では、生物学的還元工程を経た処理水、ある
いは生物学的還元工程に続いて分離工程を経た処理水に
後処理工程を実施することにより、排水中から回収でき
るセレンの量を最大限にすると共にセレン含有排水の完
全浄化も合わせて行うことができる。後処理工程は、生
物学的還元工程あるいは該工程に加えて分離工程を経た
処理水に金属化合物を添加して、処理水中に残存するセ
レン化合物を不溶化する化学的処理工程と、化学的処理
工程を経た処理水から不溶化物を分離する二次分離工程
とを有し、二次分離工程で分離した不溶化物と上記セレ
ン含有生物汚泥とを混合した混合汚泥から上記回収工程
により単体セレンを回収する。
【0015】化学的処理工程では、金属化合物を添加し
て、処理水中に残存するセレン酸化物を不溶化し、生成
した不溶化物を例えば凝集沈澱法又は凝集浮上法により
分離する。
【0016】ところで、本発明者らの研究によれば、通
性嫌気性条件下で嫌気性生物学的処理を行う生物学的還
元工程では、セレン酸化物のうちの6価のセレン酸イオ
ンは生物学的還元反応が進行し易く、4価の亜セレン酸
イオンあるいは単体セレンに比較的容易に還元されるこ
と、従って生物学的還元工程を終了した処理水中には6
価のセレン酸イオンはほとんど残存せず、セレン酸化物
としては還元しきれなかった少量の4価の亜セレン酸イ
オンのみが残存していることが多い。
【0017】生物学的還元工程を終了した処理水に亜セ
レン酸イオンのみが残存している場合は、金属化合物と
して、水中でFe3+、Cu2+、Zn2+、Ag+、A
3+、Mg2+、Ca2+、Ba2+を生成する化合物、例え
ば塩化第二鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、塩化銀、塩化アルミ
ニウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化マ
グネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム等の金属塩
や、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカ
リを使用するとよい。上記金属イオンは、4価の亜セレ
ン酸イオンと反応して不溶性もしくは難溶性のセレン化
合物を生成したり、あるいはFe3+やAl3+の場合は生
成する水酸化物に亜セレン酸イオンが吸着されて共沈作
用により、亜セレン酸イオンの不溶化がなされるので、
これら不溶化物を例えば凝集沈澱法又は凝集浮上法によ
り分離する。また、上記金属化合物の添加量は、鉄等の
金属として残留セレン量の40重量倍以上、特に50〜
80重量倍とすることが適当である。
【0018】しかし、生物学的還元工程を終了した処理
水中に、6価のセレン酸イオンが残存することもある。
このような場合には、上記した金属化合物では6価のセ
レン酸イオンを除去することが困難であるので、化学的
処理工程で添加する金属化合物としては、6価のセレン
酸イオンを単体セレンに還元し、不溶化する能力のある
第一鉄塩を使用することが好ましい。Fe2+の還元作用
により、6価のセレン酸イオンはもちろん4価の亜セレ
ン酸イオンも単体セレンに還元されて不溶化されるの
で、生成した不溶化物を例えば凝集沈澱法又は凝集浮上
法により分離する。また、第一鉄塩を用いた場合、水酸
化第一鉄あるいは水酸化第二鉄のフロックが化学的処理
工程で形成されるので、生物学的還元工程あるいは分離
工程を経た処理水中に残存する少量の単体セレンや微生
物(生物汚泥)は、生成する水酸化鉄の凝集フロックに
吸着され、分離されるという利点もある。第一鉄塩とし
ては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄等の任意の水溶性第一鉄
塩を用いることができる。また、第一鉄塩の添加量は、
鉄として残留セレン量の40重量倍以上、特に50〜8
0重量倍とすることが適当である。
【0019】化学的処理工程では、金属化合物とともに
アルカリ剤(例えば水酸化ナトリウム)や酸剤(例えば
塩酸)等のpH調整剤を処理水に添加し、処理水のpH
を化学的処理反応に適した範囲に調整することが望まし
い。反応に適した処理水のpHは使用する金属化合物に
よって異なり、例えば、第一鉄塩を用いた場合には8.
5〜10、第二鉄塩を用いた場合には4〜6、マグネシ
ウム塩を用いた場合には10〜10.5である。また、
二次分離工程では、公知の種々の固液分離手段を用いる
ことができるが、高分子凝集剤等の凝集助剤を添加して
凝集処理を行うことが好ましい。
【0020】尚、本発明方法の生物学的還元処理に代え
て、元素周期律表第VIII族に属する金属から選ばれた少
なくとも1種類の金属、例えばパラジウムや白金を含有
する触媒の存在下で、セレン含有排水と水素ガス等の水
素供与体とを反応させることにより、セレン酸或いは亜
セレン酸を不溶性の単体セレンに還元させるようにして
も良い。また、本発明方法の化学的処理工程に代えて、
この触媒反応工程を実施しても良い。
【0021】生物学的還元工程の実施手段の構成には、
限定はなく、例えば、固定床式生物学的処理法、流動床
式生物学的処理法、浮遊式生物学的処理法、スラッジブ
ランケット式生物学的処理法等による生物学的処理装置
の1つからなるもの、あるいは同種又は異種の装置の2
つ以上を組み合わせたものなどを使用することができ
る。分離工程を実施する分離装置は、セレン含有生物汚
泥を処理水から分離できる限り限定はなく、例えば既知
の自然沈澱槽、凝集沈澱槽、遠心分離機、フィルタープ
レス、膜濾過器を使用することができる。回収工程を実
施する単体セレン回収装置としては、従来から使用して
きたセレン製造装置等を使用できる。化学的処理工程の
実施手段は、従来から既知の装置であって、例えば金属
化合物添加機構、pH調整剤添加機構、攪拌機構などを
備えた反応槽を使用し、二次分離工程の実施手段には、
上記分離工程と同様の装置を使用する。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に、実施例を挙げ、添付図面
を参照して、本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説
明する。実施例 本実施例では、本発明方法を実施するセレン回収装置の
一つの例を示して、本発明方法を説明する。図1はセレ
ン回収装置のフローシートである。本装置10は、セレ
ン化合物含有排水を生物学的に還元処理する固定床式生
物学的処理槽12と、生物学的処理槽12内において不
溶化した単体セレンと余剰の生物汚泥とを槽内の水と共
に引き抜いて沈澱させたり、あるいは生物学的処理槽1
2の目詰まりを解消するために行う該処理槽12の洗浄
の際に排出される、単体セレンと生物汚泥とを含む洗浄
排水を導入してこれらを沈澱させたりする第1沈澱槽1
4と、後処理工程の化学的処理を生物学的処理槽12を
経た処理水に施す化学的処理槽16と、化学的処理によ
り生じた不溶化物を沈澱させる第2沈澱槽18と、第1
沈澱槽14及び第2沈澱槽18から取り出した沈澱物を
脱水する遠心式の脱水装置20と、脱水した沈澱物から
単体セレンを蒸発させて回収する単体セレン回収装置2
2とから構成されている。
【0023】生物学的処理槽12には、砂利、焼成骨
材、各種形状のプラスチック等の微生物担体が充填さ
れ、微生物担体に担持された微生物により、セレン化合
物含有排水中に存在するセレン酸化物が、嫌気性生物学
的処理により不溶性の単体セレンに還元される。単体セ
レンは、前述のようにして生物汚泥(微生物)と共にセ
レン含有生物汚泥として第1分離槽14で分離される。
化学的処理槽16では、例えば塩化第一鉄、塩化第二鉄
等の金属塩と水酸化ナトリウム等のpH調整剤とを添加
し、処理水のpHを反応に適した範囲に保った状態で処
理水を10〜60分程度撹拌することにより、セレンを
不溶化すると共に金属水酸化物の微細フロックを生成さ
せる。次いで、処理水を第2沈澱槽18に導入し、必要
に応じて高分子凝集剤を添加し、該反応液中の不溶性セ
レン化合物や金属水酸化物の微細フロックを粗大化して
沈澱、分離する。第1沈澱槽14及び第2沈澱槽18で
分離したセレン含有汚泥を混合して脱水装置20で脱水
した後、単体セレン回収装置22で単体セレンとして回
収する。なお、本実施例では生物学的処理槽12を経た
処理水を直接化学的処理槽16に導入するフローについ
て説明したが、生物学的処理槽12として例えば浮遊式
生物処理槽を用いる場合は、生物学的処理槽12と化学
的処理槽16の間に第1沈澱槽14を配置し、排水を生
物学的処理槽12、第1沈澱槽14、化学的処理槽16
の順に流すようにするとよい。
【0024】本発明方法による実験例 本発明方法を評価するために、基本的に上述の装置と同
じ構成の実験装置を製作し、水道水にセレン酸ナトリウ
ム10mgSe/lを溶解して模擬排水を調製し、模擬排水に
本発明方法を適用した。そして、得た生成汚泥中のセレ
ン含有率を測定し、セレン含有率の大小により本発明方
法を評価した。先ず、生物学的処理の必須元素たる窒素
及びリンを塩化アンモニウムとして1mgN/l 、及びリン
酸2水素カリウムとして0.2mgP/l それぞれ模擬排水
に添加し、更に水素供与体(有機物)としてメタノール
を75mg/l添加した。次いで、多孔性担体1.5リット
ルを充填した容量1.8リットルの生物学的処理槽に模
擬排水を通水して生物学的還元処理を施した。このよう
な処理を40日間継続して行った後、生物学的処理槽内
から生物汚泥を引き抜いて分離した。生物学的処理槽の
水理学的滞留時間は、5時間とした。更に、生物学的還
元処理を施した後の処理水に塩化第2鉄を50mgFe/l添
加して化学的処理反応及び凝集反応を進行させ、セレン
回収の完全化を図った。
【0025】生物学的還元処理を施した後の処理水中の
セレン濃度は約1mgSe/l、化学的還元処理及び凝集処理
後の処理水中のセレン濃度は0.05mgSe/l以下であっ
た。尚、生物学的還元処理を行った後の処理水中の残留
セレン酸化物の大部分は、亜セレン酸であった。生物学
的処理槽から分離した生物汚泥中のセレン含有率は約3
7重量%であった。また、生物汚泥と凝集沈澱汚泥を混
合した後の全汚泥中のセレン含有率は約8.2重量%で
あった。
【0026】比較実験例 実施例1との比較のために、実験例1と同じ模擬排水に
500mgFe/lの濃度で塩化第1鉄を添加し、pHを約9
に調整して、凝集・共沈法による化学的処理を行った。
化学的処理を行った後の処理水中のセレン濃度及び凝集
沈澱汚泥中のセレン含有率は、それぞれ約0.05mgSe
/l(大部分はセレン酸)及び約0.8重量%であった。
第1鉄塩の添加量を500mgFe/lより大幅に低減する
と、化学的処理を行った後の処理水中のセレン濃度は上
昇した。なお、塩化第2鉄では処理水からセレンを分離
することはできなかった。
【0027】実験例で得たセレン含有汚泥のセレン含有
率は、約8.2重量%に達し、工業的にセレンを生産す
る場合の従来のセレン製造原料、即ちアノードスライム
或いはミストコットレルスライム等のセレン含有率(約
5〜10%位)に匹敵し、十分に経済性があることを示
している。また、比較実験例で得た凝集沈澱汚泥のセレ
ン含有率は約0.8%であったのに対して実験例で得た
セレン含有汚泥のセレン含有率が約8.2%になったこ
とは、本発明方法によれば、従来の化学的処理のみによ
る場合に比べて、セレン含有汚泥量が1/10に低減さ
れることを意味し、また、セレン含有率の高いセレン生
産原料を得ることができることを意味している。
【0028】
【発明の効果】セレンは、自然界に広く分布している元
素ではあるが、セレン含有率の高い特定の資源が少な
く、現状では銅精練の副生物であるスライム等を原料と
してセレンを生産しているに過ぎない。本発明方法の構
成によれば、石炭火力発電所、金属精錬工場、ガラス製
造工場、鉱山等から排出されるセレン含有排水を嫌気性
生物学的還元処理法により処理して排水中に含まれるセ
レン化合物を単体セレンに還元して不溶化させる生物学
的還元工程と、生物学的還元工程において生成した単体
セレンを生物汚泥と共に処理水から分離する分離工程と
を有することにより、セレン含有排水から高いセレン含
有率のセレン含有生物汚泥を得ることができる。セレン
含有率の高い汚泥から単体セレンを回収することによ
り、経済的に単体セレンを生産することができる。ま
た、本発明方法は、嫌気性生物学的還元工程においてた
とえ水素供与体を添加するとしても、その添加量が少な
くて済むので、ランニングコストが低く、更には処理に
複雑な装置を必要としないので、実用性に優れているま
た、セレンは排水からの除去が必要とされているので、
セレン含有排水の処理において本発明方法を組み込むこ
とにより、セレン製造の工業的原料を確保すると共にセ
レン含有排水からセレンを除去して環境問題の発生を防
止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施する装置の一例の構成を示す
フローシートである。
【符号の説明】
10 本発明方法の実施装置の一例 12 生物学的処理槽 14 第1沈澱槽 16 化学的処理槽 18 第2沈澱槽 20 遠心式脱水装置 22 単体セレン回収装置

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セレン含有排水を嫌気性生物学的還元処
    理法により処理して排水中に含まれるセレン化合物を単
    体セレンに還元して不溶化する生物学的還元工程と、 生物学的還元工程において生成した単体セレンを生物汚
    泥と共に処理水から分離する分離工程と、 分離したセレン含有生物汚泥から単体セレンを回収する
    回収工程とを有することを特徴とする排水からのセレン
    回収方法。
  2. 【請求項2】 回収工程が、セレン含有生物汚泥を20
    0℃〜450℃の範囲の温度に加熱して有機物を分解す
    る有機物分解工程と、次いで更に500℃以上の温度に
    加熱して単体セレンを蒸発させて回収する単体セレン回
    収工程とからなることを特徴とする請求項1に記載の排
    水からのセレン回収方法。
  3. 【請求項3】 回収工程では、セレン含有生物汚泥を6
    50℃〜750℃の範囲の温度で酸化ばい焼して、単体
    セレンを2酸化セレンに転化して揮発させ、続いて揮発
    した2酸化セレンを水に溶解して亜セレン酸溶液とし、
    次いで還元して単体セレンとして回収することを特徴と
    する請求項1に記載の排水からのセレン回収方法。
  4. 【請求項4】 生物学的還元工程を経た処理水に金属化
    合物を添加して、処理水中に残存するセレン化合物を不
    溶化する化学的処理工程と、 化学的処理工程を経た処理水から不溶化物を分離する二
    次分離工程とを有し、 二次分離工程で分離した不溶化物と上記のセレン含有生
    物汚泥とを混合した混合汚泥から上記回収工程により単
    体セレンを回収することを特徴とする請求項1から3の
    うちのいずれか1項に記載の排水からのセレン回収方
    法。
  5. 【請求項5】 金属化合物が、第一鉄塩、第二鉄塩、銅
    塩、銀塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、
    カルシウム塩及びバリウム塩から選ばれた1種以上の金
    属化合物であることを特徴とする請求項4に記載の排水
    からのセレン回収方法。
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