JPH10276934A - 便座ユニット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の構成では、便座表面板と便座裏板の溶
着結合には特殊な装置を必要とし、かつ部分的な溶着不
良などによるシール不良あるいは強度のばらつきが生じ
ることがあったが、本発明は、特殊な溶着装置を必要と
することなく、寸法精度のよい便座を実現することを課
題とする。 【解決手段】 キャビテイー内に連続した溶融樹脂の注
入によって形成された便座表面板１および便座裏板２の
一部に中空部５を有し、前記便座表面板１と便座裏板２
の周縁部を当接して組み立て、中空箱体を構成するとと
もに、組立状態で、便座表面板１内面に微小隙間をもっ
て対向する複数の突起部４を便座裏板２の内表面に設け
て便座ユニットとする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はトイレで使用する便
座ユニットに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の便座ユニットは通常、アクリロニ
トリル・ブタジエン・スチレン共重合体（以下ＡＢＳ樹
脂と略称する）で形成され、図８に示すように、便座表
面板１と便座裏板２とヒーターユニット３を構成要素と
している。例えば便座表面板１の内面にヒーターユニッ
ト３を貼付し、便座表面板１の周縁部と、便座裏板２の
周縁部とを嵌合して組立て、その後、超音波振動溶着あ
るいは加熱溶着により便座表面板１と便座裏板２とを一
体に結合する構成となっていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の構成では、
便座表面板１と便座裏板２の溶着結合に特殊な装置を必
要とするとともに、例えば超音波振動溶着の場合は全周
にわたる溶着部分にばらつきがあったり、さらには便座
表面板および便座裏板の射出成形時におけるひけ、反
り、変形などにより便座表面板と便座裏板の嵌合不良が
あり部分的に溶着不良が発生し、シール不良あるいは強
度のばらつきを生じることがあった。また、加熱溶着の
場合は、加熱溶融による熱放散、臭気放散など作業環境
の悪化という問題があった。

【０００４】また、便座表面板と便座裏板とを結合した
のちには、分解することができず、サービス修理ができ
ないため、ヒーターユニットなどの内部の構成部品が故
障した場合には暖房ユニット全体の交換修理が必要とな
り、経済的、資源的ロスとなるなどの問題があった。

【０００５】さらに、ＡＢＳ樹脂で形成された便座ユニ
ットは、耐薬品性が良好ではなく、一部のトイレ用洗浄
剤でソルベントクラックを発生する場合があった。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は上記従来の問題
を解消することを課題とするものであり、キャビテイー
内への連続した溶融樹脂の注入によって形成されかつ部
分的に中空部を有する便座表面板または便座裏板をその
周縁部において相互に当接して組み立て、便座表面板と
便座裏板とにより中空箱体を構成するとともに、組立状
態で便座表面板の内面に微少間隙をもって対向する複数
の突起部を便座裏板の内表面に設けた便座ユニットとし
たものである。

【０００７】上記発明によれば、強度、剛性、組立性、
シール性、サービス性の優れた便座ユニットを経済的に
得ることができる。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明は、各請求項記載の形態に
より実施し得るもので、請求項１記載のように、キャビ
テイー内への連続した溶融樹脂の注入によって形成され
かつ部分的に中空部を有する便座表面板または便座裏板
をその周縁部において相互に当接して組み立て、前記便
座表面板と便座裏板とにより中空箱体を構成するととも
に、組立状態で便座表面板の内面に微少間隙をもって対
向する複数の突起部を便座裏板の内表面に設けた便座ユ
ニットとすることにより、キャビテイー内への溶融樹脂
の射出に引き続き、例えばガスの注入により形成した中
空部により便座表面板および便座裏板の変形、反り、ひ
けあるいは寸法精度などが改善され、便座表面板と便座
裏板との嵌合が正確になり、強度改善が可能となる。さ
らに組立状態で便座表面板の内面に、微少間隙をもって
対向する複数の突起部を便座裏板の内表面に設けること
により、寸法のバラツキによる突き上げもなく組立て寸
法精度のよい便座ユニットが得られるとともに、荷重時
は便座表面板の荷重変形を突起部により分散支持でき、
強度の高い便座ユニットが得られる。

【０００９】また、請求項２記載のように複数の突起部
は凸状ボスとした場合は、さらに剛性の高い便座ユニッ
トとすることができる。

【００１０】また、請求項３記載のように複数の突起部
を格子状凸リブとした場合は、さらに剛性の高い便座ユ
ニットとすることができる。

【００１１】また、請求項４記載のように便座裏板の底
面中央部付近を、その周縁部における便座表面板との当
接面と逆方向に外方に張り出させた便座ユニットとした
ことにより、便座裏板の剛性も向上し、さらに、突起部
を設ける場合、突起部の高さも高く構成でき、さらに、
剛性の高い便座ユニットを得ることができるとともに、
脚座部を低くすることにより、便器との間隙も小さくで
き、間隙からの水滴飛散が防止できる。

【００１２】また、請求項５記載のように中空箱体の内
部にヒーターユニットを収納した場合は、便座ユニット
表面の加温が可能となり、特に冬季の使用に適してい
る。

【００１３】また、請求項６記載のように便座表面板の
内面方向にねじボスを延出し、前記ねじボスと便座裏板
のねじ穴とにより便座表面板と便座裏板をねじ締結した
便座ユニットとした場合は、便座表面板と便座裏板はね
じ締結により一体に結合されるため、組立分解が容易
で、特殊な結合装置も不要で、かつ、便座表面板と便座
裏板との結合後の分解サービスメンテナンスも容易に行
うことができる。

【００１４】また、請求項７記載のように便座裏板のね
じ穴をねじ収納部に設け、前記ねじ収納部を脚で覆うよ
うにして便座ユニットとした場合は、ねじは収納部に収
納されることになり、しかも脚で覆うことにより外部に
露出せず、見栄えの向上と、不用意に分解される危険を
少なくすることが出来る。

【００１５】また、請求項８記載のように便座表面板お
よび便座裏板のいずれか一方又は両方を高結晶性ポリプ
ロピレン樹脂で形成した便座ユニットの場合は、高結晶
性ポリプロピレン樹脂が耐薬品性が非常に良好であるた
め、通常のトイレ用洗浄剤では侵されず、ソルベントク
ラックの心配がない。また、洗浄剤を選ぶ必要がないの
で手入れが楽であり、清潔である。

【００１６】また、請求項９記載のように便座表面板お
よび便座裏板のいずれか一方又は両方を高結晶性ポリプ
ロピレン樹脂と弾性体成分とからなる樹脂体で形成した
便座ユニットとした場合は、弾性体成分が高結晶性ポリ
プロピレン樹脂の粒子の間に入り込み、接着剤の役割を
果たすことになり、衝撃強度が改善され、急激な荷重に
も絶え得る便座ユニットとすることができる。また、高
結晶性ポリプロピレン樹脂は耐薬品性が良好であり、通
常のトイレ用洗浄剤では侵されず、ソルベントクラック
の心配がない。そのため、洗浄剤を選ぶ必要がないので
手入れが楽であり、清潔である。

【００１７】また、請求項１０記載のように便座表面板
および便座裏板のいずれか一方又は両方を高結晶性ポリ
プロピレン樹脂とエチレン−プロピレンゴムとからなる
樹脂体で形成した便座ユニットとした場合は、エチレン
−プロピレンゴムは高結晶性ポリプロピレン樹脂と親和
性が大きいため、エチレン−プロピレンゴム成分が高結
晶性ポリプロピレン樹脂の粒子の間に均一に入り込み、
効果的に接着剤の役割を果たし、少量の添加でばらつき
なく大幅な衝撃強度を改善し、急激な大荷重にも耐え得
る便座ユニットが得られる。

【００１８】以下本発明の便座ユニットの一実施例を図
面に基づいて説明する。なお、従来例と同一部品には同
一符号を付与して、詳細な説明は省略する。

【００１９】図１において、１は便座表面板で、２は便
座裏板で、内部にヒーター３などの部品を収納して互い
に内周部および外周部すなわち周縁部において相互に当
接して便座ユニットを形成している。図２、図３におい
て、４は便座裏板２の内表面に設けた複数の突起部で例
えば図に示すような凸状ボスのようなものにするとよ
い。そして組立状態で便座表面板１の内面に微小な間隙
Ｇをもって対向し、使用時は荷重による便座表面板１の
変形を支持するように設けられている。ここで、便座表
面板１および便座裏板２にはそれぞれ部分的に中空部５
が形成され、便座表面板１および便座裏板２の寸法精度
の確保と成型時変形の防止などにより、便座表面板１と
便座裏板２とは優れた嵌合性が確保されている。

【００２０】また、図４は突起部を格子状凸リブ６とし
た例を示しており、さらに図５は、便座裏板２の底面中
央部７付近を便座表面板１との周縁部における当接部８
と逆方向に外方に張り出し、かつ内面に突起部４を設け
た例を示している。その結果、図６に示すように便器９
と便座上面との寸法Ｈは従来例と本実施例とでは変りは
ないが便器９と便座裏板との取付隙間Ｋは従来の便座の
場合の取付隙間Ｊよりも少なくなる。なお、ここで便座
表面板１および便座裏板２にはそれぞれ中空部５が形成
され、便座表面板１および便座裏板２の寸法精度の確保
と成型時変形の防止などにより、優れた嵌合性が確保さ
れている。

【００２１】また図７において１０は便座裏板２に設け
られた脚座部で、内部にねじ１１のねじ穴を含む収納穴
１２を有し、便座表面板１の内面に延出したねじボス１
３に当接し、便座裏板２と便座表面板１をネジ結合後、
この収納穴１２に脚１４を挿入し、ねじ１１を覆うよう
に構成している。

【００２２】（実施例１）ＡＢＳ樹脂を下記の条件で射
出し、キャビテイー内へ連続注入した。

【００２３】 射出シリンダー温度 ２３０℃ 射出圧力 ５００ｋｇ／ｃｍ² 射出充填時間 ５秒 金型温度 ４０℃ 上記溶融ＡＢＳ樹脂の射出後、窒素ガスを中空部５の形
成流体として、下記の条件でキャビテイー内に注入し、
保持時間満了後便座表面板１を形成した。また同様な条
件で、便座裏板２を形成した。なお、便座裏板２の内表
面には複数の突起部４としての凸ボスが設けてある。

【００２４】 平衡圧 ４０ｋｇ／ｃｍ² 保持時間 ６０秒 射出成形された便座表面板１および便座裏板２の周縁部
にはそれぞれ中空部５が形成され、成型時における、ひ
け、反り、変形などは認められず、また寸法精度も良好
であった。

【００２５】便座表面板１と便座裏板２とを嵌合して組
立てる場合、便座表面板１と便座裏板２の嵌合性が非常
に良好であるため、組立性がよく、強度、剛性、シール
性に優れた便座ユニットが得られた。さらに便座裏板２
の内表面に設けた突起部４としての凸状ボスにより、荷
重時は便座表面板１の荷重変形を分散して支持でき、強
度の高い便座ユニットが得られた。

【００２６】（実施例２）７０％の結晶化度を有する高
結晶性ポリプロピレン樹脂を下記の条件でキャビテイー
内へ連続注入した。

【００２７】 射出シリンダー温度 ２００℃ 射出圧力 ５００ｋｇ／ｃｍ² 射出時間 ５秒 金型温度 ４０℃上記溶融高結晶性ポリプロ
ピレン樹脂の射出後、窒素ガスを中空部５の形成流 体として、下記の条件でキャビテイーに注入し、保持時
間満了後、便座表面板１を形成した。また、同様な条件
で便座裏板２を形成した。なお、便座裏板２の内表面に
は複数の突起部４としての凸状ボスが設けてある。

【００２８】 平衡圧 ６０ｋｇ／ｃｍ² 保持時間 ６０秒 射出成形された便座表面板１および便座裏板２の内周部
および外周部にはそれぞれ中空部５が形成され、成形時
における、ひけ、反り、変形などは認められず、また寸
法精度も良好であった。

【００２９】便座表面板１と便座裏板２とを嵌合して組
立てる場合、便座表面板１と便座裏板２との嵌合性が非
常に良好であるため、組立性がよく、強度、剛性、シー
ル性に優れた便座ユニットが得られた。さらに便座裏板
２の内表面に設けた突起部４として凸状ボスにより、荷
重時は便座表面板１の荷重変形を分散して支持でき、強
度の高い便座ユニットが得られた。

【００３０】また、高結晶性ポリプロピレン樹脂で形成
されているため、通常の洗浄剤には侵されず、強力洗浄
剤の使用が可能なため、手入れが簡単である。

【００３１】（比較例１）ＡＢＳ樹脂を下記の条件でキ
ャビテイー内へ連続注入し、便座表面板を成形した。な
お、中空部形成のための窒素ガスは用いなかった。ま
た、同様な条件で便座裏板を成形した。なお、便座裏板
の内表面には凸状ボスが設けてある。

【００３２】 射出シリンダー温度 ２３０℃ 射出圧力 ５００ｋｇ／ｃｍ² 射出充填時間 ５秒 金型温度 ４０℃ 射出成形された便座表面板および便座裏板は、それぞれ
内部が全てＡＢＳ樹脂で充填されていた。前記便座表面
板および便座裏板にはひけ、反り、変形が明らかに認め
られ、また寸法も０．５％程度の収縮が認められた。そ
のため両者の嵌合にも不具合が生じ、便座ユニットとし
てのシール性、組立性の劣化、強度のばらつきが発生し
た。

【００３３】

【発明の効果】以上説明したように本発明の便座ユニッ
トは、次の効果を有するものである。

【００３４】（１）便座表面板または便座裏板に部分的
に中空部を有するため、ひけ、反り、変形が少なく、寸
法精度も良好である。そのため、便座表面板と便座裏板
との嵌合が正確になり、強度改善が可能となる。さら
に、組立状態で便座表面板の内面に、微小間隙をもっ
て、対向する複数の突起部を便座裏板の内表面に延出し
て設けることにより、寸法ばらつきによる突き上げもな
く組立寸法精度の良い便座ユニットが得られるととも
に、荷重時は便座表面板の荷重変形を分散して支持で
き、強度の高い便座ユニットが得られる。

【００３５】（２）便座裏板の突起部を格子状凸リブと
することにより、さらに剛性の高い便座ユニットを得る
ことが出来る。

【００３６】（３）便座裏板の底面中央部付近をその周
縁部における便座表面板との当接面とは逆方向に張り出
させることにより、便座裏板の剛性も向上し、さらに突
起部を設けた場合、突起部の高さも高く構成でき、さら
に剛性の高い便座ユニットを得ることが出来るととも
に、脚座部を低くすることにより、便器との隙間を小さ
くでき、隙間からの水滴飛散が防止できるという効果も
有する。

【００３７】（４）便座表面板と便座裏板はねじ結合に
より一体に結合されるため、組立分解が容易で、特殊な
結合装置も不要で、かつ、結合後の分解サービスメンテ
ナンスも容易に行える。また、ネジを脚座部に収納し、
脚で覆うことによりねじが外部に露出せず、見栄えの向
上と不用意に分解される危険を少なくすることが出来
る。

【００３８】（５）便座表面板あるいは便座裏板を高結
晶性ポリプロピレンで形成することにより、耐薬品性が
良好で、通常のトイレ用洗浄剤では侵されず、ソルベン
トクラックの心配がない便座ユニットを得ることが出来
る。また洗浄剤を選ぶ必要がないので手入れが楽であ
り、清潔である。

【００３９】（６）便座表面板あるいは便座裏板を高結
晶性ポリプロピレン樹脂と弾性体成分とからなる樹脂体
で形成することにより、衝撃強度が改善され、急激な大
荷重にも耐え得る実用性能の向上した便座ユニットを得
ることが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の便座ユニットの分解斜視図

【図２】同実施例の便座裏板の斜視図

【図３】同実施例の便座ユニットの断面図

【図４】本発明の他の実施例の便座裏板の斜視図

【図５】同他の実施例の便座ユニットの断面図

【図６】同他の実施例の便器と便座裏板との隙間の関係
を示す概念説明図

【図７】同他の実施例の便座ユニットの断面図

【図８】従来の便座ユニットの断面図

【符号の説明】

１ 便座表面板 ２ 便座裏板 ４ 突起部 ５ 中空部 ７ 底面中央部 ８ 当接部 ９ 便器 １０ 脚座部 １１ ねじ １２ 収納穴 １３ ねじボス １４ 脚

Claims (10)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 キャビテイー内への連続した溶融樹脂の
   注入によって形成されかつ部分的に中空部を有する便座
   表面板または便座裏板をその周縁部において相互に当接
   して組み立て、前記便座表面板と便座裏板とにより中空
   箱体を構成するとともに、組立状態で便座表面板の内面
   に微少間隙をもって対向する複数の突起部を便座裏板の
   内表面に設けた便座ユニット。
2. 【請求項２】 複数の突起部を凸状ボスとした請求項１
   記載の便座ユニット。
3. 【請求項３】 複数の突起部を格子状凸リブとした請求
   項１記載の便座ユニット。
4. 【請求項４】 便座裏板の底面中央部付近を、その周縁
   部における便座表面板との当接部と逆方向に外方に張り
   出させた請求項１ないし３のいずれか１項に記載の便座
   ユニット。
5. 【請求項５】 中空箱体の内部にヒーターユニットを収
   納した請求項１ないし４のいずれか１項に記載の便座ユ
   ニット。
6. 【請求項６】 便座表面板の内面方向にねじボスを延出
   し、前記ねじボスと便座裏板のねじ穴により便座表面板
   と便座裏板をねじ締結した請求項１ないし５のいずれか
   １項に記載の便座ユニット。
7. 【請求項７】 便座裏板のねじ穴をねじ収納部に設け、
   前記ねじ収納部を脚で覆った請求項６記載の便座ユニッ
   ト。
8. 【請求項８】 便座表面板および便座裏板のいずれか一
   方又は両方を高結晶性ポリプロピレン樹脂で形成した請
   求項１ないし５のいずれか１項に記載の便座ユニット。
9. 【請求項９】 便座表面板および便座裏板のいずれか一
   方又は両方を高結晶性ポリプロピレン樹脂と弾性体成分
   とからなる樹脂体で形成した請求項１ないし５のいずれ
   か１項に記載の便座ユニット。
10. 【請求項１０】 便座表面板および便座裏板のいずれか
    一方又は両方を高結晶性ポリプロピレン樹脂とエチレン
    −プロピレンゴムとからなる樹脂体で形成した請求項１
    ないし５のいずれか１項に記載の便座ユニット。