JPH10110805A - 摩耗低減樹脂歯車対 - Google Patents

摩耗低減樹脂歯車対

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JPH10110805A
JPH10110805A JP28308396A JP28308396A JPH10110805A JP H10110805 A JPH10110805 A JP H10110805A JP 28308396 A JP28308396 A JP 28308396A JP 28308396 A JP28308396 A JP 28308396A JP H10110805 A JPH10110805 A JP H10110805A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 噛み合う一対の樹脂歯車の両方の歯の摩耗が
低減された歯車対を提供する。 【解決手段】 互いに噛み合う一対のインボリュート歯
車あるいはインボリュート近似歯車の内、歯数の少ない
方の歯数が30枚以下であり、噛み合い圧力角が工具圧
力角の103%を越え180%以内であるように配置さ
れた噛み合う一対の樹脂歯車を備えたことを特徴とする
摩耗低減樹脂歯車対。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、家電、事務機、精
密機械などの機械産業の様々な分野に利用する歯車に関
し、特にこれらの分野における各種制約条件のもとでの
運転時、歯面の摩耗を低減させる摩耗低減樹脂歯車対に
関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】歯車は長い歴史を持つ重要
な機械要素であるが、近年樹脂製歯車(「樹脂歯車」と
もいう。)が家電、事務機、自動車、精密機械の分野で
頻繁に用いられている。金属に代り樹脂が使用されるよ
うになった理由としては、軽量であること、錆びないこ
と、運転騒音が小さいこと、自己潤滑性があることとい
う理由が挙げられる。また、低コストで大量生産に適し
ていることなどが理由として考えられる。樹脂の中でも
特に歯車に適した素材として、ポリオキシメチレン樹脂
(ポリアセタール樹脂)、ポリアミド樹脂(ナイロン1
2、ナイロン6、ナイロン66等)、ポリブチレンテレ
フタレート樹脂等が知られている。
【0003】歯車の素材に要求される性能として、従来
から高強度、低摩耗、低騒音が挙げられている。特に低
摩耗化に関しては、材料面で摩擦摩耗特性を改善する方
向での検討が多い。しかしながら、樹脂製歯車に要求さ
れる耐摩耗性のレベルは、実用上、年々厳しくなってい
るのが現状であり、より一層の耐摩耗性向上が望まれて
いる。また、これらの家電、事務機、自動車、精密機械
等の分野では、製造コスト上の問題や、周囲の電装、制
御系部品、ユニットを汚染しない様にする目的から、グ
リスやその他のオイル等による潤滑をすることなく歯車
を駆動することが強く求められている。これらの無潤滑
下という過酷な条件下での樹脂歯車の低摩耗化方法とし
ては、前述のように潤滑性を付与した材料を使用するこ
とにより効果があるとされている。たとえば、日本機械
学会論文集C編59巻568号P.3874(199
3)では、ポリアセタールに潤滑材としてポリオレフィ
ンと合成油を添加した材料で射出成形した歯車の耐摩耗
性が、添加していない元のポリアセタールを用いたもの
よりも向上するとしている。
【0004】一方で、成形加工Vol.5,No.1
1,P.821(1993)によれば、潤滑性を付与し
たポリアセタール樹脂製歯車が、潤滑性を付与していな
いポリアセタール樹脂製歯車よりも摩耗が多い場合があ
る、と開示されている。すなわち、歯車の摩耗に関して
は、潤滑性を付与しても、材料によっては潤滑性を付与
されていない材料よりも耐摩耗性が悪化する場合がある
ということが報告されていることになる。これらのよう
な樹脂材料に潤滑性を付与することによる摩擦摩耗特性
の改善は、一方で樹脂の持つ優れた機械的特性及びそれ
らのバランスを崩す、という問題点がある。
【0005】例えば、摩擦摩耗特性の改善は、材料面か
らは、自己潤滑性のある材料を採用するような手法をと
ることが多いので、各種機械的強度の低下を招きやす
い、という問題点がある。プラスチック成形材料データ
BOOK,89/90,P61〜62に記載されている
データ表から、標準的なポリアセタールコポリマー樹脂
に対して潤滑性付与材は約8割程度まで強度が低下して
いることがわかる。従って、結果的に歯車としての疲労
強度の低下を回避できないという問題点があり、少なく
とも疲労強度が元の潤滑性を付与しない材料よりも向上
しないことは、間違いない。さらに、歯車の形状的に
は、例えば日本設計製図学会講演論文集No.80−
1,P.115ではポリアセタール樹脂製歯車と鋼歯車
の組合わせにおいて、鋼歯車の歯形の一部を標準より歯
厚を薄くする方向で修正すると、ポリアセタール歯車の
歯元の摩耗が改善されるとしている。しかしながら、こ
の例は硬さ、強度の異なる鋼と樹脂の組合せの例であ
り、樹脂同士の組合わせの場合には必ずしも同じ結果が
得られるとは考えられず、汎用化できる手法とは言い難
い問題点がある。この手法は、基本的な考え方として
は、鋼歯車の歯先の荷重分担を低減させることにある。
さらに、歯車便覧(歯車便覧編集委員会編 日刊工業新
聞社 昭和45年 第3版発行P.172)によれば、
噛み合う一対の歯車の摩耗の制御、正確には一対の歯車
が均等に摩耗するようにすべり率を調整する計算上での
例がある。しかしながら、目的が噛み合う一対の歯車の
摩耗を均等にすることにあり、一方の歯車の摩耗が減少
した場合、もう一方の歯車の摩耗が増加してしまう問題
点がある。さらには、特に明記されていないが、計算が
潤滑された金属歯車を前提としたもので、無潤滑下で複
雑な摩耗挙動を示す樹脂歯車同士の場合はこの限りでは
ない。
【0006】本発明の第一の課題は、樹脂歯車に必要と
される様々な機械的特性を満たした上で、より一層の樹
脂歯車摩耗の低減を図る方法を提供することにある。本
発明のその他の課題は、かかる方法の効果をより効果的
に発現させる材料、形状の実用化にある。
【0007】本発明者らは、樹脂製歯車の他の要求特性
を満足させつつ樹脂製歯車の摩耗を低減させる方法につ
いて鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、歯数、材
料、形状、組付け方(配置)を高度に制御した場合に限
り、噛み合う一対の歯車の一方だけでなく両方の歯の摩
耗が低減することを見出し、本発明に至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の摩耗低減樹脂歯
車対は、互いに噛み合う一対のインボリュート歯車ある
いはインボリュート近似歯車の内、歯数の少ない一方の
歯車の歯数が30枚以下であり、噛み合い圧力角が工具
圧力角の103%を越え180%以内であるように配置
した噛み合う一対の樹脂歯車から成る。すなわち、下式
(2)を満足する歯車対である。
【0009】
【数2】
【0010】また、歯車素材が、圧縮疲労強さとして、
鋼製の円柱試験片と歯車素材製の平板を接触幅5mm、
ヘルツ面圧20MPa、すべり線速度4.5cm/sで
転がりを伴わず滑り接触させた場合に、ピッチングある
いは表面剥離を伴わずに105回の繰り返し運転に耐え
うる材料からなる樹脂歯車対である。また、縦転位係数
が下式(1)を満足するインボリュート歯車あるいはイ
ンボリュート近似樹脂歯車を互いに噛み合う一対の歯車
の少なくとも一方に使用することによって成る。
【0011】
【数3】
【0012】また、歯車素材として曲げ弾性率500〜
15,000MPaであるポリアセタール樹脂、または
ポリブチレン樹脂を主体とした樹脂組成物を互いに噛み
合う一対の少なくとも一方に使用することによって成
る。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の本質的構成作用は、歯
数、材料、形状、組付け方(配置)で最適なバランスを
持たせることにより優れた耐摩耗性歯車を実用化する技
術に関する。この際、最も本発明の効果が得られるのは
噛み合う一対の歯車の歯数の少ない一方の歯車の歯数が
30枚以下、より効果が得られるのは25枚以下、さら
に顕著な効果が得られるのは、23枚以下である場合で
ある。なお、このような歯数30枚を超える歯車におい
ても本発明の効果はあるが、その効果は歯数30枚以下
の歯車に比べて小さい。本発明の別の構成作用は、噛み
合い圧力角が、工具圧力角の103%を越え180%以
内、好ましくは工具圧力角の105%を超え160%以
内、さらに好ましくは工具圧力角の107%を超え15
0%以内である歯車対を使用することである。これに対
し、噛み合い圧力角が工具圧力角の103%より小さい
場合、もしくは180%を超えて大きくなる場合は、本
発明の効果が得られないばかりか、騒音増大、疲労強さ
の低下といった弊害を招くといった不都合がある。ま
た、通常、噛み合う一対の歯車はバックラッシというク
リアランスを歯面間に与える。特に樹脂歯車の場合は、
誤差や運転時の発熱による膨張を考慮して、モジュール
の5〜10%程度のバックラッシが与えられる。このバ
ックラッシをとることによる噛み合い圧力角の変動は通
常、工具圧力角の103%以下であり、実質上本発明の
意図するところとは何ら抵触しない。また、ここでいう
工具とは歯車を作製する際のラック状の切り刃(以下、
ラック工具という)あるいはホブに代表されるラック工
具と同様な作用が得られる歯車作製工具を指し、工具圧
力角とはJIS B4350等に規定されるこのラック
工具、あるいはラック工具と同様の作用が得られる工具
の圧力角をいう。また、特にラック工具の圧力角を基準
圧力角という。ただし、工具圧力角と基準圧力角の何れ
を元にして歯車を作製しても、得られる作用、すなわち
作製される歯車の歯形形状は同一とみなして差支えな
い。したがって、本発明においては、工具圧力角は基準
圧力角と同一と見なして差支えない。例えば工具圧力角
20°のラック工具あるいはラック工具と同様の作用が
得られる工具で歯切りされた標準歯車同士であれば、基
準ピッチ円上で噛み合った場合の噛み合い圧力角は20
°となる。樹脂歯車の多くは射出成形をはじめとした成
形方法で作製される為、上記の様な工具圧力角が規定さ
れたラック工具やそれに類する工具で歯切りされること
は一部を除いてほとんど無い。しかしながら、設計の段
階ではラック工具やそれに類する工具で歯切りすること
を仮定した上で歯車の諸元、特に歯形を図面指定する。
したがって、樹脂歯車の場合も設計上、工具圧力角は諸
元の決定に重要な意味を持つ。また、ごくまれにある例
として樹脂歯車を素材から工具を使用して歯切りする際
は、当然、工具圧力角は重要な要素になる。一方、噛み
合い圧力角とは所望の工具圧力角で歯切りされた歯車を
実際に歯車対として組付けた場合の噛み合いピッチ点に
おける圧力角を指し、式(3)で計算される。
【0014】
【数4】
【0015】本発明は、前述のように互いに噛み合う一
対のインボリュート歯車あるいはインボリュート近似歯
車の噛み合い圧力角が、工具圧力角の103%を越え1
80%以内である様に2つの歯車を組み付けた歯車対を
設けることを本質とし、その方法にこだわるものではな
い。すなわち、下式の通りである。
【0016】
【数5】
【0017】式(2)によれば、例えば、工具圧力角2
0°で設計した歯車あるいは歯車対を基準とした軸間距
離が決まった歯車対に、工具圧力角21°に設定して作
製した樹脂歯車を組み付けた歯車対とすることでも本発
明の摩耗低減効果を奏する。さらに軸間距離を、一対の
歯車のかみ合いピッチ円半径の和すなわち理想中心距離
(一対の歯車のかみ合いピッチ円半径の和)よりも遠ざ
け、実質上、一対の歯面間にクリアランス(以下、バッ
クラッシという)を与えることによっても本発明の摩耗
低減が達成される。ただし、この際のバックラッシは、
従来の常識(モジュールの5%〜10%)では考えられ
ない程大きなバックラッシをとることによって本発明が
達成される。バックラッシをとらず、軸間距離を理想中
心距離より小さく設定した場合、歯が干渉してしまい、
逆に摩耗量は増大する。また、滑らかな回転伝達が難し
くなるといった弊害が発生する。また、バックラッシを
式(2)で規定される範囲を超えて大きく取った場合、
実際上、互いの歯の歯先のわずかな部分でだけ噛み合う
ため、伝達荷重に対する歯の分担面積が著しく小さくな
り摩耗量は逆に増大する。また、ある瞬間に噛み合う歯
の枚数が一枚以下となる可能性が非常に高く、騒音も増
大し、疲労強度も低下する問題がある。
【0018】また、縦転位係数が下式(1)を満足する
インボリュート歯車あるいはインボリュート近似歯車を
噛み合う歯車対の少なくとも一方に使用した歯車対とす
ることにより本発明の摩耗低減が達成される。
【0019】
【数6】
【0020】上式(1)のように転位歯車を以って本発
明による低摩耗化を実践する際、噛み合う一対の歯車の
縦転位係数の和がゼロでは噛み合い圧力角が工具圧力角
と同じとなる。さらに噛み合う一対の歯車の縦転位係数
の和が負である場合、噛み合い圧力角は工具圧力角より
も小さくなる。これらの場合は、低摩耗化の効果が得ら
れないばかりか、本発明の課題の一つである歯車に求め
られるその他の特性、特に疲労強度の維持、向上が期待
できないという不都合がある。 一方、噛み合う一対の
歯車の縦転位係数の和が式(1)の条件を超えて大きく
なる場合、歯数にも依るが歯先が先鋭化し、相手歯車の
歯元付近をえぐるような摩耗を引起こし、摩耗量は逆に
増大してしまう不都合がある。さらに、ある瞬間に同時
に噛み合う歯の枚数が著しく低下する為に、滑らかな噛
合いが難しく、騒音増大の原因となる不都合がある。ま
た、本発明は噛み合う一対の歯車のいずれか一方に使用
すればその効果が得られるが、噛み合う一対の歯車両方
に本発明を適用することにより、より一層の低摩耗の効
果が得られる。
【0021】このような歯車に対し低摩耗化を達成でき
る最適なバランスの歯車素材としては、圧縮疲労強さの
強い材料を使用することが本発明の効果を一層発現でき
る材料となりうる。圧縮疲労強さの指標として、以下の
試験方法で所定の強さを示すことが必要である。すなわ
ち、鋼(S45C)製の直径10mmの円柱の側面を、
歯車素材として使用する材料で射出成形した2mm厚み
の平板と接触させる。ある定荷重をかけて、すべり線速
度4.5cm/sで図1の様に滑りを伴わずに連続運転
した場合に、ヘルツ面圧20MPaに相当する荷重で1
5回の繰り返し運転、好ましくは5×105回の繰り返
し運転、さらに好ましくは106回の繰り返し運転にピ
ッチングすなわち、繰り返し圧縮による素材表面の疲労
剥離現象を伴わずに耐えうることが好ましい。ピッチン
グが発生しているか否かは、目視及び電子顕微鏡で観察
し、判定する。なお、ヘルツ面圧Pは一般的に使用され
る下式(4)で算出される。
【0022】
【数7】
【0023】ここで、r0は金属ピンの半径(mm)、
1は金属ピンのポアソン比、V2は平板材質のポアソン
比、E1は金属ピンの曲げ弾性率(MPa)E2は平板材
質の曲げ弾性率(MPa)、Qは単位接触幅当りの荷重
(N/mm)である。
【0024】この試験方法によって圧縮疲労強さを満足
出来る材料として具体的には、曲げ弾性率500〜1
5,000MPa、好ましくは750〜10,000M
Pa、さらに好ましくは1,000〜3,500MPa
を有するポリアセタール樹脂もしくはポリブチレンテレ
フタレート樹脂を主体とする樹脂組成物が特に好ましく
使用できるが、さらに、ポリフェニレンサルファイド樹
脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマーなども本発明で好適
に使用できる素材の一つの例である。ポリアセタール樹
脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂は歯車として
使用されやすい材料の中でも圧縮疲労強さの比較的高い
材料である。圧縮疲労強さの低い材料を使用した場合、
ピッチングという、繰り返し圧縮による表面の疲労剥離
現象が歯面に発生し、騒音増大や強度低下、さらには摩
耗促進の原因となる。
【0025】次に弾性率について説明する。曲げ弾性率
が500MPaより低い場合、歯の剛性が低く、動力伝
達能力は著しく低下する不都合がある。一方、曲げ弾性
率が15,000MPaを超えて大きくなっても、事実
上、ガラス繊維などの強化材を多量に添加するため、表
面粗度の悪化に起因して摩耗が増大してしまう不都合が
ある。しかるに、本発明による低摩耗化を達成できる材
料として、曲げ弾性率が500〜15,000MPaの
ポリアセタール樹脂もしくはポリブチレンテレフタレー
ト樹脂を主体とした樹脂組成物が特に好ましく使用でき
る。また、上記の圧縮疲労強さ及び曲げ弾性率の範囲の
樹脂組成物で作製した、互いに噛み合う一対のインボリ
ュート歯車あるいはインボリュート近似歯車の内、噛み
合い圧力角が、工具圧力角の103%を越え180%以
内であるように配置した歯車対であれば、強化材を添加
しても噛み合い圧力角が、工具圧力角の103%を越え
180%以内であることを満足しない歯車対に比べ、確
実に歯車の摩耗が低減する作用が得られる。ただし、歯
車の形状としては、インボリュート歯形であることが望
ましいが、実際には成形収縮や金型の精度等の成形上の
問題、あるいは金型製作上の問題、切削などの加工上の
問題で正確にインボリュート曲線を描いている必要はな
い。インボリュートあるいはそれに近似した形状であれ
ば効果が得られる。実際の市場ではこのような製品が多
い。工具圧力角並びに噛み合い圧力角、さらに転位係数
や軸間距離についても、成形収縮や金型の精度等の成形
上の問題、切削などの加工上の問題で正確に設計通りの
寸法となっている必要はないが、常識的な精度の範囲で
計算上、本発明の噛み合い圧力角を満足できるような諸
元決定、設計がなされたものであればよい。
【0026】本発明に用いる素材樹脂としてのポリアセ
タールはホモポリマー、コポリマーのいずれであっても
良く、コポリマーの場合は主鎖の安定化のためにエチレ
ンオキサイド、ジオキソラン等の単量体成分をランダム
に共重合されたもの、あるいはブロックあるいはグラフ
ト重合されたもの、あるいは更に第三成分が導入された
ものなど、どの様な共重合形態であってもかまわない。
また、潤滑性付与剤を添加するなどして摺動特性を改善
したポリアセタールは本発明の効果をより一層発現する
ことの出来る材料の一つとして好ましく使用出来る。ポ
リブチレンテレフタレートの場合には通常のポリブチレ
ンテレフタレート樹脂の他に、第三成分あるいは第四成
分としてイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジ
ピン酸等の脂肪族及び芳香族多塩基酸あるいは、グリコ
ール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコ
ール、ネオペンチルグリコール等の通常のアルキレング
リコールやビスフェノールA等の芳香族アルコール等で
変性させて得られる共重合体であってもかまわない。ま
た、潤滑性付与剤を添加するなどして摺動特性を改善し
たポリブチレンテレフタレートは、本発明の効果をより
一層発現する材料の一つとして好適に使用出来る。
【0027】以上のように、本発明は歯車摩耗の低減に
非常に効果があり、また従来からある摩耗低減対策を施
した上でもより一層の効果が得られるものである。さら
に、該歯車成形品には歯車に要求されるその他の特性、
例えば強度やその他設計上の制約を満たすことの出来る
自由度があるばかりか、更に樹脂歯車にとって重要な疲
労強度の面では本発明による対策を施す前の元の歯車と
同等かそれ以上に向上する。
【0028】
【実施例】以下、実施例で本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】(試験方法) (1)歯車:モジュール1、噛み合い歯幅5mm、圧力
角20°、インボリュート歯車 (2)試験機:動力吸収式歯車試験機 (3)試験条件:ピッチ円周速度120cm/s、単位
歯幅当り接線荷重0.098N/mm、運転回数500
万回、無潤滑、室温雰囲気 (4)評価方法:試験前後の歯車を秤量し、摩耗量を算
出した。 (5)材料およびサンプル作製:実施例11及び比較例
8以外はポリプラスチックス(株)製ポリアセタール樹
脂(商品名:ジュラコンM90−44,曲げ弾性率25
80MPa)を用い、ポリアセタールコポリマーとして
一般的な成形条件で歯車を射出成形した。また、実施例
11及び比較例8では、帝人化成(株)製ポリカーボネ
ート樹脂(商品名:パンライトG3130)を用い、ポ
リカーボネートとして一般的な成形条件で歯車を射出成
形した。歯車対の組み合わせ及び上記試験方法による評
価結果を表1及び表2に示す。
【0030】実施例1、2〜5、6〜7及び9は転位に
よって本発明にある噛み合い圧力角を満足させた例であ
る。これら実施例と対応する各比較例を比較することに
より、本発明が噛み合う一対の歯車両方の歯の低摩耗化
に効果があることがわかる。また、噛み合い圧力角を本
発明にある範囲に納めるその他の方法としては、例えば
実施例8と比較例4にように、バックラッシを必要以上
に設ける方法、及び実施例10と比較例7のようにバッ
クラッシを必要以上に設けさらに転位歯車を併用する方
法が有効であることが分かる。つまり、本発明にある噛
み合い圧力角の調整はその方法に制限されない。一方、
歯車対の双方の歯数が30枚を超えると、参考例1及び
2のように本発明による噛み合い圧力角の範囲であるか
ないかに関らず摩耗量に大きな差はなく、比較的少ない
摩耗量となる。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】以上のことから、本発明は噛み合い圧力角
をある範囲に納めるように形状、組み付け方(配置)を
高度に制御し、かつ圧縮疲労に優れたある種の材料を使
用することにより低摩耗化が達成でき、噛み合い圧力角
の調整にはその手段は問わない。
【0034】
【発明の効果】以上のように、本発明の摩耗低減樹脂歯
車対は、歯数、材料、形状および歯車の組み付け方(配
置)を高度に制御することにより、噛み合う一対の樹脂
歯車の一方だけでなく、両方の歯車の摩耗を大幅に低減
することができるとともに、従来の歯車精度向上、歯面
粗度の向上のような方法による歯車に比較し、歯車を生
産する際の生産性が高く、製造コストを大幅に低く抑え
ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する樹脂歯車素材の圧縮疲労強さ
の測定方法を示す図面である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに噛み合う一対のインボリュート歯
    車あるいはインボリュート近似歯車の内、歯数の少ない
    方の歯数が30枚以下であり、噛み合い圧力角が工具圧
    力角の103%を越え180%以内であるように配置さ
    れた噛み合う一対の樹脂歯車を備えたことを特徴とする
    摩耗低減樹脂歯車対。
  2. 【請求項2】 樹脂歯車が歯車素材に圧縮疲労強さとし
    て鋼製の直径10mmの円柱試験片の側面と歯車素材製
    の平板を接触幅5mm、ヘルツ面圧20MPa、滑り線
    速度4.5cm/sで転がりを伴わず滑り接触させた場
    合にピッチングあるいは表面剥離を伴わずに105回の
    繰り返し運転に耐えうる材料からなることを特徴とする
    請求項1記載の摩耗低減樹脂歯車対。
  3. 【請求項3】 互いに噛み合う一対の歯車の少なくとも
    一方の樹脂歯車が縦転位係数が下式(1)を満足するイ
    ンボリュート歯車あるいはインボリュート近似歯車であ
    ることを特徴とする請求項1記載の摩耗低減樹脂歯車
    対。 【数1】
  4. 【請求項4】 互いに噛み合う一対の歯車の少なくとも
    一方の樹脂歯車が、歯車素材として曲げ弾性率500〜
    15,000MPaであるポリアセタール樹脂またはポ
    リブチレンテレフタレート樹脂を主体とした樹脂組成物
    からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記
    載の摩耗低減樹脂歯車対。
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