JPH10312191A - 高減衰材料 - Google Patents

高減衰材料

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JPH10312191A
JPH10312191A JP9137665A JP13766597A JPH10312191A JP H10312191 A JPH10312191 A JP H10312191A JP 9137665 A JP9137665 A JP 9137665A JP 13766597 A JP13766597 A JP 13766597A JP H10312191 A JPH10312191 A JP H10312191A
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JP
Japan
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loss
elastic modulus
dielectric
peak
temperature
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Application number
JP9137665A
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English (en)
Inventor
Chihi Go
馳飛 呉
Kazunobu Hashimoto
和信 橋本
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Sumitomo Riko Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Riko Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】エネルギー吸収量が多くて吸音特性、制振特
性、防振特性、衝撃吸収特性等に優れるとともに、経時
変化による減衰性能の劣化を回避することのできる耐久
性に優れた高減衰材料を提供すること。 【解決手段】極性のある側鎖を有する塩素化ポリエチレ
ン(CPE)等のポリマー材料に、誘電体物質としてN
−メチルホルムアミドを100Phrで混練配合し、こ
の混練材料を非結晶組織とするために所定の型枠内で1
00〜250℃で加熱し成形する。これにより、高減衰
材料の損失係数(損失弾性係数/貯蔵弾性係数)がガラ
ス転移温度領域(約19℃)に第一ピーク値を有すると
共に、共振周波数帯域又はその倍数帯域(温度換算して
約100℃)において第二ピーク値を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高減衰材料に関
し、さらに詳しくは、音響ルームの遮音壁、建築構造体
の遮音間仕切、車両の防音壁等に適用される振動や騒音
を吸収する制振材・防音材としての高減衰材料に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】この種の高減衰材料としての高分子系材
料は、典型的な粘弾性材料であり、力学的にモデル化す
るといわゆる「フォークト模型」としてとらえることが
できる。このフォークト模型によればその質量部分が高
分子系材料の質量、ばねが弾性部分、ダッシュポットが
粘性部分としてモデル化されている。
【0003】高分子材料の材料微小部をこのモデルでと
らえれば、高分子材料はこのモデルが無数に結合して形
成されたものであり、材料微小部が何等かの原因で振動
すると、夫々の材料微小部には複素正弦歪(ε* )が発
生し、これにより複素正弦応力(σ*)が発生する。こ
れらの比をとることにより複素弾性係数(E*)が次の
式により与えられる。 複素弾性係数(E*)=複素正弦応力(σ*)/複素正弦
歪(ε*
【0004】そしてこの複素弾性係数(E* )の実数部
は、材料の弾性的な性質に係る貯蔵弾性係数(E’)と
定義され、その虚数部は、材料の粘性的な性質に係る損
失弾性係数(E”)と定義され、これらの比をとること
により損失係数(tanδ)が次の式により与えられ
る。 損失係数(tanδ)=損失弾性係数(E”)/貯蔵弾
性係数(E’) この損失係数(tanδ)は、制振・防音特性を決定す
る因子の一つであり、この値が高いほど力学的エネルギ
ーを電気あるいは熱エネルギーとして吸収・放出して、
吸音特性や制振特性等に優れていることが知られてい
る。
【0005】このような技術的背景の中で、高減衰特性
を有する高分子系材料として、例えば、ポリマーアロイ
あるいは高分子網目構造(IPN技術)の高分子化合物
からなるベースポリマーに充填剤(マイカ等)や可塑剤
を添加して加工した複合材料が知られている。ベースポ
リマーとしては、各種ゴム材料等が用いられており、そ
の減衰メカニズムは、音波や振動によって歪が与えられ
た時に発生した応力を取り除くと主鎖と側鎖との絡み合
いが一旦ほぐれたものが元へ戻る挙動を示すが、このよ
うな運動を繰り返し引き起こして分子間の摩擦を発生さ
せ、その音波や振動による機械エネルギーを熱エネルギ
ーに変換して振動を減衰させるという仕組みによるもの
である。
【0006】また高減衰特性を有する材料として他にも
高分子系圧電材料として、ポリビニリデンフロライド
(PVDF)をフィルム状に加工しその表面にアルミニ
ウムを蒸着した二層構造のものが東京工業大学の住田雅
夫氏らにより既に研究され、実現化へ向けての研究が各
社によりなされている。このフィルムによれば、音波が
このフィルムを通過すると圧電効果によって音波の振動
エネルギーの一部が電気エネルギーへ変換されるため、
フィルムに電気抵抗を接続することにより電気エネルギ
ーが熱エネルギーに変換され音波が減衰し、これにより
振動が減衰されることになる。この応用技術として本出
願人は、ポリビニリデンフロライド(PVDF)に電極
としてアルミニウム蒸着したものを導電性のクロロプレ
ン系発泡ゴム材料により挟んだ構造の防音材を特願平8
−87278号にて提案している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た高分子系複合材料によれば、損失係数(tanδ)が
低いという欠点がある。各種ゴム材料(硬質ゴム、ニト
リルゴム、ウレタンゴム、充填ゴム)はその値が0.3
〜1.0程度、高分子樹脂材料(ポリスチレン、ポリイ
ソブチレン、サルファイドゴム、ポリ塩化ビニル、加
硫、ポリメタクリル酸メチル、可塑化ポリ塩化ビニル、
ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン)はその値
が2.0以下である。
【0008】また上記した分子間の摩擦によって機械エ
ネルギーを熱エネルギーに変換して振動を減衰させるメ
カニズムは、高分子鎖の結合力や形状、主鎖の構造と側
鎖の構造、架橋密度、添加剤等により影響をうけるため
その減衰能に限界がある。さらに添加剤は減衰性能を向
上させる一方で、経時変化が起こるため針状結晶が成長
して主鎖に付けられた側鎖が集まることになる。そうす
るとエネルギー変換効率が下がり損失係数(tanδ)
が低下してしまう。
【0009】さらにまた上記した圧電材料によれば、高
い損失係数(tanδ)の条件下で電気エネルギーが熱
エネルギーに変換されるように、外部回路を用いて抵
抗、インダクタンスあるいは負性容量を制御したり、あ
るいはアクティブ制御回路を用いて印加した帰還電圧、
検出される応力・歪の位相差及び印加電圧によりその粘
弾性を制御する必要がある。したがってその圧電材料を
防音・制振材料として適用する場合、各種の電気的素子
が必要になる上、その作動制御もしなければならず、加
工性・取扱性に欠けるという問題が指摘されている。
【0010】こうした高減衰材料は、ある一定の温度域
で使用されるとは限らず、使用温度域が多数存在する場
合や使用温度域が広い場合には損失係数が広い温度域に
わたって高く保たれていることが要求される。
【0011】一方、より優れた防音・制振機能を実現す
るためには、固体伝播音にあっては振動する物からの放
射音の抑制を図ることにより高い損失係数(tanδ)
を実現し、気体伝播音にあっては低周波数領域で発生す
る音の吸収を図ることにより10-6程度の歪に対して応
答可能な薄膜材料を実現すれば、より優れた高減衰材料
が得られることが見い出されている。
【0012】さらにまた上記したポリビニリデンフロラ
イド(PVDF)は、例えばコンデンサー用の誘電体と
して一般的に用いられているがこのような誘電体の電気
特性は一般的に図10のように示される。同図(a)
は、均質誘電体の誘電特性を、(b)は、複合誘電体の
誘電特性を示した図であり、夫々横軸に周波数をとり縦
軸に蓄積される電気的エネルギーの大きさに相当する誘
電率ε’及び誘電分極によってこるエネルギーの吸収に
相当する誘電損率ε”をとっている。
【0013】まず同図(a)によれば均質誘電体の誘電
率ε’は、電気的領域において緩和型の特性を示し、光
学的領域において共鳴型の特性を示し、双極子分極、原
子分極及び電気分極が見られる。そして誘電損率ε”
は、誘電率ε’が緩和型・共鳴型の特性を示すところで
エネルギー吸収ピークを示す。また同図(b)によれば
複合誘電体の誘電率ε’は、緩和型の特性を示し図示し
たように界面分極及び配向分極が見られる。そして誘電
損率ε”は、誘電率ε’が緩和型の特性を示すところで
エネルギー吸収ピークを示す。
【0014】一般的に有機複合誘電体の電気特性として
は、高分子誘電体の中に低分子誘電体が分散した場合
においては、界面分極が低周波数領域に見られ、その誘
電率は緩和型の分散特性を示し、誘電損率は山型の吸収
特性を示す、高分子誘電体の中に自由イオンが含まれ
る場合においては、局在する安定位置の間のみをイオン
が遷移する場合、低周波数領域においてその誘電率が緩
和型の分散特性を示し、誘電損率は山型の吸収特性を示
す他、キャリアが単純な移動としての電気伝導のみを生
じる場合、その誘電率は影響されないが、誘電損率は周
波数に逆比例して変化するとともに同電率が温度に対し
て指数関数的に増加するという性質を示す他、高分子
の主鎖に極性の強い側鎖が付いている場合においては、
低周波数側へシフトして双極子の配向分極が見られ、や
はり誘電率が緩和型の分散特性を示し、誘電損率が山型
の吸収特性を示す、等が挙げられる。
【0015】複合材料のこうした性質を防音・制振特性
に係る機械的エネルギー、電気エネルギーあるいは熱エ
ネルギー相互の変換特性の向上に活かすことについての
研究も進められている。
【0016】本発明の解決しようとする課題は、エネル
ギー吸収量が多くて吸音特性、制振特性、防振特性、衝
撃吸収特性等に優れるとともに、経時変化による減衰性
能の劣化を回避することのできる耐久性に優れた高減衰
材料を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明の高減衰材料は、有機低分子系誘電体物質又は
強誘電体物質を、極性のある側鎖を有するゴム材料又は
エラストマー材料に分散させたものであって、損失係数
(損失弾性係数/貯蔵弾性係数)がガラス転移温度領域
に第一ピーク値を有すると共に、共振周波数帯域又はそ
の倍数帯域において第二ピーク値を示すことを要旨とす
るものである。
【0018】ここに「有機低分子系誘電体物質又は強誘
電体物質」の材料としては、架橋促進剤(例えばスルフ
ェンアミド系、チオウレア系、チウラム系、チアゾール
系、グアニジン系、アルデヒド−アンモニア系、アルデ
ヒド−アミン系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲ
ン酸塩系、混合促進剤等)が代表的なものとして挙げら
れる。またその他に双極子モーメント(μ)が1Deb
ye以上の有機低分子系誘電体物質(例えば炭酸エチレ
ン、炭酸プロピレン、ホルムアミド、ジメチルホルムア
ミド(DMF)、N−メチルホルムアミド(NMF)、
N−メチルアセトアミド(NMAC))等も挙げられ
る。
【0019】一方、極性のある側鎖を有するゴム系統の
材料としては、変性天然ゴム、グラフト天然ゴム、環化
天然ゴム、塩素化天然ゴム、クロロプレンゴム(C
R)、アクリトニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、
カルボキシル化ニトリルゴム、ニトリルゴム/塩化ビニ
ル樹脂ブレンド、ニトリルゴム/EPDMゴムのブレン
ド、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−
酢酸ビニルゴム(EVA)、アクリルゴム(ACM,A
NM)、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポ
リエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリン
ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシドゴム、メ
チルシリコンゴム、ビニル−メチルシリコンゴム、フェ
ニル−メチルシリコンゴム、フッ化シリコンゴム、フッ
素ゴム等が挙げられる。
【0020】また極性のある側鎖を有するエラストマー
系統の材料としては、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラス
トマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエ
ステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性
エラストマー等が挙げられる。
【0021】そしてその分散状態としては、誘電物質を
そのままゴム材料やエラストマー材料に配合しても良い
が、これらの材料を互いに混練し、架橋反応等により側
鎖に結合(ペンダント)させるようにすると更に良い。
【0022】この場合に有機低分子系誘電体物質又は強
誘電体物質の極性のある側鎖を有するゴム材料又はエラ
ストマー材料に対する体積比は、0.3以上であること
が望ましい。この場合に塩素量、分子量、結晶量を調節
すれば力学共振周波数(Wn)と電気共振周波数(W
e)とを一致させることができ、損失係数(tanδ)
を無限大にすることが可能になる。そうすれば、得られ
る高減衰材料は見かけは固体であるが物性は完全粘性体
となる。
【0023】あるいはまた、上記した場合に損失係数が
10-3以下の範囲をとるものであってもよいものであ
る。このような特性は、フタル酸ジオクチル(DOP)
やリン酸トリクレシル(TCP)等を添加することによ
り付与されるものである。この量を調整すれば、力学的
共振点(Wn)と電気的共振点(We)との調整がなさ
れ得るため、誘電物質の結晶成長が阻止され、減衰性能
の劣化が回避される。
【0024】さらにまた損失係数が負の値をとるもので
あってもよい。この場合においては、80℃以上の温度
領域でイオン伝導性を示し、直流の電気伝導率が10-8
(S・cm-1)以上であることが望ましい。これはイオ
ン伝導性により、所定の周波数帯域において緩和型の界
面分極と配向分極が起こり、分極帯域では誘電損失がピ
ークを示しエネルギー吸収が増加するからである。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を詳細に説
明する。初めに次の表1は、本発明の実施に供した試料
(サンプル)の材料組成を一覧表に示したものである。
ポリマー材料としては、樹脂系の塩素化ポリエチレン
(CPE)を採用し、誘電物質としては表1に示すよう
にN−メチルホルムアミドと、N,N−ジシクロヘキシ
ルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(三新化学
製:商品名「サンセラーDZ」)の二種類をそれぞれ誘
電物質「A」,「B」として採用した。また添加剤とし
て、フタル酸ジオクチル(DOP)とリン酸トリクレシ
ル(TCP)を採用した。
【0026】
【表1】
【0027】本発明品の試料1〜4は、いずれも次のよ
うに製作されている。すなわち塩素化ポリエチレン(C
PE)等のポリマー材料と、所定の誘電物質(「A」又
は「B」)とを混練配合し、この混練材料を所定の型枠
内で100〜250℃×10分程加熱し成形したもので
ある。温度条件としては、ポリマー材料の融点以下で、
誘電物質の融点以上が採用されている。これによりこの
材料は非結晶組織化され、針状結晶が消失している。
【0028】次の表2には、本発明品(表1に示した試
料1〜試料4)の各測定周波数における損失係数(ta
nδあるいはlogtanδ)のピーク値、及びピーク
温度を示したものである。本発明品の試料1と試料3に
ついての測定は、商品名「DVE−V4FTスペクトラ
ー」(株式会社レオロジ社製)を用いて行い、試料4に
ついての測定は、商品名「DVE−V4FTスペクトラ
ー」(株式会社レオロジ社製)と商品名「レオバイブロ
ンDDV−25FP」(株式会社エー・アンド・ディ社
製)を用いて行った。試料2についての測定は、商品名
「DVE−V4FTスペクトラー」(株式会社レオロジ
社製)と「DMA2980型動的粘弾性測定装置」(テ
イーエイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を
用いて行った。
【0029】
【表2】
【0030】まず図1は、横軸に温度をとり、縦軸に弾
性係数及び損失係数をとったものであり、本発明品の試
料1についての−20〜120℃の温度に対する貯蔵弾
性係数E’、損失弾性係数E”及び損失係数tanδを
測定周波数110Hzで測定した結果を示したものであ
る。図示されるように、誘電物質[A」を加えたことに
より損失係数tanδは、ガラス転移点でピーク値を示
す他、約100℃付近で第二ピーク値を示した。
【0031】図2、図3及び図4Aは、横軸に温度をと
り、縦軸に弾性係数及び損失係数をとったものであり、
本発明品の試料2についての温度に対する貯蔵弾性係数
E’、損失弾性係数E”及び損失係数tanδを夫々測
定周波数100Hz,110Hz,70Hzで測定した
結果を示したものである。まず図2に示したように誘電
物質「B」を加えたことにより測定周波数100Hzに
あっては損失係数tanδは、約95℃で第二ピーク
(第一ピークは図示されず)を示し、図3に示したよう
に測定周波数110Hzにあっては損失係数tanδ
は、約27℃で第一ピークを示し、約98℃でtanδ
=3580という高い第二ピークを示した。
【0032】また図4に示したように測定周波数70H
zにあっては損失係数tanδは、約26℃で第一ピー
クを示し、約103℃で損失係数tanδが正の値(約
14)と負の値(約−26.5)を第二ピークとして示
した。この第二ピーク付近においては損失係数tanδ
は、最小値から最大値までダイナミックに変化してい
る。このように誘電物質「B」を加えたことにより損失
係数tanδがかなり高い値(tanδ=約14)をと
るように制御できる上、負の値(tanδ=約−26.
5)をとるように制御することもできる。この制御は、
弾性係数(E’,E”)の微妙な関係から導かれるもの
であり、図4Aに示した第二ピーク付近(約100℃前
後)の貯蔵弾性係数E’及び損失弾性係数E”を図4B
に拡大して示す。
【0033】この図4Bに示したように、約65℃付近
までは、貯蔵弾性係数E’も損失弾性係数E”のいずれ
もが正の値であったものが、その約65℃を境にして損
失弾性係数E”が負の値をとるようになるため、この値
を境にして損失係数tanδが負の値をとるようにな
る。一方、貯蔵弾性係数E’は、約102℃付近までは
正の値をとるが、それ以上の温度域においては負の値を
とるようになる。したがって、損失係数tanδは、約
65〜102℃において負の値をとるようになる。そし
て、約102℃を過ぎると貯蔵弾性係数E’及び損失弾
性係数E”の両方が負の値になるため、損失係数tan
δは、再び正の値をとるようになる。
【0034】図5は、横軸に温度をとり、縦軸に損失係
数をとったものであり、本発明品の試料3についての温
度に対する損失係数tanδを測定周波数70Hz,8
0Hz,90Hz,100Hz,110Hzで測定した
結果を示したものである。図示されるように、誘電物質
「B」を加える他、添加剤としてフタル酸ジオクチル
(DOP)を添加したことにより測定周波数90Hz,
100Hzのものについては非常に高い値の第二ピーク
が見られた。測定周波数90Hzにあっては損失係数t
anδは、約116〜119℃にかけて極めて高い第二
ピークを示した(それ以上の温度域については測定され
ていない)。一方、測定周波数100Hzにあっては損
失係数tanδは、約108〜118℃の広い範囲にわ
たって極めて高い第二ピークを(第一ピークは図示され
ず)を示した。尚、測定周波数80Hzのものについて
も第二ピークが約120℃付近に見られたがピークとし
てはこれらに比較すると小さい。
【0035】図6及び図7Aは、横軸に温度をとり、縦
軸に弾性係数及び損失係数をとったものであり、本発明
品の試料4についての温度に対する貯蔵弾性係数E’、
損失弾性係数E”及び損失係数tanδを夫々測定周波
数220Hz,95Hzで測定した結果を示したもので
ある。図6に示したように、誘電物質「B」を加える
他、添加剤としてリン酸トリクレシル(TCP)を添加
したことにより測定周波数220Hzのものについては
約46〜64℃及び123.7℃において損失弾性係数
E”が非常に小さくなり、完全弾性体の挙動を示す(t
anδ≦10-3)。
【0036】一方、測定周波数95Hzのものについて
は、図7Aに示したように、約6℃に第一ピークを示
し、約100℃に第二ピークを示した。第一ピークはそ
の値が約2.0になり、第二ピークはその値が負の値で
ある約−26.5となった。図7Aの第二ピークが見ら
れる75〜125℃前後の貯蔵弾性係数E’及び損失弾
性係数E”を図7Bに拡大して示す。
【0037】この図7Bに示したように、損失弾性係数
E”は、測定された全温度範囲において正の値をとる一
方、貯蔵弾性係数E’は、約80〜100℃の間におい
て負の値をとるため、この間においては損失係数tan
δが負の値になる。
【0038】以上説明したように、誘電物質の選択や添
加剤の有無により、その損失係数tanδのピーク値を
所期する値に制御することができる。また損失係数ta
nδのピーク値を示す温度(℃)は、各試料によって異
なるが、測定した試料においてはいずれも第二ピークが
約100℃前後に見られた。このように第一ピークと第
二ピークの二つのピークを有するものであるから、要求
特性による材料の使い分けが広範囲な温度範囲にわたっ
てより効果的に行われることになる。
【0039】図8は、横軸に温度をとり、縦軸に誘電率
をとったものであり、本発明品の試料2について測定周
波数1.00Hz,10Hz,100Hz,1000H
z,10000Hz,100000Hz,300000
Hzでその誘電特性を測定した結果を示したものであ
る。この図に示したように測定周波数1.00Hzにお
いては非常に大きい双極子の配向分極が見られる。針状
結晶の影響によるものである。一方、測定周波数が10
0Hz以上に高くなると誘電率は界面分極による緩和型
を示した。
【0040】図9は、横軸に温度をとり、縦軸に誘電損
失をとったものであり、本発明品の試料2について測定
周波数1.00Hz,10Hz,100Hz,1000
Hz,10000Hz,100000Hz,30000
0Hzで測定した結果を示したものである。この図に示
したよう低温側においては配向分極が見られ、80℃以
上の高温側においては界面分極が見られ、これにより試
料2がイオン伝導性を示すものであることが判明した。
またこのグラフにより高温側へ遷移するほどエネルギー
吸収量は大きくなっている。なお、この80℃以上の高
温は誘電物質の融点以上の温度に相当している。
【0041】以上のことにより、誘電物質と添加剤を配
合することにより界面分極や双極子の配向分極と、イオ
ン伝導に基づくエネルギー吸収がなされることから材料
特性に応じて振動や音波の力学的エネルギーを効率的に
電気あるいは熱エネルギーへ変換することが可能にな
る。したがって、分子レベルで材料を複合することによ
り幅広い温度範囲にわたる制振材料を提供することが可
能になる。このように損失係数tanδのみならず電気
特性をも高分子材料の複合によって調整することができ
るから、冷蔵環境下での使用や、室温環境下における音
響ルームの遮音壁、建築構造体の遮音間仕切、車両の防
音壁等への適用の他、室温より高い温度環境下、例えば
車両を初めとした各種産業機器の駆動制御部等への利用
等その応用範囲が広がるものである。
【0042】本発明は、上記した実施例に何等限定され
るものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々
の改変が可能である。例えば上記した実施例の配合割合
以外の配合量で試料を調整するものであってもよい。ま
た材料についても種々のものが適用され得るものであ
る。
【0043】
【発明の効果】本発明の高減衰材料によれば、有機低分
子系誘電体物質又は強誘電体物質を、極性のある側鎖を
有するゴム材料又はエラストマー材料に非結晶状態で分
散させたものであって、損失係数(損失弾性係数/貯蔵
弾性係数)がガラス転移温度領域に第一ピーク値を有す
ると共に、共振周波数帯域又はその倍数帯域において第
二ピーク値を示すため、損失係数(tanδ)の値が高
くなりエネルギー吸収量が多くて吸音特性、制振特性、
防振特性、衝撃吸収特性等に優れる他、エネルギー変換
効率に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高減衰材料の温度−tanδ特性
及び温度−貯蔵・損失弾性係数特性を示す図である。
【図2】同じく本発明に係る高減衰材料の温度−tan
δ特性及び温度−貯蔵・損失弾性係数特性を示す図であ
る。
【図3】同じく本発明に係る高減衰材料の温度−tan
δ特性及び温度−貯蔵・損失弾性係数特性を示す図であ
る。
【図4A】同じく本発明に係る高減衰材料の温度−ta
nδ特性及び温度−貯蔵・損失弾性係数特性を示す図で
ある。
【図4B】図4Aに示したtanδの第二ピーク付近の
温度−貯蔵・損失弾性係数特性を拡大して示す図であ
る。
【図5】本発明に係る高減衰材料の温度−tanδ特性
を示す図である。
【図6】本発明に係る高減衰材料の温度−tanδ及び
温度−貯蔵・損失弾性係数特性を示す図である。
【図7A】同じく本発明に係る高減衰材料の温度−ta
nδ特性及び温度−貯蔵・損失弾性係数特性を示す図で
ある。
【図7B】図7Aに示したtanδの第二ピーク付近の
温度−貯蔵・損失弾性係数特性を拡大して示す図であ
る。
【図8】本発明に係る高減衰材料の温度−誘電率特性を
示す図である。
【図9】本発明に係る高減衰材料の温度−誘電損失特性
を示す図である。
【図10】有機複合誘電体の電気特性を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16F 15/08 F16F 15/08 D

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機低分子系誘電体物質又は強誘電体物
    質を、極性のある側鎖を有するゴム材料又はエラストマ
    ー材料に分散させたものであって、損失係数(損失弾性
    係数/貯蔵弾性係数)がガラス転移温度領域に第一ピー
    ク値を有すると共に、共振周波数帯域又はその倍数帯域
    において第二ピーク値を示すことを特徴とする高減衰材
    料。
  2. 【請求項2】 前記有機低分子系誘電体物質又は強誘電
    体物質の極性のある側鎖を有するゴム材料又はエラスト
    マー材料に対する体積比が0.3以上であることを特徴
    とする請求項1に記載の高減衰材料。
  3. 【請求項3】 前記損失係数が10-3以下の範囲にある
    ことを特徴とする請求項1に記載の高減衰材料。
  4. 【請求項4】 前記損失係数が負の値をとるものである
    ことを特徴とする請求項1に記載の高減衰材料。
  5. 【請求項5】 80℃以上の温度領域でイオン伝導性を
    示し、直流の電気伝導率が10-8(S・cm-1)以上で
    あることを特徴とする請求項4に記載の高減衰材料。
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