JPH10305766A - 制動液圧制御装置 - Google Patents

制動液圧制御装置

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Publication number
JPH10305766A
JPH10305766A JP28728297A JP28728297A JPH10305766A JP H10305766 A JPH10305766 A JP H10305766A JP 28728297 A JP28728297 A JP 28728297A JP 28728297 A JP28728297 A JP 28728297A JP H10305766 A JPH10305766 A JP H10305766A
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JP
Japan
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pressure
wheel
brake fluid
brake
wheel cylinder
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Application number
JP28728297A
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English (en)
Inventor
Masahiro Hara
雅宏 原
Hiroaki Oka
宏明 岡
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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Publication of JPH10305766A publication Critical patent/JPH10305766A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、所定の状況下でマスタシリンダ圧
に比して高圧のホイルシリンダ圧を発生させる制動液圧
制御装置に関し、マスタ流出量QM/C とホイル流入量Q
W/C との不均一に関わらず適正に液圧制御を実行するこ
とを目的とする。 【解決手段】 緊急ブレーキ操作が検出されたらフロン
トポンプ170およびリアポンプ172からホイルシリ
ンダ142〜148にブレーキフルードを供給するBA
制御を開始する。BA制御が開始されると、マスタシリ
ンダ18からの流出量QM/C に比してホイルシリンダ1
42〜148内の液量QW/C が多量となる。マスタ流出
量QM/C に比して多量のブレーキフルードがマスタシリ
ンダ18にもどされるのを防止すべく、ポンプから供給
される液量QINが所定値を超える場合は更なる液量QIN
の増加を禁止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、制動液圧制御装置
に係り、特に、所定の状況下でマスタシリンダ圧に比し
て高圧のホイルシリンダ圧を発生させる制動液圧制御装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平4−12126
0号に開示される如く、運転者によって緊急ブレーキ操
作が行われた際に、通常時に比して大きな制動油圧を発
生させるブレーキアシスト制御(以下、BA制御と称
す)を実行する装置が知られている。
【0003】BA制御は、例えば、ブレーキ踏力に応
じた制動液圧を発生するマスタシリンダと、リザーバ
タンク内のブレーキフルードを汲み上げてホイルシリン
ダに供給するポンプと、緊急ブレーキ操作が検出され
ない状況下では各車輪のホイルシリンダをマスタシリン
ダに連通させ、一方、緊急ブレーキ操作が検出された際
には各車輪のホイルシリンダをポンプに連通させる液圧
回路と、を備える装置によって実現することができる。
【0004】上記の制動液圧制御装置によれば、運転者
が通常のブレーキ操作を行う場合は、各車輪のホイルシ
リンダ圧をマスタシリンダ圧と等圧に制御することがで
きる。また、運転者が緊急ブレーキ操作を実行する場合
は、各車輪のホイルシリンダ圧を、ポンプを液圧源とし
てマスタシリンダ圧に比して高い液圧に増圧することが
できる。このように、上記の制動液圧制御装置によれ
ば、BA制御の機能を適正に実現することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の制動液圧制御装
置において、BA制御が開始される以前は、各車輪のホ
イルシリンダに流入しているブレーキフルードの総和Q
W/C (以下、ホイル流入量QW/C と称す)と、マスタシ
リンダから流出しているブレーキフルードの量QM/C
(以下、マスタ流出量QM/C と称す)とが等しい状態が
維持される。
【0006】しかし、上記の装置において、BA制御が
開始されると、各車輪のホイルシリンダにポンプから吐
出されたブレーキフルードが吸入される。従って、上記
の装置においてBA制御が開始されると、その後、各ホ
イルシリンダがポンプから吸入したブレーキフルードの
総和QIN(以下、吸入液量QINと称す)分だけ、ホイル
流入量QW/C がマスタ流出量QM/C に比して多量とな
る。
【0007】ホイル流入量QW/C がマスタ流出量QM/C
に比して多量である場合は、ブレーキ操作を終了させる
べくブレーキペダルを解除位置(踏み込み解除時に復帰
する位置)まで復帰させても、ホイル流入量QW/C の全
てをマスタシリンダで吸収することができない。この場
合、ブレーキペダルが解除位置に復帰した後に、ホイル
シリンダ内にホイル流入量QW/C が残存する事態が生ず
る。
【0008】マスタシリンダは、ブレーキペダルの踏み
込みが解除されている場合にのみマスタシリンダとリザ
ーバタンクとを導通状態とする弁機構を備えている。上
記の装置において、BA制御の終了後にホイルシリンダ
内に残存するブレーキフルードは、ブレーキペダルが解
除位置に到達した後、その弁機構を通って一気にリザー
バタンクへ流出する。
【0009】マスタシリンダの耐久性を確保するうえで
は、弁機構に多量のブレーキフルードを流通させないこ
とが望ましい。従って、上記の制動液圧制御装置の構成
は、すなわち、BA制御の実行に伴ってマスタ流出量Q
M/C に比して多量のホイル流入量QW/C を発生させ、か
つ、ホイル流入量QW/C の過剰分をマスタシリンダを介
してリザーバタンクに流出させる構成は、マスタシリン
ダの耐久性を確保するうえで必ずしも適切な構成ではな
い。
【0010】また、車両の分野においては、ブレーキ操
作の実行に伴って車輪に過大なスリップ率が発生した場
合に、その車輪のホイルシリンダ圧の減圧を図るアンチ
ロックブレーキ制御(以下、ABS制御と称す)が知ら
れている。上記の制動液圧制御装置において、ABS制
御は、車輪に過大なスリップ率が発生した場合に、その
車輪のホイルシリンダから適宜ブレーキフルードを流出
させると共に、流出したブレーキフルードをポンプによ
ってマスタシリンダ側に還流させることにより実現でき
る。
【0011】上記の制動液圧制御装置において、ABS
制御に伴ってポンプからマスタシリンダ側に戻されたブ
レーキフルードは、その一部がマスタシリンダに流入す
ると共に、ホイルシリンダ圧の増圧が許容される状況下
で再びホイルシリンダに供給される。従って、上記の制
動液圧制御装置によれば、ABS制御を実行すること
で、マスタシリンダから不当に多量のブレーキフルード
を流出させることなく、過大なスリップ率の生じた車輪
のホイルシリンダ圧を、適切なスリップ率を発生させる
液圧に制御することができる。
【0012】ABS制御によれば、ホイルシリンダ圧
が、走行中の道路の摩擦係数μに応じた液圧に制御され
る。従って、ABS制御によれば、ホイル流入量QW/C
が、走行中の道路の摩擦係数μに応じた液圧に制御され
る。このため、十分にホイルシリンダ圧が増圧された状
態で高μ路を走行していた車両が低μ路に進入すると、
その時点でABS制御が開始され、その後ホイル流入量
QW/C が大幅に減量されることがある。この際、上記の
制動力制御装置において、ホイル流入量QW/C の減量分
はマスタシリンダに戻される。
【0013】上述の如く、上記の制動液圧制御装置にお
いては、BA制御が開始された後にマスタ流出量QM/C
に比して多量のホイル流入量QW/C が発生する。従っ
て、上記の制動液圧制御装置によれば、BA制御が開始
された後に車両が高μ路から低μ路に進入した場合に、
ホイル流入量QW/C に、マスタ流出量QM/C を超える減
量が要求されること、すなわち、マスタシリンダに、マ
スタ流出量QM/C を超えるブレーキフルードが戻される
ことがある。
【0014】マスタシリンダにマスタ流出量QM/C を超
えるブレーキフルードが戻されると、ブレーキペダル
は、ブレーキ操作が継続されていても解除位置まで復帰
する。ブレーキペダルが解除位置に位置するか否か、す
なわち、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かの判
定結果は、運転者が制動力を要求しているか否かを判断
する要素として種々の制御において用いられている。
【0015】このため、運転者がブレーキ操作を継続し
ている状況下では、すなわち、運転者が制動力を要求し
ている状況下では、ブレーキペダルを解除位置に復帰さ
せるべきではない。従って、上記の制動液圧制御装置の
構成は、すなわち、BA制御の実行に伴ってマスタ流出
量QM/C に比して多量のホイル流入量QW/C を発生さ
せ、かつ、ホイル流入量QW/C の減量分をマスタシリン
ダに戻す構成は、運転者が制動力を要求しているか否か
を正確に判定するうえで必ずしも適切な構成ではない。
【0016】このように、上記の制動力制御装置におい
ては、BA制御の実行に伴ってマスタ流出量QM/C に比
して多量のホイル流入量QW/C が発生することにより、
種々の不都合が発生する。本発明は、上述の点に鑑みて
なされたものであり、BA制御の実行に伴うマスタ流出
量QM/C とホイル流入量QW/C との不均一に関わらず、
適正に液圧制御を実行する制動液圧制御装置を提供する
ことを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1
に記載する如く、マスタシリンダと、リザーバタンクか
らブレーキフルードを汲み上げてホイルシリンダに供給
する高圧源とを備え、所定の状況下で前記高圧源から前
記ホイルシリンダにブレーキフルードを供給して、マス
タシリンダ圧に比して高圧のホイルシリンダ圧を発生さ
せる制動液圧制御装置において、前記ホイルシリンダが
前記高圧源から吸入したブレーキフルードの吸入液量を
検出する吸入液量検出手段と、前記吸入液量が所定値以
上である場合に前記高圧源から前記ホイルシリンダへの
ブレーキフルードの流入を禁止する吸入液量ガード手段
と、を備える制動液圧制御装置により達成される。
【0018】本発明において、高圧源からホイルシリン
ダにブレーキフルードが供給されていない場合は、マス
タシリンダから流出するブレーキフルードの量(マスタ
流出量QM/C )が、ホイルシリンダに流入しているブレ
ーキフルードの量(ホイル流入量QW/C )と一致する。
また、高圧源からホイルシリンダにブレーキフルードが
供給されると、供給されたブレーキフルードの量(吸入
液量QIN)だけホイル流入量QW/C がマスタ流出量QM/
C に比して多量となる。
【0019】本発明において、吸入液量QINは所定量以
下にガードされている。この場合、ブレーキ操作が解除
された時点でホイルシリンダに残存するホイル流入量Q
W/Cが所定量以下にガードされる。残存するホイル流入
量QW/C がこのように少量である場合は、そのホイル流
入量QW/C をマスタシリンダを介してリザーバタンクに
開放しても、マスタシリンダの耐久性が損なわれること
はない。
【0020】上記の目的は、請求項2に記載する如く、
マスタシリンダと、リザーバタンクからブレーキフルー
ドを汲み上げてホイルシリンダに供給する高圧源とを備
え、所定の状況下で前記高圧源から前記ホイルシリンダ
にブレーキフルードを供給して、マスタシリンダ圧に比
して高圧のホイルシリンダ圧を発生させる制動液圧制御
装置において、前記ホイルシリンダが前記高圧源から吸
入したブレーキフルードの吸入液量を検出する吸入液量
検出手段と、前記吸入液量が所定値以上である状況下
で、前記ホイルシリンダ圧の減圧が要求される場合に、
前記ホイルシリンダ内のブレーキフルードを前記マスタ
シリンダを介さずに前記リザーバタンクに流出させるリ
ザーバリターン手段と、を備える制動液圧制御装置によ
り達成される。
【0021】本発明において、高圧源からホイルシリン
ダにブレーキフルードが供給されると、吸入液量QINだ
けホイル流入量QW/C がマスタ流出量QM/C に比して多
量となる。本発明において、吸入液量QINが所定量以上
である場合は、すなわち、ブレーキ操作が解除された時
点で残存するホイル流入量QW/C が所定量以上となる場
合は、そのホイル流入量QW/C がマスタシリンダを介さ
ずに直接リザーバタンクにもどされる。この場合、残存
するホイル流入量QW/C が多量であっても、マスタシリ
ンダの耐久性が損なわれることはない。
【0022】上記の目的は、請求項3に記載する如く、
マスタシリンダと、リザーバタンクからブレーキフルー
ドを汲み上げてホイルシリンダに供給するポンプとを備
え、所定の状況下で、前記高圧源から前記ホイルシリン
ダにブレーキフルードを供給してマスタシリンダ圧に比
して高圧のホイルシリンダ圧を発生させるブレーキアシ
スト制御を実行し、かつ、車輪に過大なスリップ率が生
じた際に、前記車輪のホイルシリンダ圧を減圧するアン
チロックブレーキ制御を実行する制動液圧制御装置にお
いて、前記ブレーキアシスト制御が開始された後、車両
が高摩擦係数路から低摩擦係数路に進入したことを検出
する低μ進入検出手段と、前記低μ進入検出手段により
車両が低摩擦係数路に進入したことが検出された場合
に、前記ポンプを停止させるポンプ停止手段と、を備え
る制動液圧制御装置により達成される。
【0023】本発明において、ブレーキアシスト制御が
開始されると、ポンプからホイルシリンダにブレーキフ
ルードが供給される。その結果、ホイルシリンダ圧がマ
スタシリンダ圧に比して高い液圧に増圧される。ブレー
キアシスト制御が開始された後、車両が高μ路から低μ
路に進入すると、スリップ率を適正な値とするためのホ
イル流入量QW/C が減少する。
【0024】従って、このような状況下では、最早ホイ
ル流入量QW/C を増加させる必要、すなわち、ポンプか
らブレーキフルードを吐出する必要がない。更に、かか
る状況下でポンプがブレーキフルードを吐出し続ける
と、吐出されたブレーキフルードがマスタシリンダに戻
されて、ブレーキペダルが強制的に解除位置に押圧され
る事態が生ずる。本発明において、ブレーキアシスト制
御の開始時に車両が低μ路に進入した場合にはポンプの
作動が停止される。この場合、十分なホイル流入量QW/
C を確保しつつ、ブレーキペダルの強制的な解除が防止
される。
【0025】上記の目的は、請求項4に記載する如く、
マスタシリンダと、リザーバタンクからブレーキフルー
ドを汲み上げてホイルシリンダに供給するポンプとを備
え、所定の状況下で、前記高圧源から前記ホイルシリン
ダにブレーキフルードを供給してマスタシリンダ圧に比
して高圧のホイルシリンダ圧を発生させるブレーキアシ
スト制御を実行し、かつ、車輪に過大なスリップ率が生
じた際に、前記車輪のホイルシリンダ圧を減圧するアン
チロックブレーキ制御を実行する制動液圧制御装置にお
いて、前記ブレーキアシスト制御が開始された後、車両
が高摩擦係数路から低摩擦係数路に進入したことを検出
する低μ進入検出手段と、前記低μ進入検出手段により
車両が低摩擦係数路に進入したことが検出された場合
に、前記ホイルシリンダ内のブレーキフルードを前記マ
スタシリンダを介さずに前記リザーバタンクに流出させ
るリザーバリターン手段と、を備える制動液圧制御装置
により達成される。
【0026】本発明において、ブレーキアシスト制御が
開始された後、車両が高μ路から低μ路に進入すると、
スリップ率を適正な値とするためのホイル流入量QW/C
が減少する。このため、かかる状況が生ずると、その
後、アンチロックブレーキ制御が開始され、ホイルシリ
ンダに流入していたブレーキフルードの一部がホイルシ
リンダから流出することがある。本発明においては、こ
のようにしてホイルシリンダから流出されるブレーキフ
ルードが、マスタシリンダを介さずに直接リザーバタン
クに戻される。この場合、ブレーキ操作の強制的解除が
確実に防止される。
【0027】上記の目的は、請求項5に記載する如く、
上記請求項4記載の制動液圧制御装置において、前記ア
ンチロックブレーキ制御の実行中に前記ホイルシリンダ
圧の減圧に伴って前記ホイルシリンダから流出するブレ
ーキフルードを、前記ポンプが汲み上げて前記ホイルシ
リンダ側に供給すると共に、前記ポンプが停止状態であ
ることを検出するポンプ停止検出手段を備え、かつ、前
記リザーバリターン手段が、前記低μ進入検出手段によ
り車両が低摩擦係数路に進入したことが検出された場合
に、前記ポンプが停止状態に至った後に、前記ホイルシ
リンダ内のブレーキフルードの前記リザーバタンクへの
流出を図る制動液圧制御装置により達成される。
【0028】本発明において、アンチロックブレーキ制
御の実行に伴ってホイルシリンダから流出するブレーキ
フルードは、ポンプによってマスタシリンダ側に戻され
る。上記の制御によれば、アンチロックブレーキ制御の
実行中に、マスタシリンダから全てのブレーキフルード
が流出する事態を防止することができる。本発明におい
て、ブレーキアシスト制御の開始後に、車両が低μ路に
進入したことに起因してアンチロックブレーキ制御が開
始された場合は、ブレーキ操作の強制的な解除を防止す
べく、ホイルシリンダから流出するブレーキフルードの
リザーバタンクへの流出が図られる。この際、ポンプが
作動状態であると、ホイルシリンダから流出したブレー
キフルードが、効率良くリザーバタンクに流出しない。
【0029】本発明において、ブレーキフルードをリザ
ーバタンクへ流出させる処理は、ポンプが完全に停止し
た状態で行われる。この場合、ホイルシリンダから流出
するブレーキフルードが効率よくリザーバタンクに流出
し、ブレーキ操作の強制的な解除が確実に防止される。
また、上記の目的は、請求項6に記載する如く、上記請
求項4記載の制動液圧制御装置において、前記アンチロ
ックブレーキ制御の実行中に、前記ホイルシリンダ圧の
減圧を図る減圧モードと、前記ホイルシリンダ圧の増圧
または保持を図る増圧保持モードとが実行されると共
に、前記リザーバリターン手段が、前記減圧モードと同
期して、前記ホイルシリンダ内のブレーキフルードの前
記リザーバタンクへの流出を図る制動液圧制御装置によ
り達成される。
【0030】本発明において、ホイルシリンダから流出
するブレーキフルードをリザーバタンクに流出させる処
理は、アンチロックブレーキ制御によって減圧モードが
実行される時期と同期して行われる。これらを同期して
行うことによれば、ホイルシリンダ内のブレーキフルー
ドを、短時間で確実にリザーバタンクに放出することが
できる。
【0031】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例に対応
するポンプアップ式制動液圧制御装置(以下、単に制動
液圧制御装置と称す)のシステム構成図を示す。本実施
例の制動液圧制御装置は、フロントエンジン・リアドラ
イブ式車両(FR車両)用の制動液圧制御装置として好
適な装置である。本実施例の制動液圧制御装置は、電子
制御ユニット10(以下、ECU10と称す)により制
御されている。
【0032】制動液圧制御装置は、ブレーキペダル12
を備えている。ブレーキペダル12の近傍には、ブレー
キスイッチ14が配設されている。ブレーキスイッチ1
4は、ブレーキペダル12が踏み込まれることによりオ
ン信号を出力する。ブレーキスイッチ14の出力信号は
ECU10に供給されている。ECU10は、ブレーキ
スイッチ14の出力信号に基づいてブレーキペダル12
が踏み込まれているか否かを判別する。
【0033】ブレーキペダル12は、バキュームブース
タ16に連結されている。また、バキュームブースタ1
6は、センターバルブ式マスタシリンダ18(以下、単
にマスタシリンダ18と称す)に固定されている。バキ
ュームブースタ16は、ブレーキペダル12が踏み込ま
れた場合に、ブレーキ踏力Fと、その踏力Fに対して所
定の倍力比を有するアシスト力Faとの合力を、マスタ
シリンダ18に伝える装置である。
【0034】図2は、マスタシリンダ18の構成を表す
断面図を示す。マスタシリンダ18は、その内部に2つ
の液圧室を備えると共に、それら2つの液圧室を隔成す
る2つのピストンが、共にセンターバルブを備えるタン
デムセンターバルブ式のマスタシリンダである。尚、図
2は、マスタシリンダ18の構成要素が、全て原位置に
位置している状態を示す。図2に示す状態は、ブレーキ
ペダル12の踏み込みが解除されている場合に実現され
る。
【0035】図2に示す如く、マスタシリンダ18は、
ハウジング20を備えている。ハウジング20の内部に
は、入力部材22および第1ピストン24が配設されて
いる。入力部材22は、バキュームブースタ16に連結
される部材であり、ハウジング20の内部を摺動するこ
とができる。第1ピストン24は、ピストン本体26を
備えている。ピストン本体26は、ハウジング20の内
部を摺動することができると共に、ハウジング20の内
部に第1大気室28と第1液圧室30とを隔成してい
る。ピストン本体26には、その外周部および中心部
に、それぞれ第1大気室28と第1液圧室30とを連通
する液圧通路32,34が形成されている。
【0036】ピストン本体26には、カップ36が装着
されている。カップ36は、第1液圧室30の内圧が第
1大気室28の内圧に比して低圧である場合に液圧通路
32を開放し、その逆の場合に液圧通路32を閉塞する
逆止弁として機能する。また、ピストン本体26には、
第1センターバルブ38が組み込まれている。第1セン
ターバルブ38は、液圧通路34と対向する側に、液圧
通路34の開口径に比して大きな環状のシール部材40
を備えていると共に、シール部材40の反対側に所定長
の掛止軸42を備えている。
【0037】第1ピストン24は、第1センターバルブ
38を、図1に於ける左向きに付勢する付勢バネ44を
備えている。図1において、第1センターバルブ38に
は、付勢バネ44の発する付勢力と掛止軸42に作用す
る張力とが作用している。第1センターバルブ38は、
これら2つの力がバランスする位置に保持される。マス
タシリンダ18は、その全ての構成要素が原位置に位置
する場合に、第1センターバルブ38が、液圧通路34
の開口部とシール部材40との間に所定のクリアランス
を発生させる位置に保持されるように設計されている。
第1センターバルブ38が上述した原位置に位置する場
合、第1大気室28と第1液圧室30とは、液圧通路3
4を介して導通状態となる。
【0038】ハウジング20の内部には、第1スプリン
グ46および伝達ピストン48が配設されている。第1
スプリング46は、第1ピストン24と伝達ピストン4
8との間に配設されている。伝達ピストン48は、ハウ
ジング20の内部を摺動することができる。伝達ピスト
ン48は、ハウジング20の内部に、上述した第1液圧
室30と、第2大気室50とを隔成している。
【0039】伝達ピストン48の中央部には、第1セン
ターバルブ38の掛止軸42を収納するための収納室5
2が形成されている。また、収納室52の開口部周辺に
は、掛止軸42の軸方向の変位を規制するストッパ54
が配設されている。第1センターバルブ38は、掛止軸
42の変位がストッパ54によって規制される位置を原
位置として、ピストン本体26に対して、その軸方向に
相対変位することができる。
【0040】ハウジング20の内部には、第2ピストン
56が配設されている。第2ピストン56は、ピストン
本体58を備えている。ピストン本体58は、ハウジン
グ20の内部を摺動することができると共に、ハウジン
グ20の内部に上述した第2大気室50と、第2液圧室
60とを隔成している。ピストン本体58には、その外
周部および中心部に、それぞれ第2大気室50と第2液
圧室60とを連通する液圧通路62,64が形成されて
いる。ピストン本体58には、カップ66が装着されて
いる。カップ66は、第2液圧室60の内圧が第2大気
室50の内圧に比して低圧である場合に液圧通路62を
開放し、その逆の場合に液圧通路62を閉塞する逆止弁
として機能する。また、ピストン本体58には、第2セ
ンターバルブ68が組み込まれている。第2センターバ
ルブ68は、液圧通路64と対向する側に、液圧通路6
4の開口径に比して大きな環状のシール部材70を備え
ていると共に、シール部材70の反対側に所定長の掛止
軸72を備えている。
【0041】第2ピストン56は、第2センターバルブ
68を、図1に於ける左向きに付勢する付勢バネ74を
備えている。図1において、第2センターバルブ68に
は、付勢バネ74の発する付勢力と掛止軸72に作用す
る張力とが作用している。第2センターバルブ68は、
これら2つの力がバランスする位置に保持される。マス
タシリンダ18は、その全ての構成要素が原位置に位置
する場合に、第2センターバルブ68が、液圧通路64
の開口部とシール部材70との間に所定のクリアランス
を発生させる位置に保持されるように設計されている。
第2センターバルブ68が上述した原位置に位置する場
合、第2大気室50と第2液圧室60とは、液圧通路6
4を介して導通状態となる。
【0042】ハウジング20の内部には、第2スプリン
グ76および掛止部材78が配設されている。第2スプ
リング76は、第2ピストン56と掛止部材78との間
に配設されている。掛止部材78は、筒状のスリーブ8
0とスリーブ80の端部に固定されたストッパ82とを
備えている。第2センターバルブ68は、掛止軸72の
変位がストッパ82によって規制される位置を原位置と
して、ピストン本体58に対して、その軸方向に相対変
位することができる。
【0043】上述の如く、バキュームブースタ16は、
ブレーキペダル12が踏み込まれた際にブレーキ踏力F
とアシスト力Faとの合力Fbをマスタシリンダ18に
入力する。バキュームブースタ16の発する合力Fbは
マスタシリンダ18の入力部材22に入力される。入力
部材22に入力された合力Fbは、入力部材22が第1
ピストン24に当接するまで変位した後に第1ピストン
24に伝達される。
【0044】第1ピストン24に合力Fbが伝達される
と、第1ピストン24は、伝達ピストン48に向かって
変位する。第1ピストン24が伝達ピストン48に向か
って変位すると、掛止軸42の張力が緩まって、第1セ
ンターバルブ38が、ピストン本体26に対して、図2
中左方向に、すなわち、液圧通路34の開口部周辺とシ
ール部材40との間のクリアランスを消滅させる方向に
相対変位する。
【0045】液圧通路34の開口部周辺とシール部材4
0とが当接状態となると、液圧通路34がシール部材4
0に閉塞されて第1液圧室30と第1大気室28とが遮
断状態とされる。このため、第1大気室28と第1液圧
室30とは、ブレーキペダル12の踏み込みが解除され
ている状態では導通状態となり、ブレーキペダル12が
踏み込まれた状態では互いに切り離された状態となる。
【0046】第1液圧室30が第1大気室28から切り
離された後、第1ピストン24が更に伝達ピストン48
に向かって変位すると、第1液圧室30の内部には、合
力Fbに応じた、すなわち、ブレーキ踏力Fに応じた液
圧が発生する。以下、この液圧をマスタシリンダ圧P
M/C を称す。ブレーキペダル12が踏み込まれた後、上
記の如く第1ピストン24が伝達ピストン48に向かっ
て変位する際には、第1ピストン24に入力された合力
Fが、第1スプリング46、および、第1液圧室30に
充填されているブレーキフルードを介して伝達ピストン
48に伝達される。また、伝達ピストン48に入力され
た合力Fは、伝達ピストン48が第2ピストン56に当
接するまで変位した後に第2ピストン56に伝達され
る。
【0047】第2ピストン56に合力Fが伝達される
と、第2ピストン56は、掛止部材78に向かって変位
する。第2ピストン56が掛止部材78に向かって変位
すると、掛止軸72の張力が緩まって、第2センターバ
ルブ68が、ピストン本体58に対して、図2中左方向
に、すなわち、液圧通路64の開口部周辺とシール部材
70との間のクリアランスを消滅させる方向に相対変位
する。
【0048】液圧通路64の開口部周辺とシール部材7
0とが当接状態となると、液圧通路64がシール部材7
0に閉塞されて第2液圧室60と第2大気室50とが遮
断状態とされる。このため、第2大気室50と第2液圧
室60とは、ブレーキペダル12の踏み込みが解除され
ている状態で導通状態となり、ブレーキペダル12が踏
み込まれた状態で互いに切り離された状態となる。
【0049】第2液圧室60が第1大気室50から切り
離された後、第2ピストン56が更に掛止部材78に向
かって変位すると、第2液圧室60の内部には、合力F
bに応じた、すなわち、ブレーキ踏力Fに応じた液圧が
発生する。以下、この液圧を、第1液圧室30に発生す
る液圧と同様にマスタシリンダ圧PM/C を称す。図1に
示す如く、マスタシリンダ18の上部にはリザーバタン
ク84が配設されている。マスタシリンダ18の第1大
気室30および第2大気室60は、常時リザーバタンク
84に連通している。従って、第1大気室30および第
2大気室60の内圧は常に大気圧に維持されている。
【0050】マスタシリンダ18の第1液圧室30およ
び第2液圧室60に充填されているブレーキフルード
は、例えば各車輪のブレーキパッドの摩耗等に伴って消
費される。このようにして生ずるブレーキフルードの不
足分は、第1センターバルブ38および第2センターバ
ルブ68が開弁状態とされる毎に、すなわち、ブレーキ
ペダル12の踏み込みが解除される毎に、それぞれ第1
大気室30または第2大気室60から補充される。
【0051】リザーバタンク84には、フロントリザー
バ通路86、および、リアリザーバ通路88が連通して
いる。フロントリザーバ通路86には、フロントリザー
バカットソレノイド90(以下、SRCF90と称す)
が連通している。同様に、リアリザーバ通路88には、
リアリザーバカットソレノイド92(以下、SRCR9
2と称す)が連通している。
【0052】SRCF90には、更に、フロントポンプ
通路94が連通している。同様に、SRCR92には、
リアポンプ通路96が連通している。SRCF90は、
オフ状態とされることでフロントリザーバ通路86とフ
ロントポンプ通路94とを遮断し、かつ、オン状態とさ
れることでそれらを導通させる2位置の電磁弁である。
また、SRCR92は、オフ状態とされることでリアリ
ザーバ通路88とリアポンプ通路96とを遮断し、か
つ、オン状態とされることでそれらを導通させる2位置
の電磁弁である。
【0053】マスタシリンダ18の第1油圧室30、お
よび、第2油圧室60には、それぞれ第1液圧通路9
8、および、第2液圧通路100が連通している。第1
液圧通路98には、右前マスタカットソレノイド102
(以下、SMFR102と称す)、および、左前マスタ
カットソレノイド104(以下、SMFL104と称
す)が連通している。一方、第2液圧通路100には、
リアマスタカットソレノイド106(以下、SMR10
6と称す)が連通している。
【0054】SMFR102には、右前輪FRに対応し
て設けられた液圧通路108が連通している。同様に、
SMFL104には、左前輪FLに対応して設けられた
液圧通路110が連通している。更に、SMR106に
は、左右後輪RL,RRに対応して設けられた液圧通路
112が連通している。SMFR102、SMFL10
4およびSMR106の内部には、それぞれ定圧開放弁
114,116,118が設けられている。SMFR1
02は、オフ状態とされた場合に第1液圧通路98と液
圧通路108とを導通状態とし、かつ、オン状態とされ
た場合に定圧開放弁114を介して第1液圧通路98と
液圧通路108とを連通させる2位置の電磁弁である。
また、SMFL102は、オフ状態とされた場合に第1
液圧通路98と液圧通路110とを導通状態とし、か
つ、オン状態とされた場合に定圧開放弁116を介して
第1液圧通路98と液圧通路110とを連通させる2位
置の電磁弁である。同様に、SMR106は、オフ状態
とされた場合に第2液圧通路100と液圧通路112と
を導通状態とし、かつ、オン状態とされた場合に定圧開
放弁118を介して第2液圧通路100と液圧通路11
2とを連通させる2位置の電磁弁である。
【0055】第1液圧通路98と液圧通路108との間
には、また、第1液圧通路98側から液圧通路108側
へ向かうフルードの流れのみを許容する逆止弁120が
配設されている。同様に、第1液圧通路98と液圧通路
110との間、および、第2液圧通路100と液圧通路
112との間には、それぞれ第1液圧通路98側から液
圧通路110側へ向かう流体の流れのみを許容する逆止
弁122、および、第2液圧通路100側から液圧通路
112側へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁12
4が配設されている。
【0056】右前輪FRに対応する液圧通路108に
は、右前輪保持ソレノイド126(以下、SFRH12
6と称す)が連通している。同様に、左前輪FLに対応
する液圧通路110には左前輪保持ソレノイド128
(以下、SFLH128と称す)が、左右後輪RL,R
Rに対応する液圧通路112には右後輪保持ソレノイド
130(以下、SRRH130と称す)および左後輪保
持ソレノイド132(以下、SRLH132と称す)
が、それぞれ連通している。以下、これらのソレノイド
を総称する場合は「保持ソレノイドS**H」と称す。
【0057】SFRH126には、右前輪減圧ソレノイ
ド134(以下、SFRR134と称す)が連通してい
る。同様に、SFLH128、SRRH130およびS
RLH132には、それぞれ左前輪減圧ソレノイド13
6(以下、SFLR136と称す)、右後輪減圧ソレノ
イド138(以下、SRRR138と称す)および左後
輪減圧ソレノイド140(以下、SRLR140と称
す)が、それぞれ連通している。以下、これらのソレノ
イドを総称する場合には「減圧ソレノイドS**R」と
称す。
【0058】SFRH126には、また、右前輪FRの
ホイルシリンダ142が連通している。同様に、SFL
H128には左前輪FLのホイルシリンダ144が、S
RRH130には右後輪RRのホイルシリンダ146
が、また、SRLH132には左後輪RLのホイルシリ
ンダ148がそれぞれ連通している。更に、液圧通路1
08とホイルシリンダ142との間には、SFRH12
6をバイパスしてホイルシリンダ142側から液圧通路
108へ向かうフルードの流れを許容する逆止弁150
が配設されている。同様に、液圧通路110とホイルシ
リンダ144との間、液圧通路112とホイルシリンダ
146との間、および、液圧通路112とホイルシリン
ダ148との間には、それぞれSFLH128、SRR
H130およびSRLH132をバイパスするフルード
の流れを許容する逆止弁152,154,156が配設
されている。
【0059】SFRH126は、オフ状態とされること
により液圧通路108とホイルシリンダ142とを導通
状態とし、かつ、オン状態とされることにより液圧通路
108とホイルシリンダ142とを遮断状態とする2位
置の電磁弁である。同様に、SFLH128、SRRH
130およびSRLH132は、それぞれオン状態とさ
れることにより液圧通路120とホイルシンダ144と
を結ぶ経路、液圧通路112とホイルシンダ146とを
結ぶ経路、および、液圧通路112とホイルシンダ14
8とを結ぶ経路を遮断する2位置の電磁弁である。
【0060】左右前輪の減圧ソレノイドSFRR134
およびSFLR136には、フロント減圧通路158が
連通している。また、左右後輪の減圧ソレノイドSRR
R138およびSRLR140にはリア減圧通路160
が連通している。フロント減圧通路158およびリア減
圧通路160には、それぞれフロントリザーバ162お
よびリアリザーバ164が連通している。
【0061】また、フロント減圧通路158およびリア
減圧通路160は、それぞれ逆止弁166,168を介
してフロントポンプ170の吸入側、および、リアポン
プ172の吸入側に連通している。フロントポンプ17
0の吐出側、および、リアポンプ172の吐出側は、吐
出圧の脈動を吸収するためのダンパ174,176に連
通している。ダンパ174は、右前輪FRに対応して設
けられた右前ポンプ通路178および左前輪FLに対応
して設けられた左前ポンプ通路180に連通している。
一方、ダンパ176は、液圧通路112に連通してい
る。
【0062】右前ポンプ通路178は、右前ポンプソレ
ノイド182(以下、SPFL182と称す)を介して
液圧通路108に連通している。また、左前ポンプ通路
180は、左前ポンプソレノイド184(以下、SPF
R184と称す)を介して液圧通路110に連通してい
る。SPFL182は、オフ状態とされることにより右
前ポンプ通路178と液圧通路108とを導通状態と
し、かつ、オン状態とされることによりそれらを遮断状
態とする2位置の電磁弁である。同様に、SPFR18
4は、オフ状態とされることにより左前ポンプ通路18
0と液圧通路110とを導通状態とし、かつ、オン状態
とされることによりそれらを遮断状態とする2位置の電
磁弁である。
【0063】液圧通路108と右前ポンプ通路178と
の間には、液圧通路108側から右前ポンプ通路178
側へ向かう流体の流れのみを許容する定圧開放弁186
が配設されている。同様に、液圧通路110と左前ポン
プ通路180との間には、液圧通路110側から左前ポ
ンプ通路180側へ向かう流体の流れのみを許容する定
圧開放弁188が配設されている。
【0064】各車輪の近傍には、車輪速センサ190,
192,194,196が配設されている。ECU10
は、車輪速センサ190〜196の出力信号に基づいて
各車輪の回転速度VW を検出する。また、マスタシリン
ダ18に連通する第2液圧通路100には、液圧センサ
198が配設されている。ECU10は、液圧センサ1
98の出力信号に基づいてマスタシリンダ圧PM/C を検
出する。
【0065】次に、本実施例の制動液圧制御装置の動作
を説明する。本実施例の制動液圧制御装置は、油圧回路
内に配設された各種の電磁弁の状態を切り換えることに
より、通常ブレーキ機能、ABS機能、および、
BA機能を実現する。 通常ブレーキ機能は、図1に示す如く、制動液圧制御
装置が備える全ての電磁弁をオフ状態とすることにより
実現される。以下、図1に示す状態を通常ブレーキ状態
と称す。また、制動液圧制御装置において通常ブレーキ
機能を実現するための制御を通常ブレーキ制御と称す。
【0066】図1に示す通常ブレーキ状態において、左
右前輪FL,FRのホイルシリンダ142,144は、
共に第1液圧通路98を介してマスタシリンダ18の第
1油圧室30に連通している。また、左右後輪RL,R
Rのホイルシリンダ146,148は、第2液圧通路1
00を介してマスタシリンダ18の第2油圧室60に連
通している。この場合、ホイルシリンダ142〜148
のホイルシリンダ圧P W/C は、常にマスタシリンダ圧P
M/C と等圧に制御される。従って、図1示す状態によれ
ば、通常ブレーキ機能が実現される。
【0067】ABS機能は、図1に示す状態におい
て、フロントポンプ170およびリアポンプ172をオ
ン状態とし、かつ、保持ソレノイドS**Hおよび減圧
ソレノイドS**RをABSの要求に応じて適当に駆動
することにより実現される。以下、制動液圧制御装置に
おいてABS機能を実現するための制御をABS制御と
称す。
【0068】ECU10は、車両が制動状態にあり、か
つ、何れかの車輪について過剰なスリップ率が検出され
た場合にABS制御を開始する。ABS制御は、ブレー
キペダル12が踏み込まれている状況下、すなわち、マ
スタシリンダ18が高圧のマスタシリンダ圧PM/C を発
生している状況下で開始される。ABS制御の実行中
は、マスタシリンダ圧PM/C が、第1液圧通路98およ
び第2液圧通路100を介して、それぞれ左右前輪に対
応して設けられた液圧通路108,110、および、左
右後輪に対応して設けられた液圧通路112に導かれ
る。従って、かかる状況下で保持ソレノイドS**Hを
開弁状態とし、かつ、減圧ソレノイドS**Rを閉弁状
態とすると、各車輪のホイルシリンダ圧PW/Cを増圧す
ることができる。以下、この状態を(i) 増圧モードと称
す。
【0069】また、ABS制御の実行中に、保持ソレノ
イドS**Hおよび減圧ソレノイドS**Rの双方を閉
弁状態とすると、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を保
持することができる。以下、この状態を(ii)保持モード
と称す。更に、ABS制御の実行中に、保持ソレノイド
S**Hを閉弁状態とし、かつ、減圧ソレノイドS**
Rを開弁状態とすると、各車輪のホイルシリンダ圧P
W/C を減圧することができる。以下、この状態を(iii)
減圧モードと称す。
【0070】ECU10は、ABS制御中に、各車輪毎
に適宜上記の(i) 増圧モード、(ii)保持モード、およ
び、(iii) 減圧モードが実現されるように、各車輪のス
リップ状態に応じて保持ソレノイドS**Hおよび減圧
ソレノイドS**Rを制御する。保持ソレノイドS**
Hおよび減圧ソレノイドS**Rが上記の如く制御され
ると、全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C が対応する
車輪に過大なスリップ率を発生させることのない適当な
圧力に制御される。このように、上記の制御によれば、
制動液圧制御装置においてABS機能を実現することが
できる。
【0071】ABS制御の実行中に、各車輪で減圧モー
ドが行われる際にはホイルシリンダ142〜148内の
ブレーキフルードが、フロント減圧通路158およびリ
ア減圧通路160を通ってフロントリザーバ162およ
びリアリザーバ164に流入する。フロントリザーバ1
62およびリアリザーバ164に流入したブレーキフル
ードは、フロントポンプ170およびリアポンプ172
に汲み上げられて液圧通路108,110,112へ供
給される。
【0072】液圧通路108,110,112に供給さ
れたブレーキフルードの一部は、各車輪で増圧モードが
行われる際にホイルシリンダ142〜148に流入す
る。また、そのブレーキフルードの残部は、ブレーキフ
ルードの流出分を補うべくマスタシリンダ18に流入す
る。このため、本実施例のシステムによれば、ABS制
御の実行中にブレーキペダル12に過大なストロークが
生ずることはない。
【0073】BA機能は、制動液圧制御装置を適宜図
3乃至図5に示す状態とすることで実現される。ECU
10は、運転者によって制動力の速やかな立ち上がりを
要求するブレーキ操作すなわち緊急ブレーキ操作が実行
された後に、BA機能を実現すべく、適宜制動液圧制御
装置を図3乃至図5に示す何れかの状態に制御する。以
下、制動液圧制御装置において、BA機能を実現させる
ための制御をBA制御と称す。
【0074】図3は、BA制御の実行中に実現されるア
シスト圧増圧状態を示す。アシスト圧増圧状態は、BA
制御の実行中に各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を増圧
させる必要がある場合に実現される。本実施例のシステ
ムにおいて、BA制御中におけるアシスト圧増圧状態
は、図3に示す如く、リザーバカットソレノイドSRC
F90,SRCR92、および、マスタカットソレノイ
ドSMFR102,SMFL104,SMR106をオ
ン状態とし、かつ、フロントポンプ170およびリアポ
ンプ172をオン状態とすることで実現される。
【0075】図3に示すアシスト圧増圧状態が実現され
ると、リザーババタンク84中のブレーキフルードがフ
ロントポンプ170およびリアポンプ172に汲み上げ
られて液圧通路108,110,112に供給される。
アシスト圧増圧状態では、液圧通路108,110,1
12の内圧が、定圧開放弁114,116,118の開
弁圧を超えてマスタシリンダ圧PM/C に比して高圧とな
るまでは、液圧通路108,110,112からマスタ
シリンダ18へ向かうブレーキフルードの流れがSMF
R102,SMFL104,SMR106によって阻止
される。
【0076】このため、図3に示すアシスト圧増圧状態
が実現されると、その後、液圧通路108,110,1
12には、マスタシリンダ圧PM/C に比して高圧の液圧
が発生する。アシスト圧増圧状態では、ホイルシリンダ
142〜148と、それらに対応する液圧通路108,
110,112とが導通状態に維持されている。従っ
て、アシスト圧増圧状態が実現されると、その後、全て
の車輪のホイルシリンダ圧PW/C は、フロントポンプ1
70またはリアポンプ172を液圧源として、速やかに
マスタシリンダ圧PM/C を超える圧力に昇圧される。
【0077】ところで、図3に示すアシスト圧増圧状態
において、液圧通路108,110,112は、それぞ
れ逆止弁120,122,124を介してマスタシリン
ダ18に連通している。このため、マスタシリンダ圧P
M/C が各車輪のホイルシリンダ圧PW/C に比して大きい
場合は、アシスト圧増圧状態においても、マスタシリン
ダ18を液圧源としてホイルシリンダ圧PW/C を昇圧す
ることができる。
【0078】図4は、BA制御の実行中に実現されるア
シスト圧保持状態を示す。アシスト圧保持状態は、BA
制御の実行中に各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を保持
する必要がある場合に実現される。アシスト圧保持状態
は、図4に示す如く、マスタカットソレノイドSMFR
102,SMFL104,SMR106をオン状態とす
ることで実現される。
【0079】図4に示すアシスト圧保持状態では、フロ
ントポンプ170とリザーバタンク84、および、リア
ポンプ172とリザーバタンク84が、それぞれSRC
F90およびSRCR92によって遮断状態とされる。
このため、アシスト圧保持状態では、フロントポンプ1
70およびリアポンプ172から液圧通路108,11
0,112にフルードが吐出されることはない。また、
図4に示すアシスト圧保持状態では、液圧通路108,
110,112が、SMFR102,SMFL104,
SMR106によってマスタシリンダ18から実質的に
切り離されている。このため、図4に示すアシスト圧保
持状態によれば、全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C
を一定値に保持することができる。
【0080】図5は、BA制御の実行中に実現されるア
シスト圧減圧状態を示す。アシスト圧減圧状態は、BA
制御の実行中に各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を減圧
する必要がある場合に実現される。アシスト圧減圧状態
は、図5に示す如く、全てのソレノイドをオフ状態とす
ることで実現される。図5に示すアシスト圧減圧状態で
は、フロントポンプ170およびリアポンプ172がリ
ザーバタンク84から切り離される。このため、フロン
トポンプ170およびリアポンプ172から液圧通路1
08,100,102にフルードが吐出されることはな
い。また、アシスト圧減圧状態では、各車輪のホイルシ
リンダ142〜148とマスタシリンダ18とが導通状
態となる。このため、アシスト圧減圧状態を実現する
と、全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C を、マスタシ
リンダ圧PM/C を下限値として減圧することができる。
【0081】図6は、運転者によって緊急ブレーキ操作
が実行された場合にマスタシリンダ圧PM/C およびホイ
ルシリンダ圧PW/C に生ずる変化を示す。運転者によっ
て緊急ブレーキ操作が行われると、図6中に破線で示す
如く、マスタシリンダ圧PM/ C には急激な増圧が生ず
る。ECU10は、液圧センサ198の出力信号に基づ
いて緊急ブレーキ操作が実行されたことを検出すると、
その後、BA制御を開始する。
【0082】制動液圧制御装置においてBA制御が開始
されると、先ず (I)開始増圧モードが実行される(図6
中期間)。 (I)開始増圧モードは、所定の増圧時間T
STA(図6中期間)の間、制動液圧制御装置を上記図
3に示すアシスト圧増圧状態に維持することにより実現
される。上述の如く、アシスト圧増圧状態によれば、各
車輪のホイルシリンダ圧PW/C をフロントポンプ170
およびリアポンプ172を液圧源として昇圧することが
できる。従って、 (I)開始増圧モードによれば、BA制
御が開始された後、各車輪のホイルシリンダ圧P
W/C を、速やかにマスタシリンダ圧PM/C を超える圧力
に昇圧することができる。以下、 (I)開始増圧モードが
実行されることによりホイルシリンダ圧PW/C とマスタ
シリンダ圧PM/ C との間に発生する差圧を開始増圧量P
aと称す。
【0083】制動液圧制御装置において、 (I)開始増圧
モードが終了すると、以後、運転者のブレーキ操作に対
応して、(II)アシスト圧増圧モード、 (III)アシスト圧
減圧モード、(IV)アシスト圧保持モード、 (V)アシスト
圧緩増モード、および、(VI)アシスト圧緩減モードの何
れかが実行される。BA制御の実行中に、マスタシリン
ダ圧PM/C が急激に増圧されている場合は、運転者が更
に大きな制動力を要求していると判断できる。本実施例
の制動液圧制御装置では、この場合、(II)アシスト圧増
圧モードが実行される(図6中期間)。(II)アシスト
圧増圧モードは、上述した (I)開始増圧モードと同様
に、制動液圧制御装置をアシスト圧増圧状態とすること
で実現される。アシスト圧増圧状態によれば、各車輪の
ホイルシリンダ圧PW/C をマスタシリンダ圧PM/C を超
える領域で急激に昇圧させることができる。従って、(I
I)アシスト圧増圧モードによれば、マスタシリンダ圧P
M/C が急激に増圧される状況下で、運転者の意図を正確
にホイルシリンダ圧PW/C に反映させることができる。
【0084】BA制御の実行中に、マスタシリンダ圧P
M/C が急激に減圧されている場合は、運転者が制動力を
速やかに低下させることを意図していると判断できる。
本実施例では、この場合、 (III)アシスト圧減圧モード
が実行される(図6中期間)。 (III)アシスト圧減圧
モードは、上記図5に示すアシスト圧減圧状態を維持す
ることにより実現される。アシスト圧減圧状態によれ
ば、上述の如く、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C をマ
スタシリンダ圧PM/C に向けて速やかに減圧させること
ができる。従って、 (III)アシスト圧減圧モードによれ
ば、運転者の意図を正確にホイルシリンダ圧PW/C に反
映させることができる。
【0085】BA制御の実行中にマスタシリンダ圧P
M/C がほぼ一定値に維持されている場合は、運転者が制
動力を保持することを意図していると判断できる。本実
施例では、この場合、(IV)アシスト圧保持モードが実行
される(図6中期間および)。(IV)アシスト圧保持
モードは、上記図4に示すアシスト圧保持状態を維持す
ることにより実現される。アシスト圧保持状態によれ
ば、上述の如く、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を一
定値に維持することができる。従って、(IV)アシスト圧
保持モードによれば、運転者の意図を正確にホイルシリ
ンダ圧PW/C に反映させることができる。
【0086】BA制御の実行中にマスタシリンダ圧P
M/C が緩やかに増圧されている場合は、運転者が制動力
を緩やかに立ち上げることを意図していると判断でき
る。本実施例では、この場合、 (V)アシスト圧緩増モー
ド(図示せず)が実行される。 (V)アシスト圧緩増モー
ドは、上記図3に示すアシスト圧増圧状態と上記図4に
示すアシスト圧保持状態とを繰り返すことにより実現さ
れる。 (V)アシスト圧緩増モードによれば、各車輪のホ
イルシリンダ圧PW/C をアキュムレータ圧PACC に向け
て段階的に昇圧させることができる。従って、 (V)アシ
スト圧緩増モードによれば、マスタシリンダ圧PM/C
緩やかに増圧される状況下で、運転者の意図を正確にホ
イルシリンダ圧PW/C に反映させることができる。
【0087】BA制御の実行中にマスタシリンダ圧P
M/C が緩やかに減圧されている場合は、運転者が制動力
を緩やかに低下させることを意図していると判断でき
る。本実施例では、この場合(VI)アシスト圧緩減モード
が実行される(図6中期間)。(VI)アシスト圧緩減モ
ードは、上記図5に示すアシスト圧減圧状態と上記図4
に示すアシスト圧保持状態とを繰り返すことにより実現
される。(VI)アシスト圧緩減モードによれば、各車輪の
ホイルシリンダ圧PW/C をマスタシリンダ圧PM/Cに向
けて段階的に減圧させることができる。従って、(VI)ア
シスト圧緩減モードによれば、マスタシリンダ圧PM/C
が緩やかに減圧される状況下で、運転者の意図を正確に
ホイルシリンダ圧PW/C に反映させることができる。
【0088】上述の如く、制動液圧制御装置によれば、
運転者によって緊急ブレーキ操作が実行された後に、各
車輪のホイルシリンダ圧PW/C を、マスタシリンダ圧P
M/Cに比して、ほぼ開始増圧量Paだけ大きな圧力に制
御することができる。従って、制動液圧制御装置によれ
ば、緊急ブレーキ操作が実行された後に、通常時に比し
て大きく、かつ、運転者の意図が正確に反映された制動
力を発生させることができる。
【0089】尚、本実施例においては、制動液圧制御装
置をアシスト圧減圧状態に維持することで (III)アシス
ト圧減圧モードを実現し、また、アシスト圧減圧状態と
アシスト圧保持状態とを繰り返すことで(VI)アシスト圧
緩減モードを実現しているが、 (III)アシスト圧減圧モ
ードおよび(VI)アシスト圧緩減モードの実現方法はこれ
に限定されるものではなく、これら2つのモードは、ア
シスト圧減圧状態とアシスト圧保持状態とを異なるデュ
ーティ比で繰り返すことによっても実現することができ
る。
【0090】制動液圧制御装置が上記図1に示す通常ブ
レーキ状態とされている場合は、ブレーキフルードの授
受が、マスタシリンダ18とホイルシリンダ142〜1
48との間でのみ実行される。この場合、ブレーキ操作
の実行中にマスタシリンダ18から流出するブレーキフ
ルードの量(以下、マスタ流出量QM/C と称す)は、そ
の際にホイルシリンダ142〜148に流入するブレー
キフルードの量(以下、ホイル流入量QW/C と称す)と
ほぼ同量となる。
【0091】従って、制動液圧制御装置が通常ブレーキ
状態とされている場合は、ブレーキペダル12の踏み込
みが解除された後、マスタシリンダ18の第1ピストン
24および第2ピストン56が原位置に復帰する時期、
すなわち、第1センターバルブ38および第2センター
バルブ68が開弁状態とされる時期と同期して、ホイル
シリンダ142〜148に流出していたほぼ全てのブレ
ーキフルードが、マスタシリンダ18へ戻される。この
ため、制動液圧制御装置が通常ブレーキ状態とされてい
る場合には、第1センターバルブ38および第2センタ
ーバルブ68が開弁状態とされた後に、それらの周囲を
多量のブレーキフルードが流通することはない。
【0092】制動液圧制御装置においてBA制御が実行
される場合は、ホイルシリンダ142〜148に対し
て、フロントポンプ170およびリアポンプ172から
ブレーキフルードが供給される。以下、フロントポンプ
170およびリアポンプ172からホイルシリンダ14
2〜148に供給されるブレーキフルードの量を吸入液
量QINと称す。このため、BA制御の実行中は、吸入液
量QINだけホイル流入量QW/C がマスタ流出量QM/C に
比して多量となる。
【0093】ブレーキ操作の実行中に、マスタ流出量Q
M/C に比して多量のホイル流入量QW/C が発生すると、
ブレーキペダル12の踏み込みが解除された後、第1セ
ンターバルブ38および第2センターバルブ68が開弁
状態とされる時点で、ホイルシリンダ142〜148の
内部に吸入液量QINと等しいホイル流入量QW/C が残存
する事態が生ずる。この場合、残存するホイル流入量Q
W/C は、開弁した第1センターバルブ38および第2セ
ンターバルブ68の周囲を通ってリザーバタンク84に
戻される。
【0094】第1センターバルブ38および第2センタ
ーバルブ68の周囲をブレーキフルードが流通する際に
は、それらのシール部材40,70にめくれ等の変形が
生ずる。このため、第1センターバルブ38および第2
センターバルブ68の周囲を多量のブレーキフルードが
流通すると、シール部材40,70の劣化が促進され、
マスタシリンダ18の耐久性が損なわれることがある。
【0095】本実施例の制動液圧制御装置は、BA制御
の実行を伴うブレーキ操作が終了した後に第1センター
バルブ38および第2センターバルブ68の周囲を流通
するブレーキフルードの量を抑制して、マスタシリンダ
18の耐久性が損なわれるのを防止する点に特徴を有し
ている。以下、図7乃至図9を参照して、制動液圧制御
装置の特徴部について説明する。
【0096】図7は、上記の機能を実現すべくECU1
0が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示
す。ECU10は、図7に示すルーチンを、左右前輪F
L,FRの属する系統(以下、前輪系統と称す)と、左
右後輪RL,RRの属する系統(以下、後輪系統と称
す)とに対して、それぞれ独立に実行する。図7に示す
ルーチンは、所定時間毎に起動される定時割り込みルー
チンである。図7に示すルーチンが起動されると、先ず
ステップ200の処理が実行される。
【0097】ステップ200では、BA制御が実行中で
あるか否かが判別される。上記の判別の結果、BA制御
が実行中であると判別された場合は、次にステップ20
2の処理が実行される。ステップ202では、上述した
(I)開始増圧モードの実行が要求されているか否かが判
別される。その結果、 (I)開始増圧モードの実行が要求
されていると判別される場合は、次にステップ204の
処理が実行される。
【0098】ステップ204では、 (I)開始増圧モード
で発生させるべき開始増圧量Paの目標値が演算され
る。開始増圧量Paは、具体的には、ECU10に記憶
されているマップを参照して、液圧センサ198によっ
て検出されるマスタシリンダ圧PM/C に基づいて演算さ
れる。本ステップ204の処理が終了すると、次にステ
ップ206の処理が実行される。
【0099】図8は、上記ステップ204で開始増圧量
Paを演算する際に参照されるマップの一例を示す。図
8に示すマップにおいて、開始増圧量Paは、BA制御
の開始時におけるマスタシリンダ圧PM/C (以下、開始
時マスタ圧PSTA と称す)との関係で設定されている。
図8に示すマップによれば、開始時マスタ圧PSTA
所定値PTMAX−PAMAX以下である場合は、開始増圧量P
aが所定値PAMAXに設定される。また、開始時マスタ
圧PSTA が所定値PTMAX−PAMAXに比して大きく、か
つ、上限値PTMAXに比して小さい場合は、開始増圧量P
aが、Pa=−P STA +PTMAXで定まる値に設定され
る。そして、開始時マスタ圧PSTA が上限値PTMAX
上である場合は、開始増圧量Paが“0”に設定され
る。
【0100】本実施例のシステムにおいて、BA制御が
開始される時点では、ほぼマスタシリンダ圧PM/C と等
しいホイルシリンダ圧PW/C が発生する。従って、開始
時マスタ圧PSTA は、BA制御が開始される時点で各車
輪に発生しているホイルシリンダ圧PW/C とみなすこと
ができる。上記図8に示す上限値PTMAXは、ドライ路面
上で車輪に過剰なスリップ率を発生させることなく発生
させ得るホイルシリンダ圧PW/C の最大値である。従っ
て、制動液圧制御装置において、ホイルシリンダ圧P
W/C が上限値PTMAXを超える圧力とされると、その車輪
に必ず過剰なスリップ率が発生して、ABS制御が開始
される。従って、本実施例のシステムにおいては、緊急
ブレーキ操作が実行された場合であっても、所定値P
TMAXを超えるホイルシリンダ圧PW/C を発生させる必要
は生じない。
【0101】ECU10は、後述の処理により、上記図
8に示すマップに従って演算された開始増圧量Paだけ
ホイルシリンダ圧PW/C が増圧されるように (I)開始増
圧モードを実行する。このため、開始時マスタ圧PSTA
が所定値PTMAX−PAMAX以下である場合は、 (I)開始増
圧モードが実行されることにより、マスタシリンダ圧P
M/C に比して所定値PAMAXだけ大きく、かつ、上限値P
TMAXに比して小さなホイルシリンダ圧PW/C が発生す
る。また、開始時マスタ圧PSTA が所定値PTMAX−P
AMAXに比して大きい場合には、 (I)開始増圧モードが実
行されることにより、上限値PTMAXと等しいホイルシリ
ンダ圧PW/C が発生する。
【0102】このように、制動液圧制御装置によれば、
(I)開始増圧モードが実行されることにより、各車輪に
過大なホイルシリンダ圧PW/C が発生するのを、すなわ
ち、各車輪のホイルシリンダ142〜148に、フロン
トポンプ170またはリアポンプ172からブレーキフ
ルードが過剰に供給されるのを防止することができる。
従って、制動液圧制御装置によれば、BA制御の実行中
にフロントポンプ170またはリアポンプ172からホ
イルシリンダ142〜148に供給される吸入液量QIN
が、不必要に多量となるのを防止することができる。
【0103】ステップ206では、上記ステップ204
で演算された開始増圧量Paを実現するための開始増圧
時間TSTA が実現される。ECU10には、開始増圧量
Paと開始増圧時間TSTA との関係を定めたマップが記
憶されている。本ステップ206では、そのマップを参
照して、開始増圧時間TSTA が演算される。本ステップ
206の処理が終了すると、今回のルーチンが終了され
る。
【0104】図7に示すルーチンにおいて、上記ステッ
プ202で、開始増圧モードが要求されていないと判別
された場合は、次にステップ208の処理が実行され
る。ステップ208では、制動液圧制御装置をアシスト
圧増圧状態とすることが要求されているか否かが判別さ
れる。その結果、アシスト圧増圧状態が要求されている
と判別される場合は、フロントポンプ170からホイル
シリンダ142,144、または、リアポンプ172か
らホイルシリンダ146,148へ流入するブレーキフ
ルードの液量を抑制すべく、以後、ステップ210以降
の処理が実行される。
【0105】ステップ210では、フロントポンプ17
0からホイルシリンダ142,144へ、または、リア
ポンプ172からホイルシリンダ146,148へ供給
された吸入液量QINの推定演算が行われる。フロントポ
ンプ170およびリアポンプ172は、BA制御が開始
された後、制動液圧制御装置の前輪系統、または、後輪
系統が上記図3に示すアシスト圧増圧状態とされること
によりホイルシリンダ142〜148に対してブレーキ
フルードを供給する。
【0106】制動液圧制御装置がアシスト圧増圧状態と
されている間、フロントポンプ170およびリアポンプ
172は、ほぼ一定の吐出能力でブレーキフルードをホ
イルシリンダ142〜148に向けて供給する。このた
め、BA制御が開始された後、制動液圧制御装置がアシ
スト圧増圧状態に維持された時間をTAPPLY (以下、増
圧時間TAPPLY と称す)とし、また、フロントポンプ1
70からホイルシリンダ142,144へ、または、リ
アポンプ172からホイルシリンダ146,148へ供
給される単位時間当たりの吸入液量QINをΔQ/Δtと
すると、吸入液量QINは次式の如く表すことができる。
【0107】 QIN=(ΔQ/Δt)・TAPPLY ・・・(1) 図9は、ホイルシリンダ142,144または146,
148に供給される吸入液量QINと、ホイルシリンダ圧
W/C との関係を表すQIN−PW/C 特性を示す。吸入液
量QINが少量である場合は、ホイルシリンダ142,1
44または146,148に向けて供給されたブレーキ
フルードが、ブレーキホースの膨張等により消費され
る。このため、吸入液量QINが少ない領域では、吸入液
量QINの傾きΔQ/ΔPW/C =α1 が比較的大きな値と
なる。一方、吸入液量QINがある程度の量に達すると、
ブレーキホースの膨張等が収束状態に至る。このため、
吸入液量QINが多量となる領域では、吸入液量QINの傾
きΔQ/ΔPW/C =α2 が比較的小さな値となる。
【0108】BA制御は、ホイルシリンダ142〜14
8にある程度ブレーキフルードが流入した状態で開始さ
れる。このため、BA制御の実行中は、常に吸入液量Q
INの傾きΔQ/ΔPW/C が図9に示すα2 となる。尚、
吸入液量QINの傾きα2 は、ホイルシリンダ142,1
44または146,148に対して一定流量のブレーキ
フルードを供給しつつ、それらのホイルシリンダ圧P
W/C に生ずる変化を測定することで実測が可能である。
【0109】制動液圧制御装置がアシスト圧増圧状態と
されると、その後、左右前輪FL,FRのホイルシリン
ダ圧PW/C 、および、左右後輪RL,RRのホイルシリ
ンダ圧PW/C には、それぞれフロントポンプ170また
はリアポンプ172の能力に応じた変化が生ずる。この
際、ホイルシリンダ圧PW/C に発生する単位時間当たり
の変化量ΔPW/C /Δtは、制動液圧制御装置をアシス
ト圧増圧状態とした後に、ホイルシリンダ圧PW/C に生
ずる変化量を経時的に測定することで実測が可能であ
る。
【0110】上記(1)式に用いられる単位時間当たり
の吸入液量ΔQ/Δtは、上述した吸入液量QINの傾き
ΔQ/ΔPW/C =α2 と、単位時間当たりのホイルシリ
ンダ圧PW/C の変化量ΔPW/C /Δtとを乗算すること
で求めることができる。ECU10には、ΔQ/ΔP
W/C =α2 の実測値と、ΔPW/C /Δtの実測値とを乗
算して求めたΔQ/Δtとが記憶されている。上記ステ
ップ210では、そのΔQ/Δtと増圧時間TAPPLY
を乗算することで吸入液量QINが演算される。上記ステ
ップ210の処理が終了すると、次にステップ212の
処理が実行される。
【0111】ステップ212では、吸入液量QINが所定
量TH1 に比して少量であるか否かが判別される。QIN
<TH1 が成立する場合は、フロントポンプ170から
ホイルシリンダ142,144へ、または、リアポンプ
172からホイルシリンダ146,148へ供給された
吸入液量QINが、マスタシリンダ18の耐久性を確保す
るうえで問題となる量には達していないと判断される。
この場合、吸入液量QINの更なる増量を許可すべく、次
にステップ214の処理が実行される。
【0112】ステップ214では、SRCF90または
SRCR92のうち(以下、これらを総称する場合に
は、リザーバカットソレノイドSRC*と称す)、本ル
ーチンの制御対象とされている系統に属するものの開弁
を許可するための処理が実行される。本ステップ214
の処理が実行されると、以後、本ルーチンの制御対象と
されている系統について、上記図3に示すアシスト圧増
圧状態を実現することが可能となる。本ステップ214
の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
【0113】上記ステップ212で、QIN<TH1 が不
成立であると判別された場合は、ホイルシリンダ14
2,144または146,148に流入した吸入液量Q
INが、マスタシリンダ18の耐久性を確保するうえで問
題となる液量に達していると判断される。この場合、吸
入液量QINの更なる増量を禁止すべく、次にステップ2
16の処理が実行される。
【0114】ステップ216では、リザーバカットソレ
ノイドSRC*のうち、本ルーチンの制御対象とされて
いる系統に属するものの開弁を禁止するための処理が実
行される。本ステップ216の処理が実行されると、以
後、BA制御によって制動液圧制御装置をアシスト圧増
圧状態とすることが要求されても、本ルーチンの制御対
象とされている系統においては、吸入液量QINを増量さ
せることができなくなる。本ステップ216の処理が終
了すると、今回のルーチンが終了される。
【0115】制動液圧制御装置において、リザーバカッ
トソレノイドSRC*には、BA制御の実行中、上記図
3に示すアシスト圧増圧状態が要求される場合にのみ、
開弁状態となることが要求される。従って、BA制御が
実行されていない場合、および、アシスト圧増圧状態が
要求されていない場合は、リザーバカットソレノイドS
RC*を閉弁させる必要がある。このため、本ルーチン
中、上記ステップ200でBA制御が実行中でないと判
別された場合、および、上記ステップ208でアシスト
圧増圧状態が要求されていないと判別された場合は、以
後、上記ステップ216の処理が実行された後、今回の
ルーチンが終了される。
【0116】上述の如く、本実施例の制動液圧制御装置
によれば、 (I)開始増圧モードによって発生する吸入液
量QINを必要最小限の液量に抑制することができると共
に、BA制御の実行中に、所定量TH1 を超える吸入液
量QINが生ずるのを防止することができる。このため、
本実施例の制動液圧制御装置によれば、BA制御が終了
された後に第1センターバルブ38および第2センター
バルブ68の周辺を流通するブレーキフルードを少量に
抑制して、マスタシリンダ18に優れた耐久性を付与す
ることができる。
【0117】尚、上記の実施例においては、フロントポ
ンプ170およびリアポンプ172が前記請求項1記載
の「高圧源」に相当していると共に、ECU10が、上
記ステップ210の処理を実行することにより前記請求
項1記載の「吸入液量検出手段」が、上記ステップ21
2および216の処理を実行することにより前記請求項
1記載の「吸入液量ガード手段」が、それぞれ実現され
ている。
【0118】次に、図10を参照して、本発明の第2実
施例に対応する制動液圧制御装置について説明する。本
実施例の制動液圧制御装置は、上記図1に示すシステム
構成において、ECU10に、上記図7に示すルーチン
に代えて、図10に示す制御ルーチンを実行させること
により実現される。上述した第1実施例の制動液圧制御
装置は、BA制御の実行中にフロントポンプ170およ
びリアポンプ172からホイルシリンダ142〜148
に供給されるブレーキフルードの液量を抑制することで
マスタシリンダ18の耐久性を確保している。これに対
して、本実施例の制動液圧制御装置は、BA制御の実行
中にフロントポンプ170およびリアポンプ172から
ホイルシリンダ142〜148に供給されたブレーキフ
ルードを、マスタシリンダ18を通過させることなく直
接リザーバタンク84に戻すことによりマスタシリンダ
18の耐久性を確保する点に特徴を有している。
【0119】図10は、上記の機能を実現すべく、EC
U10が実行する制御ルーチンの一例のフローチャート
を示す。図10に示すルーチンは、処理サイクルが終了
する毎に繰り返し起動されるルーチンである。ECU1
0は、図10に示すルーチンを、前輪系統と後輪系統都
について独立に実行する。図10に示すルーチンが起動
されると、先ずステップ220の処理が実行される。
【0120】ステップ220では、BA制御が実行中で
あるか否かが判別される。その結果、BA制御が実行中
でないと判別された場合は、以後、何ら処理が進められ
ることなく今回のルーチンが終了される。一方、BA制
御が実行中であると判別された場合は、次にステップ2
22の処理が実行される。ステップ222では、アシス
ト圧増圧状態が要求されているか否かが判別される。そ
の結果、アシスト圧増圧状態が要求されていると判別さ
れる場合は、次にステップ224の処理が実行される。
【0121】ステップ224では、制御対象とされてい
る系統について、上記図3に示すアシスト圧増圧状態を
実現するための処理が実行される。具体的には、前輪系
統が制御対象とされている場合は、フロントポンプ17
0をオン状態とし、SRCF90をオン状態(開弁状
態)とし、かつ、SMFL102およびSMFR104
をオン状態(閉弁状態)とする処理が実行される。ま
た、後輪系統が制御対象とされている場合は、リアポン
プ172をオン状態とし、SRCR92をオン状態(開
弁状態)とし、かつ、SMR106をオン状態(閉弁状
態)とする処理が実行される。本ステップ224の処理
が実行されると、以後、フロントポンプ170からホイ
ルシリンダ142,144へ、または、リアポンプ17
2からホイルシリンダ146,148へ、ブレーキフル
ードが供給される。本ステップ224の処理が終了する
と、次にステップ226の処理が実行される。
【0122】ステップ226では、フロントポンプ17
0からホイルシリンダ142,144に供給された吸入
液量QIN、または、リアポンプ172からホイルシリン
ダ146,148に供給された吸入液量QINの推定演算
が行われる。本ステップ226では、次式に従って吸入
液量QINが演算される。 QIN=K1・TAPPLY −K2・TRELEASE ・・・(2) 上記(2)式中TAPPLY は、本ルーチンの制御対象であ
る系統が上記図3に示すアシスト圧増圧状態に維持され
た時間の累積時間である。また、上記(2)式中T
RELEASE は、本ルーチンの制御対象である系統が後述す
るリザーバ戻し状態に維持された時間の累積値である。
【0123】上記(2)式中K1は、制動液圧制御装置
が上記図3に示すアシスト圧増圧状態とされた際に、フ
ロントポンプ170からホイルシリンダ142,144
へ、または、リアポンプ172からホイルシリンダ14
6,148へ供給されるブレーキフルードの単位時間当
たりの液量ΔQ/Δtである。K1は、上述した第1実
施例の場合と同様に、ΔQ/Δt=α2 の実測値と、Δ
P/Δtの実測値とを乗算することで算出される。
【0124】上記2式中K2は、制動液圧制御装置が後
述するリザーバ戻し状態とされた場合に、ホイルシリン
ダ142,144または146,148から流出するブ
レーキフルードの単位時間当たりの液量ΔQ/Δtであ
る。リザーバ戻し状態は、ホイルシリンダ142,14
4または146,148を、リザーバタンク84と導通
させる状態である。この場合、ホイルシリンダ142,
144からリザーバタンク84へ、または、ホイルシリ
ンダ146,148からリザーバタンク84へ流出する
単位時間当たりの液量ΔQ/Δtは、ホイルシリンダ圧
W/C の関数として求めることができる。
【0125】制動液圧制御装置は、BA制御が開始され
るまではマスタシリンダ18を液圧源としてホイルシリ
ンダ圧PW/C の増圧を図る。また、BA制御が開始され
た後は、フロントポンプ170およびリアポンプ172
を液圧源としてホイルシリンダ圧PW/C の増圧を図る。
従って、BA制御中に於けるホイルシリンダ圧P
W/Cは、フロントポンプ170およびリアポンプ172
が液圧源とされた後にホイルシリンダ圧PW/C に生じた
増圧分ΔPW/C を開始時マスタ圧PSTA に加算すること
で求めることができる。
【0126】フロントポンプ170およびリアポンプ1
72が液圧源とされた後に発生する増圧分ΔPW/C は、
フロントポンプ170からホイルシリンダ142,14
4に、または、リアポンプ172からホイルシリンダ1
46,148に供給された吸入液量QINの関数f(QI
N)として求めることができる。また、関数f(QIN)
は、比例定数KPを用いて、f(QIN)=KP・QINと
近似することができる。従って、BA制御中におけるホ
イルシリンダ圧PW/C は、開始時マスタ圧PSTAと、吸
入液量QINと、比例定数KPとを用いて次式の如く表す
ことができる。
【0127】 PW/C =PSTA +KP・QIN ・・・(3) 制動液圧制御装置がリザーバ戻し状態とされた場合に、
単位時間の間にホイルシリンダ142,144または1
46,148から流出するブレーキフルードの液量ΔQ
/Δt、すなわち、上記(2)式におけるK2は、ホイ
ルシリンダ圧P W/C の関数として、比例定数K3 を用い
て次式の如く近似することができる。
【0128】 K2=K3・PW/C ・・・(4) 上記(3)式および(4)式の関係を、上記(2)式に
代入すると、フロントポンプ170からホイルシリンダ
142,144へ、または、リアポンプ172からホイ
ルシリンダ146,148へ供給されている吸入液量Q
INは、次式の如く表すことができる。
【0129】 QIN=K1・TAPPLY −K3・(PSTA +KP・QIN)・TRELEASE ・・・(5) ECU10は、BA制御の実行中、常に制動液圧制御装
置の状態に応じてTAP PLY およびTRELEASE を更新して
いる。また、ECU10には、上記(5)式中、K1お
よびK3が記憶されている。上記ステップ226では、
それらの値、および、前回の処理サイクル時に算出され
た吸入液量QINを、上記(5)式の右辺に代入すること
で、吸入液量QINの推定演算を行う。上記ステップ22
6の処理が終了すると、今回のルーチンが終了される。
【0130】本ルーチン中、上記ステップ222でアシ
スト圧増圧状態が要求されていないと判別された場合
は、次にステップ228の処理が実行される。ステップ
228では、アシスト圧保持状態が要求されているか否
かが判別される。その結果、アシスト圧保持状態が要求
されていると判別される場合は、次にステップ230の
処理が実行される。
【0131】ステップ230では、制御対象とされてい
る系統について、上記図4に示すアシスト圧保持状態を
実現するための処理が実行される。具体的には、前輪系
統が制御対象とされている場合は、SRCF90をオフ
状態(閉弁状態)とし、フロントポンプ170をオン状
態とし、かつ、SMFL102およびSMFR104を
オン状態(閉弁状態)とする処理が実行される。また、
後輪系統が制御対象とされている場合は、リアポンプ1
72をオン状態とし、かつ、SMR106をオン状態
(閉弁状態)とする処理が実行される。
【0132】上記ステップ230の処理が実行される
と、以後、フロントポンプ170またはリアポンプ17
2へのブレーキフルードの供給が停止されると共に、ホ
イルシリンダ142,144または146,148がマ
スタシリンダ18から切り離される。このため、本ステ
ップ230の処理が実行されると、以後、ホイルシリン
ダ圧PW/C が保持される。本ステップ230の処理が終
了すると、今回のルーチンが終了される。
【0133】本ルーチン中、上記ステップ228でアシ
スト圧保持状態が要求されていないと判別された場合
は、次にステップ232の処理が実行される。ステップ
232では、アシスト圧減圧状態が要求されているか否
かが判別される。その結果、アシスト圧減圧状態が要求
されていると判別される場合は、次にステップ234の
処理が実行される。
【0134】ステップ234では、上記ステップ226
で演算された吸入液量QINが所定量TH2 に比して多量
であるか否かが判別される。その結果、QIN>TH2
成立すると判別される場合は、吸入液量QINが、マスタ
シリンダ18の耐久性を確保するうえで問題となる量に
達していると判断される。この場合、ホイルシリンダ1
42,144または146,148からリザーバタンク
84へ直接ブレーキフルードを流出させることによりホ
イルシリンダ圧PW/C の減圧を図るべく、次にステップ
236の処理が実行される。
【0135】ステップ236では、制御対象とされてい
る系統について、制動液圧制御装置をリザーバ戻し状態
とする処理が実行される。前輪系統のリザーバ戻し状態
は、上記図5に示すアシスト圧減圧状態において、フロ
ントポンプ170をオフ状態とし、リザーバカットソレ
ノイドSRCF90をオン状態(開弁状態)とし、か
つ、減圧ソレノイドSFRR134,SFLR136を
オン状態(開弁状態)とすることで実現される。また、
後輪系統のリザーバ戻し状態は、上記図5に示すアシス
ト圧減圧状態において、リアポンプ172をオフ状態と
し、リザーバカットソレノイドSRCR92をオン状態
(開弁状態)とし、かつ、減圧ソレノイドSRRR13
8,SRLR140をオン状態(開弁状態)とすること
で実現される。
【0136】制動液圧制御装置の前輪系統がリザーバ戻
し状態とされると、ホイルシリンダ142,144に流
入しているブレーキフルードが、フロント減圧通路15
8およびフロントリザーバ通路86を通って、直接リザ
ーバタンク84に開放される。また、制動液圧制御装置
の後輪系統がリザーバ戻し状態とされると、ホイルシリ
ンダ146,148に流入しているブレーキフルード
が、リア減圧通路160およびリアリザーバ通路96を
通って、直接リザーバタンク84に開放される。
【0137】従って、制動液圧制御装置をリザーバ戻し
状態とすると、フロントポンプ170からホイルシリン
ダ142,144へ、または、リアポンプ172からホ
イルシリンダ146,148へ供給されている吸入液量
QINを減少させることができる。上記ステップ236の
処理が終了すると、次に上記ステップ226の処理が実
行された後、今回のルーチンが終了される。尚、今回の
処理サイクルにおいて、ステップ226では、制動液圧
制御装置がリザーバ戻し状態とされることにより減少し
た後の吸入液量QINが演算される。
【0138】本ルーチン中、上記ステップ234でQIN
>TH2 が不成立であると判別された場合は、次にステ
ップ238の処理が実行される。ステップ238では、
制御対象とされている系統について、制動液圧制御装置
を上記図5に示すアシスト圧減圧状態とする処理が実行
される。具体的には、前輪系統が制御対象とされている
場合は、SMFR102,SMFL104およびSRC
F90をオフ状態とし、かつ、フロントポンプ170を
オン状態とする処理が、また、後輪系統が制御対象とさ
れている場合は、SRCR92およびSMR106をオ
フ状態とし、かつ、リアポンプ172をオン状態とする
処理が実行される。本ステップ238の処理が実行され
ると、ホイルシリンダ142,144からマスタシリン
ダ18に向けて、または、ホイルシリンダ146,14
8からマスタシリンダ18に向けてブレーキフルードが
流出し、ホイルシリンダ圧P W/C の減圧が図られる。本
ステップ238の処理が終了すると、今回のルーチンが
終了される。
【0139】本ルーチン中、上記ステップ232でアシ
スト圧減圧状態が要求されていないと判別された場合
は、次にステップ240の処理が実行される。ステップ
240では、BA制御の終了が要求されているか否か、
すなわち、BA制御の終了条件が成立しているか否かが
判別される。本ステップ232では、例えば、ブレーキ
ペダル12の踏み込みが解除された場合、或いは、マス
タシリンダ圧PM/C が大きく減圧された場合等にBA制
御の終了条件が成立すると判別される。本ステップ24
0で、BA制御の終了条件が成立していないと判別され
た場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回の
ルーチンが終了される。一方、BA制御の終了条件が成
立していると判別される場合は、次にステップ242の
処理が実行される。
【0140】ステップ242では、上記ステップ226
の処理によって演算されている吸入液量QINが、所定量
TH2 に比して多量であるか否かが判別される。QIN>
TH 2 が成立する場合は、吸入液量QINの全てをマスタ
シリンダ18に戻すと、第1センターバルブ38および
第2センターバルブ68が開弁した後に、それらの周囲
を多量のブレーキフルードが流通すると判断することが
できる。従って、この場合は、ホイルシリンダ圧PW/C
を減圧するにあたり、吸入液量QINの全てをマスタシリ
ンダ18に戻すべきではない。本ステップ242では、
QIN>TH2 が成立する場合、次にステップ244の処
理が実行される。
【0141】ステップ244では、リザーバ戻し・マス
タ戻し併用終了モードによって、ホイルシリンダ圧P
W/C の減圧を図る処理が実行される。リザーバ戻し・マ
スタ戻し併用終了モードは、所定時間T(QIN)だけ制
動液圧制御装置をリザーバ戻し状態に維持した後、ホイ
ルシリンダ圧PW/C が十分に低圧となるまで制動液圧制
御装置を上記図5に示すアシスト圧減圧状態とすること
で実現される。
【0142】上述した所定時間T(QIN)は、吸入液量
QINに基づいて、吸入液量QINのうち所定割合のブレー
キフルードがホイルシリンダ142,144または14
6,148から流出するのに要する時間に設定される。
従って、上記ステップ244の処理によれば、BA制御
の終了条件が成立した後、ホイルシリンダ142〜14
8に流入している吸入液量QINの一部をリザーバタンク
84に直接戻した後、適量のブレーキフルードだけをマ
スタシリンダ18に戻すことができる。上記ステップ2
44の処理が終了すると、今回のルーチンが終了され
る。
【0143】本ルーチン中上記ステップ242でQIN>
TH2 が成立しないと判別された場合は、吸入液量QIN
の全てをマスタシリンダ18に戻すことによりホイルシ
リンダ圧PW/C の減圧を図ることによっても、マスタシ
リンダ18の耐久性が損なわれることがないと判断でき
る。この場合、ステップ242に次いで、ステップ24
6の処理が実行される。
【0144】ステップ246では、マスタ戻し終了モー
ドによってホイルシリンダ圧PW/Cの減圧を図る処理が
実行される。マスタ戻し終了モードは、ホイルシリンダ
圧P W/C が十分に低圧となるまで、制動液圧制御装置を
上記図5に示すアシスト圧減圧状態に維持することで実
現される。上記の処理によれば、BA制御の終了条件が
成立した後、マスタシリンダ18にブレーキフルードを
過剰に流入させることなく、BA制御を終了させること
ができる。本ステップ246の処理が終了すると、今回
のルーチンが終了される。
【0145】上述の如く、本実施例の制動液圧制御装置
によれば、BA制御によってアシスト圧減圧状態が要求
される場合、および、BA制御の終了条件が成立した後
に、ホイルシリンダ142〜148からマスタシリンダ
18に、ブレーキフルードが過剰に流入するのを防止す
ることができる。従って、本実施例の制動液圧制御装置
によれば、BA制御が実行されることに起因してマスタ
シリンダ18の耐久性が損なわれるのを確実に防止する
ことができる。
【0146】尚、上記の実施例においては、フロントポ
ンプ170およびリアポンプ172が前記請求項2記載
の「高圧源」に相当していると共に、ECU10が、上
記ステップ226の処理を実行することにより前記請求
項2記載の「吸入液量検出手段」が、上記ステップ23
4〜238および240〜246の処理を実行すること
により前記請求項2記載の「リザーバリターン手段」
が、それぞれ実現されている。
【0147】次に、図11乃至図14を参照して、本実
施例の第3実施例および第4実施例について説明する。
図11は、本発明の第3実施例および第4実施例で用い
られるポンプアップ式制動液圧制御装置(以下、単に制
動液圧制御装置と称す)のシステム構成図を示す。尚、
図11において、上記図1に示す構成部分と同一の部分
については、同一の符号を付してその説明を省略または
簡略する。
【0148】図11に示す制動液圧制御装置は、フロン
トエンジン・フロントドライブ式車両(FF車両)用の
制動液圧制御装置として好適な装置である。制動液圧制
御装置はECU10により制御されている。本発明の第
3実施例は、ECU10に上記図7に示す制御ルーチン
を実行させることにより実現される。また、本発明の第
4実施例は、ECU10に、上記図10に示す制御ルー
チンを実行させることにより実現される。
【0149】図11に示す制動液圧制御装置は、ブレー
キペダル12を備えている。ブレーキペダル12の近傍
には、ブレーキスイッチ14が配設されている。ECU
10は、ブレーキスイッチ14の出力信号に基づいてブ
レーキペダル12が踏み込まれているか否かを判別す
る。ブレーキペダル12は、バキュームブースタ16に
連結されている。また、バキュームブースタ16は、マ
スタシリンダ18に固定されている。マスタシリンダ1
8の内部には第1油圧室30および第2油圧室60が形
成されている。第1油圧室30および第2油圧室60の
内部には、ブレーキ踏力Fと、バキュームブースタ16
が発生するアシスト力Faとの合力に応じたマスタシリ
ンダ圧PM/Cが発生する。
【0150】マスタシリンダ18の上部にはリザーバタ
ンク84が配設されている。リザーバタンク84には、
第1リザーバ通路300、および、第2リザーバ通路3
02が連通している。第1リザーバ通路300には、第
1リザーバカットソレノイド304(以下、SRC-1
04と称す)が連通している。同様に、第2リザーバ通
路302には、第2リザーバカットソレノイド306
(以下、SRC-2306と称す)が連通している。
【0151】SRC-1304には、更に、第1ポンプ通
路308が連通している。同様に、SRC-2306に
は、第2ポンプ通路310が連通している。SRC-1
04は、オフ状態とされることで第1リザーバ通路30
0と第1ポンプ通路308とを遮断し、かつ、オン状態
とされることでそれらを導通させる2位置の電磁弁であ
る。また、SRC-2306は、オフ状態とされることで
第2リザーバ通路302と第2ポンプ通路310とを遮
断し、かつ、オン状態とされることでそれらを導通させ
る2位置の電磁弁である。
【0152】マスタシリンダ18の第1油圧室30、お
よび、第2油圧室60には、それぞれ第1液圧通路9
8、および、第2液圧通路100が連通している。第1
液圧通路98には、第1マスタカットソレノイド312
(以下、SMC-1312と称す)が連通している。一
方、第2液圧通路100には、第2マスタカットソレノ
イド314(以下、SMC-2314と称す)が連通して
いる。
【0153】SMC-1312には、第1ポンプ圧通路3
16と左後輪RLに対応して設けられた液圧通路318
とが連通している。第1ポンプ圧通路316には、第1
ポンプソレノイド320(以下、SMV-1320と称
す)が連通している。SMV-1320には、更に、右前
輪FRに対応して設けられた液圧通路322が連通して
いる。SMV-1320の内部には定圧開放弁324が設
けられている。SMV-1320は、オフ状態とされた場
合に第1ポンプ圧通路316と液圧通路322とを導通
状態とし、かつ、オン状態とされた場合に定圧開放弁3
24を介してそれらを連通させる2位置の電磁弁であ
る。第1ポンプ圧通路316と液圧通路322との間に
は、また、第1ポンプ圧通路316側から液圧通路32
2側へ向かうフルードの流れのみを許容する逆止弁32
6が配設されている。
【0154】SMC-2314には、第2ポンプ圧通路3
28と右後輪RRに対応して設けられた液圧通路330
とが連通している。第2ポンプ圧通路328には、第2
ポンプソレノイド332(以下、SMV-2332と称
す)が連通している。SMV-2332には、更に、左前
輪FLに対応して設けられた液圧通路334が連通して
いる。SMV-2332の内部には定圧開放弁336が設
けられている。SMV-2332は、オフ状態とされた場
合に第2ポンプ圧通路328と液圧通路334とを導通
状態とし、かつ、オン状態とされた場合に定圧開放弁3
36を介してそれらを連通させる2位置の電磁弁であ
る。第1ポンプ圧通路328と液圧通路334との間に
は、また、第2ポンプ圧通路328側から液圧通路33
4側へ向かうフルードの流れのみを許容する逆止弁33
8が配設されている。
【0155】SMC-1312およびSMC-2314の内
部には、それぞれ定圧開放弁340,342が設けられ
ている。SMC-1312は、オフ状態とされた場合に第
1液圧通路98と液圧通路318(および第1ポンプ圧
通路316)とを導通状態とし、かつ、オン状態とされ
た場合に定圧開放弁340を介してそれらを連通させる
2位置の電磁弁である。また、SMC-2314は、オフ
状態とされた場合に第2液圧通路100と液圧通路33
0(および第2ポンプ圧通路328)とを導通状態と
し、かつ、オン状態とされた場合に定圧開放弁342を
介してそれらを連通させる2位置の電磁弁である。
【0156】第1液圧通路98と液圧通路318との間
には、第1液圧通路98側から液圧通路318側へ向か
うフルードの流れのみを許容する逆止弁344が配設さ
れている。同様に、第2液圧通路100と液圧通路33
0との間には、第2液圧通路100側から液圧通路33
0側へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁346が
配設されている。
【0157】左右前輪および左右後輪に対応して設けら
れた4本の液圧通路318,322,330,334に
は、第1実施例および第2実施例の場合と同様に保持ソ
レノイドS**H、減圧ソレノイドS**R、ホイルシ
リンダ142〜148および逆止弁150〜156が連
通している。また、右前輪FRおよび左後輪RLの減圧
ソレノイドSFRR134およびSRLR140には、
第1減圧通路348が連通している。更に、左前輪FL
および右後輪RRの減圧ソレノイドSFLR136およ
びSRRR138には、第2減圧通路350が連通して
いる。
【0158】第1減圧通路348および第2減圧通路3
50には、それぞれ第1リザーバ352および第2リザ
ーバ354が連通している。また、第1リザーバ352
および第2リザーバ354は、それぞれ逆止弁356,
358を介して第1ポンプ360の吸入側、および、第
2ポンプ362の吸入側に連通している。第1ポンプ3
60の吐出側、および、第2ポンプ362の吐出側は、
吐出圧の脈動を吸収するためのダンパ364,366に
連通している。ダンパ364,366は、それぞれ液圧
通路322,334に連通している。
【0159】各車輪の近傍には、車輪速センサ190,
192,194,196が配設されている。ECU10
は、車輪速センサ190〜196の出力信号に基づいて
各車輪の回転速度VW を検出する。また、マスタシリン
ダ18に連通する第2液圧通路100には、液圧センサ
198が配設されている。ECU10は、液圧センサ1
98の出力信号に基づいてマスタシリンダ圧PM/C を検
出する。
【0160】次に、図11に示す制動液圧制御装置の動
作を説明する。図11に示す制動液圧制御装置は、油圧
回路内に配設された各種の電磁弁の状態を切り換えるこ
とにより、通常ブレーキ機能、ABS機能、およ
び、BA機能を実現する。 通常ブレーキ機能は、図11に示す如く、制動液圧制
御装置が備える全ての電磁弁をオフ状態とすることによ
り実現される。以下、図11に示す状態を通常ブレーキ
状態と称す。また、制動液圧制御装置において通常ブレ
ーキ機能を実現するための制御を通常ブレーキ制御と称
す。
【0161】図11に示す通常ブレーキ状態において、
右前輪FRのホイルシリンダ142および左後輪RLの
ホイルシリンダ148は、共に第1液圧通路98を介し
てマスタシリンダ18の第1油圧室30に連通してい
る。また、左前輪FLのホイルシリンダ144および右
後輪RRのホイルシリンダ146は、共に第2液圧通路
100を介してマスタシリンダ18の第2油圧室60に
連通している。この場合、ホイルシリンダ142〜14
8のホイルシリンダ圧PW/C は、常にマスタシリンダ圧
M/C と等圧に制御される。従って、図11示す状態に
よれば、通常ブレーキ機能が実現される。
【0162】ABS機能は、図11に示す状態におい
て、第1ポンプ360および第2ポンプ362をオン状
態とし、かつ、保持ソレノイドS**Hおよび減圧ソレ
ノイドS**RをABSの要求に応じて適当に駆動する
ことにより実現される。以下、制動液圧制御装置におい
てABS機能を実現するための制御をABS制御と称
す。
【0163】ABS制御の実行中は、左右前輪および左
右後輪に対応して設けられた4本の液圧通路318,3
22,328,334の全てに高圧のマスタシリンダ圧
M/ C が導かれている。従って、かかる状況下で保持ソ
レノイドS**Hを開弁状態とし、かつ、減圧ソレノイ
ドS**Rを閉弁状態とすると、各車輪のホイルシリン
ダ圧PW/C を増圧することができる。以下、この状態を
(i) 増圧モードと称す。
【0164】また、ABS制御の実行中に、保持ソレノ
イドS**Hおよび減圧ソレノイドS**Rの双方を閉
弁状態とすると、各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を保
持することができる。以下、この状態を(ii)保持モード
と称す。更に、ABS制御の実行中に、保持ソレノイド
S**Hを閉弁状態とし、かつ、減圧ソレノイドS**
Rを開弁状態とすると、各車輪のホイルシリンダ圧P
W/C を減圧することができる。以下、この状態を(iii)
減圧モードと称す。
【0165】ECU10は、ABS制御の実行中に、各
車輪毎に適宜上記の(i) 増圧モード、(ii)保持モード、
および、(iii) 減圧モードが実現されるように、各車輪
のスリップ状態に応じて保持ソレノイドS**Hおよび
減圧ソレノイドS**Rを制御する。保持ソレノイドS
**Hおよび減圧ソレノイドS**Rが上記の如く制御
されると、全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C が対応
する車輪に過大なスリップ率を発生させることのない適
当な圧力に制御される。このように、上記の制御によれ
ば、制動液圧制御装置においてABS機能を実現するこ
とができる。
【0166】ABS制御の実行中に、各車輪で減圧モー
ドが行われる際にはホイルシリンダ142〜148内の
ブレーキフルードが、第1減圧通路348および第2減
圧通路350を通って第1リザーバ352および第2リ
ザーバ354に流入する。第1リザーバ352および第
2リザーバ354に流入したブレーキフルードは、第1
ポンプ360および第2ポンプ362に汲み上げられて
液圧通路316,322,328,334へ供給され
る。
【0167】液圧通路316,318,322,334
に供給されたブレーキフルードの一部は、各車輪で (i)
増圧モードが行われる際にホイルシリンダ142〜14
8に流入する。また、そのブレーキフルードの残部は、
ブレーキフルードの流出分を補うべくマスタシリンダ1
8に流入する。このため、本実施例のシステムによれ
ば、ABS制御の実行中にブレーキペダル12に過大な
ストロークが生ずることはない。
【0168】BA機能は、上記第1実施例の場合と同
様に、運転者によって緊急ブレーキ操作が実行された後
に、適宜 (I)開始増圧モード、(II)アシスト圧増圧モー
ド、(III)アシスト圧減圧モード、(IV)アシスト圧保持
モード、 (V)アシスト圧緩増モード、および、(VI)アシ
スト圧緩減モードが実現されるようにECU10が制動
液圧制御装置を制御することにより実現される。以下、
制動液圧制御装置において、BA機能を実現させるため
の制御をBA制御と称す。
【0169】図12は、BA制御の実行中に実現される
アシスト圧増圧状態を示す。アシスト圧増圧状態は、B
A制御の実行中に各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を増
圧させる必要がある場合に、すなわち、BA制御の実行
中に (I)開始増圧モード、(II)アシスト圧増圧モード、
および、 (III)アシスト圧緩増モードの実行が要求され
た場合に実現される。
【0170】本実施例のシステムにおいて、BA制御中
におけるアシスト圧増圧状態は、図12に示す如く、リ
ザーバカットソレノイドSRC-1304,SRC-230
6、および、マスタカットソレノイドSMC-1312,
SMC-2314をオン状態とし、かつ、第1ポンプ36
0および第2ポンプ362をオン状態とすることで実現
される。
【0171】BA制御の実行中にアシスト圧増圧状態が
実現されると、リザーバタンク84に貯留されているブ
レーキフルードが第1ポンプ360および第2ポンプ3
62に汲み上げられて液圧通路316,322,32
8,334に供給される。アシスト圧増圧状態では、液
圧通路322と右前輪FRのホイルシリンダ142およ
び左後輪RLのホイルシリンダ148が導通状態に維持
される。また、アシスト圧増圧状態では、液圧通路32
2側の圧力が定圧開放弁340の開弁圧を超えてマスタ
シリンダ圧PM/C に比して高圧となるまでは、液圧通路
322側からマスタシリンダ18側へ向かうフルードの
流れがSMC-1312によって阻止される。
【0172】同様に、アシスト圧増圧状態では、液圧通
路334と左前輪FLのホイルシリンダ144および右
後輪RRのホイルシリンダ146とが導通状態に維持さ
れると共に、液圧通路334側の内圧が定圧開放弁34
2の開弁圧を超えてマスタシリンダ圧PM/C に比して高
圧となるまでは、液圧通路334側からマスタシリンダ
18側へ向かうフルードの流れがSMC-2314によっ
て阻止される。
【0173】このため、図12に示すアシスト圧増圧状
態が実現されると、その後、各車輪のホイルシリンダ圧
W/C は、第1ポンプ360または第2ポンプ362を
液圧源として、速やかにマスタシリンダ圧PM/C を超え
る圧力に昇圧される。このように、図12に示すアシス
ト圧増圧状態によれば、制動力を速やかに立ち上げるこ
とができる。
【0174】ところで、図12に示すアシスト圧増圧状
態において、液圧通路318,322,328,330
は、逆止弁344,346を介してマスタシリンダ18
に連通している。このため、マスタシリンダ圧PM/C
各車輪のホイルシリンダ圧P W/C に比して大きい場合
は、BA作動状態においてもマスタシリンダ18を液圧
源としてホイルシリンダ圧PW/C を昇圧することができ
る。
【0175】図13は、BA制御の実行中に実現される
アシスト圧保持状態を示す。アシスト圧保持状態は、B
A制御の実行中に各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を保
持する必要がある場合、すなわち、BA制御中に(IV)ア
シスト圧保持モードが要求される場合に実現される。ア
シスト圧保持状態は、図13に示す如く、リザーバカッ
トソレノイドSRC-1304,SRC-2306をオフ状
態(閉弁状態)とし、かつ、マスタカットソレノイドS
MC-1312,SMC-2314をオン状態とすることで
実現される。
【0176】図13に示すアシスト圧保持状態では、第
1ポンプ360とリザーバタンク84、および、第2ポ
ンプ362とリザーバタンク84が、それぞれSRC-1
304およびSRC-2306によって遮断状態とされ
る。このため、アシスト圧保持状態では、第1ポンプ3
60および第2ポンプ362から液圧通路322,33
4にフルードが吐出されない。また、図13に示すアシ
スト圧保持状態では、液圧通路318,322および3
30,334が、それぞれSMC-1312およびSMC
-2314によってマスタシリンダ18から実質的に切り
離されている。このため、図13に示すアシスト圧保持
状態によれば、全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C
一定値に保持することができる。
【0177】図14は、BA制御の実行中に実現される
アシスト圧減圧状態を示す。アシスト圧減圧状態は、B
A制御の実行中に各車輪のホイルシリンダ圧PW/C を減
圧する必要がある場合、すなわち、BA制御中に (III)
アシスト圧減圧モード、および、(VI)アシスト圧緩減モ
ードの実行が要求された場合に実現される。アシスト圧
減圧状態は、図14に示す如く、全てのソレノイドをオ
フ状態とすることで実現される。
【0178】図14に示すアシスト圧減圧状態では、第
1ポンプ360および第2ポンプ362がリザーバタン
ク84から切り離される。このため、第1ポンプ362
および第2ポンプ362から液圧通路322,334に
フルードが吐出されない。また、アシスト圧減圧状態で
は、各車輪のホイルシリンダ142〜148とマスタシ
リンダ18とが導通状態となる。このため、アシスト圧
減圧状態を実現すると、全ての車輪のホイルシリンダ圧
W/C を、マスタシリンダ圧PM/C を下限値として減圧
することができる。
【0179】上述の如く、図12乃至図14に示すアシ
スト圧増圧状態、アシスト圧保持状態、および、アシス
ト圧減圧状態によれば、適切にBA制御の要求に応じて
ホイルシリンダ圧PW/C の増圧、保持、および、減圧を
図ることができる。このため、本実施例の制動液圧制御
装置によっても、上述した第1実施例の場合と同様に、
緊急ブレーキ操作が実行された後に、通常時に比して大
きく、かつ、運転者の意図が正確に反映された制動力を
発生させることができる。
【0180】制動液圧制御装置においてBA制御が実行
される場合は、ホイルシリンダ142〜148に対し
て、第1ポンプ360および第2ポンプ372からブレ
ーキフルードが供給される。このため、BA制御の実行
中は、ホイルシリンダ142〜148に、マスタシリン
ダ18から流出するブレーキフルードの量に比して多量
のブレーキフルードが流入する。従って、BA制御によ
ってアシスト圧減圧状態が要求される場合、および、B
A制御の終了条件が成立した後に、ホイルシリンダ14
2〜148に流入している全てのブレーキフルードをマ
スタシリンダ18に戻すこととすると、マスタシリンダ
18の耐久性が損なわれることがある。
【0181】本発明の第3実施例は、上述の如く、EC
U10に上記図7に示す制御ルーチンを実行させること
により実現される。ECU10は、リザーバカットソレ
ノイドSRC-1およびSRC-2を上記ステップ214,
216に示すSRC*として上記図7に示す制御ルーチ
ンを実行する。ECU10が上記の如く図7に示すルー
チンを実行すると、 (I)開始増圧モードによって発生す
る吸入液量QINを必要最小限の液量に抑制することがで
きると共に、BA制御の実行中に、所定量TH1 を超え
る吸入液量QINが生ずるのを防止することができる。こ
のため、第3実施例に対応する制動液圧制御装置によれ
ば、上述した第1実施例の場合と同様に、マスタシリン
ダ18に優れた耐久性を付与することができる。
【0182】尚、上記の実施例においては、第1ポンプ
360および第2ポンプ362が前記請求項1記載の
「高圧源」に相当している。本発明の第4実施例は、上
述の如く、ECU10に上記図10に示す制御ルーチン
を実行させることにより実現される。ECU10は、リ
ザーバカットソレノイドSRC-1およびSRC-2を上記
ステップ224,236のSRC*として、マスタカッ
トソレノイドSMC-1312およびSMC-2314を上
記ステップ224,230のSM**として、また、第
1ポンプ360および第2ポンプ362を上記ステップ
224,230,238のポンプとして上記図10に示
す制御ルーチンを実行する。
【0183】ECU10が上記の如く図10に示すルー
チンを実行すると、BA制御によってアシスト圧減圧状
態が要求される場合、および、BA制御の終了条件が成
立した後に、ホイルシリンダ142〜148からマスタ
シリンダ18に、ブレーキフルードが過剰に流入するの
を防止することができる。従って、第4実施例に対応す
る制動液圧制御装置によれば、上述した第2実施例の場
合と同様に、マスタシリンダ18に対して適正な耐久性
を付与することができる。
【0184】尚、上記の実施例においては、第1ポンプ
370および第2ポンプ372が前記請求項2記載の
「高圧源」に相当している。次に、図15乃至図24を
参照して、本発明の第5実施例について説明する。本実
施例のシステム構成は、上記図1に示すシステム構成に
おいて、ECU10にGセンサ370およびMT端子3
72を接続することで実現される。
【0185】Gセンサ370は、車両の減速度を検出す
るセンサである。また、MT端子372は、フロントポ
ンプ170およびリアポンプ172を駆動するポンプモ
ータ(図示せず)の作動中に電圧の現れる端子である。
本実施例において、ECU10は、Gセンサ370の出
力信号に基づいて車両の減速度Gを検出し、また、MT
端子372の出力電圧に基づいて、フロントポンプ17
0およびリアポンプ172の作動状態を検出する。
【0186】本実施例の制動液圧制御装置は、運転者に
よって緊急ブレーキ操作が実行された後にBA制御を開
始すると共に、BA制御が開始された後、何れかの車輪
に過大なスリップ率が発生すると、BA制御に加えてA
BS制御を開始する。以下、この制御をBA+ABS制
御と称す。BA+ABS制御によれば、ABS対象車輪
のホイルシリンダ圧PW/C がABS制御の要求に応じた
液圧に制御されると共に、ABS非対象車輪のホイルシ
リンダ圧PW/C が、マスタシリンダ圧PM/C に比して高
い領域で運転者の意図に応じて増減される。
【0187】図15は、左前輪FLをABS対象車輪と
するBA+ABS制御の実行中に、運転者によって制動
力の増大を意図するブレーキ操作が実行された際に実現
される状態を示す。以下、図15に示す状態をアシスト
圧増圧(BA+ABS)状態と称す。左前輪FLをAB
S対象車輪とするアシスト圧増圧(BA+ABS)状態
は、リアリザーバカットソレノイドSRCR92、およ
び、マスタカットソレノイドSMFR103,SMFL
104,SMR106をオン状態とし、フロントポンプ
170およびリアポンプ172をオン状態とし、かつ、
左前輪FLの保持ソレノイドSFLH128および減圧
ソレノイドSFLR136を、ABS制御の要求に応じ
て適宜制御することで実現される。
【0188】アシスト圧増圧(BA+ABS)状態にお
いて、左右後輪RL,RRのホイルシリンダ146,1
48には、上記図3に示すアシスト圧増圧状態の場合と
同様に、リアポンプ172から吐出されるブレーキフル
ードが供給される。このため、アシスト圧増圧(BA+
ABS)状態が実現されると、左右後輪RL,RRのホ
イルシリンダ圧PW/C は、BA制御中にアシスト圧増圧
状態が実現された場合と同様に昇圧される。
【0189】左前輪FLをABS対象車輪とするBA+
ABS制御は、左前輪FLについて(ii)減圧モードが実
行されることにより開始される。従って、フロントリザ
ーバ162には、BA+ABS制御が開始されると同時
にブレーキフルードが流入する。図15に示すアシスト
圧増圧(BA+ABS)状態において、フロントポンプ
170は、このようにしてフロントリザーバ162に流
入したブレーキフルードを吸入して圧送する。
【0190】フロントポンプ170によって圧送される
ブレーキフルードは、主に右前輪FRのホイルシリンダ
142へ供給されると共に、左前輪FLについて(i) 増
圧モードが実行される際にホイルシリンダ144へ供給
される。上記の制御によれば、右前輪FRのホイルシリ
ンダ圧PW/C を、BA制御中にアシスト圧増圧状態が実
現された場合と同様に昇圧し、また、左前輪FLのホイ
ルシリンダ圧PW/C を、左前輪FLに過大なスリップ率
を発生させない適当な値に制御することができる。
【0191】このように、図15に示すアシスト圧増圧
(BA+ABS)状態によれば、ABS対象車輪である
左前輪FLのホイルシリンダ圧PW/C をABS制御の要
求に応じた圧力に制御しつつ、ABS制御の非対象車輪
である右前輪FRおよび左右後輪RL,RRのホイルシ
リンダ圧PW/C を、BA制御中にアシスト圧増圧状態が
実現された場合と同様に速やかに昇圧させることができ
る。
【0192】図16は、左前輪FLをABS対象車輪と
するBA+ABS制御の実行中に、運転者によって制動
力の保持を意図するブレーキ操作が実行された際に実現
される状態を示す。以下、図16に示す状態をアシスト
圧保持(BA+ABS)状態と称す。左前輪FLをAB
S対象車輪とするアシスト圧保持(BA+ABS)状態
は、マスタカットソレノイドSMFR103,SMFL
104,SMR106をオン状態とし、フロントポンプ
170およびリアポンプ172をオン状態とし、右前輪
FRの保持ソレノイドSFRH126をオン状態とし、
かつ、左前輪FLの保持ソレノイドSFLH128およ
び減圧ソレノイドSFLR136をABS制御の要求に
応じて適宜制御することで実現される。
【0193】アシスト圧保持(BA+ABS)状態にお
いて、リアポンプ172は、上記図4に示すアシスト圧
保持状態が実現された場合と同様にリザーバタンク84
から遮断される。また、液圧通路112は、上記図4に
示すアシスト圧保持状態が実現された場合と同様に実質
的にマスタシリンダ18から遮断される。このため、ア
シスト圧保持(BA+ABS)状態が実現されると、左
右後輪RL,RRのホイルシリンダ圧PW/C は、BA制
御中にアシスト圧保持状態が実現される場合と同様に一
定値に保持される。
【0194】フロントリザーバ162には、アシスト圧
保持(BA+ABS)状態が実現されると同時に、また
は、アシスト圧保持(BA+ABS)状態が実現される
に先立って、ホイルシリンダ144から流出したブレー
キフルードが蓄えられる。フロントポンプ170は、ア
シスト圧保持(BA+ABS)状態が実現されている
間、フロントリザーバ162に蓄えられているブレーキ
フルードを吸入して圧送する。
【0195】アシスト圧保持状態において、右前輪FR
のホイルシリンダ142は、SFRH126によってフ
ロントポンプ170から切り離されている。このため、
フロントポンプ170によって圧送されるブレーキフル
ードは、左前輪FLのホイルシリンダ144にのみ供給
される。また、フロントポンプ170からホイルシリン
ダ144へのブレーキフルードの流入は、左前輪FLに
ついて (i)増圧モードが行われる場合にのみ許容され
る。上記の処理によれば、右前輪FRのホイルシリンダ
圧PW/C が一定値に保持されると共に、左前輪FLのホ
イルシリンダ圧P W/C が、左前輪FLに過大なスリップ
率を発生させることのない適当な圧力に制御される。
【0196】このように、図16に示すアシスト圧増圧
(BA+ABS)状態によれば、ABS対象車輪である
左前輪FLのホイルシリンダ圧PW/C をABS制御の要
求に応じた適当な圧力に制御しつつ、ABS制御の非対
象車輪である右前輪FRおよび左右後輪RL,RRのホ
イルシリンダ圧PW/C を、BA制御中にアシスト圧保持
状態が実現された場合と同様に一定値に保持することが
できる。
【0197】図17は、左前輪FLをABS対象車輪と
するBA+ABS制御の実行中に、運転者によって制動
力の減圧を意図するブレーキ操作が実行された際に実現
される状態を示す。以下、図17に示す状態をアシスト
圧減圧(BA+ABS)状態と称す。左前輪FLをAB
S対象車輪とするアシスト圧減圧(BA+ABS)状態
は、上記図5に示すアシスト圧減圧状態を実現しつつ、
左前輪FLの保持ソレノイドSFLH128および減圧
ソレノイドSFLR136を、ABS制御の要求に応じ
て適宜制御することで実現される。
【0198】アシスト圧減圧(BA+ABS)状態が実
現されると、全ての保持ソレノイドS**Hがマスタシ
リンダ18に連通する。このため、アシスト圧減圧(B
A+ABS)状態によれば、ABS非対象車輪のホイル
シリンダ圧PW/C をマスタシリンダ圧PM/C を下限値と
して減圧することができると共に、ABS対象車輪につ
いて(ii)保持モードおよび (iii)減圧モードを実現する
ことで、そのホイルシリンダ圧PW/C を保持または減圧
することができる。
【0199】ところで、アシスト圧減圧(BA+AB
S)状態は、運転者が制動力の減少を意図している場合
に、すなわち、何れの車輪のホイルシリンダ圧PW/C
増圧する必要がない場合に実現される。従って、ABS
対象車輪について、上記の如く(ii)保持モードと (iii)
減圧モードとが実現できれば、ABS対象車輪のホイル
シリンダ圧PW/C を、適正に要求される液圧に制御する
ことができる。
【0200】このように、上述したアシスト圧減圧(B
A+ABS)状態によれば、ABS対象車輪のホイルシ
リンダ圧PW/C をABS制御の要求に応じた適当な圧力
に制御しつつ、ABS制御の非対象車輪である右前輪F
Rおよび左右後輪RL,RRのホイルシリンダ圧PW/C
を、BA制御中にアシスト圧減圧状態が実現された場合
と同様にマスタシリンダ圧PM/C を下限値として減圧す
ることができる。
【0201】本実施例の制動液圧制御装置は、高μ路で
緊急ブレーキ操作が実行された際に、BA制御を実行す
ることで全ての車輪のホイルシリンダ圧PW/C をマスタ
シリンダ圧PM/C に比して高い液圧に増圧する。この
際、ホイル流入量QW/C は、上述の如く吸入液量QINだ
けマスタ流出量QM/C に比して多量となる。BA制御が
開始された後、車両が低μ路に進入すると、全ての車輪
のホイルシリンダ圧PW/C が十分に増圧された状態でB
A+ABS制御が開始されることがある。この場合、A
BS対象車輪のホイルシリンダ圧PW/C は、高μ路に対
応する高い液圧から低μ路に対応する低い液圧に減圧さ
れる。
【0202】ABS対象車輪のホイルシリンダ圧PW/C
が、高μ路に対応する高い液圧から低μ路に対応する低
い液圧に減圧される間には、ABS対象車輪のホイルシ
リンダから多量のブレーキフルードが放出される。従っ
て、本実施例の制動液圧制御装置によれば、BA制御が
開始された後、車両が低μ路に進入することでBA+A
BS制御が開始されると、ホイル流入量QW/C が多量に
減少する事態が生ずる。このため、かかる状況下では、
ホイル流入量QW/C が、マスタ流出量QM/C を超えて減
量される事態が生じ得る。
【0203】例えば、全ての車輪がABS対象車輪であ
る場合、アシスト圧増圧(BA+ABS)状態(上記図
15参照)でホイルシリンダ142〜148から放出さ
れるブレーキフルードは、フロントポンプ170または
リアポンプ172によって汲み上げられ、定圧開放弁1
14,116,118を通ってマスタシリンダ18に戻
される。
【0204】同様に、アシスト圧保持(BA+ABS)
状態(上記図16参照)が実現されている場合、およ
び、アシスト圧減圧(BA+ABS)状態(上記図17
参照)が実現されている場合も、ABS対象車輪のホイ
ルシリンダから放出されるブレーキフルードは、フロン
トポンプ170またはリアポンプ172に汲み上げられ
ることによりマスタシリンダ18に戻される。
【0205】このため、本実施例の制動液圧制御装置に
おいて、BA制御が開始された後、車両が低μ路に進入
した場合は、ホイルシンダ142〜148側から、マス
タ流出量QM/C を超えるブレーキフルードがマスタシリ
ンダ18に戻される事態が生じ得る。マスタシリンダ1
8に、マスタ流出量QM/C を超えるブレーキフルードが
戻されると、ブレーキペダル12は、強制的に解除位置
に復帰させられる。
【0206】ブレーキペダル12が解除位置に復帰する
と、ブレーキスイッチ14がオフ状態となる。ECU1
0は、ブレーキスイッチ14がオフ状態となると、ブレ
ーキペダル12の踏み込みが解除されたと誤認する。こ
のため、かかる誤認を防止するうえでは、マスタシリン
ダ18に、マスタ流出量QM/C を超えるブレーキフルー
ドが戻される事態を回避することが必要である。
【0207】本実施例の制動液圧制御装置は、上記の要
求に応えるべく、BA制御が開始された後、車両が低μ
路に進入したことが認識された場合には、ABS対象車
輪のホイルシリンダから放出されるブレーキフルードの
一部を、マスタシリンダ18を介さずに直接リザーバタ
ンク84に戻す処理を行う点に特徴を有している。以
下、上記の特徴部について説明する。
【0208】図18は、上記の機能を実現すべくECU
10が実行するメインルーチンのフローチャートを示
す。図18に示すルーチンは、その処理が終了する毎に
起動されるルーチンである。尚、図18に示すステップ
のうち、上記図7または図10に示すステップと同一の
処理を実行するステップについては、同一の符号を付し
てその説明を省略または簡略する。
【0209】すなわち、図18に示すルーチンにおいて
は、ステップ220でBA制御中であると判別される
と、次にステップ380の処理が実行される。ステップ
380では、低μ進入フラグXLOWμがオン状態であ
るか否かが判別される。低μ進入フラグXLOWμは、
イニシャル処理でオフ状態とされており、BA制御が開
始された後に、車両が高μ路から低μ路に進入したと認
められる場合にオン状態とされるフラグである。
【0210】図19は、低μ進入フラグXLOWμがオ
フ状態からオン状態に変化する条件を説明するためのタ
イムチャートを示す。より具体的には、図19(A)は
低μ進入フラグXLOWμの状態を表すタイムチャート
を、また、図19(B)は車両の減速度Gの変化を表す
タイムチャートを示す。車両が高μ路を走行している際
にBA制御が実行されると、車両の減速度Gは図19
(B)に示す如く急激に大きな値となる。従って、本実
施例において、BA制御が開始された後、所定値αを超
える減速度Gが発生した場合は、BA制御が高μ路走行
中に開始されたと判断することができる。
【0211】BA制御が開始された後、車両が低μ路に
進入すると、図19(B)に示す如く、車両の減速度G
はその後急激に小さな値に低下する。従って、BA制御
の開始に伴って所定値αを超える減速度Gが発生した
後、ブレーキ操作が解除されていないにも関わらずその
減速度Gが所定値β(<α)を下回る場合には、車両が
高μ路から低μ路に進入したと判断できる。本実施例に
おいて、低μ進入フラグXLOWμは、かかる状況が検
出されることによりオン状態とされる。
【0212】図20は、低μ進入フラグXLOWμの処
理を行うべくECU10が実行する制御ルーチンのフロ
ーチャートを示す。図20に示すルーチンは、所定時間
毎に起動される定時割り込みルーチンである。図20に
示すルーチンが起動されると、先ずステップ382の処
理が実行される。ステップ382では、BA制御が実行
中であるか否かが判別される。その結果、BA制御が実
行中でないと判別される場合は、次にステップ384の
処理が実行される。一方、BA制御が実行中であると判
別された場合は、次にステップ386の処理が実行され
る。
【0213】ステプ384では、最大減速度GMAX をリ
セットする処理が実行される。MAX減速度GMAX は、B
A制御の実行中に発生した最大の減速度Gである。上記
の処理によれば、BA制御の非実行中は、常に最大減速
度GMAX をリセットしておくことができる。本ステップ
384の処理が終了すると、今回のルーチンが終了され
る。
【0214】ステップ386では、減速度センナ370
の出力信号に基づいて、車両の減速度Gが検出される。
ステップ388では、今回の処理サイクルで検出された
減速度Gに基づいて、最大減速度GMAX を更新する処理
が実行される。本ステップ388では、具体的には、前
回の処理サイクルで更新された最大減速度GMAX と今回
の処理サイクルで検出された減速度Gとを比較し、G
MAX ≧Gが成立する場合は、その最大減速度GMAX を維
持し、一方、GMAX ≧Gが成立しない場合は、その減速
度Gを新たな最大減速度GMAX とする処理が実行され
る。
【0215】ステップ390では、以下に示す2つの条
件が共に成立するか否かが判別される。 GMAX >α ・・・(6) G<β ・・・(7) その結果、これら2つの条件のうち少なくとも1つの条
件が成立しない場合は、車両が高μ路から低μ路に進入
したと判断することができない。本ステップ390で、
かかる判別がなされた場合は、以後、何ら処理が進めら
れることなく今回のルーチンが終了される。一方、上記
2つの条件が共に成立すると判別される場合は、次にス
テップ392の処理が実行される。
【0216】ステップ392では、左右前輪FL,FR
の双方についてABS制御が実行されているか否かが判
別される。BA制御が開始された後、車両が高μ路から
低μ路に進入した場合は、左右前輪FL,FRの双方に
ついてABS制御が開始される。従って、本ステップ3
92で、それらの何れかについてABS制御が実行され
ていないと判別される場合は、車両が高μ路から低μ路
に進入したと判断することはできない。この場合、以
後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンが終
了される。
【0217】一方、上記ステップ392で、左右前輪F
L,FRの双方についてABS制御が実行されていると
判別される場合は、車両が高μ路から低μ路に進入した
と判断することができる。この場合、本ステップ392
に次いで、ステップ394の処理が実行される。ステッ
プ394では、低μ進入フラグXLOWμをオン状態と
する処理が実行される。上記の処理によれば、BA制御
の実行中に、車両が確実に高μ路から低μ路に進入した
と認識できる状況下で、低μ進入フラグXLOWμをオ
ン状態とすることができる。本ステップ394の処理が
終了すると、今回のルーチンが終了される。
【0218】上記図18に示すルーチン中、上記ステッ
プ380で低μ進入フラグXLOWμがオン状態でない
と判別される場合は、BA制御が開始された後、車両が
高μ路から低μ路に進入していないと判断できる。この
場合、以後、ステップ222以降の処理が実行される。
ステップ222以降では、BA制御の実行に必要な一連
の処理(ステップ222,224,228,232,2
38,240,246)が実行されると共に、フロント
ポンプ170およびリアポンプ172からホイルシリン
ダ142〜148に供給されたブレーキフルードの量、
すなわち、吸入液量QINが演算される(ステップ21
0)。これらの処理が終了すると、今回のルーチンが終
了される。上記の処理によれば、車両が高μ路から低μ
路に進入したと判別されない状況下で、通常のBA制御
を実行することができる。
【0219】図18に示すルーチン中、上記ステップ3
80で、低μ進入フラグXLOWμがオン状態であると
判別される場合は、車両が高μ路から低μ路に進入した
と判断できる。この場合、次にステップ396の処理が
実行される。ステップ396では、低μ進入フラグXL
OWμをオフ状態とする処理が実行される。本ステップ
396の処理が実行されると、次回以降、本ルーチンが
再び起動される際に、上記ステップ380でXLOWμ
=ONが成立しないと判別される。従って、本ステップ
396以降の処理は、車両が高μ路から低μ路に進入し
たと判別される毎に一度に限り実行される。
【0220】ステップ398では、リザーバリターン許
可フラグXALRRがオン状態であるか否かが判別され
る。リザーバリターン許可フラグXALRRは、イニシ
ャル処理でオフ状態とされており、所定のセット条件が
成立することによりオン状態とされ、かつ、所定のリセ
ット条件が成立することによりオン状態とされるフラグ
である。
【0221】図21は、リザーバリターン許可フラグX
ALRRの処理を行うべくECU10が実行する制御ル
ーチンのフローチャートを示す。図21に示すルーチン
は、所定時間毎に起動される定時割り込みルーチンであ
る。図21に示すルーチンが起動されると、先ずステッ
プ400の処理が実行される。ステップ400では、リ
ザーバリターン許可フラグXALRRがオフ状態である
か否かが判別される。その結果、XALRR=OFFが
成立すると判別される場合は、以後、所定のセット条件
の成立性を判断すべくステップ402以降の処理が実行
される。
【0222】ステップ402では、吸入液量QINが
“0”でないか否かが判別される。XALRRは、BA
+ABS制御の実行中に、ABS対象車輪のホイルシリ
ンダから放出されるブレーキフルードを、リザーバタン
ク84に直接戻す必要がある場合、すなわち、リザーバ
リターンの必要がある場合にオン状態とされるフラグで
ある。
【0223】本実施例において、リザーバリターンの必
要性は、マスタシリンダ18にマスタ流出量QM/C を超
えるブレーキフルードが戻される可能性がある状況下
で、すなわち、ホイル流入量QW/C がマスタ流出量QM/
C を超える場合に発生する。従って、上記ステップ40
2で、吸入液量QIN>0が成立しないと判別される場合
は、XALRRをオン状態とする必要がないと判断でき
る。この場合、以後、何ら処理が進められることなく今
回のルーチンが終了される。一方、上記ステップ402
で、吸入液量QIN>0が成立すると判別される場合は、
次にステップ404の処理が実行される。
【0224】ステップ404では、左右前輪FL,FR
の双方についてABS制御が実行されているか否かが判
別される。本ステップ404で左右前輪FL,FRの何
れかについてABS制御が終了されていると判別される
場合は、車両が低μ路から高μ路に進入したと判断でき
る。この場合、もはやリザーバリターンを行う必要がな
いと判断できる。従って、本ステップ404でかかる判
別がなされた場合は、以後、何ら処理が進められること
なく今回のルーチンが終了される。
【0225】一方、上記ステップ404で、左右前輪F
L,FRの双方についてABS制御が実行されていると
判別される場合は、車両が継続的に低μ路を走行してい
ると判断できる。この場合、次にステップ406の処理
が実行される。ステップ406では、リザーバリターン
経験フラグXEXRRがオフ状態であるか否かが判別さ
れる。リザーバリターン経験フラグXEXRRは、BA
制御が開始された後、リザーバリターンが実行されるこ
とによりオン状態とされ、BA制御が終了されることに
よりオフ状態とされるフラグである。
【0226】従って、上記ステップ406で、XEXR
R=OFFが成立すると判別される場合は、BA制御が
開始された後、リザーバリターンが未だ一度も実行され
ていないと判断できる。一方、XEXRR=OFFが成
立しないと判別される場合は、BA制御が開始された
後、既にリザーバリターンが実行されていると判断でき
る。
【0227】本実施例において、リザーバリターンを実
行するためには、後述の如くフロントポンプ170およ
びリアポンプ172を停止させる必要がある。BA+A
BS制御の実行中にフロントポンプ170およびリアポ
ンプ172が頻繁に停止状態とされると、フロントフロ
ントリザーバ162およびリアリザーバ164がブレー
キフルードで満たされて、ABS対象車輪のホイルシリ
ンダ圧PW/C を適正に減圧できない事態が生ずることが
ある。このため、フロントポンプ170およびリアポン
プ172は、BA+ABS制御の実行中に頻繁に停止さ
せないことが適切である。
【0228】また、本実施例の制動液圧制御装置によれ
ば、BA+ABS制御の実行中に、リザーバリターンを
一度実行することで、ブレーキ操作の強制的な解除を防
止するために十分な量のブレーキフルードを、ABS対
象車輪のホイルシリンダからリザーバタンク84に放出
させることができる。これらの観点より、本実施例にお
いては、BA制御の実行中にリザーバリターンを一度に
限り許可することとしている。換言すると、BA制御が
開始された後、既にリザーバリターンが実行されている
場合には、リザーバリターンの実行を禁止することとし
ている。このため、上記ステップ406で、XEXRR
=OFFが成立しないと判別された場合は、以後、何ら
処理が進められることなく今回のルーチンが終了され
る。一方、上記ステップ406で、XEXRR=OFF
が成立すると判別された場合は、次にステップ408の
処理が実行される。
【0229】ステップ408では、マスタシリンダ圧P
M/C が所定値P0 に比して低圧であるか否かが判別され
る。本ステップ408で、PM/C <P0 が成立しないと
判別される場合は、ブレーキペダル12に十分に大きな
踏力が加えられていると判断できる。このように大きな
ブレーキ踏力が発生している場合は、ABS対象車輪の
ホイルシリンダから放出されたブレーキフルードが、フ
ロントポンプ170およびリアポンプ172によってマ
スタシリンダ18側に圧送されても、その吐出圧により
ブレーキペダル12が解除位置まで変位することはな
い。従って、かかる状況下では、必ずしもリザーバリタ
ーンを行う必要がない。
【0230】また、車両の運転者は、ブレーキ操作を実
行した後に、例えば、制動液圧制御装置の一部に失陥が
生じていること等に起因して、自らが意図する制動力が
得られない場合には、ブレーキペダル12に大きな踏力
を加えようとする。このため、上記ステップ408でP
M/C <P0 が成立しないと判別される場合には、制動液
圧制御装置の一部に失陥が生じている可能性があると判
断できる。
【0231】制動液圧制御装置の一部に失陥が生じてい
る場合は、液圧回路内に蓄えられている液圧をリザーバ
タンク84に開放しないことが適切である。従って、上
記ステップ408でPM/C <P0 が成立しないと判別さ
れた場合は、リザーバリターンを実行するべきでないと
判断することができる。これらの観点より、上記ステッ
プ408で、PM/C <P0 が成立しないと判別された場
合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルー
チンが終了される。一方、上記ステップ408で、P
M/C <P0 が成立すると判別された場合は、次にステッ
プ410の処理が実行される。
【0232】ステップ410では、ホイル流入量QW/C
と吸入液量QINとの間に、以下に示す条件が成立するか
否かが判別される。尚、次式に示す“K”は、ブレーキ
スイッチ14の出力特性のバラツキを考慮して設定され
た定数である。 QW/C −QIN≦K ・・・(7) 上記(7)式に示す条件は、リザーバリターンを実行す
ることなく、ホイル流入量QW/C の全てをマスタシリン
ダ18に戻した場合に、ブレーキスイッチ14の出力信
号が強制的にオフ状態とされるか否かを判定するための
条件である。以下、図22および図23を参照して、上
記(7)式に示す条件の意味について説明する。
【0233】図22は、車両の減速度Gとホイルシリン
ダ圧PW/C との関係(直線)、および、ホイルシリン
ダ圧PW/C とホイル流入量QW/C との関係(直線およ
び)を示す。図22に示すこれらの関係は、制動液圧
制御装置を搭載する車両において予め実験的に検出され
た関係である。図22にに示す如く、車両の減速度Gと
ホイルシリンダ圧PW/C との間には、直接で表される
比例関係が成立する。従って、車両の減速度Gが所定値
0 である場合、その際に生じているホイルシリンダ圧
W/C は、直線の関係より所定値PW/C0と求めること
ができる。
【0234】図22に示す如く、ホイルシリンダ圧P
W/C とホイル流入量QW/C との間には、直接または
の何れかで表される比例関係が成立する。従って、ホイ
ルシリンダ圧PW/C が所定値P0 である場合、その際に
生じているホイル流入量QW/Cは、直線またはの関
係により所定値QW/C0と求めることができる。ECU1
0は、上記図22に示す直線乃至の関係をマップと
して記憶している。従って、本実施例の制動液圧制御装
置によれば、そのマップを参照することで、車両の減速
度Gに対するホイル流入量QW/C を正確に求めることが
できる。
【0235】図23は、BA制御が開始される前後、お
よび、車両が低μ路に進入する前後におけるブレーキペ
ダル12の位置を示す。ブレーキペダル12は、ブレー
キ操作が解除されている間は図23に示す「ペダル解除
位置」に位置する。運転者によってブレーキ操作が実行
されると、ブレーキペダル12は、図23における左向
きに変位する。
【0236】図23中に示す「BA開始時ペダル位置」
は、BA制御が開始された時点のブレーキペダル12の
位置を示す。ブレーキペダル12がBA開始時ペダル位
置に到達する過程では、マスタシリンダ18からホイル
シリンダ142〜148に向けてブレーキフルードが流
出する。従って、BA開始時ペダル位置は、ブレーキペ
ダル12がその位置に到達するまでにマスタシリンダ1
8から流出したブレーキフルードの量、すなわち、マス
タ流出量QM/C0に対応している。尚、この時点では、ホ
イル流入量QW/C がマスタ流出量QM/C0に一致してい
る。
【0237】BA制御が開始されると、マスタシリンダ
18からのブレーキフルードの流出が停止されると共
に、フロントポンプ170およびリアポンプ172から
ホイルシリンダ142〜148に向けてブレーキフルー
ドが供給される。従って、BA制御が開始されると、ブ
レーキペダル12の位置が一定位置に維持されたまま、
ホイル流入量QW/C がマスタ流出量QM/C0に吸入液量Q
INを加えた値に増量される。
【0238】BA制御が開始された後、車両が低μ路に
進入すると、その時点で車両の減速度Gが、低μ路の摩
擦係数μに対応する減速度G0 に低下する。また、車両
が低μ路に進入すると、その後ABS制御が実行される
ことにより、ホイル流入量QW/C が、低μ路の摩擦係数
μに対応する液量QW/C0に減量される。この際、QW/C0
は、上記図22に示すマップを参照することで、減速度
0 に基づいて求めることができる。
【0239】従って、車両が低μ路に進入した後、ホイ
ルシリンダから放出されるブレーキフルードの量QOUT
(以下、放出量QOUT と称す)は、次式の如く求めるこ
とができる。 QOUT =(QM/C0+QIN)−QW/C0 ・・・(8) 放出量QOUT の全てがマスタシリンダ18に戻されると
すると、マスタ流出量QM/C は、BA開始時の液量QM/
C0からQM/C0−QOUT に減量される。この場合、ブレー
キペダル12の位置も、液量QM/C0に対応する位置か
ら、QM/C0−QOUT に対応する位置まで、解除位置に向
かって変位する。
【0240】このように、ブレーキペダル12の位置
は、BA制御が開始された後、車両が低μ路に進入する
と、液量QM/C0に対応する位置から、液量QM/C0−QOU
T に対応する位置まで強制的に戻される。ここで、低μ
路進入後のマスタ流出量QM/C=QM/C0−QOUT は、上
記(8)式の関係を用いて次式の如く表すことができ
る。
【0241】 QM/C0−QOUT =QW/C0−QIN ・・・(9) 従って、本実施例において、放出量QOUT の全てをマス
タシリンダ18に戻した場合にブレーキペダル12が到
達する位置は、“QW/C0−QIN”で表されるマスタ流出
量QM/C を発生させる位置となる。本実施例において、
ブレーキスイッチ14の出力特性には、ある程度のバラ
ツキが認められている。このため、規格を満たすブレー
キスイッチ14であっても、その出力信号がオフ状態か
らオン状態に切り換わる時点で、ある程度のマスタ流出
量QM/C が生じていうことがある。
【0242】上記(7)式で用いられる定数K(ステッ
プ410参照)、すなわち、図23に示す要求マージン
Kは、規格を満たすブレーキスイッチ14に対して、最
大限許容されるマスタ流出量QM/C である。従って、ブ
レーキスイッチ14は、そのバラツキに関わらず、要求
マージンKを超えるマスタ流出量QM/C が生じている場
合には常にオン信号を出力する。
【0243】上記ステップ410の処理は、車両が低μ
路に進入した後に実行される。従って、上記ステップ4
10で用いられるホイル流入量QW/C は、車両が低μ路
に進入した後の減速度Gに対応する液量、すなわち、上
記(9)式中にQW/C0で表される液量に一致している。
従って、上記ステップ410で、上記(7)式の関係Q
W/C −QIN≦Kが成立すると判別される場合は、車両が
低μ路に進入した後のマスタ流出量QM/C が要求マージ
ンK以下となると判断できる。この場合、更に、車両が
低μ路に進入した後に、ブレーキペダル12が、ブレー
キスイッチ14の出力信号をオフ状態とする位置まで変
位する可能性があると判断できる。
【0244】このような状況下では、放出量QOUT の全
てをマスタシリンダ18に戻すべきではない。すなわ
ち、放出量QOUT の一部を直接リザーバタンク84に放
出することが適切である。本ルーチン中上記ステップ4
12で、かかる判別がなされた場合は、次にステップ4
14の処理が実行される。一方、上記ステップ412
で、QW/C −QIN≦Kが成立しないと判別された場合
は、放出量QOUT の全てをマスタシリンダ18に戻して
も、ブレーキスイッチ14がオフ状態とならないと判断
できる。かかる状況下では、ブレーキフルードのリザー
バリターンを行う必要がない。従って、上記ステップ4
12でかかる判別がなされた場合は、以後、何ら処理が
進められることなく今回のルーチンが終了される。
【0245】ステップ412では、リザーバリターン許
可フラグXALRRをオン状態とする処理が実行され
る。上記の処理によれば、BA制御が開始された後、車
両が低μ路に進入した後に、放出量QOUT の一部をリザ
ーバタンク84に戻すことが適切であると認められる場
合にのみ、リザーバリターン許可フラグXALRRをオ
ン状態とすることができる。本ステップ412の処理が
終了すると、今回のルーチンが終了される。
【0246】図21に示すルーチン中、上記ステップ4
00で、XALRR=OFFが成立しないと判別された
場合は、以後、所定のリセット条件の成立性を判別すべ
く、ステップ414以降の処理が実行される。ステップ
414では、吸入液量QIN=0が成立する状態が実現さ
れているか否かが判別される。本実施例の制動液圧制御
装置によれば、ブレーキペダル12が解除位置に復帰す
ることにより、マスタ流出量QM/C 、ホイル流入量QW/
C 、および、吸入液量QINが全て“0”に復帰する。こ
のため、本ステップ414では、ブレーキスイッチ14
がオフ状態である場合にQIN=0の状態が実現されてい
ると判断される。
【0247】本実施例において、吸入液量QIN=0が成
立する場合は、ブレーキフルードのリザーバリターンを
実行する必要がない。従って、上記の条件が成立する場
合は、リザーバリターン許可フラグXALRRをオフ状
態とすることが適切である。本ルーチンでは、上記ステ
ップ414でかかる判別がなされると、次にステップ4
15の処理が実行される。
【0248】ステップ415では、リザーバリターン許
可フラグXALRRをオフ状態とする処理が実行され
る。本ステップ415の処理が終了すると、今回のルー
チンが終了される。本ルーチン中、上記ステップ414
で、吸入液量QIN=0の状態が実現されていないと判別
される場合は、次にステップ416の処理が実行され
る。
【0249】ステップ416では、リザーバリターンが
開始された後、出力時間T0Nが経過しているか否かが判
別される。本実施例において、リザーバリターンは、後
述の如く、フロントポンプ170およびリアポンプ17
2を非作動状態としたうえで、リザーバカットソレノイ
ド90,92をオン状態(開弁状態)とすることで行わ
れる。出力時間TONは、適当な量のブレーキフルードを
リザーバタンク84に放出するために、リザーバカット
ソレノイド90,92をオン状態(開弁状態)に維持す
べき時間である。
【0250】従って、上記ステップ416で、出力時間
TONが経過していると判別される場合は、既にリザーバ
リターンに必要な時間が経過していると判断できる。こ
のため、かかる判別がなされる場合は、以後、上記ステ
ップ415の処理が実行された後、今回のルーチンが終
了される。一方、上記ステップ416で、未だ出力時間
T0Nが経過していないと判別される場合は、次にステッ
プ418の処理が実行される。
【0251】ステップ418では、全ての車輪について
ABS制御が非実行中であるか否かが判別される。全て
の車輪についてABS制御が実行されていない場合は、
低μ路に進入した車両が、低μ路を抜けて再び高μ路に
進入したと判断できる。車両が高μ路に進入すれば、再
びホイル流入量QW/C の増量が図られるため、リザーバ
リターンを行う必要がない。このため、本ステップ41
8で、全ての車輪についてABS制御が実行されていな
いと判別される場合は、以後、上記ステップ415の処
理が実行された後、今回のルーチンが終了される。一
方、何れかの車輪についてABS制御が実行されている
と判別される場合は、次にステップ420の処理が実行
される。
【0252】ステップ420では、車両の減速度Gが所
定値γを超えているか否かが判別される。所定値γは、
低μ路上では発生しない減速度の値である。従って、G
>γが成立すると判別される場合は、車両が低μ路を抜
けて高μ路に進入したと判断できる。従って、本ステッ
プ418でG>γが成立すると判別される場合は、以
後、上記ステップ415の処理が実行された後、今回の
ルーチンが終了される。一方、G>γが成立しないと判
別された場合は、次にステップ422の処理が実行され
る。
【0253】ステップ422では、リザーバリターン許
可フラグXALRRがオン状態とされた後、許可時間T
ALが経過したか否かが判別される。上述の如く、リザー
バリターンは、フロントポンプ170およびリアポンプ
172を非作動状態として実行される。BA+ABS制
御の実行中は、フロントポンプ170およびリアポンプ
172を長期にわたって非作動状態とするべきでない。
【0254】このため、本実施例においては、許可時間
TALを設定し、リザーバリターン許可フラグXALRR
が許可時間TALを超えてオン状態に維持されるのを、す
なわち、フロントポンプ170およびリアポンプ172
が許可時間TALを超えて非作動状態に維持されるのを防
止することとしている。従って、上記ステップ422
で、許可時間TALが経過していると判別される場合は、
以後、上記ステップ415の処理が実行された後、今回
のルーチンが終了される。一方、許可時間ALが経過して
いないと判別される場合は、以後、何ら処理が進められ
ることなく今回のルーチンが終了される。
【0255】上記の処理によれば、リザーバリターン許
可フラグXALRRがオン状態とされた後、適当なタイ
ミングでそのフラグXALRRをオフ状態とすることが
できる。図18に示すルーチン中、上記ステップ398
で、リザーバリターン許可フラグXALRRがオン状態
であると判別された場合は、次にステップ424の処理
が実行される。一方、XALRRがオン状態でないと判
別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく
今回のルーチンが終了される。
【0256】ステップ424では、フロントポンプ17
0およびリアポンプ172を駆動するポンプモータをオ
フ状態とする処理が実行される。本ステップ424の処
理が実行されると、フロントポンプ170およびリアポ
ンプ172は、ある程度の遅延時間の後に停止状態とな
る。ステップ426では、出力許可フラグXALONが
オン状態であるか否かが判別される。出力許可フラグX
ALONは、リザーバカットソレノイド90,92を開
弁状態として、ブレーキフルードをリザーバタンク84
に放出させるべき時期にオン状態とされるフラグであ
る。
【0257】図24は、出力許可フラグXALONをオ
ン状態とする処理を行うべくECU10が実行する制御
ルーチンのフローチャートを示す。図24に示すルーチ
ンは、所定時間毎に起動される定時割り込みルーチンで
ある。図24に示すルーチンが起動されると、先ずステ
ップ428の処理が実行される。尚、図24に示すルー
チンは、前輪系統および後輪系統のそれぞれについて独
立に実行される。
【0258】ステップ428では、ポンプモータが完全
に停止しているか否かが判別される。本ステップ428
では、具体的には、MT端子372の出力電圧が“0”
である場合にポンプモータが完全に停止していると判別
される。その結果、ポンプモータの停止が完了していな
いと判別される場合は、以後、何ら処理が進められるこ
となく今回のルーチンが終了される。一方、ポンプモー
タが停止していると判別される場合は、次にステップ4
30の処理が実行される。
【0259】ステップ430では、処理対象である系統
において、少なくとも1輪について減圧モードが開始さ
れたか否かが判別される。その結果、何れの車輪につい
ても減圧モードが開始されていないと判別される場合
は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチ
ンが終了される。一方、少なくとも1輪について減圧モ
ードが開始されたと判別される場合は、次にステップ4
32の処理が実行される。
【0260】ステップ432では、出力許可フラグXA
LONをオン状態とする処理が実行される。本ステップ
432の処理が終了すると今回のルーチンが終了され
る。図25は、出力許可フラグをオフ状態とする処理を
実行すべくECU10が実行する制御ルーチンのフロー
チャートを示す。図25に示すルーチンは、所定時間毎
に起動される定時割り込みルーチンである。図25に示
すルーチンが起動されると、先ずステップ434の処理
が実行される。尚、図25に示すルーチンは、前輪系統
および後輪系統のそれぞれについて独立に実行される。
【0261】ステップ434では、出力許可フラグXA
LONがオン状態とされた後、フラグオン時間TXON が
経過したか否かが判別される。本ステップ434の処理
は、フラグオン時間TXON が経過したと判別されるまで
繰り返し実行される。その結果、上記の条件が成立する
と判別される場合は、次にステップ436の処理が実行
される。
【0262】ステップ436では、出力許可フラグXA
LONをオフ状態とする処理が実行される。本ステップ
436の処理が終了すると、今回のルーチンが終了され
る。上記図24および図25に示すの処理によれば、ポ
ンプモータが完全に停止した後、少なくとも1輪につい
て減圧モードが開始される時期と同期して出力許可フラ
グXALONをオン状態とし、その後、所定時間TXON
の間だけ、出力許可フラグXALONをオン状態に維持
することができる。
【0263】図18に示すルーチン中、上記ステップ4
26では、出力許可フラグXALONがオン状態である
か否かが、前輪系統および後輪系統のそれぞれについて
独立に判別される。その結果、何れの系統についても出
力許可フラグXALONがオン状態でないと判別される
場合は、再び上記ステップ398の処理が実行される。
一方、何れかの系統についてXALONがオン状態であ
ると判別されると、次にステップ438の処理が実行さ
れる。
【0264】ステップ438では、リザーバカットソレ
ノイド90,92のうち、出力許可フラグXALONが
オン状態であると判断された系統に属するソレノイドを
オン状態(開弁状態)とする処理が実行される。上記の
処理によれば、フロントポンプ170およびリアポンプ
172が完全に停止した後、少なくとも1輪について減
圧モードが開始される時期と同期して、その車輪と同じ
系統に属するリザーバカットソレノイド90,92を開
弁状態とすることができる。
【0265】ステップ440では、リザーバカットソレ
ノイド90,92をオン状態とした後、出力時間TONが
経過したか否かが判別される。その結果、出力時間TON
が経過していないと判別される場合は、以後、再び上記
ステップ398の処理が実行される。一方、出力時間T
ONが経過したと判別される場合は、次にステップ442
の処理が実行される。
【0266】ステップ442では、リザーバカットソレ
ノイド90,92をオフ状態(閉弁状態)とする処理が
実行される。上記の処理によれば、少なくとも1輪につ
いて減圧モードが開始された後、所定の出力時間TONの
間だけ、フロントリザーバ162またはリアリザーバ1
64をリザーバタンク84に導通させることができる。
この場合、減圧モードが実行されることによりホイルシ
リンダから放出されるブレーキフルードを、短時間で効
率よくリザーバタンク84に直接流出させることができ
る。
【0267】上述の如く、本実施例の制動液圧制御装置
によれば、BA制御の開始後に車両が高μ路から低μ路
に進入した場合に、ABS制御の実行に伴ってホイルシ
リンダから放出されるブレーキフルードの一部を、短時
間で、確実にリザーバタンク84に放出することができ
る。このため、本実施例の制動液圧制御装置によれば、
BA制御の開始後に車両が低μ路に進入した場合におい
ても、ブレーキペダル12が強制的に解除位置まで復帰
させられるのを、確実に防止することができる。
【0268】ところで、上記の実施例においては、上記
図1に示すシステム構成において、所定のタイミングで
リザーバリターンを行うこととしているが、本発明はこ
れに限定されるものではなく、上記図11に示すシステ
ム構成において、同様にリザーバリターンを実行するこ
ととしてもよい。尚、上記の実施例においては、フロン
トポンプ170およびリアポンプ172が前記請求項3
記載の「ポンプ」に相当していると共に、ECU10
が、上記ステップ382〜394の処理を実行すること
により前記請求項3記載の「低μ進入検出手段」が、上
記ステップ380および424の処理を実行することに
より前記請求項3記載の「ポンプ停止手段」が、それぞ
れ実現されている。
【0269】また、上記の実施例においては、フロント
ポンプ170およびリアポンプ172が前記請求項4記
載の「ポンプ」に相当していると共に、ECU10が、
上記ステップ382〜394の処理を実行することによ
り前記請求項4記載の「低μ進入検出手段」が、上記ス
テップ380および438の処理を実行することにより
前記請求項4記載の「リザーバリターン手段」がそれぞ
れ実現されている。
【0270】また、上記の実施例においては、ECU1
0が、上記ステップ428の処理を実行することにより
前記請求項5記載の「ポンプ停止検出手段」が、上記ス
テップ426、432および438の処理を実行するこ
とにより前記請求項5記載の「リザーバリターン手段」
が、それぞれ実現されている。更に、上記の実施例にお
いては、ECU10が、上記ステップ426、430、
432および438の処理を実行することにより前記請
求項6記載の「リザーバリターン手段」が実現されてい
る。
【0271】
【発明の効果】上述の如く、請求項1記載の発明によれ
ば、ブレーキ操作の解除時に残存するホイル流入量QW/
C を少量にガードすることができる。このため、本発明
によれば、マスタシリンダの耐久性を損なうことなくB
A制御を実行することができる。
【0272】請求項2記載の発明によれば、ブレーキ操
作の解除時に多量のホイル流入量QW/C が残存する場合
には、そのホイル流入量QW/C を直接リザーバタンクに
戻すことができる。このため、本発明によれば、マスタ
シリンダの耐久性を損なうことなくBA制御を実行する
ことができる。請求項3記載の発明によれば、ブレーキ
アシスト制御の開始後に車両が低μ路に進入した場合
に、ポンプの作動を停止することで、ブレーキペダルの
踏み込みが強制的に解除されるのを防止することができ
る。
【0273】請求項4記載の発明によれば、ブレーキア
シスト制御の開始後に車両が低μ路に進入した場合に、
ホイルシリンダから流出するブレーキフルードを直接リ
ザーバタンクに戻すことにより、ブレーキペダルの踏み
込みが強制的に解除されるのを確実に防止することがで
きる。請求項5記載の発明によれば、アンチロックブレ
ーキ制御中にマスタシリンダから不当に多量のブレーキ
フルードが流出するのを防止しつつ、ブレーキアシスト
制御の実行に伴ってブレーキペダルの踏み込みが強制的
に解除されるのを確実に防止することができる。
【0274】また、請求項6記載の発明によれば、アン
チロックブレーキ制御の減圧モードと、ホイルシリンダ
内のブレーキフルードをリザーバタンクに放出する処理
とを同期させることにより、ホイルシリンダ内のブレー
キフルードを、短時間で確実にリザーバタンクに放出さ
せることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例および第2実施例で用いら
れる制動液圧制御装置の通常ブレーキ状態およびABS
作動状態を示すシステム構成図である。
【図2】図1に示す制動液圧制御装置が備えるマスタシ
リンダの断面図である。
【図3】図1に示す制動液圧制御装置においてBA制御
中に実現されるアシスト圧増圧状態を示す図である。
【図4】図1に示す制動液圧制御装置においてBA制御
中に実現されるアシスト圧保持状態を示す図である。
【図5】図1に示す制動液圧制御装置においてBA制御
中に実現されるアシスト圧減圧状態を示す図である。
【図6】運転者によって緊急ブレーキ操作が実行された
際に図1に示す制動液圧制御装置のホイルシリンダ圧P
W/C およびマスタシリンダ圧PM/C に発生する変化を表
す図である。
【図7】本発明の第1実施例に対応する制動液圧制御装
置において実行される制御ルーチンの一例のフローチャ
ートである。
【図8】図7に示すルーチン中で開始増圧量を演算する
際に参照されるマップの一例である。
【図9】図1に示す制動液圧制御装置のホイルシリンダ
に吸入されるブレーキフルードの液量Qとホイルシリン
ダ圧PW/C との関係を表す図である。
【図10】本発明の第2実施例に対応する制動液圧制御
装置において実行される制御ルーチンの一例のフローチ
ャートである。
【図11】本発明の第3実施例および第4実施例で用い
られる制動液圧制御装置の通常ブレーキ状態およびAB
S作動状態を示すシステム構成図である。
【図12】図11に示す制動液圧制御装置においてBA
制御中に実現されるアシスト圧増圧状態を示す図であ
る。
【図13】図11に示す制動液圧制御装置においてBA
制御中に実現されるアシスト圧保持状態を示す図であ
る。
【図14】図11に示す制動液圧制御装置においてBA
制御中に実現されるアシスト圧減圧状態を示す図であ
る。
【図15】図1に示す制動液圧制御装置においてBA+
ABS制御中に実現されるアシスト圧増圧状態を示す図
である。
【図16】図1に示す制動液圧制御装置においてBA+
ABS制御中に実現されるアシスト圧保持状態を示す図
である。
【図17】図1に示す制動液圧制御装置においてBA+
ABS制御中に実現されるアシスト圧減圧状態を示す図
である。
【図18】本発明の第5実施例に対応する制動液圧制御
装置において実行されるメインルーチンの一例のフロー
チャートである。
【図19】図19(A)は、本発明の第5実施例におい
て実行される低μ進入判定の状態を表すタイムチャート
である。図19(B)は、BA制御の開始後に車両が高
μ路から低μ路に進入した場合に生ずる減速度Gの変化
を表すタイムチャートである。
【図20】本発明の第5実施例に対応する制動液圧制御
装置において低μ進入フラグを処理するために実行され
るルーチンの一例のフローチャートである。
【図21】本発明の第5実施例に対応する制動液圧制御
装置においてリザーバリターン許可フラグを処理するた
めに実行されるルーチンの一例のフローチャートであ
る。
【図22】車両の減速度Gとホイルシリンダ圧PW/C
の関係、および、ホイルシリンダ圧PW/C とホイル流入
量QW/C との関係を表す図である。
【図23】本発明の第5実施例に対応する制動液圧制御
装置において実現されるブレーキペダルの位置を説明す
るための図である。
【図24】本発明の第5実施例に対応する制動液圧制御
装置において出力許可フラグをオン状態とするために実
行されるルーチンの一例のフローチャートである。
【図25】本発明の第5実施例に対応する制動液圧制御
装置において出力許可フラグをオフ状態とするために実
行されるルーチンの一例のフローチャートである。
【符号の説明】
10 電子制御ユニット(ECU) 12 ブレーキペダル 16 バキュームブースタ 18 マスタシリンダ 30 第1液圧室 38 第1センターバルブ 60 第2液圧室 68 第2センターバルブ 84 リザーバタンク 90 フロントリザーバカットソレノイド(SRCF) 92 リアリザーバカットソレノイド(SRCR) 102 右前マスタカットソレノイド(SMFR) 104 左前マスタカットソレノイド(SMFL) 106 リアマスタカットソレノイド(SMR) 126,128,130,132 保持ソレノイド(S
**H) 134,136,138,140 減圧ソレノイド(S
**R) 142,144,146,148 ホイルシリンダ 158 フロント減圧通路 160 リア減圧通路 162 フロントリザーバ 164 リアリザーバ 170 フロントポンプ 172 リアポンプ 198 液圧センサ 304 第1リザーバカットソレノイド(SRC-1) 306 第2リザーバカットソレノイド(SRC-2) 312 第1マスタカットソレノイド(SMC-1) 314 第2マスタカットソレノイド(SMC-2) 348 第1減圧通路 350 第2減圧通路 352 第1リザーバ 354 第2リザーバ 360 第1ポンプ 362 第2ポンプ 370 減速度センサ 372 MT端子

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マスタシリンダと、リザーバタンクから
    ブレーキフルードを汲み上げてホイルシリンダに供給す
    る高圧源とを備え、所定の状況下で前記高圧源から前記
    ホイルシリンダにブレーキフルードを供給して、マスタ
    シリンダ圧に比して高圧のホイルシリンダ圧を発生させ
    る制動液圧制御装置において、 前記ホイルシリンダが前記高圧源から吸入したブレーキ
    フルードの吸入液量を検出する吸入液量検出手段と、 前記吸入液量が所定値以上である場合に前記高圧源から
    前記ホイルシリンダへのブレーキフルードの流入を禁止
    する吸入液量ガード手段と、 を備えることを特徴とする制動液圧制御装置。
  2. 【請求項2】 マスタシリンダと、リザーバタンクから
    ブレーキフルードを汲み上げてホイルシリンダに供給す
    る高圧源とを備え、所定の状況下で前記高圧源から前記
    ホイルシリンダにブレーキフルードを供給して、マスタ
    シリンダ圧に比して高圧のホイルシリンダ圧を発生させ
    る制動液圧制御装置において、 前記ホイルシリンダが前記高圧源から吸入したブレーキ
    フルードの吸入液量を検出する吸入液量検出手段と、 前記吸入液量が所定値以上である状況下で、前記ホイル
    シリンダ圧の減圧が要求される場合に、前記ホイルシリ
    ンダ内のブレーキフルードを前記マスタシリンダを介さ
    ずに前記リザーバタンクに流出させるリザーバリターン
    手段と、 を備えることを特徴とする制動液圧制御装置。
  3. 【請求項3】 マスタシリンダと、リザーバタンクから
    ブレーキフルードを汲み上げてホイルシリンダに供給す
    るポンプとを備え、所定の状況下で、前記高圧源から前
    記ホイルシリンダにブレーキフルードを供給してマスタ
    シリンダ圧に比して高圧のホイルシリンダ圧を発生させ
    るブレーキアシスト制御を実行し、かつ、車輪に過大な
    スリップ率が生じた際に、前記車輪のホイルシリンダ圧
    を減圧するアンチロックブレーキ制御を実行する制動液
    圧制御装置において、 前記ブレーキアシスト制御が開始された後、車両が高摩
    擦係数路から低摩擦係数路に進入したことを検出する低
    μ進入検出手段と、 前記低μ進入検出手段により車両が低摩擦係数路に進入
    したことが検出された場合に、前記ポンプを停止させる
    ポンプ停止手段と、 を備えることを特徴とする制動液圧制御装置。
  4. 【請求項4】 マスタシリンダと、リザーバタンクから
    ブレーキフルードを汲み上げてホイルシリンダに供給す
    るポンプとを備え、所定の状況下で、前記高圧源から前
    記ホイルシリンダにブレーキフルードを供給してマスタ
    シリンダ圧に比して高圧のホイルシリンダ圧を発生させ
    るブレーキアシスト制御を実行し、かつ、車輪に過大な
    スリップ率が生じた際に、前記車輪のホイルシリンダ圧
    を減圧するアンチロックブレーキ制御を実行する制動液
    圧制御装置において、 前記ブレーキアシスト制御が開始された後、車両が高摩
    擦係数路から低摩擦係数路に進入したことを検出する低
    μ進入検出手段と、 前記低μ進入検出手段により車両が低摩擦係数路に進入
    したことが検出された場合に、前記ホイルシリンダ内の
    ブレーキフルードを前記マスタシリンダを介さずに前記
    リザーバタンクに流出させるリザーバリターン手段と、 を備えることを特徴とする制動液圧制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の制動液圧制御装置におい
    て、 前記アンチロックブレーキ制御の実行中に前記ホイルシ
    リンダ圧の減圧に伴って前記ホイルシリンダから流出す
    るブレーキフルードを、前記ポンプが汲み上げて前記ホ
    イルシリンダ側に供給すると共に、 前記ポンプが停止状態であることを検出するポンプ停止
    検出手段を備え、かつ、 前記リザーバリターン手段が、前記低μ進入検出手段に
    より車両が低摩擦係数路に進入したことが検出された場
    合に、前記ポンプが停止状態に至った後に、前記ホイル
    シリンダ内のブレーキフルードの前記リザーバタンクへ
    の流出を図ることを特徴とする制動液圧制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項4記載の制動液圧制御装置におい
    て、 前記アンチロックブレーキ制御の実行中に、前記ホイル
    シリンダ圧の減圧を図る減圧モードと、前記ホイルシリ
    ンダ圧の増圧または保持を図る増圧保持モードとが実行
    されると共に、 前記リザーバリターン手段が、前記減圧モードと同期し
    て、前記ホイルシリンダ内のブレーキフルードの前記リ
    ザーバタンクへの流出を図ることを特徴とする制動液圧
    制御装置。
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JP9-52076 1997-03-06
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007076528A (ja) * 2005-09-15 2007-03-29 Nissin Kogyo Co Ltd 車両用ブレーキ液圧制御装置
JP2011519323A (ja) * 2008-03-18 2011-07-07 ヴアブコ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング 間隔制御経済速度走行制御システム

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