JPH10287941A - 焼結摩擦部材及びその製造方法 - Google Patents

焼結摩擦部材及びその製造方法

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JPH10287941A
JPH10287941A JP9894397A JP9894397A JPH10287941A JP H10287941 A JPH10287941 A JP H10287941A JP 9894397 A JP9894397 A JP 9894397A JP 9894397 A JP9894397 A JP 9894397A JP H10287941 A JPH10287941 A JP H10287941A
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powder
particles
friction material
based alloy
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Masaki Sugiyama
昌揮 杉山
Koji Harada
弘司 原田
Kazuhiro Miyajima
和浩 宮島
Kazuhiko Takahashi
和彦 高橋
Yoshio Fuwa
良雄 不破
Makoto Nakamura
真 中村
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NIPPON FUNMATSU GOKIN KK
Toyota Motor Corp
Original Assignee
NIPPON FUNMATSU GOKIN KK
Toyota Motor Corp
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
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    • F16D23/00Details of mechanically-actuated clutches not specific for one distinct type
    • F16D23/02Arrangements for synchronisation, also for power-operated clutches
    • F16D23/025Synchro rings
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B22CASTING; POWDER METALLURGY
    • B22FWORKING METALLIC POWDER; MANUFACTURE OF ARTICLES FROM METALLIC POWDER; MAKING METALLIC POWDER; APPARATUS OR DEVICES SPECIALLY ADAPTED FOR METALLIC POWDER
    • B22F5/00Manufacture of workpieces or articles from metallic powder characterised by the special shape of the product
    • B22F5/08Manufacture of workpieces or articles from metallic powder characterised by the special shape of the product of toothed articles, e.g. gear wheels; of cam discs
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B22CASTING; POWDER METALLURGY
    • B22FWORKING METALLIC POWDER; MANUFACTURE OF ARTICLES FROM METALLIC POWDER; MAKING METALLIC POWDER; APPARATUS OR DEVICES SPECIALLY ADAPTED FOR METALLIC POWDER
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Abstract

(57)【要約】 【課題】Fe系粉末とCu系合金粉末との同時焼結を可
能にして、一度の焼結工程により手間をかけることなく
製造することを可能とし、しかもFe系基材とCu系摩
擦材との接合強度を向上させる。 【解決手段】Fe系基材1と、基材1と一体的に形成さ
れたCu−Ni系合金よりなる摩擦材2とからなり、F
e系粉末及びCu−Ni系合金粉末を同時成形及び同時
焼結することにより得られた焼結摩擦部材であって、上
記Cu−Ni系合金はNiを10〜70重量%含有する
ことを特徴とする。Niを所定量以上含有するCu−N
i系合金を摩擦材として採用するため、Cu系摩擦材と
Fe系基材とを同時成形及び同時焼結に製造することが
できる。また、Fe系基材とCu系摩擦材との接合面に
おいては、Fe系粉末及びCu−Ni系合金粉末同士が
十分に絡み合い、Fe系基材とCu系摩擦材との接合強
度が十分に向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は焼結摩擦部材及びそ
の製造方法に関し、詳しくはFe系基材とCu−Ni系
合金よりなる摩擦材とが一体的に形成された焼結摩擦部
材及びその製造方法に関する。本発明に係る焼結摩擦部
材は、例えば自動車用同期装置に用いられるシンクロナ
イザリングに好適に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来、鉄道車両や航空機等のブレーキや
クラッチに使用されるCu系摩擦材としては、Cu−S
n系又はCu−Al系等の青銅やCu−Zn系の高力黄
銅等のCu系合金粉末を焼結して得られたものが種々知
られている。また、自動車用同期装置を構成するシンク
ロナイザリングに、Cu−Zn系の高力黄銅(特開昭6
0−241527号公報参照。)やCu−Al系のアル
ミ青銅から鋳造又は鍛造により得られたCu系摩擦材を
適用する技術も従来知られている。なお、同期装置と
は、変速機のシフトポジション切換え時において、衝撃
的な噛み合いを避けるために、噛み合いクラッチの回転
速度差を小さくするような装置をいう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年におけ
る自動車等の高出力、高トルク化の傾向に伴い、シフト
時に上記シンクロナイザリングに過大な負荷が加わるよ
うになったため、Cu系合金の単体よりなるシンクロナ
イザリングでは、摩擦特性の面で満足できても、全体の
剛性や強度の面で不十分となってきた。
【0004】そこで、金属系摩擦材において強度及び摩
擦特性の機能を分担させために、強度的に優れたFe系
基材と、摩擦特性に優れたCu系合金よりなる摩擦材と
からなる複合摩擦材を焼結法により製造する手段が考え
られている。しかしながら、焼結法を用いてFe系基材
とCu系摩擦材とを製造しようとすると、Fe系粉末の
焼結温度が一般に1100〜1300℃であるのに対し
てCu系合金粉末の焼結温度は800℃程度と低く、F
e系粉末の焼結温度ではCu系合金粉末が溶融してしま
い焼結できない。このため、まずFe系粉末を焼結して
Fe系基材を製造し、その後Cu系合金粉末を800℃
程度で焼結してFe系基材と一体的に形成されたCu系
摩擦材を製造しなければならず、2回に分けて焼結する
必要があり手間がかかるという問題がある。
【0005】また、一旦焼結されたFe基材の表面、す
なわちFe系基材の焼結面にCu系摩擦材を焼結により
形成することにより両者を接合させるため、Fe系粉末
とCu系合金粉末との絡み合いが小さくなり、両者の接
合強度が低くなるという問題もある。本発明は上記実情
に鑑みてなされたものであり、Fe系粉末とCu系合金
粉末との同時焼結を可能にして、一度の焼結工程により
手間をかけることなく製造することができ、しかも両者
の接合強度が向上したFe系基材とCu系摩擦材とから
なる焼結摩擦部材を提供することを解決すべき技術課題
とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の焼結摩擦部材は、Fe系基材と、該基材と一体的に
形成されたCu−Ni系合金よりなる摩擦材とからな
り、Fe系粉末及びCu−Ni系合金粉末を同時成形及
び同時焼結することにより得られた焼結摩擦部材であっ
て、上記Cu−Ni系合金はNiを10〜70重量%含
有することを特徴とするものである。
【0007】好適な態様において、前記摩擦材には、F
eMo、FeCr、FeW、FeTi、窒化FeTi、
FeV及びFeBのFe系合金粒子群から選ばれた少な
くとも一種が5〜50重量%添加される。好適な態様に
おいて、前記摩擦材には、ZrO2 、TiO2 、ムライ
ト及びSi3 4 のセラミックス粒子群から選ばれた少
なくとも一種が2.5〜50重量%添加される。
【0008】好適な態様において、前記摩擦材には、黒
鉛粉末が2〜20重量%添加される。また、この黒鉛粉
末の粒径は44μm以下であることが好ましい。好適な
態様において、前記摩擦材には、SiO2 粒子が2.5
〜50重量%が添加される。また、上記課題を解決する
本発明の焼結摩擦部材の製造方法は、Fe系基材と、該
基材と一体的に形成されたCu−Ni系合金よりなる摩
擦材とからなる焼結摩擦部材の製造方法であって、Fe
系粉末よりなる基材部とCu−Ni系合金粉末よりなる
摩擦材部とが一体的に形成された成形体を同時成形によ
り得る成形工程と、上記成形体を同時焼結する焼結工程
とからなることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の焼結摩擦部材は、Fe系
基材と、該基材と一体的に形成されたCu−Ni系合金
よりなる摩擦材とからなり、Fe系粉末及びCu−Ni
系合金粉末を同時成形及び同時焼結することにより得ら
れる。上記Fe系基材の種類としては、焼結摩擦部材と
して必要とされる強度をFe系基材により確保しうるも
のであれば特に限定されない。例えば、Fe−Cu−C
系、Fe−Cu−P−C系やFe−Ni−Mo−Cu−
C系等のFe系焼結材料として一般的なFe系材料を適
宜選択して用いることができる。
【0010】上記Cu−Ni系合金はNiを10〜70
重量%含有するものである。Cu系合金においてNiを
合金化すればCu系合金の融点を上昇させることがで
き、Ni含有量が多ければ多いほどCu−Ni系合金の
融点が上昇する。そして、Niを10重量%以上含有し
たCu−Ni系合金であれば、Fe系粉末の焼結温度
(1100〜1300℃程度)でも溶融しないため、か
かるCu−Ni系合金粉末とFe系粉末とを同時焼結す
ることが可能となる。Cu−Ni合金中のNi含有量が
10重量%未満であると、Fe系粉末の焼結温度でCu
−Ni系合金が溶融してしまい、Fe系粉末とCu−N
i系合金粉末と同時焼結できなくなる。なお、Fe系粉
末の焼結温度でのCu−Ni系合金の溶融をより確実に
防止すべく、Niの含有量を15重量%以上とすること
が好ましい。一方、Cu−Ni系合金におけるNi含有
量が多すぎると、Cu系摩擦材として必要な摩擦特性
(耐焼付き性)を確保できなくなるおそれがある。Cu
系摩擦材として必要な摩擦特性(耐焼付き性)を確保す
る観点から、Cu−Ni系合金におけるNi含有量は7
0重量%以下とし、好ましくは45重量%以下とする。
【0011】ここに、上記Cu−Ni系合金よりなる摩
擦材には、好適な態様において、摩擦材として要求され
る摩擦特性に応じて種々の添加物、例えばFe系合金粒
子、セラミックス粒子、黒鉛粉末やSiO2 粒子が添加
される。例えば、摺動相手材として鋼材を用いた場合、
動力伝達を目的とする摩擦材に求められる摩擦特性とし
て、 1)摺動時の動摩擦係数が高いこと 2)耐焼付き性に優れること 3)耐摩耗性に優れること が挙げられる。これら1)〜3)の特性を向上させるた
めに上記各種の添加物を添加することができる。なお、
上記添加物粒子は、Cu−Ni系合金粉末から摩擦材部
を圧縮成形する際に、該Cu−Ni系合金粉末と均一に
混合することにより添加することができる。
【0012】上記Fe系合金粒子は、相手材(鋼材)と
の摺動時における摩擦係数を向上させるのに寄与しう
る。これは、同種の金属同士が接触すると凝着が起こり
易いため、摩擦面においてミクロ的な接触が発生し、凝
着部におけるせん断抵抗の増加により摩擦係数が向上す
るものと考えられる。このように摩擦係数向上に寄与し
うるFe系合金粒子としては、FeMo、FeCr、F
eW、FeTi、窒化FeTi、FeVやFeB等を挙
げることができる。したがって、特に高い摩擦係数が求
められる場合には、上記摩擦材にFeMo、FeCr、
FeW、FeTi、窒化FeTi、FeV及びFeBの
Fe系合金粒子群から選ばれた少なくとも一種を添加す
ることが好ましい。
【0013】上記Fe系合金粒子の添加量としては、5
〜50重量%とすることが好ましい。このFe系合金粒
子の添加量が5重量%未満であると摩擦係数向上の効果
が十分に発揮されない。一方、50重量%を超えると、
マトリックス成分としてのCu−Ni系合金同士の焼結
を阻害するため、摩擦材自身の強度が低下するととも
に、摩擦材と基材との接合強度も低下し、部品機能上好
ましくない。また、20重量%を超えてFe系合金粒子
を添加しても摩擦係数向上の効果をそれ以上期待できな
い。さらに、Fe系合金粒子の添加量が増えるに従って
摩擦材の耐焼付き性及び耐摩耗性が低下する傾向にあ
る。このため、耐焼付き性及び耐摩耗性を確保する観点
から、Fe系合金粒子の添加量は20重量%以下とする
ことが特に好ましい。なお、Fe系合金粒子の添加量が
増えるに従って摩擦材の耐焼付き性及び耐摩耗性が低下
するのは、相手材との凝着が増えることにより摩擦エネ
ルギー(発熱)が増加し、その結果焼き付き易くなって
凝着摩耗が促進されるためと考えられる。
【0014】上記Fe系合金粒子の大きさとしては、平
均粒径:20〜250μm程度とすることができる。F
e系合金粒子の平均粒径が20μmよりも小さいと、粉
末の流動性が悪化する。一方、250μmよりも大きい
と、偏析や薄肉部への粉末の充填不良が起こり易くな
る。上記セラミックス粒子は、摩擦材の耐摩耗性を向上
させるのに寄与しうる。セラミックス粒子は摩擦材表面
に分散して摩擦材と相手材との接触時にマトリックスよ
りも大きな荷重を受けもつことになり、これにより耐摩
耗性が向上するものと考えられる。このように耐摩耗性
向上に寄与しうるセラミックス粒子としては、Zr
2 、TiO2 、ムライトやSi3 4 等を挙げること
ができる。したがって、特に優れた耐摩耗性が求められ
る場合には、上記摩擦材にZrO2 、TiO2 、ムライ
ト及びSi3 4 のセラミックス粒子群から選ばれた少
なくとも一種を添加することが好ましい。
【0015】上記セラミックス粒子の添加量としては、
2.5〜50重量%とすることが好ましい。このセラミ
ックス粒子の添加量が2.5重量%未満であると耐摩耗
性向上の効果が十分に発揮されない。また、セラミック
ス粒子の添加量が2.5重量%未満であると摩擦係数が
極端に低下する。一方、50重量%を超えると、マトリ
ックス成分としてのCu−Ni系合金同士の焼結を阻害
するため、摩擦材自身の強度が低下するとともに、摩擦
材と基材との接合強度も低下し、部品機能上好ましくな
い。また、セラミックス粒子が所定量以上添加されてい
れば、セラミックス粒子の添加量が増えるに従って摩擦
係数が低下する傾向にある。さらに、耐焼付き性につい
ても、セラミックス粒子の添加量が増えるに従って低下
する傾向にある。このため、高摩擦係数及び耐焼付き性
を確保する観点から、セラミックス粒子の添加量は10
重量%以下とすることが特に好ましい。なお、セラミッ
クス粒子の添加量が増えるに従って摩擦材の摩擦係数及
び耐焼付き性が低下するのは、セラミックス粒子が敷石
効果により荷重の大半を受けもつことから、凝着効果や
潤滑効果が減少するためと考えられる。
【0016】上記セラミックス粒子の大きさとしては、
平均粒径:10〜250μm程度とすることができる。
セラミックス粒子の平均粒径が10μmよりも小さい
と、粉末の流動性が悪化する。一方、250μmよりも
大きいと、偏析や薄肉部への粉末の充填不良が起こり易
くなる。上記黒鉛粉末は層状の結晶構造をもつものであ
るため、摩擦面の潤滑性を向上させて耐焼付き性を向上
させるのに寄与しうる。したがって、特に優れた耐焼付
き性が求められる場合には、上記摩擦材に黒鉛粉末を添
加することが好ましい。
【0017】上記黒鉛粉末の添加量としては、2〜20
重量%とすることが好ましい。この黒鉛粉末の添加量が
2重量%未満であると耐焼付き性向上の効果が十分に発
揮されない。また、黒鉛粉末の添加により摩擦材のヤン
グ率が低下し、その結果弾性変形し易くなり、摩擦面の
当たりが改善されることから、黒鉛粉末の添加量が2重
量%未満であるとヤング率の低下が不十分となって摩擦
係数が極端に低下する。一方、20重量%を超えると、
マトリックス成分としてのCu−Ni系合金同士の焼結
を阻害するため、摩擦材自身の強度が低下するととも
に、摩擦材と基材との接合強度も低下し、部品機能上好
ましくない。また、8重量%を超えて黒鉛粉末を添加し
ても耐焼付き性向上の効果をそれ以上期待できないこと
から、黒鉛粉末の添加量は8重量%以下とすることが特
に好ましい。
【0018】ここに、黒鉛粉末の粒径を小さくすること
により、摩擦面における黒鉛の占める面積率を大きくす
ることが可能となり、潤滑性をより効果的に向上させる
ことができる。また、黒鉛粉末の粒径を小さくすれば摩
擦材中に黒鉛粉末がより均一に分散し易くなるため、ヤ
ング率の低下により摩擦材が弾性変形し易くなる。この
ため、黒鉛粉末の粒径を小さくすることにより、摩擦面
の当たりが改善され、耐焼付き性及び摩擦係数の両立を
図ることが可能となる。したがって、黒鉛粉末の粒径と
しては小さいほど望ましく、黒鉛粉末の粒径は75μm
以下とすることが好ましく、44μm以下とすることが
より好ましい。なお、黒鉛粉末の粒径が300μmを超
えると、偏析や薄肉部への粉末の充填不良が起こり易く
なるため好ましくない。また、黒鉛粉末の製造可能性の
観点から、黒鉛粉末の粒径の下限は数μm程度とされ
る。
【0019】なお、摩擦係数、耐焼付き性及び耐摩耗性
の摩擦特性を複合的に向上させたい場合は、上記Fe系
合金粒子、上記セラミックス粒子及び上記黒鉛粒子のう
ちから2種以上を同時に添加することができる。この場
合、Fe系合金粒子、セラミックス粒子及び黒鉛粒子の
合計の添加量は60重量%以下とすることが好ましい。
Fe系合金粒子、セラミックス粒子及び黒鉛粒子の合計
の添加量が60重量%を超えると、マトリックス成分と
してのCu−Ni系合金同士の焼結が進行し難くなるた
め、摩擦材自身の強度が低下するとともに、摩擦材と基
材との接合強度も低下し、部品機能上好ましくない。
【0020】上記SiO2 粒子は、ZrO2 、Ti
2 、ムライトやSi3 4 のセラミックス粒子と同
様、摩擦材の耐摩耗性を向上させるのに寄与しうる。ま
た、ZrO 2 、TiO2 、ムライトやSi3 4 のセラ
ミックス粒子では摩擦係数が低下する傾向にあるのに対
して、SiO2 粒子は摩擦係数を向上させることができ
る。したがって、特に耐摩耗性とともに摩擦係数を向上
させたい場合には、上記摩擦材にSiO2 粒子を添加す
ることが好ましい。
【0021】上記SiO2 粒子の添加量としては、2.
5〜50重量%とすることが好ましい。このSiO2
子の添加量が2.5重量%未満であると、SiO2 粒子
を添加することによる耐摩耗性及び摩擦係数向上の効果
が十分に発揮されない。一方、50重量%を超えると、
マトリックス成分としてのCu−Ni系合金同士の焼結
を阻害するため、摩擦材自身の強度が低下するととも
に、摩擦材と基材との接合強度も低下し、部品機能上好
ましくない。また、9重量%を超えてSiO2 粒子を添
加してもSiO2 粒子による摩擦係数向上の効果をそれ
以上期待できない。さらに、SiO2 粒子の添加量が増
えるに従って耐焼付き性が低下する傾向にある。このた
め、耐焼付き性を確保する観点から、SiO2 粒子の添
加量は15重量%以下とすることが特に好ましく、10
重量%以下とすることがより好ましい。また、耐摩耗性
及び摩擦係数と耐焼付き性との両立を図る観点から、S
iO 2 粒子の添加量は6〜9重量%とすることが特に好
ましい。
【0022】上記SiO2 粒子の大きさとしては、平均
粒径:10〜250m程度とすることができる。SiO
2 粒子の平均粒径が10μmよりも小さいと、粉末の流
動性が悪化する。一方、250μmよりも大きいと、偏
析や薄肉部への粉末の充填不良が起こり易くなる。な
お、上述したように粒径の小さい黒鉛粉末を添加すれ
ば、潤滑性をより効果的に向上させることができるた
め、粒径の小さい黒鉛粉末により耐焼付き性が向上する
分、耐焼付き性を低下させるものの摩擦係数の向上効果
の大きいSiO2粒子をより多く添加することが可能と
なる。したがって、摩擦係数及び耐摩耗性の向上を狙っ
てSiO2 粒子を添加する場合は、粒径の小さい黒鉛粉
末も同時に添加することが好ましい。
【0023】また、上記SiO2 粒子の添加は、FeM
o、FeCr、FeW、FeTi、窒化FeTi、Fe
VやFeB等のFe系合金粒子、及び/又はZrO2
TiO2 、ムライトやSi3 4等のセラミックス粒子
の添加と同時に行うこともできる。さらに、上記SiO
2 粒子による摩擦係数の向上効果は、本発明に係るCu
−Ni系合金よりなる摩擦材に添加させた場合に限ら
ず、他のCu系合金(例えば、CuーZn系合金やCu
−Al系合金)よりなる摩擦材に添加させた場合にも同
様に発揮されるものである。
【0024】ここに、摩擦材における気孔率について考
慮すると、本発明に係るCu−Ni系合金よりなる摩擦
材の気孔率は5〜35体積%であることが好ましい。C
u−Ni系合金粉末よりなる摩擦材部を圧縮成形により
形成する場合、金型強度の限界から成形時における加圧
力が制限されることから、摩擦材における気孔率が小さ
過ぎると過大の加圧力が要求されるため、摩擦材の気孔
率の下限は5体積%とされる。一方、成型時における加
圧力を下げれば、成形体密度を下げられるが成形体強度
を確保する上で相対密度として65%が下限となる。こ
のため、摩擦材の気孔率の上限は35体積%とされる。
【0025】本発明の焼結摩擦部材は、Cu系摩擦材と
Fe系基材とからなるものであるが、Niを所定量以上
含有するCu−Ni系合金を摩擦材として採用するた
め、Cu系摩擦材とFe系基材とを同時成形及び同時焼
結に製造することができる。すなわち、成形工程におい
て、Fe系粉末よりなる基材部とCu−Ni系合金粉末
よりなる摩擦材部とが一体的に形成された成形体を同時
成形により得た後、焼結工程において、この成形体を同
時焼結することにより本発明の焼結摩擦部材を製造する
ことができる。
【0026】上記成形工程では、基材形状及び摩擦材形
状に相応するキャビティ型面をもつ成形型を準備し、基
材形状のキャビティ部にFe系粉末を充填するととも
に、摩擦材形状のキャビティ部にCu−Ni系合金粉末
を充填した後、圧縮成形することにより、Fe系粉末よ
りなる基材部とCu−Ni系合金粉末よりなる摩擦材部
とが一体的に形成された成形体を得ることができる。
【0027】上記Fe系粉末及びCu−Ni系合金粉末
の粒径としては特に限定されず、平均粒径10〜150
μm程度とすることができる。また、圧縮成形時の成形
条件も特に限定されず、加圧力:400〜800MPa
程度、加圧時間:1〜10秒程度とすることができる。
上記焼結工程では、成形工程で得られた成形体を焼結す
る。焼結条件としては、Fe系粉末及びCu−Ni系合
金粉末を焼結しうる条件であれば特に限定されず、焼結
温度:1100〜1200℃程度、焼結時間:30〜6
0分程度、焼結雰囲気:窒素ガス雰囲気等とすることが
できる。
【0028】このように本発明に係る焼結摩擦部材は、
Cu系摩擦材とFe系基材とを同時成形及び同時焼結に
より得たものであるから、Fe系基材とCu系摩擦材と
の接合面においては、Fe系粉末及びCu−Ni系合金
粉末同士が十分に絡み合い、Fe系基材とCu系摩擦材
との接合強度が十分に向上する。そして、このようなF
e系基材とCu系摩擦材との複合材料によれば、Fe系
基材により摩擦材料として必要な強度を確保し、一方C
u系摩擦材により摩擦材料として必要な摩擦特性を確保
することができるので、強度及び摩擦特性の双方を十分
に満足した複合摩擦材を得ることが可能となる。
【0029】また、本発明に係る焼結摩擦部材は、一度
の焼結工程により手間をかけることなく製造することが
でき、製造工程の簡素化及び低コスト化を図るのに有利
となる。
【0030】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (第1実施例)本実施例は、Cu−Ni系合金中におけ
るNiの含有量と耐焼付き性及び融点との関係を調べる
ものである。
【0031】Niの含有量が10、30、50及び70
重量%となるように、CuにNiを合金化させたCu−
Ni系合金粉末(粒度75μm以下)を水アトマイズ法
によりそれぞれ準備した。得られた各Cu−Ni系合金
粉末を通常の成形法により30mm×30mm×5mm
の成形体とし、窒素ガス雰囲気下、1120℃で30分
間焼結を行い、試験片を作製した。なお、試験片は焼結
中に溶融することがないことを確認した。また、この試
験片の表面は、焼結後に試料研磨機にて鏡面に仕上げ、
洗浄、乾燥してある。
【0032】上記各試験片について、リングオンディス
ク式摩擦摩耗試験機を用いて以下の条件で焼き付き試験
を行った。得られた結果を図1に示す。 相手材:SCM20熱処理材 すべり速度:7.1m/sec 荷重:2分毎に1MPa加圧積算 潤滑油:SAE75W−90(商品名、エッソ社製) 図1から明らかなように、Niの含有量が多いほどCu
−Ni系合金の耐焼付き性が低下し、Niの含有量が3
0wt%のとき焼き付き面圧が10MPaで、70wt
%のとき焼き付き面圧が6MPaであることがわかる。
ここで、例えばCu−Ni系合金をシンクロナイザリン
グの摺動部に適用する場合、耐焼付き性としては上記試
験条件で6MPa以上必要であると想定される。このた
め、Cu−Ni系合金をシンクロナイザリングの摺動部
に適用する場合、摩擦材として必要な耐焼付き性を確保
する観点から、Cu−Ni系合金におけるNi含有量は
70重量%とされ、好ましくは45重量%以下とされ
る。
【0033】(Niの含有量とCu−Ni系合金の融点
との関係)ここで、Cu−Ni系合金の状態図を図2に
示すように、Niの含有量が多いほどCu−Ni系合金
の融点が上昇することがわかる。そして、Cu−Ni系
合金粉末とFe系粉末との同時焼結を可能とするには、
Cu−Ni系合金の融点をFe系粉末の焼結温度(11
00〜1300℃程度)以上とすればよく、したがって
Niの含有量を10wt%以上、好ましくは15wt%
以上とすればよいことがわかる。
【0034】また、これらの結果から、Cu−Ni系合
金において、Fe系基材との同時焼結を可能とする融点
と耐焼付き性とのバランスを図るには、Niの含有量は
25〜35重量%とすることが好ましく、30重量%程
度とすることが最も好ましいことがわかる。したがっ
て、上記組成範囲のCu−Ni系合金よりなるCu系摩
擦材であれば、Fe系基材とCu−Ni系合金よりなる
Cu系摩擦材とを同時成形・同時焼結により複合化させ
て、両者の接合強度が十分に向上した複合摩擦材であっ
て、Cu系摩擦材における耐焼付き性の優れたものを提
供することが可能となる。
【0035】(第2実施例)本実施例は、Cu−Ni系
合金よりなる摩擦材に各種の添加物を添加することによ
り、摩擦係数、耐焼付き性及び耐摩耗性の摩擦特性向上
の効果を調べるものである。まず、上記第1実施例と同
様にして、平均粒径50μmのCu−Ni系合金粉末を
水アトマイズ法により準備した。また、Fe系合金粒子
として平均粒径100μmのFeTi粒子(低炭素Fe
Ti 1号粉(JIS))を、セラミックス粒子として
平均粒径100μmのZrO2 粒子を、黒鉛粉末として
平均粒径150μmの鱗状黒鉛粉末を準備した。
【0036】そして、上記各粉末を表1に示す配合組成
で均一に混合し、得られた各混合粉末から上記第1実施
例と同様にして、試験片をそれぞれ作製した。
【0037】
【表1】 上記試料No.1〜10の各試験片について、リングオ
ンディスク式摩擦摩耗試験機を用いて、上記第1実施例
と同様の条件で焼き付き試験を行った。
【0038】また上記各試験片について、リングオンデ
ィスク式摩擦摩耗試験機を用いて、下記の条件で摩擦係
数及び摩耗量を評価した。 相手材:SCM20熱処理材 すべり速度:5.5m/sec 荷重:10MPa 潤滑油:SAE75W−90(商品名、エッソ社製) 得られた結果を、図3〜図5にまとめて示す。
【0039】なお、図3はFe系合金粒子としてのFe
Ti粒子の添加量を種々変化させた試料No.1〜3、
10の結果を示し、図3(a)は摩擦係数の評価結果
を、図3(b)は耐焼付き性の評価結果を、図3(c)
は耐摩耗性の評価結果をそれぞれ示す。また、図4はセ
ラミックス粒子としてのZrO2 の添加量を種々変化さ
せた試料No.4〜6、10の結果を示し、図4(a)
は摩擦係数の評価結果を、図4(b)は耐焼付き性の評
価結果を、図4(c)は耐摩耗性の評価結果をそれぞれ
示す。
【0040】また、図5は黒鉛粉末としての鱗状黒鉛粉
末の添加量を種々変化させた試料No.7〜10の結果
を示し、図5(a)は摩擦係数の評価結果を、図5
(b)は耐焼付き性の評価結果を、図5(c)は耐摩耗
性の評価結果をそれぞれ示す。図3から明らかなよう
に、Fe系合金粒子としてのFeTi粒子は摩擦材の摩
擦係数を向上させる効果があることがわかる。また、F
e系合金粒子としてのFeTi粒子の添加量が増えるに
従って、摩擦材の耐焼付き性及び耐摩耗性が低下する傾
向にあり、耐焼付き性及び耐摩耗性を確保する観点から
20重量%を超えてFe系合金粒子としてのFeTi粒
子を添加することは好ましくないことがわかる。
【0041】なお、FeTi以外のFe系合金粒子、す
なわちFeMo、FeCr、FeW、窒化FeTi、F
eV及びFeBのFe系合金粒子についても、FeTi
粒子と同様の結果が得られた。図4から明らかなよう
に、セラミックス粒子としてのZrO2 粒子は、摩擦材
の耐摩耗性を向上させる効果があることがわかる。ま
た、セラミックス粒子としてのZrO2 粒子の添加量が
増えるに従って、摩擦材の摩擦係数及び耐焼付き性が低
下する傾向にあり、摩擦係数及び耐焼付き性を確保する
観点から10重量%を超えてセラミックス粒子としての
ZrO2 粒子を添加することは好ましくないことがわか
る。
【0042】なお、ZrO2 以外のセラミックス粒子、
すなわちTiO2 、ムライト及びSi3 4 のセラミッ
クス粒子についても、ZrO2 粒子と同様の結果が得ら
れた。図5から明らかなように、黒鉛粉末は耐摩耗性を
向上させる効果があることがわかる。また、黒鉛粉末の
添加により摩擦材の摩擦係数も向上することがわかる。
これは、黒鉛粉末の添加により摩擦材のヤング率が低下
し、その結果弾性変形し易くなって摩擦面の当たりが改
善されたためと考えられる。
【0043】(第3実施例)本実施例は、Cu−Ni系
合金よりなる摩擦材にSiO2 粒子を添加することによ
り、摩擦係数、耐焼付き性及び耐摩耗性の摩擦特性向上
の効果を調べるものである。まず、上記第1実施例と同
様にして、平均粒径50μmのCu−Ni系合金粉末を
水アトマイズ法により準備した。また、Fe系合金粒子
として平均粒径100μmのFeTi粒子(低炭素Fe
Ti 1号粉(JIS))を、セラミックス粒子として
平均粒径100μmのZrO2 粒子を、黒鉛粉末として
平均粒径150μmの鱗状黒鉛粉末を準備するととも
に、平均粒径50μmのSiO2 粒子を準備した。
【0044】そして、上記各粉末を表2に示す配合組成
で均一に混合し、得られた各混合粉末から上記第1実施
例と同様にして、試験片をそれぞれ作製した。
【0045】
【表2】 上記試料No.11〜15の各試験片について、リング
オンディスク式摩擦摩耗試験機を用いて、上記第1実施
例と同様の条件で焼き付き試験を行った。
【0046】また上記試料No.11〜15の各試験片
について、リングオンディスク式摩擦摩耗試験機を用い
て、上記第2実施例と同様の条件で摩擦係数を評価し
た。耐焼付き性の評価結果を図6に示す。なお、この図
は、SiO2 粒子を添加していない試料No.11の焼
付き面圧の評価結果に対する、SiO2 粒子をそれぞれ
3,6,9,12重量%添加した試料No.12,1
3,14,15の焼付き面圧の評価結果の比率を表すも
のである。
【0047】図6から明らかなように、SiO2 粒子の
添加量が増えるに従い、摩擦材の耐焼付き性が低下する
ことがわかる。また、摩擦係数の評価結果を図7に示
す。この図も、SiO2 粒子を添加していない試料N
o.11の摩擦係数の評価結果に対する、SiO2 粒子
をそれぞれ3,6,9,12重量%添加した試料No.
12,13,14,15の摩擦係数の評価結果の比率を
表すものである。
【0048】図7から明らかなように、SiO2 粒子の
添加量が増えるに従い、摩擦材の摩擦係数が向上するこ
とがわかる。 (第4実施例)上記第3実施例で明らかなように、Si
2 粒子の添加により摩擦材の耐焼付き性が低下する。
このような焼付き限界の低下は部品の適用範囲を狭める
ことになる。そこで、SiO2 粒子を添加した場合でも
焼付き限界の低下を抑えることが求められる。
【0049】本実施例は、Cu−Ni系合金よりなる摩
擦材に添加する黒鉛粉末の粒径を小さくすることによ
り、耐焼付き性向上の効果とともに摩擦係数向上の効果
を調べるものである。まず、上記第1実施例と同様にし
て、平均粒径50μmのCu−Ni系合金粉末を水アト
マイズ法により準備した。また、Fe系合金粒子として
平均粒径100μmのFeTi粒子(低炭素FeTi
1号粉(JIS))を、セラミックス粒子として平均粒
径100μmのZrO2 粒子を準備するとともに、平均
粒径20μmのSiO2 粒子を準備した。
【0050】また、黒鉛粉末としては、粒径の異なる下
記表3に示すA及びBの鱗状黒鉛粉末を準備した。
【0051】
【表3】 黒鉛粉末A:粒径が75〜300μm(平均粒径:15
0μm)の鱗状黒鉛粉末(純度:98.0%)と、粒径
が数μm〜44μm(平均粒径:20μm)の鱗状黒鉛
粉末(純度:98.0%)との2種類を準備した。
【0052】そして、上記各粉末を表4に示す配合組成
で均一に混合し、得られた各混合粉末から上記第1実施
例と同様にして、試験片をそれぞれ作製した。
【0053】
【表4】 上記試料No.16,17の各試験片について、リング
オンディスク式摩擦摩耗試験機を用いて、上記第1実施
例と同様の条件で焼き付き試験を行った。
【0054】また上記試料No.16,17の各試験片
について、リングオンディスク式摩擦摩耗試験機を用い
て、上記第2実施例と同様の条件で摩擦係数を評価し
た。耐焼付き性の評価結果を図8に示す。なお、この図
は、粒径が75〜300μmの黒鉛粉末Aを用いた試料
No.16の焼付き面圧の評価結果に対する、粒径が4
4μm以下の黒鉛粉末Bを用いた試料No.17の焼付
き面圧の評価結果の比率を表すものである。
【0055】図8から明らかなように、粒径が44μm
以下の黒鉛粉末Bを用いた試料No.17は、粒径が7
5〜300μmの黒鉛粉末Aを用いた試料No.16よ
りも耐焼付き性が向上することがわかる。また、摩擦係
数の評価結果を図9に示す。この図も、粒径が75〜3
00μmの黒鉛粉末Aを用いた試料No.16の焼付き
面圧の評価結果に対する、粒径が44μm以下の黒鉛粉
末Bを用いた試料No.17の焼付き面圧の評価結果の
比率を表すものである。
【0056】図9から明らかなように、粒径が44μm
以下の黒鉛粉末Bを用いた試料No.17は、粒径が7
5〜300μmの黒鉛粉末Aを用いた試料No.16よ
りも摩擦係数が向上することがわかる。さらに、上記試
料No.16,17の各試験片について、超音波探傷法
によりヤング率を測定した。その結果を図10に示す。
【0057】図10から明らかなように、粒径が44μ
m以下の黒鉛粉末Bを用いた試料No.17は、粒径が
75〜300μmの黒鉛粉末Aを用いた試料No.16
よりもヤング率が低下することがわかる。すなわち、黒
鉛粉末の粒径を小さくすることにより、摩擦材中に黒鉛
粉末がより均一に分散し易くなってヤング率が低下し、
摩擦材が弾性変形し易くなることがわかる。したがっ
て、黒鉛粉末の粒径を小さくすることにより耐焼付き性
及び摩擦係数の両立を図ることができるのは、摩擦材が
弾性変形し易くなることによって摩擦面の当たり面が改
善された結果によるものと考えられる。
【0058】よって、粒径が44μm以下の黒鉛粉末を
用いることにより、SiO2 粒子を添加した場合でも焼
付き限界の低下を抑制できることがわかる。上述した第
1〜第3実施例の結果により、本発明に係るCu−Ni
系合金よりなる摩擦材における配合組成の最も好適な態
様は以下のとおりとなる。すなわち、Niを10〜70
重量%含有するCu−Ni系合金よりなる摩擦材に、下
記1)〜4)の添加物を合計で5〜60重量%添加する
ことにより、摩擦係数、耐焼付き性及び耐摩耗性の摩擦
特性を総合的にきわめて効果的に向上させることができ
る。
【0059】1)FeMo、FeCr、FeW、FeT
i、窒化FeTi、FeV及びFeBのFe系合金粒子
群から選ばれた少なくとも一種を5〜20重量% 2)ZrO2 、TiO2 、ムライト及びSi3 4のセ
ラミックス粒子群から選ばれた少なくとも一種を2.5
〜10重量% 3)粒径が44μm以下の黒鉛粉末を2〜8重量% 4)平均粒径が75μm以下のSiO2 粒子を5〜15
重量% (第4実施例)本実施例は、本発明に係る焼結摩擦部材
を自動車用同期装置に用いられるシンクロナイザリング
に適用したものである。
【0060】図11及び図12に示す本実施例に係るシ
ンクロナイザリングは、シンクロナイザリング本体をな
すFe系基材1と、Fe系基材1と一体的に形成され、
摺動面を形成するCu系摩擦材2とからなり、Fe系合
金粉末及びCu−Ni系合金粉末を同時成形及び同時焼
結することにより得られたものである。上記Fe系基材
1はFe−Cu−C系よりなる。また、上記Cu系摩擦
材2は、Niを30重量%含有するCu−30Ni系合
金に下記に示す添加物を添加したものよりなる。
【0061】 FeTi粒子(平均粒径:100μm):10重量% ZrO2 粒子(平均粒径:100μm):5重量% 黒鉛粉末(平均粒径:20μm) :4重量% SiO2 粒子(平均粒径:50μm) :9重量% 上記シンクロナイザリングは以下のように製造した。
【0062】まず、粒径:150μmのFe−Cu−C
系粉末を準備する一方、粒径50μmのCu−Ni系合
金粉末に、上記各種の添加物を所定の配合組成で均一に
混同した混合粉末を準備した。そして、シンクロナイザ
リング成形用の成形金型内に上記混合粉末を供給下後、
上記Fe−Cu−C系粉末を供給し、加圧力:70MP
a、加圧時間:5秒の条件で圧縮成形することにより、
Fe系粉末よりなる基材部とCu−Ni系合金粉末より
なる摩擦材部とが一体的に形成された成形体を得た。
【0063】得られた成形体を焼結温度:1120℃、
焼結時間:30分、焼結雰囲気:窒素ガス雰囲気の条件
で同時焼結して、シンクロナイザリングとした。このよ
うに得られた本実施例に係る焼結摩擦部材としてのシン
クロナイザリングは、Fe系基材1とCu系摩擦材2と
を同時成形及び同時焼結により得たものであるから、F
e系基材1とCu系摩擦材2との接合面においては、F
e系粉末及びCu−Ni系合金粉末同士が十分に絡み合
い、Fe系基材1とCu系摩擦材2との接合強度が十分
に向上していた。また、本実施例によれば、一度の焼結
工程により手間をかけることなく製造することができ、
製造工程の簡素化及び低コスト化を図るのに有利とな
る。
【0064】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る焼結摩
擦部材は、Fe系粉末とCu系合金粉末との同時焼結を
可能にしたものであるから、一度の焼結工程により手間
をかけることなく製造することができ、しかもFe系基
材とCu系摩擦材との接合強度を向上させることができ
る。
【0065】したがって、本発明によれば、十分な強度
を確保するFe系基材と、十分な摩擦特性を確保するC
u系摩擦材とからなり、両者の接合強度が向上したシン
クロナイザリング等を簡素な工程により提供することが
可能となる。またCu系摩擦材にFe系合金粒子を添加
したものでは、摩擦係数を向上させるのに有利となる。
【0066】またCu系摩擦材にセラミックス粒子を添
加したものでは、耐摩耗性を向上させるのに有利とな
る。またCu系摩擦材に黒鉛粉末を添加したものでは、
耐焼付き性を向上させるのに有利となる。そして、この
黒鉛粉末の粒径を44μm以下とすることにより、摩擦
係数及び耐焼付き性を向上させるのに有利となる。
【0067】さらに、Cu系摩擦材にSiO2 粒子を添
加したものでは、摩擦係数及び耐摩耗性を向上させるの
に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Cu−Ni系合金のNi含有量と耐焼付き性と
の関係を示す線図である。
【図2】Cu−Ni系合金の状態図である。
【図3】Fe系合金粒子としてのFeTi粒子の添加量
を種々変化させた場合の評価結果を示す線図であり、図
3(a)は摩擦係数の評価結果を、図3(b)は耐焼付
き性の評価結果を、図3(c)は耐摩耗性の評価結果を
それぞれ示す。
【図4】セラミックス粒子としてのZrO2 の添加量を
種々変化させた場合の評価結果を示す線図であり、図4
(a)は摩擦係数の評価結果を、図4(b)は耐焼付き
性の評価結果を、図4(c)は耐摩耗性の評価結果をそ
れぞれ示す。
【図5】黒鉛粉末としての鱗状黒鉛粉末の添加量を種々
変化させた場合の評価結果を示す線図であり、図5
(a)は摩擦係数の評価結果を、図5(b)は耐焼付き
性の評価結果を、図5(c)は耐摩耗性の評価結果をそ
れぞれ示す。
【図6】SiO2 粒子の添加量と耐焼付き性との関係調
べた評価結果を示す線図である。
【図7】SiO2 粒子の添加量と摩擦係数との関係調べ
た評価結果を示す線図である。
【図8】黒鉛粉末の粒径と耐焼付き性との関係を調べる
評価結果を示すグラフである。
【図9】黒鉛粉末の粒径と摩擦係数との関係を調べる評
価結果を示すグラフである。
【図10】黒鉛粉末の粒径とヤング率との関係を調べる
評価結果を示すグラフである。
【図11】本実施例に係るシンクロナイザリングを示す
平面図である。
【図12】上記シンクロナイザリングの断面図であり、
図11のA−A線矢視断面図である。
【符号の説明】
1:Fe系基材、2:Cu系摩擦材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 原田 弘司 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 宮島 和浩 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 高橋 和彦 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 不破 良雄 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 中村 真 京都市山科区栗栖野狐塚5の1 日本粉末 合金株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Fe系基材と、該基材と一体的に形成され
    たCu−Ni系合金よりなる摩擦材とからなり、Fe系
    粉末及びCu−Ni系合金粉末を同時成形及び同時焼結
    することにより得られた焼結摩擦部材であって、 上記Cu−Ni系合金はNiを10〜70重量%含有す
    ることを特徴とする焼結摩擦部材。
  2. 【請求項2】前記摩擦材には、FeMo、FeCr、F
    eW、FeTi、窒化FeTi、FeV及びFeBのF
    e系合金粒子群から選ばれた少なくとも一種が5〜50
    重量%添加されていることを特徴とする請求項1記載の
    焼結摩擦部材。
  3. 【請求項3】前記摩擦材には、ZrO2 、TiO2 、ム
    ライト及びSi3 4のセラミックス粒子群から選ばれ
    た少なくとも一種が2.5〜50重量%添加されている
    ことを特徴とする請求項1記載の焼結摩擦部材。
  4. 【請求項4】前記摩擦材には、黒鉛粉末が2〜20重量
    %添加されていることを特徴とする請求項1記載の焼結
    摩擦部材。
  5. 【請求項5】前記黒鉛粉末の粒径は44μm以下である
    ことを特徴とする請求項4記載の焼結摩擦部材。
  6. 【請求項6】前記摩擦材には、SiO2 粒子が2.5〜
    50重量%が添加されていることを特徴とする請求項1
    記載の焼結摩擦部材。
  7. 【請求項7】Fe系基材と、該基材と一体的に形成され
    たCu−Ni系合金よりなる摩擦材とからなる焼結摩擦
    部材の製造方法であって、 Fe系粉末よりなる基材部とCu−Ni系合金粉末より
    なる摩擦材部とが一体的に形成された成形体を同時成形
    により得る成形工程と、 上記成形体を同時焼結する焼結工程とからなることを特
    徴とする焼結摩擦部材の製造方法。
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