JPH1030143A - 印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法

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JPH1030143A
JPH1030143A JP8189619A JP18961996A JPH1030143A JP H1030143 A JPH1030143 A JP H1030143A JP 8189619 A JP8189619 A JP 8189619A JP 18961996 A JP18961996 A JP 18961996A JP H1030143 A JPH1030143 A JP H1030143A
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weight
alloy plate
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Yoshihiko Asakawa
義彦 浅川
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粗面化ピットが均一に形成される印刷版用ア
ルミニウム合金板及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 印刷版用アルミニウム合金板は、Fe:
0.20乃至0.6重量%、Si:0.03乃至0.1
5重量%、Ti:0.005乃至0.05重量%及びN
i:0.005乃至0.20重量%を含有し、残部がA
l及び不可避的不純物からなるものであって、X線光電
子分光法により表面から0.5μmの深さまでの結合エ
ネルギー分布を測定したとき、530乃至536eVの
間におけるピークの半値幅が2乃至5eVである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オフセット印刷等
の支持体として使用される印刷版用アルミニウム合金板
に関し、特に均一な電解粗面化面を形成することができ
る印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より一般にオフセット印刷において
は、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、総称し
てアルミニウムという)板が支持体として使用されてい
る。この印刷版用アルミニウム板は、感光膜に対する密
着性及び非画像部の保水性を付与するために、アルミニ
ウム板の表面に粗面化処理を施して得られたものであ
る。この粗面化処理方法として、従来から、ボール研磨
法及びブラシ研磨法等の機械的処理法が使用されている
が、最近は、塩酸若しくは塩酸を主体とする電解液又は
硝酸を主体とする電解液を使用してアルミニウム板表面
を電気化学的に粗面化する電解粗面化処理法、更に前述
の機械的処理法とこの電解粗面化処理法とを組み合わせ
た処理方法が主に使用されるようになってきている。こ
れは、電解粗面化処理法によって得られた粗面板が製版
に適しており、また印刷性能も優れているからであり、
更に電解粗面化処理法では、アルミニウム合金板をコイ
ル状にして連続処理する場合に適しているからである。
【0003】前述のようにして、粗面化されるアルミニ
ウム合金板には、その粗面化処理によって均一な凹凸
(ピット)が形成されることが要求される。均一な凹凸
が形成された印刷版用アルミニウム合金板においては、
感光膜との密着性及び保水性が向上すると共に、優れた
画像鮮明性及び耐刷性を得ることができる。また、最近
では粗面化処理コストを低減させるため、より短時間又
は低通電量で均一な凹凸を形成することができる材料の
開発が強く求められている。
【0004】このような電気化学的粗面化処理に適する
アルミニウム板は、Fe、Cu及びその他の微量元素を
添加することにより得ることができ、例えば、Fe:
0.2乃至1.0重量%、Cu:0.1乃至2.0重量
%及びSn、In、Ga及びZnから選択された1種以
上の元素が0.05乃至0.1重量%添加されたアルミ
ニウム合金板が提案されている(特開昭58−2101
44号公報)。このアルミニウム合金板は、化学的なエ
ッチング処理に対して溶解速度が速いという特徴があ
る。
【0005】また、粗面均一性が優れたアルミニウム合
金板として、Fe:0.05乃至0.5重量%、Mg:
0.1乃至0.9重量%、Si:0.2重量%以下及び
Cu:0.05重量%以下を含有し、更にZr、V及び
Niからなる群から選択された1種以上の元素を0.0
1乃至0.3重量%含有し、残部がAl及び不可避的不
純物からなるアルミニウム合金板が提案されている(特
開昭62−230946号公報)。
【0006】更に、強度及びピットの均一性が良好なア
ルミニウム合金板として、Mg:0.30乃至3重量
%、Fe:0.15乃至0.50重量%、Ni:0.0
05乃至0.30重量%及びTi:0.01乃至0.1
0重量%を含有すると共に、Si、Cu及びMnを、夫
々、0.20重量%以下に規制し、残部がAl及び各元
素の含有量が、夫々、0.10重量%以下の不可避的不
純物からなるアルミニウム合金板が提案されている(特
開昭63−30294号公報)。
【0007】更にまた、均一な粗面を形成すると共に、
非画線部の汚れを防止して画線部の調子再現性及び色調
(明度)を良好にするアルミニウム合金板として、F
e:0.1乃至1.0重量%、Si:0.02乃至0.
15重量%及び不純物のCu:0.003重量%以下を
含有し、更に残部がAl及びCu以外の不可避的不純物
からなるアルミニウム合金板が提案されている(特公平
1−47545号公報)。
【0008】更にまた、Fe:0.1乃至0.5重量
%、Si:0.03乃至0.30重量%、Cu:0.0
01乃至0.03重量%、Ni:0.001乃至0.0
3重量%、Ti:0.002乃至0.05重量%及びG
a:0.005乃至0.020重量%を含有し、更にG
a及びTiの合計含有量が0.010乃至0.050重
量%であるアルミニウム合金板が提案されている(特開
平3−177528号公報)。このアルミニウム合金板
においては、筋状の粗面化ムラであるストリーク(スト
リークスともいう。以下、ストリークという)及び不規
則な画質ムラを改善すると共に粗面が均一であるため、
非画線部の汚れが防止されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近時、
コスト低減のために、電解処理速度の向上が要求されて
おり、短時間の電解粗面化処理で均一なピットが形成さ
れるアルミニウム板が要望されている。即ち、形成され
るピットが浅い場合であっても、短時間で均一にエッチ
ングされ、アルミニウム板に未エッチング部(アルミニ
ウム板表面のエッチングされていない部分)が発生しな
いことが要望されている。しかしながら、従来のアルミ
ニウム板はこのような要望を満足するものではなかっ
た。
【0010】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、粗面化ピットが均一に形成される印刷版用
アルミニウム合金板及びその製造方法を提供することを
目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る印刷版用ア
ルミニウム合金板は、Fe:0.20乃至0.6重量
%、Si:0.03乃至0.15重量%、Ti:0.0
05乃至0.05重量%、及びNi:0.005乃至
0.20重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純
物からなり、X線光電子分光法により表面から0.5μ
mの深さまでの領域の結合エネルギー分布を測定したと
き、530乃至536eVの間におけるピークの半値幅
が2乃至5eVであることを特徴とする。
【0012】本発明に係る印刷版用アルミニウム合金板
の製造方法は、Fe:0.20乃至0.6重量%、S
i:0.03乃至0.15重量%、Ti:0.005乃
至0.05重量%、及びNi:0.005乃至0.20
重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からな
るアルミニウム合金鋳塊を500乃至630℃の温度で
均質化処理し、次いで、圧延開始温度を400乃至45
0℃としてこれを熱間圧延する印刷版用アルミニウム合
金板の製造方法であって、このアルミニウム合金板の表
面から0.5μmの深さまでの領域の結合エネルギー分
布をX線光電子分光法によって測定したとき、530乃
至536eVの間におけるピークの半値幅が2乃至5e
Vであることを特徴とする。また、熱間圧延後に、冷間
圧延、中間焼鈍及び最終冷間圧延を順次施すことができ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】本願発明者等は、均一な粗面化ピ
ットが形成される印刷版用アルミニウム合金板を得るた
めに鋭意研究した結果、アルミニウム合金板が含有する
合金元素のうち、従来より添加されているFe及びSi
の含有量を管理することに加え、適量のNi及びTiを
添加することが有効であることを見出した。
【0014】ところで、印刷版となるアルミニウム合金
板の粗面化処理には、一般的に、交流電解法が使用され
ている。これは、アノードでのアルミニウムの溶解反応
と、カソードでの合金板表面への皮膜形成反応とを一定
周波数でサイクリックに発生させることにより、アルミ
ニウム合金板の表面に凹凸を形成するものである。特
に、各サイクルにおけるアノードの初期反応は、粗面形
態、即ち、未エッチング部の多少及び粗面化ピットの均
一性を大きく支配する。
【0015】これらのことから、本願発明者等は、電解
中にアルミニウム合金板の表面に形成されている皮膜の
水和度を適正な範囲に規定することにより、エッチング
性を向上させ、これにより、未エッチング部の形成を防
止することができ、粗面化面の均一性が向上することを
見い出した。
【0016】以下、本発明における印刷版用アルミニウ
ム合金板について、更に説明する。先ず、アルミニウム
合金板に含有される化学成分及び組成限定理由について
説明する。
【0017】Fe:0.20乃至0.6重量% Feはアルミニウム合金の主要構成成分であり、アルミ
ニウム合金中において、Al−Fe系の金属間化合物を
形成し、アルミニウム合金板の電界粗面化時において、
イニシャルピットを形成する元素である。また、Feは
再結晶粒の微細化効果を有すると共に、組織を均一化さ
せることによって機械的強度を向上させる効果を有す
る。Fe含有量が0.20重量%未満であると、Fe−
Al系の金属間化合物が不足するため、電界粗面化時に
おけるイニシャルピットの形成が不十分となる。一方、
Fe含有量が0.6重量%を超えると、粗大化合物が形
成されて、電界粗面化面が不均一になってしまう。従っ
て、Fe含有量は0.20乃至0.6重量%とする。
【0018】Si:0.03乃至0.15重量% SiはAl−Fe−Si系金属間化合物を形成し、イニ
シャルピットの形成を促進すると共に、ピットの均一性
を向上させる元素である。Si含有量が0.03重量%
未満であると、金属間化合物が不足するので、イニシャ
ルピットの形成が不十分となる。一方、Si含有量が
0.15重量%を超えると、粗大化合物が形成されて、
電界粗面化面が不均一になってしまう。従って、Si含
有量は0.03乃至0.15重量%とする。
【0019】Ti:0.005乃至0.05重量% Tiは鋳造組織の微細化作用を有する元素である。Ti
含有量が0.005重量%未満であると、鋳造組織を微
細化する効果を得ることができない。一方、Tiを0.
05重量%を超えて添加しても、その効果は飽和してし
まい、原料コストが高くなってしまう。また、電界粗面
化面において不均一なピットが形成されやすくなる。従
って、Ti含有量は0.005乃至0.05重量%とす
る。
【0020】Ni:0.005乃至0.20重量% Niは材料の化学溶解性を向上させ、電界粗面化時のエ
ッチング量を向上させる元素である。また、Niはアル
ミニウム合金中において、Fe−Al−Si−Ni系の
金属間化合物を形成する。この化合物はAl−Fe−S
i系の化合物よりも更に電位が貴であるため、電界粗面
化時におけるイニシャルピットの形成をより一層促進さ
せ、短時間で均一な粗面化面の形成を可能にする。Ni
含有量が0.005重量%未満であると、化学溶解性の
向上が不十分になると共に、イニシャルピットの形成も
不十分となる。一方、Ni含有量が0.20重量%を超
えると、化学溶解性が過剰に促進されるので、ピットの
均一性が損なわれてしまう。従って、Ni含有量は0.
005乃至0.20重量%とする。
【0021】次いで、電解中にアルミニウム合金板の表
面に形成されている皮膜の水和度の測定方法及び限定理
由について説明する。
【0022】530乃至536eVの間における領域の
結合エネルギー分布のピークの半値幅:2乃至5eV X線光電子分光法により、アルミニウム合金板の表面か
ら0.5μmの深さまでの領域の結合エネルギー分布を
測定すると、Al23のピークは531.2±0.4
(eV)の位置に、Al(OH)3のピークは531.5
(eV)の位置に現れる。通常、両者のピークは間隔が
狭いために重なっているが、水酸化物が増加すると、ピ
ークの幅が広くなる。従って、本発明においては、水酸
化物量、即ち、電解中にアルミニウム合金板の表面に形
成された皮膜の水和度を、530乃至536eVの間に
おける結合エネルギー分布のピークの半値幅により評価
するものとする。
【0023】なお、本発明においては、アルミニウム合
金板の表面(0μm)から0.5μmの領域において、
結合エネルギー分布のピークの半値幅を規定する。これ
は、通常、空気中で生成される酸化皮膜は数十Åであ
り、水中では更に薄くなるので、測定領域を0乃至0.
5μmに設定しておけば、酸化皮膜の厚さにばらつきが
発生しても、皮膜の水和度を確実に分析することができ
るからである。
【0024】皮膜の水和度が低い場合、即ち、半値幅が
2eV未満である場合は、皮膜の耐電圧が低くなり、容
易に皮膜が破壊するために、全面溶解を起こしやすく、
均一なピットが形成されず、均一な粗面化面を形成する
ことができない。一方、皮膜の水和度が高い場合、即
ち、半値幅が5eVを超える場合は、皮膜の耐電圧が大
きくなり、皮膜が破壊せずピットが発生しない場所がで
きるため、エッチング性の不足により未エッチング部が
増加して、均一な粗面化面を得ることができない。従っ
て、530乃至536eVの間において、アルミニウム
合金板の表面から0.5μmの深さまでの領域の結合エ
ネルギー分布のピークの半値幅は2乃至5eVとする。
【0025】また、本発明に係る印刷版用アルミニウム
合金板の製造方法においては、化学成分を規定すると共
に、均質化処理温度及び熱間圧延開始温度を制御するこ
とが重要である。これにより、得られたアルミニウム合
金板に電解粗面化処理を施した場合は、エッチングが電
解粗面化面に均一に施されると共に、ピットの大きさに
バラツキが発生せず、均一なものとなる。この場合に、
熱間圧延の後に、更に冷間圧延、中間焼鈍及び最終冷間
圧延を順次実施してもよい。
【0026】以下、印刷版用アルミニウム合金板の製造
方法における均質化処理温度及び熱間圧延開始温度の数
値限定理由について説明する。
【0027】均質化処理温度:500乃至630℃ アルミニウム合金鋳塊からアルミニウム合金板を圧延等
により製造する場合に、この鋳塊を圧延する前に、所定
温度で均質化処理することが必要である。均質化処理温
度が500℃未満では、均質化が不十分となるため、均
一な粗面化面を得ることができない。一方、均質化処理
温度が630℃を超えると、アルミニウム合金鋳塊にお
ける固溶量が大きくなりすぎて、電解粗面化時のイニシ
ャルピットの起点が少なくなり、未エッチング部の増加
を促進させる。従って、均質化処理温度は500乃至6
30℃とする。
【0028】熱間圧延開始温度:400乃至450℃ 上述の均質化処理が施されたアルミニウム合金鋳塊を熱
間圧延するときには、所定の温度で熱間圧延を開始する
必要がある。熱間圧延開始温度が400℃未満では、圧
延中の動的再結晶が不十分であり、圧延板の結晶組織が
不均一となって、均一な粗面化面を得ることができな
い。一方、熱間圧延開始温度が450℃を超えると、熱
間圧延の各パス間において、結晶粒が過剰に成長してし
まうため、均一な粗面化面を得ることができない。従っ
て、熱間圧延開始温度は400乃至450℃とする。
【0029】
【実施例】以下、本発明に係る印刷版用アルミニウム合
金板の実施例について、その比較例と比較して具体的に
説明する。
【0030】先ず、下記表1に示す種々の化学組成を有
する各アルミニウム合金の鋳塊を面削して厚さを470
mmとし、590℃の温度で4時間の均質化処理を施し
た。次に、圧延開始温度を430℃に設定して熱間圧延
し、更に冷間圧延、中間焼鈍及び冷間圧延を順次施すこ
とにより、板厚が0.3mmのアルミニウム合金板を製
造した。
【0031】その後、得られたアルミニウム合金板に対
して、下記表2に示す処理条件により、脱脂、中和洗浄
及び交流電解を実施し、更に、電解により形成された酸
化物等を除去するためにデスマット処理を施した。そし
て、各サンプルの表面から0.5μmの深さまでの領域
の結合エネルギー分布をX線光電子分光法により測定
し、530乃至536eVの間におけるピークの半値幅
を算出した。本実施例においては、結合エネルギー分布
の測定装置として、PHI5400(アルバックファイ
製)を使用した。
【0032】更に、デスマット処理を施した各サンプル
を水洗及び乾燥し、これを一定の大きさに切り取って試
験片を作製して、各試験片について、エッチング性及び
粗面化面の均一性を評価した。以下に、エッチング性及
び粗面化面の均一性の評価基準について説明する。
【0033】エッチング性 各試験片の粗面化表面を、走査電子顕微鏡(SEM)を
使用して、350倍の倍率で表面観察し、視野の面積の
合計が0.02mm2となるように顕微鏡写真を撮影し
た。得られた写真から、下記数式1より未エッチング率
を算出した。
【0034】
【数1】未エッチング率(%)=(粗面化されていない部
分の面積/全体の面積)×100
【0035】エッチング性の評価は、上記数式1により
算出された未エッチング率が8.0%以下の場合を○
(エッチング性良好)とし、未エッチング率が8.0%
を超える場合を×(エッチング性不良)とした。
【0036】粗面化面の均一性 各試験片の粗面化表面を、走査電子顕微鏡を使用して、
倍率を500倍として顕微鏡写真を撮影した。そして、
得られた観察写真上に全長が100cmの線を引き、線
の下に存在する全てのピットの大きさ(直径)を測定し
た。均一性の評価は、最小のピットと最大のピットとの
大きさの差が3μm未満のものを○(均一性良好)、3
μm以上のものを×(均一性不良)とした。
【0037】各実施例及び比較例の評価結果を下記表1
に併せて示す。但し、表1に示す半値幅の値は、各サン
プルの表面から0.025μmの深さ及び0.5μmの
深さの位置における結合エネルギー分布をX線光電子分
光法により測定したときの値である。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】上記表1に示すように、実施例1乃至6
は、各元素の含有量及び半値幅が本発明にて規定した範
囲内であるので、エッチング性及び均一性のいずれもが
良好であった。
【0041】一方、比較例No.7は、Ni含有量が本
発明範囲の下限未満であるので、イニシャルピット及び
化学溶解性が不十分なものとなった。このため、未エッ
チング部が多く残ったと共に、ピットの大きさがバラツ
キ、均一性が劣化した。また、比較例No.8は、Ni
含有量が本発明範囲の上限を超えているので、化学溶解
性が過剰に促進されて、均一性が不良となった。比較例
No.9は、Si含有量が本発明範囲の上限を超えてい
るので、粗大化合物が形成され、電解粗面化面が不均一
となって、エッチング性及び均一性が不良となった。
【0042】比較例No.10は、Si含有量が本発明
範囲の下限未満であるので、金属間化合物が不足して、
イニシャルピットの形成が不十分となった。また、Ti
含有量の本発明範囲の下限未満であるので、鋳造組織の
微細化が不十分となり、これにより、均一性評価が不良
となった。比較例No.11は、Fe含有量が本発明範
囲の下限未満であるので、電解粗面化時のイニシャルピ
ットが不足して、エッチング性及び均一性の評価が不良
となった。
【0043】また、比較例No.12は、Fe含有量が
本発明範囲の上限を超えているので、粗大化合物が形成
され、電解粗面化面が不均一となった。比較例No.1
3は、Ti含有量が本発明範囲の下限未満であるので、
結晶粒の微細化が不十分であり、不均一なピットが形成
され、均一性が不良となった。比較例No.14は、T
i含有量が本発明範囲の上限を超えているので、粗大化
合物が形成され、ピットの大きさが不均一となり、均一
性が不良となった。
【0044】更に、比較例No.15は、Ni含有量が
本発明範囲の上限を超えていると共に、半値幅が本発明
範囲の下限未満であるので、ピットの均一性が不良とな
った。比較例16は、半値幅が本発明範囲の上限を超え
ているので、未エッチング部が残って、エッチング性及
び均一性が不良となった。
【0045】次に、本発明に係る印刷版用アルミニウム
合金板の製造方法の実施例について、その比較例と比較
して具体的に説明する。
【0046】先ず、実施例No.1の組成を有するアル
ミニウム合金鋳塊を面削して厚さを470mmとし、下
記表3に示す種々の温度で均質化処理を施し、更に、種
々の圧延開始温度で熱間圧延した。その後、冷間圧延、
中間焼鈍及び冷間圧延を順次施すことにより、板厚が
0.3mmのアルミニウム合金板を製造した。
【0047】その後、得られたアルミニウム合金板に対
して、実施例No.1乃至6及び比較例No.7乃至1
6と同様の条件で半値幅を測定すると共に、エッチング
性及び粗面化面の均一性を評価した。これらの評価結果
を下記表3に併せて示す。
【0048】
【表3】
【0049】上記表3に示すように、実施例No.21
乃至23は、エッチング性及び均一性の評価がいずれも
良好となった。
【0050】一方、比較例No.24は、均質化処理温
度が本発明範囲の下限未満であると共に、半値幅が2.
0eV未満であるので、均一性が不良となった。比較例
No.25は、均質化処理温度が本発明範囲の上限を超
えており、半値幅が5.0eVを超えているので、エッ
チング性及び均一性が低下した。
【0051】また、比較例No.26は、熱間圧延開始
温度が本発明範囲の下限未満であると共に、半値幅が
5.0eVを超えているので、エッチング性及び均一性
が低下した。比較例No.27は、熱間圧延開始温度が
本発明範囲の上限を超えていると共に、半値幅が2.0
eV未満であるので、均一性が不良となった。
【0052】次いで、アルミニウム合金板の表面から内
部までの水和度の変化を比較するために、実施例No.
1、比較例No.15及び16のアルミニウム板の表面
から0.5μmの深さまでの領域の結合エネルギー分布
をX線光電子分光法により測定し、各位置における半値
幅を算出した。
【0053】図1は縦軸に半値幅をとり、横軸に測定深
さをとって、半値幅と測定位置との関係を示すグラフ図
である。但し、図中のNo.は、実施例及び比較例のN
o.を示し、図中に記載した値は半値幅(eV)を示
す。図1に示すように、実施例No.1は、表面から
0.5μmの間のいずれの測定位置においても、半値幅
が2乃至5eVの範囲内であるので、その評価結果が良
好であった。一方、比較例No.15及び16は、測定
深さによって半値幅が本発明の範囲から外れているの
で、エッチング性又は均一性の評価結果が不良となっ
た。
【0054】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明に係る印刷
版用アルミニウム合金板は、化学成分が規定されている
と共に、その表面に形成された皮膜の水和度を結合エネ
ルギー分布のピークの半値幅によって規定しているの
で、粗面化ピットが電解粗面に均一に形成されると共
に、各ピットの大きさが略一定となる。
【0055】また、本発明に係る印刷版用アルミニウム
合金板の製造方法は、所定の化学成分を有するアルミニ
ウム合金鋳塊を所定の条件で均質化処理及び熱間圧延す
るので、電解粗面化処理後に均一な粗面化ピットが形成
されると共に、各ピットの大きさが略一定となる印刷版
用アルミニウム合金板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】縦軸に半値幅をとり、横軸に測定深さをとっ
て、半値幅と測定位置との関係を示すグラフ図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe:0.20乃至0.6重量%、S
    i:0.03乃至0.15重量%、Ti:0.005乃
    至0.05重量%、及びNi:0.005乃至0.20
    重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からな
    り、X線光電子分光法により表面から0.5μmの深さ
    までの領域の結合エネルギー分布を測定したとき、53
    0乃至536eVの間におけるピークの半値幅が2乃至
    5eVであることを特徴とする印刷版用アルミニウム合
    金板。
  2. 【請求項2】 Fe:0.20乃至0.6重量%、S
    i:0.03乃至0.15重量%、Ti:0.005乃
    至0.05重量%、及びNi:0.005乃至0.20
    重量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からな
    るアルミニウム合金鋳塊を500乃至630℃の温度で
    均質化処理し、次いで、圧延開始温度を400乃至45
    0℃としてこれを熱間圧延する印刷版用アルミニウム合
    金板の製造方法であって、前記アルミニウム合金板の表
    面から0.5μmの深さまでの領域の結合エネルギー分
    布をX線光電子分光法によって測定したとき、530乃
    至536eVの間におけるピークの半値幅が2乃至5e
    Vであることを特徴とする印刷版用アルミニウム合金板
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 熱間圧延後、冷間圧延、中間焼鈍及び最
    終冷間圧延を順次施すことを特徴とする請求項2に記載
    の印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
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