JPH10221514A - 位相型回折格子およびその製造方法 - Google Patents

位相型回折格子およびその製造方法

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JPH10221514A
JPH10221514A JP33312497A JP33312497A JPH10221514A JP H10221514 A JPH10221514 A JP H10221514A JP 33312497 A JP33312497 A JP 33312497A JP 33312497 A JP33312497 A JP 33312497A JP H10221514 A JPH10221514 A JP H10221514A
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trapezoidal
curve
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diffraction grating
phase
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JP33312497A
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English (en)
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Masuhiro Shoji
益宏 庄司
Yukio Ichikawa
幸男 市川
Hiroki Katono
浩樹 上遠野
Takeo Ogiwara
武男 荻原
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Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の台形形状の断面を有する位相格子の高
次回折光成分を低減化し、低空間周波数領域におけるM
TFの低下を少なくした位相型回折格子を提供する。 【解決手段】 格子面側に台形波断面形状を有する位相
型回折格子であって;該台形波の台形係数(B/A)が
0.006≦B/A<1(A:前記台形波に外接する
「完全な台形」と、該「完全な台形」に内接する「サイ
ンカーブ」との面積の差、B:該「完全な台形」と「台
形波」との面積の差)とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば光学的ロー
パスフィルタ(low-pass filter)として有用な位相型
回折格子、および該回折格子の製造法に関する。本発明
の回折格子は、ビデオカメラ、電子スチルカメラ、デジ
タルカメラ等の光学デバイスにおいて、CCD等の撮像
素子を用いて画像を離散的に得る際に生じるエリアシン
グ(波形歪み)を防止するための光学的ローパスフィル
タとして、特に好適に使用可能である。
【0002】
【従来の技術】−般に、離散的な(discrete)画素構成
をとるCCD撮像素子等の固体撮像素子を用いたテレビ
カメラ等の光学デバイスにおいては、画像情報を光学的
に空間サンプリングして出力画像を得ている。
【0003】この空間サンプリングにおいて、被写体に
サンプリング周波数を超える高空間周波数成分が含まれ
ている場合、被写体が本来有していない色合いや構造等
に対応する「偽信号」が発生する現象が知られている。
すなわち、撮像素子では採取できない高空間周波数成分
(ナイキスト(Nyquist)周波数を超える空間周波数成
分)は画像情報として再現することは出来ないため、エ
リアシングが発生し、このエリアシングが、撮影画像に
モアレ縞、偽色等を発生させる原因となる。
【0004】撮影画像のこのようなモアレ縞、偽色等の
発生を抑制するため、従来より、光学的ローパスフィル
タを撮像系(CCDの前)に配置して、被写体の高空間
周波数成分を制限することにより、画質の改善が行われ
て来た。該光学的ローパスフィルタとしては水晶の複屈
折を利用したものが多用されて来たが、水晶板を用いた
場合、装置コストが高くなる等の問題がある。
【0005】このため、透明なガラスまたはプラスチッ
ク板の上に、光の波長程度の深さの凹凸を有する位相型
回折格子を形成し、該回折格子の回折効果を利用して光
学的ローパスフィルタとして用いることが行われてお
り、その伝達特性(ModulationTransfer Function、M
TF)については、文献 APPLIED OPTICS Vol.11、N
o.11、p.2463−2472(1972);Journal
of the SMPTE Vol.81、p.282−285等に開示さ
れている。
【0006】位相格子を利用した光学的ローパスフィル
タのMTF伝達特性に関しては、低空間周波数領域にお
けるMTF値が画像の再現性の点から重要であり、該低
空間周波数領域におけるMTF値が大きい方が、再現さ
れた画像のコントラストに好影響を与えることが知られ
ている。
【0007】一方、位相格子の形状とMTF値との関係
では、これまでに、矩形波、三角波、台形波、正弦波等
の断面形状を有する位相格子の形状におけるMTFにつ
いて、報告がなされている(前述した文献:APPLIED OP
TICS Vol.11、No.11、p.2463−2472(1
972);Journal of the SMPTE Vol.81、p.282
−285を参照)。
【0008】上記した正弦波状の位相格子は、0次、±
1次回折光までの回折光しか射出せず、低域のMTFが
前述の種々の断面形状の中で最も大きなものである。し
かしながら、断面が正弦波状で深さが光の波長程度の溝
を一定の面積に均一に形成することは現実には極めて困
難であるため、実際上は矩形波または台形波の断面形状
における検討が行われていた。
【0009】しかしながら、これら矩形波、台形波の形
状では正弦波形状に比較して、高次光成分の回折が多
く、すなわち低空間周波数におけるMTF値の低下が大
きく、画像再現時のコントラストの低下が生じるため、
その改良が望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
の台形形状の断面を有する位相格子の高次回折光成分を
低減化し、低空間周波数領域におけるMTFの低下を少
なくした位相型回折格子を提供することにある。
【0011】本発明の他の目的は、簡便で且つ低コスト
化が可能な、上記位相型回折格子の製造法を提供するこ
とにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究の
結果、位相格子の台形波断面を構成する1単位周期の台
形状部分を「角とり」してなる特定の形状とすること
が、高次回折光の射出を減少させるのみならず、低空間
周波数領域におけるMTF値低下を減少させることを見
いだした。
【0013】本発明の位相型回折格子は上記知見に基づ
くものであり、より詳しくは、少なくとも格子面側に台
形波断面形状を有する位相型回折格子であって;該台形
波を構成する1単位周期の台形状部分A〜Jが、下記
(定義)に示す上辺部、下辺部、および2つの斜辺を構
成する4本の直線と、これらを結ぶ4本の曲線とからな
り、該上辺部、下辺部、および2つの斜辺を構成する直
線が、下記(条件1)を満足し、且つ、該直線同士を結
ぶ曲線が下記(条件2)を満足することを特徴とするも
のである。
【0014】(台形状部分の定義) 台形状部分:曲線AB、直線BC、曲線CD、直線D
E、曲線EF、直線FG、曲線GH、直線HI、および
曲線IJからなる、 台形状部分の高さ :d、 台形状部分の周期 :p、 高さd/2の直線と台形部分形状の交点k,l、mにお
ける台形状部分の1次微分係数を傾きとする直線:O
P,QR、ST、 台形波状波形の高さ0の点を結んだ直線:PT、 台形波状波形の高さdの点を結んだ直線:OS、 接線OP,QR,STならびに直線PQ,RSから構成
された台形波:P〜T、 上記台形波の上辺、下辺、2つの斜辺の直線PTへの射
影の長さ:それぞれu、v、w、およびx、台形波を構
成する1単位周期の台形状部分A〜Jの上辺部直線F
G、下辺部直線BC、2つの斜辺を構成する直線DE、
およびHIの直線PTへの射影の長さをそれぞれ:
u′,v′,w′,x′。
【0015】(条件1) 0≦u′/u<0.90 0≦v′/v<0.90 0≦w′/w<0.90 0≦x′/x<0.90 (但し、u+v+w+x=p) (条件2)曲線ABは下に凸な曲線の一部をなす、曲線
CDは下に凸な曲線の一部をなす、曲線EFは上に凸な
曲線の一部をなす、曲線GHは上に凸な曲線の一部をな
す、曲線IJは上に凸な曲線の一部をなす。
【0016】本発明によれば、更に、少なくとも格子面
側に台形波断面形状を有する位相型回折格子であって;
該台形波の台形係数(B/A)が0.006≦B/A<
1(A:前記台形波に外接する「完全な台形」と、該
「完全な台形」に内接する「サインカーブ」との面積の
差、B:該「完全な台形」と「台形波」との面積の差)
であることを特徴とする位相型回折格子が提供される。
【0017】本発明によれば、更に、円形断面を有する
線状部材が複数平行に配置されてなるマスキング部材で
あって、基板の格子パターン堆積面上に配置されたマス
キング部材を用い;該マスキング部材側から前記基板表
面への気相堆積(vacuum vapor deposition)により、
台形波状の格子パターンを前記基板上に堆積させること
を特徴とする位相型回折格子の製造方法が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、必要に応じて図面を参照し
つつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載におい
て量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り
質量基準とする。
【0019】(位相格子の断面形状)本発明の位相格子
の断面形状の説明に先立ち、まず従来の位相格子の断面
形状について述べる。従来の位相格子の断面形状の例
を、図1の模式断面図に示す。この図1は、ピッチがp
の台形状の位相格子の断面を、深さ方向を拡大して示し
ている。
【0020】図1を参照して、台形波の1周期を構成す
るに際し、辺OP、PQ、QR、RS、およびSTは直
線であり、辺OPとPQ、辺PQとQR、辺QRとR
S、および辺RSとSTは、それぞれ鋭角または鈍角を
なしている。
【0021】図2は、本発明の台形波位相格子(ピッチ
がp)の断面形状を示す模式断面図である。この図2の
断面形状は、上記した図1の台形状(従来のもの)と比
較して、該台形の4カ所の角部が、それぞれ曲線で構成
されている。
【0022】上記した図1と図2とを重ねて得られる図
3の模式断面図を用いて、上記の断面形状を更に詳細に
説明する。
【0023】図3を参照して、上述した図1に示す台形
と、図2に示す台形波は、同一のピッチpを有してお
り、図2に示す台形波は、図1の台形波の角を曲線状に
した形状を有している。
【0024】より詳細には、断面形状が台形波状である
位相格子において、該台形波形を構成する1単位周期の
台形波形状部分A〜Jが上辺部、下辺部、2つの斜辺、
を構成する4本の直線と、これらを結ぶ4本の曲線とか
らなり、かつ該上辺部、下辺部、および2つの斜辺を構
成する直線が下記(条件1)を満足し、かつ該直線同士
を結ぶ曲線が下記(条件2)を満足する台形状部分とな
っていることを特徴とする。
【0025】<台形状部分の定義> 台形状部分:曲線AB、直線BC、曲線CD、直線D
E、曲線EF、直線FG、曲線GH、直線HI、および
曲線IJからなる、 台形状部分の高さ :d、 台形状部分の周期 :p、 高さd/2の直線と台形部分形状の交点k,l、mにお
ける台形状部分の1次微分係数を傾きとする直線:O
P,QR、ST、 台形波状波形の高さ0の点を結んだ直線:PT、 台形波状波形の高さdの点を結んだ直線:OS、 接線OP,QR,STならびに直線PQ,RSから構成
された台形波:P〜T、上記台形波の上辺、下辺、2つ
の斜辺の直線PTへの射影の長さ:それぞれu、v、
w、およびx、台形波を構成する1単位周期の台形状部
分A〜Jの上辺部直線FG、下辺部直線BC、2つの斜
辺を構成する直線DE、およびHIの直線PTへの射影
の長さをそれぞれ:u′,v′,w′,x′。
【0026】<条件1> 0≦u′/u<0.90 0≦v′/v<0.90 0≦w′/w<0.90 0≦x′/x<0.90 (但し、u+v+w+x=p) <条件2>曲線ABは下に凸な曲線の一部をなす、曲線
CDは下に凸な曲線の一部をなす、曲線EFは上に凸な
曲線の一部をなす、曲線GHは上に凸な曲線の一部をな
す、曲線IJは上に凸な曲線の一部をなす。
【0027】上記(条件1)においては、下記の条件が
満たされることが、MTF特性改善の点から更に好まし
い。
【0028】0≦u′/u≦0.80 0≦v′/v≦0.80 0≦w′/w≦0.80 0≦x′/x≦0.80 上記(条件1)においては、下記の条件が満たされるこ
とが、特に好ましい。
【0029】0≦u′/u≦0.60 0≦v′/v≦0.60 0≦w′/w≦0.60 0≦x′/x≦0.60 である。
【0030】(台形係数)本発明において、上記した位
相格子の特定の断面形状(台形波)は、「台形係数」で
定義することも可能である。ここに「台形係数」とは、
図4に示すような前記台形波に外接する「完全な台形」
と、該「完全な台形」に内接する「サインカーブ」との
面積の差Aと、図5に示すような上記「完全な台形」
と、本発明の「台形波状」との面積の差Bとの比(B/
A)で定義される。
【0031】本発明において、上記「台形係数」(B/
A)は、0.006≦B/A<1であることが好まし
く、更には0.02≦B/A<1、更に好ましくは0.
1≦B/A<1(特に0.15≦B/A<1)であるこ
とが好ましい。
【0032】本発明において、位相格子の表面に形成す
るパターンを上記のような特定の形状とすることによ
り、従来用いられてきた矩形又は台形パターン(図1)
を有する位相型回折格子のMTFと比較して、低域にお
けるMTF値の落ち込みを少なくすることが可能とな
る。
【0033】加えて、本発明の特定の台形波形状を表面
に形成した位相格子を、(CCD等を用いた)撮像系に
適用することにより、従来の矩形または台形パターン
(図1)を表面に形成した位相格子と比較して、コント
ラストの良い画像を得ることが可能となる。
【0034】(回折格子)図6は、本発明の位相型回折
格子の実際の態様の一例を示す模式断面図である。図6
を参照して、この態様における回折格子は、透明な基板
1(ガラス、プラスチック等からなる)と、該基板1上
に配置された台形波の断面形状を有する格子パターン2
(SiO2、ガラス等の複合酸化物、等からなる)とか
ら構成される。上記した基板1と格子パターン2とは、
同一の材料から構成されていてもよく、また必要に応じ
て、異なる材料から構成されていてもよい。格子パター
ン2を簡便な方法で形成可能な点からは、該格子パター
ン2の材料は、気相堆積法により堆積可能な材料(例え
ば、SiO2、ガラス等の複合酸化物、TiO2等)であ
ることが好ましい。一方、再現性よくレプリカを作製容
易な点からは、基板1の材料は重合によりポリマーを形
成させる際の熱に耐える耐熱性の材料(例えば、ガラ
ス、金属、プラスチック等の有機物、等)であることが
好ましい。
【0035】上記した本発明の回折格子は、上記した所
定の台形波の断面形状を有する限り、その製造方法は特
に制限されない。例えば、機械的刻線法、2光束干渉
法、エッチング法、気相堆積法等の方法が特に制限なく
使用可能である(このような回折格子の製造法の詳細に
ついては、例えば、小瀬輝次ら編「光工学ハンドブッ
ク」第527〜531頁(1968年)朝倉書店を参照
することができる)。
【0036】(第1の製造法)次に、上記した特定の台
形波パターン(図2)を表面に形成してなる本発明の位
相型回折格子の好適な製造法について述べる。
【0037】図7の模式断面図を参照して、上記回折格
子の第1の製造法においては、気相堆積法を用いて基板
1の表面に膜状の格子パターン2を形成する際に、断面
が円形状の線材3をマスキング部材として用いる。この
ように断面が円形状の線材3をマクキング部材として用
いることにより、図7に示すように、気相堆積vacuumva
por deposition(ないし蒸着)時、にマスキング部材の
影となる部分に対しても気相堆積膜の回り込みが生じ、
本発明の台形波パターン(図2)を再現性良く形成する
ことが可能となる。
【0038】使用できる線材3の直径(L)は、格子の
ピッチ寸法(P)より小さいものである限り、必要とさ
れる台形波パターン2の形状(上下の対称性の程度)に
応じて、適宜選択可能である。目的とするMTF特性の
必要に応じ、上記した線材3の直径(L)と格子のピッ
チ寸法(P)との比(L/P)は、0.01〜0.95
程度、更には0.1〜0.9程度であることが好まし
い。
【0039】線材3の材質は、線材として加工可能なも
のであれば使用可能であり、例えば、通常の金属(単体
又は合金)、セラミック、炭素繊維、プラスチック等の
材料が使用可能である。格子ピッチ、格子形状の再現性
の点からは、気相堆積時に脱ガスが小さく、熱膨張によ
る変形の少ない材料(例えば、チタン、ステンレス等の
金属材料、セラミック、等)を線材3として用いること
が好ましい。
【0040】回折格子の製造に適用可能な気相堆積法と
しては、真空蒸着法(vacuum evaporation、例えば、抵
抗加熱型または電子ビーム型の真空蒸着)、イオンビー
ム気相堆積法、DC(直流)またはRF(高周波)スパ
ッタリング法、CVD(化学的気相堆積)等の基板面に
薄膜を形成する手段として通常用いられる各種の方法が
特に制限なく使用可能である。該気相堆積時には、必要
に応じて、基板を加熱してもよい。
【0041】上記した台形波パターン2をその上に形成
べき基板1として本製造法に使用可能な材料は、光線を
透過することが可能である限り、特に制限されない。ガ
ラス、プラスチック、無機結晶等、気相堆積用の基板と
して使用可能なものであれば、通常は本製造法に使用可
能である。該基板1を選択する際に、必要に応じて、紫
外、可視、赤外線波長の特定の波長を吸収および/又は
反射する色フィルタ作用を具備する基板1を使用するこ
とも可能である。
【0042】(第2の製造法)第2の製造法は、上記し
た台形波パターン1がガラス板2上に形成されているも
のを母型として用いて、注型重合法により回折格子(レ
プリカ)を得るものである。
【0043】本製造法で用いる台形波パターン2がガラ
ス板1上に形成されてなる基板(母型)としては、上述
した第1の製造法により得たものを使用することができ
る。この台形波パターン2を有するガラス板1を、注型
重合の際の母型として用いることにより、容易にかつ低
コストで、本発明の台形波パターンを合成樹脂製レプリ
カ品の表面に転写させることができる。
【0044】このような注型重合の際に使用可能な重合
性官能基を有する単量体としては、単官能単量体とし
て、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アク
リレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチ
ル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレ
ート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソ
デシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)ア
クリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ス
テアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(isobor
nyl)(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)
アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、
フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が、必要に応
じて2種以上組み合わせて使用可能である。
【0045】上記した単量体に加えて、必要に応じて、
重合官能基を複数有する多官能単量体を用いても良い。
このような多官能単量体としては、エチレンングリコー
ル誘導体のジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ
メタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペ
ンタエリスリトール(メタ)アクリレート誘導体、各種
ウレタンアクリレート、エポキシエステルの(メタ)ア
クリレート等が、必要に応じて2種以上組み合わせて使
用可能である。
【0046】回折格子として必要な物性、例えば屈折
率、熱変形温度、加熱時の着色性、剛性率等の要求特性
に対応して、これらの単量体を適宜混合した混合単量体
として使用しても良い。
【0047】重合法としては、例えば、図8の模式断面
図に示すように、本発明になる台形波パターンを表面に
形成した母型11を、その形成面側を内側にした状態
で、片面又は両面に所定の間隔をあけて、他の表面研磨
母型12をセットし、これらの母型の周辺を液漏れしな
いようにシール13した後、重合開始剤(例えば、過酸
化物)を上記の単量体14中に適当量添加混合したもの
を母型間の空隙に注入する。該単量体の注入完了後に、
加熱(例えば、オーブン中で加熱)する等の手段によ
り、母型中の単量体を重合・固化させればよい。
【0048】本発明の回折格子にあっては、フィルタの
片面または両面に位相格子が形成されていてもよい。位
相格子がフィルタの両面に形成されている場合、フィル
タの一方の面側に形成した位相格子でCCD素子の水平
方向のナイキスト空間周波数に対応したカットオフ特性
を有するMTF特性を持たせ、且つ、フィルタの他方の
面側に形成した位相格子でCCD素子の垂直方向のナイ
キスト空間周波数に対応したカットオフ特性を有するM
TF特性を持たせることができる。
【0049】本発明の位相格子は、通常はストライプ状
(線状)であるため、フィルタの両面に位相格子が形成
されている場合、CCDの水平方向、垂直方向に効率よ
く光学的ローパスフィルタ機能を発揮させる点からは、
両面の線状位相格子の格子線が互いになす角度を、80
〜100°、更には85〜95°(特に88〜92°)
とすることが好ましい。この角度が80°未満または1
00°を越える場合には、CCDに対する光学的ローパ
スフィルタとしての機能が低下する傾向がある。
【0050】本発明の回折格子を形成するための材料
は、ガラス、透明プラスチック等の波長選択性のない材
料が使用可能である。回折格子を形成する材料自体に近
赤外線吸収性を付与し、CCD素子等の感度を補正(視
感度補正)する機能を具備させる点からは、該材料は、
下記式(1)(化1)で表されるリン酸基含有単量体、
及びこれと共重合可能な単量体からなる単量体組成物を
共重合して得られる共重合体と、2価の銅イオンを主成
分とする金属イオン成分を含有してなるものであること
が好ましい。
【0051】
【化2】 (2価の銅イオン含有ポリマーの製法)透明性基体が2
価の銅イオン含有ポリマーからなる場合、銅イオンの分
散性の点からは、上記リン酸基含有単量体(1)および
共重合性単量体からなる単量体混合物から得られる共重
合体中に、銅イオンを主成分とする金属イオンが含有さ
れてなることが好ましい。
【0052】上記リン酸基含有単量体(1)は、後述す
る銅イオンと結合可能なリン酸基を分子構造中に有して
いる。このようなリン酸基を介して銅イオンを保持して
なる共重合体は、近赤外領域に特徴ある光吸収特性を示
すものとなる。
【0053】上記したリン酸基含有単量体の分子構造中
において、エチレンオキサイド基を介して、ラジカル重
合性の官能基たるアクリロイルオキシ基またはメタクリ
ロイルオキシ基が結合されているため、該リン酸基含有
単量体は極めて共重合性にとみ、種々の単量体との共重
合を行うことが可能となる。
【0054】更に、この単量体分子中にはリン酸基が結
合しており、このリン酸基が銅イオンと結合するため、
可視光域の透過率が高く、かつ近赤外領域の波長光を効
率よく吸収する重合体となる。
【0055】上記式(1)において、Rは繰り返し数が
mであるエチレンオキサイド基が結合したアクリル基
(X=水素原子)またはメタクリル基(X=メチル)で
ある。上記R中のmは1〜5 の整数を示す。mが5を
越えると、得られる共重合体の硬度が低下する傾向があ
り、回折格子としての実用性を低下させる可能性が生ず
る。
【0056】又、水酸基の数nは、回折格子の成型方法
や、該格子の使用目的・用途等に応じて、1または2の
いずれかの値を採ることができる。nの値が2の場合、
上記のリン酸基含有単量体(1)は、銅イオン等のイオ
ン性金属成分との結合性が大きく、ラジカル重合性の官
能基の数が1個の単量体となる。一方、nの値が1の場
合、上記のリン酸基含有単量体(1)は、ラジカル重合
性の官能基の数が2個で、架橋重合性を有する単量体と
なる。
【0057】従って、本発明の回折格子を構成する回折
格子基体を、熱可塑性樹脂の一般的な成形加工法である
射出成形或いは押出成形により製造する場合において
は、nが2であるリン酸基含有単量体(1)を用いるこ
とが好ましい。しかしながら、本発明において採用可能
な成形法はこれらに限定されない。
【0058】このように、本発明においては、光学回折
格子の性能や成形法或いは使用目的に応じてnの値を選
択することができるが、銅イオンの単量体への溶解性の
点からは、n=1であるリン酸基含有単量体(1)と、
n=2であるリン酸基含有単量体(1)とを併用するこ
とが好ましい。この併用の場合、n=1の単量体(1)
とn=2の単量体(1)とをモル比で1:5 〜5:1
(更には、3:5〜5:3)となる割合で用いる場合に
は、当該混合単量体に対して、銅イオンを主体とする金
属イオンの供給源である金属化合物の溶解性が高まるの
で好ましい。
【0059】特に、これら2種類のリン酸基含有単量体
を、それぞれがほぼ等量となる割合(例えば、モル比で
(n=1)/(n=2)=4/6〜6/4の割合、更に
は4.5/5.5〜5.5/4.5の割合)で用いるこ
とが好ましい。
【0060】本発明の回折格子の主要部を構成する重合
体としては、リン酸基含有単量体(1)と、これと共重
合可能な単量体とを含む共重合体が好適に用いられる。
このような共重合体は、リン酸基含有単量体(1)の単
独重合体(ホモポリマー)に比べて、吸湿量が低減し、
柔軟性が向上し、しかも形状保持性に優れた成形物を容
易に与えることができる。
【0061】このような共重合性単量体は、(1)リン
酸基含有単量体(1)と均一に溶解混合し、(2)リン
酸基含有単量体(1)とのラジカル共重合性が良好であ
り、且つ(3)光学的に透明な共重合体を与える限り、
特に限定されない。
【0062】しては、例えば、メチルアクリレート、メ
チルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタ
クリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−
ヒドロキシエチルメタクリレート、n−プロピルアクリ
レート、n−プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ
プロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタク
リレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタク
リレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタク
リレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒ
ドロキシブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレ
ート、n−ヘキシルメタクリレート、n−ヘプチルアク
リレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−オクチル
アクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチ
ルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリ
レート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリ
レート、2−ヒドロキシー3−フエノキシプロピルアク
リレート、2−ヒドロキシー3−フエノキシプロピルメ
タクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアク
リレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリ
レート、メトキシポリエチレングリコールアクリレー
ト、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、
3−クロロー2−ヒドロキシプロピルアクリレート.3
−クロロー2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の
単官能アクリレートやメタクリレート(以下、単官能
(メタ)アクリレートともいう。)類。
【0063】エチレングリコールジアクリレート、エチ
レングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコー
ルジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレ
−ト、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエ
チレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレング
リコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジ
メタクリレート、1、3−ブチレングリコールジアクリ
レート、1、3−ブチレングリコールジメタクリレー
ト、1、4−ブタンジオールジアクリレート、1、4−
ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジ
オールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメ
タクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレー
ト、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒ
ドロキシー1,3−ジメタクリロキシプロバン、2,2
−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プ
ロパン、2−ヒドロキシー1−アクリロキシー3−メタ
クリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタ
クリレート、トリメチロールプロパントリアクリレー
ト、ペンタエリトリツトトリアクリレート、ペンタエリ
トリツトトリメタクリレート、ペンタエリトリットテト
ラアクリレート、ペンタエリトリットテトラメタクリレ
ート等の多官能アクリレートあるいはメタクリレート
類。
【0064】アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリ
ロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキ
シエチルフタル酸等のカルポン酸、スチレン、α−メチ
ルスチレン、クロルスチレン、ジブロムスチレン、メト
キシスチレン、ジビニルベゼン、ビニル安息香酸、ヒド
ロキシメチルスチレン、トリビニルベンゼン等の芳香族
ビニル化合物を挙げことができる。これらの単量体は単
独で、或いは必要に応じて2種以上組み合わせて用いる
ことができる。
【0065】本発明において、上記リン酸基含有単量体
(1)が共重合体用の単量体混合物100 質量部に占
める割合は、3〜60質量部(更には、5〜50質量
部)であることが好ましい。この割合が3質量部未満で
は、所定の光吸収特性が低下する傾向がある。一方、該
割合が60質量部を越える、柔軟で吸湿性の大きな成形
物が生成する傾向がある。
【0066】本発明の回折格子の主要部に用いられる共
重合体は、通常、リン酸基含有単量体(1)と、これと
共重合可能な上記単量体とをラジカル重合することによ
って得ることができる。この際、後述する「イオン性金
属成分」は、その供給源となる金属化合物を単量体混合
物に溶解・混合させてラジカル重合を行うことも可能で
ある。ラジカル重合方法は特に限定されず、例えば、通
常のラジカル重合開始剤を用いた塊状(キヤスト)重
合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の公知の方法が使
用可能である。
【0067】本発明の回折格子用基体を構成するポリマ
ーが銅イオンを主成分とする金属イオンとを含有してな
るポリマーからなる態様においては、該金属イオンは、
前記共重合体中に含有されたリン酸基との相互作用に基
づき近赤外領域の波長光を効率よく吸収する作用を発揮
する。この金属イオンは2価の銅イオンを主体とし、他
の金属イオンが少量含まれていても差し支えない。ここ
に、「銅イオンを主成分とする」とは、前記ポリマー中
の全ての金属イオンに対して、銅イオンが占める割合が
50(質量)%以上であることを意味する。銅イオンの
割合が50%未満である場合には、得られる回折格子の
近赤外領域の波長光の吸収効率が低下する傾向がある。
近赤外領域の吸収効率の点からは、銅イオンの割合は7
0%以上(更には80%以上)であることが好ましい。
【0068】この銅イオンを主体とする金属イオンは、
本発明の共重合体100質量部当たり0.1〜20質量
部(更には、0.5〜15質量部)で用いることが好ま
しい。この金属イオン量が0.1質量部未満では、近赤
外領域の波長光吸収の効率が低下する。一方、該金属イ
オン量が20質量部を越えると、共重合体中に均−に分
散させることの困難性が増す。
【0069】本発明における銅イオンは、種々の銅化合
物から供給することが可能である。該銅化合物の具体例
としては、例えば、酢酸銅、塩化銅、ギ酸銅、ステアリ
ン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸
銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅等の無水物や水和物を挙
げることができるが、これらに限定されるものではな
い。
【0070】また、本発明において全金属イオン量の2
0質量%未満の範囲内で、ナトリウム、カリウム、カル
シウム、鉄、マンガン、コバルト、マグネシウム、ニツ
ケル、亜鉛等の「他の金属イオン」を、必要に応じて用
いることができる。
【0071】銅イオンを主体とする金属イオンを、本発
明の回折格子を構成する重合体(ないし共重合体)中に
含有させる方法は特に限定はされないが、製造の容易性
の点からは、重合体を与えるべき単量体組成物ないし混
合物中に、上記した金属イオンないし銅化合物を溶解し
て、ラジカル重合を行う方法が好適に使用可能である。
【0072】この方法によって前記金属イオンを含有さ
せ、当該金属イオン、リン酸基含有単量体(1)および
共重合性単量体からなる単量体混合物を調製し、この単
量体混合物をラジカル重合させる。この方法により得ら
れた共重合体中には、銅イオンを主体とする金属イオン
が含有されているため、該重合体そのままで、或いは目
的とする形状(例えば板状)に成形および/又は研磨し
て、本発明の回折格子に用いることができる。
【0073】以下、実施例により本発明を更に具体的に
説明する。
【0074】
【実施例】
実施例1 (格子付ガラス製母型の製造)図7を参照して、線径
0.21mmのチタン線3を0.43mmのピッチで等
間隔に200本張ったマスク部材上に、表面が光学研磨
され、かつ化学強化処理(400℃の硝酸カリウム融液
中で、16時間浸漬処理)を施されたホウケイ酸ガラス
板(直径81mm、厚さ5mm)からなる基板1を乗
せ、該ガラス板1がマスク部材のチタン線3から浮かな
いように一定の荷重(ガラス面に対し垂直の方向に約5
00gの荷重)をかけた状態で、ガラス板をセットした
(このような線材の配置方法の詳細については、例え
ば、平成8年3月26日の出願、特願平8−69740
号を参照することができる)。
【0075】次いで、上記のようにマスク部材3にガラ
ス板1をセットした状態で、真空蒸着装置に装着して、
マスク部材のチタン線3側から電子ビーム加熱法により
SiO2を真空蒸着(vacuum evaporation)させた(蒸
着速度:100オングストローム/分、蒸着時間:42
分)。該真空蒸着中は、ガラス基板1の温度が300度
になるように加熱した。真空蒸着終了後の試料(SiO
2/ガラス基板)は、肉眼観察では透明であった。
【0076】ガラス基板表面に形成された位相型フィル
タの形状を、市販の触針式膜厚計(スローン社製、商品
名:デクタック)により測定した結果を図9のグラフに
示す。図9に示したように、フィルタの断面形状は台形
波の肩部を滑らかにした形状を有し、格子深さが420
nm、ピッチが0.43mmであることが確認された。
【0077】更に、図9に示したフィルタの断面形状
は、下記の(条件1)および(条件2)を共に満足して
いた。
【0078】(条件1) u′/u=0.5 v′/v=0.5 w′/w=0.5 x′/x=0.5 但し、u+v+w+x=0.43mm (条件2)曲線ABは下に凸な曲線の一部をなす 曲線CDは下に凸な曲線の一部をなす 曲線EFは上に凸な曲線の一部をなす 曲線GHは上に凸な曲線の一部をなす 曲線IJは上に凸な曲線の一部をなす 実施例2 (ガラス製母型を用いた透明プラスチック製光学的ロー
パスフィルタの製造)図8を参照して、直径81mm、
厚さ5mmのガラス板の片面を光学研磨して、平板モー
ルドとした。得られた平板モールドの上記した光学研磨
面と、実施例1で得た格子付モールドの位相格子形成面
とを対向させ、厚さ1mmのキャビティを形成した後、
上記した平板モールドと、格子付ガラス製母型とからな
る母型の端部を、PET(ポリエチレンテレフタレー
ト)ベースの粘着剤付きシールテープを用いてシールし
た。
【0079】上記キャビティ内に、下記の組成を有する
アクリル系熱硬化型の単量体混合物を注入し、所定温度
(50℃)のオーブン中に入れて20時間重合反応を行
った。
【0080】 (単量体混合物の組成) 1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート 10質量部 メチルメタクリレート 89質量部 α−メチルスチレン 1質量部 t−ブチルパーオキシピバレート 0.5質量部 (重合開始剤)上記の重合終了後、得られた重合生成物
から、両面の母型(平板モールド、格子付モールド)の
離型を行い、片面に格子が転写印刻された厚さ1mmの
透明なプラスチック製位相格子を得た。製造された位相
格子の屈折率を、市販の屈折率測定装置(カルニュー社
製、商品名:カルニュー屈折計)を用いて測定したとこ
ろ、該屈折率は波長546nmにおいて、1.497で
あった。
【0081】得られたプラスチック製位相格子の断面形
状を実施例1と同様の方法で測定したところ、実施例1
とほぼ同様の形状(格子深さが415nm、ピッチが
0.425mm)であり、前記した(条件1)および
(条件2)を何れも満足した台形波(肩部を滑らかにし
た形状)を有していた。上記の断面形状に基づいて前述
した台形係数(B/A)を求めたところ、該台形係数は
0.165であった。
【0082】更に、市販のMTF測定器(イメージサイ
エンス社製、商品名:OPALMTF測定器を用いて波
長550mでMTFを測定したところ、空間周波数10
本/mmにおける値は、96.5%であった。
【0083】実施例3 (燐酸エステル及び銅イオン含有プラスチック製光学的
ローパスフィルタの製造)実施例2と同様の方法で、直
径81mm、厚さ5mmのガラス板の片面を光学研磨し
て、平板モールドとした。得られた平板モールドの上記
した光学研磨面と、実施例1で得た格子付モールドの位
相格子形成面とを対向させ、厚さ1mmのキャビティを
形成した後、上記した平板モールドと、格子付ガラス製
母型とからなる母型の端部を、PETベースの粘着剤付
きシールテープを用いてシールした(図8)。
【0084】別に、下記の単量体の各成分を混合し、こ
れに無水安息香酸銅32部(銅イオン量は全単量体10
0部に対して6.6部)を添加した後、80℃で撹拌混
合して充分に溶解させ、上記の無水安息香酸銅が混合単
量体中に溶解してなる単量体組成物を得た。
【0085】 (単量体成分) 下記式(2)(化2、一般式(1)においてX=CH3、m=2、n=1)の リン酸基含有単量体 32部 下記式(3)(化3、一般式(1)においてX=CH3、m=1、n=2)の リン酸基含有単量体 13部 メチルメタクリレート 34部 ジエチレングリコールジメタクリレート 20部 αーメチルスチレン 1部
【化3】
【化4】 上記により調製した単量体組成物に、重合開始剤として
tーブチルパーオキシ(2ーエチルヘキサノエート)2
部を添加して、銅イオン含有単量体組成物を得た。
【0086】前記したガラス製母型のキャビティ内に、
上記により調製した銅イオン含有単量体組成物を注入
し、45℃で16時間、60℃で28時間、更に90℃
で3時間と順次異なる温度で重合反応を行い、銅イオン
が含有された架橋重合体を得た。得られた架橋重合体の
屈折率を実施例2と同様の方法で測定したところ、波長
546nmで1.517であった。
【0087】得られた銅イオン含有プラスチック製レプ
リカの位相格子形成面の形状を、触針式膜厚計を用いて
実施例1と同様の方法で測定したところ、実施例1で例
示したのとほぼ同様な形状(格子のピッチが0.424
mm、格子深さが416nm)を有しており、(条件
1)および(条件2)を共に満足する台形波(肩部を滑
らかにした形状)であった。台形係数(B/A)は、
0.165であった。
【0088】さらに、実施例2と同様の方法で波長55
0nmにおけるMTFを測定したところ、空間周波数1
0本/mmで96.5%であった。
【0089】比較例 (台形格子のシミュレーション)図1に示すような台形
格子の製造は実際には困難であったため、図1に示すよ
うな台形格子(格子高さ=416nm、ピッチ=0.4
24mm)の台形格子のMTFを、シミュレーションに
より求めた。シミュレーション時の光波長は550nm
で、用いた屈折率は1.517であった。
【0090】上記シミュレーションの結果、空間周波数
10本/mmにおけるMTF値は96.0%との結果が
得られた。
【0091】(シミュレーション条件)シミュレーショ
ン時の主なパラメータ:形状は等脚台形で、上下対称。
前述の文献( APPLIED OPTICS Vol.11、No.11、p.
2463−2472(1972);Journal of the SMP
TE Vol.81、p.282−285)に従い、格子の自己
相関関数を求めることにより、計算した。
【0092】実施例4 以下、実施例1ないし実施例3と同様な方法を用いて、
格子ピッチならびに格子高さが実施例3で作製した台形
波格子と同一で、且つu′/u、v′/v、w′/w、
およびx′/xの実施例1とは異なる値を有するレプリ
カ試料を作成し、空間周波数10本/mmにおけるMT
F値を測定したところ、以下の結果が得られた。
【0093】 u'/u、v'/v、w'/w、x'/x値 台形係数 10本/mmにおけるMTF (1) 0.90 0.0066 96.2% (2) 0.83 0.02 96.3% (3) 0.37 0.2 96.7% (4) 0.05 0.46 97.2% 実施例5 (両面格子の作製) (格子A):実施例1と同様な方法を用いて、格子ピッ
チが0.40mm、格子高さが420nmの格子をガラ
ス基板表面に形成した。
【0094】u′/u、v′/v、w′/w、および
x′/x=0.75 台形係数=0.08 (格子B): 更に、実施例1と同様な方法を用いて、
格子ピッチが0.24mm、格子高さが430nmの格
子をガラス基板表面に形成した。
【0095】u′/u、v′/v、w′/w、および
x′/x=0.75 台形係数=0.08 上記のガラス基板に形成された格子は、線状格子であっ
た。
【0096】次いで、上記により格子Aおよび格子Bの
格子が形成された面を互いに(ガラス基板間に形成され
るべき)キャビティの内側に向け、且つ、それぞれの線
状格子がなす角度が89°となるように、上記格子Aが
形成されたガラス基板と、記格子Bが形成されたガラス
基板との間で、実施例2と同様の方法でキャビティ(厚
さ1mm)を形成した。
【0097】次に、実施例3の方法に準拠して重合を行
ったところ、得られたフィルタの両面に位相格子が形成
され、その線状格子のなす角度が89°である光学的ロ
ーパスフィルタを得た。得られた光学的ローパスフィル
タの両側の表面に形成された格子形状を実施例1と同様
の方法で測定したところ、型として使用したガラス板の
表面形状と同一であることが確認された。
【0098】更に、実施例2と同様の方法により波長5
50nmにおけるMTFを測定した。該測定に際し、格
子ピッチ0.4mmの位相格子の格子線を、MTF装置
の水平方向に対して垂直となるようにセット(装着)し
て評価した。
【0099】上記評価の結果、作製された位相格子は、
水平方向および垂直方向のMTFでカットオフ特性を有
し、且つ、低空間周波数領域でのMTFが、それぞれ、
96.5%および96.6%と大きい値を示した。
【0100】更に、上記フィルタを1/4インチ27万
画素CCDのCCDカメラの撮像系部分に、CCD素子
の前方(被写体側)約2mmの位置に装着して画像(解
像度チャートの画像)による評価を行ったところ、水
平、垂直両方向のモアレが除去された鮮明且つ良好な画
像が得られた。
【0101】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、少なく
とも格子面側に台形波断面形状を有する位相型回折格子
であって;該台形波を構成する1単位周期の台形状部分
A〜Jが、下記(定義)に示す上辺部、下辺部、および
2つの斜辺を構成する4本の直線と、これらを結ぶ4本
の曲線とからなり、該上辺部、下辺部、および2つの斜
辺を構成する直線が、下記(条件1)を満足し、且つ、
該直線同士を結ぶ曲線が下記(条件2)を満足すること
を特徴とする位相型回折格子が提供される。
【0102】(台形状部分の定義) 台形状部分:曲線AB、直線BC、曲線CD、直線D
E、曲線EF、直線FG、曲線GH、直線HI、および
曲線IJからなる、 台形状部分の高さ :d、 台形状部分の周期 :p、 高さd/2の直線と台形部分形状の交点k,l、mにお
ける台形状部分の1次微分係数を傾きとする直線:O
P,QR、ST、 台形波状波形の高さ0の点を結んだ直線:PT、 台形波状波形の高さdの点を結んだ直線:OS、 接線OP,QR,STならびに直線PQ,RSから構成
された台形波:P〜T、 上記台形波の上辺、下辺、2つの斜辺の直線PTへの射
影の長さ:それぞれu、v、w、およびx、 台形波を構成する1単位周期の台形状部分A〜Jの上辺
部直線FG、下辺部直線BC、2つの斜辺を構成する直
線DE、およびHIの直線PTへの射影の長さをそれぞ
れ:u′,v′,w′,x′。
【0103】(条件1) 0≦u′/u<0.90 0≦v′/v<0.90 0≦w′/w<0.90 0≦x′/x<0.90 (但し、u+v+w+x=p) (条件2)曲線ABは下に凸な曲線の一部をなす、曲線
CDは下に凸な曲線の一部をなす、曲線EFは上に凸な
曲線の一部をなす、曲線GHは上に凸な曲線の一部をな
す、曲線IJは上に凸な曲線の一部をなす。
【0104】更に、本発明によれば、少なくとも格子面
側に台形波断面形状を有する位相型回折格子であって;
該台形波の台形係数(B/A)が0.006≦B/A<
1(A:前記台形波に外接する「完全な台形」と、該
「完全な台形」に内接する「サインカーブ」との面積の
差、B:該「完全な台形」と「台形波」との面積の差)
であることを特徴とする位相型回折格子が提供される。
【0105】本発明によれば、更に、円形断面を有する
線状部材が複数平行に配置されてなるマスキング部材で
あって、基板の格子パターン堆積面上に配置されたマス
キング部材を用い;該マスキング部材側から前記基板表
面への気相堆積(vacuum vapor deposition)により、
台形波状の格子パターンを前記基板上に堆積させること
を特徴とする位相型回折格子の製造方法が提供される。
【0106】上記構成を有する本発明の位相型回折格子
を用いた場合、従来の台形形状の断面を有する位相格子
の高次回折光成分の低減化、および低空間周波数領域に
おけるMTF低下の抑制が可能となる。したがって、本
発明の位相型回折格子は、ビデオカメラ、電子スチルカ
メラ、デジタルカメラ等の光学デバイスにおいてCCD
等の撮像素子を用いて、画像を離散的に得る際に生じる
波形歪み(エリアシング)を防止するための光学的ロー
パスフィルタとして、特に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の台形形状の断面を有する位相型回折格子
の断面形状を示す模式断面図である。
【図2】台形波パターン(滑らかな肩部を有する)の断
面を有する本発明の位相型回折格子の断面形状を示す模
式断面図である。
【図3】上記図1と図2とを重ねた状態を示す模式断面
図である。
【図4】「完全な台形」と、サインカーブとの面積の差
Aを説明するための模式断面図である。
【図5】「完全な台形」と、本発明の台形波パターン
(滑らかな肩部を有する)との面積の差Bを説明するた
めの模式断面図である。
【図6】本発明の位相型回折格子の一態様を示す模式断
面図である。
【図7】本発明の位相型回折格子の製造方法(母型の作
製法)の一例を説明するための模式断面図である。
【図8】本発明の位相型回折格子の製造方法(母型から
のレプリカの作製法)の一例を説明するための模式断面
図である。
【図9】実施例で得られた本発明の位相型回折格子の実
際の断面測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…基板、2…格子パターン、3…マスキング線材。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 荻原 武男 福島県いわき市錦町落合16 呉羽化学工業 株式会社錦工場内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも格子面側に台形波断面形状を
    有する位相型回折格子であって;該台形波を構成する1
    単位周期の台形状部分A〜Jが、下記(定義)に示す上
    辺部、下辺部、および2つの斜辺を構成する4本の直線
    と、これらを結ぶ4本の曲線とからなり、該上辺部、下
    辺部、および2つの斜辺を構成する直線が、下記(条件
    1)を満足し、且つ、該直線同士を結ぶ曲線が下記(条
    件2)を満足することを特徴とする位相型回折格子。 (台形状部分の定義) 台形状部分:曲線AB、直線BC、曲線CD、直線D
    E、曲線EF、直線FG、曲線GH、直線HI、および
    曲線IJからなる、 台形状部分の高さ :d、 台形状部分の周期 :p、 高さd/2の直線と台形部分形状の交点k,l、mにお
    ける台形状部分の1次微分係数を傾きとする直線:O
    P,QR、ST、 台形波状波形の高さ0の点を結んだ直線:PT、 台形波状波形の高さdの点を結んだ直線:OS、 接線OP,QR,STならびに直線PQ,RSから構成
    された台形波:P〜T、 上記台形波の上辺、下辺、2つの斜辺の直線PTへの射
    影の長さ:それぞれu、v、w、およびx、 台形波を構成する1単位周期の台形状部分A〜Jの上辺
    部直線FG、下辺部直線BC、2つの斜辺を構成する直
    線DE、およびHIの直線PTへの射影の長さをそれぞ
    れ:u′,v′,w′,x′。 (条件1) 0≦u′/u<0.90 0≦v′/v<0.90 0≦w′/w<0.90 0≦x′/x<0.90 (但し、u+v+w+x=p) (条件2)曲線ABは下に凸な曲線の一部をなす、 曲線CDは下に凸な曲線の一部をなす、 曲線EFは上に凸な曲線の一部をなす、 曲線GHは上に凸な曲線の一部をなす、 曲線IJは上に凸な曲線の一部をなす。
  2. 【請求項2】 少なくとも格子面側に台形波断面形状を
    有する位相型回折格子であって;該台形波の台形係数
    (B/A)が0.006≦B/A<1(A:前記台形波
    に外接する「完全な台形」と、該「完全な台形」に内接
    する「サインカーブ」との面積の差、B:該「完全な台
    形」と「台形波」との面積の差)であることを特徴とす
    る位相型回折格子。
  3. 【請求項3】フィルタ基材の両面側に前記台形波断面形
    状の格子を有し、且つ、該フィルタ基材の一方の面側の
    前記格子と、他方の面側の前記格子とが80〜100°
    の角度をなしている請求項1または2記載の位相型回折
    格子。
  4. 【請求項4】 下記式(1)で示されるリン酸基含有単
    量体からなる重合体と、銅イオンとを少なくとも一部に
    含む請求項1ないし3のいずれかに記載の位相型回折格
    子。 【化1】
  5. 【請求項5】 円形断面を有する線状部材が複数平行に
    配置されてなるマスキング部材であって、基板の格子パ
    ターン堆積面上に配置されたマスキング部材を用い;該
    マスキング部材側から前記基板表面への気相堆積(vacu
    um vapor deposition)により、台形波状の格子パター
    ンを前記基板上に堆積させることを特徴とする位相型回
    折格子の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記基板としてガラス板を用い、該ガラ
    ス板上に前記台形波状の格子パターンを堆積させてなる
    ものを母型として用いて、注型重合法により該母型の複
    製(レプリカ)を得る請求項4記載の位相型回折格子の
    製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000231011A (ja) * 1999-02-09 2000-08-22 Sharp Corp 光学素子およびその製造に用いるスタンパ
JP2003195050A (ja) * 2001-12-27 2003-07-09 Kureha Chem Ind Co Ltd 光学異方性重合体成形体の製造方法

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