JPH11334123A - サーマルヘッドおよびサーマルヘッドの製造方法 - Google Patents

サーマルヘッドおよびサーマルヘッドの製造方法

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JPH11334123A
JPH11334123A JP14775898A JP14775898A JPH11334123A JP H11334123 A JPH11334123 A JP H11334123A JP 14775898 A JP14775898 A JP 14775898A JP 14775898 A JP14775898 A JP 14775898A JP H11334123 A JPH11334123 A JP H11334123A
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JP
Japan
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carbon
protective film
film
thermal head
recording
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JP14775898A
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English (en)
Inventor
Makoto Kashiwatani
誠 柏谷
Junichi Yoneda
純一 米田
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】優れた耐久性を有し、しかも、スティッキング
に起因する記録時の騒音が小さく、静かな感熱記録を行
うことができるサーマルヘッド、およびその製造方法を
提供する。 【解決手段】発熱素子を保護する保護膜として、炭素を
主成分とするカーボン保護膜を含む少なくとも1層の保
護膜を有し、このカーボン保護膜が、炭素を主成分とす
る複数の突起を有することにより、また、前記カーボン
保護膜をスパッタリングで形成し、かつスパッタリング
のパワーを調整することにより、前記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種のプリンタ、
プロッタ、ファックス、レコーダ等に記録手段として用
いられる感熱記録を行うためのサーマルヘッドの技術分
野に属する。
【0002】
【従来の技術】超音波診断画像の記録に、フィルム等を
支持体として感熱記録層を形成してなる感熱材料を用い
た感熱記録が利用されている。また、感熱記録は、湿式
の現像処理が不要であり、取り扱いが簡単である等の利
点を有することから、近年では、超音波診断のような小
型の画像記録のみならず、CT診断、MRI診断、X線
診断等の大型かつ高画質な画像が要求される用途におい
て、医療診断のための画像記録への利用も検討されてい
る。
【0003】周知のように、感熱記録は、発熱素子が一
方向(主走査方向)に配列されたグレーズが形成された
サーマルヘッドを用い、グレーズを感熱材料に若干押圧
した状態で、両者を前記主走査方向と直交する副走査方
向に相対的に移動しつつ、記録画像に応じて、各画素の
発熱素子にエネルギーを印加して発熱させることによ
り、感熱材料の感熱記録層を加熱して画像記録を行う。
【0004】サーマルヘッドのグレーズには、発熱素子
等を保護するため、その表面に保護膜が形成されてい
る。保護膜は、通常、窒化珪素等のセラミックで形成さ
れるが、保護膜の表面は、感熱記録時に加熱されて感熱
材料と慴接するため、記録を重ねるにしたがって摩耗し
て劣化し、保護機能が損なわれ、最終的には、画像記録
ができなくなる状態に陥る(ヘッド切れ)。特に、前述
の医療用途のように、高品質で、かつ高画質な多階調画
像が要求される用途においては、高品質化および高画質
化を計るために、ポリエステルフィルム等の高剛性の支
持体を使用し、さらに、記録温度や、感熱材料へのサー
マルヘッドの押圧力を高く設定する方向にある。そのた
め、サーマルヘッドの保護膜にかかる負担が大きく、摩
耗や腐食が進行し易くなっている。
【0005】このようなサーマルヘッドの保護膜の摩耗
を防止し、耐久性を向上する方法として、保護膜の性能
を向上する技術が数多く検討されており、中でも、耐摩
耗性や耐蝕性に優れた保護膜として、炭素を主成分とす
る保護膜(以下、カーボン保護膜とする)が知られてい
る。例えば、特公昭61−53955号各公報には、サ
ーマルヘッドの保護膜として、ビッカーズ硬度が450
0kg/mm2 以上のカーボン保護膜を有するサーマルヘッ
ドが、また、特開平7−132628号公報には、シリ
コン系化合物からなる下層保護膜と、その上層のカーボ
ン保護膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)との2層構
成の保護膜を有するサーマルヘッド、それぞれが開示さ
れている。このようなカーボン保護膜は、ダイアモンド
に極めて近い特性を有するもので、非常に硬度が高く、
また、化学的にも安定である。そのため、感熱材料との
摺接に対して、非常に優れた耐摩耗性や耐蝕性を発揮す
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、サーマルヘ
ッドを用いた感熱記録における問題点の一つとして、ス
ティッキングが挙げられる。前述のように、感熱記録で
は、サーマルヘッドと感熱材料とを相対的に移動しつ
つ、発熱素子によって感熱材料を加熱して画像記録を行
うが、この記録の際に、感熱材料の表面が熱で溶融し
て、サーマルヘッド(グレーズ)に貼り付いた状態とな
ってしまう。そのため、この貼り付きと搬送とが繰り返
し行われる、いわゆるスティッキング(スティック−ス
リップ)が発生し、これに起因して騒音や画像の白飛び
(スジむら)が発生する。本発明者らの検討によれば、
前述のカーボン保護膜は、スティッキングが発生し易
く、これに起因する記録時の騒音や画像のスジむらが特
に問題になる。
【0007】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を
解決することにあり、炭素を主成分とする保護膜(カー
ボン保護膜)を有するサーマルヘッドであって、優れた
耐久性を有する上に、スティッキングの発生が少なく、
これに起因する記録時の騒音が小さく、静かな感熱記録
を行うことができ、また、スティッキングに起因するス
ジむらのない高画質な感熱記録を行えるサーマルヘッ
ド、およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明のサーマルヘッドは、発熱素子を保護する保
護膜として、炭素を主成分とするカーボン保護膜を含む
少なくとも1層の保護膜を有し、前記カーボン保護膜
が、炭素を主成分とする複数の突起を有することを特徴
とするサーマルヘッドを提供する。
【0009】前記サーマルヘッドにおいて、前記突起の
高さが0.01μm〜1μmであるのが好ましく、ま
た、前記突起が、前記カーボン保護膜中に含有される、
直径0.05μm〜5μmの以下の炭素を主成分とする
微粒子によって形成されるのが好ましい。
【0010】また、本発明のサーマルヘッドの製造方法
は、サーマルヘッドの表面に、均質な膜を形成する出力
のスパッタリングによって炭素を主成分とするカーボン
膜を形成し、その上に、前記均質な膜の形成よりも強い
出力のスパッタリングによって炭素を主成分とするカー
ボン膜を形成し、その上に、均質な膜を形成する出力の
スパッタリングによって炭素を主成分とするカーボン膜
を形成することにより、発熱素子を保護する保護膜を形
成することを特徴とするサーマルヘッドの製造方法を提
供する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明のサーマルヘッドお
よびサーマルヘッドの製造方法について、添付の図面に
示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0012】図1に、本発明にかかるサーマルヘッドを
利用する感熱記録装置の一例の概略図が示される。図1
に示される感熱記録装置10(以下、記録装置10とす
る)は、例えばB4サイズのカットシートである感熱材
料(以下、感熱材料Aとする)に感熱記録を行うもので
あり、感熱材料Aが収容されたマガジン24が装填され
る装填部14、供給搬送部16、サーマルヘッド66に
よって感熱材料Aに感熱記録を行う記録部20、および
排出部22を有して構成される。なお、感熱材料Aは、
透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム
等を支持体として、その一面に感熱記録層を形成してな
る、通常の感熱材料である。
【0013】マガジン24は、開閉自在な蓋体26を有
する筐体であり、感熱材料Aを収納して記録装置10の
装填部14に装填される。装填部14は、記録装置10
のハウジング28に形成された挿入口30、案内板32
および案内ロール34,34、停止部材36を有してい
る。マガジン24は、挿入口30から記録装置10内に
挿入され、案内板32、案内ロール34および停止部材
36の作用によって記録装置10の所定位置に装填され
る。
【0014】供給搬送手段16は、装填部14に装填さ
れたマガジン24から感熱材料Aを1枚取り出して、記
録部20に搬送するものであり、吸盤40を用いる枚葉
機構、搬送手段42、搬送ガイド44、および規制ロー
ラ対52を有する。搬送手段42は、搬送ローラ46
と、この搬送ローラ46と同軸のプーリを含む3つのプ
ーリ47と、プーリに張架されるエンドレスベルト48
と、搬送ローラ46と対を成すニップローラ50とを有
して構成され、吸盤40によって枚葉された感熱材料A
の先端を搬送ローラ46とニップローラ50とによって
挟持して、感熱材料Aを搬送する。感熱材料Aは、搬送
ガイド44によって案内されつつ搬送手段42によって
規制ローラ対52に搬送され、規制ローラ対52で先端
位置決めされて、サーマルヘッド66の温度確認後に、
記録部20に搬送される。
【0015】記録部20は、サーマルヘッド66、プラ
テンローラ60、クリーニングローラ対56、ガイド5
8、サーマルヘッド66を冷却するヒートシンク67、
冷却ファン76およびガイド62を有する。サーマルヘ
ッド66は、例えば、最大B4サイズまでの画像記録が
可能な、約300dpiの記録(画素)密度の感熱記録
を行うもので、保護膜に特徴を有する以外は、感熱材料
Aへの感熱記録を行う発熱素子が一方向(主走査方向
図1および図2において紙面と垂直方向)に配列される
グレーズが形成された公知の構成を有するもので、主走
査方向の軸68aを軸に回動可能な支持部材68に支持
されている。なお、本発明のサーマルヘッド66の幅
(主走査方向)、解像度(記録密度)、記録階調等には
特に限定は無いが、幅は5cm〜50cm、解像度は6dot/
mm(約150dpi)以上、記録階調は256階調以上
であるのが好ましい。
【0016】プラテンローラ60は、感熱材料Aを所定
位置に保持しつつ所定の画像記録速度で図中の矢印方向
に回転し、主走査方向と直交する副走査方向(図2中の
矢印x方向)に感熱材料Aを搬送する。クリーニングロ
ーラ対56は、図中上側に弾性体である粘着ゴムローラ
を有し、感熱材料Aの感熱記録層に付着したゴミ等を除
去して、グレーズへのゴミの付着や、ゴミが画像記録に
悪影響を与えることを防止する。
【0017】このような記録装置10においては、マガ
ジン24から感熱材料Aを1枚引き出し、記録部20ま
で感熱材料Aを搬送して、サーマルヘッド66のグレー
ズを感熱材料Aに押圧しつつ、副走査方向に感熱材料A
を搬送して、記録画像(画像データ)に応じて、サーマ
ルヘッド66のグレーズに形成された各発熱素子を発熱
することにより、感熱材料Aに感熱記録を行う。画像を
記録された感熱材料Aは、ガイド62に案内されつつ、
プラテンローラ60と搬送ローラ対63に搬送され、排
出部22のトレイ72に排出される。
【0018】図2に、サーマルヘッド66のグレーズの
概略断面図を示す。グレーズは、基板80の上(図示例
のサーマルヘッド66は、上から感熱材料Aに押圧され
るので、図2中では下となる)に形成されるグレーズ層
(畜熱層)82と、その上に形成される発熱(抵抗)体
84と、その上に形成される電極86と、その上に形成
される、発熱体84および電極86からなる発熱素子等
を護するための保護膜とを有して構成される。サーマル
ヘッド66のグレーズの保護膜は、発熱体84および電
極86を覆って形成される下層保護膜88と、下層保護
膜88の上に形成される中間層保護膜90(以下、中間
層90とする)と、中間層90の上に形成される炭素を
主成分とする保護膜すなわちカーボン保護膜92とから
なる3層構成を有する。
【0019】本発明のサーマルヘッド66は、保護膜以
外は、基本的に公知のサーマルヘッドと同様の構成を有
する。従って、それ以外の層構成や各層の材料には特に
限定はなく、公知のものが各種利用可能である。具体的
には、基板80としては耐熱ガラスやアルミナ、シリ
カ、マグネシアなどのセラミックス等の電気絶縁性材料
が、グレーズ層82としては耐熱ガラスやポリイミド樹
脂等の耐熱性樹脂等が、発熱体84としてはニクロム
(Ni-Cr)、タンタル、窒化タンタル等の発熱抵抗体が、
電極86としてはアルミニウム、銅等の導電性材料が、
各種利用可能である。なお、グレーズ(発熱素子)に
は、真空蒸着、CVD(Chemical Vapor Deposition) 、
スパッタリング等のいわゆる薄膜形成技術およびフォト
エッチング法を用いて形成される薄膜型発熱素子と、ス
クリーン印刷などの印刷ならびに焼成によるいわゆる厚
膜形成技術およびエッチングを用いて形成される厚膜型
発熱素子とが知られているが、本発明に用いられるサー
マルヘッド66は、いずれの方法で形成されたものであ
ってもよい。
【0020】サーマルヘッド66は、前述のような3層
構成の保護膜を有する。最下層の下層保護膜88として
は、サーマルヘッドの保護膜となりうる耐熱性、耐蝕性
および耐摩耗性を有する材料であれば、公知の材料が各
種利用可能であり、好ましくは、各種のセラミックス材
料が例示される。具体的には、窒化珪素(Si3N4) 、炭化
珪素(SiC) 、酸化タンタル(Ta2O5) 、酸化アルミニウム
(Al2O3) 、サイアロン(SiAlON)、酸化珪素(SiO2)、窒化
アルミニウム(AlN) 、窒化ホウ素(BN)、酸化セレン(Se
O) 、窒化チタン(TiN) 、炭化チタン(TiC) 、炭窒化チ
タン(TiCN)、窒化クロム(CrN) 、およびこれらの混合物
等が例示される。中でも特に、成膜の容易性や製造コス
ト、機械的摩耗や化学的摩耗に対する耐摩耗性等の点
で、窒化物、炭化物が好ましく、窒化珪素、炭化珪素、
サイアロン等が好適に利用される。また、下層保護膜8
8には、物性調整のため、金属等の微量の添加物が含ま
れてもよい。下層保護膜88の形成方法には特に限定は
なく、前述の厚膜形成技術や薄膜形成技術等を用いて、
公知のセラミックス膜(層)の形成方法を用いて形成す
ればよい。
【0021】下層保護膜88の厚さには特に限定はない
が、好ましくは0.2μm〜20μm程度、より好まし
くは2μm〜15μm程度である。下層保護膜88の厚
さを上記範囲とすることにより、耐摩耗性と熱伝導性
(すなわち記録感度)とのバランスを好適に取ることが
できる等の点で好ましい結果を得る。また、下層保護膜
88は多層構成でもよい。下層保護膜88を多層構成と
する際には、異なる材料を用いて多層構成としてもよ
く、あるいは、同じ材料で密度等の異なる層を有する多
層構成であってもよく、あるいは、その両者を有するも
のであってもよい。
【0022】図示例のサーマルヘッド66は、好ましい
態様として、このような下層保護膜88の上に中間層9
0を形成し、その上にカーボン保護膜92を有する3層
構成の保護膜を有する。前述のように、カーボン保護膜
92は化学的に非常に安定であるため、下層保護膜88
の上層にカーボン保護膜92を有することにより、下層
保護膜88、発熱抵抗体84、電極86等の化学腐食を
有効に防止し、サーマルヘッドの寿命を長くすることが
できるが、さらに、この中間層90を有することによ
り、下層保護膜88とカーボン保護膜92の密着性、衝
撃吸収性等を向上し、より、耐久性や長期信頼性に優れ
た、長寿命のサーマルヘッドを実現できる。
【0023】サーマルヘッド66に形成される中間層9
0としては、周期表4A族(4族=チタン族)の金属、
同5A族(5族=バナジウム族)の金属、同6A族(6
族=クロム族)の金属、Si(珪素)およびGe(ゲル
マニウム)からなる群より選択される少なくとも1種を
主成分とするのが、上層であるカーボン保護膜92およ
び下層である下層保護膜88との密着性、ひいてはカー
ボン保護膜92の耐久性の点から好ましい。具体的に
は、Si、Ge、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、
Mo(モリブデン)およびこれらの混合物等が好適に例
示される。中でも特に、カーボンとの結合性等の点で、
Si、Moが好ましく、最も好ましくはSiである。
【0024】中間層90の形成方法には特に限定はな
く、前述の厚膜形成技術や薄膜形成技術等を用いて、中
間層90の形成材料に応じた公知の成膜方法で形成すれ
ばよいが、好ましい一例として、スパッタリングが例示
される。また、中間層90は多層構成としてもよい。中
間層90を多層構成とする際には、異なる材料を用いて
多層構成としてもよく、あるいは、同じ材料で密度等の
異なる層を有する多層構成であってもよく、あるいは、
その両者を有するものであってもよい。
【0025】ここで、中間層90の形成に先立って、ラ
ッピングやエッチング等による処理を行い、下層保護膜
88の表面を適度に荒らしておくのが好ましい。これに
より、下層保護膜88と中間層90との間、ならびに、
中間層90とカーボン保護膜92との間における密着力
をより一層向上でき、サーマルヘッドの耐久性をさらに
向上できる。この際における下層保護膜88の表面粗度
には特に限定はないが、Ra値(中心線平均粗さ)で1
nm〜0.1μmが好適である。
【0026】図示例のサーマルヘッド66において、炭
素を主成分とするカーボン保護膜92は、この中間層9
0の上に形成される。カーボン保護膜92は化学的に非
常に安定であるため、下層保護膜88の化学腐食を有効
に防止し、サーマルヘッドの耐久性向上に好適であるの
は前述の通りである。なお、本発明において、炭素を主
成分とするカーボン保護膜92とは、50atm%超の
炭素を含有するカーボン膜で、好ましくは炭素および不
可避的不純物からなるカーボン膜のことである。本発明
のサーマルヘッドにおいて、カーボン保護膜92を形成
する炭素以外の添加成分としては、水素、窒素、フッ
素、Si、およびTi等が好適に例示される。添加成分
が水素、窒素およびフッ素である場合には、カーボン保
護膜92中のこれらの含有量が50atm%未満である
のが好ましく、添加成分がSiおよびTiである場合に
は、カーボン保護膜92中のこれらの含有量が20at
m%以下であるのが好ましい。
【0027】ここで、本発明のサーマルヘッド66にお
いては、カーボン保護膜92は、炭素を主成分とする突
起を有する。図3に、図2に示されるサーマルヘッド6
6のカーボン保護膜92を拡大した概念図を示す。図示
例のカーボン保護膜92は、カーボン保護膜92中に、
カーボンを主成分とする略球形の微粒子94(以下、カ
ーボン微粒子94とする)を有することにより、表面に
カーボンを主成分とする突起96を形成してなるもので
ある。なお、本発明にかかる突起および微粒子におい
て、炭素を主成分とするとは、前記カーボン保護膜と同
様である。
【0028】本発明のサーマルヘッド66は、このよう
な突起96を有するカーボン保護膜92を有することに
より、カーボン保護膜による優れた耐摩耗性等に耐久性
に加え、サーマルヘッド66(グレーズ)と感熱材料A
との接触面積を低減して、前述のスティッキングを大幅
に低減することができ、これに起因する騒音を低減し
て、静粛な感熱記録を行うことができ、また、白飛び
(スジむら)のない高画質な感熱記録を行うことができ
る。
【0029】突起96の形状やサイズには特に限定はな
いが、スティッキングの好適な低減ができる等の理由
で、0.01μm〜1μm、特に、0.02μm〜0.
5μmの高さで、頂部が球面のものであるのが好まし
い。なお、図示例のように、突起96をカーボン微粒子
94によって形成する際には、カーボン微粒子94は、
直径が0.05μm〜5μm、特に0.1μm〜2μm
の略球形であるのが好ましい。また、突起96の数にも
特に限定はないが、スティッキングの好適な低減等の理
由で、発熱素子1ドット(dot) 当たり1〜20個、特
に、2個〜10個とするのが好ましい。
【0030】このような突起96を有するカーボン保護
膜92の好ましい形成方法として、焼結カーボン材をタ
ーゲットとして用いたスパッタリングにおいて、スパッ
タリングの投入パワーをコントロールしてカーボン保護
膜92を形成する、本発明ののサーマルヘッドの製造方
法が例示される。
【0031】具体的には、例えば焼結カーボン材をター
ゲットとして、まず、通常の均質な膜を形成するパワー
(出力)でカーボン膜(第1カーボン層92a)を形成
し、続けて、パワーを向上して、前記通常の成膜よりも
高いパワーでカーボン膜(第2カーボン層92b)を形
成する。ここで、焼結カーボン材をターゲットとしたス
パッタリングでは、パワーが高いと、適正なスパッタリ
ングのように焼結カーボン材のカーボンが原子レベルで
飛ばず、略球形の微粒子状で飛んでしまう、いわゆるス
プラッシュが発生する。そのため、高パワーで成膜を行
った第2カーボン層92bは、略球形のカーボン微粒子
94が付着したカーボン膜となる。このようにして第2
カーボン層92bを形成したら、パワーを落として、前
記第1カーボン層92aと同様のパワーでカーボン膜
(第3カーボン層92c)を形成する。これにより、カ
ーボン微粒子94を含む第2カーボン層92bが第3カ
ーボン層92cで覆われ、図3に示されるような、カー
ボン微粒子94によって形成された突起96を有するカ
ーボン保護膜92が形成される。すなわち、図示例のカ
ーボン保護膜92は、3層構成に相応する。
【0032】第2カーボン層92bを成膜する際の投入
パワーは、スプラッシュを発生させて、所望する粒径の
カーボン微粒子94を付着せしめる成膜条件を成膜装置
等に応じて適宜選択すればよいが、通常、第1カーボン
層92a等の成膜の2倍〜10倍程度とすればよい。
【0033】本発明のサーマルヘッドにおいて、カーボ
ン保護膜92は、図示例のような3層構成に限定はされ
ず、例えば、第3カーボン層92cを有さない、あるい
は第1カーボン層92aを有さない2層構成や、第3カ
ーボン層92cも第1カーボン膜92aも有さない1層
構成であってもよい。ただし、カーボン微粒子94を利
用して突起96を形成する場合には、カーボン微粒子9
4が外部に露出していると、記録時に加わる力や衝撃等
でカーボン微粒子94が脱落し、ピンホール化してしま
うと共に、そこからカーボン保護膜92が剥離してしま
う可能性が高くなるので、この態様においては、図示例
のように、カーボン微粒子94を覆ってカーボン膜を形
成するのが好ましい。
【0034】なお、本発明のサーマルヘッドにおいて、
炭素を主成分とする突起を有するカーボン保護膜の構
成、およびその形成方法は、上述の例に限定されないの
はもちろんである。
【0035】カーボン保護膜92の硬度には特に限定は
なく、サーマルヘッドの保護膜として十分な硬度を有す
ればよい。例えば、ビッカーズ硬度で3000kg/mm2
5000kg/mm2が好適に例示される。また、この硬度
は、カーボン保護膜92の厚さ方向に対して、一定とし
ても、あるいは変化させてもよく、硬度をカーボン保護
膜92の厚さ方向に変化させる場合には、この硬度の変
化は連続的であっても段階的であってもよい。
【0036】また、カーボン保護膜92は、50℃〜4
00℃程度、特に、サーマルヘッド66の使用温度に加
熱しながら形成してもよい。これにより、カーボン保護
膜92と中間層90ひいては下層保護膜88との密着性
をさらに向上でき、ヒートショックや感熱記録中の異物
混入による機械的衝撃による割れや剥離、ならびに高パ
ワー記録によるカーボン膜の変質や消失に対する、より
一層優れた耐久性を得ることができる。なお、加熱は、
ヒータ等の加熱手段を用いる方法や、サーマルヘッド6
6に通電する方法で行えばよい。
【0037】3層構成の保護膜を有するサーマルヘッド
66において、中間層90およびカーボン保護膜92の
厚さには特に限定はないが、好ましくは、中間層90は
0.05μm〜2μm、より好ましくは0.1μm〜1
μmであり、カーボン保護膜92(突起96を除く)は
0.5μm〜5μm、より好ましくは1μm〜3μmで
ある。中間層90がカーボン保護膜92に対して厚すぎ
ると、中間層90の割れ、剥離が生じる場合があり、逆
に、中間層90が薄すぎると、中間層としての機能を十
分に発揮できなくなってしまう。これに対し、中間層9
0およびカーボン保護膜92の厚さを上記範囲内とする
ことにより、中間層90の有する下層への密着力および
衝撃吸収力、カーボン保護膜92の有する耐久性等の機
能を、安定して、バランス良く実現できる。
【0038】なお、本発明のサーマルヘッドに形成され
る保護膜は、このような3層構成に限定はされず、突起
を有するカーボン保護膜92を有するものであれば、各
種の構成が利用可能である。例えば、中間層90を有さ
ず、下層保護膜88の上にカーボン保護膜92を形成し
た2層構成の保護膜であってもよく、あるいは、中間層
90も下層保護膜88も有さず、発熱体84および電極
86の上に、直接、カーボン保護膜92を形成した1層
構成の保護膜でもよい。
【0039】保護膜が中間層90を有さない2層構成の
場合には、下層保護膜88の厚さは2μm〜50μm、
特に、4μm〜20μmが好ましく、カーボン保護膜9
2の厚さ(突起を除く)は0.1μm〜5μm、特に、
1μm〜3μmが好ましい。さらに、保護膜が下層保護
膜88も中間層90も有さない1層構成の場合には、カ
ーボン保護膜92の厚さ(突起を除く)は1μm〜20
μm、特に、2μm〜10μmが好ましい。上記範囲と
することにより、耐摩耗性や耐久性と、熱伝導性とのバ
ランスを好適に取ることができる等の点で好ましい結果
を得る。
【0040】図4に、本発明のサーマルヘッドの製造に
好適な成膜装置の概念図を示す。図示例の成膜装置10
0は、基本的に、真空チャンバ102と、ガス導入部1
04と、第1スパッタリング手段106と、第2スパッ
タリング手段108と、バイアス電源112と、基板ホ
ルダ114とを有して構成される。
【0041】この成膜装置100は、系内すなわち真空
チャンバ102内に2つのスパッタリングによる成膜手
段を有するものであり、成膜基板となるサーマルヘッド
66を系内から取り出すことなく、異なるターゲットを
用いたスパッタリングによって中間層90(あるいは下
層保護膜88)とカーボン保護膜92を連続的に成膜で
きる。従って、成膜装置100を用いることにより、異
なる組成の複数層の成膜を系内の開放等を行わずに連続
的に行うこと等が可能ある。
【0042】真空チャンバ102は、SUS304等の
非磁性材料で形成されるのが好ましく、内部(成膜系
内)を排気して減圧とする真空排気手段116が配置さ
れる。また、真空チャンバ102内のプラズマやプラズ
マ発生用の電磁波によってアークが発生する箇所は、M
Cナイロン、テフロン(PTFE)等の絶縁部材で覆っ
てもよい。
【0043】ガス導入部104は、2つのガス導入管1
04aおよびガス導入管104bを有する。一例とし
て、ガス導入管104aから、プラズマを発生するため
のガスを導入する。なお、プラズマ発生用のガスとして
は、例えば、ヘリウムやネオン等の不活性ガスが用いら
れる。
【0044】スパッタリングでは、カソードにスパッタ
リングするターゲット材を配置し、カソードを負電位に
すると共に、ターゲット材の表面にプラズマを発生させ
ることにより、ターゲット材(その原子)を弾き出し
て、対向した配置した基板の表面に付着させ、堆積する
ことにより成膜する。第1スパッタリング手段106お
よび第2スパッタリング手段108は、共に、スパッタ
リングによって基板表面に成膜するものであり、第1ス
パッタリング手段106は、カソード118、ターゲッ
ト材120の配置部、シャッタ122および直流電源1
24等を有して構成され、他方、第2スパッタリング手
段108は、カソード126、ターゲット材120の配
置部、シャッタ128および直流電源130等を有して
構成される。上記構成より明らかなように、第1スパッ
タリング手段106と第2スパッタリング手段108
は、配置位置が異なる以外は基本的に同じ構成を有する
ので、以下の説明は、第1スパッタリング手段106を
代表例として行う。
【0045】ターゲット材120の表面にプラズマを発
生する際には、直流電源124および130のマイナス
側を直接カソード118(126)に接続し、例えば、
300V〜1000Vの電圧を印加する。直流電源12
4および130の出力は、目的とする成膜に必要にして
十分な出力を有するものを選択すればよい。また、成膜
に高周波(RF)電力を用いる場合には、直流電源12
4および130に、それに対応する変調手段を設けても
よい。
【0046】図示例においては、無酸素銅やステンレス
等からなるバッキングプレート132(134)をカソ
ード118に固定し、その上にターゲット材120をI
n系ハンダや機械的な固定手段で固定する。なお、中間
層90の形成に用いられるターゲット材120として
は、4A族、5A族、6A族の各金属や、GeやSiの
単結晶等が好適に例示される。また、カーボン保護膜9
2を形成するために用いられるターゲット材120とし
ては、焼結カーボン材、グラッシーカーボン材等が好適
に例示される。また、図示例の装置は、マグネトロンス
パッタリングを行うものであり、カソード118の内部
には、磁石118a(126a)が配置される。マグネ
トロンスパッタリングは、ターゲット材120表面に磁
場を形成してプラズマを閉じ込めてスパッタリングを行
うものであり、成膜速度が早い点で好ましい。
【0047】図示例の成膜装置100は、2つの成膜手
段を有するものであり、サーマルヘッド66(グレー
ズ)等の被成膜材(成膜基板)を固定する基板ホルダ1
14は各成膜手段、すなわちスパッタリング手段106
および108と、基板となるグレーズとを対向できるよ
うに、基板ホルダ114を揺動する回転基板150に保
持されている。また、基板ホルダ114とターゲット材
120との距離は、公知の方法で調整可能に構成され
る。なお、基板とターゲット材120との距離は、膜厚
分布が均一になる距離を選択設定すればよい。
【0048】ここで、前述のように、下層保護膜88の
表面や、中間層90の表面は、必要に応じてエッチンッ
グで粗面化される。そのため成膜装置100では、基板
ホルダ114に高周波電圧を印加するバイアス電源11
2が接続される。
【0049】以上、本発明のサーマルヘッドおよびサー
マルヘッドの製造方法に付いて詳細に説明したが、本発
明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しな
い範囲において、各種の改良や変更等を行ってもよいの
はもちろんである。
【0050】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明
をより詳細に説明する。 [実施例1]基になるサーマルヘッドとして、京セラ社
製 KGT-260-12MPH8を用いた。なお、このサーマルヘッ
ドには、グレーズの表面に保護膜として厚さ11μmの
窒化珪素膜(Si3N4)が形成されている。従って、本実施
例では、この窒化珪素膜が下層保護膜88となり、この
下層保護膜88上に中間層90が形成され、この中間層
90上にカーボン保護膜92が形成される。
【0051】このようなサーマルヘッドに、以下のよう
な、図4に示される成膜装置100を用いて、中間層9
0およびカーボン保護膜92を形成した。
【0052】a.真空チャンバ102 真空排気手段116として、排気速度が1500L(リ
ットル)/分のロータリーポンプ、同12000L/分
のメカニカルブースタポンプ、および同3000L/秒
のターボポンプを、各1台ずつ有する、SUS304製
で容積が0.5m3の真空チャンバ102を用いた。ター
ボポンプの吸引部にオリフィスバルブを配置して、開口
度を10%〜100%まで調整できるように構成してあ
る。
【0053】b.ガス導入部104 最大流量100[sccm]〜500[sccm]のマスフローコン
トローラと、直径6ミリのステンレス製パイプを用い
て、2つのガス導入管104aおよび104bを形成し
た。
【0054】c.第1スパッタリング手段106および
第2スパッタリング手段108 永久磁石118aおよび126aとしてSm-Co 磁石を配
置した、幅600mm×高さ200mmの矩形のカソード1
18および126を用いた。バッキングプレート132
および134として、矩形状に加工した無酸素銅を、カ
ソード118および126にIn系ハンダで張り付け
た。また、カソード118および126内部を水冷する
ことにより、磁石118aおよび126a、カソード1
18および126、ならびにバッキングプレート132
および134裏面を冷却した。また、直流電源124お
よび130として、最大出力10kWの負電位の電源を
用いた。なお、この直流電源は、2kHz〜100kH
zの範囲でパルス状に変調できるように構成してある。
【0055】d.基板ホルダ114 回転基板150の作用により、保持した基板(すなわ
ち、サーマルヘッド66のグレーズ)を第1スパッタリ
ング手段106および第2スパッタリング手段108に
配置されたターゲット120に対向して保持する。以下
に示す、中間層90およびカーボン保護膜92の生成時
には、基板とターゲット材120の距離は100mmとし
た。さらに、エッチング用の高周波電圧が印加できるよ
うに、サーマルヘッドの保持部分を浮遊電位にした。さ
らには、基板ホルダ114表面にはヒータを設け、加熱
しながら成膜を行えるように構成した。
【0056】e.バイアス電源112 基板ホルダ114に、マッチングボックスを介して高周
波電源を接続した。高周波電源は、周波数13.56M
Hzで、最大出力は3kWである。また、この高周波電
源は、自己バイアス電圧をモニタすることにより、負の
100V〜500Vの範囲で高周波出力が調整可能に構
成されている。なお、このバイアス電源112は、基板
エッチング手段を兼ねている。
【0057】<サーマルヘッドの作製>このような成膜
装置100において、サーマルヘッドのグレーズ66が
第1スパッタリング手段106のターゲット材120の
保持位置に対向するように、基板ホルダ114にサーマ
ルヘッド66を固定し、真空チャンバ102内の圧力が
5×10-6Torrになるまで真空排気した。なお、サーマ
ルヘッドの中間層90の形成部分以外にはマスキングを
施しておいた。真空排気を継続しながら、ガス導入部1
04によってアルゴンガスを導入し、ターボポンプに設
置したオリフィスバルブによって、真空チャンバ102
内の圧力が5.0×10-3Torrになるように調整した。
次いで、基板に電圧を印加し、自己バイアス電圧−30
0Vで10分間、下層保護膜(窒化珪素膜)のエッチン
グを行った。
【0058】エッチング終了後、ターゲット材120と
してSi単結晶を第1スパッタリング手段106のバッ
キングプレート132に、また、焼結グラファイト材を
第2スパッタリング手段108のバッキングプレート1
34に、それぞれ固定(In系ハンダで張り付け)し
て、その後、真空チャンバ102内を排気して、圧力が
5×10-3Torrとなるようにアルゴンガス流量およびオ
リフィスバルブを調整し、シャッタ122を閉じた状態
でターゲット材120に、0.5kWの電力を5分間印
加した。次いで、真空チャンバ102内の圧力を保った
まま、電力を2kWの高周波電力としてシャッタ122
を開き、膜厚が0.2μmとなるまでスパッタリングを
行い、厚さ0.2μmのSi膜を中間層90として形成
した。なお、Si膜の膜厚は、あらかじめ成膜速度を求
めておき、所定の膜厚となる成膜時間を算出して、成膜
時間で制御した。
【0059】中間層90の成膜後、回転基板150によ
ってグレーズを第2スパッタリング手段108のターゲ
ット材120(焼結グラファイト材)に向け、真空チャ
ンバ102内の圧力が5×10-3Torrとなるようにアル
ゴンガス流量およびオリフィスバルブを調整し、シャッ
タ128を閉じた状態でターゲット材120に直流電力
0.5kWを5分間印加した。次いで、真空チャンバ1
02内の圧力を保ったまま、直流電力を2kWとしてシ
ャッタ128を開いてスパッタリングを行い、厚さ0.
5μmの第1カーボン層92aを形成し、次いで、直流
電力を6kWに向上して厚さ1μmの第2カーボン層9
2bを形成し、次いで、直流電力を2kWに戻して厚さ
0.5μmの第3カーボン層92cを形成して、厚さ2
μmのカーボン保護膜92を形成し、サーマルヘッド6
6を作製した。なお、カーボン保護膜92の膜厚は、あ
らかじめ成膜速度を求めておき、所定の膜厚となる成膜
時間を算出して、成膜時間で制御した。
【0060】このようにして作製したサーマルヘッド6
6のカーボン保護膜92を200倍の光学顕微鏡で観察
したところ、カーボン保護膜92中には直径0.1μm
〜2μmのカーボン微粒子94が存在しており、カーボ
ン保護膜92には、発熱素子1ドット(80μm×11
0μm)当たりにして、5個の突起96が形成されてい
た。また、突起96の高さは、0.02μm〜0.5μ
mであった。
【0061】<性能評価>このようにして作製したサー
マルヘッド66を、図1に示される感熱記録装置10に
組み込み、B4サイズの感熱材料(富士写真フイルム社
製、ドライ画像記録用フィルムCR−AT)を用いて、
感熱記録を行った。その結果、25000枚の感熱材料
に感熱記録を行った以降でも、スティッキングに起因す
る画像のスジむらは認められなかった。
【0062】[実施例2]カーボン保護膜92の形成に
おいて、第2カーボン層92bの形成時の直流電力を8
kWとした以外は、前記実施例1と同様にして、3層構
成の保護膜を有するサーマルヘッド66を作製した。実
施例1と同様に、カーボン保護膜を観察したところ、カ
ーボン保護膜92中には直径0.5μm〜2μmのカー
ボン微粒子94が存在しており、カーボン保護膜92に
は、発熱素子1dot当たりにして、10個の突起96
が形成されていた。また、突起96の高さは、0.04
μm〜0.5μmであった。このようにして作製したサ
ーマルヘッド66を用いて、実施例1と同様に感熱記録
を行った結果、25000枚の感熱材料に感熱記録を行
った以降でも、スティッキングに起因する画像のスジむ
らは認められなかった。
【0063】[比較例1]カーボン保護膜92を形成す
る際の直流電力を2kWで一定とした以外は、前記実施
例1と同様にして、3層構成の保護膜を有するサーマル
ヘッド66を作製した。実施例1と同様に、カーボン保
護膜を観察したところ、カーボン保護膜92中にはカー
ボン微粒子94は確認されず、カーボン保護膜92に突
起96は形成されていなかった。このようにして作製し
たサーマルヘッド66を用いて、実施例1と同様に感熱
記録を行ったところ、5000枚の感熱材料に感熱記録
を行った時点で記録音が大きくなり、得られた画像を確
認したところ、スティッキングに起因する画像のスジむ
らが認められた。以上の結果より、本発明の効果は明ら
かである。
【0064】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、保護膜の腐食や摩耗が極めて少ない十分な耐久
性を有し、長期に渡って高画質の感熱記録を安定して行
うことが可能である上に、スティッキングの発生を好適
におさえ、静粛でスジむらのない高画質な感熱記録が行
えるサーマルヘッドを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のサーマルヘッドを利用する感熱記録
装置の一例の概念図である。
【図2】 本発明のサーマルヘッドの発熱素子の構成を
示す概略図である。
【図3】 本発明のサーマルヘッドのカーボン保護膜の
概念図である。
【図4】 本発明のサーマルヘッドの製造に利用される
成膜装置の一例の概念図である。
【符号の説明】
10 (感熱)記録装置 14 装填部 16 供給搬送手段 20 記録部 22 排出部 24 マガジン 66 サーマルヘッド 80 基板 82 グレーズ層 84 発熱(抵抗)体 86 電極 88 下層保護膜 90 中間層 92 カーボン保護膜 94 カーボン微粒子 96 突起 100 成膜装置 102 真空チャンバ 104 ガス導入部 106 第1スパッタリング手段 108 第2スパッタリング手段 112 バイアス電源 114 基板ホルダ 116 真空排気手段 118,126 カソード 120 ターゲット材 122,128 シャッタ 124,130 直流電源 132,134 バッキングプレート A 感熱材料

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】発熱素子を保護する保護膜として、炭素を
    主成分とするカーボン保護膜を含む少なくとも1層の保
    護膜を有し、前記カーボン保護膜が、炭素を主成分とす
    る複数の突起を有することを特徴とするサーマルヘッ
    ド。
  2. 【請求項2】前記突起の高さが0.01μm〜1μmで
    ある請求項1に記載のサーマルヘッド。
  3. 【請求項3】前記突起が、前記カーボン保護膜中に含有
    される直径0.05μm〜5μmの以下の炭素を主成分
    とする微粒子によって形成される請求項1または2に記
    載のサーマルヘッド。
  4. 【請求項4】サーマルヘッドの表面に、均質な膜を形成
    する出力のスパッタリングによって炭素を主成分とする
    カーボン膜を形成し、その上に、前記均質な膜の形成よ
    りも高い出力のスパッタリングによって炭素を主成分と
    するカーボン膜を形成し、その上に、均質な膜を形成す
    る出力のスパッタリングによって炭素を主成分とするカ
    ーボン膜を形成することにより、発熱素子を保護する保
    護膜を形成することを特徴とするサーマルヘッドの製造
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2020067424A1 (ja) * 2018-09-27 2020-04-02 京セラ株式会社 サーマルヘッドおよびサーマルプリンタ

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