JPH10217522A - サーマルヘッドおよびサーマルヘッドの製造方法 - Google Patents

サーマルヘッドおよびサーマルヘッドの製造方法

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JPH10217522A
JPH10217522A JP9025278A JP2527897A JPH10217522A JP H10217522 A JPH10217522 A JP H10217522A JP 9025278 A JP9025278 A JP 9025278A JP 2527897 A JP2527897 A JP 2527897A JP H10217522 A JPH10217522 A JP H10217522A
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JP
Japan
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protective film
thermal head
film
heat
carbon
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JP9025278A
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English (en)
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Makoto Kashiwatani
谷 誠 柏
Junichi Yoneda
田 純 一 米
Atsuhira Noshita
下 敦 平 埜
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Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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    • B41J2/3357Surface type resistors

Abstract

(57)【要約】 【課題】保護膜の腐食や摩耗が極めて少なく、しかも熱
や機械的衝撃に対しても保護膜の割れや剥離の発生を防
止して、十分な耐久性を有し、長期に渡って高い信頼性
を発揮し、長期に渡って高画質の感熱記録を安定して行
うことができるサーマルヘッドおよびその製造方法を提
供する。 【解決手段】炭素を主成分とし、かつ厚み方向に硬度差
を持つ保護膜を有することにより、また、CVDでの保
護膜成膜中にバイアス電圧を変更し、もしくはスパッタ
リングによる成膜中の成膜用ガス流量に対する水素流量
を変更することにより、前記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種のプリンタ、
プロッタ、ファックス、レコーダ等に記録手段として用
いられる感熱記録を行うためのサーマルヘッドの技術分
野に属する。
【0002】
【従来の技術】超音波診断画像の記録に、フィルム等を
支持体として感熱記録層を形成してなる感熱材料を用い
た感熱記録が利用されている。また、感熱記録は、湿式
の現像処理が不要であり、取り扱いが簡単である等の利
点を有することから、近年では、超音波診断のような小
型の画像記録のみならず、CT診断、MRI診断、X線
診断等の大型かつ高画質な画像が要求される用途におい
て、医療診断のための画像記録への利用も検討されてい
る。
【0003】周知のように、感熱記録は、感熱材料の感
熱記録層を加熱して画像を記録する、発熱抵抗体と電極
とを有する発熱素子が一方向(主走査方向)に配列され
てなる発熱体(グレーズ)が形成されたサーマルヘッド
を用い、グレーズを感熱材料(感熱記録層)に若干押圧
した状態で、両者を前記主走査方向と直交する副走査方
向に相対的に移動しつつ、MRIやCT等の画像データ
供給源から供給された記録画像の画像データに応じて、
グレーズの各画素の発熱素子にエネルギーを印加して発
熱させることにより、感熱材料の感熱記録層を加熱して
発色させて画像記録を行う。
【0004】このサーマルヘッドのグレーズには、感熱
材料を加熱する発熱体、あるいはさらに電極等を保護す
るため、その表面に保護膜が形成されている。従って、
感熱記録時に感熱材料と接触するのは、この保護膜で、
発熱体は、この保護膜を介して感熱材料を加熱し、これ
により感熱記録が行われる。保護膜の材料には、通常、
耐摩耗性を有するセラミック等が用いられているが、保
護膜の表面は、感熱記録時には加熱された状態で感熱材
料と慴接するため、記録を重ねるにしたがって摩耗し、
劣化する。
【0005】この摩耗が進行すると、感熱画像に濃度ム
ラが生じたり、保護膜としての強度が保てなくなるた
め、発熱体等を保護する機能が損なわれ、最終的には、
画像記録ができなくなる状態に陥る(ヘッド切れ)。特
に、前述の医療用途のように、高品質で、かつ高画質な
多階調画像が要求される用途においては、高品質化およ
び高画質化を計るために、ポリエステルフィルム等の高
剛性の支持体を使用する感熱フィルムを用い、さらに、
記録温度(印加エネルギー)や、感熱材料へのサーマル
ヘッドの押圧力を高く設定する方向にある。そのため、
通常の感熱記録に比して、サーマルヘッドの保護膜にか
かる力や熱が大きく、摩耗や腐食(腐食による摩耗)が
進行し易くなっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このようなサーマルヘ
ッドの保護膜の摩耗を防止し、耐久性を向上する方法と
して、保護膜の性能を向上する技術が数多く検討されて
おり、中でも特に、耐摩耗性や耐蝕性に優れた保護膜と
して、炭素を主成分とする保護膜(以下、カーボン保護
膜とする)が知られている。例えば、特公昭61−53
955号および特公平4−62866(前記出願の分割
出願)の各公報には、サーマルヘッドの保護膜として、
ビッカーズ硬度が4500kg/mm2以上のカーボン保護膜
を形成することにより、優れた耐摩耗性と共に、保護膜
を十分に薄くして優れた応答性も実現したサーマルヘッ
ド、およびその製造方法が開示されている。また、特開
平7−132628号公報には、下層のシリコン系化合
物層と、その上層のダイヤモンドライクカーボン層との
2層構造の保護膜を有することにより、保護膜の摩耗お
よび破壊を大幅に低減し、高画質記録が長期に渡って可
能なサーマルヘッドが開示されている。
【0007】このようなカーボン保護膜は、ダイヤモン
ドに極めて近い特性を有するもので、非常に硬度が高
く、また、化学的にも安定である。そのため、感熱材料
との摺接に対する耐摩耗性や耐蝕性という点では優れた
特性を発揮する。しかしながら、カーボン保護膜は、優
れた耐摩耗性を有するものの、硬いが故に脆い、すなわ
ち靭性が低い。そのため、発熱素子の加熱によるヒート
ショックや熱的なストレス、カーボン保護膜とこれに接
する層との熱膨張係数の違いによるストレス、記録中に
感熱材料とサーマルヘッド(グレーズ)との間に混入す
る異物による機械的衝撃等によって、比較的容易に割れ
や剥離が生じてしまうという問題点がある。保護膜に割
れや剥離が生じると、ここから摩耗や腐食、さらには腐
食による摩耗が進行して、サーマルヘッドの耐久性が低
下してしまい、やはり、長期に渡って高い信頼性を発揮
することはできない。
【0008】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を
解決することにあり、炭素を主成分とする保護膜を有す
るサーマルヘッドであって、保護膜の腐食や摩耗が極め
て少なく、しかも熱や機械的衝撃に対しても保護膜の割
れや剥離の発生を防止して、十分な耐久性を有し、長期
に渡って高い信頼性を発揮し、これにより、長期に渡っ
て高画質の感熱記録を安定して行うことができるサーマ
ルヘッド、およびこのサーマルヘッドの製造方法を提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明のサーマルヘッドは、発熱体を保護する保護
膜として、炭素を主成分とし、厚み方向に硬度差を持つ
保護膜を有することを特徴とするサーマルヘッドを提供
する。
【0010】また、本発明のサーマルヘッドの別の態様
は、炭素を主成分とするガスをイオン化した雰囲気中に
おいて、発熱体表面に高周波バイアス電圧を印加し、か
つ前記高周波バイアス電圧を変更することにより、前記
発熱体表面に厚み方向に硬度差を持つ保護膜を形成して
なることを特徴とするサーマルヘッドを提供する。
【0011】さらに、本発明のサーマルヘッドの別の態
様は、炭素を主成分とする固体を蒸発すると共に水素ガ
スが流入された雰囲気中において、発熱体表面にプラズ
マを発生をさせると共に高周波バイアス電圧を印加し、
かつ前記水素ガスの流量を変更することにより、前記発
熱体表面に厚み方向に硬度差を持つ保護膜を形成してな
ることを特徴とするサーマルヘッドを提供する。
【0012】また、前記本発明のサーマルヘッドにおい
て、前記硬度差が、ピッカーズ硬度で100kg/mm2以上
であるのが好ましく、また、前記炭素を主成分とする保
護膜の発熱体側に、下層保護膜としてセラミックを主成
分とする保護膜を少なくとも1層有するのが好ましい。
【0013】また、本発明のサーマルヘッドの製造方法
は、発熱体を含むサーマルヘッドの少なくとも一部をチ
ャンバ内に配置し、前記チャンバ内に炭素を主成分とす
るガスを流入して、このガスをイオン化すると共に、発
熱体表面に高周波バイアス電圧を印加し、かつこの高周
波バイアス電圧を変更することにより、サーマルヘッド
の発熱体表面に、厚み方向に硬度差を持つ保護膜を形成
することを特徴とするサーマルヘッドの製造方法を提供
する。
【0014】さらに、本発明のサーマルヘッドの製造方
法の別の態様は、発熱体を含むサーマルヘッドの少なく
とも一部をチャンバ内に配置し、前記チャンバ内に水素
ガスを流入しつつ前記チャンバ内において炭素を主成分
とする固体を蒸発させると共に、発熱体表面にプラズマ
を発生させると共に高周波バイアス電圧を印加し、かつ
前記水素ガスの流入量を変更することにより、サーマル
ヘッドの発熱体表面に、厚み方向に硬度差を持つ保護膜
を形成することを特徴とするサーマルヘッドの製造方法
を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明のサーマルヘッドお
よびサーマルヘッドの製造方法について、添付の図面に
示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0016】図1に、本発明のサーマルヘッドを利用す
る感熱記録装置の一例の概略図が示される。図1に示さ
れる感熱記録装置10(以下、記録装置10とする)
は、例えばB4サイズ等の所定のサイズのカットシート
である感熱材料(以下、感熱材料Aとする)に感熱記録
を行うものであり、感熱材料Aが収容されたマガジン2
4が装填される装填部14、供給搬送部16、サーマル
ヘッド66によって感熱材料Aに感熱記録を行う記録部
20、および排出部22を有して構成される。
【0017】このような記録装置10においては、マガ
ジン24から感熱材料Aを1枚引き出し、記録部20ま
で感熱材料Aを搬送して、サーマルヘッド66を感熱材
料Aに押圧しつつ、発熱体(グレーズ)の延在方向すな
わち主走査方向(図1および図2において紙面と垂直方
向)と直交する副走査方向に感熱材料Aを搬送して、記
録画像(画像データ)に応じて各発熱素子を発熱するこ
とにより、感熱材料Aに感熱記録を行う。
【0018】感熱材料Aは、透明なポリエチレンテレフ
タレート(PET)フィルムなどの樹脂フィルムや紙等
を支持体として、その一面に感熱記録層を形成してなる
ものである。このような感熱材料Aは、100枚等の所
定単位の積層体(束)とされて袋体や帯等で包装されて
おり、図示例においては、所定単位の束のまま感熱記録
層を下面として記録装置10のマガジン24に収納さ
れ、一枚づつマガジン24から取り出されて感熱記録に
供される。
【0019】マガジン24は、開閉自在な蓋体26を有
する筐体であり、感熱材料Aを収納して記録装置10の
装填部14に装填される。装填部14は、記録装置10
のハウジング28に形成された挿入口30、案内板32
および案内ロール34,34、停止部材36を有してい
る。マガジン24は、蓋体26側を先にして挿入口30
から記録装置10内に挿入され、案内板32および案内
ロール34に案内されつつ、停止部材36に当接する位
置まで押し込まれることにより、記録装置10の所定の
位置に装填される。また、装填部14には、マガジンの
蓋体26を開閉するための、図示しない開閉機構が設け
られている。
【0020】供給搬送手段16は、装填部14に装填さ
れたマガジン24から感熱材料Aを1枚取り出して、記
録部20に搬送するものであり、吸引によって感熱材料
Aを吸着する吸盤40を用いる枚葉機構、搬送手段4
2、搬送ガイド44、および搬送ガイド44の出口に位
置する規制ローラ対52を有する。搬送手段42は、搬
送ローラ46と、この搬送ローラ46と同軸のプーリ4
7a、回転駆動源に接続されるプーリ47bならびにテ
ンションプーリ47cと、この3つのプーリに張架され
るエンドレスベルト48と、搬送ローラ46とローラ対
を成すニップローラ50とを有して構成され、吸盤40
によって枚葉された感熱材料Aの先端を搬送ローラ46
とニップローラ50とによって挟持して、感熱材料Aを
搬送する。
【0021】記録装置10において記録開始の指示が出
されると、前記開閉機構によって蓋体26が開放され、
吸盤40を用いた枚葉機構がマガジン24から感熱材料
Aを一枚取り出し、感熱材料Aの先端を搬送手段42
(搬送ローラ46とニップローラ50とから成るローラ
対)に供給する。搬送ローラ46とニップローラ50と
によって感熱材料Aが挟持された時点で、吸盤40によ
る吸引は開放され、供給された感熱材料Aは、搬送ガイ
ド44によって案内されつつ搬送手段42によって規制
ローラ対52に搬送される。なお、記録に供される感熱
材料Aがマガジン24から完全に排出された時点で、前
記開閉手段によって蓋体26が閉塞される。
【0022】搬送ガイド44による搬送手段42から規
制ローラ対52までの距離は、感熱材料Aの搬送方向の
長さより若干短く設定されている。搬送手段42による
搬送で感熱材料Aの先端が規制ローラ対52に至るが、
規制ローラ対52は最初は停止しており、感熱材料Aの
先端はここで一旦停止して位置決めされる。この感熱材
料Aの先端が規制ローラ対52に至った時点で、サーマ
ルヘッド66(グレーズ)の温度が確認され、サーマル
ヘッド66の温度が所定温度であれば、規制ローラ対5
2による感熱材料Aの搬送が開始され、感熱材料Aは、
記録部20に搬送される。
【0023】記録部20は、サーマルヘッド66、プラ
テンローラ60、クリーニングローラ対56、ガイド5
8、サーマルヘッド66を冷却するヒートシンク67、
冷却ファン76およびガイド62を有する。サーマルヘ
ッド66は、例えば、最大半切サイズまでの画像記録が
可能な、約300dpiの記録(画素)密度の感熱記録
を行うもので、保護膜に特徴を有する以外は、感熱材料
Aへの感熱記録を行う発熱素子が一方向(主走査方向)
に配列されるグレーズが形成された公知の構成を有する
ものである。このサーマルヘッド66には、冷却のため
のヒートシンク67が固定される。また、サーマルヘッ
ド66は、支点68aを中心に上下方向に回動自在な支
持部材68に支持されている。このサーマルヘッド66
のグレーズについては、後に詳述する。なお、本発明の
サーマルヘッド66の幅(主走査方向)、解像度(記録
密度)、記録階調等には特に限定は無いが、幅は5cm〜
50cm、解像度は6dot/mm(約150dpi)以上、記
録階調は256階調以上であるのが好ましい。
【0024】プラテンローラ60は、感熱材料Aを所定
位置に保持しつつ所定の画像記録速度で図中の矢印方向
に回転し、主走査方向と直交する副走査方向(図2中の
矢印X方向)に感熱材料Aを搬送する。クリーニングロ
ーラ対56は、弾性体である粘着ゴムローラ(図中上
側)と、通常のローラとからなるローラ対であり、粘着
ゴムローラが感熱材料Aの感熱記録層に付着したゴミ等
を除去して、グレーズへのゴミの付着や、ゴミが画像記
録に悪影響を与えることを防止する。
【0025】図示例の記録装置10において、感熱材料
Aが搬送される前は、支持部材68は上方に回動して、
サーマルヘッド66のグレーズとプラテンローラ60と
が接触する直前の待機位置となっている。前述の規制ロ
ーラ対52による搬送が開始されると、感熱材料Aは、
次いでクリーニングローラ対56に挟持され、さらに、
ガイド58によって案内されつつ搬送される。感熱材料
Aの先端が記録開始位置(グレーズに対応する位置)に
搬送されると、支持部材68が下方に回動して、グレー
ズとプラテンローラ60とで感熱材料Aが挟持されて、
記録層にグレーズが押圧された状態となり、感熱材料A
はプラテンローラ60によって所定位置に保持されつ
つ、プラテンローラ60等によって副走査搬送される。
この搬送に伴い、グレーズの各発熱素子を記録画像に応
じて加熱することにより、感熱材料Aに感熱記録が行わ
れる。
【0026】感熱記録が終了した感熱材料Aは、ガイド
62に案内されつつ、プラテンローラ60および搬送ロ
ーラ対63に搬送されて排出部22のトレイ72に排出
される。トレイ72は、ハウジング28に形成された排
出口74を経て記録装置10の外部に突出しており、画
像が記録された感熱材料Aは、この排出口74を経て外
部に排出され、取り出される。
【0027】図2に、サーマルヘッド66のグレーズ
(発熱体)の概略断面図を示す。図示例において、グレ
ーズは、基板80の上(図示例のサーマルヘッド66
は、上から感熱材料Aに押圧されるので、図2中では下
となる)に形成されるグレーズ層(畜熱層)82、その
上に形成される発熱抵抗体84、その上に形成される電
極86、およびその上に形成される、発熱抵抗体84あ
るいはさらに電極86等を保護するための保護膜等を有
して構成される。図示例においては、好ましい態様とし
て保護膜が2層構成を有するもので、発熱抵抗体84お
よび電極86(発熱素子)を覆って形成される、セラミ
ックを主成分とする下層保護膜88と、下層保護膜88
の上に上層保護膜として形成される、本発明の特徴的な
部分である、炭素を主成分とする保護膜すなわちカーボ
ン保護膜90(DLC保護膜=Diamond Like Carbon 保
護膜)とから保護膜が構成される。
【0028】本発明に用いられるサーマルヘッド66
は、このカーボン保護膜90以外は、基本的に公知のサ
ーマルヘッド66と同様の構成を有するものである。従
って、それ以外の層構成や各層の材料には特に限定はな
く、公知のものが各種利用可能である。具体的には、基
板80としては耐熱ガラスやアルミナ、シリカ、マグネ
シアなどのセラミックス等の電気絶縁性材料が、グレー
ズ層82としては耐熱ガラスやポリイミド樹脂等の耐熱
性樹脂等が、発熱抵抗体84としてはニクロム(Ni-C
r)、タンタル、窒化タンタル等の発熱抵抗体が、電極8
6としてはアルミニウム、銅等の導電性材料が、各種利
用可能である。なお、グレーズには、真空蒸着、CVD
(Chemical Vapor Deposition) 、スパッタリング等のい
わゆる薄膜形成技術およびフォトエッチング法を用いて
形成される薄膜型発熱素子と、スクリーン印刷などの印
刷ならびに焼成によるいわゆる厚膜形成技術およびエッ
チングを用いて形成される厚膜型発熱素子とが知られて
いるが、本発明に用いられるサーマルヘッド66は、い
ずれの方法で形成されたものであってもよい。
【0029】前述のように、図示例のサーマルヘッド6
6は、好ましい態様として、カーボン保護膜90と下層
保護膜88の2層構成の保護膜を有する。このような下
層保護膜を有することにより、耐摩耗性、耐蝕性、耐腐
食摩耗性等の点でより好ましい結果を得ることができ、
より耐久性が高く、長寿命のサーマルヘッドを実現でき
る。本発明のサーマルヘッド66に形成される下層保護
膜88としては、サーマルヘッドの保護膜と成り得る耐
熱性、耐蝕性および耐摩耗性を有するものであれば、公
知のものが各種利用可能であるが、好ましくは、セラミ
ックスを主成分とする下層保護膜88が例示される。
【0030】具体的には、窒化珪素(SiN) 、炭化珪素(S
iC) 、酸化タンタル(Ta2O5) 、酸化アルミニウム(Al
2O3) 、サイアロン(SiAlON)、酸化珪素(SiO2)、窒化ア
ルミニウム(AlN) 、窒化ホウ素(BN)、酸化セレン(SeO)
、窒化チタン(TiN) 、炭化チタン(TiC) 、炭窒化チタ
ン(TiCN)、窒化クロム(CrN) 、およびこれらの混合物等
が例示される。中でも特に、成膜の容易性や製造コスト
などの製造適正、機械的摩耗と化学的摩耗による摩耗の
バランス等の等の点で、窒化珪素、炭化珪素、サイアロ
ン等は好適に利用される。また、下層保護膜には、物性
調整のため、金属等の微量の添加物が含まれてもよい。
下層保護膜88の形成方法には特に限定はなく、前述の
厚膜形成技術や薄膜形成技術等を用いて、公知のセラミ
ックス膜(層)の形成方法で形成される。
【0031】下層保護膜88の厚さには特に限定はない
が、好ましくは2μm〜50μm程度、より好ましくは
4μm〜20μm程度である。下層保護膜88の厚さを
上記範囲とすることにより、耐摩耗性と熱伝導性(すな
わち記録感度)とのバランスを好適に取ることができる
等の点で好ましい結果を得る。また、下層保護膜88は
多層構成でもよい。下層保護膜88を多層構成とする際
には、異なる材料を用いて多層構成としてもよく、ある
いは、同じ材料で密度等の異なる層を有する多層構成で
あってもよく、あるいは、その両者を有するものであっ
てもよい。
【0032】なお、本発明のサーマルヘッドは、このよ
うな下層保護膜88を有するものに限定はされず、保護
膜が、後述するカーボン保護膜90のみの一層構成であ
ってもよい。
【0033】本発明のサーマルヘッド66は、発熱抵抗
体84等を保護する保護膜として、カーボン保護膜90
を有するものであり、かつ、このカーボン保護膜90
は、発熱抵抗体84側(内側)の硬度が表面側(感熱材
料Aとの接触側)よりも硬度が低い、もしくは内側の硬
度が表面側よりも高い、表面と内側とで硬度差、すなわ
ち厚み方向に硬さ勾配を有する。このような構成を有す
ることにより、カーボン保護膜90の有する優れた耐摩
耗性や耐蝕性を十分に発揮できると共に、前述のヒート
ショックや熱ストレス、下層(図示例では下層保護膜8
8)との熱膨張係数の違いによるストレス、不純物によ
る機械的衝撃等に起因する、カーボン保護膜90の割れ
や剥離を防止して、耐久性に優れたサーマルヘッドを実
現できる。
【0034】本発明のサーマルヘッド66において、カ
ーボン保護膜90の表面と内側との硬度差には特に限定
は無いが、カーボン保護膜90の割れや剥離が生じな
い、耐久性の高いサーマルヘッド66を安定的に実現す
るためには、硬度差がビッカーズ硬度で100kg/mm2
上、特に、500kg/mm2以上であるのが好ましい。ま
た、硬度差の上限には特に限定はないが、余り硬度差が
大きいと、感熱記録時に軟質部分からの割れや剥離が生
じ易くなる等の不都合を生じる場合もあるので、硬度差
はビッカーズ硬度で2000kg/mm2以下、特に、150
0kg/mm2以下であるのが好ましい。すなわち、本発明に
おいては、カーボン保護膜90の表面と内側との硬度差
は、好ましくは100kg/mm2〜2000kg/mm2の範囲、
より好ましくは、500kg/mm2〜1500kg/mm2の範囲
である。
【0035】なお、カーボン保護膜90の厚さ方向の硬
度の変化は、連続的であっても段階的であってもよい。
ただし、カーボン保護膜90内部における割れや剥離を
考慮すれば、厚さ方向の硬度の変化は連続的であるのが
好ましい。また、段階的な変化を有する場合には、カー
ボン保護膜90が多層構成を有するのと同等となるが、
割れや剥離等をより少なくするためには、各層間の硬度
差は小さい方が好ましい。
【0036】このようなカーボン保護膜90の硬度は高
いほど良好であり、サーマルヘッドの保護膜として十分
な硬度を有すればよいが、好ましくは、最も固い部分の
硬度が、ピッカーズ硬度で2000kg/mm2以上、より好
ましくは2500kg/mm2以上、特に好ましくは3000
kg/mm2以上である。カーボン保護膜90の硬度を上記範
囲とすることにより、耐摩耗性等の点で好ましい結果を
得ることができる。
【0037】さらに、カーボン保護膜90の厚さにも特
に限定はなく、図示例のように、下層保護膜88を有す
る場合には、好ましくは、0.1μm〜5μm、より好
ましくは、1μm〜3μmである。また、下層保護膜8
8を有さない場合には、好ましくは、1μm〜20μ
m、より好ましくは、2μm〜10μmである。カーボ
ン保護膜90の厚さを上記範囲とすることにより、耐摩
耗性と熱伝導性とのバランス等の点で、好ましい結果を
得ることができる。
【0038】このようなカーボン保護膜90の形成方法
には特に限定はなく、公知の厚膜形成技術や薄膜形成技
術で形成されるが、好ましくは、炭化水素ガスを反応ガ
スとして用いるプラズマCVDによって硬質カーボン膜
を形成する方法、および焼結カーボン材やグラッシーカ
ーボン材等のカーボン材をターゲット材とするスパッタ
リングによって硬質カーボン膜を形成する方法が例示さ
れる。
【0039】図3に、カーボン保護膜90を形成する
(プラズマ)CVD装置の概念図を示す。CVD装置1
00は、基本的に、真空チャンバ102と、ガス導入部
104と、プラズマ発生手段106と、基板ホルダ10
8と、基板バイアス電源110とを有して構成される。
【0040】真空チャンバ102は、プラズマ発生用の
磁場が影響を受けないようにSUS304等の非磁性材
料で形成されるのが好ましい。また、カーボン保護膜9
0を形成に用いられる真空チャンバ102は、排気手段
を有し、かつ、初期排気の到達圧力で2×10-5Torr以
下、好ましくは5×10-6Torr以下、さらに、成膜中は
1×10-4Torr〜1×10-2Torrを達成するシール性を
有するのが好ましい。真空チャンバ102に取り付けら
れる排気手段112としては、ロータリーポンプ、メカ
ニカルブースタポンプ、ターボポンプを組み合わせた排
気手段が好適に例示され、また、ターボポンプの代わり
にディフュージョンポンプやクライオポンプを用いた排
気手段も好適に利用される。排気手段112の排気能力
や台数は、真空チャンバ102の容積や成膜に使用する
ガスの種類や流量等に応じて適宜選択すればよい。ま
た、排気速度を調整するために、バイパス配管を用いた
配管の排気抵抗の調整や、オリフィスバルブを設けてそ
の開口度調整等の方法で、排気速度を調整可能なように
構成してもよい。
【0041】真空チャンバ102において、プラズマや
プラズマ発生用の電磁波によってアークが発生する箇所
は、絶縁性部材で覆ってもよい。絶縁性部材としては、
MCナイロン、テフロン(PTFE)、PPS(ポリフ
ェニレンスルフィド)、PEN(ポリエチレンナフタレ
ート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等が利
用可能である。なお、PENやPET等を用いる場合に
は、絶縁性部材からの脱ガスで真空度を低下する場合が
あるので、このような材料を用いる場合には、注意が必
要である。
【0042】CVD装置100は、2つのガス導入部1
04を有する。ガス導入部104aは、プラズマ発生用
のガスを導入する部位で、他方、ガス導入部104b
は、反応ガスを導入する部位で、共に、導入部がOリン
グ等で真空シールされたステンレス製のパイプ等を用い
て、真空チャンバ102内にガスを導入する。また、ガ
スの導入量は、マスフローコントローラ等の公知の方法
で制御される。両ガス導入部104は、基本的にガスを
真空チャンバ102内のプラズマ発生領域の近傍に拭き
出すように構成される。また、吹き出し位置、特に反応
ガスのガス導入部104bの吹き出し位置は、膜厚分布
にも影響するので、基板(サーマルヘッド66のグレー
ズ)の形状等に合わせて最適化するのが好ましい。
【0043】カーボン保護膜90を形成するためのプラ
ズマ発生用のガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオ
ン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスが
用いられるが、中でも特に、価格および入手の容易性の
点で、アルゴンガスが好適に用いられる。他方、カーボ
ン保護膜90を形成するための反応ガスとしては、メタ
ン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、ベンゼ
ン等の炭化水素化合物のガスが例示される。なお、ガス
導入部104aおよびガス導入部104bは、共に、用
いるガスに応じてマスフローコントローラのセンサを調
整(校正)する必要がある。
【0044】カーボン保護膜90(カーボン保護膜9
0)を形成するプラズマCVDにおいて、プラズマ発生
手段としては、直流グロー放電、高周波放電、直流アー
ク放電、マイクロ波ECR放電等が利用可能であり、特
に、直流アーク放電およびマイクロ波ECR放電はプラ
ズマ密度が高く、高速成膜に有利である。図示例のCV
D装置100は、マイクロ波ECR放電を利用するもの
であり、プラズマ発生手段106は、マイクロ波電源1
14、磁石116、マイクロ波導波管118、同軸変換
器120、誘電体板122、放射状アンテナ124等を
有して構成される。
【0045】直流グロー放電は、基板−電極間に負の直
流電圧を印加することによりプラズマを発生させる。直
流グロー放電に用いる直流電源は、1kW〜10kW程
度のもので、カーボン保護膜90の形成に必要にして十
分な出力を有するものを適宜選択すればよい。また、ア
ーク防止等の点で、2kHz〜20kHzにパルス変調
した直流電源も好適に利用可能である。高周波放電は、
マッチングボックスを介して電極に高周波電圧を印加す
ることにより、プラズマを発生させる。その際には、マ
ッチングボックスによってインピーダンス整合を行い、
高周波電圧の反射波が入射波に対して25%以下となる
ように調整する。高周波放電を行う高周波電源として
は、工業用の13.56MHzで、1kW〜10kW程
度の範囲で、カーボン保護膜90の形成に必要にして十
分な出力を有するものを適宜選択すればよい。また、パ
ルス変調した高周波電源も使用可能である。
【0046】直流アーク放電は、熱陰極を使用してプラ
ズマを発生させる。熱陰極としては、タングステン、ホ
ウ化ランタン(LaB6)等が利用可能である。また、ホロ
ーカソードを用いた直流アーク放電も利用可能である。
直流アーク放電に用いる直流電源としては、1kW〜1
0kW程度、10A〜200A程度の範囲で、カーボン
保護膜90の形成に必要にして十分な出力を有するもの
を適宜選択すればよい。
【0047】マイクロ波ECR放電は、マイクロ波とE
CR磁場とによってプラズマを発生させるものであり、
前述のように、図示例のCVD装置100は、このマイ
クロ波放電によってプラズマを発生させる。マイクロ波
電源114としては、工業用の2.45GHzで、1k
W〜3kW程度の範囲で、カーボン保護膜90の形成に
必要にして十分な出力を有するものを適宜選択すればよ
い。また、ECR磁場発生には、所望の磁場を形成でき
る永久磁石や電磁石を適宜用いればよく、図示例におい
ては、Sm-Co 磁石を磁石116として用いている。例え
ば、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合には、E
CR磁場は875G(Gauss) になるので、プラズマ発生
領域の磁場が500G〜2000Gとなる磁石を用いれ
ばよい。真空チャンバ102内へのマイクロ波の導入
は、マイクロ波導波管118、同軸変換器120、誘電
体板122等を用いて行われる。なお、磁場の形成状態
やマイクロ波の導入路は、カーボン保護膜90の膜厚分
布に影響を与えるので、カーボン保護膜90の膜厚が均
一になるように最適化するのが好ましい。
【0048】基板ホルダ108は、クランプや治具等の
公知の固定手段によって、ヒートシンク67を有するサ
ーマルヘッド66、ヒートシンク67を有さないサーマ
ルヘッド66、サーマルヘッド66から取り外されたグ
レーズを含む部位等を保持して、成膜の基板となるグレ
ーズを放射状アンテナ124に対向して固定するもので
ある。また、必要に応じて、プラズマ発生手段106に
対して、グレーズを回転や移動可能に構成してもよい。
基板(グレーズ表面)と放射状アンテナ124(プラズ
マ発生部)との距離には特に限定はなく、20mm〜20
0mm程度の範囲で、膜厚分布が均一になる距離を選択設
定すればよい。なお、カーボン保護膜90を形成する際
には、必要に応じて成膜領域を規制するためのマスクを
用いてもよい。この際には、例えば、SUS304やア
ルミニウム等の金属やテフロン等の樹脂からなる板状の
マスク部材を作製し、これを用いて非成膜部をマスキン
グすればよい。
【0049】プラズマCVDでカーボン膜を得るために
は、基板に負のバイアス電圧を印加しながら成膜を行う
必要がある。基板バイアス電源110は、このバイアス
電圧を印加するためのものである。特に限定はないが、
カーボン保護膜90は電気抵抗値が高いため、高周波電
圧の自己バイアス電圧を使用するのが好ましい。自己バ
イアス電圧は、プラズマ中で高周波電圧を印加した時に
生じる負の直流成分で、カーボン膜の生成の際には、通
常、−100V〜−500V程度が用いられる。高周波
電源は工業用の13.56MHzで、1kW〜5kW程
度のものから適宜選択すればよい。また、高周波電圧を
基板に印加する際には、基板と高周波電源との間にイン
ピーダンスを整合するマッチングボックスを使用するの
が好ましい。マッチングボックスは、手動制御でも自動
制御でもよく、既製品が各種利用可能である。さらに、
高周波電圧の自己バイアス電圧以外にも、2kHz〜2
0kHzにパルス変調した直流電源も利用可能である。
この場合も、印加電圧は−100V〜−500V程度で
ある。
【0050】ここで、プラズマCVDにおいては、この
基板バイアス電圧を調整することにより、生成するカー
ボン保護膜90の硬度を調整できる。一般的に、基板バ
イアス電圧を印加しながらCVDで成膜したカーボン膜
は、基板バイアス電圧が0から負に向かうに従って硬度
が高くなり、−200V〜−300Vの範囲で硬度が最
も高く、これを超えて負になると、逆に硬度が低くなっ
ていく。従って、例えば、成膜開始時の基板バイアス電
圧を−100V程度に設定しておき、成膜終了時までに
−300Vまで徐々に変化させることにより、成膜開始
時にやや軟質の膜が形成され、成膜終了時に膜が最も硬
質となり、内側(発熱体側)から表面に向かって硬度が
高くなる、硬度差すなわち厚み方向に硬さ勾配を有する
カーボン保護膜90を形成することができる。逆に、基
板バイアス電圧を成膜開始時に−300V程度とし、終
了時までに−100Vまで変化させることにより、表面
から内側に向かって硬度が高くなるカーボン保護膜90
が得られる。この際に基板バイアス電圧を連続的に変化
させれば、カーボン保護膜90の硬さ変化は連続的にな
り、基板バイアス電圧を段階的に変化させることによ
り、多層構成と同等の段階的な硬さ変化を有するカーボ
ン保護膜90となる。
【0051】なお、形成するカーボン保護膜90の硬度
や硬度差等の設定や制御方法には特に限定はなく、例え
ば、基板バイアス電圧と膜の硬度との関係をあらかじめ
実験等によって調べておき、これに応じてカーボン保護
膜90の成膜時における基板バイアス電圧を調整して、
所望の硬度および硬度差(硬さ勾配)を有するカーボン
保護膜90を生成すればよい。
【0052】また、カーボン保護膜90の硬度の調整方
法としては、これ以外にも、膜中の水素含有量を調整す
る方法も例示される。炭化水素ガスを反応ガスとして、
CVDによってカーボン保護膜90を形成する図示例の
態様においては、膜中の水素含有量が原子比で30%付
近が最も硬度の高い膜を得ることができる。従って、分
子中の水素原子量に応じて反応ガスを選択することによ
り、硬度差を有するカーボン保護膜90を形成すること
ができる。
【0053】本発明においては、カーボン保護膜90の
密着性を良好にするために、カーボン保護膜90の形成
に先立ち、基板(グレーズ)の表面すなわち図示例にお
いては下層保護膜88の表面をプラズマでエッチングす
るのが好ましい。エッチングの方法としては、前記プラ
ズマ発生手段106によってプラズマを発生しつつ、マ
ッチングボックスを介して高周波電圧を印加する方法
や、高周波電圧によって直接プラズマを発生させて、そ
のプラズマを利用してエッチングを行う方法が例示され
る。高周波電源としては、工業用の13.56MHz
で、1kW〜5kW程度のものから適宜選択すればよ
い。また、エッチングの強さは、基板に印加されるバイ
アス電圧を目安にすればよく、−100V〜−500V
の範囲で、適宜最適化を計ればよい。
【0054】図4に、カーボン保護膜90を形成するた
めのスパッタリング装置の概念図を示す。スパッタリン
グ装置130は、基本的に、真空チャンバ132と、ガ
ス導入部134と、スパッタリング手段136と、基板
ホルダ138とを有して構成される。
【0055】カーボン保護膜を形成するスパッタリング
を行うための真空チャンバ132、これに取り付けられ
る排気手段140、さらには排気速度の調整手段として
は、基本的に、前記CVD装置100と同様のものや構
成が好適に例示される。
【0056】ガス導入部134は、プラズマを発生する
ためのガスおよび水素ガスを導入する部位で、プラズマ
発生用のガス導入部134aと水素ガス用のガス導入部
134bとを有する。共に、前記CVD装置100のガ
ス導入部104と同様、Oリング等で真空シールされた
ステンレス製のパイプ等を用いて、導入量をマスフロー
コントローラ等の公知の方法で制御して、真空チャンバ
132内にガスを導入する。なお、ガスは真空チャンバ
132内のプラズマ発生領域の近傍に拭き出すように構
成される。また、吹き出し位置は、発生するプラズマの
分布に影響を与えないように最適化するのが好ましい。
カーボン保護膜90を作製するためのプラズマ発生用の
ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、
クリプトン、キセノン等の不活性ガスが用いられるが、
中でも特に、価格および入手の容易性の点で、アルゴン
ガスが好適に用いられる。
【0057】ここで、カーボン保護膜90の形成にスパ
ッタリングを利用する本態様においては、プラズマを発
生するためのガスとともに、水素ガスを流入して、その
流量を調整することにより、膜の硬度を調整することが
できる。そのため、成膜中の水素ガス流量を変更するこ
とにより、表面と内側とで硬度差(固さ勾配)を有する
カーボン保護膜90を作製することができる。例えば、
プラズマ発生ガスとしてアルゴンを用いた場合には、水
素ガスの流量がアルゴン流量の5%〜10%である時が
最も硬度の高い膜を成膜することができ、水素量が増え
るに応じて膜は軟化する。従って、例えば、成膜開始時
の水素ガス流量をアルゴンガスの20%程度に設定して
おき、成膜終了時までに5%程度まで徐々に変化させる
ことにより、前述のプラズマCVDの例と同様に、内側
から表面に向かって硬度が高くなる、硬さ勾配を有する
カーボン保護膜90を形成することができる。逆に、成
膜開始時の水素ガス流量をアルゴンガスの5%程度に設
定しておき、成膜終了時までに20%程度まで変化させ
ることにより、表面から内側に向かって硬度が高くなる
カーボン保護膜90を形成できる。水素流入量を連続的
に変化させればカーボン保護膜90の硬さの変化は連続
的になり、段階的に変化させれば、固さ変化が段階的と
なるのも同様である。
【0058】カーボン保護膜90の硬さの設定や制御の
方法には特に限定はなく、例えば、水素ガス流量と膜の
硬度との関係をあらかじめ実験等によって調べておき、
これに応じて成膜時における水素ガス流量を調整して、
所望の硬度および硬度差(硬さ勾配)を有するカーボン
保護膜90を生成すればよい。なお、カーボン保護膜9
0の硬度等を考慮すると、例えばプラズマ発生用ガスと
してアルゴンを用いた場合には、水素ガス流量はアルゴ
ンガス流量の2%〜50%の範囲とするのが好ましい。
また、水素ガスの流入は、図示例のようにプラズマ発生
用ガスと独立した導入管で行うのが好ましいが、装置構
成等の制限がある場合には、プラズマ発生用ガスと水素
ガスとを1本の導入管で行ってもよい。
【0059】スパッタリングでは、カソード142にス
パッタリングするターゲット材144を配置し、カソー
ド142を負電位にすると共に、ターゲット材144の
表面にプラズマを発生させることにより、ターゲット材
144(その原子)を弾き出して、対向した配置した基
板の表面(図示例ではサーマルヘッド66のグレーズ表
面=下層保護膜88の表面)に付着させ、堆積すること
により成膜する。スパッタリング手段136は、このカ
ソード142、ターゲット材144の配置部、シャッタ
146、直流電源152等を有するものである。
【0060】ターゲット材144の表面にプラズマを発
生する際には、直流電源152のマイナス側を直接カソ
ード142に接続し、−300V〜−1000V程度の
直流電圧を印加する。直流電源152の出力としては、
1kW〜10kW程度の範囲であり、カーボン保護膜9
0の形成に十分な出力を有するものを適宜選択すればよ
い。なお、カソード142の形状は、カーボン保護膜9
0が形成される基板の形状等に応じて適宜決定すればよ
い。また、アーク防止等の点で、2kHz〜20kHz
にパルス変調した負の直流電源も好適に利用可能であ
る。また、プラズマの発生には、高周波電源も利用可能
である。高周波電源を用いる場合には、マッチングボッ
クスを介してカソード142に高周波電圧を印加するこ
とにより、プラズマを発生させる。その際には、マッチ
ングボックスによってインピーダンス整合を行い、高周
波電圧の反射波が入射波に対して25%以下となるよう
に調整する。高周波電源としては、工業用の13.56
MHzで、1kW〜10kW程度の範囲で、カーボン保
護膜90の生成に必要にして十分な出力を有するものを
適宜選択すればよい。
【0061】ターゲット材144は、In系ハンダや機
械的な固定手段を用いて直接カソード142に固定して
もよいが、通常は、無酸素銅やステンレス等からなるバ
ッキングプレート154をカソード142に固定し、そ
の上にターゲット材144を前述のようにして張り付け
る。また、カソード142およびバッキングプレート1
54は水冷可能に構成され、これにより、間接的にター
ゲット材144も水冷される。なお、カーボン保護膜9
0を形成するために用いられるターゲット材144とし
ては、焼結カーボン材、グラッシーカーボン材等が好適
に例示される。また、その形状は、基板の形状に応じて
適宜決定すればよい。
【0062】カーボン保護膜90の形成は、カソード1
42の内部に永久磁石や電磁石等の磁石148を配置
し、ターゲット材144表面に磁場を形成してプラズマ
を閉じ込めてスパッタリングを行うマグネトロンスパッ
タリングも好適に利用可能である。このマグネトロンス
パッタリングは、成膜速度が早い点で好ましい。永久磁
石や電磁石の形状や位置、数、生成する磁場の強さ等は
形成するカーボン保護膜90の厚さや膜厚分布、ターゲ
ット材144の形状等に応じて適宜決定される。また永
久磁石として、Sm-Co 磁石やNd-Fe-B 磁石等の高磁場が
発生可能な磁石を用いることにより、プラズマを十分閉
じ込めることができる等の点で好ましい。
【0063】基板ホルダ138は、前述のCVD装置1
00に配置される基板ホルダ108と基本的に同じもの
であり、公知の手段でサーマルヘッド66を固定して、
基板となるグレーズをカソード142に対して対向して
固定するものである。また、必要に応じて、カソード1
42に対して、グレーズを回転や移動可能に構成しても
よく、基板のサイズ等に応じて適宜選択すればよい。基
板とターゲット材144との距離には特に限定はなく、
20mm〜200mm程度の範囲で、膜厚分布が均一になる
距離を選択設定すればよい。
【0064】また、カーボン保護膜90を得るために、
基板(図示例では下層保護膜88)に負のバイアス電圧
を印加しながら成膜を行う。バイアス電源150は、こ
のためのものである。バイアス電圧には特に限定はない
が、前記CDVと同様に、高周波電圧の自己バイアス電
圧を使用するのが好ましい。また、高周波電源として
も、前記CVDと同様のものが利用可能であり、マッチ
ングボックスの使用が好ましいのも同様である。さら
に、高周波電圧の自己バイアス電圧以外にも、2kHz
〜20kHzにパルス変調した直流電源も利用可能であ
る。この場合も、印加電圧は−100V〜−500V程
度である。
【0065】カーボン保護膜90を形成する際には、カ
ーボン保護膜90と下層(下層保護膜88)との密着性
を向上するために、カーボン保護膜90の形成に先立
ち、下層保護膜88の表面をプラズマでエッチングする
のが好ましい。エッチングの方法は、プラズマを発生さ
せ、マッチングボックスを介して基板に高周波電圧を印
加する方法や、高周波電圧によって直接プラズマを発生
させて、そのプラズマを利用する方法が例示される。プ
ラズマの発生や高周波電源は、前述のものを利用すれば
よい。また、エッチングの強さは、基板に印加されるバ
イアス電圧を目安にすればよく、通常、−100V〜−
500Vの範囲で、適宜最適化を図ればよい。
【0066】以上、本発明のサーマルヘッドおよびその
製造方法に付いて詳細に説明したが、本発明は上述の例
に限定されず、各種の改良や変更を行ってもよいのはも
ちろんである。
【0067】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明
をより詳細に説明する。 [実施例1]図3に示される(プラズマ)CVD装置1
00を用意した。詳細は以下のとおりである。
【0068】a.真空チャンバ102 排気手段112として、排気速度が1500L(リット
ル)/分のロータリーポンプ、同12000L/分のメ
カニカルブースタポンプ、および同3000L/秒のタ
ーボポンプを、それぞれ1台ずつ有する、SUS304
製で容積が0.5m3の真空チャンバ102。なお、ター
ボポンプの吸引部にオリフィスバルブを配置して、開口
度を10〜100%まで調整できるように構成してあ
る。
【0069】b.ガス導入部104 最大流量100〜500[sccm]のマスフローコントロー
ラと、直径6ミリのステンレス製パイプを用いて構成し
た。ステンレス製パイプと真空チャンバ102との接合
部は、Oリングによって真空シールした。プラズマ発生
用ガスとしては、アルゴンガスを用いた。
【0070】c.プラズマ発生手段106 発振周波数2.45GHz、最大出力3.0kWのマイ
クロ波電源114を用いるマイクロ波ECRプラズマ発
生装置とした。マイクロ波は、マイクロ波導入管118
で真空チャンバ102近傍まで導き、同軸変換器120
で変換後、真空チャンバ102内の放射状アンテナ12
4に導入した。誘電体板122は、幅800mm×高さ2
00mmの矩形のものを用いた。なお、マイクロ波は、マ
イクロ波導入管118の途中で4分割し、誘電体板12
2の4か所から真空チャンバ102内に導入した。さら
に、磁石116として、Sm-Co 磁石を複数個、誘電体板
122の形状に合わせて配置することでECR用磁場を
形成した。
【0071】d.基板ホルダ108 基板(すなわち、サーマルヘッド66のグレーズ)をプ
ラズマ発生部に対向して保持し、ターゲット材114と
放射状アンテナ124との距離が50mm〜150mmの間
で調整可能な構成を有する。また、エッチング用の高周
波電圧が印加できるように、基板によるサーマルヘッド
の保持部分を浮遊電位にした。
【0072】e.基板バイアス電源110 基板ホルダ108に、マッチングボックスを介して基板
バイアス電源110として高周波電源を接続した。高周
波電源は、周波数13.56MHzで、最大出力は3k
Wである。また、この高周波電源は、自己バイアス電圧
をモニタすることにより、−100V〜−500Vの範
囲で高周波出力が調整可能に構成されている。また、こ
のCVD装置100では、この基板バイアス手段110
で基板エッチング手段を兼ねている。
【0073】<サーマルヘッドの作製>このようなCV
D装置100を用いて、以下に示すようにしてサーマル
ヘッドを作製した。基となるサーマルヘッドとして、京
セラ社製 KGT-260-12MPH8を用いた。このサーマルヘッ
ドには、グレーズの表面に保護膜として厚さ11μmの
窒化珪素膜(Si3N4)が形成されている。従って、本実施
例では、この窒化珪素膜が下層保護膜88となり、その
上にカーボン保護膜90が形成された、2層構成の保護
膜を有するサーマルヘッド66となる。
【0074】まず、このサーマルヘッドのグレーズが放
射状アンテナ124に対向するように、真空チャンバ1
02内の基板ホルダ108にサーマルヘッドを固定し
た。基板(グレーズ表面)と放射状アンテナ124との
距離は100mmとした。また、サーマルヘッドのカーボ
ン保護膜の形成部以外(すなわち、グレーズ以外)に
は、あらかじめマスキングを施しておいた。サーマルヘ
ッドを固定後、真空チャンバ102内の圧力が5×10
-6Torrになるまで真空排気した。真空排気を継続しなが
ら、ガス導入部104aによってアルゴンガスを導入
し、ターボポンプに設置したオリフィスバルブによっ
て、真空チャンバ102内の圧力が1.0×10-3Torr
になるように調整した。次いで、マイクロ波電源114
を駆動してマイクロ波を4か所からそれぞれ400Wず
つ真空チャンバ102内に導入し、マイクロ波ECRプ
ラズマを発生させ、さらに、基板バイアス電源110を
駆動して、基板に高周波バイアス電圧を印加し、自己バ
イアス電圧−200Vで2分間、下層保護膜88(窒化
珪素膜)のエッチングを行った。エッチング終了後、自
己バイアス電圧による高周波バイアス電圧の印加を継続
しながら、真空チャンバ102内の圧力が3.0×10
-3Torrとなるようにメタンガスを導入してプラズマCV
Dを行い、厚さ1μmのカーボン保護膜90を有するサ
ーマルヘッド66を作製した。さらに、全く同様にし
て、厚さ2μmおよび3μmのカーボン保護膜90を形
成したサーマルヘッドも作製した。
【0075】ここで、以上の例においては、この系で成
膜されるカーボン保護膜90の硬度と、成膜時における
自己バイアス電圧との関係をあらかじめ調べておき、こ
れに応じて、形成するカーボン保護膜90の硬度および
硬度差を制御した。具体的には、膜厚1μm、2μmお
よび3μmのいずれも場合も、成膜開始時の自己バイア
ス電圧を−100Vとし、成膜終了時に−200Vとな
るように、連続的に自己バイアス電圧を変化することに
より、成膜開始時(内側)のビッカーズ硬度が1500
kg/mm2、成膜終了時(表面)のビッカーズ硬度が250
0kg/mm2の、硬度差が1000kg/mm2で連続的に硬度が
変化するカーボン保護膜90を形成した。また、カーボ
ン保護膜90の膜厚は、あらかじめ成膜速度を求めてお
き、所定の膜厚となる成膜時間を算出して、成膜時間で
制御した。
【0076】<性能評価>このような3種類の本発明の
サーマルヘッドと、感熱材料(富士フイルム社製ドライ
画像記録用フィルムCR−AT)とを用いて、B4サイ
ズで5000枚の感熱記録テスト行った。その結果、カ
ーボン保護膜90の膜厚が1μm、2μmおよび3μm
のいずれのサーマルヘッドも、カーボン保護膜90の割
れや剥離が生じることはなく、また、摩耗もほとんど認
められなかった。
【0077】[実施例2]反応ガスをアセチレンガスに
変更した以外は、前記実施例1と同様にして、それぞ
れ、膜厚が1μm、2μmおよび3μmのカーボン保護
膜90を有する、3種のサーマルヘッドを作製した。な
お、カーボン保護膜90の硬度および硬度差の制御も前
記実施例1と同様に行った。具体的には、3種のサーマ
ルヘッドのいずれも場合も、成膜開始時の自己バイアス
電圧を−100Vとし、成膜終了時に−200Vとなる
ように、連続的に自己バイアス電圧を変化することによ
り、成膜開始時(内側)のビッカーズ硬度が1500kg
/mm2、成膜終了時(表面)のビッカーズ硬度が2500
kg/mm2の、硬度差が1000kg/mm2で連続的に硬度が変
化するカーボン保護膜90とした。
【0078】<性能評価>このような3種類の本発明の
サーマルヘッドを用いて、実施例1と同様の性能評価を
行った。その結果、いずれのサーマルヘッドも、カーボ
ン保護膜90の割れや剥離が生じることはなく、また、
摩耗もほとんど認められなかった。
【0079】また、同様の性能評価試験を、エッチング
を行わないで; あるいはエッチング時のチャンバ10
2内の圧力を0.8×10-3Torrおよび5.0×10-3
Torrに変更して; あるいは成膜時の真空チャンバ10
2内の圧力のみを2.0×10-3Torrおよび5.0×1
-3Torrに変更して; それ以外は同様にして、前記実
施例1および実施例2と同様にして、1μm、2μmお
よび3μmのカーボン保護膜90を形成して作製した、
各種のサーマルヘッドについても行ったが、いずれの場
合も、前記実施例1および2と同様の良好な結果が得ら
れた。
【0080】[実施例3]図4に示されるスパッタリン
グ装置130を用意した。なお、真空チャンバ132、
ガス導入部134および基板ホルダ138は、前記実施
例1と同様のものである。それ以外の詳細は以下のとお
りである。
【0081】a.スパッタリング手段106 磁石148としてSm-Co 磁石を内部に配置した、ターゲ
ット材料のサイズが幅600mm×高さ100mmの矩形の
カソード142を用いた。バッキングプレート154と
しては、矩形状に加工した焼結カーボン材を用い、カソ
ード142にIn系ハンダを用いて張り付けた。また、
カソード142内部を水冷することにより、磁石14
8、カソード142およびバッキングプレート154裏
面を冷却した。直流電源152として、最大出力8kW
の負電位の直流電源を用い、負側をカソード142に接
続した。なお、この直流電源は、2kHz〜10kHz
の範囲でパルス状に変調できるように構成してある。
【0082】b.バイアス電源150 基板ホルダ138に、マッチングボックスを介して高周
波電源を接続した。高周波電源は、周波数13.56M
Hzで、最大出力は3kWである。また、この高周波電
源は、自己バイアス電圧をモニタすることにより、−1
00V〜−500Vの範囲で高周波出力が調整可能に構
成されている。このバイアス電源150は、エッチング
手段を兼ねている。
【0083】<サーマルヘッドの作製>このようなスパ
ッタリング装置130を用いて、以下に示すように、前
記実施例1と同様のサーマルヘッド(京セラ社製 KGT-
260-12MPH8)を基として、そのグレーズの表面にカーボ
ン保護膜90を形成し、本発明のサーマルヘッドを作製
した。すなわち、このサーマルヘッドも、窒化珪素膜の
下層保護膜88とカーボン保護膜90とからなる、2層
構成の保護膜を有する。
【0084】まず、グレーズがターゲット材114に対
向するように、真空チャンバ132内の基板ホルダ13
8にサーマルヘッド66を固定した。基板(グレーズ表
面)とターゲット材114表面との距離は100mmとし
た。また、実施例1と同様、グレーズ以外には、あらか
じめマスキングを施しておいた。このようにしてサーマ
ルヘッドを固定後、真空チャンバ132内の圧力が5×
10-6Torrになるまで真空排気した。真空排気を継続し
ながら、ガス導入部134aによってアルゴンガスを導
入し、ターボポンプに設置したオリフィスバルブによっ
て、真空チャンバ132内の圧力が5.0×10-3Torr
になるように調整した。次いで、バイアス電源150を
駆動して基板に高周波電圧を印加し、自己バイアス電圧
−200Vで10分間、下層保護膜(窒化珪素膜88)
のエッチングを行った。エッチング終了後、ターゲット
材114として焼結グラファイト材をバッキングプレー
ト154に固定(In系ハンダで張り付け)して、真空
チャンバ132内の圧力が5.0×10-3Torrとなるよ
うにアルゴンガス流量およびオリフィスバルブを調整
し、シャッタ146を閉じた状態でターゲット材114
に直流電力0.5kWを5分間印加した。次いで、真空
チャンバ132内の圧力を保ったまま、ターゲット材1
14に印加する流電力を5kWとし、かつ基板に−20
0Vの高周波の自己バイアス電圧を印加した後にシャッ
タ146を開き、同時に、ガス導入部134bから水素
ガスの流入を開始し、厚さ1μmのカーボン保護膜90
を有するサーマルヘッド66を作製した。さらに、全く
同様にして、厚さ2μmおよび3μmのカーボン保護膜
90を有するサーマルヘッドも作製した。
【0085】ここで、以上の例においては、この系で成
膜されるカーボン保護膜90の硬度と、成膜時における
水素ガス流量(アルゴンガス流量に対する割り合い)と
の関係をあらかじめ調べておき、これに応じて、作製す
るカーボン保護膜90の硬度を制御した。具体的には、
膜厚1μm、2μmおよび3μmのいずれも場合も、成
膜開始時の水素ガス流量をアルゴンガス流量の15%と
し、成膜終了時に5%となるように、連続的に水素ガス
流量を変化することにより、成膜開始時(内側)のビッ
カーズ硬度が1200kg/mm2、成膜終了時(表面)のビ
ッカーズ硬度が2200kg/mm2の、硬度差が1000kg
/mm2で連続的に硬度が変化するカーボン保護膜90を作
製した。また、カーボン保護膜90の膜厚は、あらかじ
め成膜速度を求めておき、所定の膜厚となる成膜時間を
算出して、成膜時間で制御した。
【0086】<性能評価>このような3種類の本発明の
サーマルヘッドを用いて、実施例1と同様の性能評価を
行った。その結果、いずれのサーマルヘッドも、カーボ
ン保護膜90の割れや剥離が生じることはなく、また、
摩耗もほとんど認められなかった。
【0087】[実施例4]ターゲットをグラッシーカー
ボン材に変更した以外は、前記実施例3と同様にして、
それぞれ、膜厚が1μm、2μmおよび3μmのカーボ
ン保護膜90を有する、3種のサーマルヘッドを作製し
た。また、カーボン保護膜90の硬度および硬度差の制
御も前記実施例3と同様に行った。具体的には、3種の
サーマルヘッドのいずれも場合も、成膜開始時の水素ガ
ス流量をアルゴンガス流量の15%とし、成膜終了時に
5%となるように、連続的に水素ガス流量を変化するこ
とにより、成膜開始時(内側)のビッカーズ硬度が12
00kg/mm2、成膜終了時(表面)のビッカーズ硬度が2
200kg/mm2の、硬度差が1000kg/mm2で連続的に硬
度が変化するカーボン保護膜90とした。
【0088】<性能評価>このような3種類の本発明の
サーマルヘッドを用いて、実施例1と同様の性能評価を
行った。その結果、いずれのサーマルヘッドも、カーボ
ン保護膜90の割れや剥離が生じることはなく、また、
摩耗もほとんど認められなかった。
【0089】また、同様の性能評価試験を、エッチング
を行わないで; あるいはエッチング時の真空チャンバ
132内の圧力のみを8.0×10-3Torrに変更して;
あるいは成膜時の真空チャンバ132内の圧力のみを
3.0×10-3Torrおよび8.0×10-3Torrに変更し
て; それ以外は同様にして、前記実施例3および実施
例4と同様にして、1μm、2μmおよび3μmのカー
ボン保護膜を形成して作製した、各種のサーマルヘッド
を用いて行ったが、いずれの場合も前記実施例3および
4と同様の良好な結果が得られた。
【0090】[比較例]下記の各種のサーマルヘッドを
用意した。 a.前記各実施例で、基となったサーマルヘッド(京セ
ラ社製 KGT-260-12MPH8) b.成膜時における高周波自己バイアス電圧を−200
Vで一定とした以外は、前記実施例1と同様にして作製
した、厚さ2μmで、ビッカーズ硬度が2500kg/mm2
で均一なカーボン保護膜を有するサーマルヘッド。 c.成膜時における水素ガス流量をアルゴンガス流量に
対して5%で一定とした以外は、前記実施例3と同様に
して作製した、厚さ2μmで、ビッカーズ硬度が220
0kg/mm2で均一なカーボン保護膜を有するサーマルヘッ
ド。
【0091】<性能評価>このような3種類の本発明の
サーマルヘッドを用いて、実施例1と同様の性能評価を
行った。その結果、bおよびcのサーマルヘッドは、5
000枚の記録を終了する前に、カーボン保護膜の割れ
や剥離が生じてしまった。また、aのサーマルヘッド
は、窒化珪素保護膜に2μmの摩耗が発生してしまっ
た。以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【0092】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、保護膜の腐食や摩耗が極めて少なく、しかも熱
や機械的衝撃に対しても保護膜の割れや剥離の発生も好
適に防止して、十分な耐久性を有し、長期に渡って高い
信頼性を発揮し、これにより、長期に渡って高画質の感
熱記録を安定して行うことができるサーマルヘッドを実
現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のサーマルヘッドを利用する感熱記録
装置の一例の概念図である。
【図2】 本発明のサーマルヘッドの発熱素子の構成を
示す概略図である。
【図3】 本発明のサーマルヘッドのカーボン保護膜を
形成する(プラズマ)CVD装置の一例の概念図であ
る。
【図4】 本発明のサーマルヘッドのカーボン保護膜を
形成するスパッタリング装置の一例の概念図である。
【符号の説明】
10 (感熱)記録装置 14 装填部 16 供給搬送手段 20 記録部 22 排出部 24 マガジン 66 サーマルヘッド 80 基板 82 グレーズ層 84 発熱抵抗体 86 電極 88 下層保護膜 90 カーボン保護膜 100 (プラズマ)CVD装置 102,132 真空チャンバ 104,134 ガス導入部 106 プラズマ発生手段 108,138 基板ホルダ 110 基板バイアス電源 112,140 排気手段 114 マイクロ波電源 116 磁石 118 マイクロ波導入管 120 同軸変換器 122 誘電体板 124 放射状アンテナ 130 スパッタリング装置 136 スパッタリング手段 142 カソード 144 ターゲット材 146 シャッタ 148 磁石 150 バイアス電源 152 直流電源 154 バッキングプレート

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】発熱体を保護する保護膜として、炭素を主
    成分とし、厚み方向に硬度差を持つ保護膜を有すること
    を特徴とするサーマルヘッド。
  2. 【請求項2】前記硬度差が、ピッカーズ硬度で100kg
    /mm2以上である請求項1に記載のサーマルヘッド。
  3. 【請求項3】前記炭素を主成分とする保護膜の発熱体側
    に、下層保護膜としてセラミックを主成分とする保護膜
    を少なくとも1層有する請求項1または2に記載のサー
    マルヘッド。
  4. 【請求項4】炭素を主成分とするガスをイオン化した雰
    囲気中において、発熱体表面に高周波バイアス電圧を印
    加し、かつ前記高周波バイアス電圧を変更することによ
    り、前記発熱体表面に厚み方向に硬度差を持つ保護膜を
    形成してなることを特徴とするサーマルヘッド。
  5. 【請求項5】炭素を主成分とする固体を蒸発すると共に
    水素ガスが流入された雰囲気中において、発熱体表面に
    プラズマを発生をさせると共に高周波バイアス電圧を印
    加し、かつ前記水素ガスの流量を変更することにより、
    前記発熱体表面に厚み方向に硬度差を持つ保護膜を形成
    してなることを特徴とするサーマルヘッド。
  6. 【請求項6】発熱体を含むサーマルヘッドの少なくとも
    一部をチャンバ内に配置し、前記チャンバ内に炭素を主
    成分とするガスを流入して、このガスをイオン化すると
    共に、発熱体表面に高周波バイアス電圧を印加し、かつ
    この高周波バイアス電圧を変更することにより、サーマ
    ルヘッドの発熱体表面に、厚み方向に硬度差を持つ保護
    膜を形成することを特徴とするサーマルヘッドの製造方
    法。
  7. 【請求項7】発熱体を含むサーマルヘッドの少なくとも
    一部をチャンバ内に配置し、前記チャンバ内に水素ガス
    を流入しつつ前記チャンバ内において炭素を主成分とす
    る固体を蒸発させると共に、発熱体表面にプラズマを発
    生させると共に高周波バイアス電圧を印加し、かつ前記
    水素ガスの流入量を変更することにより、サーマルヘッ
    ドの発熱体表面に、厚み方向に硬度差を持つ保護膜を形
    成することを特徴とするサーマルヘッドの製造方法。
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