JPH10324930A - 高純度カドミウムの製造方法及び製造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の電解溶融法ではカドミウムとの完全分
離が困難であった銅、銀、タリウム、鉛などを分離でき
る新規な精製手段を開発することによって、純度９９．
９９９９％以上の高純度カドミウムを直接インゴット状
で製造できる製造方法と製造装置を提供すること。 【解決手段】 純度９９．９９％の市販金属カドミウム
を原料るつぼ５に入れ、回収鋳型中央部に設置した吸入
台９上に固定して電気炉１内に装入する。原料るつぼ５
と回収鋳型６は石英製外筒３と内筒４で二重に封体され
ており、真空排気装置２によって内筒内を真空度１×１
０^-2Ｔｏｒｒとし、炉温を３５０℃にすると原料中のカ
ドミウムは蒸発した後、内筒の内面に凝縮し、粒状にな
って回収鋳型６に落下する。これを回収して６Ｎ以上の
カドミウムを得る。カドミウムより蒸気圧の低いものは
原料るつぼ内に残留するが、蒸気圧の高いものはガス状
のまま排気され、冷却トラップ８内に吸引され、冷却フ
ランジ７により冷却されて固化する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、純度９９．９９％
程度の市販金属カドミウム等から真空蒸留精製により、
純度９９．９９９９％以上の高純度カドミウムを製造す
る方法と装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に金属カドミウムは、カドミウムを
含む硫酸浴を不溶性陽極とアルミニウム陰極で電解し
て、陰極上に純金属カドミウムを析出させて得る電解法
が知られている。この方法は、原料として亜鉛製錬煙灰
や亜鉛電解で発生する精製滓の中に含有される数％〜数
十％のカドミウムを硫酸液で溶解し、再び亜鉛板や亜鉛
末で置換析出した海綿状のものからＣｄ５０〜６０ｇ／
ｌの純電解液を作り、電流密度１．５Ａ／ｄｍ² で電解
して純カドミウムを得る方法である。これらの方法によ
って得られた粗カドミウムを原料として、帯溶融法や電
解精製法によって純度を上げ、現在では９９．９９％の
純度を有する金属カドミウムが市販されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上述の帯溶融法や、電
解精製法によって得られる金属カドミウムの純度は９
９．９〜９９．９９％程度であり不純物として含有され
る銅、銀、鉛はいずれも１０ppm 以上含まれていた。上
記の金属をさらにゾーン精製法によって精製する手段も
あるが、精製後の切断加工の必要性と汚染の危険がある
ことから、精製時の処理量の制約や精製カドミウムをイ
ンゴットにする場合には鋳造時の不純物の混入による汚
染の問題があった。

【０００４】したがって本発明の目的は、従来の電解溶
融法ではカドミウムとの完全分離が困難でった銅、銀、
タリウム、鉛等を分離できる新規な精製手段を開発する
ことによって純度９９．９９９９％以上の高純度カドミ
ウムを直接インゴット状で製造できる製造方法と製造装
置を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成すべく鋭意研究の結果、外筒と内筒からなる二重の
石英筒で封体した内部に原料カドミウムが装入される原
料るつぼとこれに連接して設けられる回収鋳型を配置し
て真空蒸留を行い、蒸発したカドミウムを石英筒面に凝
縮させ、これを回収鋳型に回収するようにすれば、従来
よりも簡易な構造でしかも精製から鋳造までを一回の連
続工程で処理できる上、汚染が少ないので、含有する不
純物が１ppm 未満の純度９９．９９９９％以上の高純度
カドミウムが得られることを見いだし本発明に到達し
た。

【０００６】すなわち本発明の第１は、カドミウム原料
を真空溶解して高純度カドミウムを製造する方法におい
て、原料るつぼに装入された原料カドミウムを温度３５
０℃以上、真空度１×１０^-2Ｔｏｒｒ以下で真空蒸留す
ることにより、蒸発させたカドミウムを原料るつぼに連
接する回収鋳型に回収してインゴットとし、不純物とし
てカルシウムの含有量が０．０５ppm 以下で、かつガス
成分以外の不純物量が１ppm 未満である純度９９．９９
９９％以上の高純度カドミウムを得ることを特徴とする
高純度カドミウムの製造方法；第２に、真空精製部と、
これを加熱する電気炉を備えた加熱部とを主要構成部と
する高純度カドミウムの製造装置であって、上記真空精
製部がそれぞれ脱着可能に連接する原料るつぼと回収鋳
型、冷却トラップおよび水冷フランジからなり、かつ上
記原料るつぼと回収鋳型が耐熱材からなる二重の筒で封
体されていることを特徴とする高純度カドミウムの製造
装置を提供するものである。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の高純度カドミウムの製造
装置は、一例として図１の概略図に示す構造とすること
ができる。すなわち電気炉１内に配置された石英製外筒
３内を真空排気装置２により真空排気を行えるよう、上
記外筒３内に原料るつぼ５、回収鋳型６、鋳型中央部に
設けた吸入台９、吸入台下の冷却トラップ８、これを冷
却する水冷フランジ７を脱着可能に連接し、さらに原料
るつぼ上面に石英製内筒４を設けて外筒３と共に二重構
造となって封体されている。

【０００８】この場合、原料カドミウムとして市販金属
カドミウム（純度９９．９９％程度）を原料るつぼ５に
適量入れ、電気炉で３５０℃以上、好ましくは３５０〜
５００℃の温度範囲にすると共に、真空度を１×１０^-2
Ｔｏｒｒ以下、好ましくは１×１０^-2〜１×１０^-3Ｔｏ
ｒｒの範囲に制御すると原料るつぼ内の原料カドミウム
が融解・蒸発し、該るつぼ５と上部の内筒４との間に落
下して、るつぼ底部に連接する回収鋳型６の中に回収さ
れる。

【０００９】原料カドミウム中に含有される不純物のう
ち、カドミウムより蒸気圧の低いアルミニウム、ケイ
素、カルシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、亜鉛、タリウ
ム、鉛、ビスマスは原料るつぼ５内に残留し、逆に蒸気
圧の高いナトリウム、硫黄、塩素、カリウムは凝縮する
ことなく気体状で真空排気装置２によってるつぼ底部に
設けられた吸入孔を通って冷却トラップ８内に吸収さ
れ、水冷フランジ７の働きにより冷却されて固化する。

【００１０】本発明においては、予め、回収用の鋳型の
形状を精製後の次工程で用いる鋳型の形状にしてあるた
め、従来法のように精製されたカドミウムを再度鋳造す
る必要はなく、このため汚染の少ない高純度カドミウム
製品を精製・鋳造の工程を区別することなく一回の処理
で製造できる。

【００１１】このようにして得られた高純度カドミウム
をグロー放電質量分析装置で分析したところ、カルシウ
ムが０．０３ppm 未満であり、ナトリウム、アルミニウ
ム、ケイ素、硫黄、塩素、カリウム、鉄、ニッケル、
銅、銀、亜鉛、タリウム、鉛、ビスマスがそれぞれ０．
０１ppm 未満で、かつガス成分以外の不純物が１ppm 未
満の値を示していた。

【００１２】したがって、本発明においては測定対象元
素をＮａ、Ａｌ、Ｓｉ、Ｓ、Ｃｌ、Ｋ、Ｃａ、Ｆｅ、Ｎ
ｉ、Ｃｕ、Ａｇ、Ｚｎ、Ｔｌ、Ｐｂ、Ｂｉとし、グロー
放電質量分析装置により定量分析を行い、得られた不純
物含有量の総和を１００％から差し引いて得られる数値
が９９．９９９９％以上の場合をもって純度９９．９９
９９％以上の高純度カドミウムと定義した。

【００１３】以下、実施例により本発明をさらに説明す
るが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではな
い。

【００１４】

【実施例１】図１の高純度カドミウム製造装置を参照し
て以下説明する。先ず、純度９９．９９％の市販金属カ
ドミウム１００ｇを原料るつぼ５に入れ、回収鋳型６中
央部に設置した吸入台９上に固定した後、図１に示すよ
うに電気炉１内に装入した。この場合、原料るつぼ５と
回収鋳型６の上面には、石英製の外筒３と内筒４とが設
けられ、真空排気装置２によって内筒４内部が真空状態
となる構造である。真空排気装置２で排気して内筒４の
真空度を１×１０^-2Ｔｏｒｒとすると共に、炉温を３５
０℃一定で５時間精製したところ、原料中のカドミウム
はいったん蒸発した後、原料るつぼ５上の内筒４の面に
接触して次第に凝縮し始め、粒状になって原料るつぼ５
の底部に設けた回収鋳型６の中に落下した。この粒状カ
ドミウム９９ｇを回収し、その品位を表１に示した。

【００１５】一方、カドミウムより蒸気圧の高いものは
ガス状のまま排気装置２で吸引され、吸入台９の上部に
設けられた吸入孔を通過して、冷却トラップ８内に吸引
され、水冷フランジ７により冷却され固化した。この固
化物を分析したところ、その主成分はナトリウム、硫
黄、塩素、カリウムなどいずれも蒸気圧の高い物質であ
ることがわかった。併せて原料るつぼ内に残っている金
属を分析したところ、その主成分はアルミニウム、ケイ
素、カルシウム、鉄、ニッケル、銅、銀、亜鉛、タリウ
ム、鉛、ビスマスなどの蒸気圧の低い物質であることが
わかった。

【００１６】

【表１】

【００１７】

【実施例２】純度９９．９９％の市販金属カドミウム１
００ｇを原料るつぼ５に入れて、真空度を１×１０^-3Ｔ
ｏｒｒ、加熱温度を４５０℃として実施例１と同様に精
製を行い、精製カドミウム９９ｇを得た。この品位を表
１に併せて示した。

【００１８】

【比較例１】比較のため、純度９９．９９％の市販金属
カドミウムの品位を表１に併せて示した。

【００１９】

【発明の効果】上述のように、本発明の方法に基づく製
造装置によれば、原料るつぼで溶解したカドミウムは蒸
発して内筒表面に凝縮し、鋳型に回収されてインゴット
を形成するので、従来必要とされていた鋳造や後処理等
の複雑な工程に代わって、本発明の簡易な構造の製造装
置を用いることにより、精製から鋳造までの一連の工程
を汚染の危険が少ない一回の工程で行なえるようにな
り、従来よりも分離精度が高くしかもコスト低減可能な
精製手段を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る高純度カドミウムの製造装置の概
要を示す概略断面図である。

【符号の説明】

１ 電気炉 ２ 真空排気装置 ３ 石英製外筒 ４ 石英製内筒 ５ 原料るつぼ ６ 回収鋳型 ７ 水冷フランジ ８ 冷却トラップ ９ 吸入台

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 カドミウム原料を真空溶解して高純度カ
   ドミウムを製造する方法において、原料るつぼに装入さ
   れた原料カドミウムを温度３５０℃以上、真空度１×１
   ０^-2Ｔｏｒｒ以下で真空蒸留することにより、蒸発させ
   たカドミウムを原料るつぼに連接する回収鋳型に回収し
   てインゴットとし、不純物としてカルシウムムの含有量
   が０．０５ppm 以下で、かつガス成分以外の不純物量が
   １ppm未満である純度９９．９９９９％以上の高純度カ
   ドミウムを得ることを特徴とする高純度カドミウムの製
   造方法。
2. 【請求項２】 真空精製部と、これを加熱する電気炉を
   備えた加熱部とを主要構成部とする高純度カドミウムの
   製造装置であって、上記真空精製部がそれぞれ脱着可能
   に連接する原料るつぼ、回収鋳型、冷却トラップおよび
   水冷フランジからなり、かつ上記原料るつぼと回収鋳型
   が耐熱材からなる二重の筒で封体されていることを特徴
   とする高純度カドミウムの製造装置。