JPH10258579A - 磁気熱転写インクリボン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】磁気ヘッド読みとりの電磁変化特性の優れた、
オンデマンドの磁気画像情報を形成する手段を提供す
る。 【解決手段】溶融温度が５０〜１１０℃のワックス、あ
るいは熱可塑性樹脂の少なくとも１種以上と、磁性粒子
を主要構成成分として含有する磁気熱転写層組成物を支
持体に塗布してなる磁気熱転写インクリボンであって、
該磁気熱転写層組成物を該支持体上に塗工した後に、磁
性粒子の配向手段を通過させて製造されることを特徴と
する磁気熱転写インクリボン。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、磁気熱転写インク
リボンの発明に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】磁気記録方式は、今日幅広い産業上の分
野で利用されている。この磁気記録方式の主な利点とし
ては、情報の書き換えが可能、読み書きが高速に出来
る、光学的な情報とは違い表面の汚れに強い等が挙げら
れる。このように広く利用されている磁気記録方式では
あるが、問題が無いわけでなく、例えば磁気カードの如
き情報記録媒体が利用される分野では、その不正使用が
問題になる場合がある。これは磁気情報が書き換え可能
であるという磁気記録方式の利点が転じて欠点になった
例といえる。一方、紙幣等には一部磁性体を含有したイ
ンクを用いて印刷がされており、秘匿情報が磁気的に記
録されている。この場合は、特定の画像情報が磁気情報
を持っており、情報の書き換えを行わないことを前提に
して使用される。このような磁気情報を書き換え不可能
な情報として利用する方法は、情報記録媒体に識別の為
の情報を持たせると言う目的においては、先に述べた磁
気記録方式の利点を鑑みると非常に有用な手段である
が、これまではこのような磁気情報は主に印刷による磁
性画像の形成によっていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術で述べ
た印刷方式は、同一情報を持つ画像記録媒体を多量に製
造する場合には優れているが、一つ一つの画像記録媒体
ごとに違った情報を持たせる場合には適していない。し
かしながら、画像的に形成された書き換え不可能な磁気
情報をセキュリティーのために使用しようとした場合、
各画像記録媒体ごとに別々の情報を持たせた方がセキュ
リティー性が飛躍的に向上するため、磁気記録方式の利
点を生かしつつ個別の情報を安価に形成する手段が望ま
れていた。

【０００４】そこで本発明の課題は、上記印刷方法によ
る磁気情報の形成における欠点を克服し、一つ一つの画
像記録媒体ごとに違った磁気情報を形成する手段を提供
することにある。本発明では、保持している情報が画像
的な特徴を持っていることを意図する為に、画像記録媒
体と言う名称を用いるが、形成された画像の一部が書き
換え可能な従来の磁気記録用に使用されることも可能で
あり、その意味において本発明で述べる画像記録媒体と
は一般に言う情報記録媒体と同義である。

【０００５】具体的に本発明の課題を解決する手段の一
つとして、熱転写方式のオンデマンド印刷を用いて磁気
的画像情報を形成することが可能である。この様な方式
は、磁気バーコードの作成方法として特開平３−２１４
４２１号公報、実開平４−１００８８７号公報等に見る
ことができる。また、磁性体を含有した熱転写インクリ
ボンの作成方法としては特開昭５７−１７４２９６号公
報、特開昭５８−１４０２９６号公報等に述べられてい
る。これらの特許では、形成された磁気画像を読むため
に磁気センサーを用いたり、軟磁性体の磁気画像を直流
バイアス磁場を印可した状態で信号を読むために、転写
が行われる熱転写層中の磁性粒子の配向については意識
されていない。

【０００６】一方、今日プリペイドカードのごとき磁気
カードの偽造が大きな社会問題として取りだたされ、こ
れらカードのセキュリティー性が問われるようになり、
先にも述べた書き換え不可能な磁気データの有用性が認
識されるようになったものの、既に導入されたカードの
リーダライタを全面的に取り替えるのは費用面での問題
が大きく、せっかくの高いセキュリテー性を持ったカー
ドといえども、実用化においては二の足を踏まれると言
う問題がある。この様な、現実的な問題を鑑みると、既
に導入されたリーダライタをそのまま使用可能なカード
と言うものが重要であり、具体的には一般のカード用リ
ーダライタで使用されている磁気ヘッドで信号が読み書
きできることが重要になる。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
鋭意検討した結果、溶融温度が５０〜１１０℃のワック
ス、あるいは熱可塑性樹脂、あるいは溶融温度が５０〜
１１０℃のワックス及び該熱可塑性樹脂と、磁性粒子を
主要構成成分として含有する磁気熱転写層組成物を支持
体に塗布してなる磁性熱転写インクリボンであって、該
磁気熱転写層組成物を該支持体上に塗工した後に、磁性
粒子の配向手段を通過させて製造されることを特徴とす
る磁気熱転写インクリボンの発明に至った。本発明の磁
気熱転写インクリボンを使用して、画像データをカード
支持体上に形成することによって、十分磁気ヘッドで読
みとれる書き換え不可能な磁気データをカードに持たせ
ることができる。さらに、本発明の磁気熱転写インクリ
ボンは、カード以外の情報記録媒体への応用も可能であ
って、磁性粒子が予め配向しているために、熱転写イン
クリボンを用いた磁気画像データは、配向の無いものに
比べ読みとり出力が大きくなると言う利点を有する。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明は、熱転写方式により磁気
的に判別可能な画像情報を形成する手段において、溶融
温度が５０〜１１０℃のワックス、あるいは熱可塑性樹
脂の少なくとも１種以上と、磁性粒子を主要構成成分と
して含有する磁気熱転写層組成物を支持体に塗布してな
る磁性熱転写インクリボンであって、該磁気熱転写層組
成物を該支持体上に塗工した後に、磁性粒子の配向手段
を通過させて製造されることを特徴とする磁気熱転写イ
ンクリボンを提供するものであるが、本発明の磁気熱転
写インクリボンの磁気熱転写層を転写するための手段は
公知の技術を使用することができ、具体的には、感熱ヘ
ッドによる印字、あるいはレーザー光の照射による印字
等が使用できる。また、形成しようとするパターンが切
り取られたマスク越しに強力な光を照射する事によって
も、転写されるべき部分に熱エネルギーを与えることも
できる。

【０００９】本発明に使用される磁気熱転写インクリボ
ンの製造には公知の方法を用いることができ、具体的に
は磁気熱転写層として、磁性粒子を分散した分散液を塗
布して形成する方法、あるいは熱転写層組成物を加熱し
ながらブレードニーダー等により混練して作成されたイ
ンクを、加熱された状態で塗布するホットメルトコーテ
ィング法等によって作成することが可能である。

【００１０】分散液の塗布方法としては、公知の技術が
使用可能で、具体的には、グラビアコーター、リバース
ロールコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、
ダイコーター、カーテンコーター、エアナイフコータ
ー、スクイズコーター、トランスファーロールコータ
ー、等の塗布技術が使用可能である。

【００１１】本発明の、磁性粒子の配向手段としては、
磁性粒子を配向させる方向が支持体に平行な面内配向の
場合には、同じ極同士を反発させた反発対向磁石の間を
通過させる方法が一般的であるが、その他公知の手段を
利用する事ができる。面内での磁性粒子の配向角は、形
成される磁気画像を磁気ヘッドで読みとる方向に応じて
調整することができ、反発対向磁石を利用する場合は、
塗布方向に対して磁石の角度を変えて調整する。例え
ば、磁性粒子を塗布方向に配向させる場合は、磁石を塗
布方向に対して直角に配置して配向させる。磁性粒子の
配向方向は、この様な面内だけでなく、塗布面に対して
垂直の配向も可能である。これら、磁性粒子の配向手段
に付いては、例えば（株）トリケップス発行の、「磁気
記録媒体におけるコーティング技術」に詳しく説明され
ている。もちろん磁性粒子の配向処理は、磁気熱転写イ
ンク組成物の塗布後でも、塗膜中の磁性粒子の自由度が
ある間に行う必要があり、磁性粒子の分散液を塗布する
場合は、塗膜が乾燥するまでに行う必要がある。また、
ホットメルトコーティングの場合は、塗膜が冷却されて
しまわないうちに行う必要があり、必要であれば配向手
段を通過するまで塗膜の温度を一定以上に保つような手
段を設けてもよい。

【００１２】本発明の磁気熱転写インクリボンは、その
層構成として少なくとも溶融温度が５０〜１１０℃のワ
ックス、あるいは熱可塑性樹脂の少なくとも１種以上
と、磁性粒子を主要構成要素とした磁気熱転写層よりな
るが、その他に磁気熱転写層と支持体との間に保護層を
設けることができる。さらに、磁気熱転写層あるいは保
護層と支持体の間に剥離層を設けた層構成にすることも
可能である。保護層は、転写された磁気熱転写層の機械
的強度を向上させ、剥離層は磁気熱転写層の転写効率を
向上させることによって、磁気画像記録の感度を向上さ
せることが期待される。

【００１３】さらに、本発明に使用される熱転写インク
リボンの具体的な構成要素について述べると以下のよう
になる。

【００１４】本発明に使用される磁気熱転写インクリボ
ンの支持体としては、ＰＥＴ等の合成樹脂フィルム、
紙、各種不織布、合成紙、金属箔、等を用いることが出
来るが、これらに限定されるものではない。

【００１５】本発明に使用される磁気熱転写インクリボ
ンの磁気熱転写層に用いられる磁性体としては、公知の
磁気記録材料に使用されている磁性体を使用することが
出来る。例えば、具体的な磁性体の例としては、γ−Ｆ
ｅ₂Ｏ₃、Ｆｅ₃Ｏ₄、Ｃｏ含有酸化鉄、ＣｒＯ₂、メタル
粉、Ｂａフェライト等が挙げられる。

【００１６】本発明に使用される磁気熱転写インクリボ
ンの磁気熱転写層の構成要素としては、溶融温度が５０
〜１１０℃のワックス、あるいは熱可塑性樹脂の少なく
とも１種以上と、磁性粒子を含有するが、その他油脂等
を含有することが可能である。それぞれを混合して使用
する場合は、それらの含有率として磁性粒子２〜６５
％、ワックス０〜７０％、熱可塑性樹脂０〜６０％、油
脂０〜３０％が適当である。具体的な材料として、ワッ
クスとしては、カルバナワックス、モンタンワックス、
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、
ミツロウ等が挙げられる。

【００１７】また、熱可塑性樹脂としては、エチレン−
酢酸ビニル共重合体、ポリアセタール樹脂、塩化ビニル
樹脂、ブタジエン樹脂、ポリブテン、アクリル樹脂、ス
チレン樹脂、ポリビニルブチラール、カルバミン酸エス
テル、ハードロジン、フェノール樹脂、ポリウレタン樹
脂、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂、ペンタエリスリトー
ルエステル、エステルガム、ポリアミド、エチルセルロ
ース等が使用できる。

【００１８】さらに、油脂の具体例としては、鉱油、ジ
オクチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、ジ
ブチルフタレート、ラノリン等が挙げられる。

【００１９】さらに、本発明に使用される磁気熱転写イ
ンクリボンの磁気熱転写層と支持体との間に保護層を設
けた場合、さらに磁気熱転写層あるいは保護層と支持体
の間に剥離層を設けた場合、これら保護層、剥離層に使
用される材料としては、上記ワックス、熱可塑性樹脂を
単独または混合して使用する事ができる。また、保護層
には、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等の無機顔料を
添加することもできる。

【００２０】磁性粒子の分散に対しては、使用される樹
脂そのものが分散剤としての役割を果たす場合がある
が、必要に応じて分散剤として別途、脂肪酸、脂肪族ア
ミン類、脂肪酸金属塩、リン酸エステル、ポリエステル
系オリゴマー、モノカルボン酸のアンモニウム塩、チタ
ンカップリング剤、シランカップリング剤、レシチン、
動物性及び植物性蛋白質、ポリカルボン酸およびその
塩、ピロリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、カゼ
イン、リグニンスルホン酸ソーダ、ジポリオキシエチレ
ンアルキルエーテルリン酸、トリポリオキシエチレンア
ルキルエーテルリン酸、ポリエステル・ポリアミン、ポ
リオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレ
ンオレイルアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテ
ル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエ
チレンセチリルエーテル等公知の化合物を使用すること
が出来るが、本発明はそれらに何ら限定されるものでは
ない。

【００２１】また、本発明に使用される磁気熱転写イン
クリボンには必要に応じて潤滑剤、レベリング剤、消泡
剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、
防腐剤、填料等の添加剤を適宜使用することが出来る。

【００２２】

【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
て詳細に説明するが、本発明はこの形態に何等限定され
るものではない。

【００２３】実施例１ 図１は、本発明の磁気熱転写インクリボンの製造工程の
１例を示す概念図であり、磁性粒子を分散した塗液を支
持体上に塗布した後に、反発対向磁石によって磁性粒子
の配向処理が行われる。本実施例では、磁性粒子の配向
角は、面内で塗布方向に平行になっている。配向処理が
終わった後に、塗膜は６の乾燥工程で乾燥され、磁性粒
子の配向が固定されることになる。図２は、本実施例の
磁気熱転写インクリボンの層構成と、磁気熱転写層の感
熱ヘッドによるインク受理体への転写の原理を示す概念
図である。図３は、本発明の情報記録媒体を利用したプ
リペイドカードの表面図であり、本発明の画像形成方法
をカード状情報記録媒体に応用した例であって、磁気画
像情報はバーコード状の画像情報として形成されてい
る。さらに図４は、図３のカード状情報記録媒体（プリ
ペイドカード）の点線１７に沿った断面図である。

【００２４】次に、本実施例の製造工程をさらに具体的
に説明する。 ＜磁気熱転写インクリボンの作成＞厚さ６μｍのポリエ
ステルフィルム上に、カルナバワックス：アクリル系樹
脂＝１：１の組成で厚さ２μｍになるように剥離層を設
け、その後下記の組成の磁性塗液を塗布して磁気熱転写
層を形成した。このとき、磁気熱転写層が乾燥される前
に、反発対向磁石による２５００ガウスの磁界中を通過
させ、磁気熱転写層中の磁性粒子を塗布方向に配向させ
た。乾燥後の磁気熱転写層の厚さは、５μｍであった。

【００２５】 ＜磁気熱転写層＞ 磁性体（バリュウムフェライト、保磁力２７５０エルステッド） １００部 分散剤（ポリカルボン酸ナトリウム） ５部 水 １０６部 上記組成物をペイントコンディショナーを用いて４時間
分散し、予備分散液を調整した。次にこの予備分散液に
対し、以下の組成物を添加した後、混合物を攪拌し磁性
塗液を得た。 カルナバワックスエマルジョン（４０％） ４００部 アクリロニトリル−ブタジエン共重合体（４０％） ２００部

【００２６】＜磁気的画像情報の書き込み及び読み取り
＞上記磁気熱転写インクリボンを１８８μｍの白色ＰＥ
Ｔに圧着した後、京セラ製印字ヘッドＫＪＴ−２５６−
８ＭＧＦ１付き、大倉電気製感熱印字試験機ＴＨ−ＰＭ
Ｄを用いて、印加パルス幅２．０ミリ秒、印加電圧２
０．０Ｖの条件で、バーコード状パターンを印字した。
図５に、この磁気画像データを磁気ヘッドで読みとった
場合の信号のパターンを示す。図５より、良好なＳ／Ｎ
比で電磁変換出力波形が観測されていることが解る。

【００２７】比較例１ 磁気熱転写層の塗布時に、実施例１で行った配向処理を
行わなかった以外は、全て実施例１と同様に磁気熱転写
インクリボンを作成し、実施例１と同様の方法でバーコ
ード状パターンを作成し、それを磁気ヘッドで読みとっ
たところ、磁気熱転写層中の磁性体は、配向されておら
ずランダムな方向を向いており、トータルの磁化はゼロ
に等しいため、磁気ヘッドでの読みとりは非常に小さ
く、図６に示す様に、バーコード状パターンに由来する
信号波形を観測することはできなかった。

【００２８】

【発明の効果】本発明によって、画像記録媒体一つ一つ
に別々の磁気情報を与えることが可能で、しかも従来の
磁気ヘッドを備えた読みとり装置でも十分に読みとり可
能なように、電磁変換出力の大きな印字パターンが形成
可能な磁気熱転写インクリボンを実現することができ
た。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の磁気熱転写インクリボンの製造工程の
１例を示す概念図。

【図２】本実施例１の磁気熱転写インクリボンの感熱ヘ
ッドによる印字（インク受理体への磁気熱転写層の転
写）の概念図。

【図３】本発明の情報記録媒体を利用したプリペイドカ
ードの表面図。

【図４】図３のプリペイドカードの、点線１７に沿った
断面図。

【図５】実施例１記載のバーコードを、磁気ヘッドで読
んだ場合の出力波形を示す図。

【図６】比較例１記載のバーコードを、磁気ヘッドで読
んだ場合の出力波形を示す図。

【符号の説明】

１ 磁気熱転写層組成物の塗工手段 ２、３ 磁性粒子配向用、反発対向磁石 ４ 反発対向磁石からでている、代表的な磁力線の説明
図 ５ 支持体に塗布された、磁気熱転写層 ６ 乾燥手段 ７ 供給ロール ８ ガイドロール １０ 巻き取りロール １１ 感熱ヘッド １２ 磁気熱転写インクリボン支持体 １３ 剥離層 １４ 磁性熱転写層 １５ インク受理体 １６ バーコード状磁気画像部 １８ 点線１７に沿った、バーコード状磁気画像部の断
面図 １９ 支持体

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶融温度が５０〜１１０℃のワックス、
   あるいは熱可塑性樹脂の少なくとも１種以上と、磁性粒
   子を主要構成成分として含有する磁気熱転写層組成物を
   支持体に塗布してなる磁気熱転写インクリボンであっ
   て、該磁気熱転写層組成物を該支持体上に塗工した後
   に、磁性粒子の配向手段を通過させて製造されることを
   特徴とする磁気熱転写インクリボン。