JPH10276779A - 遺伝子プローブとdnaポリメラーゼを用いた変異検出方法 - Google Patents

遺伝子プローブとdnaポリメラーゼを用いた変異検出方法

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JPH10276779A
JPH10276779A JP9082805A JP8280597A JPH10276779A JP H10276779 A JPH10276779 A JP H10276779A JP 9082805 A JP9082805 A JP 9082805A JP 8280597 A JP8280597 A JP 8280597A JP H10276779 A JPH10276779 A JP H10276779A
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JP
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gene
probe
codon
mutation
primer
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JP9082805A
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English (en)
Inventor
Kazunori Shimada
和典 島田
Takuya Koshizaka
卓也 越坂
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ゲノム遺伝子、癌遺伝子、ウィルス、細菌等
の遺伝子の変異型を簡便にかつ正確に判定するための変
異検出方法の提供。 【解決手段】 目的遺伝子の遺伝子プローブへのハイブ
リダイゼーションとDNAポリメラーゼを用いた標識基
質 (塩基) の取り込み反応を組み合わせた、遺伝子の変
異検出方法。用いる遺伝子プローブは、その配列内の3'
末端もしくはその近傍に検出すべき点変異部位を含むよ
うに設定する。プローブと目的遺伝子とをハイブリダイ
ゼーションさせた後、標識基質とポリメラーゼを加えて
取り込み反応させ、取り込み反応終了後、標識体の検出
を行うことにより点変異の有無および種類が判別でき
る。この変異検出方法を、癌マーカーであるK-ras 遺伝
子コドン12の変異の検出に適用すると、膵臓癌など各種
の癌の診断に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遺伝子プローブと
DNAポリメラーゼを用いた新規な変異検出方法に関
し、より詳しくは、目的遺伝子の遺伝子プローブへのハ
イブリダイゼーションと、DNAポリメラーゼを用いた
標識基質の取り込み反応を組み合わせた変異検出方法に
関する。この方法によれば、ゲノム遺伝子、癌遺伝子、
ウイルス、細菌等の遺伝子の点変異の検出および変異の
種類の判別を簡便かつ正確に行うことができる。さらに
本発明は、K-ras 遺伝子コドン12遺伝子型判定方法およ
びそれに用いるキットに関する。この方法を用いること
により、ヒトゲノム遺伝子に含まれる腫瘍マーカーであ
るK-ras 遺伝子コドン12に関して、変異型の有無、変異
型の種類、変異型の存在比率を簡便かつ正確に判断する
ことができ、腫瘍の早期発見や腫瘍化の確認に有用であ
る。
【0002】
【従来の技術】従来の点変異検出方法としては以下のよ
うな方法がある。 (シークエンス法)点変異付近の配列を切り出した遺伝
子、もしくはPCR法で増幅した産物をプラスミドに組
み込み、増幅した後にその領域をシークエンスすること
で配列を確認するスタンダードなシークエンス法(Proc.
Natl. Acad. Sci. 74, 5463-, 1977 参照) の他、PC
Rで増幅した産物を直接シークエンスするダイレクトシ
ークエンス法など、遺伝子配列を解析して点変異を確認
する方法である。
【0003】(PCR−SSP法)点変異に対応する塩基
を3' 末端に有する遺伝子増幅用プライマーを用い、変
異遺伝子のみをPCR法により増幅することにより、点
変異を検出する方法である (臨床病理、43:7, 718-723,
1995 参照) 。
【0004】(PCR−RFLP法)点変異を含む領域を
PCR法で遺伝子増幅し、点変異領域の配列に特異的な
制限酵素で切断し、切断の有無によって点変異の有無を
検出する方法である (特開平5−308999号公報参照) 。
【0005】(PCR−SSCP法)点変異を含む領域を
PCR法で遺伝子増幅し、変性・再構成の後、電気泳動
を行う。この際、2種類の遺伝子型、例えば正常型と変
異型が存在する場合、再構成時にミスマッチが起こり
(例えば正常型のセンス鎖と変異型のアンチセンス鎖)
、このような配列中にミスマッチのある2本鎖遺伝子
は立体構造が変化するため、電気泳動時の移動度が変化
するという性質を利用して点変異の検出を行う (変異ウ
イルスと癌の遺伝子診断をめぐって、小俣政男監修、国
際図書出版、127-130, 1994 参照) 。
【0006】(PCR−ミニシークエンス法)点変異を含
む領域をPCR法で遺伝子増幅し、増幅遺伝子をプロー
ブとハイブリダイゼーションさせる。用いるプローブ
は、その配列内に点変異部位を含まずかつ点変異部位の
隣が3'末端であるように設定したものである。次いで、
それぞれの点変異と相補的な塩基をポリメラーゼによっ
て取り込ませ、取り込まれた塩基の種類によって点変異
を検出する方法である。
【0007】しかしながら、上記の検出方法には、操作
が煩雑である、検出系が複雑である、あるいは変異型の
比率が低い場合には検出が困難であるなどの欠点があ
る。例えば、K-ras 遺伝子コドン12の変異の検出に適用
した場合について具体的に検討する。K-ras 遺伝子コド
ン12の変異は膵管癌の80〜90%で検出されており、その
他にも甲状腺癌 (50〜60%) 、大腸癌 (40〜50%) 、肺
腺癌 (20〜30%) などでも高い確率で検出されるとの報
告がある。これらの組織の生検試料から抽出した遺伝子
のK-ras 遺伝子コドン12の検査を行うことにより腫瘍化
の可能性を判定することが可能である。さらに膵管癌の
診断では膵液でのK-ras 遺伝子コドン12の変異検出が、
また大腸癌の診断では大腸洗浄液中の浮遊細胞でのK-ra
s 遺伝子コドン12の変異検出が、癌化の可能性を判定す
る腫瘍マーカーとして有用であるとの報告もある (日本
臨床、53:2, 511-517, 1995 参照) 。
【0008】K-ras 遺伝子コドン12には6種類の変異型
が存在することが知られているが、このK-ras 遺伝子コ
ドン12の点変異を検出する方法として、シークエンス法
は確実性は高いが手法が非常に繁雑であり、さらに正常
型100 に対して変異型1といった低い比率でしか存在し
ない場合の変異の検出は困難である。PCR−SSP法
では、プライマーの設定は可能だが、7種類存在する遺
伝子型を判定するためには8本の遺伝子増幅を行う必要
があり、増幅条件の設定や手法が繁雑である。PCR−
RFLP法では7種類の遺伝子型の各々全ての塩基配列
に対応する制限酵素が存在せず、判定できない点変異が
ある。PCR−SSCP法では電気泳動時の温度調整が
微妙であり、移動度から正確に7種類を判別することが
困難である。PCR−ミニシークエンス法では7種類の
遺伝子型を検出するために、標識をした4種類全ての塩
基が必要であり、さらにはK-ras 遺伝子コドン12の場
合、連続するコドンの1番目と2番目の塩基に変異の可
能性があるため、検出系が複雑になる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、従来の点変異検出方法の問題点を解決した、簡便か
つ正確な点変異検出方法を提供することである。さらに
は、K-ras 遺伝子コドン12の変異の検出、より具体的に
は変異型の有無、変異型の種類、変異型と正常型の存在
比率を判定できる方法および試薬を提供することであ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、3'末端を
遺伝子の変異に応じて変化させたプローブを用いて、こ
れを目的遺伝子にハイブリダイゼーションさせ、次いで
DNAポリメラーゼによる標識基質の取り込みを行わ
せ、取り込み反応を分析することによって、遺伝子上の
変異を簡便かつ正確に判定することができることを見出
し、本発明を完成した。この方法は、目的遺伝子とプロ
ーブが相補性を有するか否かにより、次いで行うDNA
ポリメラーゼによる標識基質の取り込み反応が影響され
ることを利用するものである。
【0011】すなわち、本発明の要旨は、変異を検出す
べき目的遺伝子と該変異に対応した遺伝子プローブをハ
イブリダイゼーションさせた後、DNAポリメラーゼを
用いて標識基質の取り込み反応を行わせ、該標識基質の
取り込み反応を分析することにより目的遺伝子の変異を
判定する方法であり、前記遺伝子プローブが、その配列
内の3'末端もしくはその近傍に、目的遺伝子における変
異部位に対応する塩基を含むように設定されたものであ
る、変異判定方法にある。
【0012】上記方法においては、目的遺伝子を予め変
異領域を含むように遺伝子増幅しておくことが好まし
い。また、この遺伝子増幅は、セミネスティッドPCR
法と制限酵素処理を組み合わせたエンリッチPCR法に
より行うこともできる。上記方法において使用する遺伝
子プローブは予め担体に固相化しておくことが望まし
い。
【0013】さらに、本発明は、ヒトK-ras 遺伝子コド
ン12領域を含む遺伝子あるいはその増幅産物を、ヒトK-
ras 遺伝子コドン12の点変異部位に対応する塩基を3'末
端もしくはその近傍に有する遺伝子プローブとハイブリ
ダイゼーションさせ、次いで、DNAポリメラーゼを用
いて標識基質の取り込み反応を行わせ、該標識基質の取
り込み反応を分析することによりヒトK-ras 遺伝子コド
ン12の変異を判定する方法にも関する。
【0014】この方法において、ヒトK-ras 遺伝子コド
ン12を含む遺伝子の増幅産物は、抽出したヒトゲノム遺
伝子を鋳型としてセミネスティッドPCR法と制限酵素
処理を組み合わせたエンリッチPCR法により変異型を
増強して得られた増幅産物であることが好ましい。さら
に、セミネスティッドPCR法の一次PCRにおいて、
正常型特異的に制限酵素処理を行えるように意図的にミ
スマッチ塩基を導入したプライマーを用いることが好ま
しい。
【0015】好適には、セミネスティッドPCR法の一
次PCRにおいて、フォワード側のプライマーとして配
列番号1の塩基配列を有するプライマーを、また、リバ
ース側のプライマーとして配列番号2の塩基配列を有す
るプライマーを用る。
【0016】ヒトK-ras 遺伝子コドン12の変異判定方法
において用いる遺伝子プローブとして、ヒトK-ras 遺伝
子コドン12の正常型および6種類の変異型の塩基配列を
それぞれ含む7種類のオリゴプローブを用いることがで
き、これらの遺伝子プローブは予め担体に固相化してお
くことが望ましい。
【0017】さらに、本発明は、上記ヒトK-ras 遺伝子
コドン12の点変異検出方法に用いるのに適したキットに
も関し、このキットは、(1) ヒトK-ras 遺伝子コドン12
の点変異部位に対応する塩基を3'末端もしくはその近傍
に有する遺伝子プローブ、(2) DNAポリメラーゼおよ
び(3) 標識基質を含有する。
【0018】キットの好適例としては、(1) ヒトK-ras
遺伝子コドン12を含む遺伝子の増幅産物を得るための、
配列番号1のプライマーおよび配列番号2のプライマー
からなる一次PCR用プライマーセット、配列番号1の
プライマーおよび配列番号3のプライマーからなる二次
PCR用プライマーセットおよび制限酵素BsrI、(2)ヒ
トK-ras 遺伝子コドン12の点変異部位に対応する塩基を
3'末端もしくはその近傍に有する遺伝子プローブもしく
はその固相化プローブ、(3) DNAポリメラーゼおよび
(4) 標識基質を含有するものが挙げられる。
【0019】本発明の変異判定方法について以下に詳細
に説明する。この方法は、ゲノム遺伝子、癌遺伝子、ウ
イルスや細菌の遺伝子など種々の核酸配列中の変異を検
出するために使用できる。
【0020】変異を検出しようとする目的遺伝子は、大
量の、かつ短い遺伝子である方が点変異の検出の効率が
上がるため、PCR法等によって変異を含む領域、例え
ば70〜150 bp程度の領域で増幅をかけておくことが望ま
しい。
【0021】増幅した産物は変性させて1本鎖とした
後、変異に応じた各プローブとハイブリダイゼーション
させる。プローブは、3'末端もしくは3'末端から数塩基
5'末端側に寄った位置に、点変異部位がくるように設定
したプローブを各々の点変異にあわせて準備する。プロ
ーブの設定は、センス側でもアンチセンス側でもよく、
通常25〜50塩基程度の合成オリゴプローブとする。また
プローブは担体に固相化してあることが、検出の際の簡
便さの点から望ましい。
【0022】遺伝子とプローブのハイブリダイゼーショ
ンの後、DNAポリメラーゼと標識基質を加えて、標識
基質の取り込みを行わせる。この時、温度、時間などの
反応条件の調整を行い、目的遺伝子とプローブの3'末端
の配列が完全に一致した組み合わせの場合のみ標識基質
の取り込みが起こり、1塩基でも不一致があれば取り込
み反応が起こらないようにする。加える基質は、ハイブ
リダイゼーションした目的遺伝子からみて、プローブの
3'末端より1塩基5'側の塩基と相補的な塩基である。す
なわち、プローブと目的遺伝子が完全に相補的である場
合には、目的遺伝子を鋳型としてプローブの3'末端側に
取り込まれるような塩基である。
【0023】ここで、目的遺伝子の点変異部位とプロー
ブの3'末端付近の点変異対応部位が相補的である場合、
プローブと目的遺伝子は完全な2本鎖となり、プローブ
の3'末端に標識基質が取り込まれ、プローブに標識体が
取り込まれることになる。逆に相補的でない場合は目的
遺伝子とプローブの3'末端が2本鎖にならず、取り込み
反応が起こりにくい。このようにして、標識基質の取り
込み効率の差から、目的遺伝子とプローブとの相補性が
判定できる。この時、DNAポリメラーゼに耐熱性のD
NAポリメラーゼを使用し、取り込み反応時の反応温度
を高くすれば取り込み効率の差を拡大することができ
る。
【0024】次いで、プローブに取り込まれた標識体を
発色法、蛍光法、化学発光法などの方法で検出すること
により、点変異の検出を行う。以下に本発明の詳細を、
K-ras 遺伝子コドン12の変異の判定を例にとって説明す
る。
【0025】K-ras 遺伝子コドン12には合計6種類の変
異型が存在する。正常型を含め7種類の遺伝子型を判定
するためには、従来の方法であればPCR−SSP法か
PCR−ミニシークエンス法が有用であると考えられ
る。しかし、プライマーの3'末端の相補性によりPCR
増幅効率の差が生じることに基づくPCR−SSP法で
は、8種類 (正常型GGTのコドンの1番目のGと2番
目のGは別個に検出する必要がある) のプライマーセッ
トによって8本のPCRを行う必要があるため、サーマ
ルサイクラーの占有時間が長くなってしまう上、遺伝子
増幅時の温度条件設定を一定にすることも困難である。
変異に対して相補的な塩基をポリメラーゼで取り込ま
せ、取り込まれた塩基の種類によって点変異を検出する
ことを測定原理とするPCR−ミニシークエンス法の場
合は、7種類全ての遺伝子型を判定するために、標識し
た4種類の塩基が必要である上に、各塩基で違う取り込
み効率を同じにする調整や4種類の塩基の入った液を分
注する必要があるため手法的に繁雑であり、操作性が劣
る。
【0026】本発明の変異検出方法によりK-ras 遺伝子
コドン12の変異を検出すると、従来のPCR−SSP法
の場合、8本必要であったPCRが1本で済み、PCR
−ミニシークエンス法の場合では、8種類必要 (実際の
塩基は4種類しか無いが、加える濃度や反応溶液の組成
の変更により、8種類の溶液が必要) であった、標識し
た塩基を含む反応溶液が1種類ですみ、塩基の種類によ
る取り込み効率の差もないため、手法が簡便であり、か
つ判定が正確となる。
【0027】K-ras 遺伝子コドン12は、正常型の配列で
ある「GGT」に対しコドンの1番目もしくは2番目の
Gが、それ以外の塩基であるA、C、Tに変異してい
る。すなわち、正常型の配列である「GGT」の他に、
「AGT」、「CGT」、「TGT」、「GAT」、
「GCT」、「GTT」の6種類の変異型が存在する。
検出用のプローブの設定位置は、この変異部位をプロー
ブの3'末端もしくはその近傍に含むようにすれば、セン
ス側、アンチセンス側のいずれでもよい。
【0028】ここでは、3'末端がコドン12の1番目の塩
基に位置し、7種類の遺伝子型に相補的な配列の7種類
のアンチセンスプローブを例にとって説明する。正常型
である「GGT」に対応したプローブに対しては、コド
ン12の1番目に変異がある「AGT」、「CGT」、
「TGT」の3種類の変異型の遺伝子にはプローブの
3’末端がミスマッチとなり、さらにコドン12の2番
目に変異がある「GAT」、「GCT」、「GTT」の
3種類の変異型の遺伝子にはプローブの3'末端より1塩
基5'側の位置がミスマッチとなる。
【0029】正常型と6種類の変異型に対応した7種類
のプローブを、固相化担体として操作が容易なマイクロ
プレートに固相化する。K-ras 遺伝子コドン12を含むヒ
トゲノム遺伝子は、癌組織からの生検組織、および膵液
や十二指腸洗浄液等の中に含まれる浮遊細胞などから抽
出・精製したものを用いる。また、組織切片から抽出し
た遺伝子やc-DNAでも構わない。
【0030】遺伝子は、K-ras 遺伝子コドン12の点変異
を含み、できるだけ短く、かつプローブの結合の領域に
はかからないように設定したプライマーセットで増幅し
た産物であるのが好ましい。
【0031】さらに、この増幅産物としては、エンリッ
チPCR法による遺伝子増幅により変異型を増強して得
られたものも使用できる。ただし、変異型が単独もしく
は量比の差が少ないような検体での変異型の判定を行う
場合は、必ずしもエンリッチPCR法を行う必要はな
く、通常のPCR法での遺伝子増幅で十分である。エン
リッチPCR法は、例えば膵液中の浮遊細胞から抽出し
たゲノム遺伝子のK-ras遺伝子コドン12の変異を検出す
るというような、大量の正常型遺伝子に混入した微量の
遺伝子型を検出する場合に、特に有用である。K-ras 遺
伝子コドン12の場合、6種類の変異型は正常型であるG
GTと混在して検出される場合が多い。抽出した鋳型遺
伝子をそのまま用いて通常のPCR法で遺伝子増幅を行
った場合、最終的な増幅産物中の正常型と変異型の量比
は、スタート時の鋳型遺伝子の量比を反映するため、正
常型に対して変異型が数十分の一以下しか存在しない場
合の変異型の検出および変異の種類の判定は困難であ
る。そこで、6種類の変異型を正常型と比較して増強し
て増幅するエンリッチPCR法により遺伝子増幅を行う
ことで、数百分の一の割合で存在する変異型でも判定可
能にする。
【0032】変異型を増強するエンリッチPCR法の測
定原理は、検出したい点変異を含む領域をPCR法によ
って遺伝子増幅し(一次PCR) 、その増幅産物を正常
型の配列を特異的に認識して切断する制限酵素で処理
し、切断後の産物をもう一度PCR法によって遺伝子増
幅する(二次PCR) 。この時、制限酵素の作用で切断
された、一次PCRの正常型の増幅産物は二次PCRで
は鋳型となれず、制限酵素で切断されない6種類の変異
型の遺伝子の増幅産物は鋳型となるため、変異型が増強
して遺伝子増幅される、というものである (埼臨技会
誌、42P2, 157, 1995)。
【0033】K-ras 遺伝子コドン12の場合、ゲノム遺伝
子上の正常型の配列を認識して正常型特異的な切断を行
う制限酵素が現段階で存在しないため、変異領域付近に
人為的に変異を導入することにより、正常型であるGG
Tの配列に特異的な制限酵素認識部位を人為的に作るこ
とができる。例えば、人為的に1塩素の変異を導入する
ことにより、BarI、BstNI 、MvaI、NlaIV などの制限酵
素が正常型であるGGTを特異的に認識して切断するこ
とが可能となる。
【0034】上記K-ras 遺伝子コドン12の点変異部位を
含む遺伝子またはその増幅産物を、プレートに固相化し
た7種類のプローブにハイブリダイゼーションさせる。
この反応において、増幅時の副産物は配列の特異性によ
りプローブとハイブリダイゼーションせず、選択的に除
去される。この段階では、たとえ点変異が存在したとし
てもプローブの3'末端付近の変異であるためK-ras 遺伝
子コドン12の増幅産物であれば選択性は余りなく、全て
がハイブリダイゼーションしていると考えられる。この
段階での選択性を追求するのであれば変異部位をプロー
ブの中心付近にし、高い温度でハイブリダイゼーション
をする必要がある。
【0035】目的遺伝子とプローブをハイブリダイゼー
ションさせた後、標識基質とDNAポリメラーゼを加え
て取り込み反応させる。取り込み反応は分子運動を高め
て特異性を上げるために、耐熱性のDNAポリメラーゼ
を用いて高い反応温度で行うことが望ましい。反応温度
が低いと非特異の取り込みが起こるため好ましくない。
K-ras 遺伝子コドン12の1番目の塩基を3'末端に有する
アンチセンスプローブを用いる場合、センス鎖である目
的遺伝子のコドン12の1塩基上流 (コドン11の3番目)
は「T」であるため標識基質としては塩基「A」を加え
る。正常型「GGT」と相補的な配列を3'末端に持つプ
ローブの場合、「GGT」の配列を持つ遺伝子とはプロ
ーブの3'末端が完全に2本鎖となっているため、標識さ
れた「A」がポリメラーゼの作用によって取り込まれ
る。しかし、その他の変異型の遺伝子の場合、プローブ
の3'末端もしくは3'末端より1塩基5'側にミスマッチが
あるため2本鎖になれず取り込み反応は起こりにくい。
正常型「GGT」に対応するプローブとはミスマッチが
ある変異型の遺伝子も、その他6種類のプローブにはマ
ッチングするプローブがあり、その場合には取り込み反
応が起こる。このように、相補的な遺伝子が存在する場
合、プローブの3'末端に対して標識基質が取り込まれ、
標識体が結合することになる。
【0036】この標識体を検出する方法としては、酵素
発色法、化学発光法、蛍光法などが挙げられる。酵素発
色法の場合、基質である塩基に対する標識体がペルオキ
シダーゼやフォスファクターゼなどの酵素であれば、取
り込み反応後に発色基質を加えて発色させることが可能
であるが、酵素は一般的に分子量が大きいためポリメラ
ーゼによる取り込み反応が困難であり、さらに加熱して
取り込み反応を行う場合は酵素が失活する場合がある。
そのため標識体としては、分子量が小さく、比較的安定
な物質であるビチオン、ジニトロフェニル (DNP) 、
ジゴキシゲニン(DIG) などを用いるのが好ましい。
塩基の標識体としてこれらを使用した場合、標識体の検
出は、ビオチンに対してはアビジン、DNPやDIGに
関しては各々に対する抗体に酵素を標識したものを2次
的に反応させて酵素を標識し、発色基質を加えて発色さ
せることに行うことができる。より高感度の検出が必要
な場合は発色基質の代わりに化学発光基質を加えること
で検出することも可能である。ただし、化学発光反応は
高感度であるがゆえに、非特異の発色が生じる場合があ
り、適当なブロッキング処理が必要となる。蛍光法の場
合、蛍光物質は分子量が小さいものが多いため、塩基に
直接標識したものを用い、取り込み反応後、蛍光光度計
で測定することが可能である。
【0037】標識体の検出を行った結果、標識体が検出
されたウェルでは、そのウェルに固相化されたプローブ
の3'末端付近の配列に対して相補的な点変異部位を有す
る遺伝子が存在すると判定される。標識体が検出されな
かったウェルでは、そのウェルに固相化されたプローブ
の配列に対して相補的な点変異部位を有する遺伝子は存
在しない、もしくは存在はするが検出感度外であると判
定される。また、遺伝子型が数種類重複して存在する場
合、取り込まれる標識体の量比はハイブリダイゼーショ
ンした増幅産物の量で決定される。目的遺伝子の増幅前
の存在比率は、増幅後の増幅産物の存在比率に反映され
るため、検出の強度により目的遺伝子での存在比率の概
算も可能である。
【0038】本発明方法の目的遺伝子に対する特異性を
評価するため、固相化した7種類のプローブに対して変
異領域も含め完全に相補的で、かつ5'側を3塩基分延長
した7種類の特異性評価用プローブを合成し、プレート
に固相したプローブにハイブリダイゼーションさせて検
出を行った。その結果、加えた特異性評価用プローブと
固相化プローブが相補的な場合にのみ標識体が取り込ま
れ、相補的でない組み合わせの場合は取り込まれないこ
とが確認された。この結果から、本発明方法により非常
に特異性高く、目標とする点変異を検出できることが分
かる。
【0039】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0040】(実施例1)ヒトK-ras 遺伝子コドン12の変
異の検出に関して説明する。 <鋳型遺伝子の準備>膵臓癌の患者の生検組織、膵液お
よび十二指腸洗浄液から抽出・精製したゲノム遺伝子を
準備した。さらに、コントロールとしてK-ras 遺伝子コ
ドン12に変異があることが判明している2種類のセルラ
インの遺伝子と、PCR法によって遺伝子増幅した正常
型と変異型の遺伝子を各々組み込んだ2種類プラスミド
を準備した。鋳型遺伝子は波長260 nmの紫外線の吸光度
を測定することで遺伝子濃度を概算し、およそ50 ng/μ
l に調製した。この濃度はゲノム遺伝子では、およそ10
4 から105 のコピー数である。プラスミドの場合は重量
ではなくコピー数で濃度調整を行った。
【0041】<エンリッチPCR法による遺伝子増幅>
6種類の変異型を正常型と比較して増強して増幅するエ
ンリッチPCR法により遺伝子増幅を行った。エンリッ
チPCR法の測定原理は、検出したい点変異を含む領域
をPCR法によって遺伝子増幅し(一次PCR) 、その
増幅産物を正常型の配列を特異的に認識して切断する制
限酵素で処理し、切断後の産物をもう一度PCR法によ
って遺伝子増幅する(二次PCR) 。K-ras 遺伝子コド
ン12の場合、ゲノム遺伝子上の正常型の配列を認識して
正常型特異的な切断を行う制限酵素が現段階で存在しな
いため、変異領域付近に人為的に1塩基の変異を導入す
ることを検討した結果、BsrI、BstNI 、MvaI、NlaIV な
どの制限酵素が正常型であるGGTを特異的に認識して
切断することが判明した。
【0042】この実施例では、コドン12より上流の1塩
基を変異させて制限酵素BsrIによる認識部位を作り出す
ことにし、遺伝子増幅時のフォワード側のプライマーに
変異を導入したプライマーを使用することにより、得ら
れる増幅産物に変異を導入することにした。
【0043】従って、一次PCRと二次PCRで使用す
る4種類のプライマーのうち、フォワード側に使用する
変異を導入したプライマーは共通化させる。2回行うP
CRはセミネスティッドPCRもしくはダブルPCRと
なるが、リバース側のプライマーも共通にするダブルP
CRの場合は副産物が多く認められる傾向にあるため、
リバース側のプライマーは位置をずらして設定するセミ
ネスティッドPCR法を採用した。
【0044】プライマーの設置位置と長さの検討の結
果、フォワード側のプライマーは正常型GGTの場合に
BsrIの制限酵素サイトになるように、3'側から3番目の
位置をGからAに変異させたK-rasFを使用し、リバース
側はK-rasR1 を使用した。
【0045】 K-rasF 5'−TAAACTTGTGGTAGTTGGAACT-3' (配列番号1) K-rasR1 5'−GTTGGATCATATTCGTCCAC−3' (配列番号2) 上記プライマーを使用し、下記組成の遺伝子増幅液25μ
l を調製し、PCR法によって遺伝子増幅を行った。
【0046】 10mM トリス塩酸緩衝液pH8.3 50mM 塩化カリウム 1.5mM 塩化マグネシウム 0.001 % ゼラチン 100 μM dNTPs (dATP, dCTP, dGTP, dTTP) 1μM K-rasF 1μM K-rasR1 25U/ml 耐熱性DNAポリメラーゼ 2μg/ml 鋳型遺伝子 (プラスミドの場合は10の6乗コ
ピー/ml) 上記溶液に蒸発防止用のミネラルオイルを25μl 添加し
て、サーマルサイクラー (パーキンエルマー、PJ-2000)
にセットした。温度条件は95℃で2分間の後、95℃で40
秒→60℃で40秒→72℃で40秒のサイクルを25回繰り返し
て遺伝子を増幅した。その結果93塩基対の増幅産物が得
られた。
【0047】得られた増幅産物を蒸留水で10倍に希釈
し、下記組成の制限酵素反応液5μlを調製し、制限酵
素BsrI (NEB社) による切断を行った。 10倍濃度NEbuffer3 0.5 μl 制限酵素BsrI(5U/μl) 0.5 μl 蒸留水 3.5 μl 10倍希釈1st PCR産物 1.0 μl 切断反応はBsrIの至適温度である65℃で15時間以上行っ
た。実用的には反応時間は約2時間程度で終了すること
が可能であるが、数百分の一の割合で存在する変異体を
安定的に検出および判定を行うために、ここでは長時間
の反応を行った。
【0048】切断後の一次PCRの増幅産物を遺伝子増
幅するプライマーとして一次PCRと共通のK-rasFとK-
rasR2 を設定した。フォワード側のK-rasFは変異導入プ
ライマーであり位置の変更が不可能なため共通とし、リ
バース側のプライマーであるK-rasR2 に関しては、一次
PCR用のK-rasR1 より内側に設定し、セミネスティッ
ドPCRによって遺伝子増幅した。
【0049】 K-rasF 5'−TAAACTTGTGGTAGTTGGAACT−3' (配列番号1) K-rasR2 5'−CAAAATGATTCTGAATTAGCTG−3' (配列番号3) 上記プライマーを使用し、上記の1st PCRの制限酵素
処理後の液を全量5μl 加えた上で、最終的に下記組成
の遺伝子増幅液50μl になるように溶液を調製して遺伝
子増幅を行った。
【0050】 10mM トリス塩酸緩衝液pH8.3 50mM 塩化カリウム 1.5mM 塩化マグネシウム 0.001 % ゼラチン 100 μM dNTPs 1μM K-rasF 1μM K-rasR2 25U/ml 耐熱性DNAポリメラーゼ これに蒸発防止用のミネラルオイルを50μl 添加して、
サーマルサイクラー (パーキンエルマー、PJ-2000)にセ
ットした。温度条件は95℃で2分間の後、95℃で40秒→
60℃で40秒→72℃で40秒のサイクルを40回繰り返して遺
伝子を増幅した。その結果74塩基対の増幅産物が得られ
た。
【0051】上記エンリッチPCR法に関し、正常型で
あるGGTのみを含むと考えられる健常人のゲノム遺伝
子、K-ras 遺伝子コドン12領域付近を組み込んだプラス
ミド、コドン12の変異が確認されているセルラインな
ど、単一に近い遺伝子型のみを含む目的遺伝子を鋳型遺
伝子とするコントロールの系の場合は、上記エンリッチ
PCR法のうち二次PCRのみを行うことで点変異の検
出を行うことも可能である。すなわち、変異型が単独も
しくは量比の差が少ないような検体での変異型の判定を
行う場合は、必ずしもエンリッチPCR法を行う必要は
ない。
【0052】[検出方法]本発明方法の測定原理は、変異
領域であるK-ras 遺伝子コドン12を3'末端付近に含むよ
うに、検出したい変異の種類に合わせて設定した遺伝子
プローブを用い、このプローブの配列と目的遺伝子の配
列が相補的であるか否かを、基質取り込み反応の効率の
違いを検出することにより判定することによる。
【0053】K-ras 遺伝子コドン12の正常型と6種類の
変異型の配列に対して相補的な配列を3'末端付近に有す
る7種類のプローブ (配列番号4〜10)を準備した。こ
の実施例の場合、前述のエンリッチPCR法における変
異導入プライマーとして、コドン12領域に隣接した位置
のフォワード側 (センス側) のプライマーを使用してい
るため、プライマーとプローブの競合を避けるためにプ
ローブの設定はアンチセンス側にした。センス側プロー
ブでは、増幅産物をそのまま使用する場合、液相に残存
するセンス側のプライマーに対し、ほとんど同じ配列で
ある固相プローブは反応速度で劣るため、残存するプラ
イマーの量によってほとんど反応できない可能性があ
る。実際に、センス側のプローブとアンチセンス側のプ
ローブを比較したところ、センス側のプローブでは反応
性が著しく低下した。各遺伝子型に対応するアンチセン
ス側プローブは以下の配列を有する。
【0054】 GAT用プローブ 5'−CGTCAAGGCACTCTTGCCTACGCCATC −3'(配列番号4) GCT用プローブ 5'−CGTCAAGGCACTCTTGCCTACGCCAGC −3'(配列番号5) GGT用プローブ 5'−CGTCAAGGCACTCTTGCCTACGCCACC −3'(配列番号6) GTT用プローブ 5'−CGTCAAGGCACTCTTGCCTACGCCAAC −3'(配列番号7) AGT用プローブ 5'−CGTCAAGGCACTCTTGCCTACGCCACT −3'(配列番号8) CGT用プローブ 5'−CGTCAAGGCACTCTTGCCTACGCCACG −3'(配列番号9) TGT用プローブ 5'−CGTCAAGGCACTCTTGCCTACGCCACA −3'(配列番号10) これらのプローブは特願平8−62885 号記載の方法によ
り固相化担体として選択したマイクロプレートに各々10
0ng/ウェルの濃度で固相化した。この固相化量よりも少
なくしていくと検出感度が低下し、逆にこれ以上量を多
くしても最終的な結果に変化はなかった。
【0055】エンリッチPCR法で増幅した産物に、0.
4Nの水酸化ナトリウムを等量加えて5分間放置してアル
カリ変性させて増幅産物を1本鎖にした後、下記組成の
反応液100 μl 中に変成させた増幅産物を10μl 加え、
55℃で30分間、7種類の固相プローブ各々に対してハイ
ブリダイゼーションさせた。
【0056】 6× SSPE溶液 0.1 %(W/V) Tween−20 0.03N 塩酸 2M 尿素 この反応により、PCR法の段階で非特異の増幅産物と
して増幅された、K-ras 遺伝子コドン12を含む領域の増
幅産物以外の副産物は選択的に除かれる。しかし、K-ra
s 遺伝子コドン12を含む目的遺伝子の増幅産物に関して
は正常型であっても変異型であっても、プローブの3'末
端1塩基の差異であるため、この反応での選択性はな
く、固相プローブの遺伝子型に関わらず、全てに対して
ハイブリダイゼーションしていると考えられる。反応終
了後、下記組成の洗浄溶液を使って1ウェルあたり350
μl ずつ5回洗浄を行った。
【0057】 0.4 % 塩化ナトリウム 0.01% 塩化カリウム 0.145 % リン酸−水素2ナトリウム 0.01% リン酸二水素1カリウム 0.1 % Tween −20 0.005 % アジ化ナトリウム 洗浄操作の後、下記組成のようにK-ras 遺伝子コドン12
より1塩基上流の配列(コドン11の3番目) である塩基
Tと相補的な塩基Aに標識体であるビオチンを結合させ
たビオチン−dATPと、耐熱性DNAポリメラーゼを加
え、55℃で30分間、反応をさせた。
【0058】 10mM トリス塩酸緩衝液pH8.3 50mM 塩化カリウム 1.5mM 塩化マグネシウム 0.001 % ゼラチン 0.5M 尿素 1U/ml 耐熱性DNAポリメラーゼ 0.04μM ビオチン−dATP この反応で目的遺伝子に対して3'末端が相補的なプロー
ブに関しては、プローブの3'末端を含めた全体が、目的
遺伝子であるK-ras 遺伝子コドン12領域を含む増幅産物
と、55℃という高い反応温度でも完全に2本鎖構造とな
り、タックポリメラーゼの伸長作用でビオチン標識され
たdATPがプローブの3'末端に取り込まれる。しかし、相
補的でないプローブに関しては、55℃という高い反応温
度ではプローブの3'末端と増幅産物のコドン12領域が2
本鎖構造をとることができず、伸長作用による取り込み
が起こりにくく、それゆえ、目的遺伝子の増幅産物のコ
ドン12領域に対して、相補的な配列を有するプローブに
対してのみ、ビオチンが標識されることになる。
【0059】反応終了後、0.4N水酸化ナトリウム溶液を
100 μl ずつ加えて、5分間放置し、前述の洗浄溶液と
洗浄条件で洗浄を行った。この処理により、固相化プロ
ーブにハイブリダイゼーションした増幅産物は変性して
除去され、固相面には1本鎖のプローブのみとなり、増
幅産物の副反応などによって非特異に取り込まれてビオ
チンが除去される。
【0060】次に、ペルオキシダーゼ標識ストレプトア
ビジンを0.2 U/ml の濃度になるように上記洗浄溶液に
加え、各ウェルに100 μl ずつ加えて20〜25℃で30分間
反応させた。ビオチンとストレプトアビジンの特異反応
を利用したこの反応により、前述の反応でビオチン標識
された基質が取り込まれたことでビオチンが結合した固
相化プローブの3'末端にペルオキシダーゼが標識され
る。
【0061】反応終了後、前述の洗浄溶液と洗浄条件で
洗浄を行い、ペルオキシダーゼの作用により発色をする
発色基質溶液であるテトラメチルベンチジン溶液を100
μlずつ加え、20〜25℃で20分間発色させた。ペルオキ
シダーゼが存在する、つまり固相プローブと相補的な配
列を持つ増幅産物が存在したウェルは青色に発色する。
反応終了後、反応停止液を100 μl ずつ加えて発色反応
を停止するとともに青色から黄色に変色させ、波長450n
m の吸光度を測定して検出を行った。
【0062】<結果>K-ras 遺伝子コドン12の配列が正
常型であるGGTのみをもつと考えられる健常人では、
GGT用プローブを固相化したウェルに強い発色が検出
された。PCR産物を組み込むことで作製した正常型G
GTと変異型GATのプラスミドの場合、それぞれGG
T用プローブ、GAT用プローブを固相化したウェルで
強い発色が検出された。K-ras 遺伝子コドン12がGTT
もしくはTGTであると確認されている2種類のセルラ
インから抽出した遺伝子を用いた場合、各々GTT用プ
ローブ、TGT用プローブを固相化したウェルで強い発
色が検出された。
【0063】上記正常型GGTと変異型GATの配列を
持つプラスミドの組み合わせ、および正常型GGTの配
列をもつ健常人のゲノム遺伝子と変異型TGTの配列を
もつセルラインの遺伝子を各種の濃度比に混合して試験
を行った結果、ともに正常型と変異型の存在比率が500:
1 まで変異型の検出および点変異の種類の確認が可能で
あった。この時、正常型と変異型のウェルでの吸光度は
各々の存在比率によって変化し、およそ50:1を境にして
これ以上変異型の存在比率が高くなると変異型のウェル
の吸光度の方が正常型より大きくなり、低くなると正常
型の吸光度の方が大きくなった。
【0064】また、膵臓癌の患者の生検組織、膵液中の
浮遊細胞、十二指腸洗浄液中の浮遊細胞から抽出した遺
伝子に関して検査を行った結果、非常に高頻度にK-ras
遺伝子コドン12の変異型が検出され、その変異型の種類
と存在比率の概算を行うことも可能であった。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、遺伝子プローブとDN
Aポリメラーゼを用いた新しい点変異検出方法によっ
て、ゲノム遺伝子、癌遺伝子、ウィルス遺伝子、細菌の
遺伝子等の種々の核酸配列における点変異を簡便かつ正
確に判定することができる。このことは各種の疾患の予
防・予知、および治療効果の判定等に関して有用であ
る。さらに、本発明の変異検出方法を、癌マーカーであ
るK-ras 遺伝子コドン12の変異の検出に適用すると、膵
臓癌など各種の癌の診断に有用である。
【0066】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:12 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: TAAACTTGTG GTAGTTGGAA CT 配列番号:2 配列の長さ:10 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: GTTGGATCAT ATTCGTCCAC 配列番号:3 配列の長さ:12 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: CAAAATGATT CTGAATTAGC TG 配列番号:4 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: CGTCAAGGCA CTCTTGCCTA CGCCATC 配列番号:5 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: CGTCAAGGCA CTCTTGCCTA CGCCAGC 配列番号:6 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: CGTCAAGGCA CTCTTGCCTA CGCCACC 配列番号:7 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: CGTCAAGGCA CTCTTGCCTA CGCCAAC 配列番号:8 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: CGTCAAGGCA CTCTTGCCTA CGCCACT 配列番号:9 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: CGTCAAGGCA CTCTTGCCTA CGCCACG 配列番号:10 配列の長さ:17 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列: CGTCAAGGCA CTCTTGCCTA CGC
CACA

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変異を検出すべき目的遺伝子と該変異に
    対応した遺伝子プローブをハイブリダイゼーションさせ
    た後、DNAポリメラーゼを用いて標識基質の取り込み
    反応を行わせ、該標識基質の取り込み反応を分析するこ
    とにより目的遺伝子の変異を判定する方法であり、前記
    遺伝子プローブが、その配列内の3'末端もしくはその近
    傍に、目的遺伝子における変異部位に対応する塩基を含
    むように設定されたものである、前記変異判定方法。
  2. 【請求項2】 目的遺伝子を、予め、変異領域を含むよ
    うに遺伝子増幅しておく請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 遺伝子増幅を、セミネスティッドPCR
    法と制限酵素処理を組み合わせたエンリッチPCR法に
    より行う請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 遺伝子プローブを予め担体に固相化して
    おく請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 ヒトK-ras 遺伝子コドン12領域を含む遺
    伝子あるいはその増幅産物を、ヒトK-ras 遺伝子コドン
    12の点変異部位に対応する塩基を3'末端もしくはその近
    傍に有する遺伝子プローブとハイブリダイゼーションさ
    せ、次いで、DNAポリメラーゼを用いて標識基質の取
    り込み反応を行わせ、該標識基質の取り込み反応を分析
    することによりヒトK-ras 遺伝子コドン12の変異を判定
    する方法。
  6. 【請求項6】 ヒトK-ras 遺伝子コドン12領域を含む遺
    伝子の増幅産物が、抽出したヒトゲノム遺伝子を鋳型と
    してセミネスティッドPCR法と制限酵素処理を組み合
    わせたエンリッチPCR法により変異型を増強して得ら
    れた増幅産物である請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 セミネスティッドPCR法の一次PCR
    において、正常型特異的に制限酵素処理を行えるように
    意図的にミスマッチ塩基を導入したプライマーを用いる
    請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 セミネスティッドPCR法の一次PCR
    において、フォワード側のプライマーとして、配列番号
    1の塩基配列を有するプライマーを用いる請求項7記載
    の方法。
  9. 【請求項9】 セミネスティッドPCR法の一次PCR
    において、フォワード側のプライマーとして配列番号1
    の塩基配列を有するプライマーを用い、リバース側のプ
    ライマーとして配列番号2の塩基配列を有するプライマ
    ーを用る請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 遺伝子プローブを予め担体に固相化し
    ておく請求項5ないし9のいずれかに記載の方法。
  11. 【請求項11】 遺伝子プローブとして、ヒトK-ras 遺
    伝子コドン12の正常型および6種類の変異型に対応した
    塩基配列をそれぞれ含む7種類のオリゴプローブを用い
    る請求項5ないし10のいずれかに記載の方法。
  12. 【請求項12】 (1) ヒトK-ras 遺伝子コドン12の点変
    異部位に対応する塩基を3'末端もしくはその近傍に有す
    る遺伝子プローブ、(2) DNAポリメラーゼおよび(3)
    標識基質を含有する、請求項5記載の方法を行うための
    K-ras 遺伝子コドン12遺伝子型判定キット。
  13. 【請求項13】 (1) ヒトK-ras 遺伝子コドン12を含む
    遺伝子の増幅産物を得るための、配列番号1のプライマ
    ーおよび配列番号2のプライマーからなる一次PCR用
    プライマーセット、配列番号1のプライマーおよび配列
    番号3のプライマーからなる二次PCR用プライマーセ
    ットおよび制限酵素BsrI、(2) ヒトK-ras 遺伝子コドン
    12の点変異部位に対応する塩基を3'末端もしくはその近
    傍に有する遺伝子プローブもしくはその固相化プロー
    ブ、(3) DNAポリメラーゼおよび(4) 標識基質を含有
    する、K-ras 遺伝子コドン12遺伝子型判定キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002024905A1 (fr) * 2000-09-19 2002-03-28 Nobuyuki Hamajima Procede permettant de determiner la mutation genetique
WO2010045865A1 (zh) * 2008-10-21 2010-04-29 广州益善生物技术有限公司 kRas基因突变的检测探针、液相芯片及其检测方法

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