JPH10220561A - 樹脂歯車対 - Google Patents

樹脂歯車対

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JPH10220561A
JPH10220561A JP3717197A JP3717197A JPH10220561A JP H10220561 A JPH10220561 A JP H10220561A JP 3717197 A JP3717197 A JP 3717197A JP 3717197 A JP3717197 A JP 3717197A JP H10220561 A JPH10220561 A JP H10220561A
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meshing
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JP3717197A
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Takanori Ueda
隆憲 植田
Yoshinori Ohachi
義典 大鉢
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Polyplastics Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、樹脂歯車に必要とされる様
々な機械的特性を満たした上で、より一層の樹脂歯車の
摩耗の低減を図る方法により、摩擦を低減する樹脂歯車
対を提供することにある。また、かかる摩耗低減方法の
効果をより効果的に実現させる設計により、摩耗を低減
した樹脂歯車対を得ることである。 【解決手段】 すなわち本発明は、互いに噛み合う一対
のインボリュート歯車あるいはインボリュート近似歯車
の近寄り噛合い率を遠のき噛合い率より大きくするとと
もに、噛み合う歯車の接触部におけるすべり速度を標準
歯車を噛み合わせたときのすべり速度より小さくして、
噛み合う両方の歯の摩耗を低減させた樹脂歯車対を提供
するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂歯車対に関
し、特に家電、事務機、精密機械などの機械産業の様々
な分野に利用する樹脂歯車、これらの分野における各種
制約条件のもとでの運転時における歯車の歯面の摩耗を
低減させた樹脂歯車または樹脂歯車成形品の樹脂歯車対
に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従
来、歯車は長い歴史を持つ重要な機械要素であるが、近
年樹脂製歯車(以下単に樹脂歯車という)が家電、事務
機、自動車、精密機械の分野で頻繁に用いられている。
金属に代り樹脂が使用されるようになった理由として
は、軽量であること、錆びないこと、運転騒音が小さい
こと、自己潤滑性があることという理由が挙げられる。
また、低コストで大量生産に適していることなどが理由
として考えられる。樹脂の中でも特に歯車に適した素材
として、ポリオキシメチレン樹脂(ポリアセタール樹
脂)、ポリアミド樹脂(ナイロン12、ナイロン6、ナ
イロン66等)、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が
知られている。
【0003】歯車の素材に要求される性能として、従来
から高強度、低摩耗、低騒音が挙げられている。特に低
摩耗化に関しては、材料面で摩擦摩耗特性を改善する方
向での検討が多い。しかしながら、樹脂歯車に要求され
る耐摩耗性のレベルは、年々厳しくなっているのが現状
であり、より一層の耐摩耗性向上が望まれている。ま
た、これらの家電、事務機、自動車、精密機械等の分野
では、製造コスト上の問題や、周囲の電装、制御系部
品、ユニットを汚染しない様にする目的から、グリース
やその他のオイル等による潤滑をすることなく歯車を駆
動することが強く求められている。これらの無潤滑とい
う過酷な条件下での樹脂歯車の低摩耗化の方法として
は、前述のように潤滑性を付与した材料を使用すること
により効果があるとされている。たとえば、日本機械学
会論文集C編59巻568号P.3874(1993)
では、ポリアセタールに潤滑剤としてポリオレフィンと
合成油を添加した材料で射出成形した歯車の耐摩耗性
が、添加していない元のポリアセタールを用いたものよ
りも向上するとしている。
【0004】一方、成形加工Vol.5、No.11、
P.821(1993)によれば、潤滑性を付与したポ
リアセタール樹脂歯車が、潤滑性を付与していないポリ
アセタール樹脂歯車よりも摩耗が多い場合がある、と開
示されている。すなわち、歯車の摩耗に関しては、潤滑
性を付与しても、材料によっては潤滑性を付与されてい
ない材料よりも耐摩耗性が悪化する場合があるというこ
とが報告されていることになる。これらのように樹脂材
料に潤滑性を付与することによる摩擦摩耗特性の改善
は、一方で樹脂の持つ優れた機械的特性及びそれらのバ
ランスを崩す、という問題点がある。
【0005】例えば、摩擦摩耗特性の改善は、材料面か
らは、自己潤滑性のある材料を採用するような手法をと
ることが多いので、各種機械的強度の低下を招きやす
い、という問題点がある。プラスチック成形材料データ
BOOK、’89/'90,P61〜62に記載されて
いるデータ表から、標準的なポリアセタールコポリマー
樹脂に対して潤滑性付与剤は約8割程度まで強度が低下
していることがわかる。従って、結果的に歯車としての
疲労強度の低下を回避できないという問題点があり、少
なくとも疲労強度が元の潤滑性を付与しない材料よりも
向上しないことは、間違いない。
【0006】さらに、歯車の荷重、速度条件を形状的に
改善する例としては、例えば日本設計製図学会講演論文
集No.80-1、P.115ではポリアセタール樹脂歯
車と鋼歯車の組合わせにおいて、鋼歯車の歯形の一部を
標準より歯厚を薄くする方向で修正すると、鋼歯車の歯
先の荷重分布を低減でき、ポリアセタール歯車の歯元の
摩耗が改善されるとしている。しかしながら、この例は
硬さ、強度の異なる鋼と樹脂の組合わせの例であり、樹
脂同士の組合わせの場合には、必ずしも同じ結果が得ら
れるとは考えられず、汎用化できる手法とは言い難いと
いう問題点がある。
【0007】さらに、歯車対の歯のすべり速度に関して
解説している例は殆どなく、歯車の摩耗との相関に至っ
ては皆無である。わずかに、歯車便覧(歯車便覧編集委
員会編 日刊工業新聞社 昭和45年 第3版発行P.
172)によれば、噛み合う一対の歯車の摩耗の制御、
正確には一対の歯車が均等に摩耗するように、すべり率
を調整する計算上での例が記載されている。しかしなが
ら、特に明記されていないが、計算が潤滑された金属歯
車を前提としたもので、無潤滑下で複雑な摩耗挙動を示
す樹脂歯車同士の場合はこの限りではない。さらには、
目的が噛み合う一対の歯車の摩耗を均等にすることにあ
り、一方の歯車の摩耗が減少した場合、もう一方の歯車
の摩耗が増加してしまうという問題点がある。
【0008】以上のことから、本発明の第一の課題は、
樹脂歯車に必要とされる様々な機械的特性を満たした上
で、より一層の樹脂歯車の摩耗の低減を図る方法によ
り、摩耗を低減する樹脂歯車対を提供することにある。
また、本発明の第二の課題は、かかる摩耗低減方法の効
果をより効果的に実現させる設計により、摩耗を低減し
た樹脂歯車対を得ることを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、樹脂歯車
の要求特性を満足させつつ樹脂歯車の歯の摩耗を低減さ
せるべく、鋭意研究を重ねた結果、噛み合う一対の歯車
対の噛み合い領域でのすべり速度と噛み合い率を適正に
制御するように樹脂歯車の形状面、配置面でバランスを
持たせることにより、さらには、特定の材料、すなわち
特定の樹脂歯車素材を用いることにより、前記問題点を
解決し、優れた耐摩耗性を有する歯車を得ることができ
ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち本発明の樹脂歯車対は、互いに噛
み合う一対のインボリュート歯車あるいはインボリュー
ト近似歯車の近寄り噛合い率を遠のき噛合い率より大き
くする(すなわち、下式(1)を満たすもの)ととも
に、噛み合う歯車の接触部におけるすべり速度を、標準
歯車を噛み合わせたときのすべり速度より小さくして、
噛み合う両方の歯の摩耗を低減させるものである。ま
た、本発明の樹脂歯車対は、互いに噛み合う一対の歯車
の噛み合い領域でのすべり速度と噛み合い長さの積を、
標準歯車をバックラッシ無しで噛み合わせたときのすべ
り速度と噛み合い長さの積の5%以上で90%以下とす
るよう、下式(2)を構成する歯車諸元からなるもので
ある。
【0011】
【数2】
【0012】また、本発明の樹脂歯車対は、互いに噛み
合う一対の歯車が、歯車素材として曲げ弾性率500〜
15,000MPaであるポリアセタール樹脂またはポ
リブチレンテレフタレート樹脂を主体とした樹脂組成物
からなるものである。
【0013】また、本発明の樹脂歯車対は、互いに噛み
合う一対の歯車が、樹脂の成形品からなるものである。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明における本質的なところ
は、互いに噛み合う一対の樹脂歯車の歯の摩耗を低減す
る方法において、すべり速度と噛み合い率を適正に制御
するように歯車の形状面、配置面で最適なバランスを持
たせ、さらに、特定の歯車素材を用いて、優れた耐摩耗
性を有する歯車を実用化する技術および設計方法を見い
出し、歯の摩耗を大幅に低減した樹脂歯車対を得たこと
である。
【0015】具体的には、下式(3)および(4)で算
出される変数εV1および変数εV2をそれぞれ近寄り噛合
い率および遠のき噛合い率と定義し、下式(1)を満足
させ、かつ、下式(2)を満足させる様に全噛み合い率
を設定することである。下式(1)は、本発明におけ
る、互いに噛み合う一対の歯車の近寄り噛合い率を遠の
き噛合い率より大きくする、ことを数式で示したもので
あり、また、下式(2)は、本発明における、互いに噛
み合う一対の歯車の噛み合い領域でのすべり速度と噛み
合い長さの積を、標準歯車をバックラッシ無しで噛み合
わせたときのすべり速度と噛み合い長さの積の5%以上
で90%以下とする、ことを数式で示したものである。
下式(2)の噛み合い率の調整には歯車の諸元を調整す
る。すなわち、式(2)は、式(3)、(4)および式
(5)から導かれ、式(3)、(4)は、式(6)、
(7)から導かれ、式(6)、(7)は、式(8)、
(9)から導かれる。以下、この点につき図により詳細
に説明する。
【0016】
【数3】
【0017】まず、すべり速度と噛み合い率について述
べる。図1はある歯車対が噛み合い始めてから終わるま
でのすべり速度(cm/s)の変化およびヘルツ面圧
(N/mm2)の変化と、噛み合い長さ(mm)の関係
を示している。図1に示すように、すべり速度は噛み合
い始めで大きく、噛み合いが進行してピッチ点に向かう
ほど遅くなる。ピッチ点では転がり接触なのですべり速
度はゼロとなる。さらに噛み合いが進行してピッチ点を
過ぎて噛み合い終りに向かうほどすべりは再び速くな
る。この際、すべり速度が負となるのは、単にすべる方
向を区別するための定義上の問題である。図1で、ヘル
ツ面圧の変化を見ると、ピッチ点を中心に、その前後で
最大値を取り、噛み合い始めと終わりの面圧は小さいこ
とがわかる。ここで、本発明の意図するところは、ヘル
ツ面圧が小さく、かつすべり速度が大きい噛み合い始め
と終わりの摺動条件を改善させることである。すべり速
度が大きく、ヘルツ面圧が小さい領域は、噛み合い率で
規定できる。
【0018】図2はある歯車対の噛み合い率とすべり速
度を示している。図2ーa)は、歯aと歯bが噛み合い
始める瞬間である。このときすでに歯a、歯bの先行の
歯a’と歯b’が噛み合っており、2対の歯が同時に噛
み合っている。さらに、噛み合いが進行すると、図2ー
b)に示すように、先行歯a’と歯b’は噛み合いが終
了し、歯aと歯bのみの一対の歯が噛み合う。図2ー
c)ではピッチ点で噛み合っている瞬間である。さらに
噛み合いが進行すると、図2ーe)に示すように、歯
a、歯b各々の後続の歯a'’、歯b'’が噛み合いに参
加するために、2対噛み合いとなる。すなわち、ある歯
が噛み合い始めてから終わるまでには、その前後の歯を
含めて、2対噛み合い→1対噛み合い→2対噛み合いを
繰り返す。
【0019】本発明者らは、この噛み合い始めと終わり
の2対噛み合い領域におけるすべり速度が歯車の摩耗に
大きく影響することを見いだし、本発明に至った。すな
わち、この噛み合い始めと終わりの2対噛み合い領域の
すべり速度を低減することにより歯車の低摩耗化が達成
できる。
【0020】このような噛み合い始めと終わりのすべり
速度を低減させるためには、図3に示すように、すべり
速度の傾きを穏やかにする方法や、噛み合い長さを小さ
くする方法などが考えられるが、いずれの方法であって
も低摩耗化が達成できる。従って、本発明におけるすべ
り速度を低く抑える方法としては、この方法にこだわる
ものではない。
【0021】ただし、近寄り噛合い率が遠のき噛合い率
よりも小さいときでも、歯車対全体としては低摩耗化が
達成できるが、この場合には、歯車対の内、小歯車の摩
耗が改善されにくくなり、歯車対としての機能を果たさ
なくなる。実質上、歯車対としての摩耗限度は改善され
ない可能性がある。すなわち、歯車対の歯車の摩耗を実
用上、両方とも改善するには、近寄り噛み合い率εv1
遠のき噛合い率εv2より大きくする、下式(1)を満足
させる必要がある。上記のことより、本発明における、
互いに噛み合う一対の歯車の近寄り噛合い率を遠のき噛
合い率より大きくするとともに、噛み合う歯車の接触部
におけるすべり速度を、標準歯車を噛み合わせたときの
すべり速度より小さくすることにより、噛み合う両方の
歯の摩耗を低減できることになる。また、上述のすべり
速度の低減は下式(2)で定量化できる。
【0022】
【数4】
【0023】本発明による低摩耗化の効果を得るには、
噛み合い領域におけるすべり速度と噛み合い長さの積S
Dである上式(2)の(εD−1)2・tn 2・(ωD1+ω
D2)が、標準歯車をバックラッシ無しで噛み合わせたと
きのすべり速度と噛み合い長さの積SOである(εo
1)2・tn 2・(ωo1+ωo2)の5%以上90%以下
(すなわち、SD/SO=0.05以上、0.9以下)と
するのが望ましいく、好ましくは10%以上、80%以
下であり、さらに好ましくは15%以上、70%以下で
ある。ここに、5%以上、90%以下としたのは、5%
未満では低摩耗化の効果が得られないばかりか、噛み合
い率が異常に低下するために、騒音、振動の増大、疲労
強度の著しい低下といっつた弊害が発生するからであ
り、また、90%を超えて大きくしても著しい低摩耗化
の効果は得られないからである。
【0024】ここで、噛み合い率εDおよびεOは、式
(3)〜式(5)により計算され、式(3)〜式(5)
は式(6)、(7)および式(8)、(9)によって導
かれる。すなわち、噛み合い率を調整することは、モジ
ュールm,工具圧力角αc、歯数Z1、Z2、転位係数χ1
χ2、バックラッシの軸間方向距離Cr、歯先円直径、さ
らには歯タケなどを調整することになる。したがって、
前述の図3のすべり速度を低減させうる歯車対は、式
(1)および(2)を満足させるよう、歯車の諸元を決
定し、製造することにより、得ることができる。
【0025】このような形状の歯車に対し低摩耗化を達
成できる最適バランスの歯車素材としては、具体的に
は、曲げ弾性率500〜15,000MPa、好ましく
は750〜10,000MPa、さらに好ましくは1,
000〜3,500MPaを有するポリアセタール樹脂
もしくはポリブチレンテレフタレート樹脂を主体とする
樹脂組成物が特に好ましく使用できるが、さらに、ポリ
フェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポ
リマーなども本発明で好適に使用できる素材の例であ
る。
【0026】歯車素材樹脂としてのポリアセタールは、
ホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよく、コ
ポリマーの場合は主鎖の安定化のためにエチレンオキサ
イド、ジオキソラン等の単量体成分をランダムに共重合
されたもの、あるいはブロックあるいはグラフト重合さ
れたもの、あるいは更に第三成分が導入されたものな
ど、どの様な共重合形態であってもかまわない。 ま
た、潤滑性付与剤を添加するなどにより摺動特性を改善
したポリアセタールは、本発明の効果をより一層発現す
ることの出来る歯車素材の一つとして好ましく使用出来
る。また、ポリブチレンテレフタレートの場合には、通
常のポリブチレンテレフタレート樹脂の他に、第三成分
あるいは第四成分としてイソフタル酸、ナフタレンジカ
ルボン酸、アジピン酸等の脂肪族及び芳香族多塩基酸あ
るいは、グリコール成分としてエチレングリコール、ジ
エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の通常
のアルキレングリコールやビスフェノールA等の芳香族
アルコール等で変性させて得られる共重合体であっても
かまわない。また、潤滑性付与剤を添加するなどして摺
動特性を改善したポリブチレンテレフタレートは、本発
明の効果をより一層発現する歯車素材の一つとして好適
に使用出来る。
【0027】次に弾性率について説明する。曲げ弾性率
が500MPaより低い場合、歯の剛性が低く、動力伝
達能力は著しく低下するという不都合がある。一方、曲
げ弾性率が15,000MPaを超えて大きくなって
も、事実上、ガラス繊維などの強化材を多量に添加する
ため、表面粗度の悪化に起因して摩耗が増大してしまう
不都合がある。したがって、本発明による低摩耗化を達
成できる材料としては、曲げ弾性率が500〜15,0
00MPaのポリアセタール樹脂もしくはポリブチレン
テレフタレート樹脂を主体とした樹脂組成物が特に好ま
しく使用できるのである。
【0028】歯車の形状としては、インボリュート歯形
であることが望ましいが、実際には成形収縮や金型の精
度等の成形上の問題、切削などの加工上の問題で正確に
インボリュート曲線を描いている必要はない。インボリ
ュートあるいはそれに近似したインボリュート近似の歯
形であればよく、実際の市場ではこのような製品が多
い。同様に、一対の歯車を組み付ける際の軸間距離の設
定も、工作誤差あるいは成形品の場合は収縮や金型の精
度など成形上の問題によって、必ずしも設計通りの寸法
となっている必要はないが、常識的な精度の範囲であれ
ば、本発明の効果は十分に得られる。
【0029】以上説明したような歯車の形状、配置、素
材を選択することにより、本発明の歯車摩耗の低減に大
幅な効果を得ることができる。また、従来からある摩耗
低減対策を施した上で、さらに上記本発明の歯車の形
状、配置、素材を選択することにより、より一層の摩耗
低減の効果が得られるものである。さらに、該歯車成形
品には歯車に要求されるその他の特性、例えば強度やそ
の他設計上の制約を満たすことの出来る自由度がある。
【0030】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて、具体的に
説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例および比較例を表1に示すが、表1に示す実施例
1〜5および比較例1,2は、下記の試験方法および表
1に記載の試作歯車を、下記の歯車素材を用い、下記の
作製方法により成形したものである。実施例1および2
は通常のバックラッシ(通常は5m%ぐらいまで、mは
モジュールである)をとり、かつすべり速度と噛み合い
長さの積SDを、標準歯車をバックラッシ無しで噛み合
わせたときのすべり速度と噛み合い長さの積SOの5%
以上で、90%以下と、小さくしたものであり、図3の
小破線に相当する場合である。また、実施例3〜5はバ
ックラッシを15〜25m%と大きくとり、噛み合い長
さを小さくするとともに、すべり速度を小さくしたもの
であり、図3の太破線に相当するものである。そして、
これらの試作歯車を下記の試験機を用い、下記および表
1の試験条件により試験を実施し、評価方法により評価
を行った。評価結果を表1に示す。
【0031】(試験方法) (1)試作歯車: モジュール1、工具圧力角20°、
インボリュート歯車 (2)試験機: 動力吸収式歯車試験機 (3)試験条件: ピッチ円周速度120cm/s、単
位歯幅当り接線荷重0.098N/mm、運転回数50
0万回、無潤滑、室温雰囲気 (4)評価方法: 試験前後の歯車を秤量し、摩耗量を
算出した。 (5)歯車素材および作製方法: ポリプラスチックス
(株)製 ポリアセタール樹脂(商品名:ジュラコンM
90−44,曲げ弾性率2580MPa)を用い、ポリ
アセタールコポリマーとして一般的な成形条件で歯車を
射出成形した。
【0032】
【表1】
【0033】次に、評価結果につき説明する。実施例1
〜5と比較例2との比較から、すべり速度を改善するこ
とで噛み合う歯車対の駆動歯車および被動歯車の両方の
歯車の摩耗が低減されていることがわかる。また、すべ
り速度を改善するのであれば、その方法は、前述のすべ
り速度の傾きを小さくする方法でもよいし、噛み合い長
さを小さくする方法でも、何れの方法であってもよいこ
とが解る。また、比較例1と比較例2とを見ると、下式
(1)および下式(2)を満たす条件の何れか一方が欠
けても本発明は成り立たないことが解る。すなわち、比
較例1は式(1)を満足しておらず、比較例2は式
(2)を満足していない。したがって、本発明の効果
は、下式(1)(2)の何れが欠けても十分な効果を発
揮することはできない。
【0034】すなわち、本発明の効果は、下式(1)お
よび(2)(すべり速度を標準歯車のすべり速度より低
減させること)がともに満たされるとき、樹脂歯車の摩
耗を大幅に低減させる効果を得ることができるのであ
る。また、実施例1〜5の試作歯車は所定の弾性率を有
する樹脂歯車素材を用いることが、摩耗の低減効果を得
る上で好ましいことが分る。
【0035】
【数5】
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
樹脂歯車に必要とされる様々な機械的特性を満たした上
で、より一層の樹脂歯車の摩耗の低減を図る方法によ
り、摩耗を低減する樹脂歯車対を得ることができ、ま
た、かかる摩耗低減方法の効果をより効果的に実現させ
る設計により、摩耗を低減した樹脂歯車対を得ることが
できる。また、樹脂歯車素材を所定の弾性率を有する樹
脂とすることにより、歯車のより効果的な摩耗低減を得
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるすべり速度、ヘルツ面圧と噛み
合い長さの関係を示す図である。
【図2】本発明に係わるすべり速度、噛み合い率と噛み
合い長さの関係を示す図である。
【図3】本発明に係わるすべり速度の改善方法を示す図
である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに噛み合う一対のインボリュート歯
    車あるいはインボリュート近似歯車の近寄り噛合い率を
    遠のき噛合い率より大きくするとともに、噛み合う歯車
    の接触部におけるすべり速度を、標準歯車を噛み合わせ
    たときのすべり速度より小さくして、噛み合う両方の歯
    の摩耗を低減させることを特徴とする樹脂歯車対。
  2. 【請求項2】 互いに噛み合う一対の歯車の噛み合い領
    域でのすべり速度と噛み合い長さの積を、標準歯車をバ
    ックラッシ無しで噛み合わせたときのすべり速度と噛み
    合い長さの積の5%以上で90%以下とするよう、下式
    (2)を構成する歯車諸元からなることを特徴とする請
    求項1記載の樹脂歯車対。 【数1】
  3. 【請求項3】 互いに噛み合う一対の歯車は、歯車素材
    として曲げ弾性率500〜15,000MPaであるポ
    リアセタール樹脂またはポリブチレンテレフタレート樹
    脂を主体とした樹脂組成物からなることを特徴とする請
    求項1または2記載の樹脂歯車対。
  4. 【請求項4】 互いに噛み合う一対の歯車は、歯車素材
    を成形してなる成形品からなることを特徴とする請求項
    1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂歯車対。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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