JPH10217215A - 水硬性材料の成形法 - Google Patents

水硬性材料の成形法

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JPH10217215A
JPH10217215A JP2739597A JP2739597A JPH10217215A JP H10217215 A JPH10217215 A JP H10217215A JP 2739597 A JP2739597 A JP 2739597A JP 2739597 A JP2739597 A JP 2739597A JP H10217215 A JPH10217215 A JP H10217215A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 型費の大幅削減と量産性に優れた水硬性材料
の成形法を提供する。 【解決手段】 多孔質通気性成形型の上に加熱された熱
可塑性樹脂フィルム13を被い、成形型のキャビティの
賦形面に吸着させて凹凸起伏を塑性変形で転写し、コン
クリートSを充填して加振で締め固めた後、通気孔を持
つ定板15を合わせ、真空引きして定板15とフィルム
13で成形体を真空密閉して脱型する。脱型直後、フィ
ルム13を引っ張って擦り動かし、凸状湾曲面18aを
持つ養生盤18上に成形体Sを載せ換えてその上で養生
させる。成形体の背面側に定板15を重ねてフィルム1
3と抱持したまま一緒に脱型すると、成形体の塊の変形
が定板15で拘束されるため、一塊の成形体を伸縮性の
あるフィルム13で絞ったような締め固め状態の弾力塊
として型崩れなく脱型できる。また、脱型直後の載せ換
えによりに成形面を損なわずに曲げ塑性変形できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スラリー成形材料
を硬化成形するための成形法に関し、特に、建築板状
体,外壁タイル等を得るために使用するセメント混練材
料等のような水硬性材料の成形法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、家屋や塀の外壁を被うコンクリ
ート製化粧外壁板(模様付コンクリート製品)の成形法
としては、特開昭63−172608号公報に記載のよ
うに、模様付コンクリート製品の成形法が知られてい
る。この成形法は、凹凸模様付型枠の上に、プラスチッ
クフィルムを展開し、そのプラスチックフィルムを発熱
装置により均一に加熱すると共に、型枠底面に設けた吸
着用ベントホールにより真空ポンプで真空吸引して凹凸
模様表面に密着させた後、コンクリート・スラリーを流
し込み硬化養生させるものである。このような成形法を
用いると、脱型したコンクリート成形品の表面凹凸面は
型枠の凹凸模様が転写された美麗な表面仕上となり、ま
た、プラスチックフィルムの被覆により型枠の凹凸模様
表面(賦形面)がコンクリート・スラリーに接触せず、
汚れが生じないため、型枠の洗浄工程及びその乾燥工程
を無くすことができ、生産性の向上に資するものであ
る。更に、型磨耗が少なくなり、型寿命が長くなるとい
う利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
模様付コンクリート製品の成形法にあっては、次のよう
な問題点がある。
【0004】 型枠内で養生硬化させたコンクリート
成形品をその型枠から抜き出す際、バイブレータで加振
しながら脱型力を加えても脱型し難く、縁や成形面の欠
け,損傷を招き易い。特に、部分的にアンダーカットの
ある成形品は抜き勾配が逆勾配であるため、分割型を用
いなければ上手に脱型できない。また、図12に示す如
く、成形品1の表面2は勿論のこと厚み側面(立ち上が
り面)3に凹凸起伏がある場合は、成形面の表面損傷が
不可避的に生じ、抜き勾配を相当大きくしなければ、脱
型ができないので、上記の成形法では厚み側面が殆ど平
滑面の成形品に限られると言うのが実情である。
【0005】換言すると、型枠の内面模様(しぼ)を大
小凹凸の粗さ(地肌起伏)に富むものにし難く、成形品
の厚み側面を含めた凹凸模様面を自然石地肌等に酷似さ
せるにはランダム起伏や精細さの点で限界があった。
【0006】 型枠内でコンクリート成形品を硬化さ
せる養生期間は、速硬コンクリートや促進養生法でも一
昼夜を要するため、その養生期間中は勿論脱型できず、
型枠の回転効率は頗る低いものであった。そのため、コ
ンクリート成形品の量産性を確保するには、同形の型枠
を多数個準備する初期投資が不可欠であり、型費の膨大
化を招いている。それ故、模様付コンクリート製品のデ
ザインの種類も限られたものとなっていた。
【0007】ところで、型枠内で成形品を硬化養生させ
ずに、水硬性材料(水和硬化成形材料)の充填・締固め
直後、未硬化状態の成形体をフィルムで包み込んだまま
そっくりキャビティから引き抜き脱型し、フィルムが被
着したままで未硬化状態の成形体を保形養生するように
すれば、理論的には上記の各問題点が解消できる筈であ
る。
【0008】例えば、成形型を分割型(垂直割型)に構
成し、成形型を分割してから脱型するようにすることは
可能であるものの、成形面に分割線の痕跡が残り、成形
品の付加価値が低下し、化粧壁等の外観を重要視する成
形品には適用できず、また型費の上昇を招く欠点もあ
る。勿論、半硬化状態まで型枠内で養生させてから脱型
することは可能であるが、型枠の回転効率の大幅向上は
期待できない。
【0009】未硬化状態(スラリー充填直後状態)での
脱型操作は、その物理的分離変位過程の脱型抵抗等によ
り未硬化成形面の崩れ,歪み,しぼむらに直結するた
め、実際は無謀な操作に等しく、凹凸起伏の成形面を持
つ成形品では材料充填直後に即時脱型することは実用上
困難であった。
【0010】 更に、板状コンクリート製品(平物)
を成形するには、凹状のキャビテイを持つ型枠を用いれ
ば良いが、壁面のコーナ部や稜線部を被覆する曲げ物,
役物を成形する場合、コアやスライダーを用いた複雑な
型枠が必要となり、生産性の低下を招いている。
【0011】そこで、上記問題点に鑑み、本発明の第1
の課題は、未硬化成形体をフィルムで包み込んだまま型
崩れなく脱型できる手法を実現することにより、即時脱
型の実用化による型費の大幅低減を図り、量産性に優れ
たコンクリート等の水硬性材料の成形法を提供するとこ
ろにある。また、本発明の第2の課題は、平物は勿論の
事、曲げ物,役物も簡単に成形できる水硬性材料の成形
法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の講じた第1の手段は、未硬化状態の成形体
をフィルムで密着包囲したままキャビティから相対的に
抜き出す際、成形体の背面側に裏当て補強材を重ねて一
緒に脱型するようにした点にあり、本発明の講じた第2
の手段は、脱型直後のフィルムが被着した成形体を擦り
動かして養生盤の上へ載せ換える点にある。
【0013】即ち、本発明は、通気孔を持つ成形型のキ
ャビティに加熱された熱可塑性樹脂フィルムを展開状態
で被い、上記通気孔を真空吸引して上記キャビティの賦
形面に上記フィルムを吸着させ、上記キャビティの賦形
面を上記フィルムの面に塑性変形で転写してから、水硬
性材料のスラリーを前記キャビティ内の上記フィルム上
に充填して締固め、未硬化状態の成形体を上記フィルム
で密着包囲したまま上記キャビティから相対的に抜き出
す脱型工程の後、上記フィルムが被着したままで上記未
硬化状態の成形体を上向き姿勢で養生させる水硬性材料
の成形法において、上記脱型工程は、上記キャビティ内
の上記未硬化状態の成形体の背面側に重ねた裏当て補強
材と上記フィルムとで上記未硬化状態の成形体を抱持し
て一緒に脱型した後、上記裏当て補強材の上で上記フィ
ルムが被着した上記成形体を相対的に擦り動かして養生
盤の上へ載せ換えてから上記養生盤上で養生させること
を特徴とする。
【0014】このような水硬性材料の成形法において
は、先ず、キャビティの賦形面の凹凸起伏はそれに倣い
真空吸引で吸着されて塑性変形した熱可塑性樹脂フィル
ムの面に写し取られるものである。賦形面の凹凸起伏へ
の倣い性が忠実であり、賦形面の凹凸起伏を精細に反映
した転写性を持つ。樹脂フィルムの膜厚が200 μm 以上
に厚くなると、硬化したフィルム自身に自立保形性が現
れるため、ダレにより転写性が悪くなる。また厚くなる
と展延伸縮性が無くなる。従って、熱可塑性樹脂フィル
ムは柔軟性に富み且つ薄い程、転写性が良くなる。この
熱可塑性樹脂フィルムの膜厚としては20〜200 μm 程度
が好ましい。転写性と強度の点から、望ましくは50〜10
0 μm 程度が適当である。
【0015】しかし反面、高温に加熱された薄膜フィル
ム面は部分的にキャビティの賦形面の凹凸起伏に融着や
食い込み付着等で接着し易くなるため、水硬性材料の充
填後に未硬化状態の成形体をフィルムで密着包囲したま
ま脱型しようとしても、脱型力を加えると、フィルム面
には接着点で異方性のフィルム張力が顕在化するため、
成形面とフィルム面との境界では局部的滑り流動が生
じ、成形面の崩れ,歪み,むらを生じてしまう。
【0016】未硬化状態の成形体をフィルムで密着包囲
したまま脱型する方法としては、成形体を包み込んだ半
袋状のフィルムを全体的にキャビティから静かに持ち上
げるように引き離しても良いが、成形体の周囲のフィル
ムを平等の力で正確に持ち上げない限り、フィルム各点
の張力が異方化して、成形面が局部的に歪む虞れがあ
る。
【0017】そこで、本発明の第1の手段では、脱型時
の成形体の保形性を確保するため、キャビティ内の未硬
化状態の成形体の背面側に裏当て補強材を重ねて、その
裏当て補強材とフィルムとで未硬化状態の成形体を抱持
して一緒に脱型することを特徴としている。この裏当て
補強材としては、剛体板,可撓性板,弾性板,紙製板,
樹脂フィルム(シート),裏当て樹脂被覆層又は樹脂含
浸層等を採用することができる。
【0018】このように、裏当て補強材を用いて一緒に
脱型すると、成形体の塊の変形が裏当て補強材である程
度拘束されるため、未硬化状態の成形体の成形面と転写
母型としてのフィルム面との局部的滑り流動が起こり難
くなり、一塊の成形体を伸縮性フィルムで絞ったような
締め固め状態の弾力塊としてそっくりそのまま脱型する
ことができる。脱型時の脱型抵抗でフィルム面が局部的
に押されても、フィルムの表面保護作用で成形面の表面
損傷が起こらず、また一旦凹んだ箇所はフィルムの表面
張力及び未硬化成形体自身の凝結粘弾性で復元する。従
って、キャビティの賦形面の地肌起伏が様々でも、また
ある程度のアンダーカットの成形品でも、更に立ち上が
り面に凹凸のある成形品でも、成形を崩さずに首尾良く
脱型できる。このため、即時脱型プロセスが本格的に実
用化でき、型費の大幅低減により、凹凸模様付き成形品
を低コストで提供できる。
【0019】脱型後は包み込んだフィルムを例えば上側
(成形面を上向き姿勢)にして養生する。未硬化成形体
は保形のフィルムに包まれていわば膜養生による湿潤養
生にあずかることになるから、露天養生の場合に比し、
硬化成形品の強度が高くなり、高品質の成形品が得られ
るから好都合である。更に、硬化養生の後、そのまま上
記フィルム等を被着したままの状態で工場出荷すれば、
輸送過程の養生材(包装又は緩衝材)を節約することが
でき、またフィルムを剥離するまで膜養生が継続するか
ら、却って高品質の成形品を提供できる。
【0020】第2の手段では、脱型後、裏当て補強材上
で成形体を養生させるのではなく、裏当て補強材の上で
フィルムが被着した上記成形体を相対的に擦り動かして
養生盤の上へ載せ換えてから養生盤上で養生させること
を特徴としている。成形体を擦り動かすようにして載せ
換えれば、成形体の成形面が崩れることがない。そし
て、湾曲面を持つ養生盤を用いると、この載せ換えによ
りフィルムの被着した成形体が曲げ塑性変形(2次変
形)を受け、養生盤の凹部又は凸部の湾曲面上に成形体
が置かれて養生されるため、一部又は全体的に湾曲した
曲げ物又は役物の成形品を得ることができる。
【0021】成形体の載せ換え操作においては、成形体
を包囲するフィルムをゆっくり引っ張ることで相対的に
擦り動かすことができるが、その最中、フィルムが剥離
してしまう虞れがある。
【0022】そこで、本発明においては、成形体の背面
側に上記裏当て補強材を重ねる前に、載せ換え用フィル
ムを敷き、脱型後に裏当て補強材の上で載せ換え用フィ
ルムに張力を加えてフィルムが被着した成形体を養生盤
へ載せ換えることを特徴としている。脱型後に裏当て補
強材上で載せ換え用フィルムを相対的に引っ張ることに
よりフィルムが被着したままの成形体の成形面に崩れを
与えずに成形体を相対的に移動でき、載せ換え操作の迅
速化を達成できる。
【0023】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を添付図
面に基づいて説明する。
【0024】〔第1の実施形態〕本発明の第1の実施形
態に係るコンクリート製化粧外壁板の成形法において
は、まず図1に示すように、多数個取りの凹状のキャビ
ティ12が彫り込まれたポーラスエポキシ樹脂製の多孔
質通気性型板(成形型)10を準備し、この型板10を
真空ポンプ(図示せず)に連通した真空吸着台11上に
設置する。そして、必要に応じ、キャビティ12内に非
極性ウレタン塗料等のフィルム接着抑制剤を塗布又は噴
霧する。次に、型板10のキャビティ12を成形適温14
0 〜150 °Cに加熱されて展開状態の膜厚60μm程度の
酢酸ビニール系プラスチックフィルム(熱可塑性樹脂フ
ィルム)13で被い、吸着台11を真空引きして多孔質
通気性型板10を吸気する。これにより、キャビティ1
2内の空気が型板10の多孔質の連続孔(通気孔)を介
して吸着台11の外へ排気されるため、キャビティ12
内が減圧状態となり、図2に示すように、加熱されて柔
軟で伸縮し易い展開状態のフィルム13がキャビティ1
2の内面に吸着すると同時に、ヒートシンクしてフィル
ム13が冷却硬化するので、フィルム13はキャビティ
12の賦形面12aの凹凸起伏に倣って添接し、賦形面
12aの凹凸起伏がフィルム1の面に塑性変形で転写す
る。なお、このフィルム面成形に用いられるフィルム1
3は一般の真空成形に用いられるフィルム(200 μm 以
上)よりも半分以下で薄いため、フィルム面成形後では
薄フィルム13自体に自己保形性はない。フィルム13
の面に転写された賦形面模様の部分でさえなおも柔軟に
変形可能である。このフィルム13としてエンボス加工
フィルムを用いても良い。
【0025】次に、図3に示す如く、真空吸引状態のま
まキャビティ12にフレッシュコンクリート(センメン
ト混練材のスラリー)Sを適量充填し、型板10をバイ
ブレータにより数千サイクル/分の高周波数で10秒程度
加振してコンクリートSを稠密に締め固めると共に、充
填コンクリートS中の気泡を抜く。加振によりブリーデ
ィングで浮き水が充填コンクリートSの上面に発生す
る。なお、締め固め不要コンクリートを用いても良い。
この際、キャビティ12の内面には模様成形された薄膜
のフィルム13が密着しているため、コンクリートSの
充填時にはコンクリートSがフィルム13上を滑って行
くので、流動性が良い。キャビティ12自体の内面地肌
が充填コンクリートSに触れることはなく、またコンク
リートSの成形面の凹凸起伏は実質的にキャビティ12
の賦形面12aが転写される。なお、材料充填後の型板
10のバイブレータによる振動によって、フィルム13
とキャビティ12の賦形面12aの接着境界面の剥離が
促進される。
【0026】この締め固め工程の後、真空吸引を停止す
ると、ラッシュ的に空気圧が型板10からフィルム面に
一気に吹き付けるように押し寄せるため、フィルム13
とキャビティ12の賦形面12aの接着境界面が剥離す
る。
【0027】次に、図4に示す如く、通気孔15aを持
つ鉄製定板(裏当て補強材)15を型板10の上に重ね
た後、図5に示す如く、その上に吸着パッド19を合わ
せて真空吸引する。この真空密着操作によれば、未硬化
状態の成形体中に混入する気泡が脱気されてコンクリー
トSが締め固められると共に、キャビティ12の賦形面
12aから既に剥離したフィルム13の転写面が成形面
に強く密着し、フィルムの表面吸着力が強固になり、成
形体が未硬化状態でありながらいわゆる真空パックで密
実な硬さのある塊となる。
【0028】本例では、特に定板15の通気孔15aが
キャビテイ12の縁近傍に面する位置に開口しているた
め、加振により生じた成形体上面の浮き水が不用意に通
気孔15aを介して排水される虞れはない。このため、
コンクリートSの水配合比が狂わない。
【0029】薄型の成形体は軽いため、真空吸引で成形
体が定板15に吸着する。そこで、真空吸引を継続し、
成形体を上方へ吸着しながら定板15を上方に移動させ
て脱型し、天地反転させて図6に示す如く、成形面が上
向きの成形体をフィルム被覆のまま定板15上で支持す
る。そして、真空吸引を解除し、図7に示す如く、定板
15に養生盤18を隣接し、定板15の上でフィルム1
3の端を引っ張って、フィルムが被着したコンクリート
Sの成形体を相対的に擦り動かして凸状湾曲面18aを
持つ養生盤18の上へ載せ換える。成形体を擦り動かす
ようにして載せ換えれば、成形体の成形面が崩れること
がない。この載せ換えによりフィルム13の被着した成
形体が曲げ塑性変形を受け、図8に示す如く、養生盤1
8の凸状湾曲面18a上で養生されるため、図9に示す
如く平面が凹状湾曲面となって全体的に湾曲した曲げ物
又は役物の成形品が得られる。養生盤18へ載せ換える
と、定板15が脱型直後に再利用できる利点があり、生
産性の向上に資する。なお、養生盤18は凹状湾曲面を
持つものは勿論の事、3直角面の交叉隅部の凸部や凹部
を持つものや、波形面を持つものでも構わない。
【0030】このように、定板15を用いて一緒に脱型
すると、成形体の塊の変形が定板15である程度拘束さ
れるため、未硬化状態の成形体の成形面と転写母型とし
てのフィルム面との局部的滑り流動が起こり難くなり、
一塊の成形体を伸縮性フィルムで絞ったような締め固め
状態の弾力塊としてそっくりそのまま脱型することがで
きる。脱型時に成形体の側面等が脱型抵抗で押されて
も、脱型直後に弾力的に復元し、保形性が持続する。こ
のため、ある程度の負の抜き勾配の成形品でも脱型でき
るから、部分的にアンダーカットのある成形品をも得る
ことができる。
【0031】ところで、型板10としてポーラスエポキ
シ樹脂製の多孔質通気性型板を用いなくても、複数の通
気孔がキャビティ部12に連通形成した型板でも構わな
いが、キャビティ12の内面に広口の通気路が開口して
いると、成形品の成形面に針状突起ができ易く、その除
去作業が必要となる。しかし、本例のように多孔質通気
性型板を用いると、キャビティ12に臨む多孔の開口は
微細であるため、針状突起が形成される程ではない。ま
た、従来の製造方法では、金型(アルミニウム型)の場
合、セメントの化学反応により腐食が生じ、金型交換の
サイクルが速く、またウレタン樹脂型では耐久性に遜色
があった。しかし、本例では型板10がフィルム13で
被われ、コンクリートSが接触しないことは、化学反応
や腐食等から回避できるので、型板10の材料選定の自
由度が増す。
【0032】特に、フィルム13がキャビティ12の賦
形面12aに吸着した状態でも、賦形面自身が多孔質で
あるから、フィルム面は微小な空胞を交えて散点的に密
着するため、自ずとベタ接着面が無くなり、しかも境界
面剥離操作では賦形面の多孔から気体がフィルム面に分
散的且つ均等に当たるようになるため、境界面剥離が確
実化する。このため、熱可塑性樹脂フィルム13として
は極薄フィルムを用いることが可能となると共に、加熱
温度を高めることができるから、より一層、転写性の精
細化を実現できる。
【0033】本例においては、脱型後の成形体に2次塑
性変形を付与するため、特殊形状の養生盤18上で養生
させるようにしているが、成形体の載せ換え操作におい
ては、成形体を包囲するフィルム13をゆっくり引っ張
ることで相対的に擦り動かすことができるが、その最
中、フィルム13が剥離してしまう虞れがある。
【0034】〔第2の実施形態〕本例の成形法において
は、図3に示すフレッシュコンクリート(センメント混
練材のスラリー)Sの充填・締め固め後、図10に示す
如く、成形体の背面側に定板15を重ねる前に、載せ換
え用フィルム20を敷く。この載せ換え用フィルム20
には通気孔15aに合う開口20aが形成されている。
この後、図5に示す真空吸引を行い、その真空吸引で成
形体を定板15に吸着して脱型し、天地反転させて図1
1に示す如く、成形面が上向きの成形体をフィルム被覆
のまま定板15上で支持する。そして、定板15に養生
盤18を隣接し、被覆フィルム13ではなく、載せ換え
用フィルム20を相対的に引っ張って成形体を擦り動か
して養生盤18上に載せ換える。
【0035】このように、本例においては載せ換え用フ
ィルム20上に成形体をそっくり載せているため、載せ
換え用フィルム20を引っ張って移動することで成形体
の載せ換えを容易に行うことができる。フィルム13が
被着したままの成形体の成形面に崩れを与えずに、載せ
換え操作の迅速化を達成できる。
【0036】なお、本例では、化粧壁等の成形品の成形
材料としてセンメント混練材のコンクリート(又はモル
タル)を用いてあるが、石膏,しっくい、セラミック
ス,粘土やスラグ等によって水硬性を与えられた混合物
でも構わない。種々の細骨材,粗骨材,充填材,混和
材,ポリマー,着色剤等を混合したものでも良い。また
本発明では、実施形態に示す平物成形品に限らず、役物
成形品,パネル状成形品,立体成形品も成形し得る。
【0037】更に、本発明の即時脱型実用化プロセス
は、水硬性材料のスラリーに限らず、チョコレート,カ
レールーなどの食料成形品や口紅,石鹸,スキーワック
スなどの化粧・化学成形品のように、薄フィルムよりも
低融点材料のスラリーを成形・膜保護する場合に用いる
ことができる。脱型後の養生工程に代えて、フィルム被
覆のままで、加熱処理,冷却処理,冷凍処理,赤外線照
射,マイクロ波照射の外部加熱処理などを施すようにし
ても良い。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、未硬化
状態の成形体をフィルムで密着包囲したままキャビティ
から相対的に抜き出す際、成形体の背面側に裏当て補強
材を重ねて一緒に脱型するようにした点と、脱型直後の
フィルムが被着した成形体を擦り動かして養生盤の上へ
載せ換える点に特徴を有するものであるから、次の効果
を奏する。
【0039】 成形体の塊の変形が裏打ち補強材で拘
束されるため、一塊の成形体を伸縮性フィルムで絞った
ような締め固め状態の弾力塊としてそっくりそのまま脱
型することができる。脱型時の脱型抵抗でフィルム面が
局部的に押されても、フィルムの表面保護作用で成形面
の表面損傷が起こらず、また一旦凹んだ箇所はフィルム
の表面張力及び未硬化成形体自身の凝結粘弾性で復元す
る。従って、キャビティの賦形面の地肌起伏が様々で
も、またある程度のアンダーカットの成形品でも、更に
立ち上がり面に凹凸のある成形品でも、成形を崩さずに
首尾良く脱型できる。このため、即時脱型プロセスが本
格的に実用化でき、型費の大幅低減により、凹凸模様付
き成形品を低コストで提供できる。
【0040】更に、成形体を擦り動かすようにして載せ
換えれば、成形体の成形面が崩れることがない。そし
て、湾曲面を持つ養生盤を用いると、この載せ換えによ
りフィルムの被着した成形体が曲げ塑性変形を受け、養
生盤の凹部又は凸部の湾曲面上に成形体が置かれて養生
されるため、一部又は全体的に湾曲した曲げ物又は役物
の成形品を得ることができる。
【0041】 また本発明では、成形体の背面側に裏
当て補強材を重ねる前に、載せ換え用フィルムを敷き、
脱型後に裏当て補強材の上で載せ換え用フィルムに張力
を加えてフィルムが被着した成形体を養生盤へ載せ換え
ることを特徴としている。脱型後に裏当て補強材上で載
せ換え用フィルムを相対的に引っ張ることによりフィル
ムが被着したままの成形体の成形面に崩れを与えずに成
形体を相対的に移動でき、載せ換え操作の迅速化を達成
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るコンクリート製
化粧外壁板の成形法におけるフィルム成形(転写)工程
の前半過程を示す工程断面図である。
【図2】同成形工程の後半過程を示す工程断面図であ
る。
【図3】第1の実施形態におけるコンクリート充填・締
め固め工程を示す工程断面図である。
【図4】第1の実施形態における型合わせ工程を示す工
程断面図である。
【図5】第1の実施形態における脱型の直前工程を示す
工程断面図である。
【図6】第1の実施形態における脱型直後の状態を示す
工程断面図である。
【図7】第1の実施形態における脱型直後の載せ換え状
態を示す工程断面図である。
【図8】第1の実施形態における養生盤上での養生状態
を示す工程断面図である。
【図9】第1の実施形態における養生後に得られた成形
体を示す側面図である。
【図10】第2の実施形態における型合わせ工程を示す
工程断面図である。
【図11】第2の実施形態における脱型直後の載せ換え
状態を示す工程断面図である。
【図12】凹凸起伏のあるコンクリート製化粧外壁板の
一例を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
1…コンクリート製化粧外壁板 2…表面 3…板厚側面 12…キャビティ 10…多孔質通気性型板 11…真空吸着台 12a…賦形面 13…熱可塑性プラスチックフィルム 15…定板 15a…通気孔 16…ブローパッド 18…養生盤 18a…凸状湾曲面 19…吸着バッド 20…載せ換え用フィルム 20a…開口 S…コンクリート(成形体)。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 通気孔を持つ成形型のキャビティに加熱
    された熱可塑性樹脂フィルムを展開状態で被い、前記通
    気孔を真空吸引して前記キャビティの賦形面に前記フィ
    ルムを吸着させ、前記キャビティの賦形面を前記フィル
    ムの面に塑性変形で転写してから、水硬性材料のスラリ
    ーを前記キャビティ内の前記フィルム上に充填して締固
    め、未硬化状態の成形体を前記フィルムで密着包囲した
    まま前記キャビティから相対的に抜き出す脱型工程の
    後、前記フィルムが被着したままで前記未硬化状態の成
    形体を養生させる水硬性材料の成形法において、 前記脱型工程は、前記キャビティ内の前記未硬化状態の
    成形体の背面側に重ねた裏当て補強材と前記フィルムと
    で前記未硬化状態の成形体を抱持して一緒に脱型した
    後、前記裏当て補強材の上で前記フィルムが被着した前
    記成形体を相対的に擦り動かして養生盤の上へ載せ換え
    てから前記養生盤上で養生させることを特徴とする水硬
    性材料の成形法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記成形体の背面側
    に前記裏当て補強材を重ねる前に、載せ換え用フィルム
    を敷き、前記脱型後に前記裏当て補強材の上で前記載せ
    換え用フィルムに張力を加えて前記フィルムが被着した
    前記成形体を前記養生盤へ載せ換えることを特徴とする
    水硬性材料の成形法。
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