JPH10200205A - 歪多重量子井戸構造 - Google Patents

歪多重量子井戸構造

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JPH10200205A
JPH10200205A JP128197A JP128197A JPH10200205A JP H10200205 A JPH10200205 A JP H10200205A JP 128197 A JP128197 A JP 128197A JP 128197 A JP128197 A JP 128197A JP H10200205 A JPH10200205 A JP H10200205A
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quantum well
strain
multiple quantum
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JP128197A
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Matsuyuki Ogasawara
松幸 小笠原
Hideo Sugiura
英雄 杉浦
Manabu Mitsuhara
学 満原
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Nippon Telegraph and Telephone Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】井戸層の臨界膜厚を増加させることにより、歪
多重量子井戸構造における波長域を拡大した歪多重量子
井戸構造を提供する。 【解決手段】基板と異なる格子定数を有する井戸層と、
井戸層よりも大きなバンドギャップを有する障壁層とを
交互に積層した歪多重量子井戸構造において、井戸層を
規則混晶〔InGaAs規則混晶、CuPt型規則混晶、0.
98μm帯または2μm帯の発光波長を有する組成の規
則混晶など〕により構成した歪多重量子井戸構造とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光半導体素子の活性
層に用いられる歪多重量子井戸構造に関する。
【0002】
【従来の技術】厚さが数十Åの量子井戸層(以下、単に
井戸層と言う)を、それよりもバンドギャップの大きい
障壁層で挾み、それらを多層に積層した多重量子井戸構
造(MQW)は、現在の光半導体素子の活性層に広く利
用されている。近年、井戸層に圧縮歪を導入した歪多重
量子井戸構造(歪MQW)を活性層に用いたレーザが、
従来の基板に格子整合した井戸層を有するMQWに較
べ、素子特性(しきい値電流、光出力など)が向上する
ことを多くの研究機関により報告されている。しかしな
がら、所望の歪量を持つ井戸層を、基板に格子整合した
障壁層で挾み、それらを交互に多層に積層して歪MQW
を形成すると、歪MQW全体の厚さが所定の臨界値(い
わゆる、臨界膜厚)を超えると、基板と歪MQWとの界
面にミスフィット転位が発生する。井戸層の歪が大きい
程、臨界膜厚は小さくなる。これは、井戸層の歪による
応力が井戸層の数が増えるごとに歪MQWに蓄積され、
この応力がミスフィット転位の発生を招くからである。
素子特性を向上させるためには、大きな歪を懸ける必要
があるものの、歪MQWの厚さは臨界膜厚により制限さ
れる。これを避けるために、歪補償型MQWが提案され
ている。この歪補償型歪MQWでは、圧縮歪を有する井
戸層に対し、引張り歪を有する障壁層を組み合わせるこ
とにより、ミスフィット転位を発生させる応力を相殺さ
せ、ミスフィット転位の発生を抑制するものである。歪
補償型歪MQWを作製する際には、ガイドラインとし
て、次の(数1)式で定義される実効歪εを、ほぼゼロ
にすることが提案されている〔B.I.Milleret.al.,A
ppl.Phys.Lett.,58,(1991),p.1952〕。
【0003】
【数1】
【0004】上記(数1)式中のhとHは、それぞれ井
戸層と障壁層の厚さ、εwとεbは、それぞれ井戸層と障
壁層の歪(引張り歪は−、圧縮歪は+の符号を用いる)
を表わす。すなわち、実効歪εをできるだけ小さくする
ように井戸層および障壁層の厚さと歪を選ぶことが、ミ
スフィット転位の無い歪MQWを成長させるための条件
となる。歪MQWは波長域の拡大にも寄与している。活
性層としてInPに格子整合するInGaAsP混晶のバル
クを用いると、基板のInPと格子整合する組成しか利
用できないため、最長の発光波長は1.65μmであ
る。しかし、歪MQWにおいては臨界膜厚より薄い範囲
において井戸層の組成を自在に変化させることができ
る。例えば、光計測用、医療用等への応用が期待される
2μm帯の発光波長を得ることも原理的には可能である
〔池上徹彦監修、半導体フォトニクス工学、コロナ社
(1995年)、329頁、図8.8〕。2μm帯の発
光波長を得るためには、井戸層を、1.5%以上の圧縮
歪を有し、100Å以上の厚さのInGaAs層で構成す
る必要がある。井戸層を構成するInGaAs混晶は、In
組成が増加するほどバンドギャップが狭くなり発光波長
はより長波長となる。しかしながら、Inの増加に伴い
格子定数が大きくなるため、基板のInPとの格子不整
が大きくなる。それに伴い、臨界膜厚は次第に小さくな
る。また、井戸層の厚さが小さくなると、量子効果によ
って発光波長が短波側にずれるため、発光波長をより長
波長側に延ばすためには、大きな歪に加え、厚い井戸層
が必要となる。GaAs基板上において、InGaAsPお
よびInGaAs混晶からなる井戸層を用いる場合も、In
P基板上の場合と同様に、井戸層に大きな圧縮歪を懸け
た歪MQWを用いて波長域の拡大を行っている。その例
が0.98μm帯レーザの活性層として用いられる歪M
QWである〔S.Ishikawa et.al.,Tech.Dig.ofT
opical Meet.on Optical Amplifiers and Their A
pplications,Breckenridge,Colorado,(1994),
p.43〕。以上説明したように、歪多重量子井戸構造の
制限要因として、次の2つが挙げられる。 井戸層の厚さは、井戸層の歪に対する臨界膜厚で制限
される。 歪MQW全体の厚さは、実効歪に対する臨界膜厚で制
限される。 上記2項目の内、については歪補償技術を適用するこ
とにより歪MQW全体の厚さに対する制限が回避される
ことは既に説明したとおりである。しかしながら、上記
の井戸層の歪に対する臨界膜厚を大きくすることにつ
いての検討は行われていない。したがって、井戸層の厚
さは臨界膜厚で制限されるため、長波長側への波長拡大
としては充分であるとは言えない。波長域の拡大のため
には、井戸層の臨界膜厚の増加が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術における歪多重量子井戸構造の改良をはかるも
のであって、井戸層の臨界膜厚を増加させることによ
り、歪多重量子井戸構造における波長域を拡大した歪多
重量子井戸構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的を達成
するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構
成とするものである。すなわち、本発明は請求項1に記
載のように、基板と異なる格子定数を有する井戸層と、
該井戸層よりも大きなバンドギャップを有する障壁層と
を交互に積層してなる歪多重量子井戸構造であって、上
記井戸層を規則混晶により構成した歪多重量子井戸構造
とするものである。また、本発明は請求項2に記載のよ
うに、請求項1において、井戸層はInGaAs規則混晶
により構成した歪多重量子井戸構造とするものである。
また、本発明は請求項3に記載のように、請求項1また
は請求項2において、井戸層はCuPt型規則混晶により
構成した歪多重量子井戸構造とするものである。また、
本発明は請求項4に記載のように、請求項1ないし請求
項3のいずれか1項において、井戸層は2μm帯の発光
波長を有する組成の規則混晶により構成した歪多重量子
井戸構造とするものである。また、本発明は請求項5に
記載のように、請求項1ないし請求項3のいずれか1項
において、井戸層は0.98μm帯の発光波長を有する
組成の規則混晶により構成した歪多重量子井戸構造とす
るものである。本発明の請求項1ないし請求項5のいず
れか1項に記載の歪多重量子井戸構造の井戸層に用いる
規則混晶は、同じ組成の不規則混晶よりも臨界膜厚が大
きいため、より大きな歪を持つ組成の井戸層からなる歪
多重量子井戸構造を実現できる。それは、規則混晶にお
いては、ミスフィット転位の形成に伴い積層不整が形成
されるため、不規則混晶と較べミスフィット転位形成エ
ネルギーが増加し、臨界膜厚が増加するためである。そ
の結果、井戸層として用いることができる組成範囲が広
がるため、歪多重量子井戸構造の波長域を拡大できる効
果がある。さらに、規則混晶は同じ組成の不規則混晶と
較べ、バンドギャップが狭くなるため、波長域が長波長
側に拡大する効果がある。
【0007】図1は、本発明の歪多重量子井戸構造の基
本構造を示す模式図である。半導体単結晶からなる基板
1の上に、井戸層3と障壁層4からなる歪多重量子井戸
構造2が構成されている。井戸層3と障壁層4は交互に
積層され、井戸層3にキャリアが閉じ込められる構造と
なっている。井戸層3が、規則混晶から構成されている
ところが従来の歪多重量子井戸構造とは異なる。従来の
歪多重量子井戸構造は、不規則混晶を用いていた。本発
明の歪多重量子井戸構造の井戸層3としてInGaAs
P、InGaAs、InGaP、GaAsP、InAsP、AlG
aAs、GaAsSb等の、III-V族半導体混晶におけるCu
Au型、Cu3Au型、CuPt型、ファマチナイト(famati
nite…Cu3SbS4)型等の規則混晶を用いることがで
きる。規則混晶は、X線回折または電子線回折の回折パ
ターンに各々の型に対応する特徴的な超格子回折スポッ
トが現われることにより容易に検知することができる。
規則混晶はCuAu型、Cu3Au型、CuPt型およびファ
マチナイト型に限られるものではなく、何らかの長距離
規則性があれば、同様の効果を持つ。本発明において
は、長距離規則性を持つものも含め規則混晶と言う。長
距離規則性の存在は、X線回折または電子線回折の回折
パターンに、超格子回折スポットが現われることにより
検知することができる。障壁層としては、井戸層よりも
バンドギャップの広い半導体であれば良く、基板として
は、GaAsやInPを用いることができる。ここで、In
GaAs三元混晶を例に挙げ規則混晶について説明する。
III-V族化合物半導体の結晶構造は、閃亜鉛鉱型であ
る。これは、III族元素とV族元素が各々面心立方構造
の副格子を形成し、III族副格子がV族副格子に対して
基本格子の対角線方向に、その長さの1/4だけ変位し
て組み合わされた構造である。例として挙げたInGaA
s三元混晶の場合には、InとGaがIII族副格子上で規則
的に配列している場合を規則混晶と言う。これに対し、
InとGaがIII族副格子上に不規則に配置されているも
のが不規則混晶である。規則配列の例を図2ないし図5
に示す。図2はCuPt型を、図3はCuAu型を、図4は
Cu3Au型を、図5はファマチナイト型を示す。図2
(a)は、CuPt型のInGaAs規則混晶のIII族副格子
を示し、図2(b)はCuPt型のInGaAs規則混晶の
結晶構造を[110]方向から見た図である。黒丸はI
n原子を、白丸の中に−を付けたものがGa原子、白丸は
As原子を表わす。図2(a)に示すように、III族副格
子においてはIn原子だけからなる(111)In面と、
Ga原子だけからなる(111)Ga面とが交互に[11
1]方向に積層されている構造である。V族副格子を含
めた結晶構造は、図2(b)に示すとおり、In原子だ
けからなる(111)In面と、As原子だけからなる
(111)As面と、Ga原子だけからなる(111)G
a面とが交互に[111]方向に積層された構造であ
る。図3(a)は、CuAu型のInGaAs規則混晶のIII
族副格子を示し、図3(b)は、CuAu型のInGaAs
規則混晶の結晶構造を[110]方向から見た図であ
る。黒丸がIn原子を、白丸の中に−を付けたものがGa
原子を、白丸がAs原子を表わす。III族副格子の頂点、
および上面と下面の面心の位置に、In原子が位置し、
4つの側面の面心の位置にGa原子が位置する構造であ
る。V族副格子も含めた結晶構造は図3(b)に示され
ている通り、In原子だけからなる(001)In面とA
s原子だけからなる(001)As面およびGa原子だけ
からなる(001)Ga面が交互に[001]方向に積
層された構造である。図4(a)は、Cu3Au型のInG
aAs規則混晶のIII族副格子を示し、 図4(b)は、
Cu3Au型のInGaAs規則混晶の結晶構造を[110]
方向から見た図である。 黒丸がIn原子を、白丸の中
に−を付けたものがGa原子を、白丸がAs原子を表わ
す。III族副格子の頂点にIn原子が位置し、面心にGa
原子が位置する構造である。図5(a)は、ファマチナ
イト型のInGaAs規則混晶のIII族副格子を示し、図5
(b)は、ファマチナイト型のInGaAs規則混晶の結
晶構造を[110]方向から見た図である。黒丸がIn
原子を、白丸の中に−を付けたものがGa原子を、白丸
がAs原子を表わす。規則混晶は特定の成分組成比のと
ころで形成され易い。例えば、InGaAs三元混晶にお
いてはIn0.5Ga0.5Asの組成においてCuPt型、CuA
u型が形成され易く、In0.25Ga0.75AsあるいはIn
0.75Ga0.25Asの組成においてはCu3Au型、ファマチ
ナイト型が形成され易い。しかしながら、上記の組成か
ら離れた組成であっても、図1から図5に示した規則性
と類似の長距離規則性を示すものも存在する。次に、長
距離規則性について、InGaAs三元混晶を例に挙げ説
明する。ここで、Gaの平均組成がxであるIn1-xGax
As組成を考える。図6に示すとおり、III族副格子にお
いて、(111)面上のGaが平均組成xよりも多い面
〔Gaリッチ(111)面〕と、(111)面上のGaが
平均組成xよりも少ない面〔Inリッチ(111)面〕
が[111]方向に交互に積層されているものとする。
V族副格子も含めた結晶構造は、Gaリッチ(111)
面と、As原子だけからなる(111)As面、およびI
nリッチ(111)面が交互に[111]方向に積層さ
れている構造である。このような長距離規則性を持つI
nGaAs三元混晶は、電子線回折あるいはX線回折にお
いて、上記図2で説明したCuPt型規則混晶の場合と同
じ超格子解折スポットを伴う回折パターンを示す。この
図6に示すような規則性のある混晶も、ここではCuPt
型規則混晶と言う。図2ないし図6に示した構造は、I
nGaP、AlGaAsにおいても同様である。また、GaA
sP、InAsP、GaAsSb等のV族原子が2種類の場合
は、III族副格子の代わりに、V族副格子上の規則配列
を考えればInGaAsの場合と同様である。InGaAsP
四元混晶の場合には、InとGaがIII族副格子上に不規
則に配列され、かつAsとPがV族副格子上に不規則に
配列されているものが不規則混晶である。III族元素ま
たはV族元素、もしくはその両方が各々の副格子上にお
いて規則的に配列されている場合は規則混晶となる。規
則混晶は同じ組成の不規則混晶に比べ、バンドギャップ
が狭くなる性質がある〔Appl.Phys.Lett.62(15),1
2 April 1993,pp.1806〜1808〕。したがって、規則混晶
の使用は長波長側への波長域の拡大に有効である。次
に、規則混晶の臨界膜厚について説明する。基板上に基
板の格子定数と異なる格子定数を持つ薄膜をエピタキシ
ャル成長した時の臨界膜厚は、マシアスとブレークスリ
ー(Matthews & Blakeslee)のモデルで説明され
る。同モデルでは、図7(a)に示すように、貫通転位
がエピ層(厚さd、歪ε)の応力を受けて滑り運動を起
こすことにより、界面に転位の折れ曲がりを作り、それ
がミスフィット転位となる。最初にミスフィット転位が
現われる膜厚を、臨界膜厚と言う。転位の滑り運動を起
こす力Fεが、転位の張力Fδを上回るときミスフィッ
ト転位が発生するから、その臨界条件Fε=Fδは、次
に示す(数2)式となる。
【0008】
【数2】
【0009】ここでは、簡単化のためエピ層と基板の弾
性定数は全て同じものとした。μ、νは、各々混晶の剛
性率とポワソン比であり、βはコアパラメータ、bはミ
スフィット転位のバーガースベクトルの大きさである。
ここでは、μ=2.23×1011dyn/cm2、ν=
0.3、β=4として計算した。λ、θおよびbは、幾
何学的な配置に関係した定数で、基板が(100)面で
あり、ミスフィット転位が60°(度)転位の場合、co
sλ=cosθ=0.5、b=4Åである。閃亜鉛鉱型結晶
構造におけるバーガースべクトルは、a<110>/2
である。ここでaは格子定数である。このバーガースベ
クトルを持つ転位が規則混晶の中を滑り運動した場合、
転位が掃いた面に積層不整が発生する。この様子を図8
に示す。この図は、InP(001)基板上に、InPよ
りも格子定数の大きなCuPt型のInGaAs規則混晶を
成長した場合を示した。 水平に引いた鎖線がInP基
板とInGaAs規則混晶との界面を表わす。図の中央付
近で鎖線が折れ曲がっているところにミスフィット転位
(┬)がある。このミスフィット転位は紙面に垂直な方
向に、界面に沿って伸びている。InPに比べ、InGa
Asの格子定数が大きいために、転位の滑り運動が起こ
り、点線の左側が右側に対して右斜め上の方向に結合が
1個ずつずれが生じた。すなわち、元々、a−a′、b
−b′、c−c′、d−d′、e−e′のように結合し
ていたものが、新たにb−a′、c−b′、d−c′、
e−d′f−e′結合が形成され、界面において未結合
ボンドaが発生した。b−a′、c−b′、d−c′、
e−d′f−e′結合は、積層不整以外の結合と異なる
結合を形成している。そのため、a−a′、b−b′、
c−c′、d−d′、e−e′の結合エネルギーと、b
−a′、c−b′、d−c′、e−d′f−e′の結合
エネルギーの差が、積層不整エネルギーとして蓄積され
ることになる。このエネルギー面密度をγとし、基板表
面と積層不整面の法線のなす角をφとすると、転位は、
γ=γd/cosφの抵抗力を受ける〔図7(b)参
照〕。したがって、臨界膜厚の条件式は、次の(数3)
式で表わされる。
【0010】
【数3】
【0011】したがって、転位を動かすためには、より
厚い膜厚が必要となり、臨界膜厚が増加することにな
る。図9は、InGaAs規則混晶の臨界膜厚を、積層不
整のエネルギー面密度γをパラメータにとって示したも
のである。計算は、上記の(数3)式を用いて行った。
横軸は、InGaAs混晶の歪であり、縦軸は、InGaAs
混晶の厚さを示す。図において、実線および破線が歪に
対する臨界膜厚の変化を示している。γ=0が不規則混
晶の場合である。γ=27erg/cm2、54erg/cm2
規則混晶の場合である。γの値は規則混晶の型により異
なるので、ここでは典型的なγの値に対して臨界膜厚を
算出した。すべての歪の範囲において、規則混晶の臨界
膜厚は不規則混晶の場合に比べ増加している。例えば、
格子不整が1.6%の場合、不規則混晶(γ=0)の臨
界膜厚は60Åであるが、規則混晶の場合には、臨界膜
厚が90Å(γ=27erg/cm2の時)、140Å(γ
=54erg/cm2の時)と増加している。次に、InGa
As三元混晶を例に挙げ、規則混晶を成長する手段につ
いて説明する。CuPt型規則混晶が成長するためには、
成長温度を、従来の不規則混晶を成長させる時よりも若
干低下させる〔Appl.Phys.Lett.62(15),12
April 1993,pp.1806〜1808〕。また、
CuAu型の場合には、GaAs層とInAs層とを1層ずつ
交互に成長すればよい。図1に示した本発明の歪多重量
子井戸構造を、レーザの活性層に応用する際には、基板
1とMQW2の間に光閉じ込め層を挿入したり、MQW
2の上に光閉じ込め層を積層したりすることができる。
また、ZnSSe等のII-VI族半導体の規則混晶において
も結晶構造が閃亜鉛鉱構造をとる限り本発明と同等の効
果が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
〈実施の形態1〉次に、本発明の歪多重量子井戸構造
を、2μm帯に発光波長を有する歪MQWに適用した場
合について説明する。井戸層は1.6%の圧縮歪を有す
るCuPt型のIn0.76Ga0.24As規則混晶(典型的な厚
さ120Å)からなり、障壁層は基板と格子整合したバ
ンド端波長が1.5μmで、200Å厚さのInGaAsP
からなる。井戸層の数は4層とした。基板は(001)
面方位を有するInPを用いた。この歪MQWの発光波
長は2.05μmであった。透過電子顕微鏡による観察
から、井戸層は設計どおりCuPt型規則混晶を形成して
いることを確認した。従来、この系においては、井戸層
の大きな歪のためミスフィット転位が入り易く、井戸層
の数を3層以上に増やすことができなかった。しかしな
がら、本発明においては、CuPt型のIn0.76Ga0.24
s規則混晶を井戸層に用いたため臨界膜厚が増加した。
このため、ミスフィット転位の発生を防ぐことができ、
井戸層の数を3層以上にすることが可能となった。ま
た、規則混晶は同じ組成の不規則混晶よりもバンドギャ
ップが狭くなるため、少ないIn組成で目的の2μm以
上の発光波長を得ることができた。
【0013】〈実施の形態2〉次に、本発明の歪多重量
子井戸構造を、0.98μm帯に発光波長を有する歪M
QWに適用した場合について説明する。基板として(0
01)面方位を有するGaAsを用い、井戸層としては厚
さ60Åで、1.7%の圧縮歪を有するCuPt型のIn
0.24Ga0.76As規則混晶を用い、障壁層としては50Å
厚さのGaAsを用いた。井戸層の数は4層とした。透過
電子顕微鏡による観察から、井戸層は設計どおりCuPt
型規則混晶が形成されていることを確認した。従来、こ
の系においては、井戸層の大きな歪と、比較的高い成長
温度のためにミスフィット転位が入り易く、井戸層の数
を3層以上に増やすことができなかった。しかしなが
ら、本発明においては、CuPt型のIn0.24Ga0.76As
規則混晶を井戸層に用いたため臨界膜厚が増加した。こ
のため、ミスフィット転位の発生を防ぐことができ、井
戸層の数を3層以上にすることが可能となった。また、
規則混晶は、同じ組成の不規則混晶よりもバンドギャッ
プが狭くなるため、少ないIn組成で目的の0.98μm
の発光波長を得ることができた。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば、井戸層の臨界膜厚を増
加させることができるので、歪多重量子井戸構造の波長
域を拡大できるという顕著な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の歪多重量子井戸構造の基本構造を示す
模式図。
【図2】本発明の歪多重量子井戸構造におけるCuPt型
規則混晶の一例を示す模式図。
【図3】本発明の歪多重量子井戸構造におけるCuAu型
規則混晶の一例を示す模式図。
【図4】本発明の歪多重量子井戸構造におけるCu3Au
型規則混晶の一例を示す模式図。
【図5】本発明の歪多重量子井戸構造におけるファマチ
ナイト(famatinite)型規則混晶の一例を示す模式図。
【図6】本発明の歪多重量子井戸構造における長距離規
則性を説明する模式図。
【図7】本発明の歪多重量子井戸構造におけるミスフィ
ット転位の形成機構を示す説明図。
【図8】本発明のCuPt型のInGaAs規則混晶におけ
るミスフィット転位と積層不整を示す模式図。
【図9】本発明のCuPt型のInGaAs規則混晶の臨界
膜厚の一例を示す図。
【符号の説明】
1…基板 2…歪多重量子井戸構造 3…井戸層 4…障壁層

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板と異なる格子定数を有する井戸層と、
    該井戸層よりも大きなバンドギャップを有する障壁層と
    を交互に積層してなる歪多重量子井戸構造であって、上
    記井戸層を規則混晶により構成してなることを特徴とす
    る歪多重量子井戸構造。
  2. 【請求項2】請求項1において、井戸層はInGaAs規
    則混晶により構成してなることを特徴とする歪多重量子
    井戸構造。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2において、井戸層
    はCuPt型規則混晶により構成してなることを特徴とす
    る歪多重量子井戸構造。
  4. 【請求項4】請求項1ないし請求項3のいずれか1項に
    おいて、井戸層は2μm帯の発光波長を有する組成の規
    則混晶により構成してなることを特徴とする歪多重量子
    井戸構造。
  5. 【請求項5】請求項1ないし請求項3のいずれか1項に
    おいて、井戸層は0.98μm帯の発光波長を有する組
    成の規則混晶により構成してなることを特徴とする歪多
    重量子井戸構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US8610105B2 (en) 2009-05-15 2013-12-17 Oclaro Japan, Inc. Semiconductor electroluminescent device with a multiple-quantum well layer formed therein

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