JPH10235102A - 金属元素の溶媒抽出法 - Google Patents

金属元素の溶媒抽出法

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JPH10235102A
JPH10235102A JP9040513A JP4051397A JPH10235102A JP H10235102 A JPH10235102 A JP H10235102A JP 9040513 A JP9040513 A JP 9040513A JP 4051397 A JP4051397 A JP 4051397A JP H10235102 A JPH10235102 A JP H10235102A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 抽出剤として酸性燐化合物などを使用する金
属元素の溶媒抽出方法は抽出が進むにしたがって、水相
中の水素イオン濃度が大きくなり、反応が平衡に達して
抽出が進まなくなる。この対策としてアルカリで中和し
ているが、このアルカリの添加を必要としない溶媒抽出
方法。 【解決手段】 金属元素の溶媒抽出時に生成する酸をイ
オン交換膜を用いた透析によって除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はイオン交換膜を用い
た透析により水相中の酸を除去する工程を含む金属元素
の溶媒抽出法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】溶媒抽出法は広く工業的に利用されてい
る。金属を対象とするものに限っても有用な金属の回収
やその分離精製に幅広く使用されている。抽出剤を用い
る溶媒抽出法には抽出時に遊離酸を生成しない抽出法と
抽出時に遊離酸を生成する抽出法がある。(a)前者の
代表的な抽出剤としてはトリブチルフォスフェイト(T
BP)や第4級アンモニウム等が知られている。(b)
後者の代表的な抽出剤としては酸性燐化合物(以後記号
HPで代表させる)、β−ジケトンや脂肪酸が良く知ら
れている。ここで3価の希土類元素(Ln3+)の溶媒抽出を
例にとり両者の代表的な反応をTBPとHPを使用する
例について以下平衡反応式(1),(2)に示す。 [Ln(NO3)3] + 3[TBP]O = [(TBP3)・Ln(NO3)3]O…(1) [Ln3+]A + 3[HP]O = [Ln(P)3]O + 3[H+]A …(2) ここで[]A は水相、[]O は有機相を示す。なお、H
Pは2量体や3量体等の場合も知られている。このよう
に(b)では抽出が進むにしたがって水相中の水素イオ
ン濃度が大きくなり、やがて反応は平衡に達し、抽出は
それ以上進まなくなる。抽出を更に進行させるには一般
にアルカリの添加による中和によって[H+]濃度を減少さ
せる必要がある。従って後者の方法による抽出では大量
のアルカリ、例えばアンモニア水や苛性ソーダが使われ
ている。そして中和された酸は食塩(NaCl)や硝酸アンモ
ニウム(NH4NO3)のような塩となる。このように(b)の
方法は金属元素の回収やその分離精製に有用であるが、
大量の酸とアルカリを消費し塩類を副生する欠点があ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って上記(b)にお
いて酸を分離回収する有効で低コストの方法が待望され
ており、本発明はこのような要求に応えて、イオン交換
膜による透析を用いる溶媒抽出法を新たに提供しようと
するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は前記の課題
に応えて、溶媒抽出に際し水相をイオン交換膜を介して
水と接触させることにより透析を行ない、前工程から随
伴された酸および/または抽出により生成した酸をイオ
ン交換膜を用いた透析により除去し、水相中の酸濃度を
下げることにより、抽出反応を一層進行させる方法を発
見し、本発明を完成した。
【0005】以下に本発明の溶媒抽出法について詳しく
説明する。溶媒抽出法は液−液抽出法とも呼ばれ、以下
の工業的な利用分野が知られている。 (A)有用な金属成分の選択抽出による回収、精製や濃
縮:有用成分を有機相で抽出する。 (B)金属不純物を選択抽出することによる回収精製:
水相中の不純物を有機相で抽出し有用成分を水相中に残
す。 (C)金属イオンの相互分離精製:金属イオン間の分離
係数の差を利用して分離精製する。これらの場合スクラ
ブ剤として酸が使われることが多い。そして(C)の代
表例として希土類元素の相互分離やNiとCoの相互分
離等がある。 本発明は上記(A)〜(C)いずれの利用分野にも利用
できる。金属元素の水溶液中での態様例としては式
(1)と(2)では[Ln3+]で示したが、陰イオンと結合
した錯イオンで存在する金属元素ももちろん本発明の方
法が適用可能である。請求項1記載の「前工程から随伴
された酸」は具体的には(a)原料の金属イオンを含むフ
ィード液中に含まれている酸や(b)分離精製でスクラブ
剤として新たに添加された酸等の「その工程での抽出に
伴い発生した酸以外の全ての酸」を指す。「抽出時に生
成した酸」は式(2)に基づいて生成する酸を指す。
【0006】
【発明の実施の形態】ここで、拡散透析で通常用いられ
る用語と本発明の説明で以下に用いる用語との関係を拡
散透析の模式図(図1)に従って説明する。本発明では
下記の左右二つの用語を同じ意味で用いる。左が拡散透
析で用いられる用語である。 原液:透析に供される水相であり図の(1)、 透析液:透析処理された後の水相であり図の(2)、 水:透析膜を隔てて水相に相対する水または酸濃度の
低い水溶液であり図の(3)(これに水相から酸が移行
してくる)、 拡散液:透析により水相から移行してきた酸を含む水
溶液であり図の(4)。
【0007】まずイオン交換膜の寿命を長くするために
の原液は透析装置に供給する前に活性炭等で有機相を
できるだけ除去する。の透析液はそのまま次の抽出に
供することができる。の水としては一般に通常の水ま
たは純水が使用されるが、場合によっては原液よりも酸
濃度の低い水溶液でも使用可能である。の拡散液はそ
のままの酸濃度のもの、または必要により蒸発等の濃縮
操作を施したものが金属イオン含有フィード液の調製や
スクラブ剤等に十分再利用可能である。溶媒抽出に供さ
れる酸の種類としては塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸等が
使用可能であり、フィード液中の金属イオンの水溶液も
これらの酸と塩の水溶液である場合が一般的である。
【0008】本発明における透析法で透析に用いられる
イオン交換膜としては塩と酸の混合系からの酸を除去す
るのであるから陰イオン交換膜が適しており、通常の拡
散透析装置用の市販の陰イオン交換膜が使用可能であ
る。本発明に使用可能な拡散透析装置としては例えばT
SD−2型(株式会社トクヤマ製)などがあるがこれに
限定されるものではない。本発明における抽出装置とし
ては通常金属元素の溶媒抽出に用いられるものがそのま
ま使用可能であるが、本発明の実施例では攪拌機付きの
20cm角の高さ50cm内容積20リットルの塩ビ製透明容器を用い
た。本発明において使用可能な抽出剤を以下に例示する
が、本発明の実施例では2−エチルヘキシルホスホニッ
クアシド2’−エチルヘキシルエステル(EHPA・E
HE)[大八化学工業製の商品名PC−88]を用いた。
勿論抽出剤はこれに限定されるものではなく、抽出時に
水素イオンを生じる全ての抽出剤が本発明においては使
用可能である。
【0009】これを例示するとアセチルアセトン、テノ
イルトリフルオロアセトンなどのβ−ジケトン類;ジ2
−エチルヘキシルフォスフォリックアシド、ビス[2−
(1,3,3’−トリメチルブチル)5,7,7’−ト
リメチルオクチル]ホスホリックアシッドやビス(2,
4,4’−トリメチルフェニル)ホスフィニックアシド
などの酸性有機燐化合物;ナフテン酸等の脂肪酸類が挙
げられる。抽出剤は一般に脂肪族または芳香族炭化水
素、例えばケロシン、キシレン等から選ばれる希釈剤で
希釈して用いてもよい。実施例では希釈剤としてケロシ
ン(日本石油製商品名ニューソルベントK)を用いた。
【0010】本発明においては抽出装置および透析装置
は25±3℃に保持した室内に設置し、抽出装置内温度は
特に制御しない。また抽出中は攪拌を継続する。攪拌の
回転数は攪拌翼の形状等により異なり一義的には決めら
れない。静置時間は温度、溶媒の種類、比率、濃度など
により変わるが通常5分〜30分が好適である。攪拌時間
の長さについては、抽出は必ずしも平衡に達するまで行
う必要はなく、水相中に過剰の酸が存在していれば本発
明の効果が得られる。
【0011】本発明の実施例ではの透析液は元の有機
相と再度攪拌混合したが、有機相としては別の有機相を
用いても良い。例えば通常工業的に用いられる多段向流
式の溶媒抽出法による分離精製などにも本発明は適用可
能で、これに適用する場合は透析液は別の段の有機相と
混合攪拌させることも可能である。またイオン交換膜を
抽出装置に併設し、生成する酸を含有する水相から同時
に平行して酸を除去することも可能である。
【0012】
【実施例】本発明を更に具体的に説明するために実施例
を挙げるが、本発明はこれらの記載事項に限定されるも
のではない。(図2)は実施例1〜2における工程
(1)〜(2)を示す略図である。
【0013】(実施例1) (1) Y、La、Nd、Sm、Gd、Dy、Er、Ybを
含む混合希土類濃度が1.15モル/リットル でpH 1.2の混合希土
類塩化物水溶液 1.5リットルを出発原料として用いた。 (2) 有機相として2−エチルヘキシルホスホニックアシ
ド2’−エチルヘキシルエステル(EHPA・EHE)
4リットルをケロシン8リットルで希釈して調製した。最終容量
は12リットルであった。 (3) 攪拌機を備えた前記抽出装置中に (1)液と (2)液を
入れ600 rpm で30分混合攪拌した。 (4) 次にこれを30分静置後、水相1.5リットル だけを分離
し、有機相12リットルはそのまま抽出装置内に残した。 (5) 分離した水相中の希土類元素濃度は 0.817モル/リットル
、酸濃度[H+]は 0.922モル/リットル であった。 (6) 水相を陰イオン交換膜を備えた拡散透析装置(TS
D−2型・株式会社トクヤマ製)で膜を隔てて純水と接
触させた。水相の流量は0.62リットル/Hr、純水の流量は
0.57リットル/Hrに設定した。透析後の水相中の希土類元
素濃度は 0.514モル/リットル 、酸濃度[H+]は0.01モル/リットル と
なり、水相容量は 2.3リットルに増加した。純水側の希土類
元素濃度は0.0427モル/リットル 、酸濃度[H+]は 0.610モル/リット
ル であった。 (7) 次いで (6)の透析後の水相を再び抽出装置に戻し
(4) の有機相と30分混合撹拌した。 (8) 30分静置後、水相だけを分離し、有機相はそのまま
抽出装置内に残した。 (9) 分離した水相中の希土類元素濃度は 0.337モル/リットル
、酸濃度[H+]は0.610 モル/リットル であった。 (10)水相を陰イオン交換膜を備えた拡散透析装置で純水
と接触させた。水相の流量は0.63リットル/Hr、純水の流
量は0.52リットル/Hrに設定した。透析後の水相の希土類
元素濃度は 0.258モル/リットル 、酸濃度[H+]は0.02モル/リットル
となり、水相の容量は 2.9リットルに増加した。 (11)次いで(10)の水相を再び抽出装置に戻し(8) の有機
相と30分混合攪拌した。 (12)30分静置後、水相だけを分離し、有機相はそのまま
抽出装置内に残した。 (13)分離した水相中の希土類元素は 0.137モル/リットル 、酸
濃度[H+]は 0.364モル/リットル であった。 (14)水相を前記拡散透析装置で純水と接触させた。水相
の流量は0.61リットル/Hr、純水の流量は0.52リットル/Hr
に設定した。透析後の水相の希土類元素濃度は 0.113モル
/リットル 、酸濃度[H+]は0.02モル/リットル となり、容量は 3.5
リットルに増加した。 (15)次いで(14)の水相を再び混合器に戻し、(12)の有機
相と30分混合攪拌した。 (16)30分静置後、水相のサンプルを採取し分析した結
果、希土類元素濃度は0.05モル/リットル 、酸濃度[H+]は 0.2
10モル/リットル であった。 以上のように、抽出と透析を繰り返すことにより、中和
剤を使うことなく出発原料溶液中の希土類元素の約90%
を抽出できた。
【0014】(実施例2) (1) 2価の硫酸コバルトを水に溶解したCo濃度が1 モル
/リットル のコバルト硫酸塩水溶液 1.5リットルを出発原料とし
て用いた。 (2) 有機相として2−エチルヘキシルホスホニックアシ
ド2’−エチルヘキシルエステル(EHPA・EHE)
4リットルをケロシン8リットルに希釈して調製した。最終容量
は12リットルであった。 (3) 実施例1で使用した抽出装置中に (1)液と (2)液を
入れ600 rpm で30分混合攪拌した。 (4) 30分静置後、水相だけを1.5リットル 分離した。有機相
12リットル はそのまま抽出装置内に残した。 (5) 分離した水相の濃度は0.98モル/リットル 、酸濃度[H+]は
0.043モル/リットル であった。 (6) 水相を実施例1で使用した拡散透析装置で純水と接
触させた。水相の流量は0.62リットル/Hr、純水の流量は
0.57リットル/Hrに設定した。透析後の水相のCo濃度は
0.70モル/リットル 、酸濃度[H+]は0.08モル/リットル となり、水相
の容量は 2.1リットルに増加した。純水側のCo濃度は0.01
モル/リットル 、酸濃度[H+]は 0.026モル/リットル であった。 (7) 次いで (6)の水相を再び抽出装置に戻し、(4) の有
機相と30分混合攪拌した。 (8) 30分静置後、水相2.1リットル だけを分離し、有機相12
リットルはそのまま抽出装置内に残した。 (9) 分離した水相のCo濃度は0.69モル/リットル 、酸濃度[H
+]は 0.031モル/リットル であった。以上のように、抽出→透
析→抽出の操作を繰り返し、中和剤を使うことなく原料
溶液中Coの4%を抽出できた。
【0015】[比較例]比較例を以下に示す。 (比較例1) (1) Y、La、Nd、Sm、Gd、Dy、Er、Ybを
含む混合希土類元素濃度が1.15モル/リットル でpH 1.2の混合
希土類塩化物水溶液 1.5リットルを出発原料として用いた。 (2) 有機相として2−エチルヘキシルホスホニックアシ
ド2’−エチルヘキシルエステル(EHPA・EHE)
4リットルをケロシン8リットルで希釈して調製した。最終容量
は12リットルであった。 (3) 実施例1で使用した抽出装置中に (1)液と (2)液を
入れ600rpmで30分混合攪拌した。 (4) 30分静置後、水相のサンプルを採取し分析した結
果、希土類元素濃度は 0.831モル/リットル 、酸濃度[H+]は
0.915モル/リットル であった。この結果から、原料溶液中の
希土類元素の1回の抽出率は28%あった。
【0016】(比較例2) (1) 2価の硫酸コバルトを水に溶解したCo濃度が1モル
/リットル のコバルト硫酸塩水溶液 1.5リットルを出発原料とし
て用いた。 (2) 有機相として2−エチルヘキシルホスホニックアシ
ド2’−エチルヘキシルエステル(EHPA・EHE)
4リットルをケロシン8リットルに希釈して調製した。最終容量
は12リットルであった。 (3) 実施例1で使用した抽出装置中に (1)液と (2)液を
入れ600rpmで30分混合攪拌した。 (4) 30分静置後、水相のサンプルを採取し分析した結
果、Co濃度は0.98モル/リットル、酸濃度[H+]は 0.041で
あった。この結果から、原料溶液中のCoの1回の抽出
率は2%であった。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、抽出時に酸を生成する
金属元素の溶媒抽出において酸を除去するために必要な
アルカリの使用量を大幅に削減でき、また副生塩類の問
題もなく且つ抽出効率も高いので各種有用な金属元素を
低コストで生産できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における拡散透析を説明する模式図であ
る。
【図2】本発明の実施例1〜2における工程(1)〜
(7)を示す略図である。
【符号の説明】
1 原液、 9 水相、2 透析液、
10 水相抜出し、3 水、
11 拡散透析、4 拡散液、
12 陰イオン交換膜、5 投入、 1
3 純水、6 混合(抽出)、 14 再投入、
7 静置(分相)、 15 再混合(抽出)。8
有機相、

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前工程から水相に随伴された酸および/
    または抽出時にこの水相中に生成した酸をイオン交換膜
    を用いた透析により除去することを特徴とする金属元素
    の溶媒抽出方法。
  2. 【請求項2】 水相と有機相とを混合して水相中の金属
    元素の一部を抽出した後、水相を分離し、水相中の酸の
    一部または大部分をイオン交換膜を用いた透析により除
    去した後、この水相を有機相と再び混合することを特徴
    とする請求項1記載の溶媒抽出方法。
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