JPH10282095A - 尿検体中のミオグロビンの安定化方法およびこれに用いる組成物 - Google Patents

尿検体中のミオグロビンの安定化方法およびこれに用いる組成物

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JPH10282095A
JPH10282095A JP10240997A JP10240997A JPH10282095A JP H10282095 A JPH10282095 A JP H10282095A JP 10240997 A JP10240997 A JP 10240997A JP 10240997 A JP10240997 A JP 10240997A JP H10282095 A JPH10282095 A JP H10282095A
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myoglobin
urine
azide
albumin
preservative
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JP10240997A
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Fumio Yoshikawa
文雄 吉川
Hiroyuki Kasahara
裕之 笠原
Hideji Horikawa
秀次 堀川
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Original Assignee
Fujifilm RI Pharma Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長時間にわたって、尿中のミオグロビンを安
定化させ、臨床検査における信頼性を向上させること。 【解決手段】 尿検体中に0.5〜2.0%のアルカリ金
属アジ化物を添加することを特徴とする尿中ミオグロビ
ンの安定化方法およびこの方法において更に金属キレー
ト剤、アルブミンおよびサッカロースよりなる群より選
ばれる化合物を添加することを特徴とする尿中ミオグロ
ビンの安定化方法並びにこれに用いる保存剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、検体中のミオグロ
ビンの保存安定性を向上させ、または変性したミオグロ
ビンを還元する作用のある保存剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ミオグロビン(分子量約17.500)
はヘムタンパクであり、心筋梗塞・筋ジストロフィー症
等では筋組織より血中に放出され、更に尿中に排泄され
ることが知られている。このため血中および尿中のミオ
グロビンを測定することは、これらの疾患の診断や経過
観察に有用であり、広く臨床に応用されている。
【0003】しかし、特に尿中に排泄されたミオグロビ
ンは安定性が悪く、測定に際してその活性は短時間で低
下するという問題点があった。つまり、一般にミオグロ
ビンは尿中に排泄された後、尿成分等の影響により徐々
に失活し、採取後長時間を経過するとその検出が難しい
とされる。この失活の機序は明らかでないが、ミオグロ
ビン分子は、保存に際し酸化等による構造変化、変性や
分解等の影響を受け易く(片山善章:「検査と技術」Vo
l.20. No.6:84-86 1992増刊号)、また、凍結・融解に
よっても更に変性が進むと報告されている(Reduced st
ability and acceleration of tuna myoglobin in asso
ciation with freezing and thawing. Chau-Jen Chow.
et.al. J Agric Food Chem Vol.37. No.5:1391-1395 19
89)。
【0004】一般的に尿はpHが弱酸性(pH5〜7)
で、種々の塩類等過剰な溶質が解け込んでおり、保護コ
ロイド( protective colloid )により準安定過飽和の
状態にある。このため、低温や常温での保存時にはこれ
らの析出が起こり易い(小磯謙吉、赤座英之、大谷幹伸
et al:「検査と技術」Vol.20. No.6:38-39 1992増刊
号)。また、尿中にも微量に蛋白類は存在するが、腎臓
を通過するため、血中の蛋白とは種類も濃度も異なり、
多くの物質に対し保護作用をもつアルブミン等の存在は
血中に比べかなり少ない。
【0005】そして、ミオグロビンは吸着性が高いこと
も良く知られており、蛋白濃度が極めて低い尿検体中で
はさらに吸着しやすい状態となっている。しかも健常人
における尿中ミオグロビン濃度は、4〜5ng/mL以
下と血中濃度に比べ微量(三好和夫et al:ミオグロビ
ンMedical Technology Vol. 6 No.13:1152-1156)であ
り、このこともミオグロビンが失活しやすい状態ともな
っていることが理解される。これらの事実から、尿中で
は酸化や酵素などによる分解によるミオグロビン失活等
の他に、ミオグロビンは採取した容器への吸着、塩類の
混濁沈降にともなう共沈等による物理的な減少があり、
これらが相まって尿中でのミオグロビンの安定性が低下
する原因になっていると考えられている。
【0006】尿サンプルの取り扱い方法は、測定する物
質によって多様であるが、一般に血中や細菌に由来する
分解酵素を阻害する物質の添加、尿自体の腐敗によるp
Hの変動に対する緩衝剤の添加、細菌類の増殖抑制のた
めの防腐剤の添加や酸性状態での保存が施行されてき
た。
【0007】尿中のミオグロビンを定量するための検体
の保存方法としては、尿検体のpHの弱アルカリ化、防
腐剤として少量のアジ化ナトリウムの添加、安定剤とし
て血清アルブミンや庶糖の添加、酵素阻害剤としてアプ
ロチニンの添加等が知られており、これらによりミオグ
ロビンの酸化や変性を防止する試みがなされている。し
かし、これらの方法は尿中のミオグロビンを安定化させ
るには有効ではなく、微量に存在するミオグロビンを免
疫学的測定法を用いて正しく測定するには十分ではなか
った。
【0008】すなわち、健常者の尿中ミオグロビン濃度
は極めて微量であり、通常の生化学的な測定方法では定
量が不可能であるため、感度と特異性が極めて高いラジ
オイムノアッセイ法などの免疫学的測定法により定量さ
れてきた。この免疫学的測定法は高感度であるが、同時
に様々な因子の影響を受けやすい性質を有している。例
えば、検体のpHの変動は測定系に影響を与える因子の
一つとなつている。
【0009】ミオグロビン尿症など尿中でミオグロビン
が高濃度存在するサンプルは、仮に安定性を確保するた
めにpHをアルカリまたは酸性側に緩衝して保存したと
しても、測定に要するサンプル量は微量、もしくは大多
量に希釈され測定される。この場合、免疫学的測定法を
用いる精密測定に於いても反応系に与える検体のpHの
影響を無視できうる。しかし、健常者の尿や低濃度〜中
濃度のミオグロビンが尿中に排泄されているサンプルを
測定する場合、感度の関係から尿サンプルは希釈される
ことなく測定する必要性がある。この場合、サンプルに
おけるpHの偏りは反応系に大きく影響し、このためミ
オグロビンは正しく測定されない。
【0010】この様に、尿中のミオグロビンの安定化を
図るため、仮に検体を特殊な条件で処理した場合、高感
度な免疫学的測定法に影響を与えることなしに、その目
的が達成することは従来の技術範囲では困難であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】尿中ミオグロビンの精
密測定は免疫学的測定法により測定されており、この様
な特殊検査は医療現場で検査するよりは、臨床検査を専
門に行う臨床検査センターに検体を送り検査することが
一般的である。この場合、検体採取から検査に至るまで
多くの場合9時間以上を経過するといった報告がある
(折田義正、今井宣子:腎機能検査と尿一般定性検査の
サンプリング.第4回サンプリング研究会講演集.PP43-5
0 1990)。従って、尿中ミオグロビンの測定においては
この様な現状を考慮に入れた場合に、尿中のミオグロビ
ンは採取後1〜2日間は安定であることが要求される。
【0012】検査において変性や分解によりミオグロビ
ン量が実際の排泄濃度より低く測定されることは、すな
わち、その結果を基にする診断および病態の把握を誤ら
せることになる。特に重篤な病態である、虚血性心疾患
や心筋梗塞においては診断の誤りは患者の予後に大きな
影響を与えることになる。
【0013】この様な観点から、診断を目的とした臨床
検査に用いる尿中ミオグロビンを安定化させることは、
検査の信頼性を向上させるばかりではなく、患者の利益
のために必要不可欠な課題である。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ミオグロ
ビンの安定化についての研究の過程において、本来蛋白
質において安定性が保たれる凍結保存に関しても、凍結
融解の際に尿中のミオグロビン濃度が低下する事実を見
いだした。この凍結融解によるミオグロビン濃度の低下
から、ミオグロビンの不安定性は、細菌や分解酵素によ
るミオグロビンの分解ではなく、むしろミオグロビン自
体の変性であることが予想された。
【0015】この予想に基づき、ミオグロビンの変性に
ついて研究を進めたところ、ミオグロビンが変性したメ
トミオグロビンは酸素との結合能を消失する一方、N3 -
等と結合し、安定化することを知った。この知見から、
アジ化化合物はミオグロビンの測定の際も安定化に有効
ではないかと考え、実験を行った結果、従来の検体中で
の使用濃度の5倍から20倍のアジ化ナトリウムを添加
することにより、ミオグロビンが安定に保てること、更
にこれに金属キレート剤やアルブミンを添加することに
より安定性が増加することを見出し、本発明を完成し
た。
【0016】すなわち、本発明は、尿検体中に0.5〜
2.0%のアルカリ金属アジ化物を添加することを特徴
とする尿中ミオグロビンの安定化方法である。また、本
発明は上記方法において更に金属キレート剤、アルブミ
ンおよびサッカロースよりなる群より選ばれる化合物を
添加することを特徴とする尿中ミオグロビンの安定化方
法である。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明において、尿中のミオグロ
ビンの安定化に寄与する化合物としては、まず、アルカ
リ金属アジ化物が挙げられる。このアルカリ金属アジ化
物の具体例としては、アジ化ナトリウム、アジ化バリウ
ム、アジ化リチウム等が挙げられる。
【0018】アルカリ金属アジ化物のうちアジ化ナトリ
ウムは、オキシダーゼに対する阻害物質であり、酵素活
性を阻害し、酸化物質の産生を防止することを目的とし
て種々の試験検体中に添加されている。しかし、従来の
使用濃度、すなわち0.1%程度の添加では、尿中ミオ
グロビンに安定化には十分でなく、通常の使用濃度の5
倍から20倍の濃度、すなわち0.5〜2.0%添加する
ことが必要である。このことは、アルカリ金属アジ化物
の作用効果が従来の方法で用いている酵素阻害や静菌作
用ではなく、アルカリ金属アジ化物とミオグロビンの直
接的な相互作用によることを示すと解される。
【0019】また、本発明方法において尿中のミオグロ
ビンの安定化に補助的に寄与する化合物としては金属キ
レート剤、アルブミンおよびサッカロースが挙げられ
る。
【0020】このうち、金属キレート剤としては、エチ
レンジアミン四酢酸(EDTA)もしくはその塩、シュ
ウ酸もしくはその塩等が挙げられる。これらの金属キレ
ート剤の作用は、酵素活性の発現に必要な金属に配位
し、酵素を失活させるものであるが、単独ではこの効果
は十分でなく、アルカリ金属アジ化物との併用が必要で
ある。通常EDTA等の金属キレートは、尿検体の保存
に使用されることはなく、本発明の効果を得るためには
試験検体中に0.1〜5.0%程度添加することが必要で
ある。
【0021】また、アルブミンは、主としてミオグロビ
ンが尿の採取容器や保存容器へ吸着したり、あるいは塩
類の析出にともなう共沈を防止する作用効果を有するも
のである。しかし、アルブミンの効果は単独では十分で
なく、アルカリ金属アジ化物および/または金属キレー
トと併用することにより効果的となる。このアルブミン
も従来より各種の試験検体中に添加されているが、本発
明の効果を得るためには通常の5〜50倍程度の濃度、
すなわち試験検体中に0.5〜5.0%程度添加すること
が必要である。
【0022】更に、サッカロースは、凍結融解の影響を
緩和するために有効であり、その作用は単糖のもつ一般
の保護作用の一部と考えられるが、尿中ミオグロビンの
安定化のためにはアルカリ金属アジ化物等の他の保存剤
と組み合わせて用いる必要がある。このサッカロースの
有効な添加量は、0.5〜5.0%である。
【0023】本発明において、アジ化ナトリウムのよう
なアルカリ金属アジ化物とEDTAのような金属キレー
トはそれぞれ単独でもミオグロビンの安定化効果がある
が、これを併用することにより、尿中のミオグロビンを
より安定にすることが可能となる。具体的には、後記す
るようにアルカリ金属アジ化物と、金属キレート剤、ア
ルブミンおよびサッカロースよりなる群より選ばれる化
合物(以下、「補助成分」ということがある)を適宜組
み合わせた保存剤を用いることによりより尿中のミオグ
ロビンを安定に保存できる。
【0024】得られる保存剤の好ましい配合例として
は、0.5〜4%のアジ化ナトリウム、1〜5%のエチ
レンジアミン四酢酸・3ナトリウム、1〜5%のサッカ
ロースおよび1〜5%のウシ血清アルブミンを含む0.
02Mリン酸緩衝液(pH7.4)よりなるものが挙げら
れ、その具体例としては、1%アジ化ナトリウム、3%
EDTA・3Na、2%サッカロースおよび5%ウシ血
清アルブミンを溶解させた0.02Mリン酸緩衝液(p
H7.4)が挙げられる。これは、各成分を使用時の2
倍濃度に調製してあるので、被検尿と等量混合すること
により容易に用いることができる。
【0025】この保存剤の調製には、アルカリ金属アジ
化物と補助成分の全てを組み合わせて使用することが望
ましいが、一部の組成物を組み合わせても十分使用する
ことが可能である。
【0026】例えば、0.5〜2.0%の、アルカリ金属
アジ化物であるアジ化ナトリウムと、0.5〜2.0%
の、金属キレート剤であるEDTA・3Naおよび必要
により適切な担体を組み合わせることにより保存安定性
の優れた保存剤が調製される。
【0027】また、保存剤は上記のような液状の他、粉
末、顆粒状等の固体状の剤型として被検尿に添加するこ
とも可能である。この場合は、被検尿10mLに対して
50〜300mgのアジ化ナトリウムと10〜300m
gのエチレンジアミン四酢酸・3ナトリウムが存在する
ように添加することが好ましく、具体例としては、尿検
体10mLに150mgのアジ化ナトリウムと、25m
gのEDTA・3Naが存在するよう添加する使用形態
が挙げられる。
【0028】かくして得られる保存剤は、検体の採取直
後に添加することが望ましい。一定期間保存された検体
において、測定時に保存剤を添加しても一定の効果が見
られ、可逆的に変性したミオグロビンを元に戻すために
有効であるが、高度に分解されたミオグロビンに対して
は無効である。
【0029】
【作用】本発明のアルカリ金属アジ化物は、尿中ミオグ
ロビンの分解、変性を防止するのみならず、可逆的に変
性または失活したミオグロビンを元に戻し、免疫学的に
測定できる効果も有している。つまりその作用機序はこ
れまで知られている微生物の増殖防止や分解酵素への阻
害のみだけではなく、直接或いは間接的にミオグロビン
に作用してその性質を維持または元の状態に戻す作用を
有するものと考えられる。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、免疫学的測定のための
尿検体中のミオグロビンを安定に維持することが可能で
ある。また、保存され既にミオグロビンの一部が可逆的
に変性した検体においても更なる変性を防ぎ、変性した
ミオグロビンを元に戻すことができるため、より正確に
検体中のミオグロビン濃度の測定が可能となった。
【0031】従って本発明は、心筋梗塞、虚血性心疾
患、悪性高熱、筋ジストロフィー、先天性ミオグロビン
尿症等の診断および経過観察に有用な尿中のミオグロビ
ンの測定法等に有用である。なお、本発明で利用される
成分は、いずれも従来の臨床検査で用いられている成分
であるから、ラジオイムノアッセイ、酵素免疫測定法、
ラテックス凝集法等日常の臨床検査に適用することがで
きる。
【0032】
【実施例】次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明
するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるもので
はない。
【0033】実 施 例 1 保存安定性の検討:種々の試薬の尿中のミオグロビンに
対する安定化作用を、下記の免疫学的測定方法を用いて
検討を行った。用いた試薬は、2%サッカロース溶液、
2%サリチル酸ナトリウム溶液、1%アジ化ナトリウム
溶液、1%EDTA・3Na溶液、5%ウシ血清アルブ
ミン溶液、0.1Mトリスヒドロキシアミノメタン溶液
および0.1Mリン酸緩衝液であり、これらを採取した
尿検体と等量混合して保存前後の測定値を比較した。
【0034】測定は、採取直後、4℃で3日保存後、同
温度で7日保存後の3回行い、結果を採取直後の値を1
00%とする残存率で求めた。この結果を図1に示す。
【0035】この結果より、単独で用いた場合、アジ化
ナトリウムとEDTA・3Naに尿中のミオグロビンを
安定化する効果を認めた。また、ウシ血清アルブミンに
も若干の効果を認めた。なお、これら試薬の濃度は通常
の被験検体への使用濃度よりかなり高濃度である。
【0036】(ミオグロビンの免疫学的測定方法)ミオ
グロビンを1から300ng/mLとなるようにリン酸
緩衝液中に溶解して標準試薬を調製した。ミオグロビン
を含まないリン酸緩衝液(対照液)、上記標準試薬また
は検体をプラスチック製試験管中に200μL採取し
た。125Iにて標識されたミオグロビン標識試薬(約1
3.6kBq/mL)および家兎ミオグロビン抗血清各
100μLを各試験管に添加し、攪拌後25℃で90分
間反応させた。
【0037】その後、ウサギ第二抗体試薬1mLを添加
し、良く攪拌した。生成した抗原−抗体−第二抗体複合
物および標識抗原−抗体−第二抗体複合物を25℃、2
000gで20分間遠心分離することにより沈澱させ
た。未反応の抗原または標識抗原が含まれる上清をアス
ピレーターを用いて吸引し、ウエル型シンチレーション
カウンターにて各試験管の放射能を測定した。
【0038】各標準試薬の試験管の平均放射能量を算出
しこれをBとした。また0濃度の対照液の放射能量を同
様にして求めこれをB0とし、先のBをB0で除して百分
率を算出し、これをB/B0(%)とした。片対数グラ
フを用い対数側に標準試薬の濃度を、もう一方にB/B
0(%)をプロットし標準曲線を作成した。
【0039】検体についても同様にして平均放射能量B
を算出し、B/B0(%)を求めた。これを作成した標
準曲線より対応するミオグロビン濃度を求めた。なお、
標準試薬または検体を25μLにて測定する場合は、標
準試薬のミオグロビン濃度を10から3000ng/m
Lとすれば良い。
【0040】実 施 例 2 保存液の調製およびこれを利用するミオグロビンの定
量:実施例1より、尿中ミオグロビンの保存効果のある
とみられる組成物を選定し、1%アジ化ナトリウム、3
%EDTA・3Naおよび5%ウシ血清アルブミンを含
む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.4)を調製した。更
に凍結融解の際にて保護効果が期待されるサッカロース
を2%の濃度になるように添加した保存液も調製し検討
を行った。
【0041】この保存液を、7検体の尿に等量加え、混
合してサンプルとした。これらのサンプルについて、採
取直後、4℃で1、3、7、14日保存後、実施例1に
示した測定法を用いてミオグロビン量を測定した。サッ
カロースを添加した保存液と混合したサンプルについて
は1〜7回までの凍結融解の影響を検討した。
【0042】この結果を図2に示すが、保存液にて安定
化された保存尿検体は14日間保存後でも測定値は安定
であった。一方、比較サンプルは、検体採取直後急速に
ミオグロビン濃度が低下しているものが認められた(検
体によっては半分程度に測定値は低下した)。また、図
3に示すが、尿検体の凍結融解後にはサッカロース添加
した保存液にてミオグロビンの濃度が良好に維持され
た。
【0043】この結果より、本発明の安定剤は、これを
加えることにより尿中ミオグロビンを失活させることが
なく、一定時間保存後でも正確にミオグロビン量を測定
できることが示された。
【0044】実 施 例 3 既保存検体に対する本発明保存液添加による効果:実施
例3に示した保存液を、24時間、4℃にて放置した原
尿に等量加えて混合し、検体を調製した。この検体およ
び放置されていた原尿中のミオグロビン量を、実施例1
に示した測定法を用いて測定した。この結果を表1に示
す。
【0045】
【表1】 ----------------------------------------------- 検 体 原 尿 添加尿 上昇率* 番 号 測定値 測定値 (%) ----------------------------------------------- 1 15.9 26.6 167.3 2 17.9 24.0 134.1 3 13.0 24.6 189.2 4 72.1 93.4 129.5 5 11.2 20.9 186.6 6 13.2 26.4 200.0 7 5.3 12.6 237.7 8 3.9 13.7 351.3 9 8.4 10.4 123.8 10 5.3 12.1 228.3 11 6.8 12.2 179.4 12 6.2 14.0 225.8 ----------------------------------------------- (表中、上昇率以外の単位はng/ml) * 上昇率=保存剤添加尿/保存原尿×100
【0046】この結果、4℃にて放置された原尿に保存
液を後から添加した尿サンプルは、何れも原尿の測定値
より上昇し、その上昇率は平均で約2倍であった。これ
は、用いた保存液は保存期間中に変性した尿中ミオグロ
ビンに作用し、再び測定可能なものに戻したことを伺わ
せる結果である。
【0047】実 施 例 4 アジ化ナトリウムとEDTAの組み合わせによる保存安
定性:粉末で用いる保存剤の候補として、アジ化ナトリ
ウムとEDTA・3Naを種々の濃度で組み合わせて調
製した。これを尿検体に添加し、実施例1と同様に採取
時から14日間までの保存後のミオグロビンの残存率を
調べた。また、より簡便性を高めるため尿検体10mL
に対し添加濃度で150mgのアジ化ナトリウムと25
mgのEDTA・3Naを添加した採尿管を用意し、1
0検体の尿を採取し保存した際の安定性についても検討
した。
【0048】結果を図4に示すが、0.5%以上のアジ
化ナトリウムで尿検体中のミオグロビン保存効果が認め
られ、0.25%のEDTA・3Naの組み合わせによ
って更に濃度が安定に維持できることが確認された。図
5に示す採尿管(1.5%のアジ化ナトリウムと0.25
%のEDTA・3Na)を用いて10検体の尿を保存し
た際の安定性では、実施例2で用いた保存液と同様にい
ずれの検体も14日間後も尿検体中のミオグロビンは安
定であった。なお、保存剤を用いない場合は、図6に示
すように尿中ミオグロビンは不安定であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々の試薬による尿中のミオグロビンの安定化
効果を示す図面。
【図2】保存液による尿中のミオグロビンの安定化効果
を示す図面。
【図3】サッカロース添加保存液による凍結融解に対す
る安定化効果を示す図面。
【図4】アジ化ナトリウムとEDTAの組み合わせによ
る尿中のミオグロビンの安定化効果を示す図面。
【図5】保存剤入り採尿管による尿中のミオグロビンの
安定化効果を示す図面。
【図6】保存剤を用いない採尿管による尿中のミオグロ
ビンの安定化効果を示す図面。以 上

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 尿検体中に0.5〜2.0%のアルカリ金
    属アジ化物を添加することを特徴とする尿中ミオグロビ
    ンの安定化方法。
  2. 【請求項2】 尿検体中に0.5〜2.0%のアルカリ金
    属アジ化物と、金属キレート剤、アルブミンおよびサッ
    カロースよりなる群より選ばれる化合物を添加すること
    を特徴とする尿中ミオグロビンの安定化方法。
  3. 【請求項3】 金属キレートの量が0.1〜5.0%であ
    る請求項第2項記載の安定化方法。
  4. 【請求項4】 金属キレートがエチレンジアミン四酢酸
    またはその塩である請求項第2項または第3項記載の安
    定化方法。
  5. 【請求項5】 アルブミンの量が0.5〜5%である請
    求項第2項記載の安定化方法。
  6. 【請求項6】 サッカロースの量が0.5〜5%である
    請求項第2項記載の安定化方法。
  7. 【請求項7】 アルカリ金属アジ化物と、金属キレート
    剤、アルブミンおよびサッカロースよりなる群より選ば
    れた化合物を組み合わせてなる保存剤。
  8. 【請求項8】 アジ化ナトリウムとエチレンジアミン四
    酢酸またはその塩を組み合わせてなる保存剤。
  9. 【請求項9】 0.5〜4%アジ化ナトリウム、1〜5
    %エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム、1〜5%サ
    ッカロースおよび1〜5%ウシ血清アルブミンを含む
    0.02Mリン酸緩衝液(pH7.4)よりなる保存剤。
  10. 【請求項10】 尿10mLに対して50〜300mg
    のアジ化ナトリウムと10〜300mgエチレンジアミ
    ン四酢酸・3ナトリウムを組み合わせてなる保存剤。
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