JPH10305456A - 絵付け成型用転写シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクジェットプリンタによる高レベルの精
細画像を曲面を有する樹脂成型品に転写する絵付け成型
用転写シートを短期間、且つ低コストで提供する事。 【解決手段】 基本的に樹脂基材シート２、インクジェ
ットプリンタ用インク受容層６より成り、インク受容層
６に印刷後、印刷面に成形形態に応じて保護層７或いは
離型フィルム９を構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は樹脂成形品の射出成
形と同時に該成型品に転写フィルムの図柄を転写するた
めの転写シート及びその転写シートを使用した絵付け成
形方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】プラスチック成型品の表面に絵柄を構成
する方法は、成型品の表面が平面又は２次曲面の場合は
印刷、スタンピング、転写等種々の方法が利用できる
が、成型品の表面が３次元曲面を有する場合の絵柄構成
方法は前述の印刷、スタンピング等では不可能であり、
現在に於いては、絵柄を印刷した転写シートを成型時に
同時に成形する方法が一般的に主流の方法として採用さ
れている。

【０００３】転写シートによる絵付け成形の方法は、図
１に示す様に、熱成形性を有するプラスチックフィルム
よりなる基材シート２上に基材シート２に対し剥離性、
熱成形性を有する樹脂よりなる剥離層３を設け、該剥離
層上に図柄印刷層４を設けると共に、さらにこの上から
熱成形性、熱接着性を有する樹脂よりなる接着剤層５を
設けて、転写シート１を構成する。そして、該転写シー
ト１の接着剤層面５を射出成形型のゲート方向、すなわ
ち接着剤層５が成型品と合わさる様に装着し成形を行
い、成形型より転写シート付き成型品を取り出し、しか
る後、転写シートの基材シートを剥離する事により絵付
き成型品を得るものである。

【０００４】しかし、図１に示す方法に於いては、成形
品への絵付けは出来るが、転写シートの作成には、非常
に多くの工程と時間が必要である。特に絵柄印刷層の作
成にはグラビア、オフセット等の一般的な印刷方式が利
用できるが、そのいずれもが印刷原板の作成等に多くの
時間と費用がかかる。従って、大量生産する場合に於い
ては効率的であるが、多種少量生産、特にサンプル的な
生産には極めて不向きなものである。また、絵柄印刷層
を構成するインクにおいても、樹脂と着色剤から成る特
殊のインクが必要なため、それなりの生産設備が必要で
あり、簡単に作成する事は出来ない。又、この方法は、
印刷インクを接着層と共に成形品に転写するものである
ため、簡単な絵柄転写は問題は無いが、精細な画像転写
は出来にくい欠点がある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上述の図１に
示すような大量生産に効果的な方法に対して、最近特に
要求の強い、オリジナル的な少量生産、及び多種少量の
サンプル作成と写真レベルでの精細画像を曲面を有する
樹脂成型品に転写する絵付け成型用転写シートを提供す
る事を目的とするもので、数個から数十個の高精細な絵
付けの樹脂成形品を短期間に低コストで生産する事を最
大の狙いとしている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の絵付け成型用転
写シートは、熱成形性を有するプラスチックフィルムよ
りなる基材シート上に、顔料及び熱成形性を有するバイ
ンダー樹脂を主体とする絵柄構成用インク受容層を設け
たことを特徴とする。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の絵柄印刷層はインクジェ
ットプリンターで印刷できる特殊な構成を有する転写シ
ートで、その構成について、本発明の概念であり、また
一実施例でもある図２に示す構成を参照しながら詳細に
説明する。

【０００８】図２に於いて、２は熱成形性を有するプラ
スチックフィルムより成る基材シート、６はインクジェ
ットプリンターのインクを吸収、定着するためのインク
受容層で従来の絵柄印刷層に相当するものである。７は
インクジェットプリンターにより印刷された後、後加工
により構成される保護層である。

【０００９】この構成からも明白な通り、本発明はイン
クジェットプリンターにより絵柄印刷層を構成すること
が前提であり、従って、まず第一に基材シート２の表面
にインクジェットプリンタで印刷できるインク受容層６
を構成することが必要となる。このインク受容層６につ
いては多くの構成が提案されているが、基本的にはイン
クを好適に吸収して保持出来る構成が必要であり、一般
的には顔料、バインダー樹脂、その他各種の添加剤から
構成する。顔料としては、シリカ、炭酸カルシュウム、
ケイソウ土、酸化アルミ、水酸化アルミ等が、又バイン
ダー樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニル
ピロリドン、アクリル酸エステルの共重合体、ポリアク
リルアミド、エチレン−酢ビ共重合体等の樹脂が利用で
きる。又、添加剤としては、耐水化剤、紫外線吸収剤、
防腐剤、酸化防止剤、ＰＨ調整剤、界面活性剤、消泡剤
等必要に応じて併用される。

【００１０】これらの成分構成はインクの組成、インク
の打ち込み量、さらには受容層のもろさ等の関係から調
整する事が必要であが、本発明のインク受容層６は射出
成型時に基材シート２と共に変形を生ずるため、バイン
ダー樹脂の添加量を多めに構成することがポイントとな
る。しかし、バインダー樹脂の添加量が極端に多くなる
と、インク吸収特性が低下し、インクジェットプリンタ
としての画像品質は低下するので必要に応じた柔軟性を
確保する配合比を選択することが必要である。

【００１１】一方、インク受容層６のベースとなる基材
シート２はプリンタ記録シートとしての搬送特性を有す
ると共に、熱による延伸性、すなわち熱成形性（熱変形
性）を有し、かつ成形品との熱接合性の良いものでなけ
ればならない。具体的には、基材シート２の材質は未延
伸ナイロン、未延伸ポリエステル、ポリ塩化ビニル、Ｐ
ＥＴ等のプラスチックフィルムを使用することが出来る
が、中でも未延伸ナイロン、ポリ塩化ビニルが材質的に
特に好ましい。すなわち、これらは熱変形温度が比較的
低く、また成型時の引っ張りによる引き延ばしが可能で
あること、又射出成型品が外観用であるため、樹脂材質
はＡＳ、ＡＢＳ樹脂等比較的低温成形であることから、
均一な転写が出来るものである。また基材シート２の厚
さは、曲面の絞りの大きさ、プリンタの搬送特性にもよ
るが、５０から２００ミクロン程度が適当である。もち
ろん、プリンタの搬送性が許されるならば、５０ミクロ
ン以下の薄いシートでも使用することは可能である。

【００１２】特に、基材シート２が５０μ以下の薄いも
ので、プリンタの搬送性に難点があるものであれば、容
易に剥離出来る微粘着性を有する粘着シートを該基材シ
ート２に張り付け、シート厚を確保したうえでプリンタ
搬送を行えば、基材シートの厚さに関する問題を解決で
きる。

【００１３】又、インク受容層６の構成方法は、製造す
る数量により最も効率的な方法を採用する事が好まし
く、量的に多い場合はロールコーター等の連続的塗布装
置で、又少量の場合はバーコーター等のハンドコートに
より行われる。特に少量のオリジナル印刷、少量のサン
プルに於いては、バーコート等ハンドコートで行うこと
が極めて短時間に、かつ小規模設備で利用できるので効
率的である。

【００１４】次にインク受容層６が構成された転写シー
ト１はインクジェットプリンタにて必要な画像を印刷さ
れ、さらに保護層７が構成される。この保護層７は射出
成形型に挟設して成形する際、インク受容層６、すなわ
ち絵柄印刷層が図５に示す金型のキャビティー（雌型）
１１のキャビティ面１１ａと接触して成形されるため、
これを傷、汚れ等から保護し、又転写後の絵柄の耐久性
を高める役割を果たすもので、アクリル、ポリウレタン
樹脂等の樹脂コーティング層である。保護層７の構成の
方法は、上述のコーティングマシン、あるいは特に少量
の場合は、ハンドコート、スプレィ等によって行われ
る。

【００１５】このようにして構成された転写シート１
は、図５に示す射出成形金型において、基材シート２の
面を金型のコア１２のゲート１２ａが構成されている側
に配設する。すなわち、成型品１３との接合面が基材シ
ート側になるように装着して成形を行う。この成形によ
り、射出成形の樹脂１３と転写シート１の基材シート２
が成型時に接合する事となり、成形品１３と一体化し、
平面状シートから曲面を有する成型品に絵柄が転写構成
される。すなわち、射出成型時の熱と圧力により、転写
シートが金型の型面に沿った形状に成形されるものであ
り、従って、転写シートを構成する材質は熱成形性を有
することが必要条件となることは言うまでもない。ま
た、図２に示す実施例では基材シート２が成形品１３と
接合するため、成型時の熱接合性も必要条件となる。

【００１６】以上のように、本発明は絵付け成型用転写
シートにおける絵柄印刷層をインク受容層で構成し、イ
ンクジェットプリンタで高レベルの平面画像を形成、３
次元曲面を有する樹脂成型品に転写することが出来るも
のであるが、転写シートの構成、材質、厚さを初め、被
転写物（成型品）の形状、凹凸の深さ、成形品材質、成
形温度、さらには、転写の仕上がり品質等の要求品質の
程度等により、転写シートの構成の変更が必要となる。

【００１７】例えば、転写シート１の基材シート２が薄
いもので、インクジェットプリンタで用紙の搬送がで出
来にくく、かつ転写画像面に射出成型時のキズ防止をす
る事が必要な場合は、図３に示す転写シートの構造が効
果的である。

【００１８】この構造は、基材シート２の上面にインク
受容層６を構成し、インクジェットプリンタで絵柄印刷
層を構成した後、アクリル系、シリコン系の剥離層８、
及び熱成形性のある適宜の樹脂シートからなる離型フィ
ルム９を設けるものであり、射出成形により転写後、剥
離層部から離型フィルム９を剥離する事により、成形擦
り傷の無い転写成形品１３を得る方法である。剥離層
８、及び離型フィルム９の構成方法は剥離層８はベタ印
刷、小型ロールコータ、バーコータ等ハンドコート等
で、又離型フィルム９は小型カレンダー装置、熱圧着等
の既存の方法を利用して構成することが出来る。

【００１９】又、転写シートの成型品への転写の際、基
材シート２と成形品１３の熱融合性が、それぞれの材
質、変形温度の違いによっては充分でない場合があり、
これに対処するため、基材シート２のインク受容層６と
反対の面に接着剤層１０を構成し、この接着剤層１０を
介して成形品１３との接合性を確保する方法も効果的で
ある。この場合の接着剤層１０としては、射出成形樹脂
との熱接着性を有し、且つ熱成形性を有する樹脂、例え
ば熱可塑性アクリル樹脂、ビニール系樹脂、オレフィン
系樹脂、塩化ゴム等が適用出来る。

【００２０】尚、本発明の転写シートは印刷インクのみ
を転写するものと異なり、基材シートを含めて成形品に
接合させるため、成型品に対して部分的転写を行う場合
は、基材シートの外形形状が成型品に形成されるという
制約があるが、この点は枠の形状デザインにより改善で
き、特徴のある絵柄の転写成型品を得ることが出来る。

【００２１】以上が本発明の基本形態の説明であるが、
以下にその具体的な実施形態を示し、より詳細に説明す
ると共に、その効果について記載する。

【００２２】

【実施例】以下に本発明の実施の形態について、より具
体的に説明するが、その基本構成は図２に示されるもの
で、２は熱成形性を有するプラスチックフィルムより成
る基材シート、６はインクジェットプリンターによるイ
ンクの受容層で従来の絵柄印刷層に相当するものであ
る。７はインクジェットプリンターにより印刷された
後、後加工により構成される保護層であり、構成の詳細
は上述のとうりである。

【００２３】この基本構成に於いて、以下に示す各種の
条件にて絵付け転写シートを作成し、射出成形による転
写を実施した。

【００２４】（第１の実施例）下記に示す厚さの基材シ
ートに小型のロールコーターにて、乾燥後下記の固形成
分量になるようインク受容層を構成し、乾燥後市販イン
クジェットプリンタにてカラー風景画像を印刷、その上
面から市販ポリウレタン系スプレー塗装により約１０μ
の厚さの保護層を形成し、基材シート側を金型ゲート
側、すなわち成型品との接合面になるように装着して成
型品材質をＡＢＳ樹脂にて射出成形を行った。

【００２５】基材シート 無延伸ナイロンフィルム ５０μｍ、１００μｍ、２０
０μｍ インク受容層（固形成分としての配合） 固形成分量で顔料としてのシリカ ５０％、バインダー
樹脂としてのポリビニルアルコール ４５％、その他
（耐水化剤、界面活性剤） ５％ 成形金型 Ｒ３０ｍｍの３次元曲面、及び抜き勾配角度５度、高さ
５ｍｍの段差部１１ｂを有する射出成形型 この実施例の転写結果は無延伸ナイロンフィルム ５０
μｍのものは問題なく転写できた。又１００μｍ、２０
０μｍのものにおいては射出成形型の段差部の保護層に
細かい型擦れキズが発生したが、５０μｍのものはキズ
の発生が無く転写出来た。

【００２６】このことから、保護層による転写シートで
は比較的厚めの基材シートを使用する場合は、段差の小
さい転写面を持つ成型品が好ましい。この点を改良した
転写シート構造については実施例＊＊に記載しする。

【００２７】また、基材シートと成型品との接合強度を
より向上するため、成型品との接合面をマット仕上げた
基材シートを使用して実施した結果、光沢面を持つ基材
シートが人間の手にて剥がすことが出来る程度の接合性
であるものに対し、マット仕上げの基材シートは剥がれ
る前に基材シートが破壊してしまう程の接合性を得るこ
とが出来た。

【００２８】（第２の実施例）第１の実施例と同じ条件
の基材シート、インク受容層を構成し、プリンタで印刷
後、インク受容層面に約１０μｍのアクリル−ウレタン
系の樹脂剥離層を設けると共に、約５０μｍのＡＢＳ樹
脂の離型フィルムシートを加熱ロールで熱圧着して転写
シートを構成した。

【００２９】このシートを第１の実施例と同じ成形金型
で射出成形し、剥離層から離型フィルムを取り外したた
結果、キズのない転写画像を得ることが出来た。

【００３０】（第３の実施例）第１の実施例と同じ条件
の基材シート、インク受容層を構成し、該基材シートの
インク受容層と反対側、すなわち成型品接合側に約１０
μｍのアクリル樹脂主体の接着層を構成し、プリンタで
画像印刷した後、第３の実施例と同じ剥離層、離 この
シートを第１の実施例と同じ成形金型で射出成形し、剥
離層から離型フィルムを取り外したた結果、キズのない
転写画像と共に、樹脂のみの基材シートが人間の手にて
剥がすことが出来る程度の接合性であるものに対し、接
着層を設けた基材シートは剥がれる前に基材シートが破
壊してしまう程度の接合性を得ることが出来た。

【００３１】

【発明の効果】本発明の目的は当初に述べた通り、樹脂
成型品の曲面転写用の絵付け成型用転写シートの提供を
目的をとし、シートの構成において、インクジェットプ
リンタにて絵柄を構成するためインク受容層を設けたこ
とを特徴とするもので、本発明の実施により、インクジ
ェットプリンタによる高レベルの印刷精細画像を非常に
簡単に得ることが出来、且つ従来の印刷用版作成の時間
が必要無いため極めて短時間で転写シートを作成出来る
大きな効果を生ずる。又、転写シートの作成費用は印刷
版が必要無いため非常に安価で製造出来る事も大きな利
点である。

【００３２】これらの特徴は、現在、最も要求の多いオ
リジナル的な多種少量生産の商品に適している点で利用
価値は非常に高いものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来の一般的な絵付け成型用転写シートの構造
を示す断面構造図。

【図２】本発明の第１の実施例を示す絵付け成型用転写
シートの構造を示す断面構造図。

【図３】本発明の第２の実施例を示す絵付け成型用転写
シートの構造を示す断面構造図。

【図４】本発明の第３の実施例を示す絵付け成型用転写
シートの構造を示す断面構造図。

【図５】本発明の成形時の状態を示す断面構造図。

【符号の説明】

１：転写シート ２：基材シート ３：剥離層 ４：図柄印刷層 ５：接着剤層 ６：インク受容層 ７：保護層 ８：剥離層 ９：離型フィルム １０：接着剤層 １１：成形金型のキャビティ（雌型） １１ａ：キャビティ面 １１ｂ：金型段差部 １２：成形金型のコアー（雄型） １２ａ：金型ゲート １３：成形品

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 熱成形性を有するプラスチックフィルム
   よりなる基材シート上に、顔料及び熱成形性を有するバ
   インダー樹脂を主体とする絵柄構成用インク受容層を設
   けたことを特徴とする絵付け成型用転写シート。
2. 【請求項２】 インク受容層面にインクジェットプリン
   タで絵柄を構成したのち、熱成形性を有する樹脂保護層
   を設けたことを特徴とする請求項１記載の絵付け成型用
   転写シート。
3. 【請求項３】 インク受容層面にインクジェットプリン
   タで絵柄を構成したのち、熱成形性を有する剥離層及び
   剥離フィルムを設けたことを特徴とする請求項１記載の
   絵付け成型用転写シート。
4. 【請求項４】 インク受容層と反対側基材シート面に接
   着剤層を設けたことを特徴とする請求項１、２または３
   記載の絵付け成型用転写シート。
5. 【請求項５】 インク受容層と反対側基材シート面がマ
   ット状表面で構成したことを特徴とする請求項１、２ま
   たは３記載の絵付け成型用転写シート。