JPH115323A - サーマルヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

サーマルヘッドおよびその製造方法

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JPH115323A
JPH115323A JP11173898A JP11173898A JPH115323A JP H115323 A JPH115323 A JP H115323A JP 11173898 A JP11173898 A JP 11173898A JP 11173898 A JP11173898 A JP 11173898A JP H115323 A JPH115323 A JP H115323A
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JP
Japan
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protective film
thermal head
heat
film
carbon
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JP11173898A
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English (en)
Inventor
Atsutoshi Nonoshita
敦平 埜下
Junichi Yoneda
純一 米田
Makoto Kashiwatani
誠 柏谷
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】炭素を主成分とする保護膜を有するサーマルヘ
ッドであって、保護膜の腐食や磨耗が極めて少なく、し
かも熱や機械的衝撃に対しても保護膜の割れや剥離の発
生を防止して、十分な耐久性を有し、長期に渡って高い
信頼性を発揮し、これにより、長期に渡って高画質の感
熱記録を安定して行うことができるサーマルヘッドの提
供。 【解決手段】発熱体を保護する保護膜として、前記発熱
体側に形成され、セラミックスを主成分とする少なくと
も1層からなる下層保護膜と、この下層保護膜上に形成
され、炭素を主成分とする上層保護膜とを有するサーマ
ルヘッドであって、前記下層保護膜の前記上層保護膜が
形成される側の表面の表面粗度Raの値が0.005〜
0.5μmであることを特徴とするサーマルヘッドによ
り、上記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種のプリンタ、
プロッタ、ファックス、レコーダ等に記録手段として用
いられる感熱記録を行うためのサーマルヘッドの技術分
野に属する。
【0002】
【従来の技術】超音波診断画像の記録に、フィルム等を
支持体として感熱記録層を形成してなる感熱材料を用い
た感熱記録が利用されている。また、感熱記録は、湿式
の現像処理が不要であり、取り扱いが簡単である等の利
点を有することから、近年では、超音波診断のような小
型の画像記録のみならず、CT診断、MRI診断、X線
診断等の大型かつ高画質な画像が要求される用途におい
て、医療診断のための画像記録への利用も検討されてい
る。
【0003】周知のように、感熱記録は、感熱材料の感
熱記録層を加熱して画像を記録する、発熱体と電極とを
有する発熱素子が一方向(主走査方向)に配列されたグ
レーズが形成されたサーマルヘッドを用い、グレーズを
感熱材料(感熱記録層)に若干押圧した状態で、両者を
前記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に移動し
つつ、MRI等の画像データ供給源から供給された記録
画像の画像データに応じて、グレーズの各画素の発熱体
にエネルギーを印加して発熱させることにより、感熱材
料の感熱記録層を加熱して画像記録を行う。
【0004】このサーマルヘッドのグレーズには、感熱
材料を加熱する発熱体、あるいはさらに電極等を保護す
るため、その表面に保護膜が形成されている。従って、
感熱記録時に感熱材料と接触するのは、この保護膜で、
発熱体は、この保護膜を介して感熱材料を加熱し、これ
により感熱記録が行われる。保護膜の材料には、通常、
耐摩耗性を有するセラミック等が用いられているが、保
護膜の表面は、感熱記録時には加熱された状態で感熱材
料と慴接するため、記録を重ねるにしたがって摩耗し、
劣化する。
【0005】この摩耗が進行すると、感熱画像に濃度ム
ラが生じたり、保護膜としての強度が保てなくなるた
め、発熱体等を保護する機能が損なわれ、最終的には、
画像記録ができなくなる状態に陥る(ヘッド切れ)。特
に、前述の医療用途のように、高品質で、かつ高画質な
多階調画像が要求される用途においては、高品質化およ
び高画質化を計るために、ポリエステルフィルム等の高
剛性の支持体を使用する感熱フィルムを用い、さらに、
記録温度(印加エネルギー)や、感熱材料へのサーマル
ヘッドの押圧力を高く設定する方向にある。そのため、
通常の感熱記録に比して、サーマルヘッドの保護膜にか
かる力や熱が大きく、摩耗や腐食(腐食による摩耗)が
進行し易くなっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このようなサーマルヘ
ッドの保護膜の摩耗を防止し、耐久性を向上する方法と
して、保護膜の性能を向上する技術が数多く検討されて
おり、中でも特に、耐摩耗性や耐蝕性に優れた保護膜と
して、炭素を主成分とする保護膜(以下、カーボン保護
膜とする)が知られている。
【0007】例えば、特公昭61−53955号および
特公平4−62866号(前記出願の分割出願)の各公
報には、サーマルヘッドの保護膜として、ビッカーズ硬
度が4500kg/mm2 以上のカーボン保護膜を形成
することにより、優れた耐摩耗性と共に、保護膜を十分
に薄くして優れた応答性も実現したサーマルヘッド、お
よびその製造方法が開示されている。このようなカーボ
ン保護膜は、ダイアモンドに極めて近い特性を有するも
ので、非常に硬度が高く、また、化学的にも安定であ
る。そのため、感熱材料との摺接に対する耐摩耗性や耐
蝕性という点では優れた特性を発揮する。しかしなが
ら、カーボン保護膜は、優れた耐摩耗性を有するもの
の、硬いが故に脆い、すなわち靭性が低く、発熱素子の
加熱によるヒートショックや熱的なストレスによって、
比較的容易に割れや剥離が生じてしまうという問題点が
ある。
【0008】このような問題点に対し、特開平7−13
2628号公報には、下層のシリコン系化合物層と、そ
の上層のダイアモンドライクカーボン層との2層構造の
保護膜を有することにより、ヒートショック等による保
護膜の摩耗および破壊を大幅に低減し、高画質記録が長
期に渡って可能なサーマルヘッドが開示されている。ま
た、同号公報では、シリコン系化合物層に、その表面を
還元性雰囲気中でプラズマCVD等により表面処理を行
うことにより、ダイヤモンドライクカーボン層との付着
力を向上させている。しかしながら、それでもなお、ダ
イアモンドライクカーボン層とシリコン系化合物層との
付着力は十分ではなく、これら各層の熱膨張係数の違い
によるストレスや、記録中に感熱材料とサーマルヘッド
(グレーズ)との間に混入する異物による機械的衝撃等
によって、やはり割れや剥離が生じてしまうという問題
点がある。このように保護膜に割れや剥離が生じると、
ここから摩耗や腐食、さらには腐食による摩耗が進行し
て、サーマルヘッドの耐久性が低下してしまい、やは
り、長期に渡って高い信頼性を発揮することはできな
い。
【0009】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を
解決することにあり、炭素を主成分とする保護膜を有す
るサーマルヘッドであって、保護膜の腐食や摩耗が極め
て少なく、しかも熱や機械的衝撃に対しても保護膜の割
れや剥離の発生を防止して、十分な耐久性を有し、長期
に渡って高い信頼性を発揮し、これにより、長期に渡っ
て高画質の感熱記録を安定して行うことができるサーマ
ルヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は、発熱体を保護する保護膜として、前記発
熱体側に形成され、セラミックスを主成分とする少なく
とも1層からなる下層保護膜と、この下層保護膜上に形
成され、炭素を主成分とする上層保護膜とを有するサー
マルヘッドであって、前記下層保護膜の前記上層保護膜
が形成される側の表面の表面粗度Raの値が0.005
〜0.5μmであることを特徴とするサーマルヘッドを
提供する。
【0011】また、本発明は、発熱体を保護する保護膜
として、前記発熱体側に、セラミックスを主成分とする
少なくとも1層からなる下層保護膜を形成し、この下層
保護膜上に、炭素を主成分とする上層保護膜を形成し
て、サーマルヘッドを製造するに際し、前記下層保護膜
に表面処理を施して、前記表面の表面粗度Raの値を
0.005〜0.5μmとした後、前記上層保護膜を形
成することを特徴とするサーマルヘッドの製造方法を提
供する。
【0012】ここで、前記表面処理がラッピングシート
を用いて研磨する方法、または、サンドブラスト処理で
あるのが好ましい。また、前記上層保護膜の形成を、ス
パッタリング処理、または、プラズマCVD処理により
行うのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明のサーマルヘッドに
ついて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に
説明する。
【0014】図1に、本発明のサーマルヘッドを利用す
る感熱記録装置の一例の概略図が示される。図1に示さ
れる感熱記録装置(以下、記録装置とする)10は、例
えばB4サイズ等の所定のサイズのカットシートである
感熱材料(以下、感熱材料Aとする)に感熱記録を行う
ものであり、感熱材料Aが収容されたマガジン24が装
填される装填部14、供給搬送部16、サーマルヘッド
66によって感熱材料Aに感熱記録を行う記録部20、
および排出部22を有して構成される。
【0015】このような記録装置10においては、マガ
ジン24から感熱材料Aを1枚引き出し、記録部20ま
で感熱材料Aを搬送して、サーマルヘッド66を感熱材
料Aに押圧しつつ、グレーズの延在方向すなわち主走査
方向(図1および図2において紙面と垂直方向)と直交
する副走査方向に感熱材料Aを搬送して、記録画像(画
像データ)に応じて各発熱素子を発熱することにより、
感熱材料Aに感熱記録を行う。
【0016】感熱材料Aは、透明なポリエチレンテレフ
タレート(PET)フィルムなどの樹脂フィルムや紙等
を支持体として、その一面に感熱記録層を形成してなる
ものである。このような感熱材料Aは、100枚等の所
定単位の積層体(束)とされて袋体や帯等で包装されて
おり、図示例においては、所定単位の束のまま感熱記録
層を下面として記録装置10のマガジン24に収納さ
れ、一枚づつマガジン24から取り出されて感熱記録に
供される。
【0017】マガジン24は、開閉自在な蓋体26を有
する筐体であり、感熱材料Aを収納して記録装置10の
装填部14に装填される。装填部14は、記録装置10
のハウジング28に形成された挿入口30、案内板32
および案内ロール34,34、停止部材36を有してい
る。マガジン24は、蓋体26側を先にして挿入口30
から記録装置10内に挿入され、案内板32および案内
ロール34に案内されつつ、停止部材36に当接する位
置まで押し込まれることにより、記録装置10の所定の
位置に装填される。また、装填部14には、マガジンの
蓋体26を開閉するための、図示しない開閉機構が設け
られている。
【0018】供給搬送手段16は、装填部14に装填さ
れたマガジン24から感熱材料Aを1枚取り出して、記
録部20に搬送するものであり、吸引によって感熱材料
Aを吸着する吸盤40を用いる枚葉機構、搬送手段4
2、搬送ガイド44、および搬送ガイド44の出口に位
置する規制ローラ対52を有する。搬送手段42は、搬
送ローラ46と、この搬送ローラ46と同軸のプーリ4
7a、回転駆動源に接続されるプーリ47bならびにテ
ンションプーリ47cと、この3つのプーリに張架され
るエンドレスベルト48と、搬送ローラ46とローラ対
を成すニップローラ50とを有して構成され、吸盤40
によって枚葉された感熱材料Aの先端を搬送ローラ46
とニップローラ50とによって挟持して、感熱材料Aを
搬送する。
【0019】記録装置10において記録開始の指示が出
されると、前記開閉機構によって蓋体26が開放され、
吸盤40を用いた枚葉機構がマガジン24から感熱材料
Aを一枚取り出し、感熱材料Aの先端を搬送手段42
(搬送ローラ46とニップローラ50とから成るローラ
対)に供給する。搬送ローラ46とニップローラ50と
によって感熱材料Aが挟持された時点で、吸盤40によ
る吸引は開放され、供給された感熱材料Aは、搬送ガイ
ド44によって案内されつつ搬送手段42によって規制
ローラ対52に搬送される。なお、記録に供される感熱
材料Aがマガジン24から完全に排出された時点で、前
記開閉手段によって蓋体26が閉塞される。
【0020】搬送ガイド44による搬送手段42から規
制ローラ対52までの距離は、感熱材料Aの搬送方向の
長さより若干短く設定されている。搬送手段42による
搬送で感熱材料Aの先端が規制ローラ対52に至るが、
規制ローラ対52は最初は停止しており、感熱材料Aの
先端はここで一旦停止して位置決めされる。この感熱材
料Aの先端が規制ローラ対52に至った時点で、サーマ
ルヘッド66(グレーズ)の温度が確認され、サーマル
ヘッド66の温度が所定温度であれば、規制ローラ対5
2による感熱材料Aの搬送が開始され、感熱材料Aは、
記録部20に搬送される。
【0021】記録部20は、サーマルヘッド66、プラ
テンローラ60、クリーニングローラ対56、ガイド5
8、サーマルヘッド66を冷却するヒートシンク67、
冷却ファン76およびガイド62を有する。サーマルヘ
ッド66は、例えば、最大B4サイズまでの画像記録が
可能な、約300dpiの記録(画素)密度の感熱記録
を行うもので、保護膜に特徴を有する以外は、感熱材料
Aへの感熱記録を行う発熱素子が一方向(主走査方向)
に配列されるグレーズが形成された公知の構成を有する
ものである。このサーマルヘッド66には、冷却のため
のヒートシンク67が固定される。また、サーマルヘッ
ド66は、支点68aを中心に上下方向に回動自在な支
持部材68に支持されている。このサーマルヘッド66
のグレーズについては、後に詳述する。なお、本発明の
サーマルヘッド66の幅(主走査方向)、解像度(記録
密度)、記録階調等には特に限定は無いが、幅は5cm
〜50cm、解像度は6dot/mm(約150dp
i)以上、記録階調は256階調以上であるのが好まし
い。
【0022】プラテンローラ60は、感熱材料Aを所定
位置に保持しつつ所定の画像記録速度で図中の矢印方向
に回転し、主走査方向と直交する副走査方向(図2中の
矢印x方向)に感熱材料Aを搬送する。クリーニングロ
ーラ対56は、弾性体である粘着ゴムローラ(図中上
側)と、通常のローラとからなるローラ対であり、粘着
ゴムローラが感熱材料Aの感熱記録層に付着したゴミ等
を除去して、グレーズへのゴミの付着や、ゴミが画像記
録に悪影響を与えることを防止する。
【0023】図示例の記録装置10において、感熱材料
Aが搬送される前は、支持部材68は上方に回動して、
サーマルヘッド66のグレーズとプラテンローラ60と
が接触する直前の待機位置となっている。前述の規制ロ
ーラ対52による搬送が開始されると、感熱材料Aは、
次いでクリーニングローラ対56に挟持され、さらに、
ガイド58によって案内されつつ搬送される。感熱材料
Aの先端が記録開始位置(グレーズに対応する位置)に
搬送されると、支持部材68が下方に回動して、グレー
ズとプラテンローラ60とで感熱材料Aが挟持されて、
記録層にグレーズが押圧された状態となり、感熱材料A
はプラテンローラ60によって所定位置に保持されつ
つ、プラテンローラ60等によって副走査搬送される。
この搬送に伴い、グレーズの各発熱素子を記録画像に応
じて加熱することにより、感熱材料Aに感熱記録が行わ
れる。
【0024】感熱記録が終了した感熱材料Aは、ガイド
62に案内されつつ、プラテンローラ60および搬送ロ
ーラ対63に搬送されて排出部22のトレイ72に排出
される。トレイ72は、ハウジング28に形成された排
出口74を経て記録装置10の外部に突出しており、画
像が記録された感熱材料Aは、この排出口74を経て外
部に排出され、取り出される。
【0025】図2に、サーマルヘッド66のグレーズ
(発熱素子)の概略断面図を示す。図示例において、グ
レーズは、基板80の上(図示例のサーマルヘッド66
は、上から感熱材料Aに押圧されるので、図2中では下
となる)に形成されるグレーズ層(畜熱層)82、その
上に形成される発熱(抵抗)体84、その上に形成され
る電極86、およびその上に形成される、発熱体84あ
るいはさらに電極86等を保護するための保護膜等を有
して構成される。図示例においては、保護膜が2層構成
を有するもので、発熱体84および電極86を覆って形
成されるセラミックを主成分とする下層保護膜88と、
下層保護膜88の上に上層保護膜として形成される、炭
素を主成分とする保護膜、例えばカーボン保護膜90
(好ましくは、DLC保護膜=Diamond Like Carbon 保
護膜)とから保護膜が構成される。
【0026】本発明のサーマルヘッド66は、この下層
保護膜88以外は、基本的に公知のサーマルヘッドと同
様の構成とすることができる。従って、それ以外の層構
成や各層の材料には特に限定はなく、公知のものが各種
利用可能である。具体的には、基板80としては耐熱ガ
ラスやアルミナ、シリカ、マグネシアなどのセラミック
ス等の電気絶縁性材料が、グレーズ層82としては耐熱
ガラスやポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂等が、発熱体8
4としてはニクロム(Ni-Cr)、タンタル、窒化タンタル
等の発熱抵抗体が、電極86としてはアルミニウム、
金、銀、銅等の導電性材料が、各種利用可能である。な
お、グレーズ(発熱素子)には、真空蒸着、CVD(Che
mical Vapor Deposition) 、スパッタリング等のいわゆ
る薄膜形成技術およびフォトエッチング法を用いて形成
される薄膜型発熱素子と、スクリーン印刷などの印刷な
らびに焼成によるいわゆる厚膜形成技術およびエッチン
グを用いて形成される厚膜型発熱素子とが知られている
が、本発明に用いられるサーマルヘッド66は、いずれ
の方法で形成されたものであってもよい。
【0027】上述のように、図示例のサーマルヘッド6
6は、カーボン保護膜90と下層保護膜88の2層構成
の保護膜を有する。このような下層保護膜を有すること
により、耐摩耗性、耐蝕性、耐腐食摩耗性等の点でより
好ましい結果を得ることができ、より耐久性が高く、長
寿命のサーマルヘッドが実現できる。本発明のサーマル
ヘッド66に形成される下層保護膜88としては、サー
マルヘッドの保護膜と成り得る耐熱性、耐蝕性および耐
摩耗性を有する材料であるセラミックスを主成分とする
ものであれば特に限定されず、各種のセラミックス材料
が使用可能である。
【0028】具体的には、窒化珪素(Si3N4) 、炭化珪素
(SiC) 、酸化タンタル(Ta2O5) 、酸化アルミニウム(Al2
O3) 、サイアロン(SiAlON)、ラシオン(LaSiON)、酸化珪
素(SiO2)、窒化アルミニウム(AlN) 、窒化ホウ素(BN)、
酸化セレン(SeO) 、窒化チタン(TiN) 、炭化チタン(Ti
C) 、炭窒化チタン(TiCN)、窒化クロム(CrN) 、および
これらの混合物等が例示される。中でも特に、成膜の容
易性や製造コストなどの製造適正、機械的摩耗と化学的
摩耗による摩耗のバランス等の点で、窒化珪素、炭化珪
素、サイアロン等は好適に利用される。また、下層保護
膜には、物性調整のため、後述する半金属や金属等の微
量の添加物が含まれてもよい。下層保護膜88の形成方
法には特に限定はなく、前述の厚膜形成技術や薄膜形成
技術等を用いて、公知のセラミックス膜(層)の形成方
法で形成される。
【0029】下層保護膜88の厚さには特に限定はない
が、好ましくは0.6μm〜50μm程度、より好まし
くは2μm〜20μm程度である。下層保護膜88の厚
さを上記範囲とすることにより、耐摩耗性と熱伝導性
(すなわち記録感度)とのバランスを好適に取ることが
できる等の点で好ましい結果を得る。また、下層保護膜
88は多層構成でもよい。下層保護膜88を多層構成と
する際には、異なる材料を用いて多層構成としてもよ
く、あるいは、同じ材料で密度等の異なる層を有する多
層構成であってもよく、あるいは、その両者を有するも
のであってもよい。
【0030】本発明に用いられるサーマルヘッド66
は、このような下層保護膜88の上に、炭素を主成分と
するカーボン保護膜90を有する2層構造である。これ
により、カーボン保護膜90の有する優れた耐摩耗性や
耐蝕性が得られ、前述のヒートショックや熱ストレス、
カーボン保護膜90の割れや剥離をある程度抑制するこ
とが可能である。しかしながら、下層である窒化珪素膜
に何ら表面処理を施さないで、あるいは、高周波エッチ
ング等の成膜工程において一般的に行われるような表面
処理(これらは一般に後述のRa値が30nm程度のも
のである)を施して、カーボン保護膜90を形成した場
合には、下層(図示例では下層保護膜88)との密着性
が十分に得られず、下層との熱膨張係数の違いから生じ
るストレスや、不純物による機械的衝撃等に耐えきれ
ず、やはり割れや剥離が生じてしまう。
【0031】これに対し、本発明のサーマルヘッド66
においては、下層保護膜88である窒化珪素膜に、後述
するRa値が0.005〜0.5μmになるまで、表面
処理を施した後、カーボン保護膜90を形成することに
より、サーマルヘッドの耐久性が大幅に向上することを
見いだして完成されたものである。このような構成とし
たことにより、本発明のサーマルヘッド66はカーボン
保護膜90のひび割れ、剥離等を有効に防止することが
できる。しかも、カーボン保護膜90は化学的に非常に
安定であるため、セラミックス膜である下層保護膜88
の化学腐食を有効に防止し、サーマルヘッドの寿命を長
くすることができる。従って、本発明のサーマルヘッド
66は十分な耐久性を有し、長期に渡って高い信頼性を
発揮し、これにより、長期に渡って高画質の感熱記録を
安定して行うことができる。特に、前述の医療用途のよ
うに、ポリエステルフィルム等の高剛性の支持体を使用
する感熱フィルムに対して、高エネルギー・高圧力下の
記録を行う用途においても、十分な耐久性を有し、長期
に渡って高い信頼性を発揮することができる。
【0032】本発明における下層保護膜88の表面処理
は、表面粗度を表すRa値が0.005〜0.5μmに
なるまで表面を荒らすことが必要である。Ra値は好ま
しくは0.005〜0.2μmであり、さらに好ましく
は0.005〜0.05μmである。Ra値が0.00
5μm未満であると、カーボン保護膜90と下層保護膜
88との間に十分な密着性が得られず、カーボン保護膜
90のひび割れ、剥離等が生じることがあるので好まし
くない。一方、Ra値が0.5μm超であると、サーマ
ルヘッドのグレーズの各位置における特性の均一性が十
分でなくなり、濃度ムラのない十分に均一な高画質記録
が行えないことがあるので好ましくない。なお、本明細
書中におけるRa値は、中心線平均粗さであり、下層保
護膜88の表面形状を2次元的に測定して得た粗さ曲線
から、その中心線の方向に測定長さlの部分を抜き取
り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向を
Y軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で表したとき、下記
式(1)により算出される値を用いたが、3次元的に粗
さ曲面であるz=f(x,y)を測定し、面積sの部分
を抜き取り、下記式(2)により算出される値を用いて
もよい。
【数1】
【0033】本発明における表面処理の方法としては、
上述のRa値が得られるものであれば特に限定されず、
従来公知の種々の方法が使用可能であるが、サンドブラ
スト処理、ラッピングシートを用いて研磨する方法等が
水等の浸透がなく、このためグレーズの特性を低下させ
ることなく処理できる点で好適に例示される。
【0034】サンドブラスト処理の方法としては、下層
保護膜88表面に研磨材を吹きつけて表面を荒らすこと
により、上述のRa値が得られるものであれば、特に限
定されないが、誘導式ブラスト機を用いるのが好まし
い。誘導式ブラスト機に用いる研磨材としては、#60
〜#200のガラスビーズ、スチールグリッド、アラン
ダムが好適に例示されるが、これに限定されるものでは
ない。また、研磨材を吹きつける際の空気圧は5〜7k
g/cm2 とするのが好ましい。ラッピングシートを用
いる場合は、公知のラッピングシートを用い、機械的
に、あるいは、手作業によりサーマルヘッドの下層保護
膜88を研磨すればよい。機械的に研磨を行う場合に
は、サーマルヘッドの下層保護膜88をラッピングシー
トに接触させた状態で、ラッピングシートを通過させる
ことにより行えばよい。なお、ラッピングシートの種類
は上述のRa値が得られる程度のものであれば特に限定
されないが、#1000〜#15000等が好適に例示
される。
【0035】このように表面処理が施された下層保護膜
88の上には、炭素を主成分とするカーボン保護膜90
が形成される。なお、図示例のサーマルヘッド66にお
いては、炭素を主成分とする保護膜として、カーボン保
護膜90、例えばDLC保護膜を用いている。本発明に
おいて、炭素を主成分とする保護膜とは、50atm%
超の炭素を含有するカーボン保護膜を言うが、このよう
なカーボン保護膜としては、炭素および不可避的不純物
からなるカーボン保護膜が好ましく、さらに好ましくは
不可避的不純物の含有量が極めて少いまたは全く含まな
い高純度のカーボン保護膜、例えばDLC保護膜が良
い。ここで、不可避的不純物としては、アルゴン(Ar)な
どのようにプロセスに使用するガスや酸素のように真空
チャンバー内の残ガスなどが挙げられるが、これらのガ
ス成分の混入はできるだけ少ないほうが好ましく、2a
tm%以下とするのがよく、より好ましくは0.5at
m%以下とするのが良い。
【0036】本発明において、炭素を主成分とするカー
ボン保護膜を形成する炭素以外の添加成分としては、水
素、窒素、フッ素などの物質や、Si、Ti、Zr、H
f、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wなどの半金属や金
属が好適に例示される。添加成分が水素、窒素およびフ
ッ素などの物質である場合には、炭素を主成分とするカ
ーボン保護膜中のこれらの含有量が50atm%未満で
あるのが好ましく、添加成分が上述したSiおよびTi
等の半金属や金属である場合には、炭素を主成分とする
カーボン保護膜中のこれらの含有量が20atm%以下
であるのが好ましい。以下の説明では、炭素を主成分と
する保護膜として、カーボン保護膜90を代表例として
説明するが、その説明はその他の炭素を主成分とする保
護膜にも適用可能であることはいうまでもないことであ
る。
【0037】カーボン保護膜90は化学的に非常に安定
であるため、下層保護膜の化学腐食を有効に防止し、サ
ーマルヘッドの寿命を長くすることができる点について
は前述の通りである。カーボン保護膜90の硬度には特
に限定はなく、サーマルヘッドの保護膜として十分な硬
度を有すればよい。例えば、ビッカーズ硬度で3000
〜5000kg/mm2 が好適に例示される。また、こ
の硬度は、カーボン保護膜90の厚さ方向に対して、一
定としても、あるいは変化させてもよく、硬度をカーボ
ン保護膜90の厚さ方向に変化させる場合には、この硬
度の変化は連続的であっても段階的であってもよい。
【0038】このようなカーボン保護膜90の形成方法
には特に限定はなく、公知の厚膜形成技術や薄膜形成技
術で形成されるが、好ましくは、炭化水素ガスを反応ガ
スとして用いるプラズマCVDによって硬質カーボン膜
を形成する方法、および焼結カーボン材やグラッシーカ
ーボン材等のカーボン材をターゲット材とするスパッタ
リングによって硬質カーボン膜を形成する方法が例示さ
れる。
【0039】図3に、カーボン保護膜90を形成するス
パッタリング装置の概念図を示す。スパッタリング装置
100は、基本的に、真空チャンバ102と、ガス導入
部104と、スパッタリング手段106と、基板ホルダ
108とを有して構成される。
【0040】真空チャンバ102は、後述するカソード
112の磁場が影響を受けないようにSUS304等の
非磁性材料で形成されるのが好ましい。また、本発明の
カーボン保護膜90を形成に用いられる真空チャンバ1
02は、初期排気の到達圧力で2×10-5Torr以下、好
ましくは5×10-6Torr以下、成膜中は1×10-4Torr
〜1×10-2Torrを達成する真空シール性を有するのが
好ましい。真空チャンバ102に取り付けられる真空排
気手段110としては、ロータリーポンプ、メカニカル
ブースタポンプ、ターボポンプを組み合わせた排気手段
が好適に例示され、また、ターボポンプの代わりにディ
フュージョンポンプやクライオポンプを用いた排気手段
も好適に例示される。真空排気手段110の排気能力や
数は、真空チャンバ102の容積や成膜時のガス流量等
に応じて適宜選択すればよい。また、排気速度を高める
ために、バイパス配管を用いた配管の排気抵抗の調整
や、オリフィスバルブを設けてその開口度調整等の方法
で、排気速度を調整可能なように構成してもよい。
【0041】ガス導入部104は、プラズマを発生する
ためのガスを導入する部位で、導入部がOリング等で真
空シールされたステンレス製のパイプ等を用いて、真空
チャンバ102内にガスを導入する。また、ガスの導入
量は、マスフローコントローラ等の公知の方法で制御さ
れる。ガス導入部104は、ガスを基本的に真空チャン
バ102内のプラズマ発生領域の近傍に拭き出すように
構成される。また、吹き出し位置は、発生するプラズマ
の分布に影響を与えないように最適化するのが好まし
い。カーボン保護膜90を形成するためのプラズマ発生
用のガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴ
ン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスが用いられる
が、中でも特に、価格および入手の容易性の点で、アル
ゴンガスが好適に用いられる。
【0042】スパッタリングでは、カソード112にス
パッタリングするターゲット材114を配置し、カソー
ド112を負電位にすると共に、ターゲット材114の
表面にプラズマを発生させることにより、ターゲット材
114(その原子)を弾き出して、対向して配置した基
板(すなわち、サーマルヘッド66のグレーズ)の表面
に付着させ、堆積することにより成膜する。スパッタリ
ング手段106は、このカソード112、ターゲット材
114の配置部、シャッタ116等を有するものであ
る。
【0043】ターゲット材114の表面にプラズマを発
生する際には、直流電源118のマイナス側を直接カソ
ード112に接続し、300V〜1000Vの直流電圧
を印加する。直流電源118の出力としては、1kW〜
10kW程度の範囲であり、カーボン保護膜90の生成
に必要にして十分な出力を有するものを適宜選択すれば
よい。なお、カソード112の形状は、カーボン保護膜
90が形成される基板の形状等に応じて適宜決定すれば
よい。また、アーク防止等の点で、2kHz〜20kH
zにパルス変調した直流電源も好適に利用可能である。
また、プラズマの発生には、高周波電源も利用可能であ
る。高周波電源を用いる場合には、マッチングボックス
を介してカソード112に高周波電圧を印加することに
より、プラズマを発生させる。その際には、マッチング
ボックスによってインピーダンス整合を行い、高周波電
圧の反射波が入射波に対して25%以下となるように調
整する。高周波電源としては、工業用の13.56MH
zで、1kW〜10kW程度の範囲で、カーボン保護膜
90の生成に必要にして十分な出力を有するものを適宜
選択すればよい。
【0044】ターゲット材114は、In系ハンダや機
械的な固定手段を用いて直接カソード112に固定して
もよいが、通常は、無酸素銅やステンレス等からなるバ
ッキングプレート120をカソード112に固定し、そ
の上にターゲット材114を前述のようにして張り付け
る。また、カソード112およびバッキングプレート1
20は水冷可能に構成され、これにより、間接的にター
ゲット材114も水冷される。なお、カーボン保護膜9
0を形成するために用いられるターゲット材114とし
ては、焼結カーボン材、グラッシーカーボン材等が好適
に例示される。また、その形状は、基板の形状に応じて
適宜決定すればよい。
【0045】カーボン保護膜90の形成は、カソード1
12の内部に永久磁石や電磁石等の磁石112aを配置
し、ターゲット材114表面に磁場を形成してプラズマ
を閉じ込めてスパッタリングを行うマグネトロンスパッ
タリングも好適に利用可能である。このマグネトロンス
パッタリングは、成膜速度が早い点で好ましい。永久磁
石や電磁石の形状や位置、数、生成する磁場の強さ等は
形成するカーボン保護膜90の厚さや膜厚分布、ターゲ
ット材114の形状等に応じて適宜決定される。また永
久磁石として、Sm−Co磁石やNd−Fe−B磁石等
の高磁場が発生可能な磁石を用いることにより、プラズ
マを十分閉じ込めることができる等の点で好ましい。
【0046】基板ホルダ108は、サーマルヘッド66
を固定して、基板となるグレーズをカソード112に対
して対向して固定するものである。また、必要に応じ
て、カソード112に対して、グレーズを回転や移動可
能に構成してもよく、基板のサイズ等に応じて適宜選択
すればよい。基板とターゲット材114との距離には特
に限定はなく、20mm〜200mm程度の範囲で、膜
厚分布が均一になる距離を選択設定すればよい。
【0047】本発明に用いるサーマルヘッド66を作製
する際には、カーボン保護膜90と下層保護膜88との
密着性をより向上するために、カーボン保護膜90の形
成に先立ち、下層保護膜88の表面をプラズマでエッチ
ングするのが好ましい。そのために、図示例のスパッタ
リング装置100においては、基板ホルダ108に、高
周波電圧を印加するためのバイアス電源122が接続さ
れている。バイアス電源122は、マッチングボックス
を介して基板に高周波電圧を印加するもので、工業用の
13.56MHzで、1kW〜5kW程度のものから適
宜選択すればよい。また、エッチングの強さは、基板に
印加されるバイアス電圧を目安にすればよく、通常、負
の100V〜500Vの範囲で、適宜最適化を図ればよ
い。
【0048】図4に、カーボン保護膜90を形成する
(プラズマ)CVD装置の概念図を示す。CVD装置1
30は、基本的に、真空チャンバ132と、ガス導入部
134と、プラズマ発生手段136と、基板ホルダ13
8と、基板バイアス電源140とを有して構成される。
【0049】真空チャンバ132は、プラズマ発生用の
磁場が影響を受けないようにSUS304等の非磁性材
料で形成されるのが好ましい。また、カーボン保護膜9
0を形成に用いられる真空チャンバ132は、初期排気
の到達圧力で2×10-5Torr以下、好ましくは5×10
-6Torr以下、成膜中は1×10-4Torr〜1×10-2Torr
を達成する真空シール性を有するのが好ましい。真空チ
ャンバ132に取り付けられる真空排気手段133とし
ては、ロータリーポンプ、メカニカルブースタポンプ、
ターボポンプを組み合わせた排気手段が好適に例示さ
れ、また、ターボポンプの代わりにディフュージョンポ
ンプやクライオポンプを用いた排気手段も好適に例示さ
れる。真空排気手段133の排気能力や数は、真空チャ
ンバ132の容積や成膜時のガス流量等に応じて適宜選
択すればよい。また、排気速度を高めるために、バイパ
ス配管を用いた配管の排気抵抗の調整や、オリフィスバ
ルブを設けてその開口度調整等の方法で、排気速度を調
整可能なように構成してもよい。
【0050】真空チャンバ132において、プラズマや
プラズマ発生用の電磁波によってアークが発生する箇所
は、絶縁性部材で覆ってもよい。絶縁性部材としては、
MCナイロン、テフロン(PTFE)、PPS(ポリフ
ェニレンスルフィド)、PEN(ポリエチレンナフタレ
ート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等が利
用可能である。なお、PENやPET等を用いる場合に
は、絶縁性部材からの脱ガスで真空度を低下する場合が
あるので、このような材料を用いる場合には、注意が必
要である。
【0051】ガス導入部134aは、プラズマを発生す
るためのガスを導入する部位、他方、ガス導入部134
bは、反応ガスを導入する部位で、共に、導入部がOリ
ング等で真空シールされたステンレス製のパイプ等を用
いて、真空チャンバ132内にガスを導入する。また、
ガスの導入量は、マスフローコントローラ等の公知の方
法で制御される。両ガス導入部134は、ガスを基本的
に真空チャンバ132内のプラズマ発生領域の近傍に拭
き出すように構成される。また、吹き出し位置、特に反
応ガスのガス導入部134bの吹き出し位置は、膜厚分
布にも影響するので、基板(サーマルヘッド66のグレ
ーズ)の形状等に合わせて最適化するのが好ましい。カ
ーボン保護膜90を生成するためのプラズマ発生用のガ
スとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、ク
リプトン、キセノン等の不活性ガスが用いられるが、中
でも特に、価格および入手の容易性の点で、アルゴンガ
スが好適に用いられる。他方、カーボン保護膜90を生
成するための反応ガスとしては、メタン、エタン、プロ
パン、エチレン、アセチレン、ベンゼン等の炭化水素化
合物のガスが例示される。なお、ガス導入部134aお
よびガス導入部134bは、共に、用いるガスに応じて
マスフローコントローラのセンサを調整する必要があ
る。
【0052】カーボン保護膜90を形成するプラズマC
VDにおいて、プラズマ発生手段としては、直流放電、
高周波放電、直流アーク放電、マイクロECR波放電等
が利用可能であり、特に、直流アーク放電およびマイク
ロECR波放電はプラズマ密度が高く、高速成膜に有利
である。図示例のCVD装置130は、マイクロECR
波放電を利用するものであり、プラズマ発生手段136
は、マイクロ波電源142、磁石143、マイクロ波導
波管144、同軸変換器146、誘電体板148、放射
状アンテナ150等を有して構成される。
【0053】直流放電は、基板−電極間に負の直流電圧
を印加することによりプラズマを発生させる。直流放電
に用いる直流電源は、1〜10kW程度のもので、カー
ボン保護膜90の形成に必要にして十分な出力を有する
ものを適宜選択すればよい。また、アーク防止等の点
で、2kHz〜20kHzにパルス変調した直流電源も
好適に利用可能である。高周波放電は、マッチングボッ
クスを介して電極に高周波電圧を印加することにより、
プラズマを発生させる。その際には、マッチングボック
スによってインピーダンス整合を行い、高周波電圧の反
射波が入射波に対して25%以下となるように調整す
る。高周波放電を行う高周波電源としては、工業用の1
3.56MHzで、1kW〜10kW程度の範囲で、カ
ーボン保護膜90の生成に必要にして十分な出力を有す
るものを適宜選択すればよい。また、パルス変調した高
周波電源も使用可能である。
【0054】直流アーク放電は、熱陰極を使用してプラ
ズマを発生させる。熱陰極としては、タングステン、ホ
ウ化ランタン(LaB6)等が利用可能である。また、ホロー
カソードを用いた直流アーク放電も利用可能である。直
流アーク放電に用いる直流電源としては、1kW〜10
kW程度、10〜150A程度の範囲で、カーボン保護
膜90の生成に必要にして十分な出力を有するものを適
宜選択すればよい。
【0055】マイクロ波ECR放電は、マイクロ波とE
CR磁場とによってプラズマを発生させるものであり、
前述のように、図示例のCVD装置は、このマイクロ波
放電によってプラズマを発生させる。マイクロ波電源1
42としては、工業用の2.45GHzで、1kW〜3
kW程度の範囲で、カーボン保護膜90の生成に必要に
して十分な出力を有するものを適宜選択すればよい。ま
た、ECR磁場発生には、所望の磁場を形成できる永久
磁石や電磁石を適宜用いればよく、図示例においては、
Sm-Co 磁石を磁石143として用いている。例えば、
2.45GHzのマイクロ波を用いる場合には、ECR
磁場は875G(Gauss) になるので、プラズマ発生領域
の磁場が500G〜2000Gとなる磁石を用いればよ
い。真空チャンバ132内へのマイクロ波の導入は、マ
イクロ波導波管144、同軸変換器146、誘電体板1
48等を用いて行われる。なお、磁場の形成状態やマイ
クロ波の導入路は、カーボン保護膜90の膜厚分布に影
響を与えるので、カーボン保護膜90の膜厚が均一にな
るように最適化するのが好ましい。
【0056】基板ホルダ138は、サーマルヘッド66
を固定して、基板となるグレーズを放射状アンテナ15
0に対して対向して固定するものである。また、必要に
応じて、プラズマ発生手段136に対して、グレーズを
回転や移動可能に構成してもよく、基板のサイズ等に応
じて適宜選択すればよい。基板と放射状アンテナ150
との距離には特に限定はなく、20mm〜200mm程
度の範囲で、膜厚分布が均一になる距離を選択設定すれ
ばよい。
【0057】プラズマCVDで硬質膜を得るためには、
基板に負のバイアス電圧を印加しながら成膜を行う必要
がある。基板バイアス電源140は、このバイアス電圧
を印加するためのものである。バイアス電源には高周波
電圧の自己バイアス電圧を使用するのが好ましい。自己
バイアス電圧は、負の100V〜500Vである。高周
波電源は工業用の13.56MHzで、1kW〜5kW
程度のものから適宜選択すればよい。また、2kHz〜
20kHzにパルス変調した直流電源も利用可能であ
る。
【0058】上層保護膜としてカーボン保護膜90を用
いる際においても、カーボン保護膜90と下層保護膜8
8との密着性を向上するために、カーボン保護膜90の
成膜に先立ち、下層保護膜88の表面をプラズマでエッ
チングするのが好ましい。エッチングの方法は、スパッ
タリング装置100と同様であり、マッチングボックス
を介して基板に高周波電圧を印加する。高周波電源とし
ては、工業用の13.56MHzで、1kW〜5kW程
度のものから適宜選択すればよい。また、エッチングの
強さは、基板に印加されるバイアス電圧を目安にすれば
よく、通常、負の100V〜500Vの範囲で、適宜最
適化を計ればよい。
【0059】以上、本発明の感熱記録システムに付いて
詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定されず、各
種の改良や変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0060】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明
をより詳細に説明する。
【0061】[実施例1] <窒化珪素膜の前処理>まず、上層保護膜の形成に先立
って、サーマルヘッド(京セラ社製 KGT-260-12MPH8)
のグレーズの表面(窒化珪素膜の表面)に、以下に示さ
れる前処理を施した。なお、この基となるサーマルヘッ
ドには、グレーズの表面に保護膜として厚さ11μm、
Ra値3nmの窒化珪素膜(Si3N4)が形成されている。
従って、本実施例では、この窒化珪素膜が下層保護膜8
8であり、この下層保護膜88に対し以下の前処理を施
し、その後上層保護膜となるカーボン保護膜90がこの
下層保護膜90の上層に形成される。
【0062】上記サーマルヘッドの下層保護膜(窒化珪
素膜)に対して、サンドブラスト処理を行い、Ra値が
0.01μmになるまで下層保護膜の表面を荒らした。
具体的には、誘導式ブラスト機を用い、研磨材として#
60〜#200のガラスビーズ、スチールグリッド、ア
ランダムを使用し、サーマルヘッドの下層保護膜88上
に吹きつけることにより行った。なお、空気圧は5〜7
kg/cm2 とした。なお、表面粗度(Ra値)の測定
は、カットオフをかけずに、触針式あらさ測定機(テン
コール社製;P−1)を使用して、下層保護膜88の複
数箇所の表面形状を2次元的に計測することにより得
た、複数箇所のRa値の平均値を算出することにより行
った。
【0063】<カーボン保護膜の形成>このようにして
下層保護膜に前処理が施されたサーマルヘッドのグレー
ズ表面に対して、図3に示されるスパッタリング装置1
00を用いてカーボン保護膜90を形成し、図2に示さ
れるグレーズを有する本発明のサーマルヘッド66を作
製した。なお、スパッタリング装置100の詳細は以下
のとおりである。
【0064】a.真空チャンバ102 真空排気手段110として、排気速度が1500L(リ
ットル)/分のロータリーポンプ、同12000L/分
のメカニカルブースタポンプ、および同3000L/秒
のターボポンプを、それぞれ1台ずつ有する、SUS3
04製で容積が0.5m3 の真空チャンバ102を使用
した。なお、ターボポンプの吸引部にオリフィスバルブ
を配置して、開口度を10〜100%まで調整できるよ
うに構成してある。
【0065】b.ガス導入部104 最大流量100〜500[sccm]のマスフローコントロー
ラと、直径6ミリのステンレス製パイプを用いて構成し
た。ステンレス製パイプと真空チャンバ102との接合
部は、Oリングによって真空シールした。なお、以下に
示すカーボン保護膜90の生成時には、プラズマ発生用
ガスとしてアルゴンガスを用いた。
【0066】c.スパッタリング手段106 永久磁石112aとしてSm−Co磁石を内部に配置し
た、幅600mm×高さ200mmの矩形のカソード1
12を用いた。バッキングプレート120としては、矩
形状に加工した無酸素銅材を用い、カソード112にI
n系ハンダを用いて張り付けた。また、カソード112
内部を水冷することにより、磁石、カソード112およ
びバッキングプレート120裏面を冷却した。また、電
源118として、最大出力8kWの負電位の直流電源を
用いた。なお、この直流電源は、2kHz〜10kHz
の範囲でパルス状に変調できるように構成してある。
【0067】d.基板ホルダ108 基板(すなわち、サーマルヘッド66のグレーズ82)
とターゲット材114との距離が50mm〜150mm
の間で調整可能な構成を有する。なお、以下に示すカー
ボン保護膜90の生成時には、基板とターゲット材11
4との距離は100mmとした。また、エッチング用の
高周波電圧が印加できるように、基板によるサーマルヘ
ッドの保持部分を浮遊電位にした。
【0068】e.バイアス電源122 基板ホルダ108に、マッチングボックスを介して高周
波電源を接続した。高周波電源は、周波数13.56M
Hzで、最大出力は3kWである。また、この高周波電
源は、自己バイアス電圧をモニタすることにより、負の
100V〜500Vの範囲で高周波出力が調整可能に構
成されている。
【0069】このようなスパッタリング装置100にお
いて、前述のように前処理を施したサーマルヘッド66
のグレーズ82がターゲット材114に対向するよう
に、真空チャンバ102内の基板ホルダ108にサーマ
ルヘッド66を固定した。なお、サーマルヘッドの上層
保護膜の形成部分以外(すなわち、グレーズ以外)に
は、あらかじめマスキングを施しておいた。サーマルヘ
ッドを固定後、真空チャンバ102内の圧力が5×10
-6Torrになるまで真空排気した。真空排気を継続しなが
ら、ガス導入部104によってアルゴンガスを導入し、
ターボポンプに設置したオリフィスバルブによって、真
空チャンバ102内の圧力が5.0×10-3Torrになる
ように調整した。次いで、基板に高周波電圧を印加し、
自己バイアス電圧−300Vで10分間、下層保護膜
(窒化珪素膜)のエッチングを行った。
【0070】エッチング終了後、ターゲット材114と
して焼結グラファイト材をバッキングプレート120に
固定(In系ハンダで張り付け)して、真空チャンバ1
02内の圧力が5×10-3Torrとなるようにアルゴンガ
ス流量およびオリフィスバルブを調整し、シャッタ11
6を閉じた状態でターゲット材114に直流電力0.5
kWを5分間印加した。次いで、真空チャンバ102内
の圧力を保ったまま、直流電力を5kWとしてシャッタ
116を開き、形成されるカーボン保護膜90が1μm
となるまでスパッタリングを行い、上層保護膜として厚
さ1μmのカーボン保護膜90を形成したサーマルヘッ
ドを作製した。さらに、全く同様にして、上層保護膜と
して、厚さ2μmおよび3μmのカーボン保護膜90を
形成したサーマルヘッドも作製した。なお、カーボン保
護膜90の膜厚は、あらかじめ成膜速度を求めておき、
所定の膜厚となる成膜時間を算出して、成膜時間で制御
した。
【0071】<性能評価>このような3種類の本発明の
サーマルヘッドと、感熱材料(富士フィルム社製ドライ
画像記録用フィルムCR−AT)を用いて、図1の感熱
記録装置により、B4サイズで5000枚の感熱記録テ
ストを行った。その結果、カーボン保護膜90の膜厚が
1μm、2μmおよび3μmのいずれのサーマルヘッド
も、カーボン保護膜90の割れや剥離が生じることはな
く、また、摩耗もほとんど認められず、良好な耐久性を
示し、濃度ムラのない、高画質な画像を安定して記録す
ることができた。
【0072】[実施例2]上記実施例1において、サー
マルヘッドの下層保護膜(窒化珪素膜)に対してサンド
ブラスト処理を行う代わりに、サーマルヘッドの下層保
護膜88を#1000のラッピングシートに接触させた
状態で、このラッピングシートを通過させることによ
り、Ra値が0.2μmになるまで下層保護膜の表面を
荒らした後、スパッタリングによりカーボン保護膜90
を形成した以外は、実施例1と同様にしてサーマルヘッ
ドの作製および性能評価を行った。このようにして得ら
れたサーマルヘッドにおいても、実施例1と同様の良好
な結果を示した。
【0073】[実施例3]上記実施例2において、#4
000のラッピングシートを用いて、Ra値が0.1μ
mになるまで下層保護膜の表面を荒らした以外は、実施
例2と同様にしてサーマルヘッドの作製および性能評価
を行った。このようにして得られたサーマルヘッドにお
いても、実施例1と同様の良好な結果を示した。
【0074】[実施例4]上記実施例2において、#8
000のラッピングシートを用いて、Ra値が0.00
5μmになるまで下層保護膜の表面を荒らした以外は、
実施例2と同様にしてサーマルヘッドの作製および性能
評価を行った。このようにして得られたサーマルヘッド
においても、実施例1と同様の良好な結果を示した。
【0075】[比較例1]グレーズの表面(窒化珪素膜
の表面)に何らの前処理を施さなかった(すなわち、窒
化珪素膜のRa値は変更しておらず、3nmのままであ
る)以外は、前記実施例1と同様にしてサーマルヘッド
の作製および性能評価を行った。その結果、5000枚
の記録を終了する前に、カーボン保護膜90の割れや剥
離が生じてしまった。
【0076】[実施例5]図4に示される(プラズマ)
CVD装置130を用意した。詳細は以下のとおりであ
る。
【0077】<窒化珪素膜の前処理>前記実施例1と同
様にして、サーマルヘッドのグレーズの表面(窒化珪素
膜の表面)に前処理を施した。
【0078】<カーボン保護膜の形成> a.真空チャンバ132 前記実施例1と同様のものを用いた。
【0079】b.ガス導入部134 前記実施例1と同構成のものを用いた。ただし、プラズ
マ発生ガス用と反応ガス用の2つの導入部を設けた。な
お、後に示すカーボン保護膜90の形成時には、プラズ
マ発生用ガスとしてアルゴンガスを用いた。
【0080】c.プラズマ発生手段136 発振周波数2.45GHz、最大出力1.5kWのマイ
クロ波電源142を用いた。マイクロ波は、マイクロ波
導入管144で真空チャンバ132近傍まで導き、同軸
変換器146で変換後、真空チャンバ132内の放射状
アンテナ150に導入した。プラズマ発生部は、幅60
0mm×高さ200mmの矩形のものを用いた。さら
に、ECR用磁場は、Sm−Co磁石を複数個、誘電体
板148の形状に合わせて配置することで形成した。
【0081】d.基板ホルダ138 前記実施例1と同様のものを用いた。なお、カーボン保
護膜90の形成時には、基板と放射状アンテナ150と
の距離は150mmとした。
【0082】e.基板バイアス手段140 基板ホルダ138に、マッチングボックスを介して高周
波電源を接続した。高周波電源は、周波数13.56M
Hzで、最大出力は3kWである。また、この高周波電
源は、自己バイアス電圧をモニタすることにより、負の
100V〜500Vの範囲で高周波出力が調整可能に構
成されている。また、このCVD装置130では、この
基板バイアス手段140で基板エッチング手段を兼ねて
いる。
【0083】このようなCVD装置130を用いて、以
下に示すようにしてサーマルヘッド(前記実施例1と同
じ物)のグレーズの表面に、上層保護膜としてカーボン
保護膜90を形成し、サーマルヘッドを作製した。従っ
て、前記実施例1と同様に、窒化珪素膜が下層保護膜
で、その上に上層保護膜となるカーボン保護膜90が形
成される。
【0084】グレーズが放射状アンテナ150に対向す
るように、真空チャンバ132内の基板ホルダ138に
サーマルヘッドを固定した。なお、サーマルヘッドの上
層保護膜の形成部分以外(すなわち、グレーズ以外)に
は、あらかじめマスキングを施しておいた。サーマルヘ
ッドを固定後、真空チャンバ132内の圧力が5×10
-6Torrになるまで真空排気した。真空排気を継続しなが
ら、ガス導入部134aによってメタンガスを導入し、
ターボポンプに設置したオリフィスバルブによって、真
空チャンバ132内の圧力が5.0×10-3Torrになる
ように調整した。次いで、マイクロ波電源142を駆動
してマイクロ波を真空チャンバ132内に導入し、マイ
クロ波ECRプラズマを発生させ、さらに、基板に高周
波電圧を印加し、自己バイアス電圧−300Vで10分
間、下層保護膜(窒化珪素膜)のエッチングを行った。
【0085】エッチング終了後、自己バイアス電圧を−
300Vとして高周波電圧の印加を継続しながら、真空
チャンバ132内の圧力が5.0×10-3Torrになるよ
うにメタンガスを導入してプラズマCVDを行い、上層
保護膜として厚さ1μmのカーボン保護膜90を形成し
たサーマルヘッドを作製した。さらに、全く同様にし
て、上層保護膜として厚さ2μmおよび3μmのカーボ
ン保護膜90を形成したサーマルヘッドも作製した。な
お、カーボン保護膜90の膜厚は、あらかじめ成膜速度
を求めておき、所定の膜厚となる成膜時間を算出して、
成膜時間で制御した。
【0086】<性能評価>このような3種類のサーマル
ヘッドと、感熱材料とを用いて、図1の感熱記録装置に
より実施例1と同様の性能評価を行った。その結果、い
ずれのサーマルヘッドも、カーボン保護膜90の割れや
剥離が生じることはなく、また、摩耗もほとんど認めら
れなかった。
【0087】[実施例6]上記実施例5において、サー
マルヘッドの下層保護膜(窒化珪素膜)に対してサンド
ブラスト処理を行う代わりに、サーマルヘッドの下層保
護膜88を#1000のラッピングシートに接触させた
状態で、ラッピングシートを通過させることにより、R
a値が0.2μmになるまで下層保護膜の表面を荒らし
た後、プラズマCVDによりカーボン保護膜90を形成
した以外は、実施例1と同様にしてサーマルヘッドの作
製および性能評価を行った。このようにして得られたサ
ーマルヘッドにおいても、実施例5と同様の良好な結果
を示した。
【0088】[実施例7]上記実施例6において、#4
000のラッピングシートを用いて、Ra値が0.01
μmになるまで下層保護膜の表面を荒らした以外は、実
施例4と同様にしてサーマルヘッドの作製および性能評
価を行った。このようにして得られたサーマルヘッドに
おいても、実施例6と同様の良好な結果を示した。
【0089】[実施例8]上記実施例6において、#8
000のラッピングシートを用いて、Ra値が0.00
5μmになるまで下層保護膜の表面を荒らした以外は、
実施例4と同様にしてサーマルヘッドの作製および性能
評価を行った。このようにして得られたサーマルヘッド
においても、実施例4と同様の良好な結果を示した。
【0090】[比較例2]グレーズの表面(窒化珪素膜
の表面)に何らの前処理を施さなかった(すなわち、窒
化珪素膜のRa値は変更しておらず、3nmのままであ
る)以外は、前記実施例4と同様にしてサーマルヘッド
の作製および性能評価を行った。その結果、5000枚
の記録を終了する前に、カーボン保護膜90の割れや剥
離が生じてしまった。以上の結果より、本発明の効果は
明らかである。
【0091】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、保護膜の腐食や摩耗が極めて少なく、しかも熱
や機械的衝撃に対しても保護膜の割れや剥離の発生も好
適に防止して、十分な耐久性を有し、長期に渡って高い
信頼性を発揮し、これにより、長期に渡って高画質の感
熱記録を安定して行うことができるサーマルヘッドを実
現することができる。特に、医療用途等において用いら
れる、ポリエステルフィルム等の高剛性の支持体を使用
する感熱フィルムに対して、高エネルギー・高圧力下の
記録を行う用途においても、十分な耐久性を有し、長期
に渡って高い信頼性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のサーマルヘッドを利用する感熱記録
装置の一例の概念図である。
【図2】 本発明のサーマルヘッドの発熱素子の構成を
示す概略図である。
【図3】 本発明のサーマルヘッドのカーボン保護膜を
形成するスパッタリング装置の一例の概念図である。
【図4】 本発明のサーマルヘッドのカーボン保護膜を
形成する(プラズマ)CVD装置の一例の概念図であ
る。
【符号の説明】
10 (感熱)記録装置 14 装填部 16 供給搬送手段 20 記録部 22 排出部 24 マガジン 66 サーマルヘッド 80 基板 82 グレーズ層 84 発熱(抵抗)体 86 電極 88 下層保護膜 90 カーボン保護膜 100 スパッタリング装置 102,132 真空チャンバ 104,134 ガス導入部 106 スパッタリング手段 108,138 基板ホルダ 110,133 真空排気手段 112 カソード 114 ターゲット材 116 シャッタ 118 電源 120 バッキングプレート 122 バイアス電源 130 (プラズマ)CVD装置 136 プラズマ発生手段 140 基板バイアス電源 142 マイクロ波電源 144 マイクロ波導入管 146 同軸変換器 148 誘電体板 150 放射状アンテナ A 感熱材料

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】発熱体を保護する保護膜として、前記発熱
    体側に形成され、セラミックスを主成分とする少なくと
    も1層からなる下層保護膜と、この下層保護膜上に形成
    され、炭素を主成分とする上層保護膜とを有するサーマ
    ルヘッドであって、 前記下層保護膜の前記上層保護膜が形成される側の表面
    の表面粗度Raの値が0.005〜0.5μmであるこ
    とを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 【請求項2】発熱体を保護する保護膜として、前記発熱
    体側に、セラミックスを主成分とする少なくとも1層か
    らなる下層保護膜を形成し、この下層保護膜上に、炭素
    を主成分とする上層保護膜を形成して、サーマルヘッド
    を製造するに際し、 前記下層保護膜に表面処理を施して、前記表面の表面粗
    度Raの値を0.005〜0.5μmとした後、前記上
    層保護膜を形成することを特徴とするサーマルヘッドの
    製造方法。
  3. 【請求項3】前記表面処理がラッピングシートを用いて
    研磨する方法、または、サンドブラスト処理である請求
    項2に記載のサーマルヘッドの製造方法。
  4. 【請求項4】前記上層保護膜の形成を、スパッタリング
    処理、または、プラズマCVD処理により行うことを特
    徴とする請求項2または3に記載のサーマルヘッドの製
    造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6688951B2 (en) 1999-03-26 2004-02-10 Fuji Photo Film Co., Ltd. Thermal head lapping apparatus
JP2009226887A (ja) * 2008-03-25 2009-10-08 Tdk Corp サーマルヘッドの製造方法及びサーマルヘッド
JP2020019164A (ja) * 2018-07-30 2020-02-06 アオイ電子株式会社 サーマルプリントヘッド

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009226887A (ja) * 2008-03-25 2009-10-08 Tdk Corp サーマルヘッドの製造方法及びサーマルヘッド
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