JPH10233555A - 歪多重量子井戸構造 - Google Patents

歪多重量子井戸構造

Info

Publication number
JPH10233555A
JPH10233555A JP3593397A JP3593397A JPH10233555A JP H10233555 A JPH10233555 A JP H10233555A JP 3593397 A JP3593397 A JP 3593397A JP 3593397 A JP3593397 A JP 3593397A JP H10233555 A JPH10233555 A JP H10233555A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
strain
well layer
mixed crystal
well structure
crystal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP3593397A
Other languages
English (en)
Inventor
Matsuyuki Ogasawara
松幸 小笠原
Hideo Sugiura
英雄 杉浦
Manabu Mitsuhara
学 満原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Telegraph and Telephone Corp filed Critical Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority to JP3593397A priority Critical patent/JPH10233555A/ja
Publication of JPH10233555A publication Critical patent/JPH10233555A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Led Devices (AREA)
  • Semiconductor Lasers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】歪を持つ井戸層の臨界膜厚を増加させることに
より、発光波長域を拡大した歪多重量子井戸構造を提供
する。 【解決手段】基板と異なる格子定数を有する井戸層と、
井戸層よりも大きなバンドギャップを有する障壁層とを
交互に積層してなる歪多重量子井戸構造であって、井戸
層は短距離規則混晶を用いた歪多重量子井戸構造とす
る。また、井戸層に用いる短距離規則混晶は、X線散漫
散乱もしくは格子振動モードの測定から評価した短距離
規則パラメータα(1)がゼロでない混晶を用いた歪多
重量子井戸構造とする。また、井戸層はIII−V族半導
体混晶もしくはII−VI族半導体混晶における短距離規
則混晶を用いた歪多重量子井戸構造とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光半導体素子の活性
層に用いられる歪多重量子井戸構造に関する。
【0002】
【従来の技術】厚さが数十Åの量子井戸層(以下、単に
井戸層と言う)を、それよりもバンドギャップの大きな
障壁層で挾み、それらを多層に積層した多重量子井戸構
造(MQW)は、現在の光半導体素子の活性層に広く利
用されている。近年、井戸層に圧縮歪を導入した歪多重
量子井戸構造(歪MQW)を活性層に用いたレーザが、
従来の基板に格子整合した井戸層を有するMQWに較
べ、素子特性(しきい値電流、光出力など)が向上する
ことを多くの研究機関により報告されている。しかしな
がら、所望の歪量を持つ井戸層を、基板に格子整合した
障壁層で挾み、それらを交互に多層に積層して歪MQW
を形成すると、歪MQW全体の厚さが所定の臨界値(い
わゆる、臨界膜厚)を超えると、基板と歪MQWとの界
面にミスフィット転位が発生する。井戸層の歪が大きい
程、臨界膜厚は小さくなる。これは、井戸層の歪による
応力が井戸層の数が増えるごとに歪MQWに蓄積され、
この応力がミスフィット転位の発生を招くからである。
素子特性を向上させるためには、大きな歪を懸ける必要
があるものの、歪MQWの厚さは臨界膜厚により制限さ
れる。これを避けるために、歪補償型MQWが提案され
ている。この歪補償型MQWでは、圧縮歪を有する井戸
層に対し、引っ張り歪を有する障壁層を組み合わせるこ
とにより、ミスフィット転位を発生させる応力を相殺さ
せ、ミスフィット転位の発生を抑制するものである。し
たがって、大きな歪を持つ井戸層であっても大きな厚み
を持つ歪MQWが得られることになる。歪補償型MQW
を作製する際には、ガイドラインとして、次の(数1)
式で定義される実効歪εを、ほぼゼロにすることが提案
されている〔B.I.Miller et.al.,Appl.Phys.Let
t.,58(1991),p.1952〕。
【0003】
【数1】
【0004】上記(数1)式中のhとHは、それぞれ井
戸層と障壁層の厚さ、εwとεbは、それぞれ井戸層と障
壁層の歪(引張り歪は−、圧縮歪は+の符号を用いる)
を表わす。すなわち、実効歪εをできるだけ小さくする
ように井戸層および障壁層の厚さと歪を選ぶことが、ミ
スフィット転位の無い多重量子井戸層を成長させるため
の条件となる。歪MQWは波長域の拡大にも寄与してい
る。活性層としてInPに格子整合するInGaAsP系混
晶のバルクを用いると、基板のInPと格子整合する組
成しか利用できないため、最長の発光波長は1.7μm
であった。しかし、歪MQWにおいては臨界膜厚より薄
い範囲において井戸層の組成を自在に変化させることが
できる。例えば、光計測用、医療用等への応用が期待さ
れる2μm帯の発光波長を得ることも原理的には可能で
ある〔池上徹彦監修、半導体フォトニクス光学、コロナ
社(1995年)、329頁、図8.8〕。2μm帯の発光波長を
得るためには、井戸層を1.5%以上の圧縮歪を有し、
100Å以上の厚さのInGaAs層で構成する必要があ
る。強歪系であるのに加え、臨界膜厚に近い膜厚が必要
であるため、欠陥が入り易く特性の良好な歪MQWを作
るのが難しい。InGaAs混晶は、In組成が増加するほ
どバンドギャップが狭くなり発光波長は、より長波長と
なる。しかしながら、Inの増加に伴い格子定数も大き
くなるため、基板のInPとの格子不整が大きくなり、
欠陥の入らない膜を得るための膜厚の上限(臨界膜厚)
は次第に小さくなる。また、井戸層の厚さが小さくなる
と量子効果により、発光波長が短波側にずれるため、発
光波長をより長波長側に延ばすためには、大きな歪に加
え、厚い井戸層が必要となる。
【0005】基板上に、基板の格子定数と異なる格子定
数を持つ薄膜をエピタキシャル成長した時の臨界膜厚
は、Matthews & Blakesleeのモデル〔Defects in e
pitaxial multilayers,J.W.Matthews and A.E.Bl
akeslee,Journal of CrystalGrowth, vol.27,(1974
年発行),pp.118〜125〕で説明される。同モデルでは、
図2(a)に示すように、貫通転位がエピ層(厚さd、
歪ε)の応力を受けて滑り運動を起こすことにより、界
面に転位の折れ曲がりを作り、それがミスフィット転位
となる。最初にミスフィット転位が現われる膜厚を臨界
膜厚と言う。転位の滑り運動を起こす力Fεが、転位の
張力Fδを上回るときミスフィット転位が発生するか
ら、その臨界条件Fε=Fδは、次に示す(数2)式と
なる。
【0006】
【数2】
【0007】ここでは、簡単化のためエピ層と基板の弾
性定数はすべて同じものとした。μ、νは、各々混晶の
剛性率とポワソン比であり、βはコアパラメータ(III
−V族化合物半導体の場合は4)、bはミスフィット転
位のバーガースペクトルの大きさである。λ、θおよび
bは、幾何学的な配置に関係した定数で、基板が(10
0)面であり、ミスフィット転位が60°(度)転位の
場合、cosλ=cosθ=0.5、b=4Åである。閃亜鉛
鉱型結晶構造におけるバーガースペクトルはa<110
>/2である。ここで、aは格子定数の大きさである。
以上説明したように、歪多重量子井戸構造の制限要因と
して、次の2つが挙げられる。 井戸層の厚さは、井戸層の歪に対する臨界膜厚で制限
される。 歪MQW全体の厚さは、実効歪に対する臨界膜厚で制
限される。 上記2項目の内、については歪補償技術を適用するこ
とにより回避されることは既に説明した通りである。し
かしながら、についての検討は行われていない。した
がって、井戸層の厚さは臨界膜厚で制限されるため、長
波長側への波長拡大は充分ではない。波長域の拡大のた
めには、井戸層の臨界膜厚の増加が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術における歪多重量子井戸構造の改良をはかるも
のであって、歪を持つ井戸層の臨界膜厚を増加させるこ
とにより、発光波長域を拡大した歪多重量子井戸構造を
提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的を達成
するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構
成とするものである。すなわち、本発明は請求項1に記
載のように、基板と異なる格子定数を有する井戸層と、
該井戸層よりも大きなバンドギャップを有する障壁層と
を交互に積層してなる歪多重量子井戸構造であって、上
記井戸層に短距離規則混晶を用いた歪多重量子井戸構造
とするものである。また、本発明は請求項2に記載のよ
うに、請求項1において、井戸層に用いる短距離規則混
晶は、X線散漫散乱もしくは格子振動モードの測定から
評価した短距離規則パラメータα(1)がゼロでない混
晶を用いた歪多重量子井戸構造とするものである。ま
た、本発明は請求項3に記載のように、請求項1または
請求項2において、井戸層はIII−V族半導体混晶もし
くはII−VI族半導体混晶における短距離規則混晶を用
いた歪多重量子井戸構造とするものである。本発明の歪
多重量子井戸構造は、歪多重量子井戸構造の井戸層とし
て、短距離規則混晶を用いるものである。短距離規則混
晶とは、短距離規則パラメータα(1)がゼロでない混
晶を言い、短距離規則パラメータα(1)の値は、X線
散漫散乱の測定もしくは格子振動モードの測定によって
評価することができる。従来から短距離規則混晶の存在
は知られていた。しかしながら、短距離規則混晶を、光
半導体素子の活性層に用いられる歪多重量子井戸構造の
井戸層に適用することは、本発明者らが始めて見出した
ものであり、歪多重量子井戸構造の井戸層に短距離規則
混晶を用いた結果、井戸層の臨界膜厚が著しく大きくな
ることを知った。また、転位の滑り運動に対する抵抗力
は、金属工学における加工硬化の機構として以前から知
られているものであるが、光半導体素子の活性層に用い
られる歪多重量子井戸構造の臨界膜厚の増大に適用され
た例はなかった。本発明の請求項1ないし請求項3に記
載の歪多重量子井戸構造に用いる短距離規則混晶は、同
じ組成の不規則混晶よりも臨界膜厚が大きいため、より
大きな歪を持つ組成の井戸層からなる歪多重量子井戸層
を実現することができる。その結果、井戸層として用い
ることができる組成範囲が広がるため、歪多重量子井戸
構造の発光波長域を拡大することができる効果がある。
【0010】次に、本発明の歪多重量子井戸構造の基本
構成について、図面を用いて説明する。図1は、本発明
の基本構成の一例を示す模式図である。図において、半
導体単結晶からなる基板1の上に、井戸層3と障壁層4
からなる歪多重量子井戸構造2が構成されている。井戸
層3と障壁層4は交互に積層され、井戸層3にキャリア
が閉じ込められる構造となっている。井戸層3が、短距
離規則混晶から構成されているところが従来の歪多重量
子井戸構造とは異なり、従来は不規則混晶を用いてい
た。本発明の歪多重量子井戸構造の井戸層として、In
GaAsP、InGaAs、InGaP、GaAsP、InAs
P、AlGaAs、GaAsSb等のIII−V族半導体混晶に
おける短距離規則混晶、もしくはZnS、ZnSe、ZnT
e、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe等
のII−VI族半導体混晶における短距離規則混晶を用い
ることができる。障壁層4としては、井戸層3よりもバ
ンドギャップの広い半導体であれば良い。基板1として
は、GaAsやInP等が利用できる。
【0011】次いで、三元混晶In1-xGaxAsを例に挙
げ、短距離規則混晶について説明する。III−V族化合
物半導体の結晶構造は、閃亜鉛鉱構造である。これは、
III族元素とV族元素が各々面心立方構造の副格子を形
成し、III族副格子がV族副格子に対して基本格子の対
角線方向に、その長さの1/4だけ変位して組み合わさ
れた構造である。例として挙げたInGaAs三元混晶の
場合には、InとGaがIII族副格子上で規則的に配列し
ている場合を規則混晶と呼ぶ。これに対し、InとGaが
III族副格子上に不規則に配列されているものが不規則
混晶である。III族副格子上の、あるIn原子を考え、こ
のIn原子の最近接格子点上にGa原子を見い出す確率を
In-Ga(1)とし、短距離規則パラメータα(1)を次
の(数3)式で定義する。
【0012】
【数3】
【0013】(a)In原子とGa原子の数の比が、組成
比xと同じならば PIn-Ga(1)=x、すなわち、α(1)=0 (b)Ga原子の数が平均より多いならば PIn-Ga(1)>x、すなわち、α(1)<0 さらに、Ga原子のみの場合は PIn-Ga(1)=1、すなわち、α(1)=1−(1/
x) ただし、In原子に隣接する原子がすべてGa原子になり
3次元的に拡がる結晶はあり得ない。
【0014】(c)Ga原子の数が平均より少ないなら
ば PIn-Ga(1)<x、すなわち、α(1)>0 さらに、In原子だけならば PIn-Ga(1)=0、すなわち、α(1)=1 となる。したがって、一般には 1−(1/x)<α(1)≦1 となる。以上の解説はIn原子を基準に行ったが、Ga原
子を基準に採っても同様である。これまでの記述はIII
族副格子だけを取り上げた説明であるが、実際にはV族
副格子も考慮しなければならない。InGaAsの場合、
V族副格子はAsだけである。InはAsを介してIII族副
格子上の最近接原子のInあるいはGaと結合している。
すなわち、実際にはIn−As−In、Ga−As−Ga、I
n−As−Gaのように結合しているものであるが、InG
aAsの場合はV族副格子がすべてAsであるからIII族副
格子における結合を考えれば充分である。これらをIn
−In、Ga−Ga、In−Gaと呼ぶ。α(1)<0の場
合、すなわち、最近接原子として異種原子が多く集まる
場合は、原子が交互に配置する傾向が強いことを示して
いる。すなわち、In‐Ga結合が多い。逆に、α(1)
>0の場合、すなわち、最近接原子として同種原子が多
く集まる場合は、同種原子同士のクラスターを形成する
傾向が強いことを示している。すなわち、In−In結合
とGa−Ga結合が多い。本発明においては、α(1)≠
0の場合を短距離規則混晶と呼ぶ。短距離規則パラメー
タα(1)は、X線散漫散乱の測定もしくは格子振動モ
ードの測定から評価できる。
【0015】次に、短距離規則混晶の臨界膜厚について
説明する。便宜上、α(1)<0の場合と、α(1)
>0の場合に分けて説明する。例として、三元混晶In
GaAsを取り上げる。 α(1)<0の場合。 InGaAs結晶内を転位が滑り運動するとき、滑り面に
交叉するIn−Ga結合は断ち切られ、In−In結合か、
Ga−Ga結合に代わる。このため、In−Ga結合がIn
−In結合、あるいはGa−Ga結合に代わるために必要
なエネルギーに相当する抵抗を受ける。この抵抗力は、
転位が単位面積だけ通過するために必要なエネルギーを
γとし、基板表面と滑り面の法線のなす角をφとすると
き、転位はFγ=γd/cosφの抵抗力を受ける。転位
が抵抗力Fγを受けながらミスフィット転位を形成する
様子を示したのが図2(b)である。転位に作用する力
の釣り合いから、臨界膜厚の条件式は、次の(数4)式
となる。
【0016】
【数4】
【0017】転位の滑り運動を妨げる力は、転位の張力
以外にFγが存在するため、転位を動かすためには図2
(a)の場合に比べ、より厚い膜厚が必要となる。その
ため、臨界膜厚が増加することになる。図4は、InGa
As短距離規則混晶の臨界膜厚を、γをパラメータにと
って示したものである。計算は、(数4)式を用いて行
った。横軸はInGaAs混晶の歪であり、縦軸はInGa
As混晶の厚さである。実線および破線が歪に対する臨
界膜厚の変化を示している。γ=0が不規則混晶の場合
(実線)である。γ=27erg/cm2(細破線)、54e
rg/cm2(粗破線)が短距離規則混晶の場合である。γ
とα(1)との関係は、必ずしも明確になっているとは
言えないが、大まかに言って、α(1)の値が大きい
程、γは大きくなることが知られている。ここでは、典
型的なγの値に対して臨界膜厚を計算した。すべての歪
の範囲において、短距離規則混晶の臨界膜厚は不規則混
晶の場合に比べ増加している。例えば、格子不整が1.
6%の場合、不規則混晶(γ=0)の臨界膜厚は60Å
であるが、短距離規則混晶の場合には、臨界膜厚が90
Å(γ=27erg/cm2の時)、140Å(γ=54erg
/cm2の時)と増加している。 α(1)>0の場合。 InGaAsは組成分離の際、InAsリッチ領域とGaAs
リッチ領域に分離する。InAsリッチ領域とGaAsリッ
チ領域では、弾性定数μが異なる。InAsリッチ領域の
弾性定数(μInAs)と、GaAsリッチ領域の弾性定数
(μGaAs)の間には、μInAs<μGaAsの関係がある。組
成分離しても、弾性定数νは変化しない。InAsリッチ
領域とGaAsリッチ領域では格子定数aも異なり、In
Asリッチ領域の格子定数(aInAs)とGaAsリッチ領
域の格子定数(aGaAs)の間には、aGaAs<aInAsの関
係がある。弾性定数の違い、格子定数の違い共、転位と
InAsリッチ領域およびGaAsリッチ領域との間に相互
作用をもたらす。このため、組成分離を起こした混晶内
に存在する転位の運動には摩擦力が働くことになる。
【0018】次に、格子定数の違いによる相互作用を説
明する。転位の歪場には剪断成分以外に静水圧成分があ
ることに関係する。最初に、刃状転位との相互作用を考
える。 図3に示すように、母相結晶の一部分(半径r
の球形)を、格子定数の異なる他の結晶(格子不整:
ε)で置き換えた場合を考える。極座標(R,θ)を中
心とする半径rの球状領域を、母相に対して格子定数の
不整合(格子不整:ε)結晶で置き換える。置き換えた
結晶は母相結晶に対し格子不整をもつため、球状領域の
周囲の母相結晶を歪ませ、歪エネルギーを蓄積する。そ
のため、球状領域と転位間に相互作用が生じる。母相結
晶の半径rの領域が、半径r(1+ε)の領域に置き換
わるため、刃状転位との相互作用は、次の(数5)式と
なる。
【0019】
【数5】
【0020】転位はz軸に沿った長い転位を仮定し、極
座標(R,θ)に置換された結晶があるとする。Ε
1は、0≦θ<πの範囲で正であり、π≦θ<2πの範
囲で負である。滑り面の上方に格子定数の大きな領域が
あるか、滑り面の下方に格子定数の小さな領域が来ると
相互作用エネルギーが正となるため、転位は不安定にな
り滑り運動を起こそうとする。滑り面の上方に格子定数
の小さな領域があるか、滑り面の下方に格子定数の大き
な領域が来ると相互作用エネルギーが負となるため、転
位は安定となり滑り運動を起こさない。一端、転位がこ
のような配置をとると、転位はこの場に留まろうとする
ため、転位の滑り運動に対する抵抗力が働く。結晶が組
成分離を起こし、格子定数が大きな領域と小さな領域に
分離すると、転位と結晶の間に相互作用が生じ、滑り運
動に対する抵抗が生まれる。次に、らせん転位について
説明する。らせん転位では、転位芯近傍の非線形的応力
場の影響で、転位の周りにおいて体積膨張が生じる。そ
のため格子定数の異なる領域との間に相互作用が働き、
その相互作用の大きさは、次の(数6)式となる。
【0021】
【数6】
【0022】この相互作用により、らせん転位は、格子
定数の大きな領域からは遠ざかり、格子定数の小さな領
域に近づこうとする。格子定数の小さな領域に転位が入
り込むと、そこから抜け出して格子定数の大きな領域に
動こうとすると、上記の相互作用Ε2により、系全体の
エネルギーが上昇するため、抵抗力を生じることにな
る。
【0023】次に、弾性定数の違いに関する相互作用を
説明する。転位の周りの歪エネルギーは、弾性定数μに
比例することに原因がある。すなわち、弾性定数μが小
さい領域では、歪エネルギーが相対的に低くなり、弾性
定数μが大きい領域では、歪エネルギーは相対的に高く
なる。格子定数の異なる場合と同様に、母相結晶の一部
分(半径rの球形)を、弾性定数の異なる他の結晶(弾
性定数:μ′)で置き換えた場合を考える。極座標
(R,θ)を中心とする半径rの球状領域を、母相に対
して弾性定数の不整合をもった結晶で置き換える。刃状
転位と球状領域との相互作用は、次の(数7)式とな
り、
【0024】
【数7】
【0025】らせん転位と球状領域との相互作用は、次
の(数8)式となる。
【0026】
【数8】
【0027】どちらの場合も、弾性定数の大きな領域か
らは遠ざかり、弾性定数の小さな領域に近づこうとする
傾向がある。弾性定数の小さな領域に転位が入り込む
と、そこから抜け出して弾性定数の大きな領域に動こう
とすると、上記の相互作用Ε3またはΕ4により、系全体
のエネルギーが上昇するため、抵抗力を生じることにな
る。結晶が組成分離を起こし、弾性定数が大きな領域と
小さな領域に分離すると、転位と結晶の間に相互作用が
生じ、滑り運動に対する抵抗が生まれる。組成分離の
際、格子定数および弾性定数に、どれほどの差が生じる
かは、短距離規則パラメータα(1)の大きさに依存す
る。定性的には、α(1)の値が大きいほど格子定数お
よび弾性定数の差が大きく、その結果、転位の滑り運動
に対する抵抗が大きくなるものと考えられる。これまで
の説明は、転位と微小領域(図3に示す球状領域)の間
の相互作用に基づいた定性的なものであるが、転位の滑
り運動に対する抵抗力の起源の理解を得るには、これで
充分である。実際の抵抗力を計算するためには、上記の
相互作用を膜の全領域にわたり積分しなければならな
い。しかし、計算が繁雑であるばかりか、解説の筋道か
ら外れる恐れがあるため省略する。抵抗力の存在下で転
位が単位面積だけ通過するために必要なエネルギーをγ
とすると、転位の受ける抵抗力(Fγ)は、Fγ=γd
/cosφとなる。ここで、φは基板表面と滑り面の法線
のなす角である。抵抗力Fγ=γd/cosφは、短距離
規則パラメータα(1)がα(1)<0の時と同じであ
る。したがって、図4に示したように、γが大きくなる
ほど臨界膜厚が大きくなる。以上は、三元混晶InGaA
sを例に取り上げた場合の説明である。四元混晶InGa
AsPにおいても同様に、短距離規則性があれば、すな
わち、α(1)≠0であれば、転位の滑り運動に対する
抵抗力が発生し、臨界膜厚が増加する。InGaAsPの
場合には、弾性定数が大きく格子定数の小さいGaPリ
ッチ領域と、弾性定数が小さく格子定数が大きなInAs
リッチ領域に分離する傾向がある。このような分離の程
度も、短距離規則パラメータα(1)で特徴付けること
ができる。さらに、ZnSSe等のII-VI族半導体混晶に
おいても結晶構造が閃亜鉛鉱構造をとる限り、上記と同
様の効果がある。図1に示す本発明の歪多重量子井戸構
造をレーザの活性層に応用する際には、基板1と歪MQ
W2との間に光閉じ込め層を挿入したり、歪MQW2の
上に光閉じ込め層を積層したりすることは、良く知られ
た変更である。
【0028】
【発明の実施の形態】
〈実施の形態1〉次に、本発明の歪多重量子井戸構造を
2μm帯に発光波長を有する歪MQWに適用した場合を
説明する。井戸層は1.6%の圧縮歪を有するIn0.76
a0.24As短距離規則混晶(典型的な厚さ100Å)から
なり、障壁層は基板と格子整合したバンド端波長が1.
5μmで200Å厚さのInGaAsPからなる。井戸層
の数は4である。基板は(001)面方位を有するIn
Pを用いた。この歪MQWの発光波長は2.05μmで
あった。透過電子顕微鏡による観察から、井戸層には組
成分離の影響と考えられるコントラストが観察された。
井戸層の成長条件と同じ条件で、井戸層と同じ組成の単
層膜を成長した試料につき、その膜をX線散漫散乱法に
より評価した。その結果、短距離規則パラメータが、α
(1)>0であることが判明した。従来、この系におい
ては、井戸層の大きな歪のため、ミスフィット転位が入
り易く、井戸層の数を3以上に増やすことができなかっ
た。しかし、本発明の歪多重量子井戸構造においては、
In0.76Ga0.24Asの短距離規則混晶を井戸層に用いた
ため、臨界膜厚が増加した。そのため、ミスフィット転
位の発生を防ぐことができ、井戸層の数を3以上にする
ことが可能となった。
【0029】〈実施の形態2〉次に、本発明の歪多重量
子井戸構造を0.98μm帯に発光波長を有する歪MQ
Wに適用した場合を説明する。基板として(001)面
方位を有するGaAsを用い、井戸層として厚さ60Åで
1.7%の圧縮歪を有するIn0.24Ga0.76As短距離規則
混晶を、障壁層として50Å厚さのGaAsを用いてい
る。井戸層の数は4である。透過電子顕微鏡による観察
から、井戸層には組成分離の影響と考えられるコントラ
ストが観察された。井戸層と成長条件が同じ条件で、井
戸層と同じ組成の単層膜を成長した試料につき、その膜
をX線散漫散乱法により評価した。その結果、短距離規
則パラメータが、α(1)>0であることが判明した。
従来、この系においては、井戸層の大きな歪と比較的高
い成長温度のため、ミスフィット転位が入り易く井戸層
の数を3以上に増やすことができなかった。しかしなが
ら、本発明においてはIn0.24Ga0.76Asの短距離規則
混晶を井戸層に用いたため、臨界膜厚が増加した。その
ため、ミスフィット転位の発生を防ぐことができ、井戸
層の数を3以上にすることが可能となった。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、井戸層の臨界膜厚を増
加させることができるため、歪多重量子井戸構造の発光
波長域を拡大することができるという顕著な効果があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態で例示した歪多重量子井戸
構造の基本構造を示す模式図。
【図2】本発明の実施の形態で例示したミスフィット転
位の形成機構を示す説明図。
【図3】本発明の実施の形態で例示した転位と球状領域
との相互作用を示す説明図。
【図4】本発明の実施の形態で例示した規則混晶の臨界
膜厚と歪との関係を示す図。
【符号の説明】
1…基板 2…歪多重量子井戸構造(歪MQW) 3…井戸層 4…障壁層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板と異なる格子定数を有する井戸層と、
    該井戸層よりも大きなバンドギャップを有する障壁層と
    を交互に積層してなる歪多重量子井戸構造であって、上
    記井戸層は短距離規則混晶を用いることを特徴とする歪
    多重量子井戸構造。
  2. 【請求項2】請求項1において、井戸層に用いる短距離
    規則混晶は、X線散漫散乱もしくは格子振動モードの測
    定から評価した短距離規則パラメータα(1)がゼロで
    ない混晶を用いることを特徴とする歪多重量子井戸構
    造。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2において、井戸層
    はIII−V族半導体混晶もしくはII−VI族半導体混晶
    における短距離規則混晶を用いることを特徴とする歪多
    重量子井戸構造。
JP3593397A 1997-02-20 1997-02-20 歪多重量子井戸構造 Pending JPH10233555A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3593397A JPH10233555A (ja) 1997-02-20 1997-02-20 歪多重量子井戸構造

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3593397A JPH10233555A (ja) 1997-02-20 1997-02-20 歪多重量子井戸構造

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10233555A true JPH10233555A (ja) 1998-09-02

Family

ID=12455836

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3593397A Pending JPH10233555A (ja) 1997-02-20 1997-02-20 歪多重量子井戸構造

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10233555A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8610105B2 (en) 2009-05-15 2013-12-17 Oclaro Japan, Inc. Semiconductor electroluminescent device with a multiple-quantum well layer formed therein

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8610105B2 (en) 2009-05-15 2013-12-17 Oclaro Japan, Inc. Semiconductor electroluminescent device with a multiple-quantum well layer formed therein

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Takeuchi et al. Determination of piezoelectric fields in strained GaInN quantum wells using the quantum-confined Stark effect
JP5363996B2 (ja) Al(x)Ga(1−x)Nクラッディングフリー非極性III族窒化物ベースのレーザダイオードおよび発光ダイオード
US20060017063A1 (en) Metamorphic buffer on small lattice constant substrates
JPH03139886A (ja) 光学素子および半導体素子
US8358673B2 (en) Strain balanced laser diode
US20120100650A1 (en) Vicinal semipolar iii-nitride substrates to compensate tilt of relaxed hetero-epitaxial layers
US5416884A (en) Semiconductor waveguide structure of a II-VI group compound
Yerino et al. Tensile GaAs (111) quantum dashes with tunable luminescence below the bulk bandgap
Su et al. Physical model for high indium content InGaN/GaN self-assembled quantum dot ridge-waveguide lasers emitting at red wavelengths (λ~ 630 nm)
US20070003697A1 (en) Lattice-matched AllnN/GaN for optoelectronic devices
JPH10233555A (ja) 歪多重量子井戸構造
US6801558B2 (en) Material systems for long wavelength lasers grown on InP substrates
JP2806089B2 (ja) 半導体多重歪量子井戸構造
JPH10284795A (ja) 歪み量及び層厚変調型多重量子井戸構造を備える半導体レーザ素子および製造方法
US7968435B1 (en) Method and device for growing pseudomorphic AlInAsSb on InAs
JPH10200205A (ja) 歪多重量子井戸構造
Sawicka et al. Role of high nitrogen flux in InAlN growth by plasma-assisted molecular beam epitaxy
Yıldırım Non-polar ZnCdO/ZnO step-barrier quantum wells designed for THz emission
Bradshaw et al. Characterization by Raman scattering, x‐ray diffraction, and transmission electron microscopy of (AlAs) m (InAs) m short period superlattices grown by migration enhanced epitaxy
JPH0529715A (ja) 歪量子井戸構造半導体素子
JPH1131811A (ja) 歪多重量子井戸構造の成長方法
Ruda Theoretical study of electron mobility in a two‐dimensional electron gas confined at a lattice‐matched ZnSe‐Zn (S, Te) heterointerface
Ono et al. Metalorganic vapor phase epitaxial growth parameter dependence of phase separation in miscibility gap of InGaAsP
JPH11150330A (ja) 半導体発光素子
Pamulapati et al. Growth phenomena and characteristics of strained InxGa1− xAs on GaAs

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20040803