JPH1030522A - 燃料噴射装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な構成で燃料配管から発生する振動音を
低減する燃料噴射装置を提供する。 【解決手段】 燃料配管３０は、インジェクタ１０とデ
リバリパイプ２０とを接続する配管本体のほぼ全長に渡
って樹脂チューブ３３が配管本体を密着して覆う構造に
なっている。配管本体は、配管本体内の燃料脈動と、イ
ンジェクタ１０の開閉により発生する衝突振動により振
動する。樹脂チューブ３３で配管本体を密着して覆うこ
とにより樹脂チューブ３３が配管本体の振動を吸収する
ので、燃料配管３０から生じる振動音が低減される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、燃料噴射装置に関
し、特にインジェクタに燃料を導入する燃料配管に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、燃料ポンプとデリバリパイ
プ、ならびにインジェクタとデリバリパイプとを燃料配
管で接続し、デリバリパイプで各気筒毎に分配された燃
料を燃料配管を介してインジェクタに供給し、インジェ
クタの噴孔から各気筒内に燃料を噴射する燃料噴射装置
が知られている。

【０００３】燃料配管内の燃料には、燃料ポンプから伝
達する脈動や、インジェクタの閉弁時に反射波により生
じる脈動が存在し、この燃料脈動により燃料配管が振動
する。さらに、噴孔の開閉に伴い、例えばインジェクタ
の弁部材が弁座に着座するときのようにインジェクタ内
の部材同士が衝突するときに発生する衝突振動が燃料配
管に伝達して燃料配管が振動する。したがって、特にイ
ンジェクタに接続される燃料配管から発生する振動音が
大きくなることがある。また、燃料ポンプ側の燃料配管
にもデリバリパイプを介してインジェクタ側の振動が伝
わり大きな振動音を発生することがある。

【０００４】燃料配管には固有の共鳴周波数があり、こ
の共鳴周波数と燃料の脈動周波数、またはインジェクタ
の開閉時の衝突により発生する振動周波数とが近似する
と、燃料の脈動またはインジェクタの衝突振動が燃料配
管により増幅され、大きな音を発生する。このような燃
料配管から生じる音を低減するため、エンジンヘッドや
インテークマニホールドと燃料配管の配管本体とをクラ
ンプで固定するものが知られている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、エンジ
ンヘッドやインテークマニホールドと配管本体とをクラ
ンプで固定するものは、部品点数が増加するとともに、
クランプ取付け時に他部材と干渉することがあるので取
付け作業が煩雑であるという問題がある。本発明の目的
は、簡単な構成で燃料配管から発生する振動音を低減す
る燃料噴射装置を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１または
２記載の燃料噴射装置によると、予め配管本体に振動低
減部材を取付けることができるので、燃料配管から発生
する振動音を低減する振動低減部材の取付け作業が容易
になる。また、振動低減部材は他部品とは接続されずに
配管本体にだけ取付けられるので部品点数が低減する。
しかも簡単な構造で配管の振動を低減させることができ
る。

【０００７】本発明の請求項３記載の燃料噴射装置によ
ると、樹脂チューブで配管本体を覆った後樹脂チューブ
を加熱することにより、配管本体に容易に樹脂チューブ
を密着させることができる。したがって、樹脂チューブ
による振動低減効果を簡単に向上することができる。本
発明の請求項４記載の燃料噴射装置によると、配管本体
の一部に振動低減部材を取付けることにより、振動低減
部材を取付けた燃料配管の共鳴周波数を配管本体の共鳴
周波数からずらすことができる。したがって、簡単な取
付け作業で容易に燃料配管の振動音を低減することがで
きる。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示す
複数の実施例について説明する。 （第１実施例）本発明の第１実施例による燃料噴射装置
を図１および図２に示す。図２は燃料配管３０の縦断面
を示している。

【０００９】図１に示す燃料噴射装置のインジェクタ１
０は、金属製のシリンダスクリュウ１１が金属製のエン
ジンヘッド１とねじ結合することによりシリンダスクリ
ュウ１１により押圧されエンジンヘッド１に取付けられ
ている。インジェクタ１０は、電磁駆動部としてのコイ
ルへ１２の通電をオン・オフすることによりニードル弁
１３を往復駆動し噴孔から燃焼室２に直接噴射する燃料
の噴射時期および燃料噴射量を制御する電磁制御式のイ
ンジェクタである。

【００１０】インジェクタ１０の先端に形成された噴孔
はインジェクタ１０の軸に対して所定角度をもって形成
されている。インジェクタ１０の軸に対して所定角度を
もって噴孔を形成したのは、エンジンの気筒内に燃料を
直接噴射する本実施例のような筒内直噴エンジンにおい
て、混合気の濃度分布を点火プラグ３の周囲は濃く、そ
の他の部分は薄くなるように燃料噴射させる、いわゆる
成層燃焼させるためである。この成層燃焼を成立させる
ためには気筒内の混合濃度分布を最適に制御することが
必要なため、前述したようにインジェクタ１０の軸に対
して所定角をもって噴孔を形成し、この噴孔から噴射さ
れる燃料噴霧が気筒内の所定方向に噴射されるようにイ
ンジェクタ１０の回転方向の位置決めをする必要があ
る。

【００１１】ストッパ１４は金属製のエンジンヘッド１
に形成された溝４に係止され、これによりインジェクタ
１０の回転方向の位置決めがなされるので、インジェク
タ１０の燃料噴射方向が規定される。シリンダスクリュ
ウ１１は、エンジンヘッド１とねじ結合することにより
インジェクタ１０を付勢してエンジンヘッド１にインジ
ェクタ１０を取付け、エンジンヘッド１とのねじ結合を
ゆるめることにより取付方向とは逆方向にインジェクタ
１０を付勢してエンジンヘッド１からインジェクタ１０
を取外す。

【００１２】燃料配管３０の両端にはそれぞれ燃料継手
３１が固定されており、燃料配管３０の一方の端部はリ
テーニッグナット４１によりインジェクタ１０に接続さ
れ、他方の端部はリテーニングナット４１によりデリバ
リパイプ２０の燃料供給管２１に接続されている。デリ
バリパイプ２０はインテークマニホールド５にボルトに
より固定されている。

【００１３】図２に示すように、燃料配管３０は内側に
Cuメッキが施された鋼製パイプである配管本体３２を振
動低減部材としての樹脂チューブ３３が覆う構造になっ
ており、インジェクタ１０とデリバリパイプ２０とを接
続する配管本体３２のほぼ全長に渡って樹脂チューブ３
３が配管本体３２を覆っている。樹脂チューブ３３は熱
収縮性を有するポリエチレン樹脂で形成されている。樹
脂チューブ３３に配管本体３２を嵌挿した後、樹脂チュ
ーブを熱風等で加熱することにより樹脂チューブ３３を
収縮させ、配管本体３２に樹脂チューブ３３を密着させ
る。

【００１４】次に、樹脂チューブ３３による振動低減効
果について説明する。配管本体３２は、(1) 配管本体３
２内の燃料の脈動と、(2) インジェクタ１０の開閉によ
り発生しインジェクタ１０から伝達する衝突振動により
振動する。 (1) 配管本体３２内の燃料には、次のおよびにより
脈動が発生する。 図示しない燃料ポンプから吐出される燃料の脈動がデ
リバリパイプ２０から配管本体３２内の燃料に伝達す
る。

【００１５】コイル１２への通電をオフすることによ
りニードル弁１３がノズルボディに形成された弁座に着
座して噴孔を閉塞するとき、高圧の燃料を急激に遮断す
ることにより反射波が発生する。インジェクタ１０で発
生した反射波は、配管本体３２とデリバリパイプ２０と
の境界部で容積の違いにより一部が反射されインジェク
タ１０に戻る。インジェクタ１０が開閉を繰り返すこと
によりインジェクタ１０とデリバリパイプ２０との間で
反射波が往復し、この反射波が配管本体３２内の燃料に
脈動を発生させる。

【００１６】(2) また、ニードル弁１３が弁座に着座ま
たは弁座から離座して噴孔を開閉する際、ニードル弁１
３と弁座とが衝突したり、またはニードル弁１３がイン
ジェクタ内部に設けられたニードル弁１３のストッパと
衝突することによりインジェクタ１０に衝突振動が発生
し、この振動が配管本体３２に伝達し、配管本体３２が
振動する。特に、本実施例のように燃焼室に直接ガソリ
ンを噴射するインジェクタ１０においては、燃焼室から
は高温高圧がインジェクタ１０に加わり、配管からは高
圧がインジェクタ１０に加わる。そのため、インジェク
タ１０をＯリング等のゴム製シール部材を介在させずに
金属同士を直接接触させて取付けている。そのため、振
動を吸収するＯリングのような部品がない上、エンジン
側からの振動も配管に伝わりやすい。

【００１７】第１実施例では、樹脂チューブ３３で配管
本体３２を密着して覆うことにより、樹脂チューブ３３
がこれらの原因による配管本体３２の振動を吸収して低
減している。したがって、図３に示すように、樹脂チュ
ーブ３３で配管本体３２を覆わない従来例に比べ、配管
本体３２の振動が低減するので、燃料配管３０から生じ
る振動音が低減されている。図３に示すデータは、配管
本体３２の内径を４．５mm、配管本体３２の板厚を０．
７mm、樹脂チューブ３３の厚みを０．７mmとして計測し
たものである。このデータによれば、ニードル弁の衝突
振動が従来例では約１１kHz で約６０dB(A) であったも
のが、本実施例では５０dB(A) まで低減できる。さら
に、燃料の脈動が従来例では約２kHz で６０dB(A) であ
ったものが、本実施例では５０dB(A) 以下まで低減でき
る。これらニードル弁の衝突振動および燃料の脈動が支
配的であった騒音が、本実施例では他の要因による振動
レベルと同程度まで低減できるので、トータルとしての
騒音を効果的に低減できる。

【００１８】第１実施例では、熱収縮性を有する樹脂チ
ューブ３３で配管本体３２を覆ったが、配管本体３２の
振動を吸収するのであればどのような材質で配管本体３
２を覆っても良く、例えば、フッ素系ゴムで配管本体３
２を覆うことも可能である。 （第２実施例）本発明の第２実施例を図４に示す。

【００１９】第２実施例の燃料配管５０は、配管本体３
２の一部に振動低減部材としての断面Ｃ字状の金属環５
１を取付けたものである。金属環５１は配管本体３２
に、かしめ、溶接等で固定されている。配管本体３２に
金属環５１を取付けることにより燃料配管５０全体の重
量が重くなるので、金属環５１を取付けた燃料配管５０
全体としての共鳴周波数は配管本体３２の共鳴周波数よ
りも低下する。これにより、配管本体３２内の燃料脈
動、およびインジェクタ１０の開閉により生じる衝突振
動を燃料配管５０が増幅させない程度に燃料配管５０の
共鳴周波数を設定することができる。

【００２０】燃料脈動およびインジェクタの衝突振動の
周波数、ならびに配管本体の共鳴周波数はエンジンや燃
料噴射装置毎に異なっているが、金属環の重量を変更す
ることにより各システムに応じて容易に燃料配管から生
じる振動音を低減できる。また第２実施例では、振動低
減部材を取付けることにより燃料配管の共鳴周波数を配
管本体の共鳴周波数からずらせるのであれば、どのよう
な材質を用いてもよい。また、振動低減部材の形状は配
管本体に取付け可能であれば環状である必要はない。

【００２１】以上説明した各実施例では、インジェクタ
とデリバリパイプとを接続する配管本体に振動低減部材
を取付けた例について説明した。しかしながら、インジ
ェクタ側の振動が燃料ポンプと接続する配管本体にデリ
バリパイプを経由して伝達し、燃料ポンプ側の配管本体
から振動音が発生することも考えられる。したがって、
デリバリパイプと燃料ポンプとを接続する配管本体に振
動低減部材を取付けて燃料ポンプ側の燃料配管からの振
動音の発生を低減することは振動低減効果という観点か
ら有効である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例による燃料噴射装置を示す
構成図である。

【図２】第１実施例の燃料配管を示す縦断面図である。

【図３】第１実施例および従来例において燃料配管から
発生する振動音の音圧を示す特性図である。

【図４】本発明の第２実施例による燃料配管を示す斜視
図である。

【符号の説明】

１ エンジンヘッド １０ インジェクタ １１ ニードル弁 １４ ストッパ ２０ デリバリパイプ ３０ 燃料配管 ３２ 配管本体 ３３ 樹脂チューブ（振動低減部材） ４１ 燃料継手 ４２ リテーニングナット ５０ 燃料配管 ５１ 金属環（振動低減部材）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新保 善一 愛知県豊田市トヨタ町１番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃料配管から導入される燃料をインジェ
   クタからエンジンに噴射する燃料噴射装置であって、 前記燃料配管の配管本体の振動を低減させる振動低減部
   材を少なくとも前記インジェクタに接続される前記配管
   本体に他部材と非接続に取付けることを特徴とする燃料
   噴射装置。
2. 【請求項２】 前記振動低減部材は前記配管本体のほぼ
   全長を覆う樹脂チューブであることを特徴とする請求項
   １記載の燃料噴射装置。
3. 【請求項３】 前記樹脂チューブは熱収縮性を有するこ
   とを特徴とする請求項２記載の燃料噴射装置。
4. 【請求項４】 前記振動低減部材は前記配管本体の一部
   に取付けられることを特徴とする請求項１記載の燃料噴
   射装置。